文化審議会著作権分科会(第70回)(第24期第1回)

日時:令和6年5月13日(月)
13:00~15:00

場所:日比谷国際ビルコンファレンススクエア(8Ⅾ)
(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
  2. (2)第24期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
  3. (3)小委員会の設置について
  4. (4)その他

3閉会

配布資料

資料1
第24期文化審議会著作権分科会委員名簿(140KB)
資料2
第24期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)(93KB)
資料3
小委員会の設置について(案)(79KB)
参考資料1
文化審議会関連法令等(238KB)
参考資料2
著作権分科会における審議状況と今後の対応(令和6年3月27日文化審議会総会資料2)(110KB)

資料2、資料3について異議なく、案の通り了承されました。

了承された資料については、以下の通りです。

資料2
第24期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(72KB)
資料3
小委員会の設置について(56KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介。

○本分科会の分科会長の選任が行われ、太田委員が分科会長に決定。

○分科会長代理について、太田分科会長より髙部委員を指名。

○会議の公開について運営規則等の確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【太田分科会長】

お待ちいただき、ありがとうございます。準備が整いました。傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださるようお願いいたします。

では、改めて御紹介させていただきますが、先ほど分科会長の選出が行われました。その結果、分科会長に私、太田が就任することとなりました。また、分科会長代理として髙部委員を指名させていただきましたので、御報告申し上げます。

私として、先ほど申し上げましたが、自信は全くないのではございますけど、皆様方の活発な御議論によって実のある成果を上げる会にしていきたいと存じます。

本日は、今期最初の著作権分科会となりますので、議事に先立ちまして中原文化戦略官から一言御挨拶をいただきたいと思います。お願いします。

【中原文化戦略官】

中原でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。今期の著作権分科会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げさせていただきたいと存じます。

委員の先生方におかれましては、日頃より、著作権施策の検討実施に当たりまして、御協力あるいは御尽力、御指導をいただいておりますところ、このたびは、御多用の中、著作権分科会の委員をお引受けいただきまして、本当にありがとうございます。

今期の著作権分科会におきましては、令和3年に文科大臣から諮問された「デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」に関しまして、昨年度に引き続き、デジタル時代に対応した適切な対価還元の方策などについて御議論をいただきたいと考えております。

近年、コンテンツ産業が我が国の産業の中で大きな役割を果たしておりまして、数字のレベルでも、鉄鋼産業を超え、半導体産業に迫る勢いだというのがコンテンツ産業の輸出という状況でございます。

こうした中、コンテンツ創作の担い手であるクリエーターの皆様の支援が重視される中にあって、クリエーターの権利保護や適切な対価還元、対価を還元する観点など、著作権の重要性はますます高まっているところでございます。

技術の急速な進展など、社会の変化が激しい時代ではありますけれども、様々な新しいサービスの登場によりまして、従来見られなかったコンテンツ流通の形態が見られるところでもあり、それらに関する著作権をめぐる課題に対応することが社会から強く要請されていると認識をしております。

著作権制度、そしてその政策につきましては、今までも社会の変化に合わせまして少しずつ姿を変えてまいりましたけれども、新しい時代におきましても、権利の保護と、それから適切な利用のバランスというものを取ることで、文化の発展につながる創作の好循環といったものを生み出せるよう、国際的なハーモナイゼーションの観点も踏まえながら検討が行われるということ、そうしたことが重要であると望んでいるところでございます。

委員の先生方におかれましては、それぞれ御専門の立場から、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度、あるいは施策の課題について、精力的な御議論を頂戴したいと存じます。

私からの御挨拶は以上でございます。今年度も何とぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございました。

それでは、ここで報道関係者の方々がもしいらっしゃるようでしたら御退出をお願いできればと思います。

(報道関係者退場)

【太田分科会長】

次に、議事2の今期の著作権分科会における主な検討課題と議事3の小委員会の設置に入りたいと思います。

今期の主な検討課題、案としてお示しておりますが、小委員会の設置、こちらも案として提示しておりますが、これらに関する資料等を事務局に準備していただいておりますので、事務局のほうから御説明をお願いできますでしょうか。

【持永著作権課課長補佐】

事務局でございます。では、資料2と資料3につきまして説明いたします。

資料2では今期の検討課題について記載させていただいております。審議事項1では、23期からの継続審議事項であるDX時代に対応した適切な対価還元、また著作権法制度に関すること、著作権保護に向けた国際的対応、審議事項2では、裁定に係る補償金の額についてなどを案として示させていただいております。

今期は、今年の知的財産推進計画等も策定される前ですので、そういった計画が策定された後、仮に現在の内容でカバーできない点が出てきましたら、分科会長とも御相談の上、追加の審議事項の案を御提示させていただければと思いますが、現時点ではこちらの案とさせていただいております。

また、この検討課題に関連しまして、資料3を御覧いただければと思います。資料3は今期の小委員会の設置についてです。

小委員会につきましては、著作権分科会運営規則に基づきまして、同規則において置くこととされている使用料部会のほかに、分科会長は、特定の事項を審議するため、必要があると認めるときは分科会に小委員会を置くことができるとされております。

今期につきましては、先ほど御説明した資料2の審議事項に対応した著作権関連の基本政策及び国際的な課題に関することを審議する政策小委員会を設置することを案として示させていただいております。

なお、小委員会の構成につきましては、こちらの資料の3ポツに記載しておりますとおり、分科会長の指名となります。

事務局からの説明は以上となります。

【太田分科会長】

ありがとうございました。

ただいまの事務局の説明を踏まえ、小委員会の設置につきましては、資料3のとおり、分科会の決定とさせていただきます。

それでは、今期の分科会の第1回ということで、先ほどの事務局からの説明にあった検討課題も参考にしつつ、出席委員の全員から御発言をいただき、審議を始めたいと思います。構成員の皆様全員から御意見を頂戴したいと思います。お名前の五十音順で指名させていただきますので、1人当たり二、三分で簡潔に御発言をお願いします。

それでは、まず、あんびる委員、お願いいたします。

【あんびる委員】

ありがとうございます。私、日本美術著作権連合の理事長をしておりますあんびると申します。どうぞよろしくお願いいたします。

昨年に引き続きましてこの委員をお引受けしたわけなんですけれども、昨年もあいうえお順でということで私が一番初めに述べさせていただいて随分見当外れなことを申し上げて恥ずかしい思いをいたしましたが、今年もそうなるかもしれませんが、少しお話のお時間をいただきたいと思います。

私ども美術分野としましては、今関心がございますのは、DX時代ということで、AIについて、AIの社会的に公正なAIとは何かということについて、各分野の皆様と情報を共有して、何が公正なのかということについて一緒に話し合っていきたいなというのを希望しております。

それと同時に、先ほど中原審議官からもございましたが、権利者への対価還元につきましては、今、様々な補償金におきまして権利者への対価還元が進められているところでございます。その中におきまして、権利者情報の把握というのを私どもでは真剣に取り組んでおりますが、それをますます進めていく上に当たりまして、皆様の御協力と御理解をいただきたいと思っております。

私ども美術分野には2つの側面がございまして、1つは、出版美術、書籍やネット等に描いている、絵を描くということで、印税とか、そういったもので生活をしている出版美術家という人たちがおります。私もその1人です。

そういった出版美術家につきましては、権利者把握という意味もあるんですが、作品の直近への氏名表示というのを改めて求めていきたいなと考えております。

もう一つの側面としましては、ファインアート、純粋技術という言い方もあるんですけれども、日本画や油絵など、制作をしまして、それを販売しているという美術家たちというのもおります。その美術家たちにおきましては、追及権といいまして、絵が転売されるたびに誰かがその利益を得るわけでございますが、その利益が、原画、作品を作製した本人にも還元されることを求めております。

そういった部分が今の美術の業界の状況になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

私からは以上です。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

続きまして、内山隆委員、お願いいたします。

【内山委員】

青山学院の内山でございます。今回は2年続けての2年目になります。時々出たり入ったりしておりましたけれども、今回、2年目、続けてということになります。

私自身、専門は経済学、経営学の人で、法律はないのですけれども、研究対象は、映画とか、放送とか、あるいは今だったら配信とか、いわゆる映像メディアというところが基本的に研究対象になっております。

2年目ということなので、まず対価還元ということでいいますと、まだインターネットがない時代は、例えばハリウッドのようなグローバルプレーヤーがいて、あと、各国ごとに国内メジャーがあって、またインディーがあって、個人があってというような構図がありましたけれども、インターネット時代になって、いきなりGAFAのようなグローバルメジャーとその他という、そういう構図になってきて、その中でいかに適正な対価還元をしていくかというということが世界各国の課題になっておりますし、実際、でも、なかなか情報開示を含めて難しいところもたくさんあるのかなという中で、少しでもこの議論を通して貢献できればなあといった点がございます。

それから、AIの件も去年からの検討課題になっているかと思いますけれども、AIに関しては基本的には利活用推進派の人なので、尻込みする前にまずは使ってみようよと。ただ、使った上で、それを公開するとまたいろいろ難しいことが出てきますけれども、取りあえずまずは使おうよと。そうしないと、またデジタル分野での他国に対する遅れみたいなことが起き得ると思いますので、取りあえずは使ってみようという立ち位置にあります。

日本が実際AIという分野の中で強いのか、弱いのか、まだよく分からないのですけれども、少しずつまた安全に使おうという流れはできつつありますので、何かそういったことも応援できればと思っております。

では、1年間またよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

私は飛ばしたほうがいいんでしょうか。私からもちょっと一言、発言をお願いしたいと思います。先日もニュース報道を見ていると、某国では故人アバターというのが非常に普及しているそうでした。故人というのは亡くなった方ですね。自分の家族とかおじいちゃんとか、亡くなった人の映像とかテキストデータを全部入れてきて、本人そっくりのアバターをつくって、その人と会話をしたりして偲び続けるというサービスが非常に盛んになっているとのことです。被相続人といいますか、亡くなった方の自己決定権とか、遺族のどの範囲の権利保護が必要かとか、大変な問題が生じてきているようです。日本でもそのうちそういうことが起きるかなというようなことをAIに関しては感じています。この分野は本当に進歩が激しくて、予想もしなかったようなサービスや製品・プロダクトがどんどん出てきていて、著作権委員会、分科会も大変な課題が山積だなという気がしております。よろしくお願いいたします。

続きまして、喜入冬子委員、お願いいたします。

【喜入委員】

喜入冬子と申します。よろしくお願いいたします。筑摩書房の社長をしております。書籍出版協会の理事をしておりまして、ここに参加させていただいております。

DX時代に対応してということで、ここ数年、この席に参加させていただいています。本、書籍、出版ということに関していいますと、紙の本という形で固定化された文字で流通させて仕事をしてきた我々から見ると、インターネットの時代になり、さらにAIの時代になってくることによって、様々な情報が利用しやすくなり、手に入りやすくなったことは、クリエーターにとって、もちろん著者にとっていいこともたくさんあるんですけれども、それは一体誰がオリジナルでつくったものなのかがみえにくくなりました。あるいは編集という出版にとってとても大事な作業がありますが、様々な事実のことを組み合わせることによって見えてくるものというのを1つの著作物として出したりとか、そういうことをしているときに、それを組み合わせたこと、著作隣接権的なものになるのかと思うんですけれども、そういうことに対する配慮や対価といったものもますます分かりづらくなってきているなと思って少し危惧をしております。

スピードが速いので、この変化になかなかついていけなく、法制度の対応というのが厳しい中で、ここでどれだけのことができるのか、私がどれだけお役に立てるのかについては甚だ自信のないところではありますが、少なくとも出版というところから見た著作権の問題については、なるべく皆様といろんな意識を共有できればなと思っております。今回もどうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

続きまして、草野絵美委員、お願いいたします。失礼しました。こちらのリストと間違えておりました。楠本靖委員、お願いいたします。

【楠本委員】

日本レコード協会の楠本でございます。今年度よりこちらに参加させていただきます。よろしくお願いいたします。

私のほうからは大きく3つほどお話しいたします。まず1つ目は、昨年のこちらの傘下の小委員会のほうでもヒアリング等で取り上げていただきましたが、レコード演奏・伝達権の検討を進めていただきたいということでございます。具体的には、レストラン、パブ、それから公共施設等で音楽が利用された場合に、著作権者にはこちらの対価を受け取る権利が付与されているわけですが、実演家さんですとか我々レコード製作者にはこちらの権利がまだ付与されておりません。お隣の中国、韓国等でも既にこの権利が導入されておりまして、いよいよアジアでこの権利がないのは日本だけになっております。こちらの権利化に向けた検討を進めていただきたいというのが1つ目でございます。

また2つ目は、こちらも小委員会のほうで最後のほうでヒアリングがございましたが、バリューギャップという題目の中で語られておりましたが、ビッグプラットフォーマーに対しての我々の要望としては、EU等で先行されておりますとおり、インターネット上の違法アップロード等、違法なコンテンツがインターネット上にある場合に、私どもはそれを探索して、削除要請というものを常に行っております。こちら10年ぐらいやっておるわけですが、通知を出してテークダウン、落としてもらうだけなんですけど、当然1時間もたたないうちにですとか翌日には同じものが、あるいはそれ以上のものがアップロードされるという環境はいまだに変わっておりません。

ですので、この辺りは、ステイダウン、すなわち、一度権利者側から削除要請が出たものに関しては上がらないような努力をビッグプラットフォーマー側には求めたいというところが2つ目のところでございます。

それから3つ目は、私的録画補償金の範囲として、ブルーレイディスク及びそのレコーダーが追加になっております。そこから実際補償金の額の決定ですとか、それから徴収といったものが約2年たった今でも始まっていないという状況がございます。こちらをどうにか早いタイミングで決着をつけて、ぜひこの辺りはこちらに出席の皆様方や行政庁の皆様の力を借りて、早い段階での補償金額の決定、そして徴収といったものへつなげていきたいということをこちらで申し述べさせていただきます。

以上でございます。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

続きまして、オンラインで参加していただいております河野康子委員、お願いいたします。

【河野委員】

皆さん、こんにちは。日本消費者協会の河野と申します。本日はオンラインの参加で失礼いたします。

私は消費者団体に所属しておりまして、世の中に出てくる多様な著作物に対して対価を支払って、また、無償で鑑賞し、その恩恵を享受させていただく立場にございます。

著作権分科会にはここ数年所属させていただいておりまして、今現在、我が国の著作権に関する様々な課題についてはいろいろ勉強させていただいておりますので、一通りの知識、それから知見は持ち合わせていると思っております。

ただ、なかなか、特にこの間は、海賊版問題ですとか、バリューギャップ問題、こういったもの、いわゆる不正に関わるような部分ですとか、それから不公平に関わるような部分に関してはしっかりと対応策を取っていく方向性にはあるんですけれども、そもそも著作権に対する我が国の国民全体のリテラシーというところが果たして十分なのかどうかというのはいつも感じているところです。本当にコンテンツ産業は将来がとても嘱望されていますし、それから、若い世代にとっても、こういったデジタルツールの活用ですとか、プログラミングなど、教育課程における活用などもとても期待できるものだと思いますけれども、技術を使うためには、当然のことながら必要な知識やルールがあるんだというところ、そういったものをしっかりと備えた上で活用していくんだというところに改めて目を向けて、周知、広報活動にも力を入れていっていただければと思いますし、消費者団体としても、つい忘れがちな著作権という大きな権利に対して、しっかりと学び、受け入れる素地をつくっていきたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

引き続きまして、佐藤正弥委員、お願いいたします。

【佐藤委員】

経団連の佐藤でございます。お蔭様で、わが国のコンテンツ振興につきましては、様々なところで高い関心を持っていただき、基幹産業の一つとして位置付けていく方向での議論も進み始めているものと存じます。経済界としましては、引き続き、こうした流れを維持・強化してまいりたいと思っております。

これら点を踏まえて、いくつか意見を申し上げます。1つ目は人材育成です。コンテンツの競争力の源泉は、クリエイターの方々によるものと存じます。こうした方々に支えられているコンテンツ産業を、わが国の基幹産業の一つと位置づけ、持続的な成長を通じてマーケット全体を拡大させていくためにも、クリエイターの創作活動が適正に評価され、適正な対価が得られる環境整備が重要だと思っております。

その際、公正な取引環境を整備していくことも大切であると考えております。とりわけ若い人たちがコンテンツ産業に挑戦したいという希望を叶えていくためには、適正な契約関係の構築や、関係する法令遵守、労働環境の整備等が重要と存じます。こうした中、今期の議論におきましても、クリエイターの権利保護とコンテンツの利活用の円滑化について、両者のバランスを取りながら、グローバルな視点での課題への対応を含めたものとなることを期待しております。

これに関連して、海外動向の把握とその対応は、引き続き、重要であると存じます。AIをはじめとした技術の進展は早く、そのための環境整備に関する議論等も海外で進んでおりますので、その動向を的確に把握しつつ、状況が変化した場合には、関係省庁を含め、タイムリーなご議論をお願いしたいと思います。

さらに、昨年ご尽力いただいた「AIと著作権の考え方」に関しましては、引き続き、経済界としても高い関心を持っているところであります。状況変化に応じて、関係企業や業界の意見を踏まえたご対応をお願いしたいと存じます。

私からは以上です。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

では、島並良委員、お願いします。

【島並委員】

島並と申します。神戸大学で著作権法を含む知的財産法の研究と教育に携わっております。前期は法制度小委員会でAIをめぐる議論に参加させていただきまして、今期からこちらに加えていただくこととなりました。

昨年度法制小委でまとめられた「AIと著作権に関する考え方」は、あくまで現行の法制度及び現在のAI技術を前提に現時点での一般的な考え方を示すことでルールの透明化と周知を図ったものと了解しておりますので、今後、この「考え方」を踏まえて、さらに、日々進化するAI技術に適した立法的な対応の在り方について情報共有と意見交換をさせていただければと存じます。

また、前期政策小委におきまして今後の継続課題とされた事項のうち、私的録音録画補償金制度及びレコード演奏・伝達権についても、理論上・実践上の関心を持っておりますので、適切な対価還元と国際的な制度調和の両面から御議論させていただければと願っております。

最後に、近年、著作権法の規定は全体としてかなり詳細かつ複雑、怪奇とまでは申しませんが、相当複雑なものとなっておりまして、専門家でないと、あるいは専門家であっても、にわかには分かりにくい状況にあります。社会一般の利害に広く関わるようになった著作権法の平易化、簡素化、さらには著作権思想の普及やリテラシー教育についても微力ながら貢献できればと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、鈴木薫委員、お願いいたします。

【鈴木委員】

NHK知財センターの鈴木薫と申します。今回から新たに委員として参加させていただいております。

NHKの知財センターには、著作権・契約部とアーカイブス部という2つの部があります。著作権・契約部では番組制作時の権利クリアの支援だとか、権利者団体の皆様との契約等の窓口等をさせていただいておりまして、アーカイブス部のほうでは、放送した番組の保存だとか、付随する各種データの整備、またアーカイブスを活用した番組の制作とか、ホームページやSNS展開、視聴者の皆様への映像資産の還元といった視点も持ちながら業務をしております。

今、まさに国会で放送法の改正案が審議されておりまして、NHKのインターネットの本来業務化なども含まれておりますけれども、放送業界を取り巻く状況だとかが変わって次のフェーズに進んでいくことと思っております。

権利の保護と適切な流通のバランスというお話が先ほど来出ておりますけれども、この場で皆様と意見を交わしながら、最新の状況に触れられることを大変心強く思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、髙部眞規子委員、お願いいたします。

【髙部分科会長代理】

髙部でございます。この分科会には昨年から参加をさせていただいておりまして、昨年とそれからその前の年は使用料部会のほうに所属させていただいておりました。

私は40年ほど裁判官を務めておりまして、知的財産権訴訟を長く担当したのですけれども、そういった意味で、著作権侵害というのは裁判の場でどうなるのかということばかりやってまいりました。3年ほど前に退官をして弁護士になりまして、訴訟前の問題、あるいは契約ですとか、様々な相談などもございます。最近はAIの問題で著作権分科会法制度小委員会、昨年、大変立派な考え方をまとめていただきましたけれども、著作権法というものが、DX化とそれから国際化、グローバル化に伴って非常に難しい問題をたくさん抱えてきていると思っています。裁判官であったということもありまして、やはり権利者の保護、権利の保護と、それから利用者の側がきちんと予測可能性を持って行動ができるような状況が必要だと思っております。

先ほど分科会長代理ということで御指名いただきましたので、精いっぱい努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、竹内敏委員、お願いいたします。

【竹内委員】

日本新聞協会の竹内と申します。年度の初めに当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

生成AIと著作権をめぐる諸課題については、昨年度の御審議において一定の取りまとめを得たわけでありますけれども、報告の結びに中長期的な議論の継続が必要と述べられていますとおり、またAIの技術的な進化のスピードが大変速いだけに、不断の検証作業と今後の法改正も含めた検討を続けていくべきテーマであると考えます。

繰り返しとなりますけれども、記事の価値や効用にフリーライドするような利用についてはきちんとした歯止めが必要だと考えます。記事に表現された内容、知識、情報は、新聞記事という著作物の性格上、その核心部分でありまして、それらを学習しようというのは記事の本来的な利用であり、基本的に許諾を得てくださいという立場です。

また、生成段階におきましても、単純な言い換えですとか要約などによって元記事に置き換わってしまうようなアウトプット、結果としてコンテンツ提供サービスとなってしまうような実態が独り歩きしてしまうことになお強い懸念を覚えております。

一方で、AI技術の健全な発展のために解析用記事データのニーズの把握ですとかライセンスに向けた対話環境の整備にも取り組んでいければと思います。

もう1点、47条の5についてもコメントいたします。旧47条の6を引き継いで、これも平成30年改正で生まれた条文ですけれども、所在検索とか情報解析などに伴う結果の提供に付随して、軽微であれば利用できるとした点についてでございます。公正取引委員会が昨年の9月でしたか、まとめた報告書にもありましたけれども、プラットフォーム上で閲覧される報道コンテンツについて、元記事にアクセスしないことが「よくある」「どちらかといえばある」が合わせて8割を占めていましたとおり、ニュースはプラットフォームサービスの上での見出しだけで相当程度消費されてしまっているという実態がございます。案内看板を見て大半のお客様が帰ってしまう。けれども、ページビューというお金は看板の設置者にだけ落ちるという構造は、強調スニペットとかリッチスニペットといった表示の仕様でありますとか、いわゆるユーザーの「タイパ重視」の傾向でさらに強まっているようにも感じるところです。

公取の報告書は、報道コンテンツの消費の実態に光を当てつつ、見出しやスニペットに対する対価性ですとかプラットフォーム事業者との関係において、競争法の視点から眺めた課題などに言及しておりまして、興味深いものでした。

著作権法に立ち戻って言えば、何をもって軽微とするのか。ただし書の不当に害するとはどんなケースなのか、海外の法制度ですとか事業者間の取引動向なども踏まえつつ引き続き議論させていただければ幸いです。

本年度もどうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

続きまして、棚井文雄委員、お願いいたします。

【棚井委員】

日本写真著作権協会で常務理事をしております棚井文雄です。昨年度から継続して委員をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

当会は日本の主要な11の写真団体を会員とし、写真著作権の啓発と写真作品の適正な利用を図るべく活動をしております。美術館や大学の芸術学部、また写真専門学校での講義、そして写真愛好家などに向けたセミナーを年に5、6回、全国で開催しています。

その中で最近聞こえてくるのが、生成AIと著作権についてのセミナーを開催してほしいという要望です。写真家、写真愛好家の方々は、現在の日本のAIに関する著作権法には若干不安を抱いているようで、その辺をしっかりと説明してほしい、我々写真家・写真愛好家はどんな対策をすれば良いのかという質問が来ており、この春から当協会主催による生成AIと著作権に関するセミナーを開催していくことを決めています。

また、先ほどお話にありました著作権者不明の件ですが、写真分野は、著作者あるいは著作権者が不明

となっているケースがたくさん見受けられます。これは現在SARTRASの補償金を分配する上で大変困っていることでもあります。当会は約2万人の写真家の情報を持っておりますが、最近新たに1万人の写真家の情報を入手し、重複がないか確認しております。今後このような動きを含めて、アウトサイダー、また著作権を継承する御家族がいらっしゃらない写真家への対応も進めているところです。

追及権についてですが、写真界の場合、日本と欧米とは少し異なりがありまして、欧米の写真家はエージェンシーあるいはギャラリーと契約することで仕事を受注したり、アーティストが作品を制作しています。日本の場合は組織に所属している方、あるいはフリーで活動している方が多く、日本の写真界に追及権というものがどのように当てはめられるのか、しっかりと検証していきたいと思います。

AIの問題を含めまして、これから写真家たちと様々な議論をしていきますので、その内容について皆様と情報共有をさせていただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

よろしくお願いいたします。

次に、オンライン参加の田村善之委員、お願いいたします。

【田村委員】

東京大学で知的財産法を教えております田村善之と申します。昨年から著作権法学会の会長も務めております。

DX時代の著作権が抱える問題は様々ありますけれども、全てもとを正していくと、その根源にあるのは、利用者が多数、権利者も多数、さらには、創作はされているかもしれないけれども、そもそも権利者がいるのかどうかよく分からなくなっているAIによる創作物も多数という、その多数の処理が必要になってくるという状況があると思います。

翻って考えれば、著作権法は17世紀のイギリスに端を発しておりまして、当時は出版業が中心でありました。長い間、複製できる者は、非常に大きな投資をなした人に限られていた時代から、20世紀の中頃からは、誰でも複製ができるようになりました。さらには20世紀末からインターネットによって多数の者が著作物を多数の人に届け出ることができるようになった結果、今のような多数対多数の状況が生じています。

このような状況で、昔であれば少数対少数の中での交渉が可能であった時代にできた排他権中心の著作権をどのように変えていかなければいけないのかということが大きな課題になっているのだとまとめることができます。

そのような中で、今、実は物理的には大量に利用できるようになっている。その利用できるようになっている効率性は維持しながらも、しかし、創作のインセンティブのために、あるいは著作物普及のインセンティブのために、著作権の保護が必要な人たちにどうやって対価を効率的に還元していくのかという制度を設計することが重要だと思います。

1つの方法として、先ほどからも様々な方が御発言されていましたとおり、権利処理の集中処理を図る、データベースの普及・促進を図る、アーカイブをつくるという様々な施策が、この分科会あるいは著作権制度全体で長い間取り組んでいるところであります。

それとともに、そのような法制度を設計し、かつ法解釈をするに当たっては、常に新たな制度が著作物の利用の普及と適正な対価還元の邪魔にならないような効率的な処理ができるのか、大量処理になじむ制度設計になっているのかということを特に重視しながら制度設計していかなければならないかなといつも思っているところでございます。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

続きまして、中川達也委員、お願いいたします。

【中川委員】

弁護士の中川でございます。著作権を中心とする知的財産関連業務やコンテンツ業界に関連する業務を主に取り扱っております。昨年は法制度小委員会に分属しまして、主に生成AIについて検討に加えさせていただきました。社会からの大変強い関心を感じつつ、議論に加わっておりました。

DX時代において、社会と著作権の関わりは大変強まっておりまして、生成AIに限らず、創作者の保護と技術の発展のバランスをいかに図っていくかがますます重要になっていると感じております。私たちの社会がどうあるべきか、何が重要かということについて、私自身、適切なバランス感覚を失わないように常に意識しつつ検討に加わってまいりたいと考えております。

インターネットの普及もあり、著作権については、子供も関わるような場面も増えてきていると感じます。著作権については、一般の方にできるだけ分かりやすくお伝えしていく必要があると感じております。これについては、文化庁さんも含めた広報の側面もあるかもしれませんが、それに加えて、先ほど島並委員からも御発言がありましたけれども、そもそもの著作権法や関連する制度自体が過度に難解にならないということも重要であると考えております。そうした意識も持ちつつ、皆様との検討に加わってまいりたいと考えております。

以上です。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

では、中沢けい委員、お願いいたします。

【中沢委員】

皆様、こんにちは。日本文芸家協会の理事の中沢です。先ほどのお話にもございましたように、著作権はそもそも17世紀に出版から始まった権利の考え方です。ですから、私どもの文芸家協会では著作権についてはよく知っている、また、会員についてもその自覚があると考えがちなのですが、今日ここまでの皆様のお話を聞いていても御理解いただけるように、今まで著作権と関わりのない分野の方が著作権と関わりのある分野に、何ていう言葉で御説明したら適切か私はちょっと判断に迷いますが、異業種参入とか、他業種参入とか、そういう言葉は時々聞きますが、今までとは違う著作権との関連を持っている人々が関わってきているんだということが、今年は大分うちの協会のほうの議論の中でもクローズアップされてきました。改めて、著作権者である現行の書き手にあなたは権利を持っているんですよということをお知らせしなければいけないんじゃないのかという議論を先日の理事会でしたばっかりです。まさかと思われるかもしれませんが、実は、言葉をどうしてもうまく選べないんですけど、例えば何か製品を作っている会社ありますよね。パンツとかシャツとかマスクとか。一々そこに製作者の名前を入れるかというようなことを言われた著作権者がいて、私どもが仰天しているという、こういう状態です。

だから、オリジナルとは何かという問題は、さっき書協の喜入さんからお話がございましたが、オリジナルの制作者には権利があるんだというところから、もう一度著作権に関するリテラシーを上げていかなければここで皆さんがなさっている高度な議論に参入するのは難しいのではないのかなと、この委員会、委員3年目になる私ですが、そういうことを考えているところです。

ここに御参加の皆さんからは、新しい考え方や新しい表現メディア、今まで考えられていなかったようなメディアが登場していますから、そういうものが登場することによって著作権者の基本的な権利はどうなっていっているのかというようなことを教えていただければ、それを文芸家協会の会員の皆様にもお伝えして、著作権に関する権利者側からのリテラシーというのをバージョンアップしていくというんでしょうか、だんだん時代に即応したものに変えていくという努力をしたいなと考えている所存です。

どうぞ皆さん、よろしくいろいろ教えてください。よろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

よろしくお願いいたします。

次に、仁平淳宏委員、お願いいたします。

【仁平委員】

日本ネットクリエイター協会の仁平でございます。よろしくお願いします。

私どもは、いわゆるUGCクリエーターと言われているインターネットで活躍される、音楽をつくったり動画をつくったりする形のサポートをさせていただいている団体なんですが、最初にも御紹介がありましたとおり、今、いわゆるコンテンツ産業というのが日本ではすごく大きくなっているよというお話をいただいて、我々としてもその波に乗るという言い方、正しいのかどうかはあれですけども、UGCのコンテンツの分野でもさらなる発展を続けたいなと思っております。

そういった意味では、私は3つ課題があるんじゃないかなと思っていて、1つは、UGCに対するメインストリームの方たちの誤解みたいなものをこの会議を通じて払拭したいなと思います。

というのは、例えばラジオやテレビをつくられている方、今インターネットでこの曲はやっているんだけど、これ使っていいのかなあ、これもしかしたら著作権違反のいいかげんな楽曲なんじゃないかなというような誤解を持たれている方、いまだにまだ若干いらっしゃるんじゃないかなと思います。ネットで流行っている楽曲で皆さんが知っている楽曲はほとんどJASRACさんなりNexToneさんなりで楽曲、実は管理されているよとか、実は実演家団体にも加盟しているクリエーターさんたくさんいるよとかというのがあるんですけども、なかなかその辺り御理解いただけてない。

あとは、UGC楽曲そのもの、楽曲に限らないんですけど、コンテンツをテレビやラジオのメインストリームのディレクターさんが知る機会、もしくは、これは誰が権利者で、どうやったら使えるのかを知る機会というのがまだまだ足りないと思います。こういったところを改善していくことが、よりUGCの作品が世の中に出ることではないかなと思いますので、まずはその1つを。

2つ目として、1番目に近いんですけども、メインストリームのコンテンツと同じようなルールでUGCのコンテンツもやっぱり管理していただく仕組みをつくってもらいたい。例えば、一番分かりやすいのが、著作隣接権、音楽における著作隣接権の部分なんですけども、メジャーのレコード会社のCDというのは基本的にレコード協会さんなりできちんと原盤の管理もされています。テレビやラジオで使われたときに、それがきちんとどこのレコード会社の何々だよというのが分かるようになっているんですけども、まだまだUGCの楽曲に関しては、その辺を、ちょっと人為的にいろんなことをやらない限り、使われたことがきちんと分からないというのが現状です。この辺りも、多分データベースの仕組みを変えることで解決するんじゃないかなと思いますし、そういったニーズがあるということをぜひこちらにいらっしゃるいろんな先生に御理解いただきたいなと。

3つ目は、やはりAIだと思います。AIに関しては、基本的には新しい技術なので、積極的にこれを使いこなしていこうという流れを阻害してはいけないと思っています。ただ、やはりこれを乱暴に進めることで大抵弱い方たちから傷ついていくんですね。言葉はあれですけど、偉い先生たちのコンテンツがもし何か悪い使い方をされたときには、その人たちと一緒に戦ってくれるいろんな人たちがたくさんいるので、比較的まだいいほうだと思うんですが、我々の周りにいるコンテンツクリエーターさんたちは基本的に弱い立場です。だから、これはAIに限らないんですけども、海賊版云々の中で、基本泣き寝入りをしてしまったり、そもそもどこに問合せしたらいいのか分からなかったりという場合があります。

なので、この辺に関しては、広報という言葉が先ほどから出ていますけども、ぜひ広報の充実というところもこの会議体をきっかけにより大きくなってくれたらいいなと思いますし、その辺に関しては我々も積極的に頑張っていきたいと思います。

そんな感じでちょっと意見を言わせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次はオンライン参加の前田健委員、お願いいたします。

いらっしゃらないのかな。音が出てないようです。画像も出ていないようです。

では、ちょっと飛ばして、前田優子委員、お願いいたします。

【前田(優)委員】

私、日本民間放送連盟の前田と申します。民放連は民間放送事業者の事業者団体でございます。

本日、私から2点ほど発言をさせていただきます。これまで先生方の御発言と重なりますけれども、1つ目は、AIについてでございます。昨年度の法制度小委員会においてAIと著作権に関する考え方を取りまとめていただき、現行法上の生成AIの扱いということだけではなく、現行法ではなかなか対応が難しいという点も浮き彫りになって、こちらのまとめによってAIに関する検討が着実に進んだものと考えております。

今後も、AI技術の発展に伴い様々な課題が顕在化してくると考えておりますので、こうした課題には、法改正も視野に入れて迅速な検討を続けていただきたいと考えております。

また、昨年度の著作権分科会の席で御紹介ございましたAIと著作権に関する関係者ネットワークというのも枠組みもできたと承知しておりますので、こうした枠組みも効果的に活用していくことが重要かと考えております。

もう1点でございますけれども、私的録画補償金制度についてでございます。こちらも先ほど言及ございましたが、2022年にブルーレイが対象機器となりましたけれども、こちらについてはまだ補償金の徴収に至っていないという状況でございまして、権利者側とメーカーの方で協議をしている間にももっとより便利な録画機器が登場しているという状況でございます。

こうした状況は、放送事業者、権利者全体として好ましい状況とは考えておりません。権利者への対価還元の1つでございますので、引き続き重要なテーマであると私どもは考えております。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

よろしくお願いいたします。

前田委員の回線が回復したようでございますので、前田健委員、お願いいたします。

【前田(健)委員】

どうも先ほどは失礼いたしました。神戸大学の前田と申します。私は著作権法はじめとした知的財産法全般を専門としております。昨年は使用料部会のほうに所属しておったんですけれども、こちらの著作権分科会のほうには今回初めての参加となります。

私は研究者として今まで、著作物あるいはコンテンツの利用と流通の円滑化をどのようにして図るのかということに関心を持ってまいりました。創作者に適切な対価を還元して、創作のインセンティブを十分に確保しながら取引の円滑化を図るということは必ずしも簡単なことではないと思っております。既に御指摘がありましたとおり、DXやAIの時代となりまして、非常に多数のプレーヤーが著作権法に関わるという時代になってきております。私はそのような状況から生じる取引費用の問題を解決するためにはどのような仕組みが必要かということに関心を持っております。

従来の前提とは大きく異なる状況が生じてきているということを踏まえつつ、従前の枠組みにとらわれることなく、様々な法制度を比較検討して組み合わせていくことが必要だと考えております。

また、そういった目的を達成するに当たっては、新たな法が求められるのはどのような場合なのか、あるいは現行法の解釈、運用によって対処すべきなのはどのような場合なのか、政府のつくるガイドライン、あるいは司法による裁判例の蓄積にはそれぞれどのような役割が期待されているのかという点も重要かと思っており、この点についてもしっかり議論していく必要があるだろうと考えております。

本分科会では私の今までの研究の経験を生かしまして議論に貢献できればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、丸山ひでみ委員、お願いいたします。

【丸山委員】

日本芸能実演家団体協議会、芸団協と言うと皆さんには分かりやすいかなと思います、芸団協の理事をやっておりまして、芸団協の実演家著作隣接権センター、これはCPRAといます、そこの運営委員をやっております丸山です。よろしくお願いいたします。

私は実演家でして、団体の事を知るまでは本当に実演しかやったことがないと。それも10代の後半からですので、少し多分皆さんと社会人として生きてきた感覚が違うかもしれないのですけれども、まず実演家としてという部分とそれから芸団協の役員であると、運営委員であるということでいきますと、やっぱりDX時代に対応したクリエーターへの適切な対価還元、これを何か毎回言っているような気もするのですけれども、この実現は本当に実演家にとっては重要な問題ですので、こちらはしっかりやっていきたいと思います。

それと、ちょうど1年前ですか、やはりあいさつにAIが出てきて、私、丸山だと結構遅いので、ずーっとAIのお話を聞いていて自分のあいさつの順番になり自分で何を言っていいかよく分からないということがありました。今芸団協CPRAの法制広報委員会では、AIについて、ちょっとずつでもみんなで情報を出し合おうということはしています。しかしそれでも遅れてしまうのです。委員会をやっていても、何をしていても、どんどんやっぱり情報が、自分たちに入った頃にはもう既に物ができているという状態が起きています。その中で、やっぱり自分たちがやったもの、自分たちのものをどうやって、例えば使用料にするのかという考えもあれば、もともと生でやったものが違う形になっていくというものがどういうことなのかなっていくと、今のAIのことでいえば、中をのぞいたからといって私の一部分がありますということが多分言えなくなってきているので、それでそのまま、このままでいいのかということもあって、それを例えば見る人、聞く人は、生で私の舞台を見ますということが、生でなくて、じゃあ、私に似ていても、似ていなくても、そのようなものができたことが当たり前で、生の人間を見ることじゃなくても、それて感動してしまうとかということが果たしていいのかどうかということも含めて、芸団協はたくさんの芸術団体がありますので、特に能楽も含めまして、とても伝統芸能、古典のもので、本当に生が全てだというものもありますので、そこを考えると、AIのこともきっちり考えていかなきゃいけないなと思います。

ただ、AIだけではなくデジタルというものに関して、仲間にはなっていかなきゃいけないと思うんですよ。いつもここに何か言っているうちに形ができてしまうということがありますので、仲間になれるようにということとそれからそこを十分に自分たちで知るようにしながら、でも、何がいいのか悪いのか、見る人たちの気持ちも含めて、行う私たちも含めて考えていかれればいいなと思っておりますので、どうか皆様の御意見をいただいて、芸団協のほうでも多くのことを考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、宮島香澄委員、お願いいたします。

【宮島委員】

日本テレビの解説委員をしております宮島香澄と申します。この会には何年か前から参加をしております。私自身はコンテンツを使う立場でもあり、コンテンツメーカーでもありますけれども、私自身の発言は会社とは関係なく、むしろ、ごく個人として、あるいは比較的長いこと政府の様々な施策に関して関わってきた立場、あるいは一般の人がどういうふうに考えるかという視点で参加させていただいております。

今もう既に出た幾つかの点は私も全く問題意識は同じで、AIや、対価還元、そういったところは重要でこの後も議論が必要だと思います。

その上で特に強調するとすれば、先ほどから何人かがリテラシーの向上が必要だ、あるいは広報が必要だとおっしゃって、まさにそのとおりなんですけど、そこを本当にどうやっていくか、実はすごく深い問題があると思います。

というのは、例えば、AIのこの前の取りまとめは、非常に熱心な議論ですばらしいものをまとめられたと思うんですけれども、じゃあ、あれをちゃんと理解して説明できる人がどのぐらいいるのか。例えば、多分私たちもニュースで取り上げたいと思うんですが、意味するところをちゃんと砕いて3分で説明できる人は多分あまりいなくて、私たちもニュースを出す側として、知らせたほうがいいと思いながらもなかなかそれが実現しないという現状があります。結局専門家の方々が分かっているというところにとどまっているという問題をどうしたらいいのかと思います。

さらに、今では本当に、普通の中学生がYouTubeで出したら、そこでお金稼げる状態なんですけど、この人は業者なのか、教育現場では著作権フリーの扱いがありますので、中学生ぐらいは著作権フリーの感覚を先に持ってしまいます。そこで育つ子供たちに対して必要なことをどう伝えるかというのは結構難しいと思います。

さらに、政府の政策などを反映させるためには教育が必要だ、広報が必要だという話にもちろんなるんですけれども、例えば教育現場で、AIとかこういった著作権のテキストをつくった場合に、テキストが出来上がってみんなの手元に行くときにはもう状況は変わっていることも考えられます。上の世代よりもはるかに早く最先端の状況についていっている若い人たちに対して、どうやったら、向こうが受け取る気があるかないか分からない状態でも、ちゃんとメッセージを打ち込むことができるかというのは本当に簡単ではないと思います。

様々な政策にも、報道にも関わっておりますけど、すごくすばらしい政策ができたところで、実際にその政策が現場ではちゃんと行われてないというケースがとてもたくさんありまして、実現にうまくつなぐということを並行して考えたいと思っております。

以上です。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、吉澤秀男委員、お願いいたします。

【吉澤委員】

コンピュータソフトウエア著作権協会理事の吉澤でございます。私も昨年に引き続き2年目になりますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

当協会は、ゲームソフトやビジネスソフトなどのプログラム他デジタル化された様々な著作物の権利者が加盟しておりまして、当協会員への影響も大きいことから検討の一助になるよう努力してまいりたいと思っております。

当協会からは2点ほどコメントを申し上げたいと思いますけれども、まず昨年度の分科会におきまして、AIと著作権に関する考え方についてがまとめられまして、4月には民間の当事者間における情報の共有等を行うAIと著作権に関する関係者ネットワークも発足しました。その中で、当会員各社には事業として生成AIサービス提供そのものを行うもの、自社コンテンツの制作において生成AIの活用を進めている双方の立場が存在しておりまして、生成AIの活用については、社内でガイドライン等を策定するなど、安心・安全かつ有用に進めているところ、AIの関連技術の進展がすごく速くて、今後も絶え間なく発展していくことが予想されますので、AIと著作権に関係するさらなる変化が適切に捉えられたらいいなと思っています。ぜひこの分科会においても適宜御検討いただけるとありがたいと思います。

2点目につきましては、ゲームソフトについては、プログラム、音楽、映像、キャラクターなども含まれておりまして、主にそれらを2次利用することでビジネスが拡大します。その2次利用については、中には原著作者の許諾を得ずに、制作とか頒布されるものがかなり多くありまして、新裁定制度が適切に運営されるための手続を行う窓口組織において、対象となる著作物が2次著作物であると確実に判断されることが必要となります。

著作物の探索の方法とか、判断基準策定には、権利者や関係者からヒアリングを行うなど十分な検討を行っていただくことを希望したいと思います。

さらには現実として、全ての著作物が検索システムに登録されることはありませんので、データベース上で権利者が判明しなかった場合にそれをどう扱うのかということを、単に不明とすることではなくて、違った形での権利者の探索推奨を十分に検討いただきまして、意思の確認など手順を適切に策定していければと思います。

以上、よろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

次に、吉村文雄委員、お願いいたします。

【吉村委員】

日本映画製作者連盟の理事を務めております東映の吉村と申します。私、昨年に続きましての参加となります。何とぞよろしくお願い申し上げます。

まず、皆様御承知のとおり、映画、劇映画というのは著作権の集合体のようなものでございまして、それが時代に伴って放送があり、それからビデオパッケージ、それから昨今では配信という形で様々なプラットフォームでも利用されるようになるということで、特にクリエーターへの還元という意味においては、各メディアでの展開のたびにいろいろと規則なり、それから話合いを重ねて還元のルールをつくって、基本的には収益から必ずお戻しをするという形で運用してきたということができていると業界としては自負している次第でございます。

ただ、昨今やはり配信プラットフォームが非常に普及するに伴って、なかなかいわゆる映画館で見る映画というものの立ち位置というのがだんだん境界も曖昧になってきているということもありまして、この辺については時代に合わせて柔軟な権利処理という対応が必要ではないかなということを昨今痛感している次第です。

それから、クリエーターへの還元のためにはやはり作品から生み出される収益の確保ということが非常に重要でございまして、昨今特に違法で利用されるケースが非常に多い。皆様も御承知のとおり、CODAとともにファスト映画という事例を摘発して、これは社会的にもニュースになりましたので、こういうことをすると非常にやった当人も、刑事責任も含めて、それから民事的な請求も含めて非常にリスクを負うということを分かっていただけたかなと思うんですけども、ここもちょっとリテラシーの面からすると、こういういわゆる見せしめにするような事例でもないことには収まりがつかないというような状況というのも非常にちょっと危惧されるところであるかなと思っております。

それから、AIに関してですけども、これも皆様御承知のように、昨年ハリウッドにおける制作者のストライキにおいて大きな議題となりました。特に脚本家の方々からAIを安易に使用することについての非常に懸念というものが示されまして、これを受けまして日本でも、日本脚本家連盟様、それからシナリオ作家協会様も同様の宣言を出されているということで、私ども制作者としてもこの点は非常に真摯に受け止めております。

特に制作、クリエーティブの面においては、まだAIを使って積極的にということは、まだ事例もありませんし、そういう形での取組というのは始まってはいないところではありますけれども、ある面でAIというのは、制作の現場においては非常に有効に活用し得る技術でもあると評価をしている部分もございます。先ほど経団連の佐藤様からもありましたけれども、コンテンツ産業と、産業という形で位置づけられる、それからそれを支えるためには人材の育成が必要ということでありますと、やっぱり映画のような実写の制作の現場というのは非常にまだ労働環境としては立ち後れているところが多々ございます。ここに若い方々が集っていただくためには、やはりここの環境面を改善しなきゃいけない。ちょっと著作権とは外れますけれども、AIを活用することで、ここの部分に関してはかなりな軽減ができる、それから環境の改善には努められるということもございますので、制作者の立場としては、AIをクリエーティブの面では慎重に対応しつつ、こういう制作面で寄与できるところに関しては積極的に使っていくというようなことで、立場を分けて使い分けということでありますけれども、AIに関してはそういう向き合いをしていきたいなと思っております。

引き続きAIに関しては非常に映画業界としても注目しておりますので、また今年1年、ここで議論が深まることを期待しております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

【太田分科会長】

よろしくお願いいたします。

早稲田祐美子委員、お願いいたします。

【早稲田委員】

弁護士の早稲田と申します。本年から著作権分科会に参加させていただきます。よろしくお願いします。

私は、こちらの子会である法制度小委員会で、一昨年は簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化、現在は、新たな裁定制度という形で条文化になっているようですが、こちらの議論をさせていただきまして、昨年は、今いろいろと皆さんから議論が出ている「AIと著作権に関する考え方について」を議論をさせていただきました。両方とも、やはりこの時代のコンテンツ、著作物の利用等の問題、それからAIについては、かなり進化した技術におけるコンテンツの利用は今後どうするか、そういう非常に今日的な議論をさせていただきまして、私どもも大変勉強になりました。

先ほど宮島委員がおっしゃっていましたが、AIと著作権に関する考え方について3分で解説できるかというと、大変恐縮ですが、私はできません。あれは本当に読み込んでいただかないと分からないような議論でございますので、法律家としては非常に有益な議論でございますけれども、今後、発展していくAIがどういう形で著作権と向き合うのがいいのかというのは、またその都度検討していかなきゃいけないのかなと思っております。

皆様から出ている意見のとおりなんですけれども、やはりDX時代ということで、先ほど田村委員からもございましたように、非常に量が多いですね。利用者の量も大量になっているし、コンテンツを提供するクリエーターの人たちも大量になっていてというようなところで、かつ、それがAIが出現したということで、大量な処理というところが質を変えるというか、著作権制度を現実的に変えていってしまうのではないかというところも検討課題かなと思っております。

それから、AIと著作権に限らずですけれども、やはり国際的な協調というのが忘れてはならないということで、日本の著作権法だけで完結する問題ではございませんので、これについては、EU、アメリカ等の動きもウオッチしていく必要があるということだと思います。

最後に、今年の分科会のテーマの1つであるDX時代に対応した著作物の利用円滑化、権利保護、適切な対価還元ということですけれども、総論についてはどなたも反対されていないと思っておりますが、各論の実現については、既にいろんな委員からも御発言がありますように、非常に大変な、はっきり言えば利害も対立するようなところもございますけれども、ここをうまくやっていかないと、今後、対価還元がなくて利用もされていかないのであればよいクリエーターが出てこないと思いますので、皆様の御意見を伺いながら議論をさせていただければと思います。どうもありがとうございました。

【太田分科会長】

ありがとうございました。

皆様、ありがとうございました。ここまでの皆様方の御意見を通じて、もし何か補足や御質問等、御発言がございましたらお受けしたいと思います。

【持永著作権課課長補佐】

すいません、事務局からです。先ほど御発言いただいた委員以外に本日御欠席の委員がおりますので、ちょっと先ほど紹介漏れてしまいましたが、この場をお借りして御紹介させていただければと思います。

草野絵美委員と深町徳子委員、渡辺俊幸委員が本日御欠席ですが、この分科会に委員として御参画いただいております。

以上となります。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

少し前後しますが、御意見等を通じて何か補足であるとか、何か御発言がございましたら、お受けしたいと思います。いかがでしょうか。オンラインの先生は挙手ないしはアクションでお願いいたします。

どうもありがとうございます。ございませんようですので、今期の小委員会では、先ほど御議論いただきました今期の著作権分科会における主な検討課題に沿って審議を進めていくこととしたいと思います

なお、著作権分科会におきましては、文化審議会著作権分科会運営規則第2条、これは参考資料1の7ページにございます、この規定により、使用料部会を設置することが決められております。使用料部会と、ただいま、先ほど設置を決定していただきました小委員会に属すべき委員につきましては、文化審議会令第6条第2項、これは参考資料1の3ページにございます、及び、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第2項、これも参考資料1の8ページにございます、これらの規定により、分科会長が指名することとされております。

これらにつきましては、指名の上、事務局を通じて皆様にお知らせさせていただきたいと思います。

その他、全体を通して何か御発言等ございませんでしょうか。お受けしたいと思います。オンラインの先生は挙手またはアクションでお願いいたします。

ありがとうございました。

それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、ほかに特段ございませんようでしたら、本日はここまでとしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】

本日はありがとうございました。次回の著作権分科会につきましては、小委員会における検討状況などを踏まえまして、改めて日程の調整をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【太田分科会長】

ありがとうございます。

それでは、以上をもちまして、第70回文化審議会著作権分科会を終了とさせていただきます。

本日は本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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