文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回)

日時:令和4年10月5日(水)

10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)基本政策小委員会主査の選任等について(非公開)
    • (2)今期の基本政策小委員会における審議事項等について
    • (3)DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について
    • (4)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
第22期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(136KB)
資料2-1
第22期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会における主な検討課題(案)(136KB)
資料2-2
「知的財産推進計画2022」等の政府方針等(著作権関係抜粋)(4MB)
資料2-3
分野横断権利情報データベースについて(708KB)
資料3-1
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る今後の検討に向けた論点例(案)(331KB)
資料3-2
著作権法施行令の一部を改正する政令案の概要(242KB)
資料3-3
著作権法施行令の一部を改正する政令案に係るパブリックコメントに対する提出意見の概要と文化庁の考え方(案)(404KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(353KB)
参考資料2
第22期文化審議会著作権分科会委員名簿(146KB)
参考資料3
第22期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和4年6月27日文化審議会著作権分科会決定)(206KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和4年6月27日文化審議会著作権分科会決定)(143KB)
参考資料5
令和3年度基本政策小委員会の審議の経過等について(346KB)
参考資料6
私的録音録画に関する実態調査報告書(3.4MB)
参考資料7
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(2.8MB)

議事内容

今期の文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員を事務局より紹介。

本小委員会の主査の選任が行われ、末吉委員を主査に決定。

主査代理について、末吉主査より上野委員を指名。

会議の公開について運営規則等を確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会改訂)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【末吉主査】  それでは、傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することはどうか御遠慮いただきたいと思います。

では、改めて御紹介させていただきますが、先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、私、末吉が主査を務めることになりました。主査代理としては上野委員を指名させていただいておりますので、まず御報告申し上げます。

本日は、今期最初の基本政策小委員会となりますので、中原文化庁審議官から一言御挨拶をいただきたいと思います。お願いします。

【中原文化庁審議官】  文化庁審議官の中原でございます。文化審議会著作権分科会基本政策小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

委員の皆様におかれましては、日頃より著作権施策の検討、実施に当たりまして、御協力、御助言をいただいておりますとともに、このたびは御多用の中、当小委員会の委員をお引き受けくださり、本当にありがとうございます。

そして、昨年7月の文部科学大臣から文化審議会に対する諮問、DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方を受けて、本小委員会においては活発に御審議をいただきまして、その結果として、12月には中間まとめを、「DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について」が、著作権分科会においてまとめられました。

現在、簡素で一元的な権利処理方策などにつきましては、法制度小委員会に検討の場を移しまして、来年の通常国会における法案の提出を目指して、鋭意御審議をいただいているところでございます。

本小委員会におきましては、中間まとめの後、DX時代に対応した適切な対価還元方策につきまして、音楽分野に係るデジタルプラットフォーム上の対価還元に関する実態調査などを基に、検討に着手いただいているところでございます。

コンテンツの流通の在り方が変化する中で、そうした現状に応じた対価還元方策を確立することは、コンテンツの利用と創作の好循環の最大化を図る上で極めて重要であるというふうに認識をしております。

今期のこの小委員会における検討課題などにつきましては、この後確認されるとは存じますけれども、昨年度に引き続きまして、御審議を深めていただければというふうに思います。

また、この間、文化庁としては、クリエイターの皆様への適正な対価還元を図る上で重要な仕組みであります私的録音録画補償金制度に関しまして、新規に対象機器を指定する政令案に関するパブリックコメントを実施しました。本制度の在り方についても、現在のコンテンツの流通の実態を踏まえ検討を施す必要に迫られておりまして、寄せられた国民の皆様からの御意見といったことも御報告をさせていただければというふうに思っております。

いずれにいたしましても、クリエイターの皆様、そしてユーザーの皆様、そしてこれを取り持ってくださる事業者の皆様、製造事業者をはじめとする事業者、あるいは通信事業者の皆様、こうした方々みんな一体となって、有効なコンテンツクリエーションサイクルというものをつくり上げていければというふうに考えております。

簡単ではございますけれども、委員の皆様からの引き続きの積極的な御参画をお願い申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

【末吉主査】  それでは、次に、議事(2)に入りたいと思います。今期の基本政策小委員会における審議事項等についてです。

本年6月27日に著作権分科会が開催され、今期の検討課題及び本小委員会を含む3つの小委員会の設置が決定されております。これを受けて、今期の本小委員会の主な検討課題について確認するとともに、幾つか関連する報告を受けたいと思います。事務局よりまとめて説明をお願いします。

【渡邉著作物流通推進室長】  では、まず、資料2-1を御覧ください。今期の本小委員会における主な検討課題(案)についてでございます。

本小委員会におきましては、6月の著作権分科会において決定をされた主な検討課題を踏まえて、主に以下の課題について検討を行うことが考えられるとして、2点を挙げてございます。

1点目は、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策についてということで、2点目は、そのうち特に、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策についてということで挙げております。

これの今後の審議の進め方といたしましては、調査研究の実施状況、関係者からのヒアリング、関連するほかの政策の動向などを踏まえて審議を行うこととし、年度末をめどに審議の経過を取りまとめるというようにしております。

続きまして、資料2-2を御覧ください。本年6月に決定をされました知的財産推進計画2022などの政府方針等について、著作権関係部分の抜粋をまとめたものでございます。本小委員会の検討課題に関連する主なものをかいつまんで御紹介をいたします。

9ページ目、御覧いただければと思いますけれども、一番下の中黒から、次のページの2つ目の中黒まで、昨年度の本小委員会におきまして御議論をいただいた、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度の実現について、来年の通常国会に著作権法の改正法案を提出するということでありますとか、分野横断権利情報データベースについて、ニーズのあるあらゆる分野の著作物等を対象として、権利情報の確認や利用許諾に係る意思表示ができる機能の確立方策について検討し、本年内に結論を得るということなどについての記載がなされているところでございます。

また、10ページ目の3つ目の中黒でありますけれども、まさに本小委員会の検討課題に係ります、クリエイターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、デジタル時代に対応した新たな対価還元策やクリエイターの支援・育成策などについて、コンテンツ配信プラットフォームや投稿サイト等における著作物等の利用状況や権利者の利益保護に係る実態把握も踏まえ検討を進めること。そしてまた、私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について、関係省庁による検討の結論を踏まえ、可能な限り早期に必要な措置を講ずるというように記載をされているところでございます。

次に、資料2-3を御覧いただければと思います。昨年の中間まとめの中で、その構築について提言がなされ、また、今触れました知的財産推進計画の中にも記載のある分野横断権利情報データベースの検討状況につきまして、御報告をさせていただきます。

現在、文化庁におきましては、昨年の中間まとめを踏まえて、分野横断権利情報データベースに関する研究会を開催し、検討を深めているところでございます。具体的な検討事項といたしましては、分野横断権利情報データベースの在り方、データベースの利用ニーズや目的、データベースに必要な情報、フォーマットの標準化、IDやコードによる紐づけ、関連団体等のデータベースとの連携方策などについて検討することとしております。

この構成員といたしましては、本小委員会の主査である末吉先生をはじめ、河野委員、畑委員にも加わっていただくとともに、その他の学識経験者でありますとか、関係団体からの委員に加わっていただき、座長としては、国立情報学研究所所長でいらっしゃる喜連川先生にお願いをしているところでございます。この研究会の成果物につきましては、まとまり次第、審議会にも御報告差し上げることを予定しております。

次のページでございますけれども、文化庁におきまして、分野横断権利情報データベースに関しまして、来年度に向けて概算要求を行っている予算事業の概要資料になります。具体的な事業内容といたしましては、今説明をいたしました研究会における成果も踏まえた上でということになりますけれども、第一に、実際に各分野のデータベースを保有する団体などに参画をいただいて、検討会議を開催し、拡張性にも留意しながら、基本的な機能、システム構成、業務フローなどに係る調整を行うというのがまず第1点でございます。

第二に、技術的な仕様の検討を行うということで、具体的には、権利者情報の統一やフォーマットの標準化、IDやコードに関するルール、検索項目、システム/データ連携などの具体化を図っていくということでございます。

第三に、部分的な実証研究を行うということで、裁定制度により利用された著作物や各団体などを通さずに登録される権利情報の集約に関する実証研究を行うということ、そういった内容を検討してございます。

この内容に関しましては、年末の予算案編成に向けまして、現在、財務当局と協議を行っているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

【末吉主査】  ただいま説明のあった件につきまして、御意見、御質問等がございましたら、お願いをいたします。いかがでしょうか。ございませんでしょうか。

ありがとうございます。それでは、資料2-1の内容につきましては、検討課題につきましては、事務局からただいま説明があった案のとおりに致したいと思いますが、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。それでは、本小委員会では、そのように審議を進めていくこととしたいと思います。

次に、議事(3)のDX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策についてに入りたいと思います。

本件については、昨年度の本小委員会における審議の後半より本格的に議論を開始したところでありますが、そこでの議論等を踏まえまして、今後の検討に向けた論点と検討の進め方の案を事務局において整理いたしています。

また、クリエイターへの適切な対価還元に関連する取組として、この間に文化庁においては私的録音録画補償金制度の新しい対象機器を指定する政令案についてパブリックコメントを実施しました。そのことと併せて、事務局からまとめて説明をお願いします。

【渡邉著作物流通推進室長】  それでは、資料3-1を御覧いただければと思います。DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る今後の検討に向けた論点例の案といたしまして、昨年度の審議においていただいた御意見などを踏まえて、検討課題に対する論点を、全体を俯瞰するような形で当方においてまとめさせていただいたものになります。

まず、1番の経緯でございますけれども、昨年7月に文部科学大臣からの諮問がなされて、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップや契約の在り方についての課題や実態などを踏まえた対応の審議を要請されているところでございます。それを受けまして、本小委員会では、各種調査結果の報告などを踏まえて議論を行ったところでございます。

次に、2番の対価還元の実態把握と分析についてでございますけれども、1点目、昨年度は、音楽分野における対価還元に関する実態調査を実施し、部分的ではあるものの、デジタルプラットフォームサービスにおけるクリエイターへの対価還元に関する実態を把握したところでございます。

次に、別紙につけております、今後の検討に向けた視座・視点におきましては、音楽分野以外の分野における実態の把握について、更なる調査研究の必要性が指摘されたところでございます。

3つ目の丸でございますけれども、その他の分野の例といたしまして、まず、電子書籍について挙げております。電子書籍市場規模は年々拡大をし、電子書籍のビジネスモデルとしては、1冊の電子書籍を1ダウンロードするのに対して課金をするモデルでありますとか、サブスクリプションやレンタルといった方式も存在をし、そうしたサービスを提供する複数のプラットフォームが存在しているところでございます。

また、次に拡大をしている代表的な分野として、映像を挙げております。映像作品をインターネット上で視聴できるサービスとしては、サブスクリプションでリストにある作品を繰り返し視聴できるサービスがあるところでございまして、そうしたサービスを提供する複数のプラットフォームが存在をしているところでございます。

このほか一番下、DSM指令では、いわゆるプレス隣接権が報道機関に付与され、プラットフォーム側が報道機関に使用料を支払わなければならないことを規定しています。ただし、報道機関におけるオンライン上の収益方法につきましては、国によって異なる事情も考えられるところでございます。

以上に関する論点例といたしまして、まず1点目、文化庁としては、電子書籍や映像などの分野について実態調査を実施したいと考えているところでございますけれども、調査に当たって明らかにしたい実態や留意点はあるかということ、そしてまた、上で挙げた以外に、ほかの特徴的な分野が考えられるかどうかということでございます。

2点目として、また、これらの実態調査の結果を踏まえ、各分野に特徴的な課題や共通するような課題などについて議論してはどうかとしてございます。

次に、3番、クリエイターへの適切な対価還元の将来の姿についてでございます。デジタルプラットフォーム上でのコンテンツ消費が拡大をし、著作物の利用形態も多様化しているところでございます。

2つ目の丸で、こうした中でユーザーがコンテンツを複製する手段につきましても、録音や録画の専用機器だけでなく、パソコンやスマートフォン、オンラインストレージなどが活用されているところです。私的録音録画補償金制度の在り方につきましては、著作権分科会においても小委員会を設けて長く議論を行ってきたところでございますが、このような経過を踏まえ、知的財産推進計画2022で、先ほど御説明したような記載がなされているという状況でございます。

これに関しましては、関係省庁で共同し、私的目的の録音・録画に係る実態調査を実施したところでございまして、その結果を踏まえて、新たな対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを候補として、本年8月より政令案についてパブリックコメントを実施したところでございます。

その次の丸でございますけれども、海外の著作権制度について、それも変化をしているところでございまして、文化庁では、昨年度調査に続きまして、本年度も海外調査を実施することとしておりまして、この中でDSM指令について、最新の法改正動向についても調査を行うこととしております。

次に、今後の検討に向けた視座・視点では、コンテンツ産業の将来的な姿も視野に入れて検討するということが指摘をされております。文化庁におきましては、先ほど御報告をしたように、分野横断権利情報データベースの構築に向けた検討を進めており、こうした取組がオンライン上での大量の著作物等の利用に係る対価還元の基盤となることも期待されるところでございます。

また、いわゆるWeb3.0の時代におきましては、例えばメタバース空間で人々が直接つながることで、人々が大量のコンテンツを利用でき、また、クリエイターがそこから直接報酬を得るようなことも拡大していくことが考えられるところでございます。

3ページ目で論点例を、以上に関するものとして挙げておりますけれども、まず1点目、私的録音録画補償金の対象機器の追加指定について、パブリックコメントにおける国民各層からの御意見を踏まえて、今回の指定に当たって留意すべきことは何かということ、加えて、今回のものが過渡的な措置というように記述されていることを踏まえまして、制度の今後についてどのような方向で考えるかということを挙げております。

2点目、次に、知的財産推進計画にある新たな対価還元策の在り方をどのように考えるかということでございます。

3点目でありますけれども、適切な対価還元を実現するためには、コンテンツの利用者の視点も重要であり、社会的な理解やコストの低減をどのように志向するかなどのことを挙げております。

最後に、4番、他の政策や著作物の取引との関係についてでございます。1つ目、競争政策に関しては、政府にデジタル市場競争本部が設置をされておりまして、関連の法制度が現在も継続して検討されているという状況でございます。

2つ目の丸、次に、DSM指令におきましては、ユーザーアップロード型サービスにおける侵害コンテンツの掲載について、サービス提供者側に一定の責任を求める規定が設けられております。我が国では、対応するものとしてプロバイダ責任制限法がございますけれども、近年、インターネット上の誹謗中傷等に係る対策として、制度的見直しも行われているところでございます。

4ページ目を御覧いただきますと、また、DSM指令におきましては、当事者間の契約の在り方についても規定がなされているところでございます。本小委員会においても、昨年度の審議におきまして、著作権等管理事業者とデジタルプラットフォームサービス提供事業者との契約の在り方を含めて、関係当事者間の透明性に対する御意見などがあったところでございます。

以上に関する論点例といたしまして、1点目、関連する政府全体の動向を踏まえつつ、著作権政策との役割分担にも留意しながら、必要な対応について議論してはどうかということ。

2点目、各分野の実態把握と課題の整理を踏まえた上で、運用上の取組を含めて著作物の取引上の必要な対応の在り方について議論してはどうかということを挙げております。

続きまして、資料の3-2を御覧いただければと思います。今説明しました論点例の中でも触れました、私的録音録画補償金制度の新しい対象機器を指定する政令案のパブリックコメントに付した概要になります。

資料3-2の改正の概要を御覧いただきますと、今回規定するものにつきまして、アナログ信号をデジタル信号に変換して影像を記録する機能を有するブルーレイディスクレコーダーは既に規定をされているところでございまして、今回はこうした機能の有無にかかわらず、ブルーレイディスクレコーダーが制度の対象機器となるように新たに規定をすることとしております。なお、これに伴いまして、記録媒体であるブルーレイディスクも制度の対象となることとなります。

次に、経過措置でございますけれども、改正後の規定は、施行後に購入された機器、記録媒体について適用するというようにしております。

3番、施行期日は、公布日から起算して30日を経過した日を予定しております。

次のページには、今回の指定に当たって実施をした実態調査の結果の概要について記載をしておりますのと、調査結果の本体につきましては、本日の参考資料としてつけさせていただいているところでございます。

最後に、資料3-3を御覧いただければと思います。今回のパブリックコメントに対していただいた提出意見の概要と文化庁の考え方をまとめた資料の案となります。今回、案に様々なお立場からたくさんの御意見を頂戴したところでございます。そうしたことから、掲載しております意見の概要は、同じ趣旨と思われる御意見を文化庁において集約してまとめたものとなりますので、あらかじめ御了承いただければと思っております。時間の関係上、主だったものを幾つか紹介をさせていただきます。

まず、通し番号の4でありますけれども、製造業者などとの協議や消費者への周知、意見の反映、その他関係者の合意、検討が不十分ではないかといったような御意見であります。これに対しましては、制度の在り方につきましては、文化審議会等の場において長年議論が継続してきたということ、こうした中で、知財計画2020において、現行の知財計画の記載と同様の過渡的な措置を求める内容が記載をされて、それを受けて実態調査を行い、今回提案をしていると。そういった経緯を書かせていただいているところでございます。

次に、通し番号の17を御覧いただければと思います。権利者は自らの意思で地上デジタル放送を選択しているのだから、必要な対価はそこから得るべきではないか、こういったような御意見でございます。これに対しましては、一般的にテレビ放送において著作物を利用する場合の使用料につきましては、テレビ放送を視聴した者が行う私的録画に係る対価は含められていない、そういったことを記載しております。

次に、通し番号の24でありますけれども、そもそも私的複製は利用者の権利であって、タイムシフト目的の複製などでは権利者の利益を損なうということはなく、補償は不要ではないかといったような御意見であります。これにつきましては、個々の利用行為としては零細な私的複製であっても、社会全体としてはデジタル技術により大量の高品質な録音物・録画物が作成・保存されているということで、損なわれるクリエイターへの不利益に対して経済的補償を行うために設けられたという、本制度の趣旨を説明させていただいております。

次に、通し番号の29でございますけれども、デジタルテレビ放送の録画については著作権保護技術が導入されており、補償は不要ではないか、そういったような御意見であります。これにつきましては、現在、テレビ放送の多くにはダビングの回数を10回までなどとする著作権保護技術が導入されておりますけれども、これは法律で認められている私的な複製の範囲を超えたコピーを防止するという意義がある一方で、その回数の範囲内であれば自由にコピーを行うということができることに変わりはなく、やはり別途補償は必要ではないかという考え方を記載しております。

次に、通し番号の36でありますけれども、デジタル放送専用録画機が制度の対象機器に該当しない旨判示をした知財高裁判決を踏まえれば、今回も対象とすべきではない、そういったような御意見でございますけれども、こちらに対しましては、指摘をされている知財高裁判決におきましては、当時の著作権法施行令の規定に照らしてデジタル放送専用録画機が対象機器に該当するか否か疑義があったことに対しまして、該当しないという旨の判示がなされたものということであって、今回の追加指定によって、疑義が生じないように、対象機器を明確に規定したいという趣旨の記載をしてございます。

次に、通し番号の40でありますけれども、今後、対象が録画機能つきテレビやハードディスクドライブ、スマートフォンその他の機器などにも広がっていくことなどが懸念されるという、そういった御意見であります。これに対しましては、今回の措置はあくまで過渡的なものであって、今後の対価還元方策の在り方については、まさに本小委員会に御審議をお願いしているというように検討してまいりたいということを記載しております。

最後に、通し番号の54になりますけれども、最近は映像コンテンツの流通形態は配信が主流となっているにもかかわらず、従前の流通形態を前提とした今回の対応に疑問だなどといった御意見でございますけれども、これにつきましても、同様に、著作物の流通・利用状況などを踏まえて、今後のことにつきましては検討してまいりたいというようにしてございます。

私からの説明は以上でございます。よろしく御審議のほどお願いいたします。

【末吉主査】  それでは、ただいま説明のあった件につきまして、御意見、御質問等をお願いしたいと思います。委員の皆様全員から、この件は御意見を頂戴したいと思います。恐縮ですが、五十音順――五十音順というのは、資料1に委員名簿がございますが、この順で、お一人当たり3分程度でまず御発言をお願いいたします。

それでは、まず、生貝委員、いかがでございましょうか。

【生貝委員】  御説明いただき、ありがとうございました。全体的に審議事項について、検討の内容を、適切に挙げていただいているかというふうに思います。

特に私自身関わりますところですと、バリューギャップ、あるいはプラットフォーマーと、そこから対価を受け取る事業者との関係性といったようなところは、本当に国際的にも国内的にも、急速に様々な制度、枠組みの構築と、その施行等が進んでいるところでございます。まさに国内的にも、そして国際的にも、そういった取組との歩調というものを合わせながら、こういった検討をしていくことが望ましいのだろうというふうに思います。

そして、特にこれから実態調査をしっかり横にも広げていくといったようなときに、電子書籍と、それから映像分野、本当にこれらいずれもデジタルプラットフォームの上で、全ての著作物のやり取りというのが今後なされていくことは間違いないわけでございますので、しっかりとまずは実態を把握するということに賛同するところでございます。

それで、1点、少しだけ視点を付け加えるとすると、こういった対価の還元という形ですと、やはり一つは実際の、具体的にどれだけの金額でコンテンツへの対価が支払われているかというところはもちろんあるんですけれども、やはりデジタル上のコンテンツビジネスというところですと、デジタル広告というものの比重というのは非常に大きいところで、今後もその重要性というのはより高まっていくという部分がある中で、広告に関わる透明性、あるいは収益、対価の配分といったようなところの在り方といったようなことも、これも今回取り上げる2つの分野に限らず、非常に重要になってくるところかなということを感じているところでございます。

そして、それから、この検討事項の中ですと、特にクリエイターへの適切な対価還元の将来の姿というところに関しまして、今回、私的録音録画補償金の制度に関わる事項というのが挙げられているところでございますけれども、やはりこれ、私自身の周りに限らず、様々な著作物に係るエコシステムの中で、よりクリエイターに対して適切な対価還元がなされていくべきだということについて、反対する人というのは本当になかなかいないという認識でおりますところ、やはりしかし他方で、この制度については、これまでの経緯というところも含めて、非常に様々な視点や議論といったようなものがある。本当にこの間にあるギャップというのは果たして何なのだろうか。まさに社会的な理解というものを得るために、どういった施策というのが今後求められているのか。やはりそのことをしっかり考えること自体にコストをかけて取り組んでいく必要があるところなのだろうというふうに思います。

こちらにいる先生方には本当に全く御承知のとおりというところでございますけれども、国際的にはこういった取組が非常に豊かな形で進んでいる国、特に欧州をはじめとしてございますところ、本当にそれらの国々で果たしてなぜああいった取組があれだけ社会的に広い理解を得て構築され、運用されてきているのかということも、改めてしっかり理解を深めつつ、今後の施策の在り方といったようなものを検討していくことが望ましいのではないかというふうに感じるところでございます。

私からはまず以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、今子委員、お願いいたします。

【今子委員】  今子です。まず、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策についてということ、クリエイターへの適切な対価還元方策について取り上げるということ、こちらについては適切ではないかというふうに考えております。

対価還元の実態把握として、電子書籍市場や映像など、実態調査を行ってしっかり把握をしていくという進め方についても賛同いたします。しっかり実態を見つつ、それをベースにした制度設計を行うことが非常に重要かというふうに考えております。

クリエイターへの適切な対価還元の在り方については、資料にもございますとおり、利用形態の変化や、新しい技術やその活用の動向など、市場の変化を踏まえた検討をしていくことが非常に大切かというふうに考えております。

私的録音録画補償金制度の今後の在り方については、変化する市場全体の中で、私的な目的の録音録画の位置づけ、実態がどうなっているのか、どうなっていくのかといった、著作物の利用全体を見渡した俯瞰的な視点の議論が必要であるというふうに考えます。

今回の過渡的な措置としての現行制度の対象機器の追加の是非といったことについても、パブリックコメントでいろいろと御議論、意見があったように思いますけれども、日本知的財産協会として出席をしておりますけれども、なかなか賛否両論があり、難しいところではあるんですけれども、しっかり議論をしていくべきかというふうに考えております。

以上になります。

【末吉主査】  ありがとうございます。

続きまして、上野委員、お願いします。

【上野主査代理】  上野でございます。全体を通しまして、3点、コメントさせていただきます。

まず1点目は、適切な対価還元方策という全体のテーマについてであります。日本では、適切な対価還元という言葉は昔からあるんですけれども、先ほど生貝先生からも少し御指摘がありましたように、これは国際的にも非常によく話題になる課題であります。

特にヨーロッパではそうでありまして、ちょうど3週間前にも、ポルトガルでALAI(国際著作権法学会)がありましたけれども、やはりそこでも結局のところ正当な利益分配というものが問題になっていたように思います。欧州デジタル統一市場指令に関して申しますと、15条のpress publisher’s rightにつきましても、また、17条のプラットフォーマーの責任等に関しましても、さらには18条以下の契約法に関しましても、結局のところ、著作者および実演家への適切な対価還元ないし、正当な利益分配をどのように実現するかということが問題になっているものと思います。そのような意味で、この小委員会が以前から掲げている適切な対価還元という課題は大変重要なテーマであり、その重要性は今後さらに高まってくるのではないかと思っております。

2点目が、今日の資料の4ページ目でございますけれども、欧州のDSM指令で、契約法に関する規定が設けられたという指摘があります。ヨーロッパでは、著作権法に著作者や実演家を保護する契約法を設けるのが一般的で、アメリカにも終了権がありますけれども、この欧州指令は、ヨーロッパの中で、著作権契約法に関する初めてのハーモナイゼーションをするということで、非常に注目されるところであります。最近、著作権法学会やALAIジャパンでも著作権契約法をテーマにシンポジウムを行いましたので、今後この問題に対して注目が集まることは大変結構なことかと思います。

ただ、現実にはなかなか日本で著作権法を改正して、場合によっては契約自由を一定程度制約するような契約法をつくるという方向になりづらいというのも事実かと思います。論点例のところで、競争政策との役割分担ということも指摘されておりますように、日本ではこういう問題は下請法で対処するとか、あるいはソフトローで取り組むという考えも強いかと思いますので、まずはそうしたことと連携しながら進めていくことが重要かと思います。

ただ、1点、先ほどの欧州指令には、透明性義務を課すというような規定(19条)がありまして、これは契約法規定とはいっても、当事者が合意した報酬額が低かったら事後的に増額させるというラディカルなものではなく、単に著作物利用者に利用状況等の報告義務を課すものですから、これは日本でも検討に値するのではないかと思います。

最後に、私的録音録画補償金制度の追加指定に関してであります。この問題は本当に長期にわたって議論されてきたものでありまして、確かに、一方では、私的複製というのは本来自由なんだという考えの下、こういった追加指定に反対する声もあり得るところかと思います。

ただ、他方では、ヨーロッパを中心に、クリエイター等に適正な利益分配を実現するための方策として、私的複製補償金制度が広く受け入れられているところでもあります。日本でも、1992年の改正以来、デジタル録音録画につきましては、私的複製補償金制度を有してきたわけでありますが、その内容は、特にヨーロッパと比較しますと極めて限定的でありますし、技術の発展に合わせて指定を行わなければ事実上機能しない制度になっております。ですので、もちろん一般ユーザーが私的デジタル録音録画をしない時代になったというのであれば、これに関する補償金を課す必要はなくなるかと思うんですけれども、まだ実態として私的デジタル録音録画が行われているということであれば、制度趣旨に沿って補償金の対象になるべきではないかと思います。そして、調査に基づいて実際にデジタル録画がなされる機器が対象になるということかと思いますので、結論として、私はご提案に賛成をしたいと思います。

ただ、パブコメでも、徴収した補償金について本当に適切な対価還元ができているのかというご指摘があるようですので、徴収された補償金の使途については、さらに検討が必要ではないかと思っております。

以上です。どうもありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、太田委員、お願いいたします。

【太田委員】  私の専門は法社会学で、事実と証拠に基づいた法政策とを非常に重視する学問です。したがって、今日の方針の全体について基本的に賛成させていただきたいのと同時に、実態調査を踏まえて、エビデンス・ベースに議論を進めていくという方針に大変賛成しております。もう少しそこを強調してもいいかなというぐらいに考えております。

それと同時に、DX化の時代は日進月歩ですので、ある意味、継続的に調査をし続けるシステムを構築して、新たな問題、新たなビジネスモデル等のもたらす問題の解決、言い換えれば、問題の適正な制御、すなわち権利者への適正な利益の還元と、利用者の便宜、利活用のしやすさというものを、両立といいますか、両方が同時に成り立つような形で政策をつくっていく必要があると思います。

それと同時に、生貝先生がおっしゃったように、他のヨーロッパとかアメリカ合衆国に比べて、日本ではなぜ制度が軋んでいるのかという問題については、多分、法意識とか、法文化とか、遵法精神とか、そういうものの相違が背景にあると思います。したがって、そこら辺りまで広げた調査研究も必要であろうと思います。

また同時に、多分、今、問題というか、非常に注目されている法教育、この分科会で言えば著作権教育というものも視野に入れた政策検討が必要だろうと思います。初等教育・中等教育における法教育の中で、権利尊重、知的財産権の保護という考えを身にしみこませるような方向も、この基本政策小委員会の課題と考えられるだろうと考える次第です。

実は、今日、ちょっとこれから調布の高校へ法教育をしに行くものですから中座しますが、よろしくお願いします。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、岸委員、お願いします。

【岸委員】  遅れて入ってすみません。慶應大学の岸です。基本的に事務局が用意してくださった方針には全面的に賛成です。私自身、やっぱりバリューギャップの問題はまだまだあるよなと思っておりますし、そういった観点から今回実態調査も踏まえ、よりしっかりやっていくと。その過程で、当然、ヨーロッパの例も参考にしながら考えていくという方向性は全く正しいと思っておりまして、そういう意味でしっかりやっていただきたいんですけれども、あえて問題提起をすると、そういうことをしっかりやりながらも、やっぱり新たな世のビジネスの動きというか、いろいろな流れというのは踏まえたほうがいいだろうなというふうに思っています。

例を挙げますと、私、仕事でバンダイナムコエンターテインメントのアドバイザーもやっているんですけれども、実はバンダイナムコは、2025年、大阪万博の段階で、ガンダムのパビリオンを出すんですね、そのタイミングでガンダムメタバースという完全フルスペックのガンダムの世界、メタバースをやります。そこでは基本的に、実は完全著作権フリーにします。二次著作権とか、二次的な権利であるとか、要は一切の権利を自由にして、要はガンダムファン、世界中にいるファンが二次創作物、これはガンダムのガンプラでいろいろさらに工夫した新しいものとかを含め、自由に作って、それを自由に見せることはもちろん、売買もできるようにすると。やっぱりそういう形のモデルをしっかりやっていかないと、今の時代、なかなかメタバース盛り上がらないよなという現実があるので、幸いガンダムに関してはバンダイナムコのほうでほぼ権利は全て持っているものでして、こういう決断をしたと。

こういった、やっぱりビジネスモデル的な観点で言えば、どんどん進化していまして、それはガンダムのように、自分で全部持っている場合はある程度できるよねと。これが当然、第三者が関わる場合、非常に利益分配の観点も含め難しい問題になると思いますので、そういったものをどう柔軟に対応できるようにするかというのをやっぱり意識として置いておく必要があるよなと思うのはありまして、あともう1個、ついでに余計なことを言うと、実はコンテンツって当然のことながら安全保障に関わるもので、この部分でもちょっといろいろ考えないとこれからまずいのかなと思う例が幾つかありまして、最近、中国が実は子供向けのアニメをYouTubeで出していまして、これ、実は世界的にすごく大人気です。これ、アメリカとか日本が創っているような感じのキャラクター、設定、ストーリーになっていまして、ちなみに中国という名前はほとんど出てきません。そういうのを結構世界中に、事実上著作権フリーで出していて、これが結構人気を博していると。明らかにやっぱり中国は、今の米中摩擦、世界との摩擦を踏まえ、ソフトパワー的観点から、この中国の影響力というのを広げようというのを戦略的にやっているよねと。

これに対抗するには、ぶっちゃけ言いますと、日本が対抗するのに一番楽なのは、ドラえもんをどんどん出しちゃうというのをやれば、はっきり言えば、中国には楽勝で勝てるんですけど、当然、これ、権利の問題はそんなこと無理なわけでして、こういう、どうしても今、安全保障で自由主義対覇権主義の争いがリアルの世界で激しくなる中で、明らかにそれがネットの世界にも来ていて、少なくとも中国はこういう著作権を、一応このアニメは中国の民間企業がつくっているんですけれども、恐らく政府は完全バックアップして、フリーのアプローチ、著作権フリーという形で世界に広めることで影響力を強めようとしているよなと。

こういういろいろな動きがあるのも考えると、当然、適切な対価がちゃんとやり取りされるようにするのは当たり前に必要なんですけれども、こういった安全保障的観点への対応で、より一層それがスムーズにできて、こういった、表現は悪いんですけど、将来的な中国対応、対抗も含め、柔軟にやれるようにするということは大事なのかなと実は最近思っております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、倉田委員、お願いいたします。

【倉田委員】  失礼いたします。長崎大学の倉田と申します。今回、このような丁寧に資料をおまとめいただいた事務局にまず感謝申し上げます。ありがとうございます。

お話を聞かせていただく上で、いろいろな論点例だったりとか、議題の例だったりとか、全面的に特に異論もありませんし、肯定的に捉え、どんどん進めて議論していきたいなと思いました。

特に早急に対応しなきゃいけないということで、ブルーレイディスクレコーダーにおける私的録音録画補償金の件、この件に関しても、最初の皮切りとしては非常に重要だと思いますので、これで終わりというわけじゃないと思うんですけれども、まずはそこから丁寧に対応していって、今後どういうふうなものに私的録音録画補償金をつけていくかというところの対応が必要かなと思いました。

私、専門が教育工学ですので、少し教育寄りというか、利用者も含めての視点でお話をさせていただければと思います。本来ならば、ちょっとクリエイターと利用者という、二項対立するのはよくないと思うんですが、そういうふうな観点も入れながら、少し話をさせてください。

まず、論点例の中に、私的録音録画補償金の対象機器の追加指定について、今回の指定に当たって留意すべきことは何かというふうなものがあったんですけど、私としては、並行して行うべきこととして、この措置について、まずは国民全体が理解、意識するということだと考えられます。この補償金制度によって設定された金額、これはやもすると、消費税よりも低かったりするわけで、そうなると、何となく知らないうちにクリエイターへ対価還元されていくというふうな流れになるような気がしています。

そうなると、いつまでたっても著作物とか成果物への敬意であったりとか、対価還元の必要性というものが国民全体へ普及啓発できないのではないかなというふうにちょっと考えるんですね。なので、日本国民のリテラシーの中に、やはり著作権の在り方というものが自然と醸成されていくような手立てを考えていく必要があると、今回の会議の中で強く思いました。

教育の中でも、著作権というのは情報モラルという分野の中で扱われるんですが、ただ、やっぱり情報モラルと聞くと、イメージとして、SNSのいじめだったりとか、デジタル機器への依存症だったり、そういったところが大きくクローズアップされて、著作権教育という法教育の部分がちょっと印象が弱いんですね。でも、一方、アメリカのほうでは、情報モラルという分野はデジタルシティズンシップという言い方をして、社会全体に対して自分がどう社会に参画していくかみたいな、そういうふうな考え方の教育がなされているものですから、日本も日本型の教育としてそういったものを取り入れながら、著作権というものを広く普及啓発する必要があるかなと思います。

もう一つ論点例の中で、電子書籍や映像などの分野で、調査に当たって明らかにしたい実態や留意点があるかというふうなことがあったんですが、これはちょっと個人的な興味というか、それになってしまうかもしれませんが、最近、漫画をサブスクで見るみたいなCMがすごくあるんですけど、ピッコマとか、そういうものが幾つかあるんですが、そういうものが適切にどうやって対価還元を行っているかというところは、少し詳しいところまで知りたいなというふうには思います。

あと、最後ですけれども、すみません、ちょっとこれ、教育的なというか哲学的な話になるかもしれませんが、対価還元という言葉を聞いて、ここで対価というのはお金のことだとは思うんですけれども、クリエイターが求めているのは本当にお金だけなのかな、もしかしたら名誉的な目に見えないものも求めているんじゃないかなとか、クリエイターとユーザーのニーズが合致するような制度というのも考えていけたらいいかなと思います。

時間を超過して申し訳ありませんでした。私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、河野委員、お願いいたします。

【河野委員】  日本消費者協会の河野です。御説明ありがとうございました。今後の検討に向けた論点については、御提案どおりで賛同いたします。

その上で、この間、著作権関連の各種検討に加わらせていただいた経験から、論点の洗い出しに加えてとても気になっているのが、決定までのスピード感と国民の当事者意識の醸成、その2点が不可欠な考慮要素ではないかというふうに感じています。

3のクリエイターへの適切な対価還元の将来の姿で問題提起されています私的録音録画補償金制度については、発案された当時は最善の策だったとしても、現在のように技術の進化とそれに伴う多様なサービスの提供がなされている状況において、誰もが納得できる適切な対価還元策かというと、さすがに疑問を呈されるのは致し方ないかというふうに思います。

私の周囲においても、クリエイターの皆さんへの適切な対価還元は当然守られるべき権利だという点は揺るぎないのですけれども、その手段として、対象機器の指定よりも、もっと今の実態に合った方策があるのではないかという違和感がございます。

また、こうした制度の存在やクリエイターへの対価還元方法については、残念ながら国民の多くは無関心で、知識のアップデートがありません。制度が設けられた経緯や、現在どのような議論がなされているかについてもほとんど知る機会がないのが実情で、国民ほぼ全部がクリエイターになり、かつ、利用者である今、国民を当事者として議論に巻き込むために、もう少し情報発信や、それから、教育課程の中でのこういった知識の拡散に力を入れるべきだというふうに感じています。

なお、この制度の施行に際しましては、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置という判断が併記されています。過度的な措置とするならば、対象機器の追加指定という負の循環から脱却して、DXを先取りした新たな対価還元策に対してスピード感を持って取り組むことが重要だと思います。

次に、コンテンツ利用と適切な対価還元策を検討するに当たって、4で問題提起されている件についてですけれども、文化的かつ経済的に我が国のコンテンツの価値を高めていこうとするのであれば、国内外の競争政策や、デジタルプラットフォームに関する他省庁の各種政策の動向についても当然フォローしつつ、最終的には相乗的な効果を見据えての対応をお願いしたいと思います。これまでの手法や考え方に固執し過ぎることで、日本の若きクリエイターや、それから多様なコンテンツの可能性を狭めることのないようにしていただきたいと考えます。

改めてここの検討に当たっては、決定までのスピード感と国民の当事者意識の醸成に留意していただければというふうに思っております。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。

次に、坂井委員、お願いいたします。

【坂井委員】  エンターテイメント表現の自由の会の坂井ですけど、冒頭カメラがつかず、出入りしてしまって申し訳なかったです。今期もよろしくお願いいたします。

冒頭、審議官がおっしゃられていた、クリエイター、それからユーザー、事業者という意味ではユーザーという観点で呼ばれたのかなというふうに考えております。

今期の主な検討課題2つというのについても、これでいいというふうには思うんですけれども、そして、クリエイターへの対価還元というものを否定するわけではないですけれども、テーマの設定自体も、割とクリエイターとか事業者という観点が大きいかなというふうに思っていますので、ユーザーという視点も漏らさないように議論していきたいというふうに考えております。

それから、具体的な論点についてなんですけれども、電子書籍と映像の話についてですけれども、文書の中では、1冊の電子書籍を1ダウンロードするのに対して課金するモデルみたいなことが書いてあるんですけれども、これ、実際は、私の理解では、所有権を得られるということではなくて、場合によってはサービスが終了すると見えなくなってしまうというようなところもありますので、調査に当たっては、例えば、過去に終了したサービスが、ポイントが返されたりとか、ほかのサイトに引き継がれたりとか、いろいろあると思うんですけれども、そういったようなことで、紙の本と比べたときの不利益というところが実際にどういうところにあるのかというところも併せて調査していただきたいのと、それから、コロナ前後で恐らくマーケットの状況というのはすごく変わっていると思います。あんまりと言っては変ですけれども、コロナ後のところである意味限定して調査をしていったほうがいいのかなというふうに思っております。

それから、DSM指令の件で、ユーザーアップロード型のサービスの規制の流れで、プロバイダ責任制限法の話があったかと思うんですけれども、まさにおっしゃられたように、競争政策とか、プラットフォーマー規制とか、そういう中でこの審議会でどこまでちょっと議論できるかというところは分からないんですけれども、プラットフォーマーが今までよりも内容を見て、これはいい、これは悪いということも含めて判断していくというところについては、表現の自由の観点から基本的にはよくないのかなというふうに思っております。

最後、私的録音録画補償金制度についてなんですけれども、これ、機器メーカーが権利者に対して払うというような形にはなっているんですけども、実際はユーザーが負担するというのが実態だと思っています。

そういった意味で、原則論としては、やっぱり私的利用は自由というところはあると思いますので、ここについては、きちんとユーザーとの細やかな意見調整とか、そういうことはやらなければいけないのかなというふうに考えております。

あとは、ユーザーという立場ではないんですけれども、東芝裁判でもありましたけれども、メーカーとの協議、今回ちょっと詳しく分からないですけれども、どこまでされているのかというと、あんまりされていないようなイメージを持っております。そういったところともきちんと調整をしていくということが必要なのかなというふうに思っています。

ユーザーからすると、例えばこの範囲というものがどんどんどんどん広がっていくことに対する不安というのは大きくて、例えば今はないかもしれないですけれども、クラウド保存されるような録画専用機器みたいなものが出てきたときに、クラウドに課金していくのかとか、そんなようなところの議論まで広がらないように、まず、今回の過渡的な範囲ではどこまでをやるんだよということは、きちんと国民に対して広く周知をさせていくということが大事かなと。

最後に、あとは、ユーザーからしたときに、この配分がどこにどう行っているのかというところがやっぱり見えづらいところはあると思います。ここについては、お金を取っていく以上、何らか分かるような形で改善をしていくということが必要なのかなというふうに考えております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

次に、菅委員、お願いいたします。

【菅委員】  よろしくお願いいたします。小説家ではありますけれども、クリエイターとしては、小説だけではなくて、音楽もやりますし、あと、Kindleの自費出版もしておりますし、グッズも作ります。あと、メタバース含むCGのほうで、Vチューバー的なシステムで配信もしておりますので、出す方、受け取る方、消費する方、二次創作にも割と理解がある方ではないかなと思っておりますので、何か質問がございましたら、個人的に言っていただければ、オタク語りをしたいと思っております。

ちょっとメモを読み上げる形になりますので、簡単になりますけれども、まず1つ、最近、サブスク批判のツイートを見かけました。かなり以前からあったのですが、私が見たツイートは音楽家の方で、「サブスク死んでしまえ」ぐらいの強いツイートでした。とにかく「どれだけ再生されたのか明確ではないし、自分にちっともお金が入らない。プラットフォーマーがたくさん取っている。レコード会社なども取っている。私に入っているのはこれだけなの」というようなツイートでした。

電子書籍は私が割と身近なのですが、ちょっと事前の打合せではなかなか見えにくいねということを言ったのですが、(カメラを資料に切り替え)これ見ていただくと、今、私の顔の代わりに数字が映っていると思いますが、Kindleです。ちょっと金額が少ないのは申し訳ないんですけれども、Kindleがいつの間にか改定されていて、とても詳しくなっています。ただし、情報機器の発展によって詳しくなり過ぎて、今までは1割以上読んだ場合は1冊売れたというふうに計算されていたのが、今回からはページ割になってしまいました。ということは、アンソロジーはどうなるの。10人のアンソロジーで1人の作家を目当てに買った場合、そこしか読まなかった。ページは少ない。じゃ、その少ないページを10人全員で割るのかとか、何か新たな問題がどんどん出てきているような気がしますので、電子書籍に関してはとても聞いてほしいことが山のようにあるというふうにお伝えしたいと思います。

今まで作家というのは、1冊売れた、その定価の1割を出版社から頂いて生活をしています。それがページ割になった、要するに、1部売れて1円2円みたいな、1ページ売れて何銭みたいなことになる。生活の考え方を変えていかなければいけないのかしらと思いました。初版何万部で、先に何百万円頂いてというような生活方式はもう望めないのかしらというふうに思っております。特に出版社、プラットフォーマーの配分の透明化というのは、ぜひ調べていただきたいと思います。

それと、私的録音録画、もはやこれも電子書籍にもちょっと関わるんじゃないか。例えば、Kindleだと、Mobiというんですけれども、Mobiという拡張子でないと読めないことになっています。ただ、スクショをすると撮れるわけですね。だから、そこら辺は私的なコピーであるのかどうか。昔は引用というと、手で書かなければならなかったんですけど、スクショ状態でどんどん撮っていけるというんで、ビデオ映像、音楽だけではなく、電子書籍に関してもコピーというのはもう電子でできる時代というのも念頭に置いていただきたいと思います。

あと、過渡期における機材、これはもう後手後手になってしまうのは仕方がないですし、過渡期であるということは重々承知していますけれども、いずれは機材にかけるのではない方法を選んでいかなければならないなと思っています。

それについては、先ほども坂井委員でしたっけ、お話がありましたけれども、物質か情報か、どっちにお金を払ってるんだというのを明確にしないといけない。今はお金を払って物をもらうというのが、もう成り立っていません。NFTでもそうですけども、お金を払って電子でもらっても、サ終、サービスが終了してしまうと消えてしまう。それを承知でみんなやっているのかというところも含めて、お金を払っている。そして、ちゃんとその対価が還元されるということを考えていかないと、もう物質的なものだけにこだわった考え方ではなく、電子情報としての対価ということも考えていただきたいなというふうに思いました。

以上です。取り留めなくて申し訳ありませんでした。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、田村委員、お願いいたします。

【田村委員】  ありがとうございます。私からは、皆さんの意見に賛成ですので、私的録音録画補償金に絞って、私の考え方をお話ししたいと思います。

今回のパブコメにも幾つかあったようですけれども、一般に知財のほうの学者の間では、現在、複製をコントロールしたり禁止したりすることができる、ダビング10が代表ですけれども、そういった時代で、複製がみんなできることを前提に、コントロールできない時代に導入された、その複製の補償としての私的録音録画補償金制度というのは、もはやもう時代遅れじゃないかとか、そんな形での異論があったりいたします。

ただ、私自身は、そういった考え方の前提にあるもの、それがつまり、著作権イコールコピーライト、著作権は複製に及ぶという、そこはもう金科玉条のように、そこを絶対前提として、そこから物を考えていくという発想がその背後に透けて見えるわけですけど、そうした前提自体に疑問を持っています。

もともとやはり本来は複製回数とかではなくて、著作物の利用価値に応じた対価の還流がなされるべきじゃないかと思われるわけですが、ただ、当然のことながら、利用、たとえば読書に対して権利行使するなどという制度を導入しましたら、読書をする方はものすごくたくさんいて、たくさんの回数行われますから、権利行使できるわけない制度になってしまいます。そこで、著作権制度が現在のようなものに確立していった時代には、行為者がまだ限られていた、出版社、レコード業者、映画制作会社などに限られていて、権利を及ぼしても、煩雑に過ぎるわけではない、そして利用の量をある程度反映して、複製に権利が及ぼされ、それが維持されてきた、そういうふうに理解すべきだと思っています。

もちろん皆さんよく御存じのように、時代は変化いたしまして複製の読書化ということを、時々、私言ったりしますけれども、つまり、複製が皆さんできるようになって、行為者が多数になって、回数が多数になって、複製が昔の読書と同じような状況になったわけですね。そうすると、権利処理が困難になりますので、そのような状況で、現行著作権法が私的複製を原則は自由として、著作権の制限を明文化したのは、大変賢明な判断であったと思います。

しかし、他方、その分、そこを自由にした分、今度はどこから対価を取っていくのかということを考えていく必要があります。そういたしますと、昔、読書には取れないけど、権利処理がある程度できる、監視もある程度容易だった、そういった昔の複製に対応するものが近くにないのかといった発想が必要になってくるわけです。それが、例えば、レンタルレコード店の興隆に応じて制定された貸与権だったり、この私的録音録画機器媒体に対する課金制度だということになります。

つまり、著作物の利用の近くで、そして、著作物の創作に恩恵を受けている行為であって、行為者がいまだ限られているものに対価を取る対象を移していくんだという発想で出来上がっている制度だと理解しているのです。

何でこんなことを申し上げるかというと、要するに、複製はあくまで利用価値のメルクマールであったはずなので、複製に対する権利がある。その複製がコントロールできるようになっているのだから、もうその対価は要らなくなるという発想は実は疑問があると思うということです。

なので、ブルーレイは極めて当然だと思いますが、複製専用機にこだわるとか、あるいはそもそも複製の有無にこだわるといった形ではなくて、今、文化の創作、文化の発展のために必要な、まさにクリエイターに対する対価を還流するところに、どこからお金を取るべきかという発想で考えていくべきではないかと思っております。もちろん今回の改正は当然ですし、また、過渡期であると思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは、中川委員、お願いいたします。

【中川委員】  中川でございます。本日から参加させていただくことになりました。皆様、よろしくお願いいたします。

私も、適切な対価還元策の実現が重要な課題と認識しております。その際に、プラットフォーマーとの契約に基づく対価の還元が十分であるかという視点は重要だと感じますし、その実態調査の必要性についても異存はございません。

併せまして、先ほどの事務局からの御説明でも、DSM指令の17条やプロバイダ責任制限法の御案内がありました。残念ながら、現在もインターネット上には侵害コンテンツが多く見受けられる現状があると思います。そして、権利者から権利行使がされるまでは、侵害コンテンツの配信が継続し、その結果、違法行為者のみならず、サービスの提供者側、プラットフォーム側にも収益が生じる構造になっていると思います。もちろん悪いのは違法行為者でございまして、多くの誠実な事業者は、侵害コンテンツの配信を積極的に望んでいるわけではないのだろうと思います。ただ、事実としては、侵害コンテンツからも、サービス提供者側にも収益が生じる構造になっていると思います。

こういった形で、契約に基づかない侵害行為によってもバリューギャップが生じているのだという視点も、私としては非常に重要だと感じております。

続いて、私的録音録画の補償金についてでございますが、補償金制度を採用している現行制度においては、機器の指定が整合的であると、私としても考えております。タイムシフトによって損失が生じるのかという議論もあるようですが、例えば、広告モデルを採用している民間放送局としては、録画視聴される結果、CMがスキップされた視聴が増大するということになれば、経済的な不利益が生じるという構造があると思います。すなわち、録画視聴とリアルタイム視聴とでは大きく異なるという現実があると私は思います。

その上で、今回の機器指定については、私のような意見もあると思いますけれども、先ほどの事務局からの御説明のとおり、反対意見も含めて、いろいろな御意見があるところだと承知しております。

また、補償金制度については、先ほど「過渡的な措置」との位置づけである旨の御説明もいただきましたけれども、私としても、中長期的には新たな対価還元策をどう実現するかということが大きな目標であると考えております。また、そうした対価還元の必要性それ自体は、少なくとも総論的には世の中からも広く賛同が得られてよいテーマだと感じております。

そういった状況において、社会的に大きな対立を残したままの状態で機器指定が行われることが、将来に向けて必要以上に対立的な状況を生じてしまわないか、あるいは対価還元策を講じること自体にネガティブな印象を持たれてしまわないかということは、私としても懸念するところでございます。

先ほどの事務局からの御説明でも、「社会的な理解」の重要性に言及されていたと思いますし、また、パブコメに対する文化庁の考え方としても、資料1ページの項目4番で、「円滑に運用されるためにも関係者の理解が重要であると考えています」という考え方をお示しされておりました。私としても、こういった観点は非常に重要だと感じております。

私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、中村委員、お願いいたします。

【中村委員】  iU、中村伊知哉でございます。2005年の補償金をめぐる対立や、2008年のダビング10をめぐる調整に関わった記憶から見て、ブルーレイディスクレコーダーの指定に折り合いがつくとすれば、ネット化の進展はじめ、コンテンツ流通構造の変化や日本の機器産業の立ち位置の変化など、多くのことを物語ります。新たな対価還元策というのは、その変化を踏まえた次元のものとする必要があると思います。

その際にポイントが2つあると思います。まず1つ目、還元というのはどこからの還元なのか。これ、田村さんの指摘に重なります。これまでは機器製造からの還元というのを議論してきたんですけれども、それが、では、プラットフォームなどのネット事業者なのか、スマホユーザーなどの電波利用者なのか、広く一般、つまり、納税者なのか、そのイメージによって取り得る選択肢も変わるでしょう。

それから、2点目、公共経済、公共政策として、どの程度の還元が妥当なのか。本来コンテンツに来るべき対価が逸失していると。ないしは、ほかに流れている。その市場の失敗が理由なのであれば、それは量的に幾らで、どこに逸失利益が流れているのか。あるいはコンテンツの外部経済とか波及効果というのはどの程度なのか。これがデータで示されて、政策が立案されるべきだと思います。基礎データで語りたいところです。これが不足しているのであれば、調査とアカデミックな分析、研究が必要だと思います。

関連して、3つ目のポツにあります社会的な利益というのは、極めて重要だと思います。かつ、かつてソフトとハードは、コンテンツと機器の産業はむつまじい関係でありました。機器メーカーがレコード会社を持ったり、映像会社を経由したりしていた。いつしか対立するようになって、今日に至る。気がつけば、アメリカのIT企業が市場を握っていると。これは、関連産業の経営戦略の問題であるだけではなくて、役所を越えた国家産業政策の問題でもありますし、そして、コンテンツの生産や消費をどう大切なものとして扱うのかという教育問題でもあろうと思います。何らかここで大きな問題提起をしてみたいと考えます。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、仁平委員、お願いいたします。

【仁平委員】  日本ネットクリエイター協会の仁平でございます。よろしくお願いします。

御説明いただいた方針に関しては賛成でございますが、幾つか具体的な懸念点といいますか、希望のほうを話させていただきたいと思います。

まず、適切な対価還元というところで言いますと、対価還元の計算方法そのものを見直す可能性もあるんじゃないかなと思っています。先ほど菅委員からもサブスクのお話がありましたけれども、現状、サブスクの対価還元というのは、全ユーザーが支払った使用料が仮に分母で、分子のところにその楽曲のトータルの再生時間の按分みたいな形でやっていると思うんですけれども、テクノロジーが進歩してきたことによって、ユーザーごとにどのぐらいの楽曲を聴いているかということを目安に分配するということも多分できるようになってきていると思います。そういう事例がヨーロッパにあるということも聞いています。

例えば、1,000円払ってSpotifyを聴いている人が、いや、僕は実は全部の時間、1か月、黒うさ君の「千本桜」しか聴いていないよという人もいると思うんですよ。そういった場合には、その1,000円というのは全て、1,000円の中から捻出された著作権使用料とか、原盤使用料は黒うさ君に返るべきじゃないかなというふうに思っています。今まではそういう1人ごとの分配というのはなかなか難しかったと思うんですけれども、テクノロジーの進歩によってそういったことも可能になってきているということを受けて、今後、計算方式というものの見直しも積極的にしていただきたいなと思います。

次に、私的録音録画に関しましては、基本的に徴収された補償金が具体的にどのようなルールに従ってクリエイターに還元しているのかというところを、分かりやすくオープンにもっとしていただければなと思います。特に私の場合はUGCのクリエイターの代表みたいな立場なので、ボカロ楽曲等が本当にその分配対象になる楽曲なのかなという心配があります。もし例えば、UGC楽曲もこういうような登録をしておけば、私的録音録画補償金の分配対象になるよというアナウンスがあれば、積極的にそこに登録してみようという話も出てくるのかなと思いますし、そういった仕組みというのも必要なのかなと思います。

もしかしたら僕が知らないだけで、先生たちは皆さん御存じなのかもしれないんですが、UGCをやっている人間は、その辺まだまだ全然分かっていないと思いますので、その辺の告知、開発等が必要なのかなと思います。

あとは、要は、今後の課題にこれもなるんですけれども、各ハードディスクレコーダーにしろ、ブルーレイにしろ、最近の機器はほとんどがインターネットに接続していますので、実際にどういう楽曲がそこに私的録音されたのかというのを、将来的には多分把握できるようになるんだと思います。

なので、将来的にはそういったことをテクノロジーの進歩によって、実績ベースで配分していくということを念頭に入れていただき、さらにそれをきちんとクリエイターに、将来的にはこういうことを考えているんだよというのを告知していただくということで、よりクリエイターさんからしてみたら安心感が出てくるんじゃないかなと思います。

あとは、先ほどのアンケートにもあったんですけれども、実際にほとんどの方、今クラウドで好きな楽曲を保存しておくというパターンが多いんで、今後はクラウドも私的録音録画についても、何か媒体として認識できるような形というのが出てきたらいいなと思っております。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、畑委員、お願いいたします。

【畑委員】  日本レコード協会の畑でございます。昨年度から続けて参加させていただきます。よろしくお願いします。

まず、資料3-1号に示されました今期の検討に向けた論点例、進め方については、基本的に全面的に賛成をさせていただきたいと思っております。

その上で、2つのポイントについて少しコメントを述べさせていただきます。

1つは、昨年度の後半から検討が始まりました、いわゆる「バリューギャップ」の問題、また、それに関連して、EUのDSM著作権指令の規定との関係でございます。昨年度小委員会の後半でまずは音楽分野の対価還元の実態、特に著作権等管理事業者に対するビッグプラットフォーマーからの対価還元の実態、そういった点に焦点が当てられて、実態把握の調査が行われ、その結果報告がされました。今期は、電子書籍、映像等について同様に調査を進めて、実態を見ていくという進め方については全く賛成でございます。そのときに、昨年度行いました音楽分野との比較が容易にできるような調査の進め方、まとめ方をしていただければと思っております。

また、EUのDSM著作権指令との関係で申しますと、特に私としては、第17条のユーザーアップロード型サービスにおける行為主体の規定の在り方について、是非検討を深めたいと思っております。

御存じのとおり、通常、日本の規定においては、行為主体はあくまでアップローダーであって、プロバイダ責任制限法の定めによって、プラットフォーマーは一定の要件を満たせば賠償責任を負わないということですが、そこを踏み込んで、ビッグプラットフォーマーについては行為主体になるということをEUはDSM著作権指令17条で規定したわけであります。そこが行為主体となることによって、侵害対策もさることながら対価還元の問題についても非常に大きな進展が得られるのではないかと私は想定をしております。それらを踏まえまして、是非ここについては検討を深めたいと思っております。

ただ、プラットフォーマーの問題につきましては、著作権法の手当だけで全てが解決するかというと必ずしもそうではなくて、モバイル・エコシステムの検討、公平な競争の観点からの検討等、様々な検討が他の政府審議会でも行われておるというふうに認識しておりますので、それらの検討状況も踏まえながら、我々の検討を進めていければと思っております。

もう1点、クリエイターへの対価還元の現状と将来の姿という点についてですが、今回、私的録音録画補償金に関して、ブルーレイの新たな追加政令指定について報告と意見が出されております。私的録音録画補償金というのは、言うまでもなく、私的複製が著作権法30条1項の権利制限で割と幅広に認められている中で、そのうちデジタル方式の私的録音録画について、30条3項で補償金制度が設けられており、その運用として、今回、新たな追加指定が提案されているということでございます。

将来の姿ということをまず申せば、これはこれから検討するところですが、コンテンツ産業の姿も複製だけに依拠したビジネスではなくなっておりますし、流通モデルも必ずしも複製に依拠したモデルだけではなくなっている。また、メタバースといった環境変化、ビジネス環境の変化、様々なプレーヤーがコンテンツのクリエーションサイクルに関わるようになってきたということも踏まえながら、これから検討していくべきだろうと思います。

そのときに、デジタル環境ということで、利用実態をかなりミクロに捉えることができるとは思いますが、これもなかなか難しいのは、あまりにもミクロに捉え過ぎると、やっぱりコストがかかってくると。処理コストが膨らんできますので、ミクロに捉えつつも、ある程度どこかでマクロに捉えることとのバランスを踏まえて検討していかないといけないのかなと思っております。

その中で、現行制度の私的録音録画補償金制度というのは、まさにざっくりとしたマクロな制度ではあります。その中で、先ほど分配の話が出ておりましたが、我々レコード協会も含め、指定管理団体を構成する権利者団体は、マクロの中でも合理性のある方法を考え、分配等の業務をしておるということでございます。ここについては、情報公開、情報共有がもう少し必要なのかなということを、今、お聞きする中で思いました。

また、この制度については、私的録音録画というものが著作権法30条1項の下で、何も手続なく自由にできると。それによってユーザーは、特にデジタル方式の複製についてはハイクオリティーな複製物を残し、それによる利益を享受できていると。それに対して、クリエイター、権利者にも一定の対価還元をしないといけないという補償金制度であるわけですが、先ほど中村委員のお話にもありましたが、2005年あるいは2008年のダビング10、その辺からずっと悶々として解決されてこなかった課題であります。これから検討される次世代の対価還元施策が導入されるまでには、まだある程度時間がかかります。20年来この問題が解決されてこなかったことにより、その間、言うなれば、失われた権利者の利益というのもあります。そこについてこれから遡及するという話では当然ないわけで、そういった状況だからこそ、過渡的という言い方ではありますけれども、今現状の失われている利益を何とか補償しようという取組みが、今回のブルーレイの追加指定だと思っておるところでございます。そのような観点から、丁寧にこの議論を進めていければと思っております。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、丸山委員、お願いいたします。

【丸山委員】  今期よりお世話になります。丸山です。よろしくお願いいたします。

それでは、政令の改正について、今回、政令改正案によって、ブルーレイディスクレコーダーを追加指定すること、機能不全に陥った私的録音録画補償金制度を抜本的に見直していくためのこれは初めの一歩だと思っております。制度が機能不全に陥ったまま長い時間過ごしてきて、これまでに権利者が失った利益は計り知れないものだと思っております。今回の指定については、突然出てきたというふうにおっしゃっていたところもありますが、これは別に突然出てきた話ではなく、3年前の保護利用小委員会で決まった、現行の制度に代わる新たな措置が決まるまでの間、現行制度の範囲内で可能な措置を過渡的に行うという方向性を踏まえた上で、4省庁間で検討を経て得た結論だと聞いております。今回の指定を確実に実行に移していただいた上で、一日も早く制度がより適正かつ円滑な方向へ修復が進むように心から期待しております。

そして、今回のパブリックコメントの追加指定に反対する声ばかりではなくて、様々な賛成意見が寄せられたというこの点は、この問題に改めて国民が関心を持ってくださっていると。増えているという証拠だと思っております。過去のこれまでの議事録なども拝見いたしまして、ユーザーの私的な利便性を確保することに対するクリエイターへの対価の還元の必要性を否定する方は一人もいらっしゃいませんでした。

引き続き著作権の保護、クリエイターへの適切な対価還元の重要性について、より一層の普及啓発に取り組むことで、国民の皆さんの理解度をもっと高めていく必要があると思っております。

それから、DX時代におけるクリエイターへの対価還元について、DX時代での私的録音録画補償金制度の今後の方向性について、私的録音録画の実態に即して、クリエイターへの対価還元をきちっと実現できるための制度にしなければ意味がないと思います。具体的な制度設計については、現行制度がなぜ機能しないのかという点を踏まえながら、諸外国に比べてもはるかに自由度が高い日本の権利制限規定とのバランスの中で、ほかに加えていくべき要素があるとすれば加えていただいた上で、幅広い視野で検討を進める必要があると思っております。

あと、資料3-1のDSMの指令第17条、18条から22条を詳しくお書きいただきましたが、バリューギャップ問題、実演家の公平な報酬の在り方については、様々な分野の実態把握と課題の整理を進めた上で、こうした諸外国の取組も参考に、DX時代におけるクリエイターへの対価還元を実現するための方策を検討していくという方向性に賛同しています。

これらの問題の解決に向けて、具体的な検討を進めるためには、当事者間の契約、対価の還元の実態など基本となるデータも重要です。こういったデータの収集についても、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

それでは、最後に吉村委員、お待たせしました。お願いします。

【吉村委員】  ありがとうございます。もう最後になるとなかなか目新しい話をするのは難しいのですけど、私的録音録画補償金の話は、本当に長々と議論されていて、今回、ブルーレイディスクレコーダーが一つ具体的に出てきたということで、これまでの関係者の皆さんの議論に対しまして、大変だったと思いますが、敬意を表したいと思います。

他方、やはり議論のフレームワーク自体が時代遅れになっているという感じは否めないと思っています。多くの方がおっしゃっているとおり、テクノロジー自体、もしくはサービス、ビジネスモデル、それからクリエイター自身など、いろいろな面を考えても、高度化・多様化しており、デジタルの力をうまく使いながら、まさにトランスフォーメーションが起こっているという状況だと思います。そうした中、過渡期という表現も書いてあり、皆さんで認識を共有しているところだと思うのですけど、まさに今後この延長線上のフレームワークの中で新しい機器を追加するといった話を続けていくということではないだろうと思います。

ということで、将来のあるべき対価還元策については、諸外国の調査なども行いながら、まさにクリエーティブな議論をするということが非常に大事であると思います。

あと、ちょっと気になるのは、これまでずっと文化庁というか、文化審議会において、クリエイターへの適切な対価還元という表現が使われてきていて、これについては、クリエイターの方々にしっかりと対価が還元されるということは当たり前で、当然のことであり、誰も反対しない、非常に重要なことという前提はもちろん広く認識されていると思うわけですけれども、それに加えて、ユーザーとか社会とか、そういったところから見て、公正だとか透明性があるとか、納得性が得られる、賛同したい、応援したいと思えるような制度にしていくことが大事だと思います。

そういう意味では、制度設計については、広くいろいろなステークホルダーの方々を巻き込んで議論していくことが重要だと思います。また、この分野は、日本のこれからの成長戦略とも関わってくるところでございますので、関係省庁が行っている産業政策だったり、競争政策だったり、いろいろな政策との整合性もつけながら、本格的に議論したほうがよいと思います。

その中で、一般の方々含めて、著作権制度、そしてクリエイターの方々への対価還元についての理解とポジティブな賛同の機運をつくり上げていくことも含めてできたら、一番望ましいと思っております。

私からは以上です。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、ただいま皆様に1回ずつ御発言をいただいたんですが、さらに補充をなさりたい方は、恐縮ながら、おられますでしょうか。

菅委員、どうぞ。

【菅委員】  すみません。手短にまいります。誤解があってはいけないので、ちょっと補充をいたします。

テクノロジーの発展によって、この人がこの時間というふうに細かくなるのは私はいいことだというのは、仁平さんと同じ意見です。ただし、あまりにも細かく指定していくと、新人が育たない。例えば、アンソロジー的コンピレーションCDなんかでも、それこそ黒うさPさんというのを目当てに買った人が、一緒に入っていたDecoさんいいなとか、八王子Pさんいいなみたいな、そういう出会いの場が少なくなる。その人たちは、黒うさPさんだけということを単品買いしてできることがお得なわけですけれども、そうなると、新人が育たなくなる環境も後ろに控えているということはちょっと申し上げておきたいので。単品でピンポイントで欲しい、それこそ通販、ずっとサイトを見ていると、同じようなサイトばっかりプッシュで押されてきて、ほかのものが見えなくなる。そういうのじゃなくて、ほかにもあるんだよというような選択肢が望めるような、いわゆる分配とともに広告も、触れ合いの場もというふうな立場で調査していただければいいかなと思っています。

あと、ユーチューブ、ニコ生のほうでは、この曲は使ってもいいですよというふうに、このサイトではこの曲使えますということになっています。これは去年からしたら、とても進歩した安心な仕組みだと思っていますが、その曲の場合は、ちゃんと払えているのか。または、ただでもいいからみんなに使ってほしいという人の無料提供なのかということも気になります。

というのが、Kindleインディーズというのがありまして、Kindleインディーズは新人さんが自由に発表するわけですけれども、基本、無料で読んでいただけるんですね。Kindleパブリッシングのほうから、ダウンロード数に合わせて対価が払われるという仕組みです。

ただ、pixivとか二次創作系も含むところになりますと、どんなにダウンロードされても、pixivからお金は頂かないわけです。そういう、いろいろなサイトがいろいろなもくろみでやっている、そのばらばらな状態をちょっと一回俯瞰してみたい、新人を育てるという意味でも、どう分配されているか俯瞰したいというのが私の意見になります。よろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかに補充されたい委員はおられますか。

生貝委員、どうぞ。

【生貝委員】  DSM著作権指令の話は、着目をぜひしていくべきだと思うと同時に、やはり特にここ数年のEU法というのが、いろいろな分野の法制と非常に複雑に相互依存する形でつくられており、わけてもDSM著作権指令との関わりでは、そろそろ官報に載って、来年から施行されるデジタル市場法、これは先ほど畑委員からも少し言及があったモバイル・エコシステムという現代のデジタル情報環境全てのつくり方を変えるくらいの影響力を持つものでございますし、クリエイターとプラットフォームとの関わりでも非常に大きい。さらに、直近ですとメディアフリーダムアクト、メディア自由法と呼ばれる法案の中でも、まさしく様々な対価に関わる透明性といったようなところも取り扱われているところであり、そこは少し広めに取っておく必要が、海外、特にヨーロッパを見るときはあるかなと感じています。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。

ほかにはいかがでございましょう。よろしゅうございますか。

ありがとうございます。それでは、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策につきましては、本日いただいた御議論を踏まえまして、次回以降、1つずつ論点について議論を深めてまいりたいと思います。

私的録音録画補償金に関しましては、今回の政令案については、過渡的な措置として政府において検討を進められてきたところと思いますが、本日の議論も踏まえまして、政府としての対応を進めていただきたいと考えております。

また、制度の在り方につきましては、本小委員会においても、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策を議論する中で、さらに検討してまいりたいと考えております。

そのほか、全体を通して何かさらに御発言、おありになりますでしょうか。よろしいですか。

ほかに特段ございませんようですので、本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いします。

【木南流通推進室長補佐】  本日は、活発な御議論、どうもありがとうございました。

次回の本小委員会につきましては、日程調整の上、改めて事務局より連絡させていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【末吉主査】  それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第1回を終了とさせていただきます。本日は長時間、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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