文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第4回)

日時:令和2年1月24日(金)
10:00~12:00
場所:航空会館201会議室


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)について
    2. (2)独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンシーの対抗制度に関する審議の経過等について
    3. (3)令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1-1
「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集の結果について(162.1KB)
資料1-2
写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)(242.9KB)
資料2
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム審議経過報告(225.3KB)
資料3
令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(案)(133.6KB)
参考資料
「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(令和2年1月16日)(534.2KB)
出席者名簿(44.9KB)

議事内容

【茶園主査】では,時間になりましたので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第4回)を開催いたします。本日は,御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところですけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴していただくことといたします。

では,まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第の配付資料一覧をごらんいただければと思います。

まず資料1-1が「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集の結果について,資料1-2が写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)となっております。また,資料2がライセンスに関するワーキングチームの審議経過報告,資料3が本小委員会全体としての審議の経過等についてでございます。また,参考資料と致しまして,「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめをお配りしております。不足などございましたら,事務局までお申し付けいただければと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

それでは,議事に入りますけれども,初めに,議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は,(1)「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)」について,(2)独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンシーの対抗制度に関する審議の経過等について,(3)令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について,の3点となります。

では早速,議事に入りたいと思います。まず議題(1),「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)」についてでございます。写り込みに係る権利制限規定の拡充につきましては,前回の小委員会におきまして中間まとめを取りまとめまして,その後,1か月の意見募集を行っていただきました。その結果を踏まえまして,事務局において報告書案を作成していただいておりますので,まずは事務局から意見募集の結果と報告書案につきまして説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それではまず,資料1-1をごらんいただければと思います。

1ポツにございますとおり,昨年の10月31日から11月30日まで1か月間意見募集を行いましたので,その結果について簡単に御紹介いたします。

まず件数につきましては,2ポツにございますとおり,団体から12件,個人から14件,計26件の意見を頂いたところでございます。

内容については,3ポツで記載しておりますので,順に御紹介いたします。まず(1),総論に関する意見でございます。中間まとめにおきましては,写り込みに関する規定について,そもそもの規定の趣旨,正当化根拠が妥当する範囲で可能な限り柔軟に対応できるように規定を拡充していくという方向性が示されておりました。これについて,賛成をする意見を,こちらにございますとおり,日本弁護士連合会はじめ計7団体及び個人から頂いたところでございます。

また,2ページに参りまして,そういった基本的な方向性について,反対,慎重な御意見も幾つかございました。具体的には,1つ目の丸の2行目から3行目辺りでございますけれども,権利制限の範囲を拡大すべきとする具体的な立法事実が示されているとは言い難いといったような観点から慎重な検討を求めるという意見が,権利者団体や個人から寄せられたところでございます。

また,3ページに参りまして,その他の意見と致しましては,今回の改正の方向性については賛成するけれども,前回の法改正で導入された軽微利用,すなわち柔軟な権利制限規定や,私的ダウンロード違法化との整合性を保つようにという御意見もございましたし,また,2つ目の丸にあるように,いわゆる「雪月花事件」のような,著作物性と書かれておりますが,著作物の複製・利用に該当するかどうか,こういった判断に影響を与えないようにという御意見も頂いたところでございます。

次は(2),対象行為についての意見でございます。対象行為につきましては,技術・手法にかかわらず幅広く含まれるように包括的に規定するということになっておりましたが,この方向性に賛成する意見が4団体から示されております。一方で,対象行為の拡大の一部に反対する御意見として,1つ目の丸にありますように,いわゆる意図的な写し込みまで容認すべきではないといったような御意見が示されたところでございます。

次に4ページに参りまして,(3)番,著作物創作要件についてでございます。この点につきましては,1つ目の丸にありますように,必ずしも創作性の認められない映像においても,写り込みが生じることは多々あるなどとして賛成する意見があった一方で,個人の方からは,この規定,要件は維持すべきという御意見も頂いております。また,違法行為に伴う写り込みの取扱いについても,中間まとめに記載されておりましたけれども,この点については,1つ目の丸にありますとおり,主たる行為が違法かどうかということが権利制限の成否の判断の要素としては勘案できるようにすることが適当といった御意見が寄せられたところでございます。

次に,(4)番,分離困難性・付随性についての御意見でございます。中間まとめでは,分離困難性の要件は削除し,付随性の要件を中心に再構成をすること,その際に,濫用的な利用に歯止めを掛ける意味でも,「正当な範囲内」という要件を新たに追加する,このような方向性を示していただいたところでございます。こういった基本的な方向性に賛成する意見として,こちらに記載のとおり,4団体,それから,個人から頂いております。

一方で,5ページ目に参りますけれども,特に分離困難性を削除した場合の悪影響を懸念する意見が権利者団体を中心に寄せられたところでございます。例えば1つ目の丸にありますように,分離困難性の削除によって濫用的な行為まで可能になることを懸念するという御意見や,2つ目の丸の2行目辺りからありますように,居直るケースが生じ得るので,それを抑止するためにも分離困難性を付随性の判断要素の1つとして位置付けることが適切という御意見も頂いたところでございます。また,3つ目の丸にありますとおり,いわゆる意図的な写し込みを認めることに合理性はない,とりわけ映像コンテンツのBGMのような利用まで対象になると権利者利益が不当に害される可能性が高いと,こういった問題意識も示されたところでございます。また,4つ目の丸は,「正当な範囲内」という要件についての御意見でございますが,極めて抽象的な内容で不明確なので,明確な基準(指針)を示す必要があると,こういった御意見も頂いてございます。

次に6ページに参りまして,被写体の中に当該著作物が含まれる場合を明記することに関する意見でございます。これに関しましては,上の3つについては賛成する意見でございます。一方で,4つ目の丸のように,ブライダルの記録用ビデオへの楽曲の録音,これにつきましては,既に利用許諾契約を締結している状況がある中で,こういったものまで権利制限の対象になることは避けるべきだということで,そういったものが対象外であるということを明確にする必要があるという御意見がございました。

また,次に(5)番,軽微性についてでございます。中間まとめでは,軽微か否かの判断に資するように考慮要素を明記するということになっておりましたが,その点に賛成する意見がこちらに記載の複数団体から寄せられてございます。一方で7ページ目に記載のとおり,考慮要素を明記することでかえって権利制限の対象となる幅が狭く解される恐れもあるといった御意見も頂いております。また,中間まとめでは,47条の5を参考にというふうに書いておりましたけれども,47条の5と写り込みの規定は趣旨・内容が異なりますので,同じような考慮要素にはならないのではないかという御意見も頂いたところでございます。

次に,(6)対象支分権につきましては,限定せずに包括的な規定とすることに賛成する意見や,いわゆる写し込みなどの議論,これをしっかりするものであれば賛成するという御意見がございました。

次に,(7)番がただし書きについての御意見でございます。1つ目の丸にありますように,今回,写り込みの規定をかなり拡充しますので,これに伴って無制限に対象が拡大されることが懸念されるために歯止めが必要,ただし書きが重要であることが分かるような記載が必要といった御意見がございました。また,3つ目の丸も同様の問題意識だと思いますけれども,今回幅広い行為を対象にしますので,ただし書きの適用場面は増加するはずだといった御意見もあったところでございます。

最後の8ページに参りまして,(8)がその他に関する意見でございます。まず1つ目の丸と2つ目の丸は同趣旨かと思いますけれども,改正内容・趣旨の周知徹底,ガイドラインの策定,法改正後の解説をしっかり行うことで,この規定の内容がしっかり伝わるようにするとともに,不正な利用がされないように対応する必要性が示されているところでございます。

また,本改正とは直接関係しませんけれども,その他の事項に関する意見と致しまして,いわゆる抜本的なフェアユース規定の在り方を引き続き検討すべきという御意見や,現在検討中の海賊版対策のための法改正などとの関係についての御意見も一部寄せられたところでございます。

続いて,資料1-2をごらんいただければと思います。中間まとめにただいま御説明したような意見が寄せられたことを受けて,報告書の案を事務局で作成しておりますので,簡単に御紹介いたします。中間まとめから修正している部分を赤字にしておりますので,この部分について簡単に御紹介をしていきたいと思います。

まず1ポツ,問題の所在につきましては,2段落目を追加しております。先ほど御紹介しましたとおり,パブリックコメントでは,立法事実が必ずしも明らかではないといったような御指摘もございましたので,若干その記載を追加しております。具体的には,スマートフォンやタブレット端末などの急速な普及に伴ってスクリーンショットがごく日常的に行われるようになっていることや,動画投稿,配信プラットフォームを活用した個人による生配信が容易になっていることなど,社会実態が大きく変化したことによって本規定の適用場面が限定されていることの問題点が従来よりも顕在化している状況にある,という問題意識を記載しております。

また,3段落目には,昨年度の小委員会において明らかになったニーズについて記載をしておりましたが,より具体的に,ドローンを有効活用した生配信サービスを例として明記しているところでございます。

続いて,2ページに参りまして,基本的な考え方の最後の部分に1か所だけ追記をしております。もともとこの部分では,規定の柔軟化をする一方で,濫用的な利用などを招いてはいけないということが書かれておりましたが,パブリックコメントではライセンス市場との関係を懸念する御意見もございましたので,既に形成されているライセンス市場を阻害することがないように,ということも追記させていただいております。

次に,3ポツ,検討結果についてでございます。まず,注釈の4番を新しく追加しております。パブリックコメントで示された御意見を踏まえまして,今回の見直しによって,いわゆる「雪月花事件」のような事例における複製該当性等の判断に影響が及ぶものではないことについて,当然だとは思いますけれども,確認的に追記しております。

続いて,3ページに参りまして,(1)対象行為の部分でございます。この点,イ.見直しの方向性の部分に,先ほども御紹介したような立法事実というところを若干追記しているところでございます。

続いて,4ページに参りまして,マル2,固定方法の拡大というところに2か所追記を行っております。1か所目は,もともとスクリーンショット,プリントスクリーンを例示に挙げておりましたけれども,コピー&ペーストについても同様のものかと思いますので,その例を追記しております。また,2段落目には,スクリーンショットなどで写り込みが生じる場合ということを記載しておりましたが,そのイメージをより持っていただくために例を追加しております。具体的には,SNSへの投稿を保存する際にアニメキャラをアイコンに用いた小さな画像が入り込む場合,こういったものが今回の対象範囲の拡大で認められる典型例かと思いますので,追記をしているところでございます。

次に5ページに参りまして,(2)著作物創作要件の部分でございます。ここでは,現行規定,それから,見直しの方向性ともに,固定カメラで撮影する場合に言及して記載しておりましたが,スクリーンショットについてもこの要件との関係で問題になる典型例かと思いますので,その記載を追加させていただいているというところでございます。

それから,5ページから6ページが,いわゆる違法行為に伴う写り込みについての記載でございます。5ページの下辺りに,マル1,マル2,2つの考え方を示しております。マル1は,映画の盗撮など主たる違法行為自体が既に違法なので,あえて写り込みの部分を違法とする必要はないという考え方,マル2としては,主たる行為が許容されないのに,写り込みを適法にする必要はないという考え方ですが,この両方の意見があるというふうに記載をしていたところでございます。この点,最終回の前回の中間まとめをおまとめいただいた際の小委員会におきましてはマル1の意見が多く示されていたところ,中間まとめでは必ずしもその点が反映ができておりませんでしたので,6ページ目の下から3行目に,マル1の考え方を支持する意見が多く示されたという記載に修正をさせていただいております。

また,パブリックコメントでは,違法行為に伴うという事実が全体の規定の解釈には反映されるようにすべきだという御意見もございましたので,他の要件やただし書きの解釈によって対応することも含めて適切な整理・措置がなされることが適当,という記載にさせていただいております。

次に,(3)分離困難性・付随性についてでございます。2段落目に若干の追記を行っております。ここではもともと子供に縫いぐるみを抱かせて写真を撮影するという事例について,現行規定で対象から外れるが,今回対象に含めるべきであるという問題意識の下,記載をしておりました。この点,後ほど御説明をする「正当な範囲内」という要件との関係で,確実に対象になるべきものを書いておくべきかと思いまして,家族の思い出を残すためという記載をすることで,個人的に,家庭的に行うビジネス的な利用ではないというニュアンスをこちらに書かせていただいております。

次に,7ページに参りまして,見直しの方向性のマル1の部分でございます。従来から分離困難性を削除して付随性という要件を中心に再構成しようという考え方を示しておりましたけれども,この点についてはパブリックコメントで懸念も示されたところでございますので,より丁寧な記載を2段落目で行っております。

具体的には,分離困難性については,付随性を満たす場合の典型例を示すものではあるけれども,このような要件によって外形的・画一的な判断を行うことが,本規定な正当化根拠からして必須のものとは考えられない旨をまず記載しております。このため,日常生活等において一般的に行われている行為のうち,社会通念上正当と認められ,著作権者の利益を不当に害することが通常想定されないものについては,必ずしも分離困難とは言えない場合,意図的に著作物を配置して撮影などを行う場合も含めて対象になり得るようにする,こういった観点から,分離困難性の要件を削除し,実質面に着目した形で柔軟な判断を可能とすることが適当という記載としております。このような形で,なぜ分離困難性を削除するのかという点について若干の補足をしているところでございます。

次にマル2の部分につきましても,パブリックコメントで寄せられた懸念に対応した記述を追加しております。具体的には,4行目辺りから事例を幾つか挙げて追記をしております。具体的には,テレビ番組やインターネット動画等のBGMとして楽曲を意図的に利用する行為,ブライダルの記録用ビデオを作成する際に楽曲が重要な要素となる主要場面で流れる楽曲を収録する行為,ネット配信の視聴者数を増大させて利益を得る目的で,有名キャラクターのフィギュアや有名画家の絵画などを意図的に配置して写し込む行為,ゲームをプレイする動画をネット配信する際に当該ゲームの映像・画像を利用する行為,こういった行為につきましては,その一部は既にライセンス市場が形成されており,無許諾での利用を認めた場合には権利者の利益を不当に害することが明らかな行為に該当するかと思います。それ以外につきましても,自ら利益を得る目的で他人の著作物を意図的に利用する場合ということかと思いますので,こういった場合については,権利者から許諾を得て利用することが可能かつ合理的と考えられるますので,こういうものまで対象となってしまう恐れがある,そういうことは望ましくないということをここに記載させていただいております。

また,次の段落のところでは,パブリックコメントで「正当な範囲内」という要件が曖昧であるという御意見や,先ほどのような事例が対象に含まれないようにする必要があるという意見も示されたところでございますので,「正当な範囲内」の部分についても,考慮要素を明記することでその趣旨を明らかにしてはどうかということで追記を行っております。考慮要素の例としましては,7ページから8ページ目に記載をしておりますが,例えばその著作物の利用によって利益を得る目的があるかないか,分離困難性の程度(意図的に利用するか否か)という観点とか,あとは,作品全体のテーマとの関連性の程度,こういったものを例示した上で,「正当な範囲内において」と言えるかどうかを判断すべきではないかということで記載をしております。その上で,先ほど御説明したような行為については除外をしつつ,一方で社会通念上正当と認められるものは幅広く対象に含まれるようにすることが適当という記載にさせていただいております。

それから,マル3,被写体の中に当該著作物が含まれる場合の扱いについてでございます。これは表現の適正化でございますけれども,被写体の中に入っていれば何でもいいというわけではないかと思いますので,2行目から3行目にかけて,被写体の一部に当該著作物が付随的に含まれる場合ということで,当初想定していた趣旨を明確にしております。また,それとの関係で,下から2行目辺りでございますけれども,雑踏に含まれる看板・ポスターなどを主たる被写体とする意図がある場合,こういった場合につきましては当然対象に含まれるものではありませんので,その旨が明らかになるように記載をしております。

次に,9ページが軽微性についてでございます。考慮要素を例示するという考え方を示しておりましたけれども,この考慮要素によってかえって柔軟性が妨げられるという御意見や,考慮要素は限定列挙ではない形にすべきだという御意見がございましたので,考慮要素を例示した上で,「その他の要素に照らし」という形で規定して,限定列挙でない旨が明らかになるようにという記載を追加しております。また,47条の5と本規定では考慮要素が違うのではないかという指摘もパブリックコメントでございましたので,考慮要素が完全に同じになるわけではないという旨も追記をさせていただいております。

続いて,(6)番がただし書きについてでございます。パブリックコメントでは,ただし書きが重要なものだという位置付けを記載すべきという御意見も頂きましたので,3行目から4行目にかけて,権利者の利益を不当に害しないようにするための歯止めとして重要な規定である旨を追記しております。

また,パブリックコメントでは,本文の様々な要件を緩和することで対象となる事例が拡大するため,ただし書きの適用場面も拡大するのではないかという問題意識が示されておりましたので,それに対応いたしまして,一番下の辺りですけれども,ただし書きの適用場面・事例が大きく拡大するという考え方もあり得るということをまず記載しております。ただ,10ページにございますとおり,中間まとめでも書いておりましたが,今回の見直しというのはあくまで元々この規定の趣旨・根拠が妥当する範囲で柔軟な対応を認められるようにするようなものでございまして,ほかに様々な要件を規定しておりますので,依然としてこの規定が権利者に与える不利益が特段ない軽微な場合に限定されているものでは変わりがないと思います。ただ,中間まとめでは,基本的に今回の見直しによってただし書きの適用場面が拡大することは想定されないという形で全く想定されないかのような記載になっておりましたので,ここでも,対象場面・事例が大きく拡大することは想定されないという形で記載を改めております。

また,注釈の8番にございますように,同様の問題意識で,対象行為が大幅に拡大することで,本文の要件を充足する場合であってもこのただし書きに該当する場合も考えられるという趣旨のことを追加的に記載しているところでございます。

最後の4ポツにつきましては,パブリックコメントでも,普及啓発・周知が重要だという規定がございましたので,独立した記載を新たに追加しております。具体的には,今回の見直しによって,本規定が相当程度の柔軟性を備えたものとなる結果,特に分離困難性に代えて設定される正当な範囲内などの規範的要件の解釈・適用について,誤解・迷いなどが生じる恐れがある。このため,誤解等に基づく不適切な利用を防止するとともに,本来権利制限の対象となるはずの行為が無用に萎縮することのないようにする観点から,法整備が行われる際には,その趣旨・各要件の解釈・具体的事例における適用関係等について,正確かつ分かりやすい形で周知・普及啓発を行っていくことが重要である,こういった記載を追加することとしてはどうかと考えております。

事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,御意見や御質問がございましたら,お願いいたします。何かございますでしょうか。

では,今村委員。

【今村委員】どうも御説明ありがとうございました。生配信についていろいろ記載が変わった,付け加えたことがあったことの関係で,具体的な事例にどのように適用されるのかについて確認なのですが,生配信そのものに加えて,後で視聴者の人が時間をずらして見られるように録画を伴う生配信がなされる場合もあると思います。その場合に,生配信では写り込みは軽微性も満たし,あと,正当範囲でもあったということでやったとします。それをまた後で見えるように,生配信を見逃し配信のような形でアップロードするということを行う場合に,生配信は一過性のものですし正当範囲を満たしていて許されるけれども,後で見られるようにするものは正当範囲を満たさないという状況は生じ得るのかどうかという点です。

要するに,視聴者の意識としては,生配信後に何度も見られると意識の向けられる先が変わるというか,後で見られる,何度も見られると特定の写り込みの部分に注目する場合もあるわけです。そうすると,著作権者としては,確かに生配信では軽微性は満たすけれども,その録画がアップロードされてここの部分だけ何度も見られるのは嫌だなというふうに思うようなケースもあるのではないかと思います。正当な範囲という要件は割と柔軟な部分ではありますので,そこは録画を残す生配信と残さない生配信とは別に扱われる場合もあるように思います。また,録画自体を配信する人がするのか,それとも視聴者がするのかという部分の違いもあると思います。このまとめで具体的事例における適用関係等について正確かつ分かりやすい説明ということが書かれてありましたので,実際に配信する人が分かりやすいような形で説明があるとよろしいかと思います。

【大野著作権課長補佐】現行規定におきましても,第1項で写真撮影・録音・録画が認められておりますところ,一旦そのような形で写り込んだものは,第2項で,その後は自由に利用できるということになっておりますので,今回の生配信につきましても同じような扱いではないかなと思っております。すなわち,生配信を一旦されたものが,更に二次的に録画されたものの配信という形で使われるといった場合にも,最初の生配信における写り込みが適法なのであれば,その後の利用についても基本的には適法になるということだと理解をしております。

ただ,第2項につきましても,ただし書きが付いておりますので,利用の形態によってはただし書きに該当する場合があり得るということは,現行制度上も想定されていたものだろうと思います。その考え方は今回の規定の拡充でも変わらないと思いますので,御指摘のような事例についても,個別事情によってはただし書きに該当する場合も排除されないというふうには理解しております。

【今村委員】分かりました。ありがとうございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

【大渕主査代理】誰もいなければ,はい。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】きれいにまとめていただきまして,ありがとうございます。中身自体はこれで大変よろしいかと思いますが,いろいろと検討した上でこれを採用したということが出た方がよいかと思いますので,研究者の立場から二,三コメントさせていただければと思います。

前から気になっていたのですが,2ページにある「既に形成されているライセンス市場を阻害 することなどがないよう、十分に注意することが必要である」という部分は,権利制限の在り方に関わってくる話であります。当然のこととして,このようなものは既に形成されているライセンス市場を阻害することはないようにということで,本来ライセンスでやるのですが,それがなり難い場合に権利制限ということですので,これが逆転してしまうようでは困りますから,この点をきちんと出しておくのが大変重要であると思っています。

それから,先ほど当然だと言われて,ここにも当然と書いてありますけれども,「雪月花」につきまして,私は,これは当然だと思いますが,世間ではそう当然とも思われていなくて,「雪月花」自体を写り込みだと考えたりしている人もいます。そうではなくて,「雪月花」の方はそもそも支分権の複製に当たっているか,当たっていないかという話だし,こちらの方は,支分権に当たった上で権利制限の話だからもともと全然違う話なので,そこのところはきちんと整理すべきであるとパブコメでも懸念が示されております。このようなものは折に触れて明らかにしておくのは大変良いことだと思っております。

それから次に,見直しのための,5ページから6ページのところにかけて,文章としてはこれでよいと思うのですが,マル1,マル2との関係で,「他の要件やただし書きの解釈によって対応することも含め」ということについて,ただし書きは重要な規定なのですが,やはりあくまで例外的な安全弁にすぎないので,ここに過度に頼るようになって,結局,一般条項的なものが前面に出ると,使う方にとっても,使われる方にとっても非常に明確性が落ちてしまいます。先ほどのライセンスに触れたりなど,大きな場合には仕方がないのですが,ただし書きという安全弁は本当に最後の例外であるというところは注意すべきだと思っております。

次に7ページのパブコメで特に懸念が示されたのが下半分に赤字で書かれているところで,我々の想定はBGMは軽く付随的に使っているわけではなく,多くの場合には重要な役割を果たしているので,このようなものが入るとも思わなかったのですが,その点をきれいに整理していただきましてありがとうございます。

その関係でここで出てくるのは,昔から問題になっている写り込みと写し込みの関係です。基本的には,30条の2というのは写り込みの話,非意図的に入っているものであって,写し込みの方は,全部がライセンスの方に行くのではなくて,私としては,32条の引用というのは学術引用に限定せずに,「引いて用いる」ということで広く解釈しているから,パロディなどもこれで現行法上十分救えるわけであり,ここの場面でも,写し込みは30条の2の問題ではなくて,何か権利制限があるとしたらむしろ32条の方の問題だと考えております。その辺りを混ぜ出すと,法的に大混乱となってしまいますから,結果的には意図的な写し込みが許諾の方に行くのか,32条で救えるのかは別として,ここのところを明示していただいたのは非常によいと思います。また,いろいろなところで,意図がある場合などをうまく外していただいていると思います。 

【茶園主査】ありがとうございます。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは,この内容で報告書として取りまとめたいと思っておりますけれども,この点特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは,これを本小委員会の報告書として取りまとめさせていただきます。本報告書につきましては,2月10日に予定されております著作権分科会におきまして更に審議をいただいた上で,著作権分科会としての報告書として取りまとめていただく予定でございます。

では続きまして,議事(2)に入りたいと思います。これは独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンシーの対抗制度に関する審議の経過等についてでございます。

独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンシーの対抗制度に関する審議につきましては,前年度に引き続きまして本年度におきましてもワーキングチームを設置し,昨年度のワーキングチームにおいて継続検討課題となっておりました独占性の対抗制度及び独占的ライセンシーに差止請求権を付与する制度の導入について検討を行っていただいておりました。

その審議経過等につきましては,「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム審議経過報告書」として取りまとめられたところでございます。これにつきまして,座長の龍村委員と事務局より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【龍村委員】では,御報告申し上げます。昨年度より本小委員会の下に設置していただいております著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームでは,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する事項をそれぞれ検討課題として位置付け,専門的かつ集中的な検討を行うこととしております。

この2つの検討課題に係る検討の進め方については,昨年度のワーキングチームにおいて,まず著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について検討を行い,その後に独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入についての検討を順次行うことといたしました。

昨年度のワーキングチームでは,検討課題のうち,まず著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について検討を行い,昨年度の本小委員会において,利用許諾に係る権利については,対抗要件を要することなく,当然に対抗できることとする制度を導入することが適当である旨の審議経過報告を行いました。他方,独占的ライセンシーに対して差止請求権を付与する制度の導入については,独占性の対抗制度の導入と併せて継続して検討を行う旨報告したところでございます。

これら経緯を踏まえまして,今年度は独占性の対抗制度の導入及び独占的ライセンシーへの差止請求権を付与する制度の導入について本ワーキングチームで検討することとされ,本年度検討を進めてまいりましたので,その審議経過を資料2の審議経過報告書に基づいて御報告いたします。

本年度においては,まず検討の前提として,検討で用いる用語・概念あるいは検討対象場面について整理いたしました。また,各検討課題について,関係者が実現を期待している状況を把握し,検討すべき課題解決手段を整理するため,特に独占的ライセンスを活用している分野の関係者のヒアリングを実施いたしました。ヒアリングの結果,各関係者において具体的な制度設計の要望に細かい違いがあるものの,基本的には独占的ライセンスの独占性を保護することができる制度の導入について一定のニーズがあることが改めて確認されたところでございます。また,かかるヒアリング結果も踏まえて,検討対象となる課題解決手段を整理しておるところでございます。

来年度は,今年度整理した各課題解決手段について,順次個別の検討事項の検討を進めていくことを予定しております。

審議経過報告書の詳細につきましては,事務局から追加説明をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】それでは,資料2をごらんください。資料2は,「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム審議経過報告書」となっております。

まず1ページ目,1の経緯ですけれども,こちらにつきましては,今,龍村座長からも御説明いただいた内容が,これまでの検討経緯が記載されております。

次に,2ページ目に行っていただきまして,2ページの2ポツの検討課題の概要です。今年度のワーキングチームにおける検討課題としましては,(1)の独占的ライセンスの対抗制度の導入と,(2)の独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入,この2つです。

まず(1)の独占的ライセンスの対抗制度の導入につきましては,2ページ目の方ですけれども,独占的ライセンス契約における独占的ライセンシーは,著作権者等が他の者との間で別途ライセンス契約を締結した場合や,著作権等が他の者に譲渡された場合,これらの者に対し,当該ライセンスの独占性を主張する手段がありません。そのため,ライセンスの独占性を確保するために非独占的ライセンスよりも高い対価を支払っていることが多い独占的ライセンシーの地位が不安定な状況にあるところです。

一般的な利用許諾に係る権利の対抗制度につきましては,昨年度のワーキングチームの議論におきまして,対抗要件を要することなく当然に対抗できるとする当然対抗制度が妥当という取りまとめをワーキングチームで行い,本小委員会でも御報告させていただいたところです。他方,利用許諾に係る権利につきましては,独占性の部分を含まないものとして検討されておりましたので,独占性の部分につきましては別途差止請求権の付与の課題と併せて今年度検討することとなっておりました。

次に,3ページ目,(2)ですけれども,独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度です。現行著作権法におきましては,特許法における専用実施権や商標法における専用使用権のような準物権的な利用権が出版権以外に存在しておらず,原則として独占的ライセンシーが差止請求権を行使することができないとされております。

また,現行法の下でも,債権者代位権の転用という形で解釈上,一定の場合に著作権者の差止請求権を代位行使できるという構成も存在するところですけれども,そちらにつきましては,債権者代位権の行使に当たっては,ライセンサーが侵害排除義務を負っていることを求める裁判例が存在し,実態として,ライセンサーが侵害排除義務を負う場合が多くないこと,そのような義務を負うことに抵抗感を有する著作権者等が存在すること,また,著作権者等が第三者との間で別途利用許諾契約を締結した場合の当該第三者等に対しては,かかる方法を用いて対応することができないことから,債権者代位権の行使による対応が十分可能な状態とは言い難い状況にあります。

したがいまして,独占的な利用に対する期待を有する独占的ライセンシーが,他の者によって著作物を利用されていた場合に,その利用行為を差し止めることが困難な状況にあるところです。また,昨今,海賊版による著作権者等への被害が拡大している中で,独占的ライセンシーが自ら差止請求を行うことができるようになれば,インターネット上の海賊版の削除請求や税関における海賊版の水際差止め等の対策が容易となり,海賊版による被害の拡大防止にも資するものと考えられるところです。

以上が,今年度検討した課題の概要になります。

次に,4ページ目に行っていただきまして,3ポツ,検討の進め方です。こちらにつきましては,5ページ目の上の方に四角で囲ってあるところが今年度のワーキングチームで定めた検討の進め方になります。まずマル1として,検討の前提となる用語・概念,検討対象場面を整理いたしました。これはそもそも検討の前提として,用語・概念,検討対象場面について十分共通認識が得られていないのではないかという問題意識から整理したものでございます。

次に,マル2ですけれども,関係者のヒアリングを実施して,関係者が期待をしている状況及び独占的利用許諾構成を検討する必要性を確認・整理しております。ここで独占的利用許諾構成と書いておりますけれども,また後ほど出てきますけれども,今年度の検討課題の課題解決手段として大きなものとして2つ構成を考えております。1つは,現行法上,債権的な効力しかないとされている独占的利用許諾について,その独占性の主張を可能とし,差止請求権を付与するというような構成。もう一つが,出版権のような準物権的な独占的利用権を出版権に限らず,分野を限らない形で新たに創設して,それを取得した者について独占性の主張を可能とし,差止請求権を付与する制度。この2つが大きなものとして考えられるところですけれども,そのうちの前者,独占的利用許諾構成について検討する必要性を確認・整理したところでございます。

3つ目,マル3ですけれども,その独占的利用許諾構成について個別の検討事項を検討する。マル4として,出版権的構成,その他の構成について個別の検討事項を検討する。マル3,マル4は,想定している課題解決手段の個別の検討事項を各構成ごとに検討していくということを想定しております。

最後に,マル5としてまとめという形で,それまでの検討を踏まえてまとめをすることを想定しております。

続きまして,5ページ目,4ポツ,審議経過のところです。今年度のワーキングチームにおきましては,先ほど3ポツの方で書いていますマル1,マル2について審議をいたしましたので,その結果を記載しております。

まず(1)の暫定的な用語・概念の整理のところになります。こちらにつきましては,何か既存の制度や最終的に導入する制度の用語だったり概念を整理したものというよりは,検討する際にこの用語をどう使おうかということで整理した,検討の便宜のために整理したものになります。また,一部,審議の過程でチーム員から示された御意見も付記しておりますので,今後の検討を進めるに当たっては,それらの意見にも留意しながら検討を進めたいと考えております。

簡単にそれぞれの用語について触れていきますと,5ページ目,アの「独占的ライセンス」という言葉ですけれども,こちらにつきましては,現行法の下で債権的な効力のみを有するとされている独占的ライセンスと,四角の中のマル2ですけれども,特許法における専用実施権や著作権法における出版権のような準物権的とされている独占的利用権,いずれも含む形で独占的ライセンスという言葉を使いたいと考えております。このマル1,マル2を区別する際には,「債権的な独占的ライセンス」,「物権的な独占的ライセンス」というふうに区別して呼称しようというふうに整理しております。

続きまして,6ページ目ですけれども,イの「独占性の合意」です。こちらにつきましては,債権的な独占的ライセンス,契約においてなされている独占性の合意というものがどういうものかというところで,四角の中のマル1ですけれども,ライセンサーが当該ライセンス契約で付与したライセンスの契約範囲と重複するライセンスを他の者に付与しないという内容の合意をいうものというふうに定義しております。

また,同じ四角の中,2つ目のポツですけれども,このマル1の独占性の合意に加えて,マル2,ライセンサー自身,当該ライセンスの範囲では当該著作物を利用しないことという合意がなされている債権的な独占的ライセンスについては,「完全独占的ライセンス」と。また,マル1の独占性の合意がなされているものの,マル2の合意がなされていない債権的な独占的ライセンスについては「不完全独占的ライセンス」と呼称するというふうに整理しております。また,3ポツ目ですけれども,ここでいう独占性の合意には,マル3,ライセンサーがライセンシー以外の者の利用を排除しなければならないという義務,いわゆる侵害排除義務を含まないものとして検討を進めていこうという形で整理しております。

6ページ目,ウのところですけれども,「独占性」という言葉です。こちらにつきましては,独占的ライセンシーが独占ライセンスを付与されたことによって取得する当該著作物の利用を独占的に行うことができるという地位をいうものとするというふうに整理しております。

この点につきましては,チーム員から示された御意見をまとめております。6ページ目の下の方ですけれども,1つ目の丸が,独占性について「独占的に行うことができるという地位をいうものとする」と定義しておりますけれども,こちらはトートロジーになっているようにも見えると。結局,ここの「独占性」というものは,これから議論して出来上がった制度における「独占性」の意味内容を入れ込むものとなるのではないかというような御意見がありました。

また,2つ目の丸ですけれども,この「独占性」と漠然と使ってきた用語は,独占利用性の意味だと定義することで議論しやすくなるという御意見もありました。

3つ目の丸ですけれども,この「独占的」というものがexclusiveと同義か否か,「独占的かつ排他的」という表現するときと,単に「独占的」と表現するときでニュアンスが異なるか否かといった点については,いろいろな考え方があると思うので,これについては今後,包摂した形で検討を進めざるを得ないのではないかと。

また,7ページ目の一番上の丸ですけれども,日本語において「排他性」,「排他的」という言葉を使う場合には,差止請求権があるという趣旨だと受け取られる可能性がある。そういう意味では,「独占的」という方が中立的なニュアンスになるのではないかというような御意見があったところです。

7ページ目のエですけれども,「独占的ライセンスの対抗制度」です。こちらにつきましては,先ほど申し上げた独占的利用許諾構成の場合につきましては,債権的な独占的ライセンスの独占性の部分のみを対象とする対抗制度を意味するものとして検討すると。他方,独占的利用許諾構成における独占的ライセンスの利用権の部分,債権的な独占的ライセンスを独占性の部分と利用権の部分に分けた場合のその利用権の部分につきましては,昨年度のワーキングチームで導入することが適当と取りまとめられた利用権に係る当然対抗制度の適用対象になるのではないかという形で整理しております。

他方,出版権的構成,新たに物権的な独占的要件を創設する場合に関しましては,独占性の部分のみではなく,利用権の部分も含む形で新たな権利を創設する形になるだろうというところで,この場合の独占的ライセンスの対抗制度は,利用独占性の部分だけではなくて,利用権の部分も含めた新たな権利についての対抗制度になるだろうというような整理をしております。

7ページ目のオですけれども,独占的利用許諾構成における「独占性の対抗」。こちらにつきましては,第三者に対し,その独占的ライセンスに基づく独占性を積極的に主張することができることをいうものとするというふうに整理しております。

ここについても,チーム員から示された御意見をまとめております。1つ目の丸ですけれども,独占性を積極的に主張することができるということは,直接差止請求を行うことができることと同義と考えてよいのかというところについて疑問が呈されております。独占性を積極的に主張することという点については,マル1,独占的ライセンシーは,著作権者等に対し債務不履行責任を主張することのみができるとする場合,マル2として,新しいライセンス契約の効力を否定して,妨害排除請求権等の著作権者等の有する権利を代位行使することができるとする場合,マル3として,独占的ライセンス契約に基づいて直接に差止請求を行えるとする場合といった3つぐらいの場面が考えられるけれども,独占性を積極的に主張することができるということは,このうちいずれかの場面のみを想定しているのかというような御疑問が呈されたところでございます。

8ページ目の1つ目の丸ですけれども,相手方が著作権等の譲受人や他のライセンシーの場合については,債権者代位の問題にはならないのではないかと,1つ目の御意見に対しての御意見ですけれども,そのような御意見も出ていたところです。

その下の丸ですけれども,不法利用者は無権利者なので,不法利用者との関係は対抗関係ではなく,誤解を避けるために,ここで「対抗」という言葉を使わない方がよいのではないかというような御意見も出ていたところです。

また,この点に関しましては,不動産賃借権の方なんですけれども,賃借権は対抗要件を備えると,不法占有者に対して明渡請求をすることができるとされるけれども,これについては対抗要件(対抗力)を備えた場合は,賃借権が物権化するからそのような請求をすることができるという考え方がある。そのため,本検討における不法利用者との関係でも,そのような考え方を取るか否かという形で独占性の対抗力の有無が問題になることはあるというような御意見がありました。

また,「対抗」という言葉自体にいろいろな意味があるので,用語としては独占性を「主張し」といった中立的な表現すれば,無用な誤解を避けることができるのではないか。

また,最後の丸ですけれども,特許法99条のように,対抗要件を具備しなくとも対抗力を備える場合があるとされているので,「対抗要件」とか「対抗力」という用語については注意して使っていく必要があるだろうというような御意見もあったところです。

一番最後,※印のところですけれども,出版権的構成における「独占性の対抗」につきましては,先ほど申し上げたとおり,利用権の部分も含む形で権利を創設することになると思われますので,基本的には出版権の対抗制度と同様のものになるであろうというふうに整理しています。

また,9ページ目,(2)検討対象場面ですけれども,ここでは大きく3つ検討対象場面を整理しております。まず1つ目,図アのところですけれども,著作権等が譲渡された場合。

また,10ページ目,図イ-1と2がありますけれども,いずれも二重にライセンス契約が締結された場合と。図イ-2につきましては,著作権の譲渡が介在した二重ライセンスの場合を図として示しております。ここで「他のライセンシー」と書いておりますけれども,これについては,独占的ライセンシーの場合もありますし,非独占的ライセンシーの場合も,この二通りがあるだろうということで10ページの一番下のところに※印で注記しております。

また,11ページ目,図ウですけれども,3つの場面としては,不法利用者が現れた場合があるだろうということで,これらが今回の検討対象場面になるだろうと整理しております。

また,11ページ目,(3)ですけれども,関係者が実現を期待している状況をまとめております。こちらにつきましては,関係者に対するヒアリングを行っておりますので,アのところで関係者に対するヒアリング結果概要をまとめております。(ア)の総論ですけれども,こちらにつきましては,今回の検討課題となっている制度についての基本的な各関係者についてのスタンスを聞いております。ヒアリングにつきましては,一般社団法人日本書籍出版協会,一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム,一般社団法人日本映像ソフト協会様に御協力いただいております。

各団体の総論としての基本的なスタンスとしましては,何らかの形で独占的ライセンスの独占性を保護することができる制度の導入については,いずれの関係者も総論としては積極的な御意見ということが確認されたところでございます。12ページ目の方で四角で囲ってある部分が各団体からの御意見になります。

12ページ目,(イ)ですけれども,著作権等が譲渡された場合ということで,それぞれ先ほど整理した各検討対象場面について各団体の御意見を聞いております。著作権等が譲渡される場合については,著作権等がライセンサーから他の者に譲渡された場合の独占的ライセンスの独占性の保護の在り方については,その独占性を主張するための要件や独占的ライセンス契約を著作権等の譲受人に承継させるか否かといった点で細かい違いはあるんですけれども,いずれの関係者からも,著作権等の譲渡があった場合でも,一定の場合には継続してその独占性を確保することができることが望ましいと,この意見が示されたところでございます。

13ページ目の四角で囲ってある部分が,著作権が譲渡された場合についての各団体の御意見になります。簡単に触れますと,一般社団法人日本書籍出版協会様の方からは,悪意者に対してはその独占性を主張して差止請求を行うことができる制度,いわゆる悪意者対抗制度のようなものが妥当だという御意見がありました。他方,差止請求権や独占性の主張の要件として登録を要求することについては,コストが高過ぎるので妥当ではないと。事業の実施を要件とすることについても,契約から商品を市場に出すまでの期間が保護されないので,妥当ではないという御意見を頂いております。

また,モバイル・コンテンツ・フォーラム様からは,基本的には契約の承継によって解決すべきだというような御意見を頂いております。

また,映像ソフト協会様に関しましては,2つ目の丸のところですけれども,事業化が行われて,独占的ライセンシーの権利が公示された後の第三者に対しては独占性を主張できて差止請求できる制度が望ましいというような御意見を頂いているところです。

また,14ページ目,(ウ)ですけれども,二重にライセンス契約が締結された場合に関しましては,二重にライセンス契約が締結された場合の独占的ライセンスの独占性の保護の在り方については,その独占性を主張するための要件や具体的に保護を求めている場面について細かい違いがあるものの,いずれの関係者からも,独占的ライセンシーが一定の要件を満たした場合には継続してその独占性を確保することができることが望ましいとの意見が示されたところでございます。

また,こちらについても,簡単に各団体の御意見に触れますと,日本書籍出版協会様の方からは,著作権の譲渡の場合と同様に,悪意者対抗制度のようなものが望ましいと。モバイル・コンテンツ・フォーラム様の御意見としましては,後から締結したライセンス契約については当然に無効というような処理が妥当ではないかというような御意見を頂いております。また,15ページ目,日本映像ソフト協会様の方からは,いろいろ書いておりますけれども,結論としましては,利用権の部分について,当然対抗制度が入ることを前提に,事業化をした後の第三者に対しては独占性を主張して差止請求できる制度が望ましいということで,事業化を1つの要件として独占性の主張や差止請求を認める制度が望ましいという御意見を頂いております。

また,15ページ目の(エ)のところですけれども,不法利用者が現れた場合。こちらにつきましては,不法利用者が現れた場合については,著作権者による権利行使がなされない場合に限定するか否かという点について意見の違いがあったんですけれども,いずれの関係者からも独占的ライセンシーが不法利用者に対してその独占性を主張して差止請求をすることができるようにすることが望ましいとの意見が示されたところです。差止請求に当たって,先ほど申し上げた著作権者による権利行使がなされない場合に限定するか否かという点以外については,特段の要件が必要との意見は見られなかったところです。

16ページ目,(オ)その他の方に移ります。その他については,独占的ライセンシーの差止請求権の行使に当たって,著作権者等の承諾を要件とすることや出版権的構成で制度設計すること等,その他制度設計に関して示された意見をまとめております。

具体的には,日本書籍出版協会様からは,承諾要件のところにつきましては,使いにくくなるというので妥当ではないと。出版権的構成についても,現行の出版権制度の見直しにつながるのであれば妥当ではないと。また,現行出版権制度が支分権に基づいて定められているので,現在の実際の利用形態とそごがあるのではないかということで,出版権的構成がこのような構成になるのであれば妥当ではないというような御意見を頂いております。

また,モバイル・コンテンツ・フォーラム様からは,権利行使の一次的責任がそもそも著作権者にあることは明確にしておきたい。また,現実に存在する独占的ライセンス契約が債権的なものであることについて考慮していただきたい。また,ゲームの開発・運営に関しては,ビジネスの特性上,契約対象が契約の後に著作物が発生するということについて考慮していただきたいということをおっしゃられております。

また,日本映像ソフト協会様からは,著作権者等の承諾要件に関しましては,迅速な権利行使が困難になるということで妥当ではないと。出版権的構成については,既存の債権的な独占的ライセンス契約が保護されないことになるのであれば妥当ではないというような御意見を頂いております。

また,18ページ目,(カ)ですけれども,現行の出版権制度について支障を感じている点。これにつきましては,先ほど申し上げたとおり,現行の出版権制度の定めた内容と,現在の実際の利用行為との間でそごがあるので使いにくいのではないかというような御意見が出ているところです。

また,18ページ目,イのところですけれども,ヒアリング結果の整理及びヒアリング結果に対するチーム員からの意見ということで,ヒアリング結果を整理しております。19ページ目に参りますけれども,関係者間でおおむね共通していた点としましては,登録要件は不要ではないか,妥当ではないのではないかと。また,著作権者の承諾要件に関しても,積極的に必要という意見はなかったということを記載しております。

また,19ページ目,これらのヒアリング結果についてチーム員から示された御意見をまとめております。

20ページ目に参りますけれども,(4)課題解決手段です。こちらにつきましては,先ほど申し上げた独占的利用許諾構成,出版権的構成が大きく2つ挙げられております。また,その他の構成として,債権者代位権の行使要件を明文化した規定を創設するということや,著作権法118条のように,一定の場合に独占的ライセンシーが自己の名をもって権利保全行為を行い得る旨の規定を創設するというような構成について想定されるということを挙げております。

また,20ページ目,イのところですけれども,独占的利用許諾構成を検討する必要性。こちらにつきましては,独占的利用許諾構成と出版権的構成では,独占的利用許諾構成を検討する際の検討事項が相当な部分ありますので,もし最初の段階で出版権的構成を取ると決めてしまえば,独占的利用許諾構成を検討する必要はないのではないかというような御意見が出ていたところです。ただ,これにつきましては,先ほど現行の出版権制度の問題であったり,既存の独占的ライセンスを保護するか否かという御意見についてヒアリングでその辺りの御意見が出ていたところですので,出版権的構成では十分に対応できない可能性もあるというところで,独占的利用許諾構成も検討する必要があると整理しております。

また,21ページ目のウの検討の順序としましては,メーンとなる独占的利用許諾構成と出版権的構成を検討して,それについて,不十分,不都合ということであれば,その他の構成について検討を進めるというような整理をしております。

22ページ目のところですけれども,5,今後の検討の進め方です。今年度は3ポツのところで整理したマル1,マル2の手順が終わりましたので,マル3以降,具体的に各課題解決手段の構成について検討を進めていくということを記載しております。

すいません,長くなりましたけれども,以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして,御意見等がございましたら,お願いいたします。

では,井奈波委員。

【井奈波委員】ライセンス契約という場合ですが,例えば特許や商標の場合には,独占的ライセンス契約として契約が締結されることが多いと思いますが,著作権の場合,必ずしも独占的ライセンス契約や利用許諾契約として契約が締結されるわけではなく,例えば販売代理店契約や販売店契約の中にライセンス条項,著作権使用許諾条項が入ることがあり得ます。そういった場合であっても独占的であれば適用対象になるという考えでいいのかどうか,実務に混乱が生じないよう確認しておきたいと思います。

【大渕主査代理】今言われたのは,ここでやっているのは著作権ですが,著作権のライセンス契約というような単発の契約にせずに大きな契約の中に入っている場合について。それは我々の理解としては,別にこれだけを特出ししなければいけないということはなく,このような合意があればよいということなので,その点の確認のための御質問だと思いますが……。

【井奈波委員】はい。

【大渕主査代理】それは別に特出ししてこれだけをしなくてはいけないというわけではないという契約の一般の話かと思いますが,そこのところは御心配いただかなくてよろしいかと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【井奈波委員】はい。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では,この論点につきましては,来年度も継続的に審議をしていただくということで,どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

では続きまして,議事(3)に入りたいと思います。これは令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等についてでございます。本小委員会では,「知的財産推進計画2019」等を踏まえつつ,主に,①写り込みに係る権利制限規定の拡充,②研究目的に係る権利制限規定の創設について,③独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度,④インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制についての課題について審議し,それらについて検討を行ってまいりました。それらの課題についての経過報告をお諮りしたいと考えております。それでは,この点について,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料3をごらんいただければと思います。本小委員会としての今年度の審議の経過について,親会である著作権分科会に報告するための資料のたたき台という位置付けになります。

まず1ポツ,「はじめに」のところでは,先ほど主査から御紹介がありました4つの課題を中心に検討を行ってきた旨を記載しております。このうち,(1)については,先ほど報告書をおまとめいただきましたが,(2)から(4)については検討途上でございますので,今年度の議論を受けて,来年度更に議論を深める必要がある旨を記載しております。また,今年度の検討課題のうちには,検討に着手できていない課題も複数ございますので,そういったものについても来年度以降順次検討を行う旨を記載させていただいております。

2ポツ,課題の審議状況についてそれぞれ簡単に御紹介をいたします。まず(1)写り込みに係る権利制限規定の拡充につきましては,検討の経緯を記載し,先ほど報告書をおまとめいただきましたので,その旨を記載することとしております。

次に,(2)番,研究目的に係る権利制限規定の創設についてでございます。こちらは「知的財産推進計画2019」を受けて,これまでの経緯,現行法上での取り扱いなどを確認しながら,新しい権利制限の創設について検討を行ってきていただいたところでございます。

具体的には,2ページ目に参りまして,第2回,第3回の小委員会で,2回検討を行っていただきまして,検討の進め方と検討に当たっての視点について議論・確認を行っていただいたところでございます。まず,検討の進め方としましては,今年度は基礎的な調査研究を実施し,様々な点を把握した上で,来年度以降,権利制限の制度設計などについて検討を行う,こういった流れで検討を行うことが確認されたところでございます。これを受けまして,本年1月から文化庁委託事業として調査研究を実施しておりまして,とりわけ様々な研究活動における著作物の利用実態・ニーズを丁寧に把握するために検討を進めているところでございます。

また,次の段落にございますとおり,検討に当たっての視点,論点につきまして自由討議を行っていただきました。その結果,こちらに記載のマル1からマル9まで9項目に留意をしつつ,具体的な制度設計の議論を進める必要があるという点についても整理がされたところでございます。これらの点についての詳細は,後ろに別紙として付けております。

次に,(3),ライセンスのワーキングチームの関係につきましても記載しておりますが,先ほど御紹介いただいたとおりでございますので,説明は割愛いたします。

次に,(4)番が,インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制についてでございます。本課題につきましては,リーチサイト対策と併せて議論を行ってきていただいておりますが,昨年度の報告書の中で,まずは当事者の取組の状況を見守って,必要に応じてフォローアップしていくという記載がされていたところでございます。これを受けて本年度の第2回目の小委員会におきまして,関係団体からのヒアリングを行っていただいた旨を記載しております。

その結果が3ページでございまして,関係団体から4点報告がございました。1点目は,昨年の7月19日に関係団体による協議の場として新しい検討会が設置されたということ,2つ目は,以前から行っているDMCAに基づく削除要請が有効に機能しているということ,3つ目としては,CODAとGoogleとの間で,悪質な海賊版サイトに係るトップページやカテゴリページを効果的・効率的に削除する新しい仕組みが構築され,それがうまく進んでいるということ,4つ目としては,こういった形で検索サービスについては円滑に対策が進んでいる一方で,個人のブログやSNSなどを通じた侵害コンテンツのアクセス,こちらが新しい課題となっているということ,この4点について報告があったところでございます。

これを受けて小委員会としては,現在の枠組みをうまく活用しながら,SNS対策を含めた当事者においての更なる取組を進めるように求めていただいたところでございまして,その状況をフォローアップしながら必要に応じて改めて検討を行うと,こういう整理になっておりましたので,その旨を記載しております。

4ページは,開催状況ということで,第1回目から4回目までの開催日時と検討事項を記載しております。

また,5ページでは,委員名を付けさせていただいております。

6ページ以降につきましては,別紙という形で,先ほどの研究目的の際に議論に使っていただいたものや,その際頂いた御意見をまとめた資料を付けているところでございます。

簡単でございますが,以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。それでは,今御説明いただきました審議経過報告の案につきまして,御意見,御質問等がございましたら,お願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは,このような審議経過報告で著作権分科会に報告させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

その他,御意見等特段ございませんでしょうか。

ないようでしたら,最後に,事務局から報告があるということですので,御説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。それでは,参考資料に基づきまして,1点御報告を申し上げたいと思います。

侵害コンテンツのダウンロード違法化に関しましては,前回10月30日の本小委員会におきまして,パブコメを実施しているという状況の御報告を申し上げました。その後,昨年11月から新しい検討会を立ち上げまして,具体的な制度設計など検討を行ってきていただいておりまして,その結果が1月16日付けでまとまっておりますので,簡単に御紹介をいたします。

まず1段落目にございますとおり,この検討会におきましては,パブリックコメント,国民アンケートの結果などを踏まえまして,海賊版対策としての実効性と国民の情報収集,これを両立させるような制度設計について検討を行ってきたところでございます。

その結果につきまして,順に紹介します。まず,1ポツに記載をしておりますとおり,文化庁提案の3点の措置,すなわち,改正案の附則について様々な配慮規定を設けること,写り込みの規定を拡充することでスクショの際の違法画像の入り込みを違法化しないこと,いわゆる軽微なもののダウンロードは違法化しないこと,こういった内容については了承がされたところでございます。

また,2ページ目の(ア)として記載しておりますとおり,二次創作・パロディなどのダウンロード,こちらも違法化対象から除外することに決まったところでございます。

また,(イ)に記載しておりますような,その他パブコメで頂いた様々な措置,計10件につきましては,海賊版の実効性が大きく低下するといった観点から採用しないという方向が了承されているところでございます。

ページが飛びますけれども,6ページに参りまして,(ウ)という部分がございます。これは検討会の中で集中的に御審議をいただきましたけれども,最終的に意見が1つに集約することはできなかった部分になります。具体的には,「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定する」ことについて,パブコメでも御提案があり御議論をいただきましたけれども,この要件を採用すべきであるという意見と,採用すべきでないという意見,両論がほぼ拮抗しておりまして,検討会としては意見を集約するには至っておりません。ただ,いずれにしましても,この要件の採用の可否についても判断の上,法整備を早急に進める必要があるという点については認識が共有されたところでございます。

また,議論の中では,権利者側の立証負担の軽減,ユーザーの居直り防止,こういった権利者が懸念をされている事項にも配慮する意味での折衷案についても提案がされたところでございます。具体的には,「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」という形である意味裏側から規定をしまして,ユーザー側に立証負担を負わせるという提案や,それに加えて,「特別の事情がある場合」と明記をすることで,より居直り的な行為が生じづらいように,対象範囲が限定されているという趣旨を明らかにする,こういった提案も示されたところでございます。いずれにしましても,こういった要件につきましては,検討会としての意見は1つに集約されておりませんので,これから政府として政策判断をしていく必要があろうかと思っております。

また,ページが飛びますけれども,14ページにその他の論点についての記載をさせていただいております。パブリックコメントにおきましては,例えば(ア)対象著作物を漫画・アニメなどに限定すべきという意見や,(イ)主観要件を見直すべきという意見もございましたけれども,検討の結果,いずれも適切でなく,すなわち,著作物全般を対象とし,主観要件は維持すべきという認識が共有されております。

また,15ページに参りまして,4ポツ,リーチサイト対策につきましても,本検討会で検討を行っているところでございます。概要の部分にございますとおり,まず規制対象となるリーチサイトの範囲などにつきましては既に十分な絞り込みが行われており,その他の要件追加の必要はないという認識が共有されております。一方で,2つ目の丸にありますように,リーチサイト運営行為などに対する刑事罰については,もともと非親告罪にするということになっておりましたが,国民の不安に対応するために親告罪に変更するということが了承されたところでございます。また,3つ目の丸にありますように,いわゆるプラットフォーム・サービス提供者については今回の規制は及ばないということが認識として共有されておりまして,さらに,その旨を条文上明記するということにつきましても,脱法行為を招いたり,間接侵害一般の議論に影響を与えないということを前提に条文上明記した方がいいという意見が大勢を占めたというところでございます。

その下は,個々の論点についての詳細でございますので,説明は割愛いたします。

こういった内容の検討会の報告書をおまとめいただきましたので,我々としては,昨年度の文化審議会の報告書とこの検討会の結論を十分に踏まえながら,国民に御理解をいただけるバランスの取れた案を作成していきたいと思っているところでございます。

報告としては以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の検討結果を御報告いただきました。

本日は,今期の最後の法制・基本問題小委員会ということでございますので,森文化庁審議官から一言御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【森文化庁審議官】今期の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会につきましては本日が最後となりますので,一言御礼を申し上げたいと存じます。

今期の法制・基本問題小委員会におきましては,写り込みに係る権利制限規定の拡充,そして,研究目的に係る権利制限規定の創設,また,独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与・独占的ライセンスの対抗制度,そして,インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示の抑制といったことについて御議論を賜ったところでございます。

このうち,写り込みに係る権利制限規定の拡充につきましては,法改正の方向性を示す報告書をお取りまとめいただいたところでございます。今後,著作権分科会での御審議を経て,著作権分科会としての最終的な報告書の取りまとめを行っていただきましたら,それを踏まえ,速やかに法整備に向けて準備を進めてまいりたいと考えてございます。また,その他多岐にわたる課題につきましても,今後更に議論・検討を進めていく上で非常に重要な御示唆を賜ったものと受け止めているところでございます。

また,先ほど御報告をさせていただきましたとおり,侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る具体的な制度設計などにつきましては,1月16日に有識者検討会での検討結果が取りまとめられているところでございます。文化庁と致しましては,その内容を踏まえて国民の皆様に御理解をいただけるバランスの取れた案を作成してまいりたいと考えてございます。そして,その上で,リーチサイト対策をはじめ,昨年2月の著作権分科会報告書で方向性をお示しいただいた事項,そして,写り込みに係る規定の拡充などと併せまして,今国会への法案提出を目指して準備を進めてまいりたいと考えてございます。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門の立場から,今期の小委員会の大変充実した審議のために多大な御尽力を賜りましたこと,改めて感謝を申し上げまして,私からの御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【茶園主査】森審議官,どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第4回)を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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