文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第7回)

日時:平成26年10月31日(金)
    14:00 ~16:00
場所:東海大学校友会館 阿蘇の間

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービス等と著作権について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第7回)検討事項(案)(163KB)
資料
2-1・2-2
2-3・2-4
榊原委員提出資料
資料2-1(293KB)) 資料2-2(1.3MB))
資料2-3(49KB)) 資料2-4(644KB)
資料3
株式会社ホットリンク提出資料(1.0MB)
資料4
一般社団法人日本書籍出版協会提出資料(104KB)
資料5
一般社団法人日本新聞協会提出資料(135KB)
資料6
一般社団法人日本商品化権協会提出資料(326KB)
参考資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第7回)ヒアリング出席者一覧(40KB)
参考資料2
一般社団法人電子情報技術産業協会提出資料(平成25年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム(第2回)配布資料4-2)(18.3MB)
参考資料3
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第6回)における主な意見概要(案)(107KB)

議事内容

【土肥主査】  それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第7回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますが,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われます。既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第の下半分を御覧ください。資料1としまして,本小委員会の検討事項の案,それから,資料2から6としまして,榊原委員及び各団体等からの御発表資料,それから参考資料1から3としまして,それぞれ議事次第記載の資料をお配りしてございます。
 配付資料は以上でございます。落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入りますが,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)クラウドサービス等と著作権について,(2)その他,以上の2点となります。
 早速,(1)の議事に入りたいと存じます。本課題につきましては,まずロッカー型クラウドサービスについて集中的な議論をしてきたところでございますけれども,前回の本小委におきまして,一定の方向性は見られたと,このように考えております。そこで本日は,ロッカー型クラウドサービス以外のサービスについて広く検討を行いたいと存じます。
 まず,本日の検討事項案につきまして,事務局から御説明を頂戴できればと存じます。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,説明申し上げます。
 クラウドサービス等と著作権に関する検討課題としましては,参考資料2でお配りしましたように,昨年の法制・基本問題小委員会での審議において,電子情報技術産業協会様より御要望のあった10のサービスを検討対象とすることとし,まずはロッカー型クラウドサービスについて集中的な御議論をいただいてまいりました。資料1にございますように,本日は,ロッカー型クラウドサービス以外の残りの9つのサービスと著作権との関係について,どのように考えるべきかということについて御議論いただきたいと考えております。
 それぞれのサービスの詳細につきましては,この後,榊原委員より御説明いただくということをお願いしてございますので,ここではポイントのみ記載させていただいたところでございます。個別の説明は省略させていただきます。
 この資料1のページ2から3にかけましては,御参考までに,ロッカー型クラウドサービス以外のサービスに関するこれまでの審議会での主な意見を整理させていただきましたので,これから簡単に御紹介させていただきます。
 まず,資料1のページ2でございますけれども,各サービスに係る個別の意見につきましては,まず,法人向けTV番組検索サービスについて,テレビ局にとってすら権利処理が必要なサービスを,一般企業が権利者の許諾なしで提供するようにしてほしいというのは行き過ぎではないかという御意見がございました。
 また,論文作成・支援サービスや法人向け評判分析サービスなどは,現行著作権法の第47の7などでかなりカバーできるところがあるのではないかという御意見もございました。これに対して事業者側の御意見としては,現行法ではカバーできないところもあるのではないかという御意見もあったところでございます。
 このほか,一定要件の下での権利制限を検討してもよいが,これを完全に自由にするだけで,権利者への経済的な還元もなくていいのかは検討が必要であるという御意見もございました。
 3ページをお願いいたします。電子情報技術産業協会様より御紹介のあった海外の事例に係る御指摘で,その適法性に係る指摘が幾つかございました。具体的には,海外における事例については,ライセンスの結果によりサービスが展開されているのか,法制度により許諾が不要とされているのか,事業者がリスクを取って事実上サービスが行われているということなのか,この点を明らかにする必要があると。また,法制度により権利者の許諾が不要とされている場合には,我が国と条文は同じであるが解釈によって結論が異なるものであるのか,そもそも条文自体が違うのかという点も明らかにする必要があるのではないかという御意見がございました。
 このほか,海外におけるサービスの適法性について,事業者側からは一部のサービスについてしか説明がなされていないのではいかという御指摘もございました。
 また,海外の事例について,フェアユースに該当する可能性があるというのは,結局は適法性が裁判の判断に委ねられているということであって,海外において当該サービスが適法であることの説明にはならないのではないかという御意見もございました。
 それから,同じく電子情報技術産業協会様より御紹介のあった海外の事例に係る質問として,ドイツのメディア変換サービスについて,書籍以外のメディアにも適用されるのか否か,そしてその法律上の根拠は何かという御質問,それからドイツにおいて,そのメディア変換サービスについて,著作権法54条の報酬を支払う義務が適用されるのか否かという御質問,さらに,海外で行われるメディア変換サービスは,有体物からのデータ変換が行われるものなのか,データのみで処理されるものなのかといった趣旨の御質問もございました。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ロッカー型クラウドサービス以外の各サービス,これについては,一般社団法人電子情報技術産業協会から検討の御要望があったものでございます。この検討に当たり,まずは,各サービスのより具体的な内容や著作権法上の課題等について整理することが適当であると,このように考えられます。また,これまでの審議において,同協会から紹介がございました諸外国のサービスの各国法制上の位置づけ,こういったものも明確にする必要があるものと理解しております。
 このため,本日は,以前,委員の方より幾つか御指摘,御質問がなされ,御回答いただくのが若干積み残しとなっていた点も含め,これらの点について,榊原委員から,まず御発表をいただきたいと思っております。榊原委員,どうぞよろしくお願いいたします。

【榊原委員】  ありがとうございます。
 最初に,以前,第4回のときに発表させていただいて御質問を受けた内容について,補足の回答をさせていただきます。今,事務局から御説明があった資料1ですけれども,この太い,席上に置かれている資料の第4回のところの資料1についての御質問ですけれども,まず,今,頂いている資料1の3つ,順番に御説明いたしますと,ドイツの例で,書籍以外にも適用されるのかと,これは浅石委員からの御質問であったと理解していますけれども,具体的な事例でドイツの弁護士に聞きましたので,この第4回のドイツの資料ですね,これを前提にしますと,書籍で,ユーザーが所有をする書籍であるということと,スキャン後は廃棄することの条件の下に適法であるということで,これは53条の解釈であると理解しています。53条はコンテンツについて特に書き分けていなかったと思いますので,53条の各要件を満たせばということだろうと思います。
 それから2つ目の質問,同じくドイツの54条に関する御質問で,これも浅石委員からで,報酬を支払う義務があるのではないかという御指摘で,これは第4回のときに条文もお配りしておりまして,御覧いただければと思いますけれども,報酬支払の義務自体は製造業者等ですので,クラウド事業者であるとかサービス事業者というのは,54条から文理的にも該当しないということであろうと思います。
 それから3つ目の御質問,これは奥邨先生からの御質問であったと思いますけれども,メディア変換については,ネットだけで完結するのか,有体物から電子ということも含まれるのかということについては,御紹介した事例については,有体物というか,物に固定されたものですね,本であるとか,DVDだとか,そういうものを念頭に,物理的に送って業者が電子化するというものだろうと思いますけれども,飽くまで具体例ですということです。
 それから,それ以外にも,ここの資料にはありませんけれども,御質問を確かいただいていて御回答できていなかった点がございまして,土肥主査の方から御質問いただいていた点で,このデータの資料のロッカーというのはタイプ2に当たるのかという御質問であったと思います。これについては,いずれもユーザーが適法に入手をしているコンテンツで,共有しないというようなビジネスなので,該当するということであると思います。
 それから,シンガポールのRecordTVだけは,それを大幅に超えてといいますか,録画転送サービスですので,単なる録画サービスを超える部分についてまで踏み込んで適法とした例であると思います。
 それから,浅石委員からも,ShiftTV事件について御質問をいただいていたと思います。クラウドのものですけれども,これについては,日本で言うまねきとかロクラクに相当するが,クラウドロッカーに当たるのかと,タイプ2に当たるのかという御質問かと思いますけれども,タイプ2を含む概念だろうと思います。
 それから,畑委員だったかと思うんですけれども,クラウドロッカーについて,ドイツでHiDriveという御紹介をしたんですけれども,音楽専用を強調しているのは何の意味があるのかということですけれども,御紹介した例が,たしか音楽専用のものではないので,音楽専用の場合でも該当するという趣旨で,ShiftTV自体は動画専用ですけれども,汎用ロッカーには当たらないということが言えますので,この音楽専用にも当たるのではないかという指摘をしているものでございます。
 これが質問に対する回答になります。
 それから,意見書を,今日提出させていただいておりまして,先ほど主査から御紹介があったとおり,文化庁の事務局からは,どういう行為が問題になっているのか,条文との関係で説明をしてほしいということが1点,それから,なぜそれが認められるべきなのかという正当化根拠,それについても回答するようにと,それから諸外国でどうなのかという,大きく3点,宿題になっております。
 資料でいいますと,2-1と2-2,本日の資料ですけれども,2つ御覧いただいて,参考資料はそれ以外にも2-3,2-4がございますけれども,まず意見書の方ですけれども,意見として,事例の前に意見を申し上げたいと思うんですけれども,御紹介があったとおり,1年半ぐらい前から,JEITAは,一般規定,それから新規ビジネスの創出に向けた環境整備を継続して求めてまいりました。ただ,情報ネットワーク産業,その分野は,社会の環境変化が非常に激しいということで,個別の規定では限界があるのではないかということで,過去,2008年以降,一般規定の導入が検討されたのは,皆様,御承知のとおりです。ただ,残念ながら,その結果,法改正では個別の条項の追加に終わっているということで,引用として幾つかここに挙げましたけれども,これに限定されず,専門家の方々,多くの方がこういう評価をされているということで,問題の解決がなされていないと思います。
 このままですと,問題が顕在化するたびに,個別条項を立法事実に基づいて追加をしていくということになるわけですけれども,これは後追い改正で,時代遅れになるのではないかとか,クラウド問題が当時の法改正では先送りをされたという指摘をされていますし,どんどん複雑化をしていってしまうということです。
 その条文を1枚ものでお配りしたものは,皆様,字が小さくて,資料2-2はなかなか見えないと思いますけれども,私は大きくしたものを持っているんですけれども,これは全てではないですけれども,今日の利用した行為に関連する条文だけを挙げているんですけれども,例えば47の7とか,47の9とかを挙げてございますけれども,たしか10まであるんでしょうか,47の10で,足すのだったら11,12と,例えば10年後には47条の30とか,47条の50とかになってしまうような,そういう方向性が本当にいいのかどうかということです。国民にとっても,専門家だけの法律ではなくなってきた著作権法にとって,分かりやすいルールでなければいけないのかという点も考えなければいけないと思います。
 柔軟性のある規定を検討いただきたいということに対しては,立法事実とか,明確性の原則とか,確かに課題はあるわけですけれども,その点は配慮,検討いただいて,やはり,現在ある事実だけを捉えるのではなくて,将来の部分も含めたニーズに対して,それを立法事実として捉えていただいて検討をお願いしたいということでございます。
 御紹介ということで,前回の改正の経緯で,著作物の表現を享受しない利用ということが,以前,言われていたわけです。この意味するところは,今,私が挙げている事例とは違うかもしれませんけれども,文理的に見ると該当する可能性もあるかと思います。そして原案48条の3とか4とかいう号になって,その後,最終的に30条の4,47条の9という経過をたどったということだと思います。
 3ページ目に移りまして,各サービスの位置づけ,なぜこういったサービスが認められるべきなのかということで,この11,サービスで言うと10ですけれども,これは,この10個を適法にしてくださいと言っているわけではありませんで,こういったものが,今,あり得るということです。こういったもの一個一個を個別に規定をつくってくださいというのはやはりよくないと。むしろこういう共通の要素を,ここから要素を抽出して,認められるべきものだけを最終的に裁判で認めるという方向にする方が,インフラとして,その方が法律のつくり方としていいのではないかということでの検討の願いです。
 例えば1番で,著作権者に不当な不利益を与えない利用です。これは前回の改正のときにも条文に入れようということで検討されていた基準だと思いますけれども,1番,2番,3番とか,4番とか5番とか,その個人が既に持っているないしは持ち得るコンテンツ,ないしはネットの情報,個人がネットから入手できる情報ということなので,著作権者の方の逸失利益ということにつながらない,実質的な損害が生じない範囲で認めてはいかがかというものです。
 2番で,サービス提供事業者にとっては,著作物の表現,見るとか,読むとか,そういった利用とは評価されない利用であろうと思いますし,こういったものを,社会的な有用性とか,技術進歩の享受とか,情報へのアクセス,こういう公正な情報の活用という観点で共通の要素があるのではないかと思います。
 ちょっと毛色が違いますけれども,11の仮想化については,通信の円滑化とか,資産の効率化ということがやはり根拠になるかと思います。
 その後,中山先生は,検索エンジンの規定など,資料2-2の一番真ん中にある規定で,47条の6ですけれども,これは普通の人が読んでも分からないような規定だと言われている有名な規定ですが,これも,当時は立法事実に基づいてつくったと,ただ今や時代遅れになっていると,これを繰り返すのかということです。
 それから4番目として,田中辰夫先生,慶應大学の先生がなさった経済分析は,これは参考資料2に付けてございますけれども,フェアユースの導入で,コンテンツ産業の売上げが伸びたというもので,後で御覧いただければと思いますけれども,これも先ほどの共通要素ですね,不当な不利益を与えないということに加えてプラスにもなるということを分析結果で紹介いただいているものです。
 4ページに行きまして,諸外国についてどうなのかという御質問があったということを事務局からも御紹介いただいていまして,JEITAは,以前,100近い事例を,諸外国では社会的実態としてこういったサービスが既に行われているということを申し上げたんですけれども,それぞれの国で法体系も違うので,全て調査できないんですけれども,柔軟な規定を導入している国というのは恐らく7か国あると思います。もしかするとこれ以上あるかもしれませんけれども,私が知る限りでは7か国あると思います。でもアメリカは非常に古いわけですけれども,その後,90年代以降,次々に,台湾,フィリピン,シンガポール,イスラエル,韓国,マレーシアと導入をしているということです。
 裁判になっているケースを御紹介できるのは,やはりアメリカと,あとはシンガポールぐらいで,それ以外の国は新しいので,余り確認ができていませんけれども,例えばということで,その下のイのところですけれども,アメリカで判決が出ているもの,これは,丸で絵をかいているんですけれども,例えばHathiTrustとかGoogle Books事件というのは丸が大きい。この意味は,この横の10個のサービスと重なる部分が多いという意味です。例えば,大学の方も全文コピーをして,サーバーにコピーをする,それを検索できるようにするということなので,コピーをするというところは,1番だとか3番だとか,4番,5番,ないしは6番,7,8,9もそうですけれども,重なってくると思います。
 それから,プリントディスアビリティということで,書面,本とか,紙でできたものを電子化するということで,遠隔の方とか身体障害者の方とかもアクセスができるという部分で,メディア変換とかアクセスビリティのあたりもカバーをしていると思いますし,それから,検索をした後に,その検索のページであるとか,スニペットが見られるというところは,8番の評判分析,論文作成とかの,結果を見る,結果送信というところに当たるかなと思いますし,結果送信のところは,赤色のFieldとかPerfect10という検索の事件でも重なっているという趣旨でございます。
 ここまでが意見書でして,関連条文の資料2の方を見ていただきますと,真ん中の一番上に,今申し上げた1から11のサービスと仮想化について,どんな行為が行われているかということを抽出しております。真ん中の縦の列ですけれども,例えばメディア変換であれば複製・翻案,その後,クラウドから送るであれば送信だと思いますし,それからアーカイブとかマルチデバイスからのアクセスについては,複製・翻案・送信ということが問題になります。情報活用サービスについては,ウェブ上の情報を集めて蓄積をして分析をする,その結果を送るということで,複製・翻案・送信という行為と同じような行為がどのサービスでも共通して行われていて,関連する条文は少しずつ違うと思いますけれども,例えば47条の7を少しいじればいいとか,そういう個別の条項をちょっとずつ拡充するということではなくて,やはりその共通要素で検討いただきたいということがお願いでございます。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいま御発表いただいた,各サービスということよりも,著作権法の中にこういったものをカバーするような一般条項的な規定を設けていいのではないか,そういう御趣旨であったと思います。
 本日予定しておりますのは,そこもかもしれませんけれども,当初,JEITA様の方からお出しいただいた,この10サービス,クラウドを除きまして9サービスということでありますけれども,こういうものの位置づけといいますか,著作権法の中でどういうふうに見るべきなのか,その先として,今,おっしゃったようなこともあるいは出てくるのかなと思いますけれども,まずはその9サービスの著作権法の中での位置づけというものを明確にしたいということがございます。そのために,この後,関係団体の方々からの御意見も伺う予定にしておりますので,その点,どうぞ御了承いただければと思います。
 まず,榊原委員の御発表いただきました内容につきまして,御質問等ございましたら,お出しいただければと存じます。あるいは御意見があれば,御意見でも結構でございますけれども,いかがでございましょうか。今子委員,じゃあ,お願いいたします。

【今子委員】  今,榊原委員から柔軟性のある規定の導入について検討すべきという内容の発表がございましたけれども,全くそのとおりだというふうに考えております。コピーは情報通信における基本的な処理でありまして,あらゆるものがコピーの対象になってきます。しかし,これをあらかじめ特定するということができないことから,御紹介のあったサービスに限らず,ネットワーク上での様々なサービスを発展させていくに当たり,バックエンドで機械的になされる複製を認めていく必要があるのではというふうに考えております。
 例えば,ビッグデータの解析において他社のデータ収集を支援するサービスを提供する場合やクラウド事業の譲渡や事業者の倒産の事情が生じたとき等に,サービスを継続して提供するために事業者間等の複製が行われる場合,47条の6では送信可能化されている情報の収集のみ認められているところ,送信化されていないリアルな情報も取り入れて,発展的な検索エンジンを提供する場合などがあります。現行の規定,例えば47条の6や47条の9等でカバーされる部分も確かにあると思いますけれども,個別規定でカバーし切れないというのが現状だと思っております。
 こういうバックエンドで行われる複製を認めたとしても,著作権者等に不当な不利益を生じさせるということはないと考えられる一方で,サービスを進めるに当たり,その都度,許諾をとったり,個別に立法するというのは不可能だと思われますので,技術の急速な進歩に対応していくためにも,個別制限規定の受皿として包括的に機能し得るような一般規定の検討が必要ではないかというふうに考えております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかに御意見,あるいは御質問……,はい,浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】  この小委員会で議論すべきものが,いわゆるフェアユースに近いような,そういったものではないはずだと思っております。ですから,もしそれを検討するのであれば,別の委員会を立てるなりしないと,ここで,変な言い方をすれば,後出しじゃんけんみたいな形でその議論を進めなければということについては,当初の,この委員会の設立,それから何を議論していくのかというものとはかなり大きく離れていくと思いますので,ここは,最初に土肥主査も御整理いただいたように,やるべきことというのは決まっているのではないかなと。それでも必要なものというのは,別の何かの機会に譲るという方が,私としては議論が進むのではないかというふうに思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。津田委員,どうぞ。

【津田委員】  もともと,この4番,フェアユースの議論というのは,2008年に内閣官房の知的財産戦略本部の中で,これを導入するべきではないか,それに対しては,方向性としては異議なしということが決められて,それを受けて文化庁なんかの議論もあったと思うんですが,我々インターネットユーザー協会も,その時点で,日本版フェアユースの導入に対しては,幅広い形の一般的な権利制限,規定を入れるべきだということは主張していたと思うので,今回のJEITAさんの発表については,方向性としては,僕もその議論をやるべきだと思っています。
 それを踏まえた上で,今,浅石委員の話ともつながることだと思うんですが,やはり2008年の議論を見ていて,一般的な権利制限規定を話すはずが,議論としては相当かなり限定された方向に変わっていって,最終的には,権利制限規定と言いつつも,かなり個別の権利制限に近いような形で,検索エンジンをかなり限定した形で合法化するみたいな形で,その議論が深まらなかったということがあって,じゃあ,この委員会が何で開かれるようになったのかというと,2008年の時点と,今,2014年の,この情報環境をめぐる,またそのデジタル著作権をめぐる環境が大幅に変わったということも,多分やっぱり踏まえて考慮しなければならないのではないかと思うんですね。
 まさにこの昨年からのワーキンググループで,タイプを細かく分けていろいろやっていく,じゃあ,どこに落としどころがあるのかというのがなかなか進まない状況というのも,これも相当複雑になっている。そこに対して,先に進めるものをどうするのかということは,もちろんすごく限定して30条にこれは含めるのかという議論もあるんですけれども,そうではなくて,この2008年時点よりも,議論を経て思うことは,今の方が一般的な権利制限規定の導入をする意味,また,田中辰雄先生のような実証研究みたいなものも出てきていますから,それを踏まえた上で,これを具体的に導入するのかどうなのかという,少なくともそういった方向性の先鞭(せんべん)をつけるような委員会に,この委員会がなるべきだというふうに僕は考えております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。笹尾委員,どうぞ。

【笹尾委員】  事務局さんがお作りいただいた,この検討事項案と,今の委員の皆様からの御発言との間の方向性の中で,何を言っていいのかなというところがないこともないのですが,この検討事項案の中といいますか,最前からJEITAさんが具体的にお出しになった典型の何例かということの中で,私どもが関わっております放送事業に関しても,比較的といいますか,真ん中ストレートで関連してくるところもございましたので,そのあたりの考え方に関してお話しをさせていただきたいと思っておりました。ただ実際には,榊原委員が整理してくださっています資料の中で,それは既に整理済みというところなのかなというふうに思っております。要は複製であるとか,送信であるとかということに今の時点ではなってくるのではないかなと思っております。
 私はテレビの方のメディアの者でございますが,遅ればせながら,民放でもいろいろな見逃し視聴サービス等が,全面的といいますか,真正面から検討もされるというところになってきております。これからはそういうものが増えていくのではないかなということもございます。そういう流れの中で,例えば個人向けの録画視聴サービスでございますとか,最後にあります法人向けのテレビ番組検索サービスであるとか,いわゆるきちっとしたライセンスを持った見逃し視聴のサービス等と,形としてはかなり似てきてしまうのではないかなという気がしております。
 要は,最後のあれですね,番組検索サービスですとか,このあたりになったときに,こんな番組があったのかなというところで,法人なりが検索をすると,そうするとその画像が出てくるというようなイメージを私などは持つわけですが,これは個々の委員の整理にもありましたように,大規模な複製というものがまず行われ,それが配信されてくるということなのではないかなというふうに思います。
 享受に当たるかどうかというお言葉もありましたけれども,これに関しては享受に当たるのではないかというふうに思っておりますので,放送に関する部分に関して言いますと,いわゆるライセンスというんですか,きちっとした話合いというのは,いろいろな事業者さんとの間でも成立しておりますので,その線上で,もっとより利便性の高いサービスというものが生まれてくると思っております。技術の発展というものも,そこにはかなり大きな部分で資することになるのではないかというふうに考えております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。じゃあ,順番で,華頂委員から,次に奥邨委員,お願いします。

【華頂委員】  非常に個別限定的なお話をさせていただきたいと思います。メディア変換ですけれども,有体物からの古い媒体,再生がかなわないようになってしまった媒体,そこからのメディア変換の話をしたいんですけれども,そもそも,そのメディア変換をしなければならない状況をつくったのは誰なんだろうなというふうに考えてみますと,かつて映像では,8ミリビデオとか,レーザーディスクとか,VHSテープ,この時代があったんですけれども,現在では御存じのようにDVDとかブルーレイに移行している。音楽ではカセットテープとかMDだったものが,今ではCDとか,一体型のハードディスクが主流になっている。
 この記録媒体の変遷ですけれども,もちろん技術革新がベースになっているんですけれども,メーカーさんが主導で行っているということも紛(まぎ)れもない事実ですね。要するにメーカーさんは,新しいビジネスチャンスを創出するたびに,消費者が利用している,その時々の記録媒体の,いわばはしごを外しているわけですね。そして,その一度外したはしごを,メディア変換サービスと称して,古い媒体をもてあましている消費者の足元を見て,有料でビジネスをしようとしているという感じがします。二重取りという言葉が,この委員会でもよく出ますけれども,そういう二重取りのビジネスなのではないかなと。メーカーさんの論理のみで,消費者の立場を余り考えていないのかなというふうにも思います。
 商業用映画のメディア変換については,主にテレビ放送からVHSテープなどのレガシー化した記録媒体に録画したものを新しいメディアへ移行するというような御提案であるかと思いますけれども,テレビ放送間の録画についてですけれども,映画製作者としては,百歩譲って,リアルタイムで見られなかった放送番組を,後に一度視聴して消去する,タイムシフトであるというふうに理解しています。したがいまして,録画された映画がコレクションされることは,この委員会でも何度も映画のビジネスの説明をしていますけれども,ワンソース・マルチユースの映画のビジネスと衝突をすることが必定ですね。ですから全くの想定外でございます。
 このような大前提があるんですけれども,消費者の立場に立てば,後に視聴しようにも,メーカーさんの都合で,いつの間にかメディアが移行していますので,再生がかなわないというふうになっているわけですね。そこでメディア変換サービスという還元が出てくるわけですけれども,先ほども申し上げましたとおり,かつて外したはしごをまたぞろ売る行為,これはいかがなものかなというふうに思います。
 ここは1つ,逆提案ですけれども,そのような境遇にある作品,多数あると思うんですけれども,消費者の方から申告があれば,新しいメディアの正規品を,お困りの方にメーカーさんから無償でお渡ししたらどうだろうかなと。仮に,消費者の皆さんのために,古い記録媒体や再生機のサービスとかメンテナンスをずっと継続すると,かなりのランニングコストがかかると思うんですけれども,それに比べれば非常に安価なものだと思います。
 最新のメディアによる当該映画,この製品ですけれども,もちろん作品の著作権者からメーカーさんに御購入いただく。このやり取りの中心にある映画の複製物,冒頭で申し上げましたとおり,映画製作者が予定していない複製物なので,映画製作者としては,その代替として無償で御提供するのには大きな抵抗感があります。メーカーさんには,できる限り割り引いてお譲りしますので御安心ください。
 河村さん,消費者の代表として,その有体物,古いもののメディア変換の原理と,それからこの逆提案についてどう思われますか。

【河村委員】  最後のところの,メーカーが購入して配るというところについて,今,私はコメントすることができませんけれども,その前までの部分につきましては,メディアが使えなくなるということで,消費者のことを考えていないとおっしゃっていた部分までは,華頂委員の御意見も相当に消費者のことをお考えになっていないと思いました。
 なぜかと言えば,やはりメディアが,機械が新しいものになっていって,解像度が上がったり,いろいろな利便性や美しさが上がるということは,世の中の発展ですから,前にきちんと適法に入手したものであれば,メディア変換が行われるということが可能になることが消費者にとっての利便性かなというふうには思っておりましたので,最後のところは,余りにも常識から外れた御提案でございましたので,すぐにはできません。
 あともう一つ,テレビのことでは,何度も華頂委員とは同じようなやり取りをしておりますけれども,映画であるかどうかというところで,華頂委員はそういうふうにおっしゃいますけれども,地上波の公共性のあるテレビ放送の電波に乗せたという時点で,映画であるからどうとかということではなくて,それはどんな番組であれ,公共の電波に乗ったものであれば,私的複製として消費者は複製しますし,それをどのように適法の中で扱おうと,それは視聴者の自由であると思っていますので,映画に関しては,あとワンソース・マルチユースとおっしゃいますけれども,一人一人の消費者が持っているような古い映画であったり,いろいろなそれぞれの個人的な好みで,ものすごく大ヒット作ではないものとかも持っているわけです。そんなマルチユースになったのは,つい最近の,大変売れている映画のことでございますので,それよりは,これまで生きてきた中で大事にしてきた,自分の好きなコンテンツというものを,個人の生活の中でどういうふうに自由に扱っていくかということを大切にしていただけたらなと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 この小委員会というのは,ワーキンググループから継続してきておりまして,一貫して土俵は設定してきているところでございまして,相撲をとるという,そういうクラウド問題を検討するというところで,この委員会はきょうまで継続的に議論を積み重ねてきているところでございます。急に四角のボクシングの会場にするということも,また難しい話でございまして,奥邨委員,挙手していただきましたけれども,そのあたりの,本小委の検討対象といいますか,そのスコープのところを少し踏まえながら御発言いただければ有り難いんですけれども。

【奥邨委員】  私の方,今の座長のお話をちゃんと反映できるかどうかはあれなんですが,榊原委員の御提案が,クラウドサービスのための柔軟な規定をという御意見なのだとした場合に,その柔軟な規定というのは何なんだろうということをお伺いしたいなと思った次第です。
 私も平成24年改正についてはワーキングの時点で関わりましたけれども,この場で,もう一回,平成24年の改正のときの議論をするというふうには,私自身はそういう理解ではありませんでしたので,一般的な意味ではなくて,飽くまでも,クラウドのための柔軟な規定をということで,おっしゃっているのだと理解します。そうだとすれば,それは何なんでしょう。必ずしも今伺っただけではよく分からなかったので,改めて伺いたいなと思っております。
 ただ,その御質問をする前に1つ補足をしておきたいのですけれども,榊原委員の資料の脚注の4のところに,私の講演録から引用していただいているわけでありまして,研究者としては引用していただくのは有り難いのですけれども,ただ,これは今後の発言にも関係いたしますので少し補足しておきます。この引用部分の直前では,報告書において,一般規定というのはこういうものだという定義をしている部分があり,それと比べると個別になりましたねと言っております。端的に申しますと,この文章で,個別具体になったことについて,評価を申し上げたつもりはなくて,飽くまでそういうことについて御批判もあるということを述べております。文章が拙(つたな)くて,その辺,なかなかお読み取りいただけなかったということであれば,反省しております。
 あと,この講演では,平成24年に改正された規定が存在する部分というのは,フェアユースと比べて,ある意味,かなり対等なぐらい頑張っている形になっているのではないかと述べております。一方で,フェアユースも,フェアであれば何でもできるということではなくて,本家のアメリカではかなり厳しい運用がされているということも述べております。
 以上のような理解を前提に,お尋ねするんですけれども,榊原委員の御意見で,柔軟な規定とおっしゃっておられるのはどういったものでしょうか。ペーパーには,3つのことを書いておられるんですね。整理しますと,平成24年のC類型をもう一回復活させて議論したいというお話なのか,それともアメリカ流のフェアユースをそっくりそのままということ……,これは,クラウドのためにはアメリカ流のフェアユースでないと駄目なんだというお話なのか,それとも,この資料の3ページのところに,1,2,3-1,3-2,4というふうに挙げておられる4要素なのか,5要素なのか分かりませんけれども,これらの要素をもとにした何らかの制限規定がないとクラウドはやっていけないという御意見なのか。柔軟な規定というのは,実際何をイメージされているのかということをお伺いしたいなと思っています。

【土肥主査】  じゃあ,榊原委員,お答えになりますか。この後,せっかくおいでいただいて,御意見を聴取する団体の方もございますので,この質問のやり取りあたりのところで,榊原委員の御報告といいますか,関連する質疑・応答は閉じたいと思いますけれども,じゃあ,榊原委員,お願いします。

【榊原委員】  今の御質問で,どういう条文がいいのかという御質問のように理解をしたんですけれども,そこまで煮詰まっては考えてございません。以前の経緯を出しておりますけれども,じゃあ,C類型が欲しいのかと。ただこのC類型の議論,土肥先生などを中心に集中的に検討されたときに挙げられた立法事実と,今,私が出しています11個の立法事実というのは違うと思いますので,文理的には,これがそのまま使える部分があるのではないかと,そういう意味で文理解釈をすると当てはまるというふうに申し上げましたけれども,それに加えて,こういった共通要素があるということで,こういうものを埋め込んで,こういう11にとじるものではなくて,これは飽くまで,昔から具体例として挙げていて,これ一個一個,個別条項をつくってくださいと言ったことはないわけですね。
 ですから,土俵が違うということについては,もともとクラウドサービスで,柔軟にこういったいろいろなサービスができるようにしてほしいということの解として,個別条項ではなくて柔軟な規定と申し上げております。柔軟な規定を作る際には,こういう要素が書き込まれていくということが理想なのではないかなという意味で書き上げております。ですから,これが少しどうなのかということであれば,もう少し,その表現を直していただくとか,違う要素を提案いただくとか,そういう御議論をいただければなという趣旨でございます。

【土肥主査】  奥邨委員,よろしゅうございますか。
 榊原委員の御発表についてはこのあたりにしておきたいと思います。いわゆるフェアユースが,一般条項とかタイプCとかというものがあればどうなのかという評価はいろいろあるだろうと思うんですけれども,御案内のように,著作権分科会は,毎年毎年,いろいろな問題に直面して,その都度個別に解決を図ってきておりますので,あるときに一般条項をつくって10年安心というのがいいのか,毎年毎年,個別の問題にきちんと迅速に対応するのがいいのか,それは,最終的には,法改正をされる場合,内閣全体,閣法としてお出しになるものでありますので,そこで最終的には御判断いただかざるを得ない面もあるように思っております。
 それで,本日は評判分析サービスを提供している事業者であります株式会社ホットリンクの方にお越しいただいております。非常に興味深いお話を伺えるのではないかなというふうに思っているところでございます。
 それでは,内山様,どうぞよろしくお願いいたします。

【内山氏】  よろしくお願いいたします。私,ホットリンクの代表を務めております内山と申します。私ども,現在,法人向けの評判分析サービスでなりわいを立てておりまして,昨年12月にマザーズの方に上場させていただきました。
 このサービスを発案してから,これまで10年近くになりますけれども,当初から,著作権法に違反していないのかということに関しては,社内でもかなり議論になりましたし,上場する前での審査基準の中でも,コンプライアンス上,問題ないのかということはかなり指摘も受けまして,我々の中では相当議論し,クリアしてきた問題だと思っております。それらのところを,サービスの説明をしながら御紹介できればと思っております。
 最初にお見せしますのが,ビッグデータ市場の構造ということでございます。現在,日経新聞でも,ビッグデータということで,かなり取りざたされておりますが,実際には活用できている企業がなかなかいないというのが事実上の現実でございます。なぜそんなことが起こっているのかといいますと,ビッグデータを活用しようとすると,実はこの5つのレイヤー全てを網羅しないと活用まで至りません。
 まず,データがないと何も始まらない。多くの会社様は,自社のデータは持っているけれども,他社のデータがないと。なので,市場の動向が全くつかめない。ここで,まずそもそも頓挫してしまいます。
 次に,大量のデータを集めたとしても,普通のデータベースには入り切らないぐらいの大きなデータなので,それを蓄積し,リアルタイムで分析するための検索のインフラであるとか,そういったものを整えようとすると,相当のITインフラの投資が必要になります。
 さらに,そういったデータを蓄積できた後,取り出したデータをどう統計分析し,どう解析し,需要予測をしたり,未来予測をしたりするかという統計とか,アルゴリズムの分析エンジンのレイヤーが必要になります。
 そしてさらに,実際に活用するマーケティングであったり,データサイエンティストの人というのはプログラミングができませんので,ワンクリックでいろいろな結果が出てくるようなアプリケーションが必要になります。
 この4つがそろって,初めていわゆるデータサイエンティストと呼ばれる人が活用するという段階になりますが,この資料で見ていただきますように,レイヤーごとにそれぞれベンダーがおりまして,ビッグデータに取り組みたい企業さんというのは,それぞれのレイヤーのベンダーと話して,ソリューションを引っ張ってきて,それらを自分たちで1つにしなければいけないという問題になっています。
 ところが,ソーシャルメディアのビッグデータという領域におきましては,我々のような業者が,データの収集から,蓄積から,分析から,アプリケーションからコンサルティングまで一括して御提供しているために,市場が2005年くらいから立ち上がったという背景がございます。
 なかなかイメージがつけていただけないかと思いますので,簡単なデモを御用意しましたので,ちょっとだけ御覧ください。
(映像上映)

【内山氏】  このように,Twitter,ブログ,ネット上の掲示板,ネット上に書き込まれた様々なデータを2004年から全て蓄積し,リアルタイムでさかのぼって検索・分析ができるようになっております。
 そして最近は,こういったネット上のユーザーさんの書き込みというのは,クチコミだけで広がるのではなくて,マスメディア,テレビや新聞報道等の方がやはり影響が大きいということが分かってきまして,それらのデータも一緒になって分析できるようになっています。
 こちらを御覧ください。
(映像上映)

【内山氏】  ざっと,このようなサービスを展開させていただいております。
 現状は,今,お見せしたような,「クチコミ@係長」というようなデータを集めて,検索できるITインフラを用意して,様々な男女分析,評判分析,スパムフィルタリング等との分析エンジンからワンクリックで答えが出るアプリケーションまでをセットにしたツールの提供が1つ,もう一つは,様々な企業さんが,こういったソーシャルメディアのデータを使ったサービスをつくったり分析サービスをつくられたいという会社さん向けに,データや分析エンジンを供給するというサービスと,2つを行っております。
 これらのサービスの中で一番重要になるのがデータでございます。私どもは,例えばTwitterにおきましては,全世界,全言語,世界最初のツイートのデータから取得・分析できるような権利を持っております。これは,実を言いますと,Twitter社というのは,ツイートされたデータの権利の,まあ,著作というのをものすごく厳密に守っておりまして,勝手に検索エンジン等がTwitterデータ等を収集することを禁止しております。一部,APIというプログラミンのインターフェースを通じて,無料で一部は収集できるようになっているんですけれども,それを商用利用することも禁止しております。
 したがいまして,実際にそういったものを商用利用したい会社は,大きなGoogle,Yahoo!,Microsoftのような会社は,Twitter社と,直接,権利の売買の契約を行います。そして,それ以外の世界中のあらゆる企業さんがTwitterデータを使いたい場合には,ツイッター社が指定したデータの再販権利を持っている,世界で,今,3社おりますけれども,その3社と契約を結ぶことによってデータの利用が可能になっております。当社は,そういったライセンスを得た権利の日本における独占的な再販権を取得し,正当な処理をされたデータを使っております。
 また,2ちゃんねるにおきましても,日本における独占的な商用利用権を持っております。2ちゃんねるの場合は,2000年の頃から著作権に対してものすごく注意を払っておりまして,ユーザーが2ちゃんねるにデータを書き込む際には,著作権自体はユーザーに残りますけれども,それを書籍化したり販売したりする権利は全面的に2ちゃんねるの運営者に付与するという同意をユーザーからとった上でサービスを運営しておりますので,このような,私たちと2ちゃんねる運営者との独占的な利用権が手に入ります。
 この中で問題になるのがブログ等になります。例えばmixiに関しましては,mixi等に書かれた著作というのはユーザーさんに権利がありますけれども,一時期,mixiが,それらのデータを自由に著作物,本等にして出版することができるようにすると利用規約を変えたところ,ユーザーからの大反対がありまして,ネット上で大炎上しまして,そういったことができないようにするという形で,利用規約をもとに戻しました。
 ブログ等に関しましても,基本的にはユーザーさんに著作権がありまして,一般的にプロバイダーが勝手にデータを販売するということができないようになっています。そうすると,私たちはどうやってそのブログのデータを収集するかといいますと,一人一人のユーザーさんから複製許諾等を得ることは基本的には不可能ですので,2009年の著作権法改正で,検索エンジンが,これまで違法というか,グレーだったところを,公共の益に供する目的であればということになりましたので,そういったプロバイダーがユーザーからちゃんと権利を保有していない場合,ユーザーさんにずっとある場合は,飽くまで検索エンジンと同じような意味合いでデータを収集するという形で考えております。
 そのほかテレビのデータに関しましては,エム・データという,テレビで放映されたデータを人間が手で打つ,その会社さんからデータを購入しているという形になっております。
 現在,こういったソーシャルのデータの活用は,当初はマーケティング業界のみで使われていたんですけれども,最近は,ネット選挙解禁に伴いまして,各政党が世論をリアルタイムで把握して政策に反映したいですとか,あとは報道業界,テレビの番組の中でも,世論がこういうふうに変化しているというのをソーシャルのデータで把握されたいとか,そういったニーズが広がってきております。
 けれども,各政党がデータを収集するために一々業者と契約するわけにもいかず,今,業界が,実を言うとこのように3つのレイヤーに分かれております。まず,一番下にありますのが,データを所有するソーシャルメディアのサービスを運営するベンダーさんです。Twitter,foursquare,Word Press,Facebook等々がございます。
 そして,これらの中で権利関係をしっかり処理して,データをお金にされたい会社さんというのは,このデータ卸業者というところに,その販売権を委ねます。日本におきましてはNTTデータさんが,日本語のツイートに関してのみ再販権を所有しております。
 Gnipという会社は,世界のTwitter,foursquare,Word Pressという会社さんから再販の権利を正式に許諾を受けており,私どもがそれから二次的に再販権を取得するというか,販売の代理を行うという形になっておりまして,これらの構造が既に出来上がっております。
 つまり,ソーシャルメディアを運営するプレイヤーさんとしては,やはり権利を守りたい。守るためには,きちんと守りながら販売してくれる信頼できる業者さんと組まなければいけない。そういった方針で,日本のみならず世界で,きちっと,こういったエコ・システムが構築されております。
 実際に,私どもがこういったソーシャルビッグデータの流通を行っておりますので,市場のエコ・システムというところを見ていただきますと,世界で言いますとsalesforceさん,日本でいきますとNRIさん,WingArcさん,日立システムズさん,電通さん等々が,私たちからのデータ供給,きちんとライセンス処理を受けたデータの供給を受けて,実際にソリューションをつくり,お客様に販売していらっしゃるという形になっております。
 これらは,日本のみならず世界的にも,ちゃんとデータの権利を保護しながら流通させていこうという仕組みが出来上がっておりまして,Topsyさん,Gnip,Datasift,Socialgist,ホットリンクという会社が世界の中でわりと重要なプレイヤーになっております。
 私からの発表はとりあえず以上にさせていただきます。

【土肥主査】  内山様,どうもありがとうございました。
 続いて,権利者団体の意見発表を伺いたいと思っております。ロッカー型クラウドサービス以外の各サービスについては,音楽,映像分野のみならず,新聞,書籍,キャラクターなど,様々な分野にわたると考えることができます。
 そこで,最初に,一般社団法人日本書籍出版協会から御意見を頂戴できればと思っております。本日は,村瀬様,塩見様,平井様,お三方においでいただいております。
 では,村瀬様からですか,よろしくお願いいたします。

【村瀬氏】  書協の知的財産権委員会,今,権利ワーキングというサブグループの座長を務めさせていただいております村瀬と申します。それでは,書協としての今回の意見を述べさせていただきます。
 資料4にあるとおりではありますが,今回は,JEITAさんの方から御提示いただいた幾つかの個別の問題というよりは,むしろその基本的な考え方とか,今後,審議が進められるであろうという審議の進め方のスタンスについて,専ら意見を述べさせていただくことにしたいと思います。
 まず,基本的な考え方について,この資料にもございますとおり,2014年2月17日付の,本日,参考資料2という形で配付されておりました資料に基づいて我々は意見をまとめさせていただいたわけですが,まず基本的に,社会的に有用であるということと,それと著作権者の意向,又はそれに対する適切な措置というもののバランスというものが,やはりそれは著作権法自体が本来持っている目的であろうというところを鑑みると,やはり今回,御提示された御意見,それからまた本日の意見書なども含めると,全体にそのあたりのバランスがとられていないのではないかというような意見を持たざるを得ないというところが,まず基本的な考え方でございます。
 やはり著作権者の立場から見れば,その損害を被ることなど,具体的に困ることが実証データ等に示されない場合には,正当な利益を不当に害するとは言えないという御主張が参考資料2の中にもあったかと思いますけれども,こういったことに関しては,特に,本日,御説明の資料も含めると,将来の利用も含めてという観点からすると,それにおいて,著作権者が具体的にどのような不利益を被るかどうなのかということが著作権者側で説明ができないということになると,それがまた,自由な利用というか,権利制限がされているいう方向に議論が流れるのであれば,それ自体は,やはり基本的な法の目的とするバランスをとりながら活用を図っていくというところから若干逸脱するのではないかというように考えるところでございます。
 それを踏まえて,審議の順序についても,この参考資料2のところで記述がございましたとおり,クラウド的な利用に関しては,対価還元の検討とは切り離して,遅滞なく優先的に検討するということを求められているというように我々は読んだわけですけれども,それは,著作物が利用される場合には,それに対してどのような権利処理が行われるのか,又は必要があれば対価還元が行われるのかということがセットで論じられるのは,これは財産権としての側面がある著作物である以上,当然のことであろうというように考えておりますので,そのところも,審議の進め方としては疑念,疑義を生じざるを得ないところであるというところでございます。
 なお,個別の問題に関しては,冒頭,申し上げたとおり,今回の意見発表としては,実際問題として将来的な利用も含めてということなので,我々の方で十分検討がしにくいところがありまして,今回はあえて申し上げませんけれども,それらの利用はいかに有用であるかということについては,確かにそのとおりだというようには,説得力がある部分もあるなというところがあるわけですけれども,そのことが,先ほど申し上げたとおり,権利者側の利益を不当に害することはないということについては,やはり十分な理由の御提示ないしは御議論を展開させていただきたいというように考えております。
 あわせて,我々,書協としての立場なので,出版活動との関連について,ここの資料にございますとおり,触れさせていただきますが,従来,出版活動と言えば,書籍を出版する,雑誌を出版してこの世に送り出す,そこのところで出版活動は完結してきたわけですけれども,現在の環境においては,それを超えて,過去の出版資産も含めて,それのアーカイブ化であるとか,継続的なサービスの提供という形で,出版社が行うビジネス展開自体が,今,大きく変わりつつあるところです。ですので,今回,御提示いただいたような各種の幾つものビジネスモデルというのは,当然のことながら,そのうちの幾つかは,出版社がビジネスモデル展開の中で考えていかざるを得ない,ないしは直面している,検討しているといったところと重なるというように思います。
 そこのところで,我々は,当然のことながら,出版社として,そのビジネスを独占したいということを主張しているわけではなくて,公平な環境の下で,権利獲得,権利処理の自由競争という場に置かれるのであれば構わない。だけれども,そのこと自体が過去の出版物をフリーライドするような,そういった法制度の下に置かれるということに関しては,基本的に反対若しくは慎重な立場をとりたいと考えているところでございます。
 あと最後に,若干,つい最近,判決が出たところですが,メディア変換サービスの1つとも位置づけることができるような,いわゆる自炊訴訟の問題に関しては,知財高裁で,これに関しては30条の範囲を超えるという判断が司法判断として出たところでございますので,そういったところも尊重して判断をいただきたいというように考えるところです。
 以上,手短ではありますが,私からの発表として代えさせていただきます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 塩見様,平井様,よろしゅうございますね。
 それでは,次に,一般社団法人日本新聞協会から御意見を賜りたいと存じます。山浦様,田所様,中山様,お三方,よろしくお願いいたします。

【山浦氏】  日本新聞協会の新聞著作権小委員会委員長の山浦と申します。着席したままで御説明させていただきます。資料5に沿って御説明したいと思います。
 本小委員会におかれては,これまで,クラウドサービスと著作権に関する真摯な議論が交わされてきました。新聞協会といたしましては,合意形成を目指す本小委員会の委員各位の御努力に敬意を表しますとともに,本日,発言の機会をいただいたことに感謝を申し上げます。
 新聞を始め,書籍,雑誌などの文字媒体の著作物は,クラウドを含めたインターネット上のコンテンツとして大量に複製・蓄積などの形で利用されています。このような現状を踏まえ,当協会としての意見を申し上げます。
 「新聞記事二次利用のサイクルが機能」。新聞業界の現状を御説明しますと,新聞各社は,紙の新聞はもとより,インターネットのニュースサイト,スマートフォンのアプリなどでも記事や写真などのコンテンツを提供しています。御存じのとおり,紙の新聞は安価で手軽に買えますし,新聞各社のサイトには,閲覧が無料の部分も少なくありません。
 こうして,私どもが発信する新聞やニュースサイトの記事には,二次利用のニーズが少なからず存在します。新聞各社では,記事などの複製を始め,様々な形態の二次利用を求める企業,団体や個人に対して,許諾契約などにより,適切な権利処理を伴う対応を円滑に実施しています。許諾契約などには,無償と有償の双方がありますが,いずれの場合も,新聞社には,二次利用の目的や公共性に鑑み,利用者との話合いに基づいて合意形成を図っています。また,新聞各社は記事の検索サービスも提供しており,過去の記事を読みたいという読者の要望にも応えています。このように,新聞記事の二次利用のサイクルは円滑に機能していると言えます。
 「無許諾での記事利用は問題も」。本日配付されたJEITAの参考資料2ですが,クラウドに関連して例示された様々なサービスの中には,憂慮すべき問題を含んでいるものが少なからず見受けられます。例えば,新聞社のニュースサイトの画面イメージや記事テキスト等を複製・蓄積することができるスナップショット・アーカイブサービスの一部には,元のサイト作成者の意思や意図が尊重されているかどうか,疑問を抱かざるを得ないものが含まれています。
 新聞各社は,刑事事件などに関して,続報の掲出などの際,時間の経過とともに,プライバシーや人権に関する報道上の配慮も行っております。また,過去の記事の二次利用を許諾するに当たっても,プライバシーや人権について,慎重かつ十分に配慮した上で,諾否を判断しています。しかし,こうしたサービスの一部には,報道機関の配慮が反映されない危険性があります。
 去る10月9日,ある男性が検索サイトで自分の名前を検索すると,犯罪に関わっているかのような検索結果が出てくるのはプライバシー侵害だとして,検索結果削除を求めた仮処分申請で,東京地裁は検索結果の一部の削除を命じる決定を出し,検索サイトの会社もこれに応じて削除しました。スナップショット・アーカイブサービスが十分な検討なく広がると,このようにプライバシーを侵害されたと感じる人たちが,時間と費用をかけて訴訟を提起せざるを得ないケースが増えるおそれがあります。
 また,評判分析サービス,論文作成・検証支援サービスなどの例示もありますが,現行の著作権法の枠内で利用可能な部分もありますし,新聞社のニュースサイトの記事などを利用する場合は,著作権者と契約を適切に締結して十分に対応できると考えられます。
 JEITA提出の資料では,ほかにも様々なサービスが挙げられていますが,例示された海外のサービスは,必ずしもそれぞれの国や地域で適法とされているわけではありません。例えば,アメリカのテレビ番組のネット配信サービス,スライド97番のAereoについては,今年6月25日,米国連邦最高裁が違法とする判決を下しました。また,スライド40番の英国のTVCatchupに関しても,昨年3月7日に,欧州司法裁判所,CJEUが違法と判断しています。
 「『柔軟な権利制限規定』に反対」。本小委員会では,クラウドをはじめとする様々なサービスの実現を目的に,著作権法に柔軟な権利制限規定を導入すべきだという意見が一部の委員から聞かれました。
 「柔軟な権利制限規定」は,米国著作権法107条のフェアユース規定を想起させますが,米国の規定は100年以上にわたる判例の蓄積を踏まえて制定されたもので,日本にはこうした判例の蓄積がないため,曖昧な権利制限規定が導入されれば,適法か違法か迷う場合には訴訟を提起するほかなくなり,著作権を侵害しても,「フェアユースだ」と意図的に抗弁する「居直り侵害」や,知識・理解不足による「思い込み侵害」が蔓延(まんえん)するおそれがあります。
 このように,権利者の正当な利益を害するだけでなく,事業者,利用者,権利者のいずれにも時間的・経済的負担を強いたり,著作権法の目的である「著作物の保護と利用のバランス」に反したりするおそれがあると言えます。
 政府は知的財産立国を標榜(ひょうぼう)し,日本の文化の国際展開を図るクールジャパンなどの施策を推進しています。しかし,どんなに良質なコンテンツがつくり出されても,著作権を軽視する行為が横行すれば,知的財産立国の夢は幻想に終わります。「柔軟な権利制限規定」は,著作物の保護に反するだけでなく,知的財産立国を目指す我が国の方針にも反するおそれがあります。
 以上の理由から,当協会は「柔軟な権利制限規定」の導入に反対します。
 「本小委員会での議論の尊重を」。本小委員会では,クラウドに関連する事業者,利用者,権利者の代表と学識経験者の方々が,意義深い議論を重ねてこられました。その議論の結果,本小委員会として一定の結論が得られるのであれば,それは関係者が一堂に会した場での議論の成果にほかなりません。本小委員会での議論と,その成果が尊重されることを強く要望し,日本新聞協会の意見表明とさせていただきます。
 以上です。

【土肥主査】  山浦様,どうもありがとうございました。
 田所様,中山様はよろしいですか。
 それでは,次に,一般社団法人日本商品化権協会から御意見を頂戴できればと思います。本日は尾形様においでいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

【尾形氏】  初めまして。日本商品化権協会の尾形と申します。このような場で意見表明をさせていただくことを感謝申し上げます。
 私どもの説明は後ほどいたしますが,私どもの協会として,著作権法,並びにその判例に基づいて,個別のサービスでございますが,私的複製の支援サービスにおけるプリントサービスについて検討した結果をまとめましたので,この審議会の議論の一論になればなというふうに思っております。
 では読ませていただきます。「私的複製の支援サービスにおけるプリントサービスについての意見」です。
 事業者が利用者の注文にも応じて,注文者の指定する商品上に注文者の提供する画像をプリントするサービスについてだと思います。そのサービスが,現行の著作権法上,違法であるということは,10月22日の知財高裁の自炊代行事件の判決をもって,論をまたないことでもあります。
 すなわち,左の図,ちょっと「ONE PIECE」の絵がずれておりますが,これは申し訳ございません。左の図のように,事業者が,注文者の指定する商品上に,注文者が提供する画像,又はそのデータをプリントすること自体が著作権法上の複製行為に当たることは明らかであって,利用者が係る複製行為には全く関与していないことから,複製行為の主体は当然に事業者です。事業者が営利を目的として,不特定多数の利用者のために上記のような複製を行うことが,著作権法30条1項の私的使用の複製に該当しないことも明白であります。
 以上のとおり,現行著作権法上,本件プリントアウトサービスは違法なものであります。係る結論は,著作権者の保護の必要性の観点からすれば,書籍の自炊代行の場合以上に合理的なものと考えます。書籍の自炊代行の場合,複製により作成されるのは書籍の電子データであって,これは有体物と無体物の違いこそあれ,利用者が提供した有体物たる書籍と実質的には同一又は同種のものであり,利用者の立場からすれば,自らが所有する書籍に記された言語の著作物を読む手段が,電子データを閲覧するという方式に変わったことでございます。
 これに対して,本件プリントサービスにより作成されるのは,例えば利用者が指定する「ONE PIECE」の「ルフィー」の画像をプリントしたマグカップであって,利用者が提供したものとは全く異なる新しい商品であります。そして,自分の好みの「ONE PIECE」の「ルフィー」の画像がプリントされたマグカップを新たに手にすることができた利用者は,市場では販売されている「ルフィー」のマグカップは購入する必要がなくなります。この点,自炊代行の場合と違いまして,書籍が電子ファイルに転換されることにより,ファイルが容易に転々譲渡されるリスクが指摘されることがありますが,係るリスクに比べて,著作権者に与える経済的悪影響,これはマグカップだけに限っての市場ですが,昨年度で,ロイヤリティ収入では約10.8億円ございます。本件プリントサービスを認めた場合,係る収入は,簡単に申しますと,「ONE PIECE」のファン,映画ファン,約500万人おりますが,500万人のうち1人でも私的複製をすれば1割減るというぐらいに被害が拡大するということであり,プリントサービスの方がより直裁的で深刻であります。
 また,書籍の自炊の場合は,比較的安価に自炊に必要な機器を一般個人であってもそろえることができます。実際に個人レベルで自炊行為を利用している例は相当あると思いますが,本件プリントサービスに必要な機器は,現状販売されている業務用で200万ぐらいします。この200万円を個人の方が買った場合に,この機械をそれだけに使うでしょうかという問題も出てきますし,絶対的に私的複製の目的でそれを購入するということは想定できません。
 よって,当該機器を利用して営利目的で本件プリントサービスを第三者に提供するようになるおそれは決して小さくなく,自炊代行業は,既に行われている個人の自炊行為をより容易に利用できるようにするものにすぎないが,本件プリントサービスは,現状,個人では経済的にできないような行為を可能とするものであって,このようなことからしても,本件サービスを適法と認めることにより,著作権者に与える経済的悪影響は自炊代行サービス以上であることは明らかであります。
 よって,当協会としては,以上3つの観点から,本件プリントサービスを適法なこととすることには反対であります。また,本件プリントサービスに関しましては,著作権者と事業者との間で商品化契約を締結して実行すべきと考えます。
 ここで,最後に当協会の御説明をさせていただきますが,商品化権に関する唯一の団体として昭和52年4月より発足しまして,キャラクタービジネスにおける法的保護の明確化,権利擁護とともに,不正使用の撲滅,無許諾商品の排除と,日本商品化権大賞によるキャラクタービジネスの振興と人材の育成に努めてまいりました。
 当協会に加盟する会員は,アニメ製作会社,映画製作会社,原作者,テレビ局などのライセンサー約53社と,ライセンシーその他一般の21社からなります。そのライセンサーがライセンスしているキャラクターは,日本のキャラクター商品市場の小売市場の規模の中で約52%のシェアを持っております。
 この問題は,当協会,また業界に取って死活問題でございます。是非この審議会で厳正なる審議をお願いしたいと思っております。
 以上です。

【土肥主査】  尾形様,どうもありがとうございました。
 それでは,これまで,株式会社ホットリンクの内山様,それから書協から村瀬様,それから新聞協会から山浦様,それから,今の商品化権協会の尾形様の御意見の御発表につきまして,どうぞ御質問ございましたらお願いをいたします。
 いかがでしょうか。津田委員,お願いします。

【津田委員】  2つあるんですが,まず1つ,最後の日本商品化権協会の方は,クラウドの話とどう関わってくるのかというのがよく分からなかったので……,プリントサービスですよね。プリントサービスのところで,これはどういうふうに理解すればいいのかなと思いまして。

【土肥主査】  津田委員の御質問ですが,要するに本日はクラウドサービス以外の,JEITAがこれまでお示しいただいたところの9サービスについて,著作権法上の位置づけ等々を,あるいは実態としてどういうふうな形で進められているのかということを伺おうということで,この第7回は設定されているのですけれども……。

【津田委員】  分かりました。では,新聞協会さんの方に御質問したいんですが,新聞協会さんの発表の2ページのところで,「柔軟な権利制限規定に反対」というところがあるんですが,このクールジャパンの施策を推進というところのお話が,クールジャパン施策が引き合いに出されてはいるんですが,現実に,今,いわゆるクールジャパンということで,今,相当注目されている,クールジャパンを牽引(けんいん)しているコンテンツはたくさんあります。ゲームですとか,音楽ですとか,アニメですとか,いろいろある中で,その中でも存在感を相当高めているのは,やっぱりネット発のコンテンツだと思うんですね。KADOKAWAグループですとか,またドワンゴですとか,その2つの企業は合併して,KADOKAWA・DWANGOになったわけですけれども,例えばKADOKAWAであれば,ネットに関しては相当柔軟に対応してきて,YouTubeに上がっていた自社のライセンスがあるような動画,違法な動画について,その中からコンテンツに対してリスペクトがあるものは合法化して認めることによって,それで広告をつけてビジネスをするといったことですとか,あと「ニコニコ」に関しても,サービス開始当初,相当たくさん,いろいろな違法な動画が上がっていたわけですけれども,その後,JASRACを含めて,ライセンスを結んでいくことで適法化していったという経緯がある。
 そのときの時点で,もしサービス自体をつぶすようなことがあったら,クールジャパン的なコンテンツというものが相当阻害されていたのではないのかということがありますし,また「ニコニコ」自身も,今,動画に完全に白になっているかというと,そんなこともなくて,厳密に見ていけば,例えば音楽がいろいろな形でミックスされたものが上がっていたりとかして,権利侵害動画が別にないわけではないわけですね。
 じゃあ,そういうものも含めて,サービス上で行われている権利侵害に対応していくことでソフトパワーを落とすということが,これはクールジャパンとして目指す方向と合致しているのかということをお伺いしたいということと,あともう一つ,自分もジャーナリストなので,そちらの観点から1個質問したいのが,柔軟な権利制限規定というのは,実は新聞,ジャーナリズムにとっても命綱みたいなところがあって,著作権法を厳密に運用していくと,ジャーナリズムを追求する側(がわ)にとっても不都合が生じると思うんですね。
 例えば報道というのは,今,日本の著作権法では,報道目的であれば複製が許されるという権利制限があるわけですけれども,その一方で,その権利制限の範囲をめぐっていろいろな訴訟も起きているわけですね。本来は,著作権法の著作権侵害に対しての是非を問うというよりは,その記事そのものを差し止めたい,それに対して言論を,圧力をかけたい,取り下げたいという目的で,でもそれを真っ向からやるのが難しいので,著作権違反だということで記事を取り下げようというような,いわゆる言論そのものに対しての攻撃をしたいけれども,そこで争うことは難しいので,著作権法でいこうというような訴訟が幾つか出てきている。
 例えば2008年には,まさに読売新聞の,いわゆる押し紙をめぐる記事について,その中で引用されている記事の著作権をめぐって裁判とかも実際に起きているわけですから,これは,新聞協会さんは著作者という立場もあるけれども,同時にジャーナリズムの追求をする側(がわ)の立場でもあるわけで,ここについては,多分,柔軟な権利制限規定に反対するというのは自殺行為の1つでもあると思うんですが,この点,いかがお考えかをお聞かせください。

【土肥主査】  中山様,よろしくお願いします。

【中山氏】  新聞協会の中山でございます。
 まず,前段のドワンゴさん,ニワンゴさんのビジネスに関しては,私は詳細を存じ上げないので何とも申し上げられません。恐らく何らかの形でお話合いがなされて,適法化して,ビジネスになるということで,現状,そういうことをなされているのではないかなと思いますが,むしろそれは杉本委員にお話を伺った方がいいのかもしれません。私どもの立場として,そのことについて何らかの評価を申し上げることはできないので,差し控えさせていただきます。
 また,その権利制限の問題ですけれども,確かに著作権法上は32条や41条という規定がございまして,私どもの報道上,そういう規定を活用させていただくこともございます。それは報道目的ということで,一定の範囲で他の方の著作物を利用することが認められているということです。私どもは,迅速かつ正確に,さらには豊富に,情報を多くの方にお伝えしなければならないという責務を背負っております。そのために,そのような著作権法上,現状ある権利制限規定が役立っていることは否定しません。
 しかし,先ほど津田委員から訴訟が起きているというような御発言もありましたけれども,様々な報道の中で,あるいは報道分野以外の事業の中で,いろいろなコンテンツを利用するに当たって様々なトラブルが起きかねないということも現実にはあるかと思います。しかし,それ以前に,私どもは,基本的に権利者の正当な利益を不当に害することがないように,慎重かつ十分な検討を加えて様々な事業を展開しております。
 一方で,権利者との間で見解の相違が生じることがないわけではありません。その場合は話合いによる解決を目指しておりますし,どうしてもその話合いの努力で溝が埋まらない場合には,裁判に発展するということが実際に起きることもございます。
 しかしながら,私どもは,報道その他の事業を展開する上で,法的リスクを負いながら日々の業務に当たっております。柔軟な権利制限規定の導入を求めておられる方々は,法的リスクがあるために委縮して事業ができないとおっしゃっておられますが,現に私どもは,そのような法的リスクを背負いながら日々の業務を遂行しております。
 したがって,報道のためにさらなる権利制限を求めるべきかどうかということについては,私どもは現行の法規の中でできる限りの報道を,皆様に情報をお伝えするという責務を果たしていくということを現状やっておりますので,そのような一般的な権利制限規定が必要とは考えておりません。
 以上です。

【津田委員】  今の中山さんのお話の中で,不当に害することのないようにということに留意しながらやられているというのは,僕はこれがポイントだと思っていて,これは,このフェアユースの議論のときに必ず出てくる話ですが,アメリカ型のフェアユースであっても,基本的にそれが認められるかどうかというのは,大きく2つあるわけですね。デッドコピーではなくて,きちんと何らかの変容を加えているかどうかということとともに,そしてそのコピーが複製されたときに,その結果として権利者の市場を荒らすかどうかという,この2つが相当厳しく見られた上で,フェアユースがどうなのかというのを判断されるという意味で考えると,だからどうしても,きょうの話にも出てきますけれども,一般的な権利制限規定そのもの,柔軟な権利制限規定を認めることそのものが,自分たちの市場が,それはイコール荒らされるという前提でお話しされている委員がすごく多いということに僕はすごく違和感を抱いていますし,むしろ,その中でも,この現状の枠組みの中でも,だから言論について言えば,著作権法が乱用されている,言論を統制する目的で著作権法が悪用されると僕は思っています。悪用されるような事例があるときに,そこに対してジャーナリズムの側(がわ)が闘うときの強力な1つの武器として柔軟な権利制限規定というのがあるのではないか,その点についていかがお考えですかということを伺ったつもりですが,いかがでしょうか。

【土肥主査】  そういうことも非常に興味深いかとは思うんですけれども,本日の議論としては,そもそも参考資料2の私的複製支援サービス,クラウド上の情報活用サービス,この1のクラウドサービスを除いた9サービスですね,例えば,きょう,新聞協会様の方でおいでいただいたのは,恐らく論文作成とか検証支援サービスとか,そういったところとの文脈の中でどうなのかということを,御意見を伺えればということでおいでいただいたのだろうと思いますし,それから内山様にわざわざおいでいたいたのは,参考資料2の中のスライド79のところに「(日本)クチコミ@係長」というのがあるんですね。まさにこういう評判分析サービスというビジネスモデルを運営されている,まさに内山様は携わっておいでになるわけでありますけれども,先ほどのお話だと,契約ベース,つまり一般の書き込みをなさる方とSNSの運営者との間の契約,それからさらに,そこと内山様の会社のところの間の契約という形で処理なさっているというか,その業務を進めておいでになるというふうに承りましたけれども,著作権法との関係で,今現在のビジネスをおやりになる上で,何か支障等があるとか,あるいは著作権法との観点で,このビジネスというものを見た場合に,将来的なものも含めて結構ですけれども,何か御意見はありますか。

【内山氏】  現状の著作権法の範囲の中で,十分,評判分析サービスは行っていけると考えております。逆に,今の著作権法があるからこそ,サービス運営者のサービスを使っているユーザーさんたちが安心してサービスを使えたり,お金がきちっと還元されることで彼らのサービスが維持できているという側面があるので,現状の形がいいかなと思っております,我々のサービスにおいてはですね。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかに,せっかくの機会でございますので,こういう機会はなかなかもうないのではないかと思いますから,特に9サービスとの関係で,御質問,御意見等をいただければというふうに思っておりますが。榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  先ほど自炊代行について,書協の方と,それから商品化権協会さんですか,が触れておられたんですけれども,確かにJEITAではメディア変換というふうに言っておりますので,自炊代行訴訟も含むものですけれども,先ほどからずっと柔軟な規定が欲しいと言っている理由とも関係するんですが,自炊代行といったときに,私も最初は非常に悪いイメージを持ちまして,1冊だけ本を買って,それを電子化してたくさんの人にばらまくようなことをやっている人がいると聞きました。一方で,この訴訟になっている人は,実際,今の著作権法を厳格に解釈せざるを得ないということでこういう結論にはなったと思うんですけれども,必ず本をお金を出して買ったユーザーが,それを業者に送って,業者が電子化をしているというビジネスで,その意図というか,こういう業務に対するニーズとしては,お聞きしたところ,例えば老人ホームに入らなければいけない高齢者の方で,本を置くスペースがなくなるとか,あとは私ども弁護士とか,医者とかもそうだと思うんですけれども,たくさん本を持っていてスペースがないとか,持ち歩くときに重たい本を電子化したいとか,わりと本をよく読む人,よく買う人がスペース不足で頼むとか,時間もないというケースが多くて,何が言いたいかといいますと,いろいろなサービスがあり得るし,このサービスは,実際,電子化した後に,その裁断した本は返さずに溶解処分をして,廃棄証明とかも業者からとっていますし,居直りの蔓延(まんえん)がということを反対される理由でよく言われるところでもあるんですけれども,悪い人は,別にフェアユースの規定があってもなくても悪いことをすると思うんですけれども,こういうわりと真っ当な業者というのは,お客さんに渡した電子ファイルがネットに出ていかないようにするために,自分のところで電子化したということが分かるような情報を,メタ・データですか,打ち込んでいるので,それが仮にネットに出ると,追いかけることができるわけですね。
 ネットに出たら,先ほどからYouTubeとか検索エンジンでも一緒ですけれども,載ってほしくない情報であれば,プロ責法とかを使って消していくということが今でもできるわけです。そうすると,全部のメディア変換,全部のプリントサービスが悪いということではなくて,線引きで認められるべきものと,認められては困る,著作権者に不当に損害を与えるものというのがあるはずで,認められるべきものについては,損害がないという抽象的な要素を使うことによって,そういう人は救っていく,そうでない人は,現行法とか,そういう柔軟な規定でも黒になっていくわけで,規定が入ったらそういうものが白になるわけでは全然ないわけですね。だから,そういうことを検討いただけないかなと思いました。
 以上です。

【塩見氏】  済みません,よろしいでしょうか。

【土肥主査】  じゃあ,内山様から,次にお願いします。

【内山氏】  私のさっきの発言に関する補足,最後に一文だけ加えたんですけれども,改めて一応補足させてください。
 現状の著作権法の範囲で評判分析サービスは実行できますし,現状の著作権法のおかげで,そこのエコ・システムが回っていると述べました。それは飽くまで我々のサービスの範囲においてということであって,今,いろいろ議論されております音楽であるとか,映画であるとか,書籍において現行著作権法がどうなのかということに関しては,私の意見はそこに対しては及んでおりませんので,そこはつけ加えさせてください。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,書協の塩見さん。

【塩見氏】  塩見です。よろしくお願いいたします。
 私,書協の代表でもありますけれども,同時に違法スキャン対策出版社連絡会に携わって,この自炊訴訟にも若干関わっていますので,その立場から御説明させていただければと思いますけれども,基本的に個別の案件ですので,その訴訟の事業者がどうかという問題はさておき,必ずしも,いわゆるこの出版社対策連絡会としては,スキャン事業のニーズというか,そういうことを全て否定しているわけではありませんし,基本的にスキャン事業は全て駄目だと認められないということを言っているわけでもないわけですね。そういう意味で言うと,基本的に,そういうスキームをどうやってつくっていくかというのは今後の課題でありますけれども,いわゆる許諾というか,契約ベースで,ちゃんと著作権者と契約ができたものについては認めていくことができればと。
 そういう意味で言いますと,私ども,JCOPYという組織がありまして,その中では,来年4月から,書籍だけではなくて電子も複製を許諾していこうという仕組みを考えております。だから,そういう意味で言いますと,そういう許諾,契約というところで,そのニーズに対してできるだけ対応できればという方向性と持っているということをお示ししておきたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】  ここはフェアユースの議論をする場ではないと僕も思っていますので,関連して余り発言はしたくはないんですが,先ほど来御説明いただいたように,こうした利用者を支援するサービスについてビジネスモデルが様々考えられると。それがどういう経済的な効果を生むかということが前提になって,その事業を行って軌道に乗せるというときには,原価計算等を行う中で関係権利者ときちっと交渉して許諾を得るということがまず前提となるべきだし,皆さんそう動いていると思います。それを,権利者の不利益にはならないのだからという,非常に抽象的で不確かな理屈の上で,ストレッチの利いた制度というふうに榊原さんはおっしゃいますが,そういうフェアユース規定の導入が必要だという主張をなさる理由が全く分からないんですね。
 許諾を得ることによって,ビジネスをされている方は,もうされているわけです。まだされていない方や,これから参入する方が,権利処理を迂回(うかい)できたら有り難いなと,もしかしてそういうふうにお考えになるかもしれないけれども,例えば榊原さんの会社,パナソニックだと伺っていますけれども,パナソニック社が有している知的財産権もあると思うんですね。例えばそれをこの際オープンにすることが公共の利益に資するということになって,そういう議論がされたとしたら,パナソニックとしてどういう反応をなさるのかなあ,と思ってお話を聞きいていました。
 どちらかの資料にも書いてありましたけれども,JEITAという,日本の基幹産業とも言える,そういった業界の団体がここまでアナーキーな主張をされるということについて,いったいどういう背景があるのかなと,非常に不思議な思いを持ってうかがっていました。これ以上,ここでこの話を議論する必要はないのではないかというふうに思います。

【土肥主査】  今のは御意見でよろしいですね。

【椎名委員】  はい。

【土肥主査】  今回の9つのサービスの中には,先ほど華頂委員から,メディア変換サービスに関しては御意見を既に頂戴したわけですけれども,それ以外に,個人向け録画視聴サービスとか,法人向けの番組検索サービスのような映像分野に関わるサービスもこの中にはあるわけでございます。したがいまして,華頂委員,笹尾委員,映像関係の委員の方もおいでになりますので,この点について,何かこの場で御意見いただけるようなことがあれば頂戴したいと思うんですが,いかがでしょうか。じゃあ,華頂委員から。

【華頂委員】  今,椎名委員からも御発言があったんですけれども,この参考資料を,私もここに出てくる前にもう一度読み返してみたんですけれども,きょうお越しいただいている団体の方々のお話も聞いていると,要するに,ここに羅列されているサービス,これから本流に乗っていくようなサービスだと思うんですけれども,やはり著作権者も,こういう状況にある,デジタル技術が非常に進捗しているということを受けて,ビジネスにいずれしていくというものが多いと思うんですね。だから,ビジネスにしていく,その著作権者を超えて,権利制限で何もかもというのはちょっとおかしいのではないかなというふうに思います。

【笹尾委員】  若干重複になりますけれども,先ほど,私,テレビ局が見逃し配信のようなものを自ら始めようとしている,そういう実証実験等も始まっているというお話を差し上げました。今回,この典型として扱われているものの,特に放送に関するものに関しましては,ライセンスを得ていない第三者が見逃し配信をしているということに結果的にはなっていくのではないかというふうに思っております。
 本当にいろいろな事業者の方と,それこそ,きょうはいらっしゃらないけれども,「ニコニコ」の方々とも,テレビ局,放送事業者のきちっとした話合いができております。そういう歴史を経てここまで来ております。ライセンス等,話合いをしていくということが全ての源になると思いますし,見逃し配信をするに際しても,放送局としては様々な権利者の方々と話をしていくということになります。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 もしほかに御質問,御意見がなければ,大体このくらいで本日は終わりたいと思いますが,いかがですか。よろしゅうございますか。
 それでは,本日おいでいただきました,意見,発表を頂戴いたしました内山様,山浦様,先ほどお帰りになりましたけれども,それから書協の村瀬様,商品化権協会からおいでいただいた尾形様,どうもありがとうございました。
 本日検討いたしました各サービスについては,引き続き,本小委員会においても議論をすることになろうかと思います。
 最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  次回小委員会につきましては,日程を調整の上,追って御連絡したいと思います。

【土肥主査】  それでは,これで,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第7回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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