放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第5回)

日時:令和2年11月2日(月)

13:00~15:00

場所:文部科学省旧庁舎

AP虎ノ門Jルーム

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)許諾推定規定に関する取扱いについて(関係者からのヒアリング及び議論)
    • (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

資料1
基本政策小委員会(第2回:10月19日)における委員の意見概要(234.3KB)
資料2
許諾推定規定に関する取扱い(たたき台)(130.9KB)
資料3-1
日本放送協会提出資料(449.7KB)
資料3-2
民放在京キー局五社提出資料(276.6KB)
資料3-3
映像コンテンツ権利処理機構提出資料(164.9KB)
資料3-4
瀬尾太一氏提出資料(326.6KB)
参考資料1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(中間まとめ)(令和2年10月12日)【概要】(821.9KB)
参考資料2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(令和2年10月12日)(中間まとめ)(328.8KB)
参考資料3
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームにおける審議スケジュールのイメージ(193.6KB)
参考資料4
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第2回)ヒアリングにおける権利者の意見概要(386.7KB)
参考資料5
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム(第1回から第4回まで)における委員の意見概要(289.3KB)
参考資料6-1
総務省提出資料(「放送コンテンツの同時配信等における権利処理円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ」概要)(211.3KB)
参考資料6-2
総務省提出資料(放送のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ)(別紙を含む)(598.5KB)
参考資料7
第20回規制改革推進会議投資等WG(令和2年10月5日)における意見概要(182.9KB)

議事内容

【末吉座長】ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム」(第5回)を開催いたします。

本日は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。御多忙の中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉座長】ありがとうございます。では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することはどうか御遠慮くださいますようお願い申し上げます。

本日も,前回同様,三谷文部科学大臣政務官に御出席をいただいております。三谷政務官より一言御挨拶をお願いいたします。

【三谷文部科学大臣政務官】ただいま御紹介いただきました,文部科学大臣政務官の三谷英弘でございます。第5回ワーキングチームの開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

委員の皆様方におかれましては,これまで同時配信等の円滑化に向け,前向きかつ丁寧に議論を重ねていただきまして,誠にありがとうございます。先日の10月12日の中間まとめにおきましては,多岐にわたる論点に関しまして,視聴者,放送事業者,そして,クリエイターの全ての方にとって利益となるような制度改正等の方向性を示していただいたものと理解しております。

今回からは,中間まとめで示された方向性を受けまして,さらに具体的な制度設計について御議論をいただくことになります。引き続き,短時間で集中的な御議論をいただくことになりますが,迅速かつ精緻な制度改正に向けまして御協力いただきますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただければと思います。

まず,資料1が,基本政策小委員会(第2回)における委員の意見概要をまとめた資料でございます。それから,資料2が,許諾推定規定に関する取扱い(たたき台)と題する資料でございます。それから,資料3-1から3-4までが,許諾推定規定に関するヒアリングのために関係団体等から御提出いただいた資料となっております。また,参考資料としまして,先日取りまとめいただいた中間まとめをはじめ,関連する資料を幅広くおつけしております。不備などがございましたら,お伝えいただければと思います。

【末吉座長】それでは,議事に入りますが,初めに,議事の段取りについて確認をしておきたいと思います。本日の議事は,(1)許諾推定規定に関する取扱いについて(関係者からのヒアリング及び議論),(2)その他の2点となります。

まず,事務局で先月19日月曜日に開催された基本政策小委員会における意見概要について御報告をいただくとともに,許諾推定規定の取扱いについて資料を用意していただいていますので,御説明をお願いできればと思います。その後,関係者のヒアリングを行います。

それではまず,事務局から御説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それではまず,資料1を御覧いただきたいと思います。先日開催された基本政策小委員会でいただいた委員の意見の概要をまとめておりますので,簡単に御紹介したいと思います。

まず1ページ目では,総論といたしまして,適切な対価の還元,当事者間での協議に関する御意見を幾つか記載しております。様々御意見をいただいておりますが,基本的に,クリエイターに対する適切な対価の還元,利益分配が極めて重要であるという趣旨の御意見や,その利益分配を実現するためにも,速やかに当事者間の協議を進めることが重要であるという趣旨の御意見をいただいたところでございます。

それから,2ページ目に参りまして,制度改正後のフォローアップに関しまして,フォローアップの際には,同時配信等の実施状況やクリエイターへの対価還元の状況も検証対象とすべきという御意見をいただいております。

また,その他といたしまして,中間まとめの方向性を歓迎しつつ,今後,積み残しの部分については実態を踏まえながらより議論を深めてほしいという御意見や,アウトサイダーという用語は必ずしも適切でないので別の用語を考えるべきという趣旨の御意見もいただいております。

それから,制度改正に係る論点についてでございます。まず対象とするサービスの範囲に関しまして,権利者の利益への影響の考慮が極めて重要であるということで,既存のビジネスやライセンス実務に影響を与えないように注意をしてほしいという御意見がございました。また,有料配信サービスの取扱いに関しまして,それが対象外になることのデメリットを懸念する御意見や,3ページ目に記載のとおり,ほかのネット配信事業とのイコールフッティングという観点が非常に重要であるという御意見もいただいております。

それから,2つ目の白丸におきましては,許諾推定規定の在り方を含めまして,視聴者の利便性向上と権利者の適切な対価還元のバランスを図って制度化していくことが重要という御意見をいただいております。

それから,著作隣接権のアウトサイダーに関する対応に関しましては,1つ目の丸にありますように,クリエイターが知らないうちに利用されるということが懸念されるため必ず権利者を探し出して連絡するようにしてほしいという御意見がございました。また,2つ目の丸では,補償金制度の制度設計に関しまして,アウトサイダーのための補償金が団体内部の構成員(インサイダー)に分配されないような仕組みが必要という御意見などもいただいております。

それから,一番下の丸では,権利者不明の場合の裁定制度に関しまして,事前供託免除の対象とするのが民放事業者だけでよいのかどうかという問題提起もいただいております。それから,4ページに参りまして,上の2つの丸では,裁定制度全般の在り方に関しまして,今後もより簡易に使えるように制度を拡張していくべきとしつつも,悪用のケースなども懸念されるため,一定のフィルタリング,歯止めは必要だという御意見や,今回の件に限らず裁定制度をより使い勝手のいいものにする観点から,一般の方が利用しやすいようサポートする仕組みも重要だという御指摘をいただいております。

それから,その他の御意見といたしましては,裁定制度の改善と共通する問題意識かと思いますが,ノンメンバーのクリエイターが増えている,また,オーファンワークスが多くなっているという状況を踏まえまして,国としての取組を期待するという趣旨の御意見がございました。それから,最後の丸では,放送の同時配信等の議論が終わりましたら,ウェブキャスティングの議論も速やかに行ってほしいという御意見もいただいております。

簡単ですけれども,資料1については以上でございます。

続いて,資料2を御覧いただければと思います。許諾推定規定に関しましてこれから御議論いただくためのたたき台となる資料を事務局で御用意しておりますので,御説明をいたします。

まず1ポツでは,前提として,中間まとめの記載を抜粋しております。既に御案内の内容かと思いますが,確認も兼ねて改めて御紹介をいたします。

まず1つ目の丸では,推定規定の概要を記載しております。放送及び同時配信等に係る許諾権原を有する者,すなわち,放送と同時配信等と両方を許諾できる立場にある人が放送番組での利用を認める契約を放送事業者と締結するに当たり,別段の意思表示をしていない場合には,放送だけでなく同時配信等の許諾も行ったと推定すると,こういう規定を設けることが考えられることとしておりました。

また,2つ目の丸では,推定を及ぼす範囲に関しまして,同時・追っかけ・見逃し配信,全てを含めることが考えられるとしつつ,追っかけ・見逃し配信まで推定できるかどうかについては,法制的な観点からの精査も必要としておりました。

また,3つ目の丸では,推定規定によって,現行の契約秩序・権利者の利益への影響が想定されることから,権利者の懸念を払拭できるような措置についても併せて検討する必要があるとしておりました。これに関しまして,※印で注釈を3つつけております。1つ目が管理事業者の管理との関係でございまして,3つ事例を挙げて,許諾推定が基本的に及ばないということを明確にしておりました。(ア)は,権利者が放送に係る権利を自己管理し,同時配信等に係る権利を管理事業者に委託している場合,(イ)は,管理事業者が放送と同時配信等を別々の区分で管理している場合,(ウ)は,管理事業者が放送のみ管理し,同時配信等は権利者が自己管理している場合,いずれも推定は及ばないだろうということを記載しておりました。

2つ目の※は,推定規定の性質上,反対の事実を証明することで推定を覆すことが可能であるとしつつ,その際の考慮要素としては,例えば,その権利者が過去の同様の契約交渉において同時配信等を明確に拒否する意思表示をしていたこと,許諾に際して支払われた対価の水準,こういったものが考慮要素となり得る旨を記載しておりました。

それから,3つ目の※では,法改正により推定規定を設けた場合でも,それ以前に締結された契約,すなわち,推定規定の存在を認識せずに締結された契約についてまで直接の推定効果を及ぼすことは権利者にとって不意打ちとなることからできないだろうということも記載しておりました。

いずれにしましても,最後の丸にありますように,推定規定については,権利者側の懸念を払拭しつつ,安定的な利用を可能とすることが重要であるため,今後,具体的な適用条件等について明確かつ分かりやすいルールづくりを行う必要があるというふうにしておりました。本日は,このルールづくりに当たっての基本的な考え方について御議論をいただきたいと思っております。

そこで,2ページ目の2ポツのところで,許諾推定規定の取扱いを議論いただくに当たっての視点を3つ書き出しております。まず(ア)が,放送事業者による安定的な利用が可能かどうか,(イ)が,不意打ちや不利な契約の助長につながるという権利者側の懸念を払拭できるかどうか,(ウ)が,法的に推定を及ぼすに足りる事情が認められるかどうかでございます。この3つの視点を念頭に具体的な取扱いについての議論をお願いしたいと思っております。

3ポツが,推定が及ぶかどうかに関わる条件でございます。まず(1)放送事業者側に求められる条件として3つ記載をしております。マル1が,同時配信等を業として実施していること,マル2が,その旨を権利者が把握できるよう一定の方法で公表していること,マル3が,契約に当たって,放送のみ行う,同時配信等を行わないという旨を明示していないこと,この3点を条件としております。これは2ポツでいいますと,(イ)の権利者側の懸念の払拭,(ウ)の法的な観点,これを踏まえた条件として記載しているものでございます。

それから,(2)として,権利者側が推定を及ぼさせないために行う別段の意思表示の在り方について3点記載をしております。マル1は,別段の意思表示は契約時に行うこと,マル2は,メールを含む書面での契約を行う場合には,別段の意思表示も書面で行うこと,3つ目は,別段の意思表示は,同時配信等を拒否する旨の意思表示のほか,同時配信等を行うに当たっての条件等を伝える意思表示も含まれるということを記載しております。この3つは主に,2ポツの(ア)放送事業者による安定的な利用が可能かという視点から記載をしているものでございます。なお,※に記載のとおり,これらの内容は,法令上規定する要件も含まれておりますけれども,その解釈や当事者間における望ましい運用の在り方についての記載も含んでいるものでございます。

次に,4ポツが,推定が覆り得る事情(考慮要素)の例でございます。一旦適用された推定が覆る際の事情として考えられるものを記載している部分になります。基本的に中間まとめの記載どおりでございますが,(1)として,その権利者が,同じ放送事業者との間の過去の契約交渉において同時配信等を明確に拒否する旨の意思表示をしていたこと,(2)として,権利者に支払われた対価が,明らかに放送のみを行う場合の水準であったことを記載しております。また,(3)として,そのほか考えられるものがあれば御指摘をいただきたいと考えております。

これに関して※を3つつけております。御案内のとおりでございますけれども,推定が覆るかどうかというのは,権利者側の主張,立証を総合的に勘案して最終的には司法の場で個別に判断をされるものでございますので,まず※1では,こうした考慮要素を法令上規定することは想定をしていないということを記載しております。また,※2では,これも当然ですけれども,あくまで考慮要素となり得る事情を示しているのであって,これらに該当することをもって必ず推定が覆るわけではないということを記載しております。それから,3つ目の※では,こうした推定が覆り得る事情がある場合には,放送事業者側から見るとリスクがあるということになろうかと思いますので,そういう場合のリスクを回避するためには,放送事業者が明示的に同時配信等を行う旨を伝えるなどした上で契約を締結することが望ましいと考えられる旨も併せて記載をしております。

以上が基本的な考え方でございますけれども,5ポツにありますように,より具体的な内容等については,法施行までの間に関係者間で十分に議論の上,ガイドラインなどを策定することが望ましいのではないかと考えておりまして,その旨も記載しております。この場では主に基本的な考え方を御議論いただきたいと思っておりますが,当事者間でのガイドラインに盛り込むべき事項についても,もし何かありましたら併せて御指摘をいただきたいと思っております。

事務局からは以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。それでは,許諾の推定規定に関する事務局の説明を基に,関係団体からのヒアリングを行いたいと思います。まずは,日本放送協会の広石様より御発表をお願いいたします。

【日本放送協会(広石氏)】NHKの広石でございます。本日もお時間をいただきまして,ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず先日10月19日の基本政策小委員会において承認されました,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等についての中間まとめにつきましては,短い検討時間の中で,同時配信等を巡る権利処理の円滑化について,放送事業者が要望してきた制度改正の方向性が示されたことは大変喜ばしいことと思っております。関係者の皆様の御尽力に感謝申し上げます。ありがとうございます。

では早速,本題に入らせていただきます。先日の中間まとめで,借用素材を含む著作物及び映像実演に関して,放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化の施策として許諾の推定規定を設けることが検討されており,その取扱いについて今回たたき台が示されています。総論として,権利者が放送番組での利用を認める約束をする際,同時配信等について,権利者等が別段の意思表示をしていない場合(権利者の意向が明らかでない場合),同時配信等の許諾も行ったものと著作権法上推定されるようになれば,同時配信等の権利処理の円滑化に資すると考えます。

なお,たたき台1の前提では,過去の契約にまで推定を及ぼすことができないとありますが,今日のNHKの資料に記載したケースについては推定を及ぼすことはできないのでしょうか。放送と同じ対象地域への同時配信のみについては,放送と同じ内容のコンテンツを放送と同時にネットの伝送路で流すだけです。実質,視聴者から見れば,放送と同じサービスであり,伝達する手段の違いだけです。放送対象地域におけるネットの同時再送信は,既に著作権法でも放送と同様に取り扱われています。過去の契約において放送の許諾を得ていれば,同時配信のみであれば,推定を及ぼしても権利者への不意打ちにはならないと思います。この点について御教示くださいますようお願い申し上げます。

では,次のページをお願いします。たたき台2の検討に当たっての視点についてですが,NHKは今年の3月からNHKプラスを実施しており,これは同時・追っかけ・見逃し配信までを一体のサービスとして実施しています。9月のワーキングでもお伝えさせていただきましたように,放送事業者としては,視聴者の利便性を第一とする観点から,権利処理の問題によるフタかぶせや配信取りやめはできるだけ生じないほうがよいので,現在既に実施しているNHKプラスを安定的に視聴者の皆様に御利用いただくためには,許諾の推定規定の及ぼす範囲として,同時・追っかけ・見逃し配信までを含めていただくことを希望いたします。

次のページをお願いします。ただき台の3の推定に係る条件については,特段の意見はございません。

次に,4ページです。推定が覆り得る事情の例についてです。ここに記載しましたとおり,ニュースや報道・情報番組の取材では,対価をお支払いしないケースが多くあります。また,街頭インタビューなどでは,相手の方からの承諾も口頭で行われることが一般的です。推定が覆る事例として,(2)に権利者に支払われた対価が,明らかに放送のみを行う場合の水準であったこととありますが,今申し上げましたように,必ずしも対価が支払われない場合もありますし,さらには短時間の交渉で口頭のみで許諾を得ているケースも多くあることから,少なくとも同時配信等を行っている放送事業者が行う取材については,インタビュー相手が同時配信等にも許諾をしていると推定されることが望ましいと考えます。

次のページをお願いします。今後の対応についてですが,ガイドラインの策定に当たっては,推定規定の対象となる利用が,事例により明確になるようにしていただきたいと思います。現在思いつく例としては,NHKは,NHKオンデマンドという,放送済みの番組のオンデマンド配信サービスを行っていますが,NHKオンデマンドで既に配信の許諾を得ていれば,NHKプラスによる見逃し配信まで許諾を推定してもよいのではないかと考えます。もちろん権利者団体との間でルールがあるものについては当てはまりませんが,個別権利者などでは,今申し上げたように,既に配信の許諾を得た実績があれば,見逃しまで含めた同時配信等の許諾も推定されるのではないか,推定が覆らない事例になるのではないかと思います。ぜひガイドラインでは,対象となる利用を明確にお示しいただければと思います。

最後に,関係者の皆様におかれましては,ぜひ明確で分かりやすいルールの設計をお願い申し上げます。また,その際,放送事業者にとって使いやすい制度設計を御検討いただければと思います。それにより放送番組の同時配信等がより進めば,テレビの前に座らなくても視聴者の方にもっとリアルタイムで放送番組を楽しんでいただけるようになりますし,それこそが現代の生活スタイルに寄り添ったサービスではないでしょうか。ぜひよろしくお願い申し上げます。

ありがとうございました。以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。続いて,在京民放局キー局5社を代表して,株式会社テレビ東京ホールディングスの丸田様より御発表をお願いいたします。

【テレビ東京ホールディングス(丸田氏)】テレビ東京ホールディングスの丸田でございます。本日は御説明の機会を頂戴しまして,誠にありがとうございます。民放在京キー局5社を代表いたしまして,私より在京キー局5社の考える推定規定の検討に当たっての論点などを御説明させていただきます。

まずは,同時配信等サービスにおける権利処理上の最も大きな問題について述べさせていただきます。これは端的に申し上げまして,写真,記事,映像,絵画等外部から調達する借用素材の権利処理です。これら借用素材については,集中管理を行う大きな権利者団体が存在しないため,配信に当たっては,一件一件個別に許諾を得て,条件や対価の交渉を行わなければなりません。同時配信等でフタかぶせが発生する原因の多くは,この借用素材の問題にあります。民放在京キー局5社は,同時配信等で権利の問題によってフタかぶせ等が発生し,放送と比べて著しく情報が不足した番組が配信されるという事態は極力避けたく,また,何よりも視聴者の利益につながらないと考えています。

放送番組では,海外素材から視聴者提供素材,SNSへの投稿まで,個人や企業を問わず第三者からの借用素材を様々なルートから調達しますが,入手した素材の中には,ネット配信の許諾が明確に得られていないものも存在します。特に生放送の報道・情報系の番組では,素材の到着時に配信の許諾が確実に得られていることが分からない場合は,放送までの限られた時間で放送,配信双方の許諾を取ることが物理的にも難しく,その場合はそもそもの使用を断念する,もしくは配信ではフタかぶせの処理とならざるを得ません。

中間まとめで提案をいただいております推定規定は,特に許諾範囲が曖昧なケースにおける借用素材の権利処理円滑化に効果に発揮をするものと私どもは期待をしております。新たに制度を創設するのであれば,放送事業者としてはぜひとも使い勝手のよい制度としていただき,極力,視聴者に不利益が生じないよう,フタかぶせの問題が解消する方向で検討いただきたいと思います。

推定規定につきましては,幾つか論点が挙げられると思いますが,民放在京キー局5社として気になる点について,本日は意見を述べさせていただきます。まず1点目ですが,ワーキングチームの中間まとめでは,推定規定を及ぼす範囲について,追っかけ配信・見逃し配信まで推定を及ぼすことが可能か否かについては,法制的な観点からの精査も行う必要があると記載されています。

民放在京キー局5社による同時配信等サービスのビジネススキームは現状固まっておりませんが,同時配信を実施した場合は,そのまま追っかけ配信・見逃し配信へとサービスを移行していくことが想定されます。仮に推定規定を及ぼす範囲が同時配信のみであった場合は,追っかけ配信・見逃し配信用には編集やフタかぶせを施した別素材を準備する必要が生じるため,放送と同時配信等の一体的な運用には少なからず支障が出ます。また,対象とならないサービスについては,視聴者の利便性に応えられない場合があると考えます。新たな制度が限定的な効果にとどまることがないように,同時配信のみならず,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信までを対象に含めていただくことを要望いたします。

2点目に移ります。推定に係る条件として,同時配信等を業として実施していることなど放送事業者側に求められる条件が幾つか検討されていますが,放送番組を製作するのは放送事業者に限らず,放送局から委託を受けた制作会社が,制作会社の責任の下,放送番組を製作する場合があります。同時配信等サービスの実施主体が放送事業者であることとする条件については問題ございませんが,番組制作者は必ずしも放送事業者とは限りませんので,制作会社が番組を製作し権利処理を行う場合にも推定規定が働くように制度検討いただきますようお願いいたします。

3点目ですが,放送事業者に求められる条件として,契約に当たって放送のみ行う旨を明示していないことが検討されています。こちらの条件自体に問題があるわけではございませんが,素材の借用元については,国外の権利者であったり,代理店を介して写真や映像を入手していたりすることも多いため,必ずしも原権利者を把握できないケースも起こり得ます。推定に係る条件の設定が厳しくなればなるほど,現行の契約上の許諾との差はなくなるものと考えますので,制度設計に当たっては,処理の手続が可能な限り簡便になるよう検討いただくことを要望いたします。

次に,論点の4点目,5点目として,推定が覆り得る事情について,民放在京キー局5社の意見を述べさせていただきます。まずは考慮要素の例(1)として挙げられているものについてです。権利者が過去の同様の契約交渉において同時配信等を明確に拒否する意思表示をしていたからといって,次回の契約時にも同時配信等を拒否するものとは限りません。特に借用素材については,同一の借用素材を同一の番組で同一の条件で再使用するというようなケースは非常にまれであり,借用する素材,番組,使用方法,使用尺,対価などもケース・バイ・ケースで異なります。条件等の同意を見ない場合はやむを得ないと思いますが,単に権利者が過去に同時配信等を拒否していたということを理由に推定を覆すことができるということになると,放送事業者にとってはリスクが高過ぎるものと考えます。

また,(2)の権利者に支払われた対価が,明らかに放送のみを行う場合の水準であったことについても意見を述べさせていただきます。現在の見逃し配信の市場規模は,地上波放送に比べて僅か100分の1程度です。同時配信を加えてもこの比率が大きく変わることは期待できず,現在の市場規模においては,対価が放送のみの場合とほぼ同水準であることが必ずしも不合理とは言えません。また,市場規模はサービスの浸透度合いによって変わるものであり,権利者全般との協議によって支払われるべき対価の相場も大きくなったり,小さくなったりと次第に変わっていくものだと思っています。したがって,単に支払われた対価の水準をもって推定が覆り得る要素とすることは,制度やサービスの利便性を損なうものであり,逆に市場が成熟していない中で同時配信等の使用料の高騰を招きかねないものと危惧します。

若年層のテレビ放送離れが進む中,テレビ視聴の多様な選択肢を通じて,放送番組をこれまでどおり多くの方々に御覧いただき,それによって相応の対価が権利者の方々に支払われることは,権利者の皆様の利益にもつながるものと考えます。著作物の権利保護への影響を考慮しつつ,コンテンツの流通及び視聴者の利便性の向上に資するように,また,放送事業者にとって使いやすい制度となるように制度設計を検討いただきますよう,何とぞよろしくお願いいたします。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。続いて,実演家のお立場から,映像コンテンツ権利処理機構の中井様より御発表をお願いいたします。

【映像コンテンツ権利処理機構(中井氏)】中井でございます。今日はこのような場を設けていただき,本当にありがとうございます。ちょっと表示のほうが「音事協 中井」と書いてありますけれども,本日は,御紹介いただいたように,一般社団法人映像コンテンツ権利処理機構,aRmaの理事としてお話を申し上げたいと思います。

まず前提となっているところでございますが,推定の及ぼす範囲ということでございますけれども,我々のほうで一番やっぱり引っかかっていたのは,同時配信等の「等」の部分でございます。先ほどNHKさんからも,民放連さんのほうからも,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信までひっくるめて許諾というふうにおっしゃいましたが,これ,それぞれ性格が異なるものでございまして,どちらかというと,非常にビジネスモデルに論拠があるといいますか,ビジネスモデルによって左右されるものでございます。

例えばNHKさんの場合はNHKプラスというサービスにおいて全てひっくるめてされておりますのでいいのですが,Tverという,民放さんの,一部NHKさんも参加されておりますけれども,その同時配信プラットフォームにおいて,我々が見逃し配信を許諾したものに関してもTverには出さずに,それぞれ各社が持っておられる有料プラットフォームで配信されたりとか,あるいは別のところにライセンスされたりとかいうケースが散見され,丸田さんもおっしゃったようにまだちょっとビジネススキームがはっきりしていない中でこれを一緒くたに同時で「等」ということで同じように配信を許諾してしまうというか推定してしまうのは,ちょっと時期尚早ではないかな,これは非常に議論が要るものではないのかなと考えております。

それから,我々aRmaのほうで集中管理をしております実演家に関わる映像実演に関しては,その推定規定が及ばないものと考えていただいたほうがいいのではないかと思っております。第2回のワーキングチームでも御説明したとおり,既存の同時配信等については,aRma集中管理下の実演家に関わる映像実演について既に円滑な権利処理が実現しております。今後行われるものについても,集中管理処理について対応を検討中でございます。ですので,制度的手当てが必要な立法事実というのは実は見当たらないのではないかなと思っています。

実際問題,実務の中でこれは処理がされているものですので,特に問題はないのかと思っております。これもNHKさんに確認をしないといけないのですが,今までNHKプラスをやられてきて,実演家の側の許諾の問題で同時配信ができなかったというようなものがなかったように私のほうは聞いておりますので,aRmaによる集中管理というのが働いているのではないかと理解しております。

aRmaに属さない権利者につきましても,放送事業者の方々については,権利者と直接の交渉機会が存在しますので,その際に同時配信等についても許諾を得ていただければよいのではないかと思っています。というのは,いわゆる団体とかにお入りになっていない実演家の方々の場合には,非常にそこで契約といいますか,当初の許諾を取る段階で不利に働くこともなくはないという事実があるからでございます。つまり,権利の買取りということですね。本来ならば,放送する許諾,それから,同時配信の許諾,それから,見逃しの許諾をしますよという許諾が働くべきところ,1回の放送ギャラでもって全部の権利をこちらに譲渡してくださいというような契約とかが存在しますので,推定許諾の対象としてしまうのはどうかというものも十分検討していかないといけないのではないかと思っております。

そのようなことで,aRmaの所属の団体,そして,事業者に所属する実演家に関しては推定が働かないということを前提に,御意見を述べさせていただきたいと思います。3番の推定に関わる条件のところでございますが,推定許諾制度が導入されることによって,放送事業者が本来説明すべき契約条件の説明を怠ることが容認されるということになってはよくないなと思っております。少なくとも同時配信等を実施することについて,権利者に合理的な範囲で説明を行うという努力義務を課すべきではないかと思っております。

ここを緩くしてしまうといくらでも緩くなってしまいます。以前,放送番組の海外番販の早期化ということで総務省さんと取り組んできたときにも,結局,出演者側への明示というのがあまりちゃんとした形でなされていなくて,「いや,そんな話聞いてないよ」というような会員社の実演家の方々の御意見を聞いて放送局に尋ねると,いや,台本に依頼の紙を1枚挟んでいたとか,台本に書いてある放送する局の一覧の中にちゃんと海外の放送局も書いていたとか,そういうような非常にちょっといいかげんな許諾の取り方,それはもう既に許諾を取っているというよりも,分かりにくく通知したみたいなことで処理されたことがありましたので,今回に関しましてはもうちょっと厳格にしていただいたほうがいいのではないかなと考えております。

2番の権利者側の別段の意思表示の在り方ということに関しましては,1で述べましたとおり,収録が行われる前に契約交渉が行われるという状態を想定するのであれば,契約を申し入れる側が同時配信等での利用を明示するという義務を負うのが原則ではないかと思います。これから同時配信を民放さんも実行されるときに,NHKさんのように常時同時配信というものを選択されるのか,時間帯を区切ってやるのか,あるいは番組のジャンルによって分けるのかということが分からない以上,これも一応入れておいたほうがいいのではないかと思います。NHKさんのほうも一部放送時間によっては同時配信されていないものもございますので,一緒くたに放送をする番組イコール同時配信という考え方ではよくないのではないかと考えます。

それから,権利者が同時配信等における利用を一切認識していないという場合は,当然それを認識した時点で別段の意思表示を可能とすべきであるということが言えます。これは先ほども言いましたように,出演許諾を取るときに全く同時配信に触れられなかったと。そういう場合に,「いや,知らなかった」ということをちゃんと言えるようにしていただきたいということでございます。

それから,4番。推定が覆り得る事情の例ということでございます。対価について,明らかに放送のみを行う場合の水準をどのように判断するのか非常に難しいところでございます。NHKさんの場合みたいにランクが決まっているとそこは問題にならないのですけれども,民放さんの場合,出演の対価は,当該実演家が急に売れてスケジュールが取りにくくなったりとか,視聴率が取れるようになってきたりして,様々な要素で変動しております。当然のことながら,放送局の広告収入に比例しまして制作費の上下もございますでしょうし,制作費の上下イコール出演料の上下でもございますので,この辺の放送のみを行う場合の水準というのが非常に分かりにくいといいますか,決めにくいというかということでございます。そこで,こういう場合の基準をガイドライン等で明確化する必要があるのではないかと思っております。

これは以前BSが始まったときも,地上波とBSで共同制作をする場合には,地上波ギャラに2割増しというようなことでお話をしたりしたんですが,そのときも,元ギャラを下げられてしまえば,実はBS分のギャラが入ってなかったみたいなこともやっぱりございましたので,そういうところ,プラス同時配信の権利料を払わなきゃいけないんだったら元ギャラをちょっと下げればみたいなことになってしまうのは避けたいものであるということでございます。もちろん放送事業者の方々を疑っているわけではございませんけれども,そこはやっぱりガイドライン等で明確化しなければ,後々もめるもとになるのではないかなと思っております。

最後に,今後の対応につきましてですけれども,推定許諾制度がない現行制度下においても,十分な説明がないまま,実演家の許諾権が放送事業者に買い取られている事案が少なくないと。これ,再三申し上げているのですが,ドラマのやっぱり低いところの番手の方々なんかの場合は,権利買取りということで放送ギャラの中に二次使用料も全部含んでいるんだよというようなことが少なくございません。もちろん例えば主役クラスが全部二次使用にオーケーしているのに,番手が下のほうの方のNGでそれがDVD化できないとか,配信できないとか,そういうことがあるというのは困ると思いますので,放送事業者の方々の悩みも十分理解できるのですけれども,これを機にちゃんと適正な権利処理ができるような議論を一度できたらなというふうに思っております。

上記各項目に指摘した事項について,ガイドラインに盛り込んでいただけることを期待しております。どうもありがとうございました。

【末吉座長】ありがとうございました。続きまして,著作権者のお立場から瀬尾様より御発表をお願いいたします。

【日本写真著作権協会(瀬尾氏)】日本写真著作権協会の瀬尾でございます。今回写真著作権協会として,いわゆる借用素材と言われているものが同時送信について非常に問題となっている,障害となっているというお話を聞いています。また,今回このヒアリングに対応するに当たって,文芸とか,脚本,シナリオ,美術,漫画等の集まりのところでも同時送信についていろいろちょっとお話をした上で,今日はその代表として写真という分野からお話をさせていただきたいと思います。

まず全体的な方向性についてですけれども,同時送信については基本的に肯定的です。つまり,それによって権利者の表現がより広がるということもあるでしょうし,また,今,放送というものが社会のインフラになっている。要するに,情報を社会にきちんと伝えていくということは,単なる娯楽とかプラスアルファのものではなくて,ガスや水道や何かと同等のインフラであるという認識は非常に強くあります。ですので,基本的にはこのような形を進めていくことについては反対する向きというのはあまりありません。

そのような中で,まず借用素材というふうなことで,実際にはなかなか許諾が取りにくいということで阻害しているというお話がありましたけれども,確かに写真,それから,絵画等で集中管理という体制がそんなに強くないんですね。というか,写真なんかでいうと,出版物からの二次利用以外はやはりない状態であって,これの許諾というのは確かに大変だなというふうなことは認識しております。分野としても改善していく方向性が必要だろうと考えております。

ただ,これ,幾つかの観点から考えられることなんですけれども,まず最初に,放送で使われている写真のかなり多くの部分は,いわゆるフォトライブラリー業者さんと言われている代理店との契約によって使われている場合がかなり多いと認識しております。つまり,最初から契約がかなりきちんとした形で使われているものがかなり多いだろうということから考えると,まずその契約時に同時配信の契約をちゃんと行っていれば全く問題がないというふうなことで,契約によって解決する部分もあるだろうと。借用素材だからといって常に阻害しているというふうには考えられないのではないかと考えています。

ただ,そういうことを言いましても,やはり写真というのはかなり権利者が多うございますので,実際に利用が妨げられているという問題があったとすると,許諾の推定ということは有効だと思います。そして,実際にこういうふうな形をしてやることについても反対ではありません。ただ,対価を軽くする,要は,ギャラを値切るために,この推定を使って何らかの方法によってどんどんギャラを切り下げていくというふうなことに使われることについては懸念があります。きちんと対価を払われるべきというふうに考えています。つまり,同時送信についても対価はきちんと払われるべきということから,推定があったとしてもそういうことをきちんと考えていただきたいということです。

もう一つ,許諾が取りにくい状態として,一般の視聴者さんとか,かなりいろいろなところから写真なども集められる場合が多いですね。いわゆるプロではない場合です。その場合には,確かに同時送信について許諾を取ったのか,取ってないのか,また,後から取れるのか,非常に難しい問題があります。こういうときに,許諾の推定によって利用可能とするということは有効だろうと思います。

それともう一つ,やはり今後,そのような利用のときには,文化庁の裁定制度を拡充していって,そもそも権利者が分からないものも,放送にとっては迅速に利用可能な状態にするということも重要かと思います。このときに,放送という分野において,どのような手続,どのような法制度を取るのかというのについては検討していく必要があると思いますが,裁定制度と推定によってそういった権利者の処理をしていくというふうなことも重要ではないだろうかと思われます。写真というのは誰でも撮れますし,今,スマホで撮った画像がニュースとして利用できるようなそんな水準になってきていますので,今後,この3番目にお話をした,権利者が不明である,そういった場合の処理については,特に放送分野に限ってでも改善していく必要があるとは考えています。

次に,推定が覆る場合ということです。まず第1点,権利者が拒否する意思を過去に示した場合。先ほど,条件が違うので,過去の拒否が必ずしも現在の拒否につながらないのではないかというふうなことがございましたけれども,やはりインターネットで配信するというのが嫌だと明確におっしゃる権利者は一定数います。そういった場合に,そういった主義主張の部分まで無理やり使えるようになってしまうというのはやはり問題だろうと思いますので,それは著作者としてのそういった主義主張は尊重していただきたい。

ただ,前は非常に,例えば写真分野でもインターネットに出したくないという方は多かったです。ただ,最近は,ここまでインターネットが通常のものになってしまうと,非常に減ってきましたね。そういった,出したくないという主義主張を持った方の割合は減ってきていると思いますし,今後,放送や何かについてもきちんとインターネットと融合していく状態になれば,どんどん減っていくのではないかなというふうなことを考えています。ですので,主義主張として放送したくないという方は尊重していただきたいと思いつつも,今後は減っていって,問題にならなくなっていくのではないかなと考えます。

あと,もう一つ,推定でした場合に後でお金がもめる場合,つまり,こんなに安くちゃ嫌だとか,いろいろする場合があるかと思います。この場合でも,権利者もちゃんと理解を示すということも必要だと思いますけれども,きちんと対価を支払うという形を示していただくということ,そういうことが大変重要かと思います。

このときに1つ考えられることというのは,放送が同時送信とかその他いろいろなネット利用になってくると,基本的にこれまでネットと放送が分離していたものが融合していく。30年ぐらい前から言われていた,放送と送信の融合ということが実現していくことになるんだとすると,放送局さんにとっては,私は,これは個人的な意見ですけれども,すごいチャンスだと思うんです。いわゆる広告が,ネットのほうが広告が多くなってしまうような,いわゆるアドモデルについていろいろなことが危なくなってきている状態が,放送さんがネットに進出することによって新しいマーケットが大きく切り開かれるんじゃないかという気がします。そういったことから考えると,大きくネットのマーケットを開拓する。それによって収入を得る。それを権利者と放送事業者さんが共に協力しながらやっていくというスタンスがまず重要かなと思います。これによって今のそういったギャラの問題にしても,もっとより自由に使えるという問題にしても,解決されるということになるのではないのかなということを考えます。

それから,許諾の推定を及ぼす範囲についてですけれども,このときに同時送信,同時配信はいいけども,追っかけとか見逃しは別だからとかということについては,一般的な理解としては,含めるというふうな方向が一般的ではないかなと考えます。つまり,サービスとしてそれを一体化して利用できるということについては,きちんと対価を払った上で実現できるべき方向だろうし,今回の制度にきちんと含まれるということについてはよいのではないのかなと思います。

また,それから,その主体について,制作会社さんとかそういったところもあるんだよと。もちろん今の番組制作の中では制作会社さんは非常に重い位置を占めているということがありますので,放送事業者さんがきちんと指示をしたり,管理下において,そういったなされる制作であれば,放送事業者さんが自らやる場合はよくて,制作会社さんがやると駄目というのは,手足論とは言いませんけれども,含めることが妥当であろうと考えます。

あと,許諾の推定の遡及なんですけれども,やはり遡及というのはそのとき全然想定していない利用を後から,これはいいよねというのは,やっぱり不意打ちに近いと思うんですね,これはね。なので,遡及はかなり難しいだろうと思いますので,これはちょっと厳しいと思います。

最後に,先ほども申し上げましたけれども,放送事業者さんのみならず,権利者にとっても非常に大きなビジネスチャンスになる,そういった取組が今回のものだと思いますし,やはり通信と放送が融合していくというのは,私は非常に正当な方向性だろうと思います。ですので,ぜひこれは事業者さんと権利者さんとが手を取り合って,いい方向,マーケットを拡大できる方向に持っていくというふうなことでお話ができるのではないかなと思います。

また,最後に,これも個人的な考え方ですけれども,制度,法制度と,それから,スキーム,いわゆるビジネススキームと,それから,ソフトロー,いわゆるガイドライン等,この3つによって初めて解決されるということが最近多くなってきました。ほかのいろいろな問題もそうです。これも私はそのような方向性で解決されるものだと思いますので,より密接な連携と,新しいマーケットに対しての積極的な展開によって全ての人が満足するような体制になることが望ましいのではないかなと思っております。

すみません,ちょっと長くなりましたが,以上でございます。

【末吉座長】ありがとうございました。まずはここまで関係団体の方々に御発表いただきました内容につきまして,質疑応答を行いたいと思います。御質問等がございましたら,挙手いただくか,適宜御発言をいただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】ヒアリングで実情を御説明いただきまして,ありがとうございます。先ほどの一般的な説明のところにもあったかと思うのですが,推定の際には,一般的な意思としてはどのような形で行われるのかという点を把握して,それとあまり離れないようにするということが重要であります。その観点から,放送について契約をしたら,その際にはどこまでそれと一体というように考えられるのかという一般的な認識についてお伺いできればと思います。放送プラス同時配信までなのか,追っかけまでなのか,それとも,見逃しまで入るのか。推定規定をどこまで及ぼすかというのは,普通,今までないし今後契約する場合には,どこまでを契約するということが多いのか。先ほどの瀬尾さんからは,3つとも含めてよいということで,対価さえきちんと入ればよいという別の話はあるのですが,その話は脇に置いておきまして,どちらのほうが多いのかということです。

いろいろあるかと思うのですが,放送だけであるというのと,放送プラス同時配信なのか,放送プラス同時配信プラス追っかけなのか,それとも放送プラス同時配信プラス追っかけプラス見逃しなのかという辺り,放送局の方々は全部だとおっしゃるのかもしれませんが,そうであれば,権利者の立場からは,一般的な通常の意思としてはどのようなことかという点が分かると,法制として考える際にも非常に重要になってくるかと思いますので,御説明いただければと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。今の御質問は,中井さん,瀬尾さんから伺いたいという御趣旨ですね。

【大渕座長代理】そうです。

【末吉座長】いかがでございましょうか,今の点。

【映像コンテンツ権利処理機構(中井氏)】中井です。

【末吉座長】どうぞ。

【映像コンテンツ権利処理機構(中井氏)】恐らくリニアという意味においては,推定される同時配信等というと,同時配信までですね。それは同じ時間に配信と放送をやっているわけですから。追っかけになると,これは途中から,例えば1時間番組が59分終わったところから始めても見られるわけですから,これは放送上,どちらかというとサービスの範疇に入るのかなと。それから,見逃し配信というのも完全に視聴者サービスということで良いかと思います。本来的に今の著作権法でいうと,放送の許諾は放送のみ。これに同時配信という推定を加えていこうということなんですけれども,同時配信等といって見逃し配信まで一気通貫で認めてしまうというのは行き過ぎではないかなと思っています。

NHKさんとは既に協定を結んでいるわけですけれども,これに関しましては,放送・同時配信,・追っかけ・見逃しまで全て含めて,対価のことも含めてお話をしています。ですから,ビジネス的な問題であって,法的にいうと,放送,一歩進んでも同時配信までかなと僕は考えています。

【末吉座長】ありがとうございます。

【日本写真著作権協会(瀬尾氏)】すみません,瀬尾でございます。

【末吉座長】どうぞ。

【日本写真著作権協会(瀬尾氏)】今,中井さんおっしゃったように,中井さんと私のお話ししたものの違いというのは,著作物が管理されている状態と管理されていない状態ということが基本的にあります。管理されていれば,きちんと支分権も管理されていますから,それぞれ一つずつについて考えることというのが必要だと思います。

それは権利者にとっては非常に大きな問題なのでそういうことがあると思いますけれども,一般的に,例えば先ほど,まず集中管理されていない個人の権利者の場合,その権利の違いとかって実はそんなによく分かっていないと思うんです。放送したときにネットで流すといったら,追っかけとか何とかで細かく権利が分かっているかというと,多分書面にしても何にしても分からないんじゃないかなという気がします。そういった意味では,個人に対してきちんと支分権を理解したり,説明をしたりということよりは,私はそこのところで推定が働くというふうなことについては合理性があると思いますし,多分そうしないと,個人からはなかなかイエスが取れないんじゃないかなという気もいたします。

なので,今回この問題を考えるについては,管理されている著作物と,集中管理されていない著作物については,やはりきちんと分けて考えるということが,特に借用素材なんかの場合には私は必要な感じがします。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。

【大渕座長代理】もう一点よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】先ほど両側からお聴きしていると,鍵は推定なのですが,先ほど買いたたかれると言われましたか,切下げとかそのようなことなしにきちんとリターンが行くというところが,推定が入ることによってリターンが行かなくなることを非常に権利者のほうとしては懸念されているかと思います。そこで,推定を入れつつ,そこのところが切下げというか,買上げというか,吸い上げにならないようにするための工夫について,放送の側と権利者の側から何か,推定を入れるにしてもきちんとリターンがいくように,切り下げられないようにするセーフガードのようなものについて何か工夫がありましたら,両側からお聴きできれば,我々が法制を考える際にも参考になるのではないかと思います。何かありましたらよろしくお願いいたします。

【末吉座長】その点はいかがでございましょう。どなたか。

【日本写真著作権協会(瀬尾氏)】よろしいですか。

【末吉座長】どうぞ。

【日本写真著作権協会(瀬尾氏)】これ,大渕先生のおっしゃることはすごくよく分かるんですけれども,ただ,規定とかそういったものでセーフガードをつくっていくという問題ではないように思います。ガイドラインとかでサポートすることは非常に重要です。いわゆるソフトローでフォローすることは必要ですけれども,根本的にこの問題で権利者と放送事業者さんの満足を解決するには,マーケット,例えばアドマーケット全て含めて,配信することによってちゃんと収益が上がる体制をつくっていくということ。

はっきり言ってしまうと,これまでネットに対してどんどん出していくことに対して放送局さんも御努力なさっていらっしゃるのはよく理解をしているんですが,もっと融合した状態でちゃんとマーケット化して収益を上げていくというスキームを改善していただいて,それに対して権利者がちゃんと協力をしていくと。そういう体制で,お金が全体として入っていくということですね。要するに,放送局さんがお金が入っていないのにこんなにいっぱい取られたら赤字で同時送信できないよとかにならないように,また,みんなで貧乏なのに無理に同時送信ばっかりやって全員赤字だよ,放送事業者さんも権利者さんも赤字だよという状態から抜け出すためには,とにかくマーケットをきちんと拡大していくビジネス的な工夫しか私はこの解決策はないと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【テレビ東京ホールディングス(丸田氏)】テレビ東京の丸田ですが,よろしいですか。

【末吉座長】どうぞ。

【テレビ東京ホールディングス(丸田氏)】放送事業者としては,今,推定に係る条件として,文化庁さんのおまとめいただいた資料の(1)のマル2にあるように,権利者の皆様が把握できるように,我々は同時配信を行っているということをきちんと一定の方法で公表するということは必要ではないかなと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかによろしいですか,回答。ありがとうございます。

それでは,次の御質問に行きたいと思います。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】ありがとうございます。NHKさんに2つと,あと,民放さんに2つ簡単な確認をさせてください。よろしいでしょうか。

まず,NHKさんに1つです。インタビューの件が出ておりましたけれども,これはインタビューの内容が著作物であることを前提に御質問なさっているということでよろしいでしょうか。そして,もう一つ,そういう意味においては一般的な借用素材の問題の延長でしかないような気もするんですが,何か特殊なことがあるのかどうかということがあります。少しそこをお伺いしたいと思います。

それから,あと,NHKオンデマンドの許諾を得ていればという問題に関してですけれども,私の理解では,NHKオンデマンドになっているということは,既に放送が終わっているという理解なんですけれども,その場合に同時配信の許諾云々というのは少し状況がよく分からないんですが,どういう放送の仕方を前提にお考えになっているんでしょうか。

次に,民放さん……。

【末吉座長】すみません,奥邨先生,なぜかマイクのお声が切れちゃうんですよ。

【奥邨委員】ああ,そうですか。

【末吉座長】恐縮ですが,もう一回,第1問を手短に繰り返していただけませんか。申し訳ない。

【奥邨委員】すみません,じゃ,別の方に回してください。ちょっと調整をしてみます。

【末吉座長】恐縮です。ちょっと奥邨委員の御質問,後に取らせていただきます。

ほかに御質問ございますか。ほかの委員の方の御質問。どうぞ。

【龍村委員】では,NHKさんにお尋ねですが,1つは,プレゼンテーション資料の5ページでNHKオンデマンドの例が出ています。先ほど来,一部,実演家グループとは契約があるというような話も出ていますけれども,NHKオンデマンドの許諾という許諾条件において,例えば併せて同時配信の許諾を契約上にビルトインすることは可能なのではないかと思いますが,その点が1つ。

それから,1ページの推定規定の必要性の下半分のなお書の御提案のところですが,放送と同じ地域への同時配信という言葉があるのですが,放送地域と同じ地域に配信するというように同時配信をコントロールすることが可能なのでしょうか。

もう一点は,奥邨委員の質問と同じ,かぶると思いますので,その2点で取りあえずお願いします。

【末吉座長】ありがとうございます。この点,いかがでございましょう,広石様。

【日本放送協会(広石氏)】まずNHKオンデマンドの例についてですが,もちろん権利者団体の皆様とお約束のある部分というのは除いてということですけれども,NHKオンデマンドは,1年とか長い年月で,その場合は1年ごとで更新するなどして,配信の許諾を得てやらせていただいています。

さっき奥邨先生がおっしゃったように,NHKオンデマンドは放送済みのものですけれども,NHKプラスについては同時配信もやっています。同時と,放送済みの番組の配信というところで,よく皆さんから権利は別々だという話をいただきますし,ライセンス市場においては別々だということもあると思うのですが,1年間とか許諾をいただいている期間において,もちろん対価を支払わずにやってしまうということではなくて,(NHKオンデマンドの配信期間中に行う再放送の)NHKプラス,同時配信については,そもそも配信の許諾を期間でいただいているという中において,さらに許諾を取らなくてもできるケースもあるのかな,ということです。それは1ページのなお書のところにもあるんですけれども,例えば権利者の皆様の中には,個別の権利者ですけれども,NHKについてはずっと放送で使ってもらっていいですよとおっしゃってくださっている方もいたりする中で,どこまでだったら許していただけるのかというのをお聴きしたいなと思って伺ったということです。

【末吉座長】

できますかという,イエスか,ノーかというものだったんですが,この点はいかがですか。

【日本放送協会(広石氏)】そうしますと,過去のものに,契約書にはNHKプラスは入ってないということですから,これからのものにはビルトインできると思います。

【末吉座長】これからは入れるという御趣旨ですね。

【日本放送協会(広石氏)】そうですね。

【末吉座長】了解しました。2点目はどうですか。

【日本放送協会(広石氏)】2点目は,1ページのなお書以降というところでよろしいですか。

【末吉座長】なお書のところの,放送と同じ地域への同時配信という言葉が使ってあるんですが,こういうことができるのかなという疑問を龍村委員がお持ちになって,技術的にできるのかという意味だと思います。いかがですか。

【日本放送協会(広石氏)】そうですね,地域制御ということだと思うんですけれども,技術的にはお金をかければできると思いますので,これは主に全国放送の場合というふうに考えていただいてもいいと思うんですけれども。

【末吉座長】一部の地域に限定する放送の場合は,そこと同じ地域だけの同時配信ということは可能なんですか。

【日本放送協会(広石氏)】技術的には可能だと思います。

【末吉座長】可能ですか。分かりました。

【日本放送協会(広石氏)】その場合,同時配信だけだったらどうですかということを,ちょっと考え方の整理として伺いたいと思いました。

【末吉座長】分かりました。ありがとうございます。

【日本放送協会(広石氏)】ありがとうございます。

【末吉座長】どうぞ,奥邨委員。

【奥邨委員】すみません,多分NHKさんに対する2つ目の質問は既に今御議論があったと思いますので,1点目の質問だけ簡単に申し上げます。よろしいでしょうか。

1点目ですけれども,インタビューについてですけれども,これはインタビューの内容が著作物になるということを前提にお話をなさっているということでよろしいですかというのと,プラス,そういうふうに考えるとすると,他の借用素材と別段変わらないと思うんですが,インタビューだけ取り出して御議論される理由をお聞かせくださいというのがNHKさんに対する1点です。

民放さんに対するのも続けて聞いてよろしいでしょうか。

【末吉座長】いや,ちょっとここで切らせてください。

【奥邨委員】分かりました。

【末吉座長】この点については広石様,いかがでしょうか。

【日本放送協会(広石氏)】インタビューにつきましては,著作物である場合もあると思いますし,そうでない場合もあると思います。それで,借用素材と一緒かという先生の御質問ですけれども,一緒の場合もあるかもしれないし,そうでない場合もあるような気がします。お金を払うことが前提になって,ビジネスとしてサービスごとの料金を設定されている借用素材の権利者の方もいらっしゃると思いますし,インタビューについては,一般の方だったりしますとそういったこともないような気がしますので,似て異なるものなのかなと思いました。

以上です。

【奥邨委員】分かりました。対価の問題だけですね。対価の考慮の問題ということで理解しました。

それでは,民放さんのほうお伺いしてよろしいでしょうか。

【末吉座長】奥邨先生,お願いします。

【奥邨委員】民放さんに2つあります。1点目は,制作会社が番組を制作する場合というお話です。ちょっとこれ,状況がよく分からないんですけれども,同時配信を考えずに,今放送で制作会社が許諾を取る場合,どういう許諾を取っているんですか。放送局が放送をするため,放送をする許諾を下さいという契約を,制作会社が放送局の代わりに権利者との間で締結しているという理解でよろしいですか。その場合に,今後は……。

【末吉座長】1つは,番組制作会社との契約関係の確認ですよね,番組制作についての。

【奥邨委員】すみません,その続きです。その場合に推定規定が適用されてほしいと,そういう話ですかということです。

【末吉座長】分かりました。この点はいかがでございましょうか。

【テレビ東京ホールディングス(丸田氏)】テレビ東京ホールディングスの丸田です。通常,制作会社さんのほうに一括して番組の制作を委託する,発注する場合は,通常これまでだと,例えば放送権何年何回ということで契約書を取り交わして,しっかりと放送ができるように制作会社さんのほうに全て権利処理をしていただいて,番組を納品していただきます。これが同時配信や見逃し配信等も進んでいくとなると,一次の権利処理をやられているのは制作会社さんで,私どもはどういう状態で権利者の皆様と制作会社さんが契約を結んでいるかということが分かりませんので,制作会社さんのほうに同時配信や見逃し配信の権利処理もしていただく必要があるということで,制作会社さんのほうにもこの推定規定が及ぶようにしていただきたいということになります。

【奥邨委員】了解しました。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかに御質問はどうでしょう。

【今村委員】今村です。よろしいでしょうか。

【末吉座長】今村委員,どうぞ。

【今村委員】日本放送協会さんにお伺いしたいのですが,資料の4ページのほうで,権利者に支払われた対価に関して,口頭である場合もインタビューなどの場合は多いとかそういうことが書かれているんですけれども,口頭で行う場合とか,あるいは文書ないしメールで対応するということについて,放送局の内部として何か決まりがあるというか,ルール化している部分があるんでしょうか。ある程度類型化して,短期間で処理しなくてはならないものは電話とかメールで対応するとか,あるいは対価が発生するものは書面を取り交わして利用する,放送するとか,そういった何か内部的な内規というか,取決めみたいなものは現在のところあるのか,あるいは,それともその場その場で担当の人が適当というか,そういうふうに対応しているというのが現状なのかということをお伺いできればと思います。

【末吉座長】広石様,いかがでございましょうか。

【日本放送協会(広石氏)】インタビューの現場の状況というのは全て著作権契約部で把握しているわけではありませんけれども,まずは承諾書を用意していますし,簡易にその場で書いていただけるようなものも用意しています。交渉に時間があれば,契約書も用意します。今ここに書いているような街頭のインタビューというとき,歩いている人に止まっていただいてするインタビューにそういった承諾書を頂くというのは非現実的なところもあると思います。そこは現場で臨機応変にやっていると思いますので,用意してあるものを全て必ずいつも使っているかというわけではないと思いますけれども,NHKプラスについては新しいサービスですので,短時間の交渉の中でもお伝えして,御了解を得て運用させていただているという理解でおります。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかに御質問ございますか,委員の皆さん。

【池村委員】池村ですけれども,よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【池村委員】NHKさんにお伺いしたいと思います。ご発表資料1ページにある,同一の放送地域への同時配信については,過去の契約で放送の許諾を得ていれば推定が及んでもいいのではという点なのですけれども,これは具体的には,将来放送し放題みたいな形で契約が締結されている場合ということになるのでしょうか。

【日本放送協会(広石氏)】そうですね。権利者の中には,NHKさんの放送ならずっと使っていいよとおっしゃってくださっている方もいらっしゃったりするので,そういったときはいいのかな,こういったことは許されるのかと思って書かせていただきました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。

ほかに御質問いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。それでは,ヒアリングはここまでといたします。いろいろありがとうございました。

続きまして,事務局より説明のあった資料2,推定規定に関する取扱い(たたき台)について,委員の皆様方から御意見,御質問等をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

【池村委員】池村ですけれども,よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【池村委員】これ,どこからでもいいんですか。

【末吉座長】どこからでもよろしいです。

【池村委員】ありがとうございます。

【末吉座長】幾つかあるという趣旨ですか。

【池村委員】いや,そういう趣旨ではありません。

【末吉座長】分かりました。どこからでもよろしいです。どうぞ。

【池村委員】すみません。全体を通してというところかもしれないのですけれども,前提として,法改正ですとか,その解釈,運用に際しては当然権利者の利益を害さないように留意するということは重要だと思うのですけれども,一方で法律の条文自体にあまりあれこれ条件をつけてしまうと,かえって使い勝手の悪い,意味のない改正になりかねないところかと思います。先ほどの瀬尾先生の御発言等にも重なるようにも思うのですけれども,条文化すべきところ,ソフトローでやるべきところの区分けというのはしっかり意識して議論する必要があるんじゃないかなと思います。

その上で,先ほど御発表のあった民放キー局さんの御懸念,スライド6ページとか7ページの点に書かれた内容は理解できるところですので,制作会社が権利処理をする場合とか,代理店経由で権利処理をする場合でも,そのこと自体をもって権利推定規定の適用が排除されることがないようにする必要があるんじゃないかなと思いました。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。どうぞ。

【龍村委員】推定規定についての総論的な部分として,推定といった場合,例えば民事訴訟法上,推定という場合,いろいろなケースがあって,法律上の権利推定の場合もあれば,法律上の事実推定という場合もあれば,あるいは暫定真実といいますか,いわゆるただし書に規定したのと同じ格好のものとか,いろいろなものがあるので,ここで議論する推定がどの推定を目指しているのかは意識しておく必要があると思います。多分,法律の事実推定辺りを念頭に置いているのだと思いますが,その辺りで別段の意思表示というものをどう位置づけるのか,あるいは暫定真実的なもので議論されているのか,そういう観点から見る必要があると思います。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】先ほどありました制作会社云々というのはもう折に触れて出ていますが,手足と説明するか,共同行為と説明するかは別として,ここの趣旨は,狭い意味での放送事業者だけに絞っているわけではないのだろうと思いました。

それから,今の推定の話は,私はこの書き方からして,法律上の事実推定で,例としては,我々なじみの深いところだと著作権法14条の推定,普通の法律上の事実推定で挙証責任が転換されるというものがあるかと思います。そのようなものとして考えていけば,今まで出てきたところは普通に,あまりこれ自体をいじり出して別のものにしてしまうと良くないので,ごく普通に我々が著作権法で使っている法律上の事実推定としてやれば,あとは,どのような場合にこの推定規定が適用されるのかという問題は別とすれば,推定の中身自体は一般的なものでいくべきものと思われます。

先ほどの,同時,追っかけ,それから,見逃しのどこまでかというところは,最初からもう同時だけだという人もいらっしゃったら,きちんとリターンさえ来れば3つ共でもよいという人もいらっしゃるので,この辺りは決めていく必要があります。私として気になっているのは,先ほども申し上げましたとおり,推定を入れるということは,挙証責任が転換されて,フタかぶせがなくなるという方向に行くので,今回のプロジェクトの目的は達するのですが,それによって買いたたかれるとかいう点です。そのために,補償金をつけたりして,そこのところは,フタかぶせはしないようにするけれども,きちんと権利者のところにリターンが行くというところがこの一連のものの中で一番重要だと思います。そこの辺りをどうにかしないと,ただ推定でがさっとやってしまうと,推定されると挙証責任が転換されているので,非常に不利になってしまいます。

もう一つ申し上げれば,そもそもオンデマンドのときに併せて契約してしまえばよいのではないかということす。極論してしまえば,今まで似たような話は何回も何回も出てきており,そのたびに,契約をきちんとするべき,アメリカだと二次利用まで契約しているのだから,日本でもそうすればよいのではないかということで,放送及び配信契約をワンセットのように契約すれば済むという面もあります。

私はそれで全部やれと申し上げるつもりはなくて,それでし切れない分を拾うために推定を入れるのはよいと思うのですが,あまり推定にばかり頼ると,かえって両者のためによくないであろうと思います。本当は細部まで,先ほどの3つでいえば,3つのどこまで及ぼすかについても大原則はきちんと契約で決める,ただし,全部について契約が期待できないから念のために推定をつけておくぐらいの扱いがよいと思います。

先ほどからお聴きしていると,この推定規定に物すごく期待されているような気がするのですが,放送側と権利者の両方のためにも,きちんと契約するのが本筋であり,うまく契約ができれば,買いたたきなどということもなくなります。そのような意味では,推定というのは,14条は,契約とは関係ありません。それ自体として意味があるのですが,今回のは,本筋からいえば契約でやればよいけれども,それができないときの念のための安全弁的なものにすぎませんので,推定規定に過度の期待をかけるのはいかがかと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。中村委員,どうぞ。

【中村委員】先ほど池村委員がハードローとソフトローの境目をしっかりという指摘をなさいましたけれども,賛成です。今日の議論も,ハードローの枠をはみ出すものがとても多くて,解釈や運用に委ねられる面が強いんじゃないかなと。何度か今日も言及がありましたけれども,ガイドラインがとても大事になると思います。ですので,利害当事者間で協議・調整をして,ソフトローといいますか,共同規制的に運用されるべき分野になっていくだろうと。

であれば,報告のまとめの後かもしれませんけれども,関係者が協議をする場をしっかりと設けて,実効性の高いガイドラインが出来るという方向で政府にも働きかけをお願いしたいと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。内山委員,どうぞ。

【内山委員】私も多分原則論的なところでとどまりますけれども,今日文化庁さんが出されたたたき台,基本的にもうここでとどめていただいて,ガイドラインのほうでもう少し条件的なところは詰めていただくほうが望ましいかと思います。もともとの問題提起は,物理的な意味で,時間的な意味で確認作業ができないというところから問題提起が進んでいますので,あんまりここで個別具体なことを詰めていって法に落とし込んでというふうにやると,ますますそれは,恐らく推定ではなく,契約のほうに切り替わる可能性があって,それはそれでまたちょっと違う趣旨に転換してしまうだろうという懸念もございます。

ですので,恐らくガイドラインになってくれば,例えば先ほどから何度も問題になっている,対価をどう顕在化させるというべきか,明示化させるというべきか,あるいはクリアにするというところも,まさしく状況で変わると思うんですね。まさしく今,同時配信なり,配信市場がまだまだスタートアップの状況ですので,ここであまりごりごりと決めてしまうと,まさしくビジネスを制約することになるでしょうし,でも,多分10年後は違う世界がきっとあるでしょうから,またそのときはそのときで分配の仕方を考えなければいけないと思いますので,なるべく原則論に立ったところで今日のところはとどめておくのが望ましいのかというふうに考えます。

以上でございます。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

どうぞ。

【三谷文部科学大臣政務官】総務省に質問させていただきたいと思います。先ほど大渕委員の問題提起にもありましたし,中村委員の御示唆にもありましたけれども,本来的には,しっかりと契約の際に議論していくということになると思いますが,このたたき台の2ページ目の4ポツの※3ですけれども,明示的に同時配信等を行う旨を伝えるなどした上に契約を締結することが望ましいというところがまず大前提にあります。これは力関係を考えれば,放送事業者というのは大資本家でありまして,クリエイターというのは零細な事業者ということが多いと思います。

その点でお伺いしたいんですけれども,公取の下請法や放送コンテンツに関するガイドラインで御案内のとおりですが,著作権の取扱いについてはできるだけ書面で明確に合意をすべきだというような話がある中で,実際,制作会社よりも先の権利者という意味ではより零細なクリエイターである可能性があるわけですが,そことの間で様々な口頭での契約を認めていくにもなり得るような今回の推定規定というものが,今までのガイドラインの在り方,書面でできるだけ規定をしていくべきだということとは多少そぐわない可能性もあるわけですが,総務省として放送事業者に対して,著作権の取扱いについてどのような合意をしていくべきだ,あるいは書面でできるだけそういったことを取り決めていくべきだというような指示をしていくか,お考えがあればお答えいただければと思います。

【総務省(三島情報通信作品振興課長)】ありがとうございます。下請法の対象の範囲になるもの,ならないものがありますけれども,基本的には,下請法の対象の取引であれば当然書面もあります。また,先般,ガイドラインを改正させていただきまして,著作権の件は,当事者が最初にどういうふうに著作権が扱われるのかについて認識をしないで契約をしている場合がそれなりにあるということが分かっております。まずは下請法の対象となるかならないかにかかわらず,放送事業者が製作の方々に出す発注がどういう類型の契約なのか,ということが最初に分かるような形で発注するようにしなくてはならないと考えております。

そのために,契約の類型化と,こういう契約の場合は,著作権は原始的にどこにありますといったことについて,一般的・概括的な表を作って,ガイドラインに盛り込んでおります。まず,関係者が,自分たちが発注しようとしている,あるいは請け負おうとしているのがどういう契約なのか,それはどういう効果を生むものなのかについて,発注段階で納得をして,条件の協議に入ることを推奨しております。

その他には,一般的に,やはり事後的なトラブルを避けるという観点から,また今,クリエイターの方といった話も出ましたけれども,基本的には製作に参加する皆さんがどういう条件であるかということについて,なるべく書面も出すことが推奨されるでしょうし,契約が進められるというのが望ましいと考えておりまして,その旨ガイドラインにも記載しております。

【三谷文部科学大臣政務官】ありがとうございます。

【末吉座長】よろしいですか。

【三谷文部科学大臣政務官】はい,いいです。

【末吉座長】ありがとうございました。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】今言われたところとも関連しますが,私も改めて考えてみると,やはりこの推定というのは念のためについているだけで,できるだけ明示すべきです。ただ,推定規定が出来ると,放送と同時と追っかけと見逃しというのを念頭に置いて契約しなければいけないというメッセージのような,法律に書いてあるガイドラインと言うのも変ですが,それをリマインドする意味があるかとは思います。

できるだけそこのところもきちんと詰めてやれば,先ほどのように額についても,今後の想定されるあるべき契約というのは,放送する際には同時とかそのようなことも念頭に置いて,両方が納得した上で,額もきちんとできるだけ見える化し,放送代は幾ら,同時以下は幾らというように区別した上で書くというのを最も目指すべきであります。そうは言っても,世の中全てはそれでいかないから,何にもないときに規範がなくなると困るから,推定で念のために救われるとするのであって,やはりそのような意味ではこの推定というのは「念のため」のものにすぎず,両当事者ともマインドを持ってきちんと契約でやっていくというのが本来の筋であろうかと思います。

それ以外の細かい点は全部,まとめていただいたとおりです。

それから,もうこれは申し上げる必要もないかと思いますが,今の点も含めて考えると,やはり遡及効というものは,法的安定性を著しく害するものであるから,法律関係としては最も嫌うものであります。

今まで推定だと非常に不明確になって後で両当事者が困るのではないかという懸念がたくさん出されているのですが,それは推定に頼るからそうなってしまうので,そのようなことがないように,やはり第一義的にはきちんと契約で明示的に決めるということを中心に考えていって,念のためだと思えば,あまり推定に過度な期待を抱くことはなくなるのではないかと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。どうぞ,前田委員。

【前田委員】ありがとうございます。書面が必要かどうかという点については,いろいろな場合があるように思います。NHKさんから許諾の推定規定に期待する場面として,街頭インタビューが含まれるというお話があったと思うのですが,NHKさんからお話がありましたように,街頭インタビューの場合に必ず書面を作成しなければいけないのかというと,それは現実的ではない場合が多いのではないかという気がいたします。

それから,遡及の問題につきまして,今回法改正によって設ける推定規定については確かに遡及というのは難しいかもしれませんが,先ほどNHKさんが挙げられた,「NHKさんであればずっといいよ」というような許諾を得られている場合には,必ずしも推定規定に頼らなくても,合理的な意思解釈によって,追っかけとか見逃しまで許諾に含まれているというふうに解釈できる場合は当然あるのではないかと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】日本の場合は口頭でも契約ができます。後の紛争を考えれば書面にしない限り難しいかと思いますが,法的には口頭の契約でも成り立つので,先ほどのインタビューというのも,推定規定に頼らずにきちんと契約しようといって,その契約は口頭でもきちんとしたものであれば,合理的な範囲でよいわけであります。

それから,先ほどのように全部お任せしますというのは,包括的な契約です。単発の契約ではなくて,今後のNHKとの関係では全部やりますという包括的な契約が口頭でなされたということがきちんと証明できるのであれば,それはまさしく包括的な契約の効果となりますので,推定の話と混ぜないほうがよいと思います。推定というのは,法律の力で挙証責任を転換してやるという話なので,書面化はされていないけれども明確な契約で包括的な契約をするというのであれば,それは推定の問題ではなくて,契約の問題ですので,そこは混ぜないようにすることが重要だと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにはいかがですか。今村委員,どうぞ。

【今村委員】今回は,推定に係る条件や推定が覆り得る事情の……,あ,奥邨委員が戻っていらっしゃいましたけれども,間を埋めるために私が質問というか,意見に入ってしまったので,続けさせていただきます。先ほど大渕委員からもありましたように,このガイドラインがあっても,基本的には推定に頼らないということが求められてくると思います。必要なときには推定が適用されるけれども,あくまでそれはその必要なときに使うものだと思います。運用としては,今のところ,割と同時送信も行われていない中,放送だけで運用している中で契約をやってきている中で,推定規定を設けて適用するとしても,多くの部分ではあくまで過渡的な活用にすぎないことになると思います。

今後はガイドラインを策定するということで,法施行までの間に何か策定するということが望まれるということで,それはそうならざるを得ないし,細部はそうやってビジネスの中で解決していってもらいたい部分だと思います。ただ,そのガイドラインに関して,法施行までにとあるんですが,これはやはり定期的に契約の推定に係る条件なども実際やってみて見直してみたりとか,そういったことも,必要性も関係者間で十分議論していただきたいところです。また,関係者間で議論するということになったときに,無知なアウトサイダーの意見を無視するということにならないようにしていただきたいです。同時配信の存在も知りません,見逃しの存在も知りませんでした,でも,関係者じゃないからガイドラインにはその意見は反映させませんでしたということにならないようにすることが必要だと思います。実際の放送が同時送信やら,あるいは見逃し,追っかけという形で活用されているということを十分に認識できないような関係者の意思も,推定に係る条件などを当事者間で話し合うときに考慮しながらガイドラインを策定していかないと,いきおい,何も知らない人の意思を無視する意思推定という話になってしまいかねないと思います。その点で,関係者間というのは幅広い,必ずしも権利の活用に関心を持つ人たちだけでない人の意見も含んだ形で検討をしないと,推定に係る条件の運用がうまくいかないということもあるのではないかと思います。

以上です。

【末吉座長】ありがとうございました。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】すみません,私のほうこそ。2点あります。まず1点は,今おっしゃっておられたガイドラインの問題ですけれども,やはり重要だと思います。今回まとめられた資料は,推定を覆滅する事情という書き方になっていますので,特に放送局さんのほうからすると,非常に心配な書き方に見えるんだろうと思いますが,ガイドラインということであれば,こういう覆滅する事情を逆に言うと弱めるような事情というのも書けると思うんですね。

例えば先ほど内山委員からありましたように,置かれた状況,時間的な状況とか,それから,先ほど前田委員からありましたように,街頭での状況とか,そういう状況があると,例えばほかの状況は覆滅の方向に行くものでも,差し引きでどっちに考えるかというようなことは,個別具体いろいろと場合を考えて当事者で書けるかと思いますので,そういうことも含めてガイドラインはより分かりやすく,もともとこの規定が生乱された方向も含めて書き込んでいくということをお考えいただければみんなが安心して使えるのかなと思いました。

それから,2点目は,大渕委員から,この推定規定があるということがメッセージとなって将来の契約実務等にもいい影響を与える方向に持っていくべきであるとのお話しがありました。既に著作権法61条2項ということで,特掲していない限り,翻案等に関する権利は譲渡されていないと推定する規定がありますので,著作権の譲渡を受けるときは,契約のイロハとして必ず,特掲するようにとかいわれて,そういう実務が根付くわけです。

今回は逆方向ではありますけれども,ただ,こういう推定規定があることによって,メッセージとなって,今あやふやなところになっている,過渡期ですからやむを得ないんですけれども,あやふやなところになっているビジネス慣行が一定のところに落ち着いて,先ほどもお話があったように,こういう規定がなくても実際は回ると。むしろ本当にそれで十分やれるということになる。だから,それをお助けするというような位置づけで考える。それであれば,やはりガイドラインもみんな使いやすいようにお助けするようなものであると,そういう位置づけで考えていくべきではないかなと。あまりにどちらもこちらも欲張り過ぎるというか期待し過ぎると,ちょっとそごが出るかなというふうな気がいたしました。

ちょっと総論的なことで申し訳ありませんけれども,私のほうからは以上です。

【末吉座長】ありがとうございます。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】私もこの61条2項は非常にいい例だと思います。これは一時期廃止論もありましたが,著作者人格権と隣接するような27条,28条の権利を守るためには非常に重要な規定だと思います。これを見ると,27条,28条を特別扱いしなければいけないことも出ているので,これに近い,メッセージ性という意味では似ているのかもしれません。

私としては,推定というものは高度に裁判規範的というか,最後は裁判プロセスの中でしか明確のしようがないので,ガイドラインといっても,結局は先ほどのように考慮事情の1つにすぎません。それでは一律に決まらないという,かなり抽象的なものにしかならなくて,判例などが出て一個一個やるという作業をしない限りは,具体的に明確化されません。また,挙証責任が転換されているという非常に大きなところとか,総合考慮だとか,我々には普通になっている推定規定のようなこと以上に書けないのではないかと思います。

その点では,私は,紛争が起きた後のガイドラインも重要なのですが,契約が重要という点からいうと,モデル契約書ひな形のようなもので,きちんとそれぞれの放送代とそれ以外が明示されるようになどするのがむしろ前向きな一案で,そのようなものを組み合わせると,皆が安心して契約ができるようになるのではないかと思います。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにはいかがですか。どうぞ。

【龍村委員】本日の論点は,伺っていますと,やはり放送事業者側と権利者団体側のかなり利害が正面から対立する場面もあるようにお見受けします。このあたりを上手にさばいていく必要があると思います。1つ,本日の資料2の2ページ目の4ポツですか,推定が覆り得る事情の(3)その他,として,少しうかがわれるのは,集中管理がされているかどうか。集中管理団体相当のものが窓口的に対応しているかどうか,あるいは権利者の方々が所属している団体があって,その団体と放送事業者が話合いをしていたりするような経緯が過去あったかどうか。全体的にひっくるめて言うと,やはりライセンス優先といいますか,既に存在するライセンス市場との整合性といいましょうか,その点を尊重した運営の仕方,この辺りが必要になってくるのかなと思います。

したがって,内山先生おっしゃられたように,この推定規定,あるいは皆さんおっしゃっておられるように,あるいは瀬尾さんのメモにもありますが,推定推定という言葉が独り歩きして,推定されるから当然にできるのだというような濫用的な推定の使い方がされないように注意しなければならないということと,細かい点は当事者間の協議で決めるしかないのではないかということが言えるのではないかと思います。いわゆるガイドラインを中心に運用していくことしか特効薬はないのではないかと。今般,早期に同時配信をスタートさせるには,むしろそちらのほうが近道である可能性が強いと思いました。

【末吉座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょう。内山委員,どうぞ。

【内山委員】恐らくガイドラインを当事者の皆さんでお話し合いいただくときの問題とは思うんですけれども,集中管理団体さんや,あるいは先ほどの話でいうとフォトライブラリーの業者さん,彼らがどういう権利を預かっているかというところはひとつの論点になってくるとは思うんですね。ずっとある議論は,許諾を出しているか出していないか分からないケースに対してどう対処しましょうかがここのアジェンダでしたので,イエスとも言っていない,ノーとも言っていないところはどこにあるかというところがそこで,ガイドラインの検討の中で議論されてくることになろうかと思います。

今後に関して,預かるに当たっても,どうしてくださいねというところを白黒させてもらうほうが,推定ではなく契約に転換できる話になりますので,間に立たれる集中管理団体さんなり,あるいは業者さんの中でも御検討いただきたいことになるだろうと思いますし,曖昧のままというか,白黒つかないというところに関しては,「白黒つかないということ」の明示化ということが見えてこないと先に進めないんだろうと思います。それこそさすがに今回は推定というところを利かせる場面というふうになるんじゃないかと考えます。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。そろそろよろしゅうございますか,皆様。はい。

【龍村委員】それと,推定覆滅事情の2番目の,対価が放送のみの場合の水準であるかどうかという要因,これはもちろん推定覆滅の事情でもありますけれども,ややほかの事情とも少し性質が違うといいましょうか,多様な意味を持っているような気がいたします。ここが,要は,権利者団体との対立軸の中心論点だろうというふうに思いますので,この要因の取扱いは,単なる推定の一要因というだけでなく,それを超えた意味があるように思います。報酬請求権を含め,あるいはドイツなどで見られるような追加請求とかそういうようなものを導き得る要因にもなり得るという部分もあります。ただ,そういった大上段に制度設計とかをやるとまた大変なので,取りあえずガイドラインに回すにしても,その要因が論点となっていろいろ意見対立が生じていると思われますので,これは別格扱いの問題かと思いました。

【大渕座長代理】よろしいでしょうか。

【末吉座長】どうぞ。

【大渕座長代理】私が先ほどから懸念しておりました,フタかぶせをやめるのはよいが,きちんとリターンが行かない限りは問題解決しないという点がまさしく今出ておりました。放送だけで,配信の分がただで吸い上げられるようなことがないように,きちんと見える化等も含めてそこのところをおっしゃっているのが,明らかに放送だけで,配信のほうがネグられているようだったら,それは放送の分しか行ってないので,配信の分は行ってないということになります。覆滅というといろいろあるのですが,その中でもとりわけ私はここのところが重要で,そこがうまくいかないと,先ほどのようにドイツのようなまた大げさな話で,もっとリターンが行くような,補償金などの話に持っていかなければいけなくなります。

そのようなことをせずに普通の推定の中でやろうとしたら,一般的には推定でいけますが,きちんとしたお金を払っていない場合には推定がいかないという,ここのピン留めのところは極めて重要だと思います。大本がただならそれは別にただでよいのですが,放送代だけで全部取るということはきちんとリターンが行かないので,そこの歯止めについて,先ほど何かいい工夫がありませんかとお聞きしたら全然工夫はなかったのですが,あるとしたら,ここのところで歯止めをかけるしかないという気がいたします。

【末吉座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。本日のところはこの程度でよろしゅうございますか。よろしければ,本日はこのくらいにしたいと思います。ありがとうございました。

最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いします。

【大野著作権課長補佐】本日は,大変活発に御議論いただきまして,ありがとうございました。許諾推定規定に関する基本的な考え方について認識共有が図れたものと思いますし,また,今後のガイドラインの策定や望ましい契約秩序の在り方についても重要な御示唆をいただいたものと受け止めております。

次回は,その他の論点について御議論いただくことになりますが,日程は11月13日金曜日の17時からを予定しております。引き続きよろしくお願いいたします。

【末吉座長】それでは,本日はこれで第5回ワーキングチームを終わらせていただきます。ありがとうございました。

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