文化審議会著作権分科会(第69回)(第23期第2回)

日時:令和6年3月19日(火)
14:00~16:00

場所:文部科学省東館3F1特別会議室
(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  1. (1)AI と著作権について(報告)
  2. (2)使用料部会及び各小委員会の審議経過について
  3. (3)その他

3閉会

配布資料

資料1
AI と著作権に関する考え方について(1.4MB)
資料2
使用料部会の審議経過について(217KB)
資料3
政策小委員会の審議経過について(418KB)
資料4
法制度小委員会の審議経過について(104KB)
参考資料1
「AI と著作権に関する考え方について(素案)」に関するパブリックコメントの結果について(資料1関連)(2.5MB)
参考資料2
AI と著作権に関する関係者ネットワーク(仮称)について(214KB)

議事内容

【茶園分科会長】

それでは、ただいまから第69回文化審議会著作権分科会を開催いたします。

本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、委員の皆様には、会議室とオンラインにて、それぞれ御出席いただいております。

オンラインにて御参加いただいている皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外は、ミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園分科会長】

ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方には、そのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【白井著作権課専門官】

ありがとうございます。

議事次第にございますとおり、資料については、まず、議事1に関連して、法制度小委員会からの報告に関する資料1及びその参考資料、また、今日は今期最後の著作権分科会ですので、議事2として、使用料部会及び各小委員会からの審議結果報告に関する資料2から4を配布しております。

以上になります。

【茶園分科会長】

ありがとうございました。

それでは、報道関係者の方には、すみませんが、御退出いただくようお願いいたします。

それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(3)の3点となります。まず、議事(1)のAIと著作権について(報告)に入りたいと思います。本件につきましては、法制度小委員会の主査である私より概要を御報告した後、事務局より詳細について説明をしていただきます。

それでは、まず、私より御報告いたします。

まず、このAIと著作権については、このたび法制度小委員会で、その考え方を取りまとめました。その考え方について御報告をさせていただきます。

「1.はじめに」に記載したとおり、本考え方の取りまとめに至る経緯から御説明いたします。

昨今、AI技術の開発が加速し、特に、いわゆる生成AIと言われる、利用者の指示に基づいて、様々な形態のコンテンツを生成するAIについて、極めて目覚ましい発展を遂げておりまして、一般ユーザーの方でも容易に利用できるサービスも普及してまいりました。

そのような中、この生成AIをめぐりましては、著作権者等からは、著作権を侵害されることへの懸念の声が、AI開発事業者からは、AI開発に当たって著作権を侵害するのではないかといった懸念の声が、AI利用者からは、AIを利用することで、意図せず著作権を侵害してしまうのではないかといった懸念の声が上がってまいりました。

そのような状況の中で、生成AIと著作権の関係に関する判例等の蓄積がないという現状、民間当事者間におけるガイドラインの作成などによる考え方の整理がいまだ途上であるといったことから、このような懸念の解消を迅速に図る必要が生じてまいりました。

そこで、本小委員会におきましては、クリエイターや実演家等の権利者、生成AIの開発・サービス提供等を行う事業者といった関係者からのヒアリング等を行いまして、それぞれの懸念の声に沿って著作権上の論点を整理し、その上で、各論点について、AIとの関係における現行法の適用関係などについて議論を行ってまいりました。

また、取りまとめの過程におきましては、パブリックコメントを行いまして、約2万5,000件の多数の御意見をいただきまして、このうち、法解釈に関するものにつきましては、趣旨の明確化を図る観点から、記載の修正を行いました。

このような議論や手続を経まして、生成AIと著作権の関係に関する懸念の解消を求めるニーズに応え、関係する当事者において、生成AIとの関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、また、生成AIとの関係で著作権等の権利の実現を自ら図る上で参照されるべきものとして、現時点における本小委員会としての一定の考え方を取りまとめました。

「6.おわりに」に記載したように、著作権侵害等に関する裁判例をはじめとする具体的な事例の蓄積、AIやこれに関連する技術の発展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえまして、今後も引き続き検討を行っていくこととしております。

また、文化庁において設けられます各種の相談窓口等を通じて、積極的な事案の集積に努めることも期待するとともに、文化庁においては、本考え方に示されたAIと著作権に関する考え方について、著作権制度に関する基本的な考え方とともに、分かりやすい形での周知啓発に向けて、積極的に取り組むことを期待することとしております。

さらに、政府における取組とともに、民間の当事者間における、生成AIに関する著作物の利用についての適切なルールやガイドラインの作成や、生成AI及びこれに関連する技術についての共通理解の獲得、AI学習等のための著作物のライセンス等の実施状況、海賊版を掲載したウェブサイトに関する情報の共有などが図られることが、AIの適切な開発及び利用の環境を実現する観点から重要であることとしております。

なお、これらの点につきましては、文化庁において、関係当事者間における適切なコミュニケーションの実現に向けた取組を図ることを期待したいと思っております。

それでは、具体的な内容につきましては、これより、事務局より説明をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】

事務局でございます。茶園主査、概略の説明ありがとうございました。それでは、具体的な内容について御説明いたします。

本文章は、6章立てとなっております。

2ページの「1.はじめに」では、本文書を策定するに至った背景及び位置づけについて記載しておりまして、今、茶園主査から御説明があったとおりとなります。

4ページの「2.検討の前提として」については、(1)において、AIと著作権に関する考え方を検討する上で、また、論点に関する考え方を理解するための前提となる従来の著作権法の考え方を記載しておりまして、7ページの(2)において、AIと著作権に関する従来の整理を記載しております。

次に、11ページの「3.生成AIの技術的な背景について」は、2ポツに同じく論点に関する考え方を理解するための前提となる生成AIの技術的な背景について、著作権の観点から必要と思われる内容を記載しております。

次に、14ページの「4.関係者からの様々な懸念の声について」は、様々な関係者からの懸念の声を可能な限り漏れなく取り上げ、それぞれの立場ごとに分けた上で、著作権法との関係で、どのような論点となるのか、整理したものを記載しております。

次に、17ページの「5.各論点について」は、懸念の声を受けた論点をAIの開発・学習段階、生成・利用段階、AI生成物の著作権物性、その他の論点に分け、それぞれ考え方を示しました。特にその中でもポイントとなる点を取り上げ、説明いたします。

まず、17ページからの(1)開発・学習段階についてですが、AIの開発・学習に関する権利制限規定の適用範囲等に関する解釈に関するものとして、19ページに記載しておりますイ(イ)非享受目的と享受目的が併存する場合についてのうち、20ページの1つ目の丸で、AI学習のための著作物の利用の中には、既存の著作物の類似物を出力させる目的が併存し、著作権法第30条の4の非享受目的要件を満たさないものがあることを例示とともにお示ししております。

また、こちらのページの一番下の丸ですが、特定のクリエイターの作品のみを学習データとしてファインチューニングを行う場合、各作品に共通する創作的表現を享受する目的があると評価される場合があり、その場合は著作権法第30条の4が適用されないことをお示ししております。

次に、22ページから記載しております、エ 著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例についてのうち、24ページの(ウ)において、オンラインでデータが提供されているものを含め、情報解析用に活用できる形で整理したデータベースの著作物の現在または将来の販売市場と衝突するAI学習のための複製などには、著作権法第30条の4が適用されないことをお示ししております。

また、AI学習に海賊版などの侵害複製物を利用することのリスクなどについては、27ページから記載しております(オ)海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のため複製することについてのうち、28ページの2つ目の丸において、海賊版であることを知りながらAI学習に用いたといった事情は、事業者が開発した生成AIによる生成物の著作権侵害が起きた際に、その侵害の主体として責任を問われる可能性を高めることをお示ししております。開発・学習段階の主な論点は、以上となります。

次に、32ページからの(2)生成・利用段階についてですが、AI生成物の生成、利用が著作権侵害となる要件に関しまして、33ページのイ(イ)依拠性の考え方についての①の3つ目のチェック、ページをまたいで恐縮ですが、34ページの1つ目のチェックの箇所で、AIにより、元の著作物と類似性がある生成物が生成された場合に、依拠性があると推認され得ることをお示ししております。

また、35ページのウ 依拠性に関するAI利用者の主張と学習データについてにおいて、学習元データに元の著作物が含まれていないことは、類似性がある生成物を生成したAI利用者の側で依拠性を否定するために主張することが必要となると考えられるとお示ししております。

さらに、こちらのページのオ 利用行為が行われた場面ごとの判断についてにおいて、AI生成物の生成時点で著作権侵害とならない場合でも、生成物の利用時点では、別途、侵害とならないか検討が必要であることをお示ししております。

また、AI開発事業者、AIサービス提供事業者が著作権侵害の責任を負う場合についての考え方と、事業者が取るべき侵害防止の措置についての考え方として、36ページのキ 侵害行為の責任主体についてにおいて、AI利用者による侵害物の生成については、AI利用者自身が責任を負うとともに、多数の侵害物の出力を看過した場合などに、事業者も著作権侵害の主体として責任を問われる場合があり得ることをお示ししております。

また、37ページの③に、事業者が、著作権侵害として責任を問われるリスクを低減するためには、侵害物の生成防止等の措置を取ることが必要と考えられるということをお示ししております。生成・利用段階の主な論点は以上となります。

次に、39ページからの(3)生成物の著作物性については、AI生成物が著作物として認められるための要件に関する考慮要素等について記載しております。

こちら、39ページのイにおいて、AI生成物であっても、人の創作的寄与があると認められる場合は、AI利用者の著作物として認められる場合があることをお示ししております。

また、創作的寄与の有無は、40ページに移りますが、指示・入力(プロンプト等)の分量・内容などの要素を勘案して、総合的に判断されるものと考えられることをお示ししております。生成物の著作物性については、以上となります。

42ページからの「6.おわりに」については、冒頭、茶園先生から御説明があったように、侵害事例の蓄積や技術の進展などを踏まえ、引き続き検討を行っていくこと。

また、42ページの一番下の丸ですが、文化庁において、本考え方に示されたAIと著作権に関する考え方と、著作権制度に関する基本的な考え方の周知・啓発に積極的に取り組むこと。

また、次の43ページの1つ目の丸ですが、民間当事者間において、生成AI及びこれに関する技術の共通理解の獲得、AI学習のための著作物のライセンスなどの実施状況や、海賊版を掲載したウェブサイトに関する情報の共有が図られることが重要であることを記載しております。

最後に、茶園主査からも御説明がありましたように、本考え方を受けまして、文化庁としましては、生成AI及びこれに関する技術、AIの学習データにおける著作物の望ましい利用方法、海賊版を掲載しているウェブサイト等について民間当事者間の情報共有を促進するため、コミュニケーションの場の創設に向け取り組んでいくこととしたいと考えております。

このため、参考資料2のほうを御覧いただければと思いますが、AIと著作権に関する関係者ネットワーク、まだ仮称とつけておりますけれども、こちらを立ち上げることとしたいと考えております。このネットワークにつきましては、著作権者等とAI開発事業者、AIサービス提供事業者のほか、専門家などに御参画いただきながら、事業者とクリエイター双方のより正確な理解を促進する観点から、AI技術についての共通理解の促進、AI学習等のための著作物等のライセンス等の実施状況の共有、海賊版サイトの可視化などの情報共有などを行うことを目的として取り組んでまいりたいと考えております。

事務局からの説明は、以上となります。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。

ただいまの報告につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

では、佐藤委員、お願いいたします。

【佐藤委員】

考え方のお取りまとめのご説明、ありがとうございました。

冒頭、分科会長からご発言がありました通り、AI技術は進展も普及も早く、また企業活動にとどまらず、広く一般でも、日々新しい創作物が創出されるなど、クリエイティブな活動も多様化・活発化しております。こうした中、今般、生成AIと著作権に焦点を当ててご議論いただいたとのことですが、開発・学習段階における論点は、生成AI以外のAI開発や機械学習全般に影響を与えうるものと承知しておりますので、経済界からも、多様な業界、企業が関係していることから、それぞれの立場から意見があったものと存じます。

こうした中、今般、今回の議論の検討段階からのヒアリングや、パブリックコメント等を通じて、丁寧にそれぞれの意見を聞いていただきまして、感謝申し上げます。また、修文された点を拝見しましても、図表や説明等を入れていただくなど、関係者にとって、生成AIと著作権に関する理解を深める上で役立ったものと思っております。

一方で、今回の「考え方」につきましては、著作権法の解釈を示すようなところもありますので、そのような点につきましては、著作権法についての一定の知識がない人にとっては少々難しい面もあるのではないかと存じます。

また、取りまとめにあたって、様々な立場の方からの意見を反映されていると思いますので、非常にテクニカルな文章のところもあると存じます。同時に、今回の取りまとめに関して、関係者にとってはやはり一種のガイドライン的なものとの印象も与えると思っております。

したがいまして、引き続き、文化庁におかれましては、現行の著作権法の考えに則り、クリエイターやAI開発者・事業者、それぞれの懸念解消に向けまして、既に本文でも言及されておりますけども、分かりやすい形で「考え方」の周知活動というものをお願いしたいと存じます。

また、技術の進歩のみならず、制度面でも海外の動きが非常に活発になっていると伺っておりますので、これらの動向につきまして的確に把握していただきながら、状況変化への対応という点で、適切なタイミングでの見直しと、関係省庁間での一層の連携・一体的な取組みをお願いしたいと存じます。

私からは以上です。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。

渡辺委員、お願いいたします。

【渡辺委員】

御説明ありがとうございました。

私の意見は、もう根本的なところで、著作権法30条の4ということについて、私自身は見直しをしてほしいという思いを持っていまして、今、様々な御意見や考え方が示されておりますけれども、これは全て著作権法30条の4がある前提において起こり得る様々な懸念事項に対して、どう対処すべきかというところが主な論点だと思われますが、私はこの著作権法30条の4というものは、全ての分野において必ずしも必要ではないという考え方を持っております。特に私は音楽家なので、音楽ということから考えたときに、音楽生成物をつくるために、この30条の4が適用されて、そういった生成物がつくられること自体にいかなる意味があるのだろうかというところから考えるべきではないかという考え方を持っています。

この法律はイノベーション創出等の促進に資するという目的があって生まれたということですが、例えばEUにおいてはこのような法律はありませんし、この法律がある前提で議論を進めているということで、議論の内容が結果的に複雑化していると感じています。音楽関連に関しては、国益とか文化の発展とかという見地から考えても、この法律は必要ないと私は考えています。音楽文化の発展に関して、生成AIが役立つことがあるとすれば、それは音楽クリエイターたちの仕事の効率を上げるためのアプリなどを開発することや、AIが独自に、例えば人とアンサンブルをするような新たな演奏形態が創出されるとか、そのようなことがあれば人類にとって非常に有効だと思いますが、そのいずれにおいても権利制限規定は必要とすることなく、限られた音楽に対して著作権者に対価を払うなどして許可を取った上で、開発が可能であると思われます。

この権利制限規定を利用する、世界の多種多様な音楽を無制限に生成AIに学習させる必要性が求められるとすれば、それはいわゆる作曲系のアプリというふうに、私は1つ考えることができると思うんです。つまり、プロンプトを入れるだけで、瞬時に楽曲を生成する、現時点においてもそういうアプリが出てきております。ポップス系のボーカルや、さらに背景の音楽、いわゆるカラオケ的な部分までも演奏を含む音楽作品を、プロンプトを入れるだけ数分でつくり上げるというようなアプリが既に存在しておりますが、こういったアプリは一体誰にとって必要なんだろうかといいますと、はっきり言って作曲能力のない一般の方々を喜ばせることのためにある。プロの音楽家が必要とするものではないと考えます。アマチュアを喜ばせるだけのためのアプリが音楽文化の発展に寄与するとは到底思えないわけです。

むしろ、可能性として、AIがつくり出した、正直言って稚拙な音楽がSNSなどに投稿され、ユーチューブなどで自分でつくった音楽ということで背景音楽として使用される。それらが、また若い人々の耳にとまる、若い人々のこれからの10代の音楽感性に少なからず悪影響を与えることなどが容易に想像されます。また、場合によっては、プロのクリエイターたちの職域を犯す可能性も、将来にわたって秘めています。したがって、その音楽関連に関して著作権法30条の4が適用されるということは、私の考え方から言うと百害あって一利なしというように思います。そもそも、音楽関連の営利目的でのアプリをつくり上げるというために、生成AIに学習させたい著作物があるのであれば、権利者に何らかの形で許可を取って使うべきというのが民主主義社会におけるあるべき姿だと私は思っています。

今、私が話しているのは根本的なところですけれども、昨年、ChatGPTが話題になったときに、私も含めて多くの人々が、文書を作成するためなどに利用して仕事の効率を上げるというようなことなどで非常に恩恵を感じたかと思います。このような利用は、様々な分野で仕事の効率を上げ、経済の発展にもつながるかもしれませんし、ほかに及ぼす悪影響も特に私自身は思いつきません。しかし、音楽に限らず、美術関連や作画やデザイン、写真、映画、アニメなど、クリエイティビティが求められる分野については、生成AIの発展は、その分野の職についている方々の役に立つどころか、仕事を奪う可能性を秘めています。いずれもそれぞれの分野について、能力のない人々を喜ばせるだけであって、それ自体が国の発展に結びつくとは到底私には思えません。

したがって、クリエイティビティが求められる様々な分野における著作物については、根本的に著作権法30条の4が適用されるということに意味を見出すことは難しく、そこの見直しということを強くお願いしたいと思います。この見直しということも含めて、来年度さらに検討を続けていただきたいというのが私の願いです。

以上です。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。

では、河野委員、お願いいたします。

【河野委員】

日本消費者協会の河野でございます。

著作権について十分な知識がない一般市民ですが、御報告いただいたAIと著作権についての整理について受け止めを申し上げたいと思います。言うまでもなく、デジタル技術の進展と社会への浸透に伴って、誰もが様々なコンテンツを制作・発表できるようになりました。同時に、受け取る側も多様なデバイスを通して、そうしたコンテンツを受け取り、楽しむことができるようになりました。DXの進化が私たち国民一人一人に豊かな文化を享受する環境を与えてくれましたが、同時に、権利関係においては、かなり複雑な状況をつくり出してしまったというふうに受け止めています。

後を絶たない海賊版問題やバリュー・ギャップ問題など、社会からも関係者からも指摘されている著作権に関わる重要課題の解決が本当に切実に望まれている状況にあるところに加えて、生成AIの登場とその驚くべき進化のスピードに対して、御報告の内容に関しましては、現時点では適切な内容であるとは思うものの、今後に向けて一抹の不安を感じざるを得ません。AIは、既に医療や交通など、社会システムの多くの分野で社会実装されていまして、学校教育でも、デジタルツールの活用やプログラミングが教育課程に組み込まれています。特に、次世代に対しては、技術の使い方だけでなく、技術を使うために必要な知識やルールの伝達も同時に行わなければ、後づけで著作権制度の内容を伝えたとしても、時、既に遅しではないかというふうに思っています。

報告書の最後に、まとめとして周知啓発への期待が書かれていますが、AIと著作権に関する考え方の整理に最も求められるのは、今後に向けての、先ほど御報告ありましたけれども、関係者ネットワーク、この関係者というのも、全く異分野の方をしっかりと入れて、例えば哲学の関係者とか倫理の関係者とか、そういった方も含めた形、技術とかビジネスの方だけではなく、関係者のネットワークを最大活用して、スピード感を持って集中して、ぜひこの問題に取り組んでいただきたいというふうに思います。

私からは以上です。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

では、髙部委員、お願いいたします。

【髙部委員】

ありがとうございます。

急速に発展する生成AIと著作権の問題について、裁判例が登場することを待つことなく、解釈に当たっての一定の考え方を文化審議会法制度小委員会のほうで示されたこと、しかもかなり踏み込んだ形で解釈を示していただいたということを、委員の皆様、それから事務局の皆様に対して深い敬意を表したいと思います。

今回の考え方につきましては、現行の著作権法を改正することなく、今の著作権法の中でどういうふうに解釈をするのかということを、従前の著作権法に関する基本的な考え方、判例を含めてですけれども、考え方との整合性に非常に留意されてつくっていただいたというふうに思っております。ですので、全体として支持できると思いますけれども、2点ほど気になった点がございましたので、若干細かい点ですけれども、指摘をさせていただきたいと思います。

1点目は、開発・学習段階で、情報解析に当たるけれども、享受を目的とする場合、享受の目的と併存するという説明の仕方のところでございます。今、ここで享受目的と併存するということで書かれている例などは、確かに著作権の制限規定を適用しないほうがよいのではないかというふうにも思われる場面もあるように思います。ただ、今の条文は、情報解析というものを30条の4の第2号で、享受し又は享受させることを目的としない場合の例示として挙げています。そのような条文構造からは、情報解析に当たるとしながら享受目的が併存するので30条の4に当たらないという説明の仕方というのは、ちょっと難しいような気がいたします。必要と認められる限度という、別の要件のところを考えるとか、あるいは、そもそも情報解析に当たらないという場合もあるのかもしれませんけれども、そういったことも今後考えていっていいと思いますし、著作権者の利益を不当に害するかどうかというただし書の要件を非常に狭く解釈すべきだというような説明の仕方も、いまだ判例があるわけではないので、もう少し自由な考え方が今後出されてもいいのかなというふうに感じました。

2点目は、表現とアイデア関係でございます。表現なのかアイデアなのかというところは、著作権侵害訴訟でも非常に争いになりますし、従来の裁判例でも、審級によって、1審と2審、2審と最高裁の関係で判断が分かれた事例も多数ございます。ですので、具体的な表現の類似性といったところが問題になるんだというメッセージがもう少しあってもいいかなというふうに感じました。

感じたのは以上でございますけれども、今後、学説や裁判例の動向あるいは国際的な状況を踏まえて、不断の検討を継続していくというふうにおっしゃっておりまして、ぜひそういったことをやっていただき、事業者や利用者が分かりやすく行動できるような形の政策を推進していただきたいというふうに願っております。

私からは以上でございます。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

あんびる委員、お願いいたします。

【あんびる委員】

ありがとうございます。

このたくさんの文書の取りまとめに御尽力してくださった先生方にお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

私は、美術著作権連合の理事長ですので、美術家の面から意見を述べさせていただきたいと思います。

私ども美術家が最もこのAIのことで懸念しておりますのは、32ページのアの類似性についての考え方でございます。この類似性についてなんですけれども、現在の著作権法では、かなり似ていないと、というか、ほぼそっくりでないと類似性というのは認められないということになっております。ところが、AIの場合、例えば、私風の、あんびるやすこ風の三毛猫の絵というのを生成させた場合、現存する絵とは全く別の新しい絵が生成されるものですから、もちろんこれは著作権侵害とは認められない、類似性ということでは、類似していないという判断になってしまうということを私たちはとても心配をしております。

そういった作品の生成を防ぐためには、自分の作品を学習させなければいいんじゃないかという考え方もあるわけなんですけれども、30条の4によって、学習されることを拒否することができない状況にあります。こうなってまいりますと、著作権法ではなくて、社会的合意によって、この類似というよりは、作風が似ている作品の生成というのを何とか防げないものかということになってくるわけでありまして、その点ではこのガイドラインというのが重要になってくるだろうとは思っております。

このガイドラインについてなんですが、関係者ネットワークでの意見交換の場を設置していただけるということを伺っておりますので、大変ありがたく思っておりますが、その一方で、このネットワークの意見交換の場では、お互いに最終的に何らかのガイドラインが必要ですねという結論を得て終わるということになってしまうと、これはまた、ガイドラインが本当につくれるのかどうかというのとは別問題になってまいりまして、大変に難しい状況を迎えるのではないか。そんな中で、判例もないままに、この作風が似ている作品がどんどん出てきて、これが著作権法侵害とは認められないという状況になっていくということがあるのであれば、大変懸念される状況だなというふうに感じております。

以上でございます。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。

畑委員、お願いいたします。

【畑委員】

このたびの「AIと著作権に関する考え方について」の取りまとめについて、法制度小委員会の委員の皆様方、それから事務局の方々の多大な御尽力に感謝申し上げたいと思います。その上で、特に今後のことについて一言二言申し上げさせていただければと思います。

「・・・考え方について」の6章の「おわりに」に書いてありますが、今後はいろんな状況の変化について、いかにそれをフォローアップ、レビューしていくかが重要だと考えております。その中で、特に諸外国における法制度等の検討状況を踏まえることは非常に重要だと考えておりまして、EUあるいはアメリカ等の動向を見つつ、適宜レビューをしていくことが重要だと考えております。また、そういった意味で、先ほど御報告ございました関係者ネットワークでの情報共有、意見交換の場にも、我々も適切にこれに関与させていただきたいと考えております。

また、もう一つ、「おわりに」、42ページの4つ目の〇に書いてありますが、今後ここに例示されております「俳優・声優等の声を含んだ実演・レコード等の利用・・・」云々というところですが、必ずしも著作権だけで解決しない懸念、課題がAIに関しては相当にあると認識しております。特に、いわゆるディープフェイクと言われるような問題についても、内閣府知財事務局の検討会でも別途検討されているということです。また、経産省さんと総務省さんでは「AI事業者ガイドライン」ということで、開発事業者、プロバイダー、利用者に向けたガイドラインが検討されています。そういった意味では、今回の著作権の課題に関するまとめとともに、3本の取りまとめが日本においては存在していくということになるわけです。

そうなりますと、これからAIに関する考え方を国民に非常に分かりやすく周知啓発していく上で、この3本の取りまとめはできれば1本にまとめるような見せ方にしていただいて、分かりやすく啓発をしていくことが必要なのではないかと思います。これは著作権を超える取組みかもしれませんが、その点をぜひ関係省庁の方々には御考慮いただければと思っておる次第でございます。

以上でございます。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

では、内山委員、お願いいたします。

【内山委員】

私は、こちらの小委員会に入っていなかったので、あくまで初見の意見として申し上げたいと思いますけれども、当然ながら、生成AIは急速に出てきた技術ですので、当然判例がないのも当たり前でしょうし、それから、逆に守るものがたくさんある方々にすればたくさん懸念があるというのも理解できるところです。一方で、利活用したい人たちも、私が個人的にいろいろ見ている部分においても、いろいろ足踏みしている状況、無理に使っていろんな事故を起こしてしまったらまずいかなといったところもあって。だから、お互い懸念と妄想といいますか、あるいは実際に活発に使わないうちにいろんなことを議論するという状況になっているので、急速に法改正せずに、取りあえず様子を見ていきましょうという、この今回の方向性に関しては全く異論がないところでございます。

ただ、そういう意味で、これから恐らくいろんな懸念が現実的な問題になることもあるでしょうし、あるいは、実際に利活用を進められた方がいろいろな悩みを持つケースも出てくるかと思いますので、そのエビデンスとなったものをベースに、また次の議論をしていくというのが順当ではないかというふうに思います。人間なので、将来をある程度予測して、石橋をたたいてというのも、それは当然の理屈でございますけれども、現実化していないことに対して、あまり懸念と妄想だけで物事を進めていくのもちょっとどうかな?という面あるかと思いますので、このような進め方に関しては全く異論がないところではございます。

ただ、もう一つ、コンテンツ領域あるいは著作物領域の生成AIは、その生成物が直接に人の生命・財産を脅かすという類いのものではないと思うんです。例えば、自動車の自動運転の生成AIというのは、本当に文字どおり、AIが暴走して人を殺すということはあり得るでしょうけれども、幸いなことにメディアコンテンツあるいは著作物のそれが、直接に人の生命・財産をストレートにあるいは短期間に殺すということはなかなか想定しにくいので、そういう意味では、ほかの分野の生成AIの話とは、少し距離感もあるかと思います。

さらにもっと突っ込んでいくならば、いろんなコンテンツジャンルの方の御懸念もあったとおりで、恐らくそれぞれのコンテンツジャンルにおいても、懸念していることと、それに対して想定できる利活用が、少しずつ違っているんじゃないかなと思うところもありまして、その意味では、これから議論を深めていく上において、単に横串を刺すということだけじゃなくて、ジャンル別の検討ということもあってもいいのかなというふうに思います。

生成AIは非常に便利な道具ですので、例えば、切れ味のいい調理器具あるいは包丁みたいに考えて、それでもって本当においしい料理をつくってくれればいいのですけれども、間違った使い方をする人がいて、その切れ味のいい包丁を使って人を刺すみたいなことがあれば、それは当然ながらまずい話です。人を刺すということばかり懸念していてもしようがないので、いかにいい道具を上手に使うかという側面を含めながら、でも、そのいい道具をどう上手に使うかというのは、多分ジャンルごとにかなり違う話になるような気がいたしますので、そういう検討もあってもいいかなというふうに思った次第でございます。

以上でございます。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

では、草野委員、お願いします。

【草野委員】

このたびは、おまとめいただいて御尽力いただきありがとうございます。非常に分かりやすくまとめられていて、私も、内山委員がおっしゃっていたように、様子を見ながら進めていくという方向性は非常に正しいかなと思っております。

私は現在、アーティストとして、AIの創造的な可能性を探求しながら、創作にAIを活用しています。今回の会議に先駆けて、世界中のAIアーティストのコミュニティーの方々からいろいろ意見を集めてきたんですけど、特にAIを使った写真、ポスト・フォトグラフィという分野が今すごく活発になっていて、パリ・フォトウィークとか、写真系の芸術の中で、AIを使った写真というのは非常におもしろいねということで評価を受けていて、イラストだったり、アニメの絵だったりというのと、ちょっと考え方が違うのかなというか、写真の場合だと、皆さんフォトショップとかも今まで使っていたのもあって、バックラッシュが絵と比べたら少ないかなという印象があります。

彼らが言っていたこととしては、アート業界に新たな多様性と物語をAIが指し示してくれているという話もありますし、あとは、そのAIを活用することによってクリエイター自身がイラストで描いたものを3D化する技術ができたり、その絵を動かすことができたりという、従来はどこか業者にお願いしなきゃいけなかったところを全部自分の手元でできるというのは、非常にクリエイティブの効率ができて、自分がクリエイティブなところに一番集中することができている。でも、一方で、細かい作業をしていた人たちの仕事は奪われていくというのは、両面あるだろうという話でした。

ただ、私がやっている分野はアートなので、アートの場合は、コラージュアートだったり、エンターテインメントや商業利用と比較すると割と考え方が違うのかなと思っていて、もしそれが商業的に利用される場合は、AIでつくっていることを明示したほうがいいんじゃないかという意見も出てきました。特に、ディープフェイクなど、本物そっくりで俳優さんの顔がそのまま使われていて、その俳優さんは1回の出演料しかもらってないのに、それが何度も使われるみたいなことがあってはならないという話は、芸能関係者の方がおっしゃっていました。

いろんな側面があると思うんですけど、必ずしもAIがつくったものにオリジナリティーがないかどうかというのは、そうでもないかなと私は思っていて、使い方次第なところもあるので、一つ一つケースを見ながら、懸念されるディストピアもユートピアも両方考えて向き合っていかなければならないのかなと思います。

以上です。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございます。

では、太田委員、お願いいたします。

【太田委員】

この議論が30条の4の廃止の方向に行くのか拡大の方向に行くのか分からないのですが、6ページ辺りに国際的な関係の分析が出て来ます。そこでは、現状の国際私法とか国際民事訴訟法を前提として分析されているようです。けれども、この分野はシームレスでボーダーレスなので、気をつけないと国際的に見て日本の権利者だけ権利制限される、諸外国では権利制限をそれほど受けていないということもあり得るし、また、逆に、日本の利用者や消費者だけクオリティーの低いAIソフトを使わざるを得なくなるということもあり得ると思います。どちらになるか分かりませんので、この点について、どのように考えたらよいかをもう少し明確にしていただいたほうがいいかなという気がしまして、質問させていただきます。

【三輪著作権課著作権調査官】

事務局でございます。

太田先生から御質問いただきましたところですけれども、著作権法における準拠法の議論というものは、現在でもいろいろな御意見等あって、必ずしもその確立した立場というものが一意に定まっているものではないと承知しております。

その中で、今回の考え方において示していますのは、生成AIにおいて著作物が用いられるという場面、また、生成AIの生成物によって著作権侵害等が生じる場面においては、どう考えるべきかという当てはめというような形で、最低限の考え方を示させていただいたというところになっておりまして、準拠法あるいは属地主義との関係についての総論的な議論というのは、今後の学会等の議論によるところが大きいものなのかなと考えております。

以上でございます。

【茶園分科会長】

ほかにございますでしょうか。

では、棚井委員、お願いいたします。

【棚井委員】

ありがとうございます。日本写真著作権協会の棚井です。よろしくお願いいたします。

当会では、私の前任者である瀬尾太一がSARTRASの授業目的公衆送信補償金制度をつくることと併せて、10年前に教育利用写真アーカイブを考案し、5年ほど前から写真家たちに作品の登録を呼びかけてきました。そして、SARTRASの補償金分配が2年目を迎えた今年、このアーカイブをリニューアルして本格稼働を始めたところです。これから教育現場の方々の声を聞きながら、安心して利用いただける写真を充実させていく予定です。また、文化庁の委嘱事業として行っています日本写真保存センター、このセンターに入っている写真の登録も進めています。

教育利用写真アーカイブには、当会11の会員団体のメンバーのである写真家が、当会が発行している著作権者ID番号(写真家識別番号)によって作品を登録することができます。併せて、当会が所有する1万8,000人の写真家の情報をそこに入れていくことも検討しています。また、先日、アウトサイダーを含む数千人の写真家情報を入手しましたので、これも併せて、重複がないかを確認した上で登録の準備を進めているところです。

一方で、AIによって自分の著作物が自由に学習されてしまう、それが営利目的にも利用できてしまうという現状から、新たにインターネット上に、このアーカイブに、写真をアップロードすることを不安に感じている写真家がたくさんいます。そのことが、せっかくつくったアーカイブへの作品登録の足かせになっていると感じております。自分の著作物がAIに学習されてしまうこと、その学習によって生成された画像が営利目的にも利用できてしまうことへ不安を感じているクリエイター、アーティストが一定数いる以上、何らかの措置を早急に考えていただく必要があります。

日本写真著作権協会からは、以上となります。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、事務局、お願いします。

【籾井著作権課長】

ありがとうございました。

様々な御意見を頂戴しました。多くのものは、議論の過程におきまして個別に意見交換もさせていただいている中で表明されたものなのかなと思っておりまして、そういう意味では、今回の現行規定の中で反映できるものについては、一定程度懸念を踏まえて今回の考え方をまとめさせていただいております。

一方で、今後も引き続き検討を継続的にしていくべきだという御意見を頂戴しております。文化庁におきましては、相談窓口を現在、設けておりまして、そういったところでの具体の事例の収集、それから、諸外国での様々な議論の動向、そしてまた、技術の進展、こういったところも踏まえまして、今後も引き続き必要に応じて検討を行っていきたいというふうに考えております。

それから、この周知の仕方でございますけれども、何名かの方から御指摘をいただきましたように、今の考え方そのものだとなかなか御理解をいただけませんので、それぞれの当事者にとって分かりやすいような形でポイントをまとめて発信していきたいと思っております。この際、関係省庁とも既にいろんな形で連携はしておりますけれども、一本化までできるかどうかはちょっとともかくとして、しっかり連携をしながら、まとまった形での発信ができるように考えていきたいと思っております。

それから、先ほど冒頭の説明の中で簡単に御紹介をさせていただきましたけれども、参考資料2で、AIと著作権に関する関係者ネットワーク(仮称)についてという資料をお配りしております。この一連の議論の過程の中で、双方、権利者サイド、それから事業者サイド、そして恐らく利用者に当たる方々もだと思うんですけれども、なかなか知識基盤というんですか、このレベル合わせができていないというところもございました。法律の解釈で全てを解決するというのは非常に難しい分野もございますので、このネットワークを通じまして、当事者間の適切なコミュニケーションが図られることを進めていきたいというふうに思っております。

2ポツのところに目的を書かせていただいておりますけれども、事業者とクリエイター双方のより正確な理解を促進する観点から、例えば、AI技術についての共通理解の促進、それから、AI学習のための著作物等のライセンスの実施状況の共有、それから海賊版サイトの可視化、こういったことを情報共有することで相互理解が促進されていくことで、この先の在り方を議論する上でも信頼関係が構築されていくのではないかというふうに考えておりまして、文化庁としても皆様の懸念というものに、こういう場も使いながら少しずつ向き合っていきたいというふうに考えております。現在準備を進めているところでございまして、4月中をめどにできれば第1回を開催したいというふうに考えております。

以上でございます。

【茶園分科会長】

よろしいでしょうか。

では、これで議事(1)は終了とさせていただきまして、議事(2)に移りたいと思います。議事(2)は、使用料部会及び各小委員会の審議経過についてでございます。今期最後の著作権分科会ですので、使用料部会及び各小委員会について、それぞれの主査より御報告をいただきたいと思います。

それでは、まず、使用料部会の審議経過につきまして、使用料部会の部会長でいらっしゃいます髙部委員から御説明をお願いいたします。

【髙部委員】

使用料部会長の髙部でございます。

使用料部会における審議の経過につきまして御報告をいたします。資料2を見ていただきますと、今期の使用料部会におきまして、著作権法に基づく文化庁長官による文化審議会への諮問事項である、著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額について審議をいたしました。裁定申請に基づく諮問に関して計5回の審議を行いまして、表のとおりでございますけれども、合計の件数が76件、著作物等の数が1,766点、補償金の総額1,745万2,204円につきまして議決を行いました。

また、関連いたしまして、インボイス制度施行後の裁定補償金額等における消費税相当分の取扱いについても意見交換を行いました。当面、従前どおり、消費税相当分を含んで裁定補償金額等を算定すべき旨の方針を確認いたしました。

以上でございます。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。

ただいま御説明いただきました部分につきまして、御質問、御意見等がございましたら、お願いいたします。

よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。

続きまして、政策小委員会の審議経過につきまして、政策小委員会の主査でいらっしゃいます太田委員から御説明をお願いいたします。

【太田委員】

分かりました。政策小委員会主査の太田でございます。僣越ながら私のほうから説明させていただきます。

資料3を御覧ください。資料3で、政策小委員会における審議の経過について御報告いたします。

今期の政策小委員会は、第1回の本分科会決定を踏まえまして、以下の2つ。第1が、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策。2つ目が、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方、この2つを主な検討課題として審議を行ってまいりました。

政策小委員会におきましては、これらの検討課題についての論点を整理した上で、音楽に関する著作権者、著作隣接権者、インターネット上の著作権等侵害に関する関係者、デジタルプラットフォームサービス事業者等からのヒアリング、対価還元の仕組みに係る諸外国の状況や国民意識に関する調査研究の報告等を踏まえて審議を行ってまいりました。

次期本小委員会におきましても、引き続き、論点の検討をさらに深めていく必要があると考えております。

審議経過の詳細につきましては、事務局より説明をお願いいたします。

【渡邉著作物流通推進室長】

事務局でございます。

それでは、引き続きまして、資料の3を御確認いただければと思います。

「2.審議状況について」、(1)DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策についてからでございます。

本件につきましては、令和3年7月、文部科学大臣から文化審議会に対しまして諮問が行われまして、令和4年度までは、実態調査結果の報告でありますとか、EUのDSM著作権指令の動向に関する報告等を踏まえて議論を行ってきたところでございます。

今期の本小委員会におきましては、特に、デジタルプラットフォームサービスにおけるコンテンツ利用への移行が進んでおり、かつ、その中で、様々な課題が指摘をされている音楽分野を念頭に置きつつ、論点の検討を進めることとしたところでございます。

また、従前のコンテンツ流通を前提に構築をされてきた対価還元の仕組みにつきましても、その在り方を捉え直す必要性を確認したところでございます。

次に、(i)DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る論点についてでございます。詳細は別添資料1のとおりでございますけれども、取引の透明性、対価の妥当性・公平性、適切な競争関係という3つの視点から論点を整理しまして、先ほど主査からお話のあったとおり、関係者からのヒアリングを行い、議論を行ってきたところでございます。

2ページ目を御覧いただければと思います。

まず、音楽に係る著作権の著作権等管理事業者からは、著作権等管理事業者とデジタルプラットフォームサービス事業者が行う包括的利用許諾契約及びこれに伴う秘密保持契約の内容に係る権利者に対する説明状況の違いなどについて、お話を伺ったところでございます。

著作隣接権者の団体からは、デジタルプラットフォームサービス事業者を一定の要件の下で著作物の利用主体とみなすことに対する肯定的な意見でありますとか、権利者間における分配の公平性について、その背景や実態などにつきまして、お話を伺ったところでございます。

上野委員からは、DSM著作権指令における取引の透明性、対価の妥当性・公平性に関する規定の背景や正当化根拠、また、現在の著作権法の検討過程を踏まえた課題と展望についてお話を伺ったところでございます。

また、デジタルプラットフォームサービス上での著作権侵害に係る課題も、契約に基づく対価還元と表裏をなすものとして踏まえつつ検討することとし、海賊版対策の関係者からも、デジタルプラットフォームサービス上での著作権侵害の特殊性も踏まえて、どのような対応が考えられるかなどについて、お話を伺ったところでございます。

また、デジタルプラットフォームサービス事業者からも、各論点についてデジタルプラットフォームサービス事業者としての考えを聞いたというところでございます。

次に、(ⅱ)関連する諸制度の在り方についてということで、本小委員会では、検討課題に関連する制度といたしまして、私的録音録画補償金制度及びレコード演奏・伝達権について取り上げて審議を行ったところでございます。

それぞれの制度につきまして、現状でありますとか利用者の意向、社会的な理解、国際的な著作権制度との調和などを踏まえて検討する必要性を確認し、具体的には諸外国の状況でありますとか国民意識に関する調査研究の報告、実態調査の報告などを聴取しながら議論を行ったというところでございます。

3ページ目、御覧いただければと思います。(2)著作権保護に向けた国際的な対応の在り方についてでございます。

本件に関しましては、WIPOの動向でありますとか、WIPOの委員会で示されました放送条約の議長テキストなどの報告を受け、特に放送条約への対応の在り方につきましては「放送条約の検討に関するワーキングチーム」を設置し、受益者の範囲及び保護対象としてのインターネット送信の留保の必要性などに関して、我が国としてどのような方針を取り得るか、議論し、検討を行ったところでございます。詳細につきましては、別添資料2をつけてございます。

加えまして、関係者から、海賊版の被害実態や団体等による取組及び課題などについてヒアリングを行いまして、先ほど申し上げましたデジタルプラットフォームサービス上での著作権侵害への対応の在り方も含めまして、各論点について審議を行ったというようになってございます。

私からは以上でございます。

【茶園分科会長】

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま御説明いただきました部分につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。

続きまして、法制度小委員会の審議経過につきまして、法制度小委員会の主査である私から、資料4に基づきまして、御説明させていただきます。

まず、「1.はじめに」ですけれども、今期は、本分科会の決定を踏まえまして、次の2つの課題について検討を行ってまいりました。1つ目は、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る法制度についてでございまして、2つ目は、生成AIと著作権に関する論点整理についてでございます。

続いて、「2.課題の審議状況」です。(1)DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に関する法制度についてにつきましては、令和5年の著作権法改正によって導入されることになりました新たな裁定制度における、いわゆるアウトオブコマースの取扱いにつきまして議論いたしまして、過去に公表された時点において示されている複製禁止・転載禁止といったような記載をもって、一律に対象外とすることのないように取り扱うことといたしまして、新たな裁定制度の対象となり得る範囲を明確化いたしました。(2)生成AIと著作権に関する論点整理についてにつきましては、AIと著作権について、クリエイターの懸念の払拭や、AIサービス事業者やAIサービス利用者の著作権侵害リスクを最小化するように論点を整理した上、考え方を明らかにするべく検討を行いまして、「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめました。

この考え方の内容につきましては、先ほどの議事(1)における報告のとおりとなります。そのほかでは、3ページには、小委員会の開催状況、4ページには、委員名簿を記載しております。

法制度小委員会の審議経過については、以上でございまして、今、御説明いただきました部分につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

では、喜入委員、お願いいたします。

【喜入委員】

ありがとうございました。

私のほうで気になったのは、この新たな裁定制度でのアウトオブコマースということなんですけれども、過去に公表された時点で示されている複製禁止・転載禁止の記載をもって、一律に未管理公表著作物等の対象外となることがないようというところなんですが、この文化庁長官の定めを行うということをもう少し細かくというか、どういう手続になるのか教えていただければと思います。

【茶園分科会長】

事務局よろしいでしょうか。お願いします。

【持永著作権課課長補佐】

こちらは文化庁長官告示で具体的に定めることとしております。内容について、少しお待ちください。

【三輪著作権課著作権調査官】

事務局でございます。

条文としては、今般の令和5年の著作権法改正におきまして導入されました新たな裁定制度に係ります著作権法67条の3、こちらにおきまして、この制度の対象になります未管理公表著作物等というものが第2号で定められておりますけれども、こちらにおきまして、文化庁長官が定める方法により、当該公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であって、文化庁長官が定めるものの公表がされているものというような規定がされております。今後、この内容を定めるにおきましては、文化庁長官の告示の形で定めることになりますので、こちらの告示におきまして、先ほど申し上げたようなアウトオブコマース等を考慮した上で定めを行っていくということになるということでございます。

具体的には、こちらの審議経過報告の資料につけておりますけれども、1ページ目の(1)、また以下のところでございますけれども、著作権法31条7項の規定によって、国会図書館が図書館等に対して自動公衆送信を行う対象となる絶版等資料、また、著作権法67条、現行の著作権者不明等の場合における裁定制度、こちらにおいて過去に使用されたことがある著作物でありまして、その後に権利者が判明していないもの、こういったものを対象として定めていくことを想定しております。

以上でございます。

【喜入委員】

分かりました。つまり、この文化庁長官の定めという話は、この下の文章につながっているということですね。

【三輪著作権課著作権調査官】

御理解のとおりかと思います。

【喜入委員】

分かりました。ありがとうございました。

【茶園分科会長】

ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。

その他、全体を通して何かございますでしょうか。では、どうもありがとうございました。

本日は、今期最後の著作権分科会ということでございますので、私から一言御挨拶を申し上げたいと思います。皆様、本日も活発な御議論、どうもありがとうございました。今期における著作権法に関する最大の問題は、先ほども御議論いただきましたAIと著作権の関係であったと思います。

著作権法では、これまでも新たに発展してきた技術にどのように対応するかということが大きな問題となってまいりました。むしろ、著作権法の歴史とは、新技術への対応と言うことができるかと思います。AIに関しましては、急速に発展し、また、先ほどもありましたが、裁判例や、あるいはそれぞれの学会等における議論が十分でない中で、緊急に問題への対応が迫られてきたということでございまして、多くの関係者が抱いている懸念を払拭するために、法制度小委員会におきまして、先ほどこの著作権分科会でも御議論いただきました「考え方」が取りまとめられたということでございます。

法制度小委員会の一委員として、私は、取りまとめられた「考え方」が、多くの方が抱いている懸念の払拭に大きく役立ったのではないかと思います。懸念が払拭されたと言いましても、それで全ての人が何の心配もなく安心しているということではもちろんございませんで、先ほども御議論いただきましたように、現時点においても、「考え方」に書かれたことに対して、疑問や反対もあるでしょう。また、先ほどは、今後のことについて多くの御意見をいただきました。つまり、懸念の払拭といいましても、全く問題がなくなったというわけでは決してございません。

しかしながら、何かの問題の議論をする際には、現状はこのようなものであるということについて、それに賛成するか反対するかは別にして、多くの人がある程度の共通理解を持たないと、なかなか建設的な議論はできないと思います。今回、この「考え方」は、少なくとも一定の共通理解を多くの関係者が持ってもらうことに、大きく貢献できたのではないかと考えております。その取りまとめに御尽力いただきました法制度小委員会の委員の方々、また、先ほど御議論いただきました、この著作権分科会の委員の方々に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

最後に、合田文化庁次長からも一言御挨拶をいただければと思います。合田次長、よろしくお願いいたします。

【合田文化庁次長】

失礼いたします。文化庁次長の合田でございます。今期の著作権分科会を終えるに際しまして、一言お礼を申し上げたいというふうに思っております。

今期は主に、先ほど来お話がございましたように、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策、あるいは著作権保護に向けた国際的な動向の在り方や法制度、そして、まさに今日もAIと著作権に関する考え方について御議論いただいたところでございます。それぞれ、大変社会的関心が高い事柄でございまして、この著作権分科会や著作権分科会の下にあります委員会も多くの方々が傍聴なさり、それから実は本日、午後一番からだったのでございますが、参議院の文教科学委員会におきましても、与党の先生方が御自分の持ち時間のほとんどをAIと著作権の問題について議論をいただいたところでございます。

私から答弁を申し上げたところでございますが、その中でも、この考え方の周知・共有をどうしていくのか、30条の4の解釈の問題、依拠性の問題、籾井のほうから申し上げました今後のコミュニケーションの場の創設の問題、それから、先ほど御議論がありました、昨年の法改正に関するアウトオブコマースの問題も、参議院の文教科学委員会で議論がなされたところでございまして、まさにこの分科会の先生方の御議論が、立法府も含めて、大きな議論の土俵をつくっていただいたと考えているところでございます。

本日、それぞれの小委員会からの審議の経過等の報告がございましたけれども、審議に際しましては、大変活発な御審議を賜りました。また、多くの関係者の皆さんからヒアリングをしていただきまして、審議事項について幅広く重要な御示唆を頂戴することができました。委員の先生方あるいはヒアリングに御対応いただきました皆様方に、この場をお借りしまして深くお礼を申し上げたいというふうに思っております。本当にありがとうございました。

先生方に申し上げるまでもなく、社会の変化や技術の進展に伴う著作権施策や制度の検討におきましては、著作権者等の権利・利益の保護と、著作物等の公正・円滑な利用のバランスを図り、文化・芸術の発展につなげていくことが必要かと思っております。この検討を大変フルーツフルな御議論を経てお取りまとめいただいたことにつきまして、著作権分科会の委員の皆様方に改めて感謝を申し上げますとともに、今後とも御協力を賜りますように心からお願いを申し上げまして、私からのお礼の御挨拶とさせていただきます。本当にどうもありがとうございました。

【茶園分科会長】

合田次長、どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、第69回文化審議会著作権分科会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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