放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第3回)

日時:令和2年9月28日(月)

17:00~19:00

場所:文部科学省旧庁舎

2階文化庁第2会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)制度改正に係る論点について
    • (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

資料1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する課題の整理及び制度改正に係る論点について(たたき台)(253.1KB)
資料2
第19回規制改革推進会議投資等WG(令和2年9月25日)における意見概要(146.5KB)
参考資料1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム委員名簿(209.1KB)
参考資料2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームにおける審議スケジュールのイメージ(193.5KB)
参考資料3
「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化」に関する検討に当たっての基本方針(令和2年9月4日 放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム)(183.7KB)
参考資料4
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第2回)ヒアリングにおける権利者の意見概要(387.4KB)
参考資料5
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第1回・第2回)における委員の意見概要(221.9KB)
参考資料6-1
総務省提出資料(「放送コンテンツの同時配信等における権利処理円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ」概要)(211.3KB)
参考資料6-2
総務省提出資料(放送のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ)(別紙を含む)(598.5KB)
参考資料7-1
放送事業者(NHK及び民放在京キー局等)からの要望に関する現行制度等の状況について(220.9KB)
参考資料7-2
参照条文(229KB)
参考資料8
放送の同時配信等に関する諸外国の制度概要(342.6KB)
参考資料9
放送の種類と規律について(総務省提出資料)(160.7KB)

議事内容

【末吉座長】ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第3回)を開催いたします。本日は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加をいただいております。御多忙の中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。いかがですか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉座長】ありがとうございます。では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださいますようお願いいたします。

本日は,先日就任されました三谷英弘文部科学大臣政務官に御出席をいただいております。三谷政務官から一言まず御挨拶をお願いいたします。

【三谷政務官】9月18日付で文部科学大臣政務官を拝命いたしました三谷英弘と申します。放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第3回)の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

私自身,弁護士として知的財産の分野に深く関わってきた経験がございます。中でも,著作権法は非常に思い入れのある分野の1つであります。著作権制度は,コンテンツ産業・クリエーターを保護するとともに,コンテンツの円滑な流通を図るための要となるものであり,それゆえに,時代の変化に応じ機敏に見直しを行っていく必要があります。

中でも,放送の同時配信等は,デジタル時代における視聴者の利便性向上,コンテンツ産業の振興などの観点から極めて重要なものです。見直しに当たっては,国民から見た利便性の向上を第一としつつ,権利処理の円滑化と権利保護・適切な対価の還元のバランスを図り,国民・放送事業者・権利者の全てにとって利益となるような措置を講じていく必要があると考えています。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門のお立場から,課題の総合的解決に向けて,忌憚のない御意見をいただきますよう,引き続き何とぞよろしく申し上げます。

【末吉座長】ありがとうございました。

それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただきたいと思います。まず資料1といたしまして,本件に関する課題の整理及び制度改正に係る論点についてたたき台として整理した資料をお配りしております。また,別途,資料2といたしまして,先週金曜日9月25日に行われた規制改革推進会議投資等ワーキング・グループにおける意見概要をお配りしております。参考資料の紹介は割愛いたしますけれども,検討に当たって必要となる基礎資料を幅広くおつけしております。不備などございましたら,また御指摘いただければと思います。

【末吉座長】それでは,議事に入りますが,初めに,議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。本日の議事は,(1)制度改正に係る論点について,(2)その他の2点となります。

早速,議事に入りたいと思います。まずは,議事(1)制度改正に係る論点についてです。事務局で,放送事業者の要望内容や権利者団体の意見等を踏まえ,本件に関する議題の整理と制度改正に係る論点について,たたき台となる資料を用意していただいています。

まずは,冒頭に総務省様より資料の4ページで記載しているマル7,ラジオや衛星放送・有線放送等の取扱いについて説明があると伺っておりますので,この御説明をいただきまして,その後,事務局より資料1について説明をお願いいたします。

【総務省情報通信作品振興課三島課長】4ページのラジオや衛星放送・有線放送等の取扱いについて,御報告をさせていただきたいと思います。総務省の三島でございます。

ラジオ,衛星放送・有線放送などについての御意見を踏まえまして,それぞれ日本民間放送連盟,衛星放送協会,ケーブルテレビ連盟に,総務省から意向を確認しております。いずれも,今般の権利処理の円滑化については,同様に取り扱われることを要望しております。また,これまでも著作権法上,放送・有線放送で,あるいは有料・無料で特別に扱いを分けていないと認識しておりますので,私どもといたしましても,対象外となる放送を設けていただくことは想定していないところでございます。

参考資料9として,放送の種類と規律について,参考まで表をつけております。基幹放送,一般放送(登録),一般放送(届出)と区分されており,ラジオ,衛星放送は基幹放送に,有線テレビジョン放送は一般放送(登録)に該当します。なお、一般放送(届出)は,基本的には小規模なものになります。このように,これまでも著作権法上では,基幹放送,一般放送で分けた扱いをしていないと認識しております。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。

【大野著作権課長補佐】事務局でございます。資料1と資料2について御説明をさしあげたいと思います。

まず,資料2のほうを御紹介したいと思います。先週金曜日9月25日に規制改革推進会議投資等ワーキング・グループが開催されまして,本課題に関する議論が行われております。そこでいただいた御意見の概要をまとめておりますので,御紹介をいたします。

まず1つ目の丸は,国民の利益,国民の利便性を第一にすべきということと,日本の国際競争力が高められるルールをしっかりつくらないといけないという御意見でございます。

2つ目の丸は,これまでの議論で調整がつかなかったという経緯も踏まえて,運用面でなく制度的対応をしっかり進め,フタかぶせが起きないようにしないといけないという御意見でございます。

3つ目,4つ目は,共通の問題意識かと思いますが,著作権法において,同時配信・追っかけ再生・見逃し配信を放送と同等に扱うという原則論や,著作権制度全体をデジタル対応させるといった総論をきっちりシェアした上で議論すべきだという御意見でございます。

5つ目は,議論のスピード感を持つ必要があるという御意見でございます。

最後の丸は,放送事業者と権利者,それぞれがWin-Winとなるように,文化庁,総務省で両当事者を巻き込んで答えを出していただきたいという御意見でございます。

今後の議論に当たりましては,これらの御意見にも十分留意をしながら,議論を進める必要があろうかと認識しております。

次に,資料1について御説明をいたします。本件に関する課題の整理と制度改正に係る論点について,議論を深めていただくためのたたき台として御用意をした資料でございます。これまで説明した内容と重なる部分もありますけれども,確認も兼ねて改めて全体を御説明いたします。

まず1ポツ,基本方針でございます。先ほどの規制改革推進会議ワーキング・グループでの御指摘も踏まえて,改めて基本方針を確認しておくために記載をしております。放送番組の同時配信等は,改めて申し上げるまでもなく,視聴者の利便性向上,コンテンツ産業の振興,国際競争力の確保などの観点から非常に重要な取組でございます。このため,諸外国の制度なども十分に踏まえつつ,放送と同等の権利処理を可能とする制度改正などを目指し,幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら,制度・運用の両面から総合的に対応を検討していく必要があるとしております。検討に当たりましては,何よりもまず国民から見た利便性を第一としつつ,一元的な権利処理の推進と権利保護・権利者への適切な対価の還元のバランスを図り,国民・放送事業者・権利者の全てにとって利益となるような措置を迅速に講じていくとしております。この基本方針を基に各論について御議論をいただきたいと考えています。

2ポツが課題の整理でございます。総務省で取りまとめいただきました放送事業者の要望におきましては,同時配信等を放送と同等に扱い一括した権利処理を実現するという観点から,制度的対応が必要な課題として,マル1からマル5までの5点が挙げられておりました。また,別途,裁定制度につきましても制度改正を求める要望が出されております。これまでの議論で確認されておりますとおり,こうした要望の中には性質の異なる様々な課題が混在しているところ,それぞれについて実効的な解決策を迅速に講じるためには,課題の仕分が必要だということになっておりました。具体的には,著作権制度の改正により対応すべき事項と,主として運用面での対応により同時配信等の円滑化を進めるべき事項,この2つに分類・整理するということになっておりました。

権利者団体からのヒアリングやこれまでの議論を踏まえまして,事務局としての分類・整理のたたき台を次の2ページ,点線囲みのところで記載しております。まず制度改正により対応すべき事項としては,(1)から(5)までの5点を挙げております。⑴は,現行権利制限規定の同時配信等への拡大でございまして,要望まとめの1.①に対応したものでございます。⑵は,借用素材を含む著作物及び映像実演に関して,放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化でございます。これは要望まとめでいうと1.②③に関わる部分かと理解しております。(3)がレコード・レコード実演の利用円滑化,これは要望まとめの1.③の関係でございます。⑷リピート放送の同時配信等における映像実演の利用円滑化,これは要望まとめでいうと1.④に対応したものでございます。また,(5)裁定制度の改善につきましては,要望まとめの2ポツに対応しております。

また,主として運用面での対応により円滑化を進めるべき事項としては,(6)と(7)と2つ記載をしております。(6)は,借用素材を含む著作物及び映像実演に関しまして,放送と同時配信等の利用許諾のワンストップ化・簡素化でございます。これについては,権利者団体からのヒアリングにおきましても,一括許諾などについて前向きな意向が示されておりますので,(2)の制度的対応と併せて関係者間での取組が期待されるものと理解しております。(7)は,音楽著作権に係る支分権管理・権利処理の在り方でございます。要望まとめでいうと1.⑤に対応した部分でございます。この点に関しましても,権利者団体から,現実的な処理方法を協議する場を設けるという提案もなされておりますので,制度改正と併せて迅速に当事者間での協議を進めていくべき課題だろうと認識しております。

続いて,3ポツ,今後の検討の進め方でございます。これは前回まで確認いただいたとおりでございますが,制度改正を検討すべき事項につきましては,令和3年通常国会での法案成立を目指し,優先的かつ集中的に検討を進めるとしております。また,運用面で対応を進めるべき事項につきましては,法改正を待たずに早急に当事者間での対応を進めるよう促すということと,さらに,総務省の勉強会におきましても別途検討が行われておりますので,その状況も踏まえながら改めて文化審議会としても必要な対応を検討していくことになろうかと思います。その際には,総務省の要望まとめの中で必ずしも著作権法上の課題ではないとされている事項が幾つか残っておりますので,これらについても併せて検討が想定されるとしております。

3ページ目に参りまして,今,課題の整理と進め方について御説明しましたけれども,いずれにしましても,本件につきましては様々な課題を総合的に解決していくことが重要でございますので,制度・運用の両面から実効的かつ合理的な対応を早急に進めていくということを記載しております。

続いて,4ポツからが具体的な内容でございまして,制度改正に係る論点として考えられるものを書き出しております。まず総論といたしまして,制度改正によって利用円滑化を図るべきサービスの範囲をどのように考えるかということが第1の論点になろうかと思います。この点,※印に記載のとおり,対象サービスの範囲は,全ての制度改正事項について一律に取り扱うべきものではなく,それぞれごとにどこまでのサービスを対象にするかということを検討する必要がありますが,ここでは基本的な考え方として,どの程度のサービスまで対象にするかということを議論いただきたいということでございます。

まず検討に当たっての視点として,(ア)から(エ)まで4つ書き出しております。(ア)は,利用者による視聴機会の拡大・利便性向上,(イ)は,放送に準じた,権利制限を行うに値する公益性があるかどうか,(ウ)は,権利者の利益への影響,(エ)は,その他のインターネット送信等のバランスでございます。この4つの視点を念頭に置きながら,次に記載の対象サービスの範囲を画する要素,マル1からマル7について具体的な取扱いを御議論いただきたいというものでございます。

①は,配信のタイミング・期間でございます。放送事業者の要望では,同時配信,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信を対象にしてほしいということでしたが,それでよいのかどうか。見逃し配信を対象にする場合には,放送事業者から1か月を期間とするという要望がございましたが,その点についてどのように考えるか。また,追っかけ配信・見逃し配信につきましては,放送をリアルタイムで視聴するというものではなく,放送・同時配信とは少し差があるということで,権利者団体からも少し慎重な御意見が示されていたかと思います。その点を踏まえながら,個々の論点・規定ごとに丁寧に扱いを検討する必要があるのではないかということも付記しております。

②は,放送対象地域との関係でございます。要望では,放送対象地域にかかわらず,配信を可能にしてほしいということでしたが,それでよいかどうか確認をいただきたいというものでございます。

4ページに参りまして,③は,放送で流す番組との差異でございます。番組の内容変更につきましては,権利処理ができていないために生じるフタかぶせなど,必要最小限の変更を認めるということ,また,CMについては番組の内容とは関わりませんので,CMの差し替えは問題ないという整理でよいかについて確認をいただきたいと思います。

④は,配信の形態でございます。こちら,要望の中でも,ストリーミング形式のみを対象にするという御要望でしたが,それでよいのかどうか確認をいただきたいと思います。

また,⑤は,実施主体につきまして,放送事業者が主体的に実施していると評価できるサービスであればプラットフォームを問わず対象にしてほしいということでしたが,それでよいのかどうか。また,その場合には,主体的に実施しているということをどのようなメルクマールで判断していくかという点について,議論が必要かと思います。

⑥は,地上波放送と同じように,視聴者から同時配信等に係る対価を徴収しない無料配信サービスを対象にするということでよいのかどうかという確認をいただきたいということでございます。

それから,⑦のラジオ,衛星放送・有線放送等の取扱いにつきましては,先ほど総務省から御報告のあったとおり,これらについても権利処理円滑化に関するニーズ・要望がございます。それを踏まえて,(ア)から(エ)までの視点におきまして,地上波テレビ放送と取扱いを異にするような事情が認められるかという観点から御意見をいただければと思います。その際,前回のヒアリングで権利者団体からは,基幹放送事業者が行う無料テレビ放送に限定すべきという御意見もあったところでございまして,その取扱いを含めて御意見をいただきたいと思います。

続いて,各論(各課題ごとの対応)について,順次御説明をいたします。(1)が現行権利制限規定の同時配信等への適用拡大でございます。5ページ以降で①から⑥まで,個々の規定ごとに現状と対応方針を書いておりますので,順次御説明をいたします。

まず①が,34条1項の関係でございます。現行規定上,学校向けの放送番組に用いられる著作物について,放送で流すことができるという規定になっておりますが,同時配信等で流すことができないという課題がございます。この規定については,学校教育番組での利用という特に公益性の高い場面について定めるものでございまして,ヒアリングでも権利者から個別に適用拡大に反対する意見も示されておりませんので,要望どおり,同時・追っかけ・見逃し配信を対象に含めていくということでよいかどうか確認をいただきたいということでございます。

②が,38条3項の関係でございます。現行規定におきましては,非営利・無料で行う場合または通常の家庭用受信装置を用いる場合には,様々な場所で放送を見せる,伝達することができることになっております。ただし,同時配信等は見せることができないというのが現状でございます。※にありますように,この規定は放送番組を制作する場面で働く規定ではありませんけれども,同時配信等が広く普及・定着していくに当たって影響を与え得る重要な規定として議論が必要かと思います。

この点,2つ目のポツにありますように,前回のヒアリングでは,一部の権利者団体から,この規定の適用拡大に反対する御意見や現行規定自体が権利を制限し過ぎであるという御趣旨の御意見もございました。この点についてどのように考えていくのかというのが論点になろうかと思います。

事務局としましては,少なくとも同時配信について見ますと,(ア)にありますように,適用拡大に理解を示している権利者団体も多いということ,また,(イ)にありますように,あくまで放送をリアルタイムで配信するものであり,公の伝達の場面に着目しますと,放送の代替として同時配信が伝達されることで権利者に深刻な不利益を与えるものとは必ずしも認められないのではないかと考えており,まずは同時配信を対象に含めることについて検討してはどうかと考えております。

その上で,同時配信以外の取扱いにつきましては,現行規定自体の在り方についても疑義が呈されておりますので,今回の議論とは切り離して,別途,関係者を交えた丁寧な検討が必要ではないかと考えております。

次に,③が39条1項の関係でございます。現行規定上,新聞・雑誌に掲載された時事問題に関する論説について,放送で流すことができることになっておりますが,同時配信等では流せないという課題がございます。この規定も,特に公益性の高い場面について定めるものであり,権利者団体からも個別に反対の意見も出されておりませんので,要望どおり,同時・追っかけ・見逃し配信を対象に含めることでいいか確認をいただきたいと思います。

その際,※印で,前回のヒアリングにおきまして,権利者団体から,この規定の解釈やただし書の位置づけに配慮した検討が求められております。当然ながら,今回対象とするサービスを拡大した場合にも,それ以外の要件やただし書の存在に影響が及ぶものではありませんので,そのことを確認的に記載しております。

6ページに参りまして,④が,40条2項でございます。現行規定上,国会などで行われた演説等について,放送で流すことはできるという規定になっておりますが,同時配信等では流せないという課題がございます。これも特に公益性の高い場面でございますし,演説等を行う者が同時配信等を拒否するということも想定し難いことから,要望に沿って同時・追っかけ・見逃し配信を対象に含めてよいか確認をいただきたいと思います。

⑤が,44条,一時的固定の関係でございます。現行規定上,放送事業者等は,自己の放送のためにフィルムやテープ等に一時的に著作物を固定することができるということになっておりますが,同時配信等のためにこの規定は使えないというのが現状でございます。

この点,2つ目のポツにありますが,同時配信等を行おうとすれば,その前提として多様かつ大量の著作物等を記録媒体に一旦固定する必要がございます。この点,上記①③④を拡大して同時配信等を可能とするということを前提にしますと,そうした同時配信等を許諾なく行うということになりますので,その場合,固定・複製について許諾を円滑に得るということは難しい場面もあろうかと思います。これも踏まえ,基本的には同時・追っかけ・見逃し配信を対象に含めるべきではないかと考えて思います。ただし,この点,一部の権利者団体からは,既に包括的な許諾契約で利用が可能になっているという御意見もいただいておりますので,ライセンス市場との関係をどのように考えるかについては議論が必要かと思います。

⑥は93条でございますが,⑤の実演版というような規定でございますので,同様に見逃し配信まで対象に含めるべきではないかとしております。

続いて,(2)について御説明いたします。借用素材を含む著作物及び映像実演に関しまして,放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化でございます。

まず1つ目の丸,確認になりますけれども,借用素材を含む著作物,映像実演につきましては,放送での利用許諾を得るに当たって権利者と交渉する機会がありますので,その際併せて同時配信等についても交渉を行うことが可能でございます。このため,現行制度の在り方が同時配信等を特に困難にしているという事情はないものと理解をしております。

ただ,現実には,借用素材等について放送はできるけど配信はできないという場合も生じていると承知しております。その要因としては,7ページの白丸の(ア)と(イ)の2つがあろうかと思います。(ア)は,当事者間での交渉の結果,放送でのみ利用可能という条件で契約を行った場合,すなわち,権利者が同時配信等を認めていないことが明らかである場合でございます。(イ)は,契約の際に同時配信等の可否を明示的に確認できておらず権利者の意向が明らかでない場合でございます。

当然,(ア)のような場合には,許諾契約で権利者が明示的に拒否をしているということでございますので,それに反して同時配信等を強制的に実施できるようにするということは,著作権制度の本質に鑑みまして,権利者の理解も得られず,困難だろうと考えております。

他方で,(イ)のような場合につきましては,権利者の利益を不当に害しないことを前提にして,円滑な利用を可能とする措置も考えられるのではないかとしております。この点,先日のヒアリングにおきましても,放送を許諾しつつ,同時配信を許諾しないということは基本的に考えづらいという御意見もございましたので,それを踏まえて具体的な措置を議論いただきたいと思います。ここでは,例えばということで,放送及び同時配信等に係る許諾権原を有する者が放送の許諾を行うに当たり同時配信等を許諾しない旨の意思表示をしていない場合には,同時配信等の許諾も行ったものと推定する(又はみなす)規定を設けることについてどのように考えるかということで,あくまで一例ですけれども具体的な措置を挙げておりますので,御意見をいただきたいと思います。

その際,次の丸にありますように,権利者の利益にどのような影響を与えるのか,とりわけ権利者団体からは,不利な条件での契約を強いられることへの懸念も示されていたところですので,その払拭のための措置についても併せて検討が必要かと思います。

また,さらにその下ですけれども,権利者のヒアリングにおきましては,同時配信と追っかけ・見逃し配信の違いを強く意識した意見も多かったところでございます。推定の前提となる権利者の通常の意思がどこにあるのかという観点から,追っかけ・見逃しまで推定の対象に含めることができるのかどうかという点についても議論が必要かと思います。下の※印につきましては,推定が及ばない場合もあり得るというのを幾つか例に挙げておりますが,説明は割愛いたします。

次,8ページに参りまして,上のポツは,推定規定の性質について確認的に記載しているものでございます。反対の事実を証明することで推定を覆せるところ,例えばその権利者が過去の同様の契約交渉におきまして同時配信等を明確に拒否するという意思表示をしていた場合や,許諾に際して支払われた対価の水準などもこの推定を覆す際の考慮要素となり得るものと考えられるということを確認的に記載しております。

次に,(3)レコード・レコード実演の利用円滑化でございます。ここは何度も御説明しておりますとおり,放送と配信で制度上の差異がありまして,これに基づいて同時配信等での利用が困難になる場合があるという御指摘がされております。これを踏まえて,いわゆるアウトサイダーに関しまして,補償金つきの権利制限を創設してはどうかとしております。

その際には,権利者団体からは,同時配信と追っかけ・見逃し配信を区別すべきという御意見も示されていた一方で,放送事業者からは見逃しも含めた柔軟な対応が求められているところでございます。これを踏まえて,どこまでのサービスを対象に含めるかというのが論点になろうかと思います。

また,ここではいわゆるアウトサイダーといっておりますが,その定義・範囲を具体的にどう考えるかという点についても,詰めた議論が必要かと思います。集中管理の有無だけで判断してよいのか,もしくは文化庁で構築してきた権利情報データベースに登録していることを加味するかどうか,また,外国原盤については当然日本の権利者が管理していないものが多いわけですけれども,それをもって権利制限してよいのかという点については,慎重な検討が必要かと思います。

また,補償金つき権利制限規定を創設する場合には,その補償金をどのように運用していくのかというスキームについても議論が必要かと思います。※にありますように,放送事業者からは,現状の放送二次使用料と同様のスキームを求める意見があった一方で,権利者団体からは,集中管理に誘導する観点から指定団体制は不要であるという意見や,実演家に適切な対価が支払われない事態が生じないよう十分に配慮すべきという御意見もございましたので,権利処理の円滑化と権利行使の実効性などの観点からスキームについて議論が必要かと思います。

次に,(4)がリピート放送の同時配信等における映像実演の利用円滑化でございます。過去に制作した放送番組のリピート放送につきましては,94条に基づき,基本的に改めての許諾は不要で,報酬を支払えばよいという仕組みになっております。ただ,このリピート放送をしつつ同時配信などをするという場合には,同時配信等部分について許諾が必要というのが現状でございます。ただ,過去に制作した番組でございますので,所在不明等で改めて許諾を得づらいという実演家も多いと考えられますから,これらについて利用円滑化の措置を検討してはどうかと考えております。具体的には,リピート放送と同様,初回放送時の契約に別段の定めがない限り,改めての実演家の許諾は不要としつつ,報酬の支払いを求めることにしてはどうかとしております。

9ページに参りまして,同時,追っかけ・見逃しのうち,どこまでをサービスに含めるのか,集中管理などとの関係をどのように考えるか,また,報酬請求権のスキームをどのようにしていくのか。これらについてはレコードと同様に議論が必要かと思います。

次に,(5)が裁定制度の改善でございます。①と②と2つあります。①が,68条に規定する協議不調の場合の裁定でございます。これにつきましては,現状,放送だけに限定されておりますが,同時配信等にも活用できるようにしてはどうか,対象サービスとしては見逃し配信まで含めることでよいのか,確認をいただきたいと思います。また,その際,著作隣接権に準用するかどうかということも論点になりますが,この点,(3),(4)の措置で相当程度利用円滑化が図られるとしますと,改めてこの規定を準用する必要があるのかどうか,という点について御意見をいただきたいと思います。

それから,②が,67条に規定する権利者不明の場合の裁定でございます。放送事業者の要望に沿って3点記載をしております。1つ目は,補償金の事前供託免除の対象範囲拡大でございます。民放事業者についても事前供託免除の対象に加えるという方向で検討する場合には,どのようにして補償金支払いの確実性を担保していくのかということが論点になろうかと思います。どのような要件が考えられるかについて御意見をいただきたいということでございます。

2番が,「相当な努力」の要件緩和でございます。とりわけCRICのウェブサイトへの広告掲載について御要望をいただいております。放送事業者からは,(ア)に記載のとおり,広告掲載直後から申請を可能とすることで,1週間程度期間を短縮してほしいという御意見や,CRICのウェブサイトだけではなくて,著作権等管理事業者のウェブサイトも柔軟に活用すべきではないかという意見もいただいておりまして,こうした点について,権利者捜索の在り方として支障があるのかどうか,なければ,取り入れていくという方向について御議論をいただきたいということでございます。

10ページ目,最後でございますが,3番が申請手続の電子化でございます。これは行政側として速やかに進めることにしたいと考えております。なお,手数料納付の電子化につきましては,新たに電子決済システムの整備などが必要になりますので,政府全体の取組の中で対応を進める必要があろうかと認識しております。

少し長くなりましたが,事務局からは以上でございます。

【末吉座長】ありがとうございました。それでは,今の事務局の説明を受けまして,課題の整理や論点などについて議論を行いたいと思います。資料1においては,2ポツ,課題の整理(案)と3ポツ,今後の進め方(案),4ポツ,制度改正に係る論点の総論・各論に分けて記載がされておりますので,それぞれに区切って議論を進めたいと思います。

まずは資料1の1ページの2ポツ,課題の整理(案)に関しまして,課題の整理がこのとおりでよいかどうか,御意見等をよろしくお願いします。いかがでございましょうか。御発言がある方は,声を上げていただけますでしょうか。内山委員,どうぞ。

【内山委員】青学,内山です。2ポツのところということですけれども,今日は資料2の御説明から入ったので,なおかつ,今日が言える最後のチャンスだと思いますので,あえて外させてもらいます。何かというと,2条における放送の定義の改正という芽はないのかという問題提起をさせていただきます。これは例えば放送局の側が言っている要求がたくさんありましたけれども,結局あれを全部満たそうとすると,2条の放送という定義の改正しかないというのは一面あります。なおかつ,それをやれば,国民と言うのはちょっと誤解を招くので視聴者というふうに言いますけれども,視聴者にとってもフタかぶせがミニマムになりますので,その点においても多分恩恵は大だろうと。

ただ,もちろんこの委員会の皆さんお分かりのとおりで,あるいは前回の18日の議論がそうであったように,全くもって権利者側の御理解を得る段階には至っていないということがあると思います。つまり,放送局と視聴者と権利者と三方あったときに,少なくともその三方は並立していないというところは多分2条を見直すというところの問題だと思います。

このワーキングチームとして2条を扱うことは無理という総意の下でこのたたき台を議論するという流れで皆さんよろしいんでしょうかという確認をしたうえで,このたたき台の議論に入りたいと思っているんですけれども,いかがでございましょうか。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。大渕です。今の御発言の趣旨が必ずしもよく分からなかったのですが,私としては,前々から申し上げているとおり,喫緊の課題で緊急に成果を上げなければいけないので,根本的な話というのは別途じっくりと腰を落ち着けてやるべきものだと思っております。私としては,ここの2ポツで書かれているこの問題整理というのは,言わば現行法の基本的枠組みをそのままにした上で,限られた短い時間で現実的な対応が取れる範囲の論点として整理されているというように理解しております。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。

【前田委員】前田です。よろしいでしょうか。私も今の点は大渕先生と同じで,放送の定義を変えることによって解決を目指すということにつきましては,同時配信まではそれが可能性としてありますけれども,追っかけ・見逃しということになってきますと,それを放送の定義の中に含めることはさすがに難しいと思いますので,追っかけ・見逃しまで視野に入れた総合的な解決を目指すとすると,今のこのペーパーで用意していただいている考え方のほうが現実的ではないかと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【池村委員】池村です。私も,今,前田先生おっしゃったことに全く賛成です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【奥邨委員】奥邨です。今,前田先生がおっしゃったこともあるんですけれども,放送の定義を仮に広げたとした場合にですけれども,その効果なんですが,結局,著作権法上の規定の問題については解決する部分もあると思うんですけれども,例えば放送局さんがおっしゃっておられたような借用素材のような個別のライセンスを得たりする部分については,これは相対の契約の話しですから,その契約で「放送」と書いてあるところが,著作権法上の放送の定義を広げたから自動的に広がるのかというと,そうは急にはならないのではないかと。少なくとも将来のものについてはそうかもしれませんが,過去のものはどうなんだとか考えると,必ずしもそうでない。

現時点でも,例えば公衆送信という言葉があるんだけども,それを放送に割り込んだり,インターネット送信に割り込んだりして許諾が行われている実態からすると,法律の規定だけ直しても,それだけで済まない実務的なところまでカバーできるのかというと,それで全てが解決するということではないと思えます。そういう意味では,さっきから御意見が出ているように,著作権法全体に与える大きな影響との関係からすつと,コストパフォーマンスのいい解決方法なのかなという疑問がある,というふうに思いました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【今村委員】よろしいですか。今村です。定義を変えると一挙にいろいろな物事が解決できるような部分もあると思うし,魅力的だとは思うんですけれども,そのように定義を変えることによって,やはり大渕委員がおっしゃったように,結構時間がかかる。例えばインターネットの同時送信も放送になるということになりますと,隣接権の問題とかも関係してくると思いますので,やはり今は,今回出されたたたき台の論点を迅速に検討していくことがむしろ早道なのではないかと思いました。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

ここでちょっと一区切りしまして,次の論点に進んでもよろしゅうございますか。それでは,ありがとうございました。

続きまして,資料1の2ページ,今度は3ポツ,今後の進め方(案)につきまして,御意見,御質問等をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

ここはこれでよろしゅうございますか。

【池村委員】池村です。私はこれで賛成です。

【末吉座長】分かりました。ありがとうございます。

【大渕座長代理】大渕です。私も現実的な案が示されていると思います。

それから,先ほどの第1論点に少し付け加えますと,著作権法は放送の現在の2条の定義で出来ていますので,それを変えると,今回の問題は解決できるかもしれませんが,それ以外にあまりに波及効果が大きく,本質的な大改正になってしまうので,極めて非現実的だと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

よろしければ,次の論点に参りたいと思います。続きまして,資料1の3ページの4ポツ,制度改正に係る論点(案)の総論につきまして,御意見,御質問をいただきたいと思います。

どうぞ,内山委員。

【内山委員】4ポツ,制度改正に係るところに関しては,おおむね御提案されている方向で行けるとよいかなと思います。いろいろな意味において,放送と通信の融合問題があったときに,制度が足を引っ張るという議論はよくありますし,また,日本の場合,よく外国と比較されて,融合制度が後れているという批判はよく出るんですけれども,もしここで見逃しまでうまく範疇に入れる形でできていけば,一気に制度は米欧にキャッチアップできると思っています。ですので,その観点では,今ここに提案されている方向性で議論していただけるとよいと思います。

あと,先ほどの冒頭の件はありがとうございました。ワーキングチームの総意としてであれば,それに従って議論に参加していきたいと思います。よろしくお願いします。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【奥邨委員】奥邨です。よろしいですか。すみません,これ,どこまで? 3ページというのは,総論のところだけ……,すみません,対象サービスの範囲を画する要素のところも全部入るということでよろしいんでしょうか,議論対象としては。今どこまでなんでしょうか。

【末吉座長】総論全部です。

【奥邨委員】総論全部ですか。

【末吉座長】ええ,3ページから4ページにかけての総論だと思っておりますが,いかがですか。

【奥邨委員】分かりました。基本的に私も方向性としてはよろしいかと思いますが,1点だけ。細かく見れば,著作権法上,同時配信と追っかけ配信とはちょっと違うというのは分からなくはないです。さっきも議論がありましたけれども,確かに放送の同時性ということを揺るがさないというようなことで言えばそうなんだと思うんですが,ただ一方,同時配信と追っかけ配信をあまり大きく差をつけるということ自体は,冒頭出ていましたようなお話からしても,国民一般目線,視聴者一般目線から考えても,それから,このサービスの意味ということを考えても,あんまり大きな差をつけてしまうと意味がないのではないかと思います。

追っかけというのは,基本的には,このTFでの定義では,その番組が終わるまでの間ということですから,60分のドラマだったら60分しかずれないわけでありまして,見逃し配信のように何日もずれる,1週間,1か月ずれるというようなことではないわけであります。したがって,いろいろな点でかなり同時性が高い,セミ同時だというふうに考えられる部分があると思います。

私としては,これは細かな論点にも関わってくると思うんですが,全体的な視点としてはやはり追っかけというのは,真ん中にありますけれども,同時に近いというふうな視点を持って検討していくべきではないかなと思います。もちろんここに書かれているように,個別個別で見るということについて反対はいたしませんけれども,基本的な考え方としては,追っかけは同時に近いというようなことが前提になってくるのかなと個人的には思っています。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【大渕座長代理】私もこの4の総論のところはこれでよろしいかと思います。

今言われた点に関連して,同時と追っかけと,それから,見逃しとあるのですが,カテゴリカルに考えるよりは,実体を見る必要があると思います。恐らく同時についてはあまり異論がなくて,そのあとをどう考えるかというところですが,追っかけの場合だと実体としては恐らく同時にかなり近いし,見逃しのほうは,時期にもよってくるかと思いますが,同時に接近している部分もあるかと思います。あまりカテゴリカルに考えるよりは実質がどうかというところで,私は,3ページにあるように,個々の論点・規定ごとに丁寧に考えていく必要があるかと思いますが,丁寧に考えたら必ず3つが違うということはない。丁寧に考えた結果,実質が近いということもあり得ます。そこのところは,丁寧に考えていく必要はあるかと思いますが,実質を重視するべきではないかと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。どうぞ。

【前田委員】よろしいでしょうか。対象サービスの範囲を画する要素の中のマル7のラジオや衛星放送・有線放送等の取扱いに関しまして冒頭にお話があったところなんですけれども,放送自体の公共性・公益性の中にはばらつきがあるように思います。例えば基幹放送事業者が行うテレビ放送については,番組調和原則を満たさなければいけない等の放送法上の義務が課されて非常に公共性・公益性の高いものになっておりますけれども,それ以外の放送につきましては,趣味性の非常に高い専門チャンネル等もございまして,放送の中にもいろいろなものがある,公共性・公益性の高さ等にはいろいろなものがあるということが今回の議論に影響すると思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。よろしいですか。

それでは,次の論点に入りたいと思います。資料1の4ページ,4ポツの各論のほうでございます。4ページの最後のところ,各論についてです。この各論なんですけれども,まず(1)番の現行権利制限規定の同時配信等への適用拡大,この点につきまして,この(1)につきまして,御意見,御質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【池村委員】池村です。②の38条3項ですけれども,前回ここで※印で書かれているようなネガティブな意見を申し上げましたけれども,同時配信に限定するのであれば,前回も発言したとおり,視聴者から見れば視聴端末の違いにすぎないというふうに思いますので,賛成です。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【奥邨委員】奥邨です。よろしいでしょうか。今のマル2の38条3項のところなんですが,先ほど申し上げたような感じが前提になるんですけれども,私はここで同時と追っかけを分けるというのは,なかなか一般の方からすると理解がされにくい区分なのかなという気がいたしております。本当に60分,番組1つ分の時間の中で,ちょっとでも差がつくと公衆伝達ができない,38条3項が適用できないということがどれぐらい御理解いただけるのかということだろうと思います。今回の場合,ネット配信のやはり1つの価値,同時配信の価値が,テレビだったらできないことが若干できるようになるというところも価値としてはあるわけなんですけれども,それをここのところはかなり絞ってしまうことにならないかなという心配もいたします。

また,例えば家庭の中で,テレビで見るのだとすると,今,テレビの中に大体,ハードディスクがついていて,録画の話になりますけれど,追っかけで見るというのは誰でもできることなんですね。ところが,ネットを通じるとそれができなくなる,それを人に見せられなくなるというのは,ちょっと差がつきすぎるのかなと。追っかけについてはそこまで差をつけなくてもいいのかなということで,私はどちらかというと,ここは同時と追っかけがワンセットであってもいいのかなという感想は持ちました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。大渕です。マル2の38条3項関係で,やはりほかのとこのマル2は違いがあって,それが3つ目のポチで前回申し上げたところですが,この38条3項自体に見直し議論があるものですから,現実的路線という意味でこのペーパーの整理には賛成であります。38条3項問題というのは別途,今回のこの短いスパンではなくて,しっかりと腰を落ち着けてやるという下支えの上で,今回現実的にできるところということになると,この2つ目のポチのように同時配信という現実的な路線になるかと思います。私も,見逃しのほうは少し遠くなりますが,追っかけだと,実体によってはほぼ同時配信と同様という可能性もあるので,その辺は,3つとも,見逃しまでやるとなると今回の短いスパンでは難しいと思うのですが,追っかけのほうは同時配信に近いかもしれない,そのような意味でやはり実体重視ということになろうかと思っております。

それから,6ページの44条のほうは,ここで書かれているのでよろしいかと思います。44条のこれが肯定されないと,結局,実質的にはタイムシフト的に安定的に放送できませんので,これは必要かと思います。少し気になるのが,一番下のポチのところで,ライセンス市場との関係をどのように,これ,たしかこのようなことを言われたのですが,現にライセンスが出ているということの抽象論にとどまっているので,反面で,単なるライセンスではなくて,先ほど申し上げたように,44条は,これを肯定しないとマル1,マル3,マル4ということが実施できなくなるために,必要性が高いものですから,それとの関係で現にライセンスが出ているというだけでこれを否定するような理由になるのかというのは,もう少しライセンス市場というのはどの程度のものかというのを出していただかないと判断しにくいかと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【前田委員】前田です。よろしいでしょうか。今の44条のところなのですが,今,大渕先生から御指摘がありました,マル1,マル3,マル4のような権利制限規定に基づき同時配信等を行う場合については,44条の改正の必要性があると思うのですが,もともと44条が適用される場合には,権利制限規定等に基づいて放送等を行うことができる場合と,それから,放送等の許諾に基づいて放送等をすることができる場合の2つの場合があります。権利制限規定によって放送等ができる場合に,放送等のための固定も行うようにできることについては,今回の場合は,同時,見逃し,追っかけ配信のための固定を行うことができるようにする必要性はあると思うのですが,同時,追っかけや見逃し配信の許諾を得ている場合に,なおかつその固定のための規定を44条の改正によりつくらなければいけない必要性というのはどの辺りにあるのかなというのがよく分からないのですが。つまり,同時配信等の許諾を得れば,そのための複製・固定というものも許諾されるのが一般ではないかと普通は思いますので,あえて44条で権利制限をする必要性というのはどこにあるのかなという疑問を感じました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。大渕です。私が先ほど申し上げたのは,このペーパーの趣旨というのは,マル1,マル3,マル4のような場合に44条を準用するという趣旨だと理解したので,その意味では前田先生と問題意識は同じであって,それを超えても認めるという問題があります。私としては,マル1,マル3,マル4の関係でというように理解して賛成したので,それ以上になってくると,また別途の考慮が必要になってくるという点はそのとおりではないかと思っております。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょう。

【今村委員】今村です。38条3項の点なのですが,今までのテレビ番組の放送を見るという場合には,非営利・無料で例えば映像を拡大する特別な装置を大学などに置いて見る場合には,放送の隣接権としてのテレビジョン放送の伝達権ですか,そういったものが及び,テレビ番組の著作権の方と異なり,非営利・無料だからという制限規定もこれについてはない部分もあると思います。けれども,今回同時配信に含まれるテレビ番組やそれに含まれる著作物にこの38条3項を手当てすることによって,非営利・無料ということで許容される一方で,同時配信には放送の隣接権は働かない。映像を拡大する特別の装置を用いたとしても,オンラインで配信されている同時配信だけを例えば非営利・無料で公に伝達するという行為は,特にテレビジョン放送の伝達権のほうは関係ないという理解で議論を進めていっても大丈夫だということになるでしょうか。

【末吉座長】すみません,今のは御質問ですか。

【今村委員】はい,質問です。今までテレビ放送というのは,放送の隣接権とテレビ番組の著作権のほう,両方,権利を考えなければ駄目だったわけですよね。今回は,最初に内山委員のほうからあったような放送概念を拡大するわけではないので,同時送信される著作物の権利処理だけ考えるということになります。同時送信イコール放送とみて隣接権の客体を拡大するわけではないということです。同時送信自体にはテレビジョン放送の伝達権というものはないわけです。片割れのほうというか,本体の放送に隣接権があるのに対して,それと同時に行われる同時送信のほうには隣接権はないわけです。

それで,今までは38条3項で,例えばラーメン屋さんに小さなテレビを置いて見るとか,非営利・無料で見るという部分は,テレビ番組やそれに含まれる著作物の著作権の権利の問題はクリアしていたと,そういう規定だったと思います。今回同時送信のほうについて権利制限を考えるという場合には,隣接権の処理のほうは特に関係ないということになって,38条3項の部分だけ手当てするということですね。ということは,結果としては,放送と同等の同時送信の方のみを非営利・無料で見る場合には,映像を拡大する特別の装置で見たとしても,放送を伝達しているわけではないので,テレビジョン放送の伝達権のほうはそもそも関係ないということになるわけですが,それでもいいのだろうかという部分も検討してはどうかと思いました。

【末吉座長】分かりました。ちょっと事務局から一言どうぞ。

【大野著作権課長補佐】今おっしゃっていただいたのは,放送事業者と有線放送事業者の権利の話だと理解をしております。著作権法100条におきましては,放送事業者の権利として,テレビジョン放送を受信して拡大する特別な装置を用いて公に伝達されない権利を放送事業者が有することとなっております。有線放送事業者についても同じような権利が100条の5というところで定められております。

これはあくまで放送や有線放送についての権利でございますので,同時配信や見逃し配信にこうした権利が設定されているわけではありませんので,今回,同時配信や見逃し配信などについての権利制限の議論をするときに,この100条や100条の5との関わりというのは直接的には議論する必要はないだろうと思っています。

この際,併せて同時配信や見逃し配信等についても権利の範囲を拡大して保護対象にしていくのかという点については,論理的には議論の余地はあろうかと思いますけれども,今回は,放送事業者・有線放送事業者自身が同時配信や見逃し配信を広く伝達したいという観点から御要望をされていることも考慮しますと,必ずしもそういった権利の範囲を広げて伝達できる対象を狭めるという必要はないだろうと理解しておりました。

【今村委員】分かりました。大変趣旨はよく分かって,今まで問題だったところが手当てできるようになっていいことだと思いました。

【末吉座長】御指摘ありがとうございます。

【奥邨委員】奥邨です。私も今のところ,大野さんのお話のとおりだと思っていて。確かに細かく詰めていくと,こっちが増えたんだからこっちどうする? というような議論がありそうな気がするんですけれども,今回の文脈の中では,放送局の権利が,極端に言うと100条を拡大するというような話なんですけれども,何か流れの中としては,そもそもそういう話というのは今回の議論とは整合しないというふうに思います。より広く使ってもらうために,放送局としては著作権者,著作隣接権者の権利を切り下げていくという1つの考え方を示されてている部分もあるわけですけれども,その流れの中で放送局の権利が増えてしまうというのは,バランス論としてもなかなか理解のしづらいところかなとは思いますので,100条や100条の5については特に手当ては要らないんじゃないかなというふうな思いを持ちました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。ありがとうございました。

それでは,次に参りましょう。次は,6ページでございまして,6ページの(2)のところ,借用素材を含む著作物及び映像実演に関して,放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化,この点につきまして御意見,御質問をいただきたいと思います。いかがでございましょう。

【前田委員】前田です。よろしいでしょうか。事務局に対する御質問なのですが,権利者からのヒアリングでは,同時配信と追っかけ配信・見逃し配信の相違を強く意識した意見も多かったところ,権利者の通常の意思という観点から,追っかけ配信・見逃し配信についても推定の対象に含めることが可能かという論点を書いていただいているかと思うのですが,私の記憶が正確ではないんですけれども,権利者のほうで追っかけ配信・見逃し配信については,様々な事情から許諾できなという場合がある。それは自ら配信の権利を持っていないから,あるいは既に第三者に独占許諾しているから許諾できないという場合があるというお話があったと思うのですが,その権利を持っている場合に,追っかけ配信や見逃し配信を許諾しない場合もあるというような御意見が権利者からあったでしょうか。

私の記憶では,もともと権利がない,あるいは他に独占許諾しているから許諾できない場合があるということはあったと思うんですが,そうでない場合は許諾するのが普通だったような御意見だったような気もし,もしそうだとすると,追っかけ配信・見逃し配信についても推定の対象に含めることができる余地が出てくるのかなと思いますので,お尋ねしたいと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。事務局,この点はいかがでございますか。

【大野著作権課長補佐】ヒアリングでは様々御意見があったかと思います。許諾権原を持っている場合に見逃し配信まで許諾するつもりはないという明示的な意見は必ずしもなかったものと承知していますが,様々な論点に関して,同時配信とそれ以外の配信を区別して考えているという御意見が多くあったかと思います。

推定規定を設ける際には,放送を許諾した場合に,その放送の許諾の中に権利者がどこまで許諾を含める意思を持っているのかというのが重要になりますところ,同時配信とそれ以外を区別した認識を持っている方もおられる中で,放送の許諾の効果としてどこまで推定を及ぼせるのかという点については少し慎重な議論が必要ではないかという問題意識として書かせていただいております。必ずしも見逃し配信を拒絶するという方が多かったとは理解しておりませんけれども,同時配信とそれ以外の配信を区別して認識しているという実態はあると思いましたので,その点も踏まえながら議論いただければと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。前田委員,いかがですか。今ので大丈夫ですか。

【前田委員】はい。ありがとうございました。

【末吉座長】ありがとうございます。それでは,ほかに伺いたいと思います。いかがでございましょう。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。7ページの今の辺りにつきまして,権利者の通常の意思というのが先ほどのように多義的で,3つとも一緒にすればよいという意見はなくて,区別しなければいけないという意見はありましたが,はっきりと同時配信だけが意思に合致して,それ以外は別途であるという意見でもなかったように思います。私はこの辺がうまく拾えるのが,その辺りに出ていたかと思いますけれども,みなしとするわけではなくて,この御提案としては「推定」ですので,その辺りは柔軟にうまく拾えるのかなと。御趣旨として,同時まではよいけれども見逃しは駄目だとかいうのであれば推定で覆りますので,この辺りは「推定」でうまく拾える面があるのではないかと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほか。どうぞ。龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】全般的に混ぜ返してしまうような話で誠に恐縮ですが,先ほどの冒頭で,検討に当たっての視点の総論のところで4点ほど視点が挙がっているわけですけれども,その中で,ヒアリングの中で一番浮上していたのは,ライセンス市場への影響とか,既存の秩序にどれだけのインパクトがあるのかという話,これが前回の議論の中では突出してあったと思います。既存の取扱いが例えばライセンスをしているのか,あるいは報酬請求権なのかという,その前提部分がかなり固定しているといいますか,そのような実務が定着して存在するので,今回の改正において,その辺りをどれだけ重視するかということが重要なスタートラインになるのであって,必ずしもそれには乗らないのだという路線で行くのか,いや,それを前提としながら現実的な対応として,少しずつ変えていくということで行くのかで大分様子が変わってくるのではないか。

ですので,同時配信,追っかけあるいは見逃し等についても,これがどういう性質のものなのかを決めていかなければならないといいますか,それが報酬請求権相当のものなのか,許諾権相当のものなのか,それと,許諾権の場合にどういうふうに実務的にやっていくのか,誰がどのような仕組みの中で組み込んで処理していくのかとか,そういうことを考えた場合に,,そこをどうしていくのかということを避けては通れないのではないかと。総論的なところに戻って恐縮なんですけれども,そういう印象を持った次第です。

【末吉座長】ありがとうございます。かなり根本的な御指摘でございました。

ほかにどうぞ。

【前田委員】前田です。もう一度よろしいでしょうか。今の龍村先生の御意見についてなのですが,許諾権なのか,報酬請求権なのかという議論は別の場面ではあると思うのですが,今議論している推定の場面では,許諾権であることを前提として,許諾をしたときにその許諾にどこまで含まれると推定するかという問題ですので,龍村先生がおっしゃっている,許諾権か報酬請求権かということが今のこの論点で関係するのか,ちょっと疑問に思いました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。何かありますか。

【龍村委員】これはどの場面で性質論が関係するのかというのは,もう少しきめ細かく見ていかないとならないかなとは思います。ちょっと一律の話で恐縮ですけれども。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

このくらいにしますか。ありがとうございました。

それでは,次の論点に参りたいと思います。今度は8ページでございます。(3)レコード・レコード実演の利用円滑化について,この点につきまして御意見,御質問等をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

【前田委員】前田です。よろしいでしょうか。この箇所でアウトサイダーの定義・範囲をどうするかという問題がございます。先ほどの事務局からの御説明でも,著作権等管理事業者によって集中管理されているものだけではなくて,権利情報データベースに登録されているもの等もアウトサイダーでないというふうにすることも考えられるのではないかという事務局の御説明もあったかと思うのですが,私は,多くの権利者の権利が著作権等管理事業者によって既に管理されているという実態がある利用については,著作権等管理事業者によって管理されているものとそうでないものとで二分し,そうでないものをここで言うアウトサイダーにするというふうに割り切ることもひとつの選択肢としては考えられると思います。

と申しますのは,権利情報データベースに登録されているために権利者が分かったとしても,その権利者に一々連絡をして許諾を求めなければいけないという現象が起きる,つまり,権利情報データベースに登録されているとしても,包括処理はできないということが1つございます。それから,許諾を求めたとしても,著作権等管理事業者によって管理されているものであれば,著作権等管理事業者に応諾義務が発生しますけれども,権利情報データベースに登録されているだけでは応諾義務が生じているわけでもございません。

さらに,著作権等管理事業者には使用料規程があって,その使用料規程が協議・裁定の対象になったり,あるいは文化庁長官による監督の対象になるということで,使用料の水準についても規制が及び得るわけですけれども,権利情報データベースに登録されているというだけはそういうことでもありませんので,既に著作権等管理事業者によって多くの権利者の権利が管理されているという実態のある利用については,著作権等管理事業者によって管理されているかどうかで区別をするということも選択肢としては考えられると私は思います。

また,著作権等管理事業者によって管理されているものだけを対象とした規定というのは,既に114条4項に現実の規定としてございますので,先例もあるということで,先ほど外国の権利者の場合はどうなのかという御指摘が事務局からありましたけれども,外国の権利者についても,管理事業者によって管理されているかどうかで考えることもあり得ると思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

【奥邨委員】奥邨です。私も今の論点ですけれども,前田委員に賛成です。ここでご提案の仕組みであると,権利情報データベースに登録されているものが一番使いにくくなってしまうのではないかなというふうに思います。応諾義務もないし,補償金もないし,これだけ個別にライセンスということになってしまってかえって使いにくくなるので,データベースに登録することのインセンティブになるのか,ディスインセンティブになるのか,少し制度としては全体の方向性としてアンバランスな気がいたしました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。よろしゅうございますか。

それでは,次の点に参りたいと思います。次は8ページの(4)リピート放送の同時配信等における映像実演の利用円滑化,この点につきまして御意見,御質問をいただきたいと思います。いかがでございましょう。

【前田委員】前田です。よろしいでしょうか。(4)については,やはり同時配信等については,実演家の許諾を不要としつつ報酬の支払いを求めることにするという改正が必要になると思います。その場合に,同時配信と追っかけ配信・見逃し配信を区別するかということですけれども,過去に制作した放送番組,そういう番組についても見逃し配信をする現実的な必要性があるとすると,見逃し配信まで含めて改正の対象にすべきだと思います。仮に過去番組については見逃し配信までの必要性がないということであれば,同時配信と追っかけ配信までにするということも考えられるところだと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。今の(4)の8ページの一番下のところにつきまして,リピート放送に関してというのはここで書かれたとおりで,許諾は不要としつつ報酬の支払いを,まさしくこれが今回のポイントかと思います。先ほどあったような,許諾権という大枠は現行法を変えずにその中で工夫しようとすると,このような形になってくるので,許諾は不要で,代わりに,全てがそうであるように,最後は,許諾権なのでしょうが,うまく推定等を加えることによって,実質は報酬請求権に近いようなものにしていくということで円滑化を図るという,そのポイントがここには非常によく出ているのではないかと思います。このような今の(4)のような話にもなるし,補償金つきの権利制限にするとかいろいろな形になるかと思いますが,現行法の枠組みを変えてしまうと大変なことになりますので,あくまで許諾権だということはキープしつつ,実を取るというか,実質に合わせるというか,そのような形がよいと思います。

それから,先ほど言われたように,私もニーズによって変わるかと思いますが,それを言い始めると,ここだけではなくて,ほかのところも見逃しまで及ぼすかどうかというのは,先ほどのようなポリシー的なところがかなり出てくることになり,ここだけに限られる問題でもないという気がいたします。そのような意味で,実質がどうかという,やはりそれぞれの論点ごとで考えざるを得ないと思っております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。

それでは,9ページ,(5)裁定制度の改善の点につきまして,御意見,御質問等をいただきたいと思いますが,いかがでございましょう。

【池村委員】池村です。①の68条ですけれども,これは現状全く利用されていない制度だと理解しておりますが,改正によって日の目を見る可能性もありますので,追っかけ・見逃し含めて今回改正をするという方向に賛成します。また,著作隣接権への準用については,67条については,既に平成21年改正で準用しているので,今回もし改正をやるのであれば,並びで準用するということでいいのかなと思いました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【奥邨委員】奥邨です。2点あります。67条のところの供託免除のところが1つです。冒頭のお話を前提にして,全ての放送の関係者が入ってくるということになった場合に,ここのところで全部について供託を免除するということがいいのかというのは,やっぱりいろいろ出てくるだろうなと思います。一部上場企業みたいなところもあれば,極端に言えば,地方のコミュニティFMのようなところもあって,これは財政能力があるのかということで。したがって,もちろん政令ですので,この政令の中で何らかの支払い能力のようなものを担保できるというようなことで線を引かないと,一律に放送事業者であれば免除というのは,ここはちょっと違うのかなという気がいたします。

それから,次の「相当な努力」のところの中で,CRICへの掲載ではなく管理事業者のウェブサイトを活用するというのは,これは1つの方法としてありだとは思うんですけれども,逆にいろいろなところに載っているということで一覧性が低くなって,分かりづらくなるということはないのかなと,ちょっと心配はするところです。今であれば,ここに載っているということで一覧性があるというところがあるわけですけれども,あっちにもこっちにも載ると。管理事業者はたくさんありますので,果たして管理事業者ということだけでいいのかなというような気もいたしまして,かえって分かりづらくならないかなというような気はするところもあります。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【今村委員】今村です。68条の点なのですが,68条については,過去に著作権分科会法制問題小委員会で,この制度については制度が利用されていないことを理由に廃止を考慮すべきであるとの考え方もあるが,公共性の強い放送において著作物を公衆に伝える最後の手段として制度の存続を望む意見も強いことから,あえて制度を廃止する必要はないと考えられるといった整理がなされています。公共性が強い放送で著作物を公衆に放送を通して伝える最後の手段だから,制度を廃止する必要は取りあえずないという整理を一旦したわけです。

この協議不調の場合の裁定も,別に同時配信ができなくても放送はできるのだから拡大しなくてもいいのではないかとは思いますが,今後,放送と同時送信を同時に,一体的にやっていくというときには,やはり両方において著作物が使えるという最後の手段を残しておいたほうがいいかなとも思います。なので,一度も運用された実績がないということもありますが,池村委員と同じように,この制度を残しておく自体が害があるわけでもないし,拡大することに害があるわけでもないので,この提案でいいかなというふうに思います。

ただ,このように,公衆送信の一形態である同時配信をある意味権利制限をするということについて,条約上の問題をクリアしているのかという問題はあると思います。同時配信のほうも裁定制度の枠組みにのせることが,条約との関係で問題がないかということを念のため確認してもよいかなと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。

どうぞ,龍村委員。

【龍村委員】この裁定制度の改善については,マイナーなチェンジという,まだそういう案だと思うんですけれども,多分に文化庁の負担が重くならないか懸念されるところもあり,猛烈な数が裁定で文化庁に集中したときにどうなるのか。いろいろな考え方があると思うのですが,思い切って,集中管理団体とか指定団体とかに行政権限の委任をしていくという道もあるとは思いますむ。もちろん文化庁のほうで管理監督しながらですけれども。そうすることによって,これは1つの私案ですけれども,しかるべき集中管理団体なり指定団体のほうが生の情報をたくさん持っているわけですので,そこに行政委任することで,早く許諾なりを出すという根本的な制度改正といいましょうか,そのような手当を考えてもいい時期なのかなというように感じたりもいたします。

それと,著作権のことだけが表に出ていますけれども,もちろん著作隣接権についてもあるわけですので,そこについてCRICがいいのか,どこがいいのかは,より適切なところもないか,そういうところも目配せをしながら制度を見て行った方がよろしいのかと思います。ここのところを改正すると極めて効果的に,許諾制度を前提としてもざーっと捌けていくといいましょうか,権利処理のスピードを一気に早めるキーになるのではないかと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。よろしいでしょうか。

以上,資料1に従いましていろいろ皆様方の御意見,御質問を伺ってまいりました。これで一通り終わったのでございますが,何か言い忘れたこと,発言をし忘れたことなどございますれば,どうぞ。

どうぞ,龍村委員。

【龍村委員】先ほどの繰り返しになりますけれども,既存のライセンススキームとの共存ということを考えた場合に,それを全部白紙にしてしまって制度改正することがあまり是でないのであるとするならば,既存の制度とのかみ合わせ部分を点検していくといいましょうか,限られた時間的な制約の中では,それが一番手っ取り早いのではないかと思うのですね。論点がかなり大きな形の論点で提示されていますが,本当は結構細かい話になっていくのかなと。だから,そこをどうしたらいいんだろうかというか。その辺をもう少しヒアリングを詰めたほうが近道なのではないかという気もするのですが,その辺りは懸念事項です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

すみません,内山委員はこの点いかがでしょうか。ちょっと最後に一言伺いたいと思いまして。

【内山委員】先ほどの龍村先生のお話が(マイクゆえに)うまく聞き取れなかったんですが。

【末吉座長】少し雑駁にまとめると,要するに,こういう論点に仕立てているけれども,こういう仕立て方でよいのかと。実態ということからスタートすると,もっと細かいものになるかもしれない。そういう意味では,論点の仕立て方でちょっと内山委員に伺おうと思ったのは,内山委員の問題の立て方というのは,2条の放送の定義を変えるということを求めなくてよいのかというもので,ある意味ではこの龍村委員の論点提示に対する1つ大きなアンチテーゼを冒頭に立てていただいたように思うんですけれども,いかがですか。

【内山委員】ありがとうございます。先ほどお話ししたとおりで,放送局さんの要望だけを見ていれば,間違いなく2条を改正したほうが満額回答になるでしょうからよいと思いますが,前回の権利者団体さんのヒアリング等も含めて考えれば,また正直,実態が追いついてきていないということを考えれば,単にかき回すだけになる危険性もあるというのは十分理解をするところであります。

視聴者目線という点が今回入ってきて,その観点で言ったときに,これに関しては例えば同時までとか,これに関しては見逃しまでというふうにされるとまた大変な話かなと思っていて。実態として,例えば一昔前であれば,録画機に録画をして再生する,今だったら,TVerとか,ああいった形も通して再生をするという(タイムシフトした)視聴スタイル,決してマイナーなスタイルではなくなってきているということがあります。つまり,放送番組の果たしている役割が,リニアに限らず,ある一定期間程度の見逃しまで放送番組の影響力というのは実態としてあるかと思いますので,その点を考慮した形で考えていただけると,ある程度落としどころが見えてくるのではないかなと思いました。

今日のたたき台に関しては,もう既に前回から,前々回からも形がつくられつつあるものですから,大きく反対するものではないですが,メディア論の立場で考えれば,見逃しまでというところが1つポイントになるというふうに考えております。

【末吉座長】ありがとうございました。どうぞ,龍村委員。

【龍村委員】大体御指摘の点は分かるんですけれども,例えばそういった現存のサービスなどでも,ある,例えば映像コンテンツとかそういう分野だと,そういった集中管理団体がきめ細かく利用規約などを持っていて処理したり,実際問題しているという実務ももう既に走っている中でこれをどうするだといったときに,そこを根本的に変えさせる,そういった実務を廃止するというふうにかじを切ることが近道なのか,あるいは既に管理しているものを,で,ほとんどがもう処理されてしまっているわけですから,あと,漏れたものをフォローアップしていけば,それでほぼほぼ足りるのであれば,そこをさせればいいという考えもあるでしょうし,そのどっちがいいんだろうかということがちょっと抜けているような気もするんです。

【内山委員】はい,ありがとうございます。2030年辺りを考えるのであれば,もう抜本的に変えなきゃいけないと思います。2030年ぐらいを考えるのであれば。ただ,10年先ですので,正直,著作権法もその10年の間でまた議論するチャンスがあるのかもしれませんし,それから,実態の配信サービスが2030年時点でどの程度まで浸透しているか,まだまだ予測が利かないところがあります。もちろん今よりはるかに浸透するとは思いますけれども,じゃ,電波が要らなくなるぐらいまで浸透するかどうかは怪しいと思いますし,10年先だとちょっとそこまで読み切れないということがあると思います。

でも,ベクトルとすれば,徐々に伝送路は関係なく放送番組を見るという形に人々はシフトしていく。ですから,伝送路基準で物事を考えるのではなくて,もうちょっとコンテンツ基準で物事を考えていくほうに振っていかなければいけなくて。だから,今の著作権法でいうならば,リニア電波と,それから,ネット配信という形で切り分けているというのは,この10年の間のどこかで無理がくると思っています。もっと,誰が作っているとか,どれぐらいの影響力があるコンテンツであるとか,そちらのほうに軸足が10年の間に移っていくというふうには考えています。

ただ,目先の規制改革等から言われている課題も含めて考えれば,今,文化庁さんで提示されたこの資料1のたたき台に基づいて進めていくのは極めて現実的だというふうには考えています。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。今やろうとしているのは,2030年のための処方箋を書こうとしているわけではなくて,2020年ないし2021年のためのものなので,やはり私は根が法律家であることもあって,やはり現実的なアプローチというのが不可欠だと思います。現に定義自体のところに関わってきますけれども,前も申し上げたとおり,著作権法の立場としては,放送とインターネットというのは全く違うものだという前提で始まっています。ただ,実質がだんだん近づきつつあるということなので,そこのところが同様ということが2030年なのかもしれませんが,そのような立場には著作権法は現在は立っていないものですから,その中で現実的な解を求めようとすると,外から見ると何かちまちましたことに見えるかもしれませんが,やはり実質論ベースの現実の枠内で進めるしかないのではないかと思います。

【末吉座長】どうぞ。

【龍村委員】今の絡みになりますけれども,例えば2ページといいますか,そもそもこのたたき台の課題の整理の根本に関わりますけれども,法改正によって対応すべき事項と運用面での対応により解決すべき事項,大きく2つに分けて2ページの上の点線枠の中で整理されています。ただ,この法改正によって対応すべき事項というのも,かなりざっくりとしたものであって,これ,個々のものが非常にまたあるわけですね,問題点が。だから,その意味では,議論の整理のためには非常に分かりやすいんですけれども,場合によっては,上の(1)から(5)が,なし崩し的に下のほうに入れたほうがかえって効率的なものだってあるでしょうし,だから,ここにとらわれる必要もないのかなと。

総じて言えば,今回の同時配信を実現するために一番近道は何なのかと。この僅か,令和3年度の法改正に間に合わせるための同時配信の実現のために一番近道は何かという観点で見た場合,大上段な法改正を頑張るよりも,今あるものを,パズルになるかもしれないけれども,全部組み合わせて,私は裁定制度を大幅に緩和してしまって,それで思い切って規制緩和して,民間事業者といいますか,行政委任をしていけばいいんだと思うんです,メインの集中管理団体のようなものに。そこに権限を委任していって,アウトサイダー問題とかを何らかの手法ではいていく。それが一番近道なのかなと。というのは,前回の権利者団体等の意見を聞くと,極めてそういう印象を強く持たざるを得ないところがあって。もちろん大上段の議論も通ればいいんですけれども,恐らく相当のひずみが行くんじゃないのか,跳ね返りが来るんじゃないのかなということを懸念する次第なんですね。

【末吉座長】ありがとうございます。どうぞ,事務局。

【大野著作権課長補佐】事務局でございます。龍村先生の問題意識は,それぞれの論点に関する記載の中に反映しているものと思っております。ここでは,法改正により対応すべき事項を大くくりに5点挙げておりますけれども,それぞれの措置の中で,ライセンス市場の尊重なども論点に挙げておりますので,それぞれの改正事項ごとにどういうライセンスの実態があるかを踏まえながらアウトプットの内容を議論いただければ,ライセンスを尊重しながら,制度と運用がうまくかみ合う仕組みになっていくのではないかと思っております。

実演に関しましても,例えば(4)の中でも集中管理等との関係を論点として明示させていただいております。この辺りについて,具体的にどういう制度設計をしていけばうまく制度と運用がマッチするかという観点でもう少し詰めた議論をいただければ,先生の問題意識にかなったようなアウトプットが見えてくるのではないかと思っております。

あと,裁定制度については,あくまで権利者不明の場合に対応するものとして,重要な制度でございます。先生のおっしゃる行政委任に近いことは現状運用でもやっておりまして,それでかなり上手く回っている部分もあるということがございます。その状況もよくフォローアップをしながら,他方,短期的に改善を図るべきところもあろうかと思いますので,いろいろな手法を組み合わせながら,権利者不明問題に限らずトータルとして同時配信が円滑に進むように,総合的な措置を検討いただきたいと考えております。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

【奥邨委員】奥邨です。全体的な感想と言うとおかしいんですけれども,今の話の流れにもつながると思うんですけれども,参考資料8があると思うんですけれども,いろいろな御要請があるわけですが,今議論してきたことによって,細かなところはいろいろあると思いますけれども,同時配信,ここに書いていませんけれども,追っかけ配信も含めて実質的には放送と同じような整理になっていくということで,イギリスとかフランスとかドイツとかと結果的には著作権法の法制上は同じような扱いができるようなことになるということで,1つの成果になるのではないかなと思っています。従来はここのところは特に同時配信と言われるところが,放送と放送以外で権利が違うということの影響がありました。今回,放送の定義の見直しはしませんでしたけれども,実質的に放送でやられているのと同じような扱いになるということであれば,この表のものが,日本がイギリスやフランスにも近くなるということになるのかなという感想を持って今日の御議論を聞いておりました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【内山委員】すみません,今の資料8ですけれども,古いものに何か戻ってしまっていますので,新しいものに戻しておいていただけますか。前回に,独仏に関してはキャプションをつけてくださいという形でお願いしていて,それが18日の形の資料で出ていたと思いますので。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

いろいろ御指摘をいただきましたので,もう一度事務局においてこれをいろいろ取りまとめて整理をしていく必要があると思います。本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は,遅い時間にかかわらず,活発に御議論いただきまして,誠にありがとうございました。

次回につきましては,既に御案内しておりますとおり,10月12日月曜日17時からを予定しております。詳細は確定次第御連絡いたしますので,引き続きよろしくお願いいたします。

【末吉座長】本日は,これで第3回ワーキングチームを終わらせていただきます。ありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動