議事録

文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第4回)議事録

日時:
平成25年1月25日(金)
10:00~12:00
場所:
文部科学省東館3階 3F1特別会議室
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPO等における最近の動向について
    2. (2)政府間協議の対象国の拡大について
    3. (3)政府間協議等の報告
    4. (4)平成24年度 国際小委員会の審議の経過について
    5. (5)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

○10:02開会

【道垣内主査】 よろしゅうございますでしょうか。時間になりましたので,ただいまから第4回国際小委員会を開催いたします。
 本日は御多忙の中御出席いただきまして,ありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては,予定されている議事の内容を参照しますと,特段,非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方には御入場いただいているところでございます。この点,特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということにいたしまして,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにいたします。
 では,審議に入ります前に,まずは配付資料の確認と事務局の人事異動につきまして,御紹介いただけますでしょうか。

【堀国際著作権専門官】 事務局から配付資料の確認をさせていただきます。まず,議事次第に基づきまして,資料1から4,参考資料1から3がございます。
 資料1が,WIPO等における最近の動向について。資料2が,政府間協議の対象国の拡大について。資料3-1が,第6回日韓著作権協議の結果概要について。資料3-2が,第4回日韓著作権フォーラムに関する報告。資料3-3が,第37回日台貿易経済会議に関する報告。資料4が,平成24年度国際小委員会の審議の経過について。参考資料1としまして,第12期文化審議会著作権分科会国際小委員会委員名簿。参考資料2といたしまして,今期の国際小委員会の進め方について。参考資料3といたしまして,第3回国際小委員会の議事録をつけさせていただいてございます。
 また,事務局の人事異動がございましたので,御紹介いたします。1月15日付で,文化庁長官官房著作権課課長補佐として,前任の壹貫田の後任といたしまして,菊地史晃(あき)が着任してございます。

【菊地著作権課課長補佐】 菊地です。どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】 よろしゅうございますか。
 それでは議事に入りたいと思います。この表書きにありますように,議事は5つございまして,WIPO等における最近の動向について,政府間協議の対象国の拡大について,政府間協議等の報告,平成24年度国際小委員会の審議の経過について,その他ということですが,4番目が本日の大きな議題だと思います。また,今回は今年度最後の国際小委員会でございます。まず議事の1番について,事務局より御説明いただきまして,その後,委員の皆様に御意見をいただきたいと思います。
 では,よろしくお願いします。

【堀国際著作権専門官】 事務局から,資料1に基づきまして,WIPO等における最近の動向につきまして御報告いたします。前回,第3回の国際小委員会が12月4日に開催されまして,それからのアップデートということで,1つ会議がございました。視覚障害者等の方のための権利制限及び例外についてという議題に特化いたしまして,昨年12月17日から18日にかけまして,ジュネーブで第42回WIPO加盟国総会及びそれに引き続きまして,視覚障害者等の方のための条約を採択するための外交会議の準備委員会が開催されてございます。
 まず,WIPO加盟国総会ですが,こちらはアジェンダといたしまして,視覚障害者等の方のための権利制限及び例外に関する条約を決定するかどうかという点が審議事項だったのですが,結果といたしまして,その条約を採択するための外交会議の開催が決定されてございます。また,開催地といたしましてはモロッコが立候補いたしまして,承認されてございます。ただし,その一方,中身の議論はまだまだ外交会議の前にたたき台として議論されるべき事項がかなりございましたので,そちらを外交会議前の2月にSCCRの特別会合という形で開催することもあわせて決定されてございます。事務局の原案では3日間とされていたのですが,会合の結果,会期を5日間に延長して開催すること,SCCRの特別会合に外交会議の準備委員会を開催しまして,さらなる会合が必要かどうか判断することになってございます。条約草案といたしましては,前回11月に開催された第25回のSCCRでまとめられましたテキストがそのまま,これはSCCR/25/2という文書なのですが,そちらが外交会議の基本提案ということが確認されてございます。更に,2月の特別会合の議論の結果を踏まえて,その基本提案をリバイスすることもあわせて決定されてございます。各国は外交会議においてさらなる提案を行えることが改めて確認されてございます。
 更に,WIPO総会に引き続きまして,12月18日に外交会議の準備委員会が開催されてございます。準備委員会は,基本的には開催地,開催期間,実体条項とは別の管理条項,最終条項を議論する場でございます。こちらで,外交会議の開催地,開催期間につきましてはモロッコのマラケシュで本年6月16日から30日にかけて開催されることが決定されてございます。また,条約の管理条項,最終条項についても議論されてございまして,締約国の資格につきまして,WIPO加盟国であれば加盟できるという原案に対しまして,ベルヌ条約,TRIPSの加盟国に限るべきという提案もされてございます。条約の発効国数につきましては20か国とすべき原案と30か国とすべき提案がなされまして,これらの点につきましては引き続き議論されることになってございます。
 簡単ではございますが,以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございます。ただいまの御説明を踏まえて,御質問等ございますでしょうか。
 私から1点お聞きしたいのですが,この中身はこの前御説明いただいたと思いますので,特に変更はないのでしょうけれども,最後の方に書いてあります締約国の資格を制限したり,あるいは発効国数を増やすという点についてです。前者は一定の保護水準がある国でないと困りますというのでわかりやすいのですが,後者の発効させにくくするというのは,どういう意図があってのことなのか,御説明いただければと思います。

【堀国際著作権専門官】 20か国との提案につきましては,事務局からの原案でありまして,20か国とした説明ぶりといたしましては,WIPOの過去の条約のベルヌ条約やWCTといった条約の平均値,中間をとったという説明がなされてございます。ベルヌ条約や古い条約ですと(発効国数が)5,6か国とした条約が多うございまして,その一方,最近の条約ですと30か国というのがかなり多いと存じております。(30か国の提案の説明としては,)WCT,WPPT,北京条約は30か国であり,最近のトレンドは30か国ですので,30か国とすべきではないかという説明がございました。

【道垣内主査】 わかりました。私が先ほど言ったこととは理由が違うわけですね。むしろ,原案の提案の仕方が異例かもしれません。最近のトレンドとは違う数字が出てきたので,30か国にしたらどうかということですね。

【堀国際著作権専門官】 そうです。

【道垣内主査】 そのほか,何かございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。それでは,この点は以上にさせていただきます。
 続きまして,議事の2番目でございます。政府間協議の対象国の拡大につきまして,これも資料に基づいて,事務局からまずは御説明いただきたいと思います。

【都築海賊版対策専門官】 それでは,お手元にお配りいたしました資料2「政府間協議の対象国の拡大について」に基づきまして,御説明させていただきたいと思います。
 資料としてお手元にお配りしております「今期の国際小委員会の進め方について」にも言及されておりますが,インターネットにおきます海賊版の対策に関する議論の中で,特に留意すべき対応の1つとしまして侵害発生国との間の関係強化あるいは普及啓発が掲げられております。これにつきましては,文化審議会著作権分科会報告書を平成23年1月に出させていただきましたが,そこにおきまして,皆様の御議論をもとにいたしまして,インターネット上の侵害に対する今後の対応としまして,2つの議論が課題としてまとめられております。1つは,現在,中国,韓国,台湾との間で政府間協議を実施しておりますが,その対象国を東南アジア等にも拡大していくことが望まれる点でございます。もう1つは,現在,コンテンツ海外流通促進機構等が権利者の団体としてまとまって権利執行をしておりますが,そのような活動を引き続きサポートしていく必要がある点でございます。
 前期の,国際小委員会の議論につきましては,こうしたCODAあるいは日本レコード協会からのヒアリングをお伺いいたしまして,現在,団体として海外で侵害対策をしていらっしゃる方に対して,今後どういった対応が必要なのかというお話をお伺いいたしまして,そこでのヒアリングをもとにいたしまして,昨年度の審議経過のまとめにおきましては,こうした権利者の方々のヒアリングにおきまして,インターネット上の違法コンテンツ等の侵害対策,権利執行に対する今後の対応について,引き続き侵害発生国の関係機関との連携強化,違法コンテンツの流通防止に向けた意識啓発の促進などが今後とり得る対応なのではないかという御意見をちょうだいしたところでございます。これは,昨年度の国際小委員会の審議の経過におきまして,まとめさせていただいているところでございます。これを受けまして,今期の国際小委員会の進め方として,関係国との関係強化,侵害発生国との政府間協議の強化という点を今回の議題としてここに御説明をする次第になっております。
 お手元にお配りしました資料2を1枚めくっていただきますと,「著作権分野における二国間協議等の進ちょく状況」におきまして,現在までのところ,文化庁が侵害発生国との政府間協議を実施しておりますが,これは現在,中国,台湾及び韓国との間で,年間,定期的な協議を実施させていただいております。中国とは平成14年度から,韓国とは平成18年度,台湾とは日台貿易経済会議に参加をするという形でございますので,それ以前からでございますが,実施させていただいております。日中の政府間協議に関しましては,平成14年度に定期協議を実施しました後,平成22年度に両国との間で覚書を締結いたしまして,両国の間の関係強化に努めているところでございます。それ以外にも,外務省あるいは経産省が実施しております日中間の経済協力でございますとか,知的財産の保護に関する会議におきましても同様に関係局との間での交渉に努めているところでございます。
 台湾につきましては,日台貿易経済会議に参加するという形で,年間の定期協議をしているところでございます。
 韓国におきましても,平成18年から二国間協議ということで年間の定期協議を実施することになりまして,平成23年には両国の間で中国と同じく覚書を締結いたしまして,協力事業の実施など協力関係の強化に努めているところでございます。こうした覚書に基づきまして,日韓の間の著作権フォーラムなど,日本の関係者の方々の御参加を得て,情報交換の強化などを実施しているところでございます。
 この影響としまして,民間の方々が海外で行っております権利執行に対して様々な効果が出ております。特に民間の方々の権利執行に関しまして,非常に積極的な支援がなされているということでございます。一番下に書いておりますが,これは主としてCODAによって実施していただいております海外の権利執行が多いものでございますが,主な成果といたしましては,中国に関しましては版権局によります悪質な違法サイトあるいは悪質な業者の取締り,あるいは平成23年には中国のUGC,動画投稿サイトとの間での覚書の締結で,侵害コンテンツの使用をしないということを両者の間で取決めをさせていただいているところでございます。
 また,台湾におきましては,これもCODAによります海外の摘発事例でございますが,台湾における海賊版DVDの押収など,先方の警察等の協力を得て実施することができております。
 また,韓国におきましても,平成23年11月に,韓国著作権団体連合会とCODAとの間でMOUを締結することができまして,両者の間での著作権の保護が実施できる形になっておりますので,民間の方々におかれます海外への権利執行関係についても,こうした二国間の協議が有効に働いている状況であると思っておりますので,二国間協議を強化していくことで,民間の方々のエンフォースメントの活動,権利者の方々の権利の保護についてもいい影響を与えられるだろうというのが我々の評価でございます。
 次の3ページを見ていただきますと,今後どういった侵害発生国・地域をターゲットにして我々は関係強化を進めていくのがいいかということを検討していくための参考資料として,海外展開をしたコンテンツの展開先地域の資料をここに提出させていただいておりますが,これにつきましては,平成22年度に文化庁で企業の方々を対象にして取りまとめさせていただきましたアンケートをもとにして作成いたしました調査でございますが,日本のコンテンツの海外展開促進に関する基礎調査から,データをここに抜粋してお示ししておりますが,現状といたしましては,やはり韓国,台湾,香港あるいは北米,ヨーロッパなどが主要な日本のコンテンツの展開地域ではございます。しかしながら,括弧でくくってお示ししておりますが,インドネシア,シンガポール,タイ,フィリピン,マレーシア,ベトナムはコンテンツの展開先として一定のパーセンテージを占めるようになってきております。また,こうした地域での展開状況は,今後ますます日本の企業あるいはコンテンツ産業の展開先として有望視されていますので,これは地域が今後伸びていくであろうということを我々はこの調査から見てとっているところでございます。
 もう1つめくっていただきますと,「模倣品・海賊版被害の状況」ということで,現在,こうしたコンテンツが展開しております東南アジア地域でのコンテンツの侵害状況はどのようになっているかということの把握でございますが,これは経産省が模倣品・海賊版対策の総合窓口を政府の窓口として設置しておりまして,毎年,年次報告が作成されております。2012年度の年次報告からの抜粋でございますが,国・地域別の模倣被害状況ということで,国・地域の模倣被害の国別の状況を資料としてここにお示ししてございますが,やはり圧倒的に中国が大きなパーセンテージを占めるというのが現状でございます。それに続きまして韓国,台湾という順序で侵害発生が起こっていることが,これもアンケート調査によりわかっているところでございます。こういった地域につきましては,現在,定期的な協議等で侵害対策,海賊版の取締りの強化などを我々はお願いしているところでございますが,それ以外の北米,欧州といった主要なコンテンツの展開先,普及先から,タイ,マレーシア,インドネシア,ベトナム,シンガポール,フィリピンといった東南アジア地域におきましても,コンテンツの侵害が一定数見られるようになってきているというのが現状でございます。これは,今後,日本のコンテンツがますます普及すれば,こういった地域での侵害発生は同じく比例して伸びてくるであろうということがございますので,我々としましてもこういった国・地域での一層の著作権保護の強化,海賊版の取締りの強化を先方に働きかけていくというのは十分意義のあることだろうということが,このデータから判明してくるかと思います。
 引き続き,その次のページ,「著作権・著作隣接権に係るWIPOアジア地域会合(平成23年10月)参加国による展望,WIPOによる技術協力に対する要望,今後の協力分野」という資料でございますが,これは既に昨年度の国際小委員会でも御紹介させていただいておりますけれども,平成23年10月に日本で開催いたしましたWIPOによりますアジア地域会合,一番下の括弧のアジアの19か国に参加をいただきまして開催いたしました会議でございますが,この中で,各国が今どのような課題を考えているか,あるいはWIPOからどのような分野に支援を必要としているかということを,それぞれの会議での各国の皆様の御報告等を参考にいたしまして,まとめさせていただいたところでございます。
 従来,我々はWIPOの拠出金事業等を中心にいたしまして,海賊版に対する取締りの強化でございますとか,著作物の適切な保護に対する強化などを支援したところでございますが,今後,各国がどのような著作権の課題を抱えていて,どういった分野に保護が必要になってくるかということを,我々の今後の協力に必要な資料としてまとめさせていただいているところでございます。まず,「展望」のところから申しますと,やはり各国とも著作権・著作隣接権の保護に関しましては,法制度の改善等を引き続き進めていく必要があるということ。更に,アジア地域内においてはまだベルヌ条約に加盟していない国,具体的に申しますとカンボジアでありますとかミャンマーという国がございます。今後,そういった国は加盟を検討している状況であるということでございます。また,知財に対する意識あるいは国としての取組が今後ますます盛んになってくるだろうということでございます。知財戦略の策定,集中管理団体の設置あるいは任意の著作権登録制度の導入といった点が大きな課題であることも各国からの報告で見てとれます。
 これに対して,WIPOからの協力としましては,引き続き情報提供,知財戦略あるいは著作権・著作隣接権の行政制度に関するモデルの提供,そして著作権の集中管理等を中心にしたモデルの提供,データベースの構築などが,WIPOの協力を必要としているところでございます。
 今後の協力分野といたしましても,集中管理団体に対する支援,各国の著作権関係部局との間でのネットワーク形成,著作権登録制度の優良事例などの紹介が,各国が協力をして実施すべきではないかというまとめになってございます。
 そのような点を踏まえまして,アジアの地域の中で見られる今後の著作権に対する向上に向けた一種の全般的な傾向かと思いますが,二国間の関係強化におきましては,もう少し詳しく各国のニーズを分析する必要があると考えましたので,本年度におきましては,ある一定のアジア地域の国からも,WIPO事業に参加した折に聞き取りをしております。それをまとめた資料を更に後ろにおつけしているところでございます。これがその後ろのページの「ASEANにおける著作権保護の課題と我が国による支援・協力」という形で資料としてまとめさせていただいているものでございます。ASEAN11か国の資料としてこちらでまとめさせていただいておりますけれども,今回WIPOのナショナル・セミナーの開催等の機会を利用いたしまして,先方の国からどのような著作権の課題あるいは我が国の協力に対するニーズがあるかといった聞き取りの調査をさせていただいているところでございます。
 色つきでお示ししましたインドネシア,マレーシア,タイ,ベトナムは,最初の方でお示しいたしました我が国のコンテンツの展開状況あるいは模倣品・海賊版の被害状況におきまして,一定のパーセンテージを占めているところでございます。かつ,今後,日本のコンテンツ産業の展開先として有望視されている国として,やはりインドネシア,マレーシア,タイ,ベトナムは重点的にニーズあるいは著作権保護上の課題を把握する必要があるという意識から,特に個別にヒアリングさせていただいている部分でございまして,その点を色つきでお示しさせていただいたところでございます。ここから見てとれますが,やはりインドネシア,マレーシア,タイ,ベトナム,各国におきましては知的財産保護の向上を目指しまして,現在,WCT,WPPTといったインターネット条約の加盟を経まして著作権保護の強化をしつつある,あるいは,著作物の利活用を一層推進するための集中管理団体の設置などが大きな課題として,法制度の整備などを進めておりますが,今後は更に集中管理団体の管理の向上等が期待されるといった状況でございます。タイにおきましては,他国と違っているのは,まだWCT,WPPT,インターネット条約の加盟が実現できておりませんので,そこも1つ大きな課題ではございますが,やはりここでも集中管理団体の向上が1つ大きな課題でございますし,著作権登録システムの改善も大きな課題でございます。ベトナムに関しましては,2006年に著作権法の成立を見たばかりでございまして,我々もWIPO事業等でかなり重点的に支援をしてきたところではございますが,やはり同様に,今後,著作権の保護の向上を図ることが必要でございまして,更に保護を高めていくために必要とされているのは,著作権教育の推進でございますとか,普及啓発等が課題として挙げられております。
 我が国に対する協力要請といたしましても,インドネシアにおきましては意識啓発であるとか集中管理団体の運営の強化,マレーシアにおきましても集中管理団体の強化でございます。タイにおきましても集中管理団体と孤児著作物の管理が大きな課題であるとお聞かせいただいております。ベトナムに関しましては,人材育成あるいは権利執行に関する強化,そして集中管理団体,普及啓発が我が国に対する協力要請として大きなニーズがあると教えていただいているところでございます。
 その他の地域につきましては,先ほど少し言及いたしましたが,カンボジア,ミャンマーにつきましてはまだベルヌ条約に加盟をしておりません。ラオスにつきましても,2012年,本年度にベルヌ条約に加盟をしたばかりでございますので,これらの国におきましては先ほどの4か国よりもまだ基礎的な部分の著作権の強化あるいは著作権の法制度の整備に大きなニーズがあるのではないかと我々は認識しているところでございます。フィリピンとシンガポールにおきましては,条約上,シンガポールはまだローマ条約には加盟できておりませんが,それぞれある一定の著作権法上の法整備はできているということがございますので,我々としましては今後それぞれの関係の政府機関との接触を持つ機会がございましたら,それぞれの国からのニーズを把握することに今後努めていく必要がございますが,いわゆる日本の権利者の方々が権利執行をしていく上で,どのような課題があるかといったことを踏まえまして,それぞれの国の政府間で協議を進めていく必要があると考えております。
 これらの国に対する協力支援といたしましては,最後の「我が国との協力」の部分でお示ししておりますが,従来はWIPOの拠出金事業を中心にいたしまして,セミナーの実施等を続けてきているところでございます。東京特別研修という,我が国に招へいをして著作権担当者の方の研修をする,あるいはナショナル・セミナーという,開催国へこちらが参加いたしまして,著作権の保護に関する普及啓発等のセミナーの実施をするという事業をさせていただいているところでございます。
 今後は二国間の関係強化を目指しまして,インドネシア,マレーシア,タイ,ベトナムといった日本のコンテンツが今後展開され,現在ある一定程度侵害が見られる地域につきましては,より二国間の協力を強化していく方向で進めていく必要があると考えておりますし,カンボジア,ラオス,ミャンマーといった地域につきましては,拠出金事業等の協力を強化していくという形を考えております。フィリピン,シンガポールにつきましては,今後,政府間の情報収集あるいは情報交換の強化を目指していくというふうに我々は考えております。
 こうした二国間の関係強化に必要なスキームといたしましては,その後の資料で「平成24年度海賊版対策関連施策」という資料をつけさせていただいておりますが,ここにおきましては,現在実施しております海賊版対策事業の概要をお示ししてございます。二国間協議は従来やっております二国間の協議,中国,韓国,台湾でございますが,ここに今後東南アジアとの関係強化を想定して個々の関係国との協力強化を目指していくことになりますが,これまで我が国の企業等の諸外国での権利行使の支援ということで現在行っております権利者向けのセミナーでございますとか,トレーニングセミナー,侵害発生国の取締り機関対象の方の真がん判定セミナーなどをお示ししてございますが,本年度からグローバルな著作権侵害への対応ということで,二国間の関係強化にふさわしい形で実施できる事業を新規事業として始めさせていただいております。
 1枚めくっていただきますと,この事業の概要をお示しいただいておりますが,侵害発生国・地域の著作権に係る権利執行の法的枠組みなどを調査させていただきまして,これを現地でのセミナーの開催でありますとか,日本でのフォーラムの開催などを通じて,侵害発生国・地域における法制面の整備,権利行使の強化などに協力するという事業でございます。既に本年度の予算におきまして,タイ・中国の侵害の法制度の調査でございますとか,中国の侵害状況など調査を行っているところでございますので,今後はこれらの調査の成果をもとにして先方のニーズを確認しつつ,侵害発生国でセミナーを開催するなど,そうした国との二国間の関係強化につながるツールとして使えると考えております。
 それと,もう1つでございますが,これは現在の平成25年度の概算要求として行っておりますけれども,侵害発生国・地域における著作権普及啓発という形で,海外における普及啓発の強化を支援する事業を行っていきたいと考えてございます。これはまず国内で普及啓発のためのネットワーク形成をするという点が1つ主眼になっておりますが,こうした機関を中心にして,普及啓発のセミナーやイベントの開催を海外で実施することを考えております。これはASEAN各国のニーズの一覧表でお示ししましたが,各国における1つの大きな中長期的な課題として普及啓発が掲げられているということもございましたので,こうした海外の普及啓発の向上につながる事業も,今後,二国間の関係を強化していく上で重要なツールになると考えておりますので,こうした事業の予算が認められた場合には,こうした事業を使って侵害発生国におきます普及啓発についても支援が可能かと考えております。
 説明が長くなって恐縮でございますが,以上が当方でまとめさせていただきました今までの侵害発生国との進ちょく,政府間協議の対象国の拡大に関します現在までのところの資料のまとめと,今後どのような形で政府間協議の対象拡大のための関係国との協力強化をつなげていくかということについての説明となります。
 以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。今の御説明を踏まえまして,この点について御意見,その他ございますでしょうか。
 どうぞ,後藤委員。

【後藤委員】 コンテンツ海外流通促進機構の専務を務めております後藤でございます。
 本日の資料の中でもCODAの紹介をいただきまして,厚くお礼申し上げます。
 我々の活動としまして,具体的なエンフォースメントを実施しているわけでありますけれども,やはりその際に二国間会議等々の政府の支援が非常に強うございます。我々の現場ではなくて,公式レベルで文化庁が版権局と様々な協議をされて,その中でCODAを支援するという一言が入るか入らないかで,相手方の対応も全然違ってくるというところであります。是非とも,こういった活動は地味ではございますけれども,今後とも私どもは続けてまいりますが,御支援をお願いしたいというところであります。
 私から1点質問でございまして,最後の予算の関係でございますけれども,平成24年度は海賊版対策関連施策について予算額が9,100万円しかじかでございますが,平成25年度につきましては,これが侵害発生国・地域における著作権普及啓発という1つのくくりになって約3,000万円なのでございましょうか。

【都築海賊版対策専門官】 お答えいたします。まず,こちらにお示ししました一覧表は平成24年度の予算額の総額をお示ししてございます。平成25年度は,これに更に新しく平成25年度新規事業として要求しました普及啓発,約3,000万円の事業を新規で要求しております。既に要求している従来の事業が例えば圧縮される,あるいは減額される可能性もございますが,トータルどうなるかは最終的に予算案ができたときに判明することでございますけれども,この9,000万円に,著作権侵害発生国における普及啓発事業3,000万円を新規要求させていただいている状況でございます。

【後藤委員】 どうもありがとうございます。

【道垣内主査】 そのほか,いかがでしょうか。
 すいません,この議題が対象国の拡大についてということですが,拡大自体は既に行っていて,来年度更に拡大なのですか。それとも,来年度も続けてその方向でやるという御説明なのでしょうか。

【都築海賊版対策専門官】 現在のところ,年間の政府間協議につきましては,中国,韓国,台湾で行っておりますので,今後につきましては,先ほどお示ししましたASEANの重点国を中心に政府間の協力関係を強化していくというところでございまして,それを強化しつつ協議を進めていくというのが我々の今の予定でございます。平成25年度からこうした国との間での関係強化でございますとか事業の実施あるいは定期的な協議の実現に向けての準備作業に移っていくことになると考えております。

【佐藤国際課長】 今のところ中国と韓国と台湾ですが,先ほど説明いたしましたASEANのうちインドネシア,タイ,マレーシア,ベトナム,フィリピンと定期的に協議できるようなスキームをつくっていきたいというのが,平成25年度からの新しい施策の趣旨でございます。

【道垣内主査】 平成24年度の「海賊版対策関連施策について」という緑色のバックの紙がございます。こちらの一番上のところの二国間協議を拡大するというのはわかりやすいのですが,それとは別のものとして,9ページ目の普及啓発を新規に立ち上げ,これが拡大の部分ということなのですか。その関係がいま一つわからないのでお伺いします。

【都築海賊版対策専門官】 後ろのグローバルな著作権侵害の対策の強化というのは1つのツールであり,これはどういった対象国に対しても使えるツールでございますので,二国間協議は今の中国,韓国,台湾と,現在行っております二国間協議をこのまま継続していきまして,例えばここに新しく対象国が増えていけばここに加えていきますけれども,この後ろのグローバルな著作権侵害の対応の強化をどの国に対してツールとして使うかというのは,それとまた別個に切り離して考えることができると思います。例えばこのグローバルな著作権侵害の対応の強化を,じゃあ,中国を対象国にしてやりましょうと。あるいは台湾を対象地域にしてやりましょう,あるいはインドネシア,あるいはベトナムを対象国にして行うこともできると考えております。我々としましてはこちらの二国間の協議の対象国を増やしていくこと,あるいはそのための体制の整備をしていくということと,こちらのグローバルな著作権侵害の対応の強化ということで,この事業をどのような国を対象国・地域にするかといったことについては,それぞれ関連はしておりますけれども,それぞれ別のベースでも考えられることであろうと思います。ただし,このグローバルな著作権侵害の対応の強化という事業は,二国間協議対象国を増やしていくときに,あるいは関係強化をしていくときに有効なツールとして使えるのではないかと考えまして,この事業を推進しているところでございます。

【道垣内主査】 すいません,その次のページの次年度の新規事業との関係で伺ったつもりだったのですが,9ページの侵害発生国・地域における著作権普及啓発,こちらは新しいわけですよね。グローバルに更に加えてですか。

【都築海賊版対策専門官】 最後の普及啓発事業というのは,更に新規事業でございます。

【佐藤国際課長】 7ページの枠組みに,9ページの普及啓発事業が(予算が)認められれば新たに1つ加わるということでございます。

【道垣内主査】 私は財務省的な質問をするつもりはないですが,重なっているのではないかなと思うものですから,重なってはいないという説明ができるということでしょうか。

【都築海賊版対策専門官】 普及啓発の事業についてですか。これは新しく加えられる要素と,従来やっております事業とは別の観点で実施できる事業ということで整理させていただきまして,概算要求させていただいているところでございます。新しく,特に海外での消費者に対する普及啓発は従来カバーできていなかった部分でございます。これは今期の第1回国際小委員会で私どもが提出させていただきました資料で,従来ここのところが十分カバーされていなかったと御説明させていただいたところを対応するために始める事業という位置づけで概算要求させていただいております。

【道垣内主査】 わかりました。ありがとうございます。
 そのほか,何かございますでしょうか。浅原委員。

【浅原委員】 3ページに,文化庁2011年の「日本のコンテンツの海外展開促進に関する基礎調査」がございますけれども,これは継続的になされるものなのか,この2011年で終わりになるのか,今後の見通しも含めてお伺いしたいと思います。今,放送コンテンツの海外流通については非常に加速されておりますので,普及啓発も必要ですが,こういう基礎調査は大変重要ではないかと思っております。関連したことでお答えいただければと思います。

【都築海賊版対策専門官】 こちらの平成22年度の調査は,平成22年度だけで完結している調査でございますので,平成22年時点の現状を把握しようということで実施させていただいた調査でございます。ただ,御指摘いただきました我が国のコンテンツの展開の状況でございますとか,あるいは海外における侵害状況につきましては,私どもはニーズがあればそれについての調査を実施する必要があると考えておりますので,これの継続の調査とはまた別な観点になるかとは思いますが,海外での侵害の状況でございますとか,我が国のコンテンツの展開の調査などを検討しておりますし,現在進めておりますのは,中国におきます我が国のコンテンツの具体的な侵害の形態に関する調査を実施しておりまして,できれば今年度中にまとめていきたいという方向で実施しているところでございます。

【浅原委員】 侵害の調査も非常に重要なのですけれども,どの程度コンテンツが流通あるいは展開されているかというデータは,侵害の状況とは別に,ポジティブな意味で必要なのではないかなと思っております。

【都築海賊版対策専門官】 ありがとうございます。そうした調査も,必要があれば検討していきたいと思います。

【佐藤国際課長】 他省庁や関係団体でもコンテンツの流通に関する調査を行っておりますので,重複ないように検討を行うことは必要だと思っております。

【道垣内主査】 よろしゅうございますか。
どうぞ,小原委員。

【小原委員】 1点だけ確認させていただきたいのですが,先ほど主査も御質問されましたように,最後の9ページの新規事業に関しまして,仮にこの予算が確保できたとすれば,7ページの枠組みのどの部分に入ってくるのか,若しくはまだ明確ではないのか教えていただきたいと思います。例えば7ページの右側の枠組みの部分のすべてに横断していると理解してよろしいのでしょうか。

【都築海賊版対策専門官】 これは新規事業として要求させていただいておりますので,新しく1つの項目になるかと思います。大きなカテゴリーとしては,これは我が国の企業等の諸外国での権利行使の支援の新しい事業として1つ加えるという整理で考えさせていただいております。

【道垣内主査】 そのほか,いかがでしょうか。どうぞ。

【佐藤国際課長】 海外普及の関係で補足ですが,数か国の著作権担当者と会った際に,海賊版対策といった権利執行は短期的には一生懸命行っておりますが,中長期的にみて著作権普及の啓発が十分にできていないということを認識していることを感じ,その点につきまして何とか協力できないかということでございます。担当者は普及啓発を重要視しているというニーズがあると感じているところでございます。途上国においては,普及啓発は政府だけではなくて,関係権利者団体の方々等含めて,正規流通と併せてどのように取り組んでいくのかが検討課題であると思っております。
 また,権利者団体の育成や権利者の海外普及の仕方と連動してくると思っておりますので,この点につきましても今後,検討が必要であると思っております。
 以上です。

【道垣内主査】 この議題につきまして,よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,ありがとうございました。
 続きまして,議題の3番目,政府間協議等につきまして御報告をいただきたいと思います。事務局からよろしくお願いいたします。

【都築海賊版対策専門官】 政府間協議等の報告でございますが,お手元にお配りしました資料3-1,3-2,3-3を使いまして御説明させていただきます。
 まず,資料3-1「第6回日韓著作権協議の結果概要について」でございます。これは昨年12月に開催いたしました第6回日韓の著作権協議の結果につきまして報告させていただいております。韓国の文化体育観光部との間で現在定期的に実施させていただいております協議でございます。当方から文化庁国際課長が出席いたしまして,協議を実施させていただきました。
 これに関しましては,韓国で導入されておりますスリー・ストライク制度あるいはウェブハードと言っておりますインターネットサービスプロバイダーの登録等の現在の適用状況,あるいは著作権委託管理業に関する現在の法改正の進ちょく状況など,先方からの情報を聴取しております。また,現在韓国の著作者団体が運用しております違法複製物の追跡システム(ICOP)を,日本の侵害コンテンツを追跡するために使わせていただくことが可能であるか,あるいは,現在韓国で行っておりますデジタル著作権の取引所についての運用状況などを先方から聴取してきているところでございます。また,日本の著作権法改正につきまして,当方から情報提供しているところでございます。
 以上がこの概要でございます。
 引き続き,「第4回日韓著作権フォーラムに関する報告」ということで,これは日韓の間の覚書に基づきまして,日韓の間で協力事業を実施するということになってございます。昨年,日本で開催させていただきましたが,今回,第4回の著作権フォーラムを韓国におきまして開催いたしました。今回は「日本の著作権法改正」及び「日本の著作権管理システム」がテーマでございまして,韓国の学識経験者等の方あるいは著作権団体関係者の方々に対しまして,日本の著作権法改正,集中管理団体の説明をさせていただきました。これにつきましては,文化庁及び日本音楽著作権協会,日本芸能実演家団体協議会の御協力を得まして,フォーラムを開催させていただいたところでございます。
 最後でございますが,資料3-3「第37回日台貿易経済会議に関する報告」でございます。これは台湾との間での政府間の定期協議として実施させていただいているところでございまして,年間一,二回程度でございますが,台湾の知慧財産局との間で著作権の保護に関する意見交換をさせていただいているところでございます。これにつきましては,現在CODAが民間ベースでやっております海賊版の取締りについての引き続き継続的な協力あるいは海賊版取締りへの支援,現在の著作権集中管理団体の条例,インターネットサービスプロバイダーに対する削除要請など,台湾の著作権法改正に基づきまして実施されました諸制度についての現在の進ちょく状況,あるいは原産地証明の手続の簡素化など,我が国の権利者の方々の御意見をもとに先方に対して要請するといった形で,この協議を実施させていただきました。
 説明は以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。これにつきましても,ただいまの御説明を踏まえての御質問等ございますでしょうか。どうぞ。

【野口委員】 この委員会では,今年はヨーロッパやアメリカでの調査を御報告いただいていると思うのですけれども,韓国や台湾も日本にはない制度を持っているということで非常に興味深く拝見しております。日韓著作権協議の結果で,もし御存じであれば追加で情報をお伺いしたいという趣旨でお聞きしたいのですが,まず,韓国におけるスリー・ストライクルールの導入が2009年ごろだったという記憶があるのですが,その後,一度も実際に導入された事例はないということでございます。ネットのサービスプロバイダーがユーザーに対して非常に普及活動を行って,そういう目に遭わないように一生懸命警告しており,実際にそれで侵害が減っており抑止に大きな効果があったなどと報道されているのですが,もし,もう少し具体的に情報があればいただきたいというのが一点です,また,4番のデジタル著作権取引所というのは,もしいろいろな著作権情報を統合したデータベースということで利用を促進するということであれば,我が国も非常に参考になる取組ではないかと思うのですけれども,例えば政府が支援をされているのかなど,もう少し詳しい状況がおわかりであれば教えていただきたいと思います。

【都築海賊版対策専門官】 まず,スリー・ストライク制度につきましては,これは先方の韓国文化体育観光部の評価として,スリー・ストライク制度は十分抑止効果があると聞いております。それ以上の細かい分析については協議の場ではそれほど詳しくは御説明いただいておりませんでした。野口先生から御指摘いただいたように,まだスリー・ストライク制度によって最終的に何らかの形で制裁,サンクションを受けた対象者はいないというのが韓国文化体育観光部も同じような報告をしていただいているところでございまして,これはスリー・ストライクの制度の導入で抑止効果が十分あり,それによって深刻な侵害が減っているのではないかと韓国文化体育観光部は評価しているのではないかと考えます。
 次に,ウェブハードの登録ですが,先ほど御説明いたしましたインターネットサービスプロバイダーの登録制度がございまして,幾つかの類型にあるインターネットサービスプロバイダーでは登録をしないといけないということがございまして,要するに登録の取消しをされると営業ができなくなるということもございまして,この点でもスリー・ストライク制度を実施することによって抑止効果が出る,つまり登録を取り消されてしまうとインターネットサービスプロバイダーにとってもデメリットがあるので,それがこういう著作権侵害に対する警告を非常に真しに受けとる態度につながってくるのではないかというのが先方の分析でございました。
 あと,デジタル著作権取引所に関しましては,現在,ほぼ韓国文化体育観光部の予算で運営されているものでございますが,それぞれの著作物に関しますデータをいわゆるワンストップで集積することによりまして,著作物の利用に関しまして著作権者と利用者の間の利便を高めていこうということでございまして,ある一定の件数での運用実績がありまして,ここにお書きしましたように,インターネット上で著作物の使用許諾ができるようにしていくと。ただし,音楽分野に関してこういった取組は進んでいるけれども,これはそれぞれの業界でのビジネスの形態でございますとかそういったところの問題があるとは思うのですが,そういったところは必ずしもすべての著作物の分野でこのデジタル著作権取引所が想定しているようなビジネスの成立でありますとか著作権の一括処理ができているわけではないと先方は回答しておりました。

【野口委員】 そうしますと,先ほど御説明いただきました資料2の4ページで,国別の模倣被害状況というので,1番は中国が圧倒的というお話がございましたが,2番は韓国であるということで25.5%という御説明をいただいているのですけれども,これはむしろ,今の御説明ですとネット上のものというよりはDVDなどの被害ということなのか,2回目までの侵害で25.5%があるということなのかお伺いできればと思います。

【都築海賊版対策専門官】 こちらの調査はあくまでも企業,権利者の方のアンケート調査がもとになっている調査でございますので,侵害状態がわかるほど分析しているものではございません。ただし,野口先生の御指摘があったように,これは日本の権利者の方々にとっては1回でも違法コンテンツに挙げられれば,ここに書かれている韓国で侵害があったという認識としてアンケートにお答えいただくことを否定しているわけではございませんので,ここの25%は,先ほど言ったようなスリー・ストライクで頻出するような悪質な侵害ではなく,単純な侵害であっても1回の侵害と数えて回答いただいても結構な調査となっております。

【野口委員】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 よろしゅうございますか。そのほか。どうぞ。

【畑委員】 報告をありがとうございます。日韓著作権協議の結果概要に関して,先ほど野口先生からも御質問があったスリー・ストライクの点ですが,先方の文化体育観光部からアカウント停止に至った事例がないという御報告があったということですが,昨年,たしか一定数のアカウント停止があったと記憶しています。韓国の場合は,停止の対象になった個人名をウェブで公開するという乱暴とも思える対応をしているということで,話題になったことを記憶しているところでございますので,何か追加で確認ができれば有り難いかと思います。
 また,ウェブハードの登録制度は,先ほど御説明があったとおり,そもそも登録を取り消されるとビジネスができない,事業ができないということで,事業者側への一定の抑止効果があるところでございますけれども,登録要件として侵害を未然に防ぐ技術的措置,例えばフィルタリング等を導入することが登録要件になっているということも,この侵害減少の効果に寄与していると理解しておりますので,情報提供をさせていただきます。

【都築海賊版対策専門官】 どうもありがとうございます。

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 ほかに何かご意見,その他いただけますでしょうか。

【野口委員】 スリー・ストライク制度を検討はしている国は多く,前から話題になっていますけれども,実際に採用している国は今のところ余り多くないということで,その大きな理由として副作用面,例えば表現の自由,例えばインターネット上で情報にアクセスする権利へのインパクトとのバランス感でなかなか踏み出せない国も多いという認識なのですけれども,実際に採用して,そのあたりについて何か更に議論が深まっているとか,若しくは弊害で頭を悩ませているというような情報の交換はなかったでしょうか。

【都築海賊版対策専門官】 この場ではそうした弊害ですとかそこまでの情報の交換はしておりません。しかしながら,引き続き定期的に協議をしていきますので,今後はマイナスの側面につきましても,必要があれば情報として聞き取っていきたいと考えております。

【道垣内主査】 よろしゅうございますでしょうか。どうぞ,浅原委員。

【浅原委員】 二国間協議ということで,教えていただければと思うのですが,日本のコンテンツや日本の製品が海外で海賊版あるいは模倣品として使われているということを中心に御報告いただいたと思うのですが,逆に韓国から,例えば皆さん御存じのように韓流(かんりゅう)と言われるドラマが非常に受けておりますし,あるいは音楽等でも日本では非常に大々的に流通していると思うのですけれども,そういったものについての日本における侵害という話は出ないのでしょうか。

【都築海賊版対策専門官】 今回の協議におきましては,韓国側からそのような議題や要望等につきましてはございませんでした。全くないかということまでは確認できておりませんが,議題として,あるいは韓国側の要請としてそういったものは上がってきていないというのは事実でございます。

【道垣内主査】 よろしゅうございますか。
 それでは,議題の3はその程度にいたしまして,最初に申しましたように,今日,議論いただいて御決定いただきたいものに移ります。(4)の平成24年度国際小委員会の審議経過についてでございます。今期は,本小委員会として結論として何か取りまとめに至った事項はございませんので,審議経過として著作権分科会に報告をするという案になっています。これにつきまして,事務局より御説明いただけますでしょうか。

【堀国際著作権専門官】 それでは,事務局より本年度の国際小委員会の審議の経過報告案につきまして,御説明させていただきます。資料4なのですが,10ページということでかなり大部の資料でして,時間が限られていることもございますので,経緯等は少し簡単にしつつ,御説明させていただきます。
 まず,「はじめに」なのですが,今期の第1回国際小委員会におきまして,前期の審議に基づいて,以下のマル1からマル4の課題について検討を行うこととされてございます。こちらの「今期の国際小委員会の進め方」という資料につきましては,参考資料2におつけしてございます。マル1としましては,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方。マル2といたしましては,WIPO関連なのですが,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方。マル3といたしましては,知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方。マル4といたしまして,主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理となってございます。
 2ポツといたしまして,「審議の状況」でございますが,(1)のインターネットによる国境を越えた海賊行為に対応する在り方ですが,先ほど都築から説明がございましたように,今期の小委員会におきましては韓国及び台湾との政府間協議において聴取されたインターネット上の侵害に対する政府の取組が紹介されてございます。海賊行為の対応の在り方につきまして,これまでの委員会における議論を踏まえまして,主に2つの検討を行ってございます。1つは議題の2で都築から説明がございました政府間協議の対象国の拡大でございます。マル2といたしまして,第1回及び今回議論されてございます著作権の普及啓発でございます。
 まず,マル1の政府間協議の対象国の拡大につきましては,平成23年の文化審議会著作権分科会の報告書におきまして,政府間協議の対象国は,現在,中・韓・台湾になっているのですが,それを東南アジア諸国への拡大を検討すべきとされてございますので,そちらにつきましてただいま検討されてございます。中韓との政府間協議の現状及びアジア地域におけるコンテンツの展開状況及び侵害状況を踏まえて検討を行うとともに,侵害発生国における著作権保護の動向,ニーズ等の把握が重要であるという観点から,APACEの参加国から文化庁が情報収集した課題,ニーズ等も聴取してございます。そのようなアジア地域における主な課題としましては,従来は海賊版に対する権利執行の強化を中心に行ってきたのですが,近年ではインターネット条約等の締結ですとか,能力開発,人材育成又は集中管理の強化,さらには著作権普及啓発など,かなり幅広く著作権法上の重要課題として位置づけられてございます。特に,集中管理の強化につきましては,著作物の利用促進の観点から域内の主要国,アジアの主要国におきまして,集中管理団体が設立されてきてございまして,そうした各国の集中管理の強化を支援するということで当該国における著作物の保護の向上が期待できるかと思います。
 まとめとしては,今後はこうした課題を踏まえて海賊版対策事業を活用して重点とする当該国・地域との関係強化に努めまして,政府間協議の対象国拡大への環境を整えるべきであるとまとめてございます。
 マル2といたしまして,著作権普及啓発につきましては,前期の小委員会におきまして,権利者団体の方からのヒアリングを行ったのですが,そちらにおいて,違法コンテンツ流通防止へ向けた意識啓発が紹介されてございまして,そちらは効果的な対応であるという指摘を受けてございます。また,「知財計画2012」におきましても,「違法コンテンツ流通防止に向けた普及啓発活動を行うため,官民のアウトリーチを積極的に推進する」ということも盛り込まれてございます。
 これらを踏まえまして,今期の第1回国際小委員会におきまして普及啓発につきまして検討を行ってございます。この検討におきましては,我が国の権利者団体による海外の普及啓発の現状にかんがみまして,普及啓発の対象国・地域の優先順位ですとか効果的な手法,又は政府の果たすべき役割の十分な検討が必要であるとされてございます。また,検討におきましては,海外における日本語教育や外務省による海外広報との連携も留意すべきであるという指摘を受けてございます。
 また,今回の小委員会におきまして,普及啓発については海賊版対策のみならず知的財産の適切な保護のために著作権に対する普及啓発が中長期的な課題となっており,侵害発生国・地域との関係強化を進めていく上で,そういった海賊版対策のみならず,普及啓発への協力も進めていくべきであるとまとめてございます。
 続きまして3ページ,(2)といたしまして,「著作権保護に向けた国際的な対応の在り方」でございます。これはWIPO関連の条約対応でございますが,マル1としまして,昨年6月に採択されました北京条約につきましてまとめてございます。最初の2つの段落はこれまでの経緯を簡単にまとめてございますので,説明を省略させていただきまして,3段落目なのですが,2011年10月に視聴覚実演条約につきまして再び外交会議を開催することがWIPO総会におきまして決定され,昨年6月に北京において外交会議が開催され,条約が合意に達し,採択されてございます。北京条約の主たる内容としまして,実演家人格権の創設,視聴覚的実演家の財産的権利の充実,技術的保護手段及び権利管理情報の法的保護でございます。
 本小委員会におきましては,条約第12条を含む新条約と,我が国の著作権法とが整合的であることを再確認するため,我が国は外交会議におきまして,固定の許諾後の実演家の排他的権利を国内法によってどのように取り扱うのかは締約国が決定することができまして,我が国の著作権法第91条等と本条約は整合的がとれていると理解している旨を外交会議におきまして発言し,最終的にそれが議事録へ記録されたということが国際小委員会におきまして報告されてございます。
 では,本条約の成立の意義なのですが,視聴覚的実演家の実演家人格権の確立,視聴覚的実演のインターネット上へのアップロードを差し止める権利の保護,あとは技術的保護手段と権利管理情報が国際的にも規制される点を意義として挙げてございます。
 まとめとしましては,今後は我が国の視聴覚的実演家の権利が国際的に保護されるよう,我が国の早期の条約締結が望まれるとまとめてございます。
 マル2といたしまして,SCCR,WIPOの常設委員会における議論を報告させていただいております。まずマル2-1としまして,放送機関の保護に関しまして報告させていただいてございます。こちらも最初の3段落は過去の経緯を書かせていただいてございます。4段落目,ページ5の一番初めなのですが,第23回SCCR会合におきまして,インターネット放送を保護の対象とする南アフリカ・メキシコ提案が提出されたことをきっかけに,再び放送条約の成立に向けた動きがかなり活発化しつつございます。我が国も昨年5月に放送条約に関する条文提案をしてございまして,更に我が国が非公式協議を放送機関に関して主催する等,政府としては放送条約の早期採択を目指して積極的に議論に参加しているところではございまして,現在の状況としてはSCCRの議長の提案によりまして,我が国の提案を含む形でシングルテキスト化された作業文書が作成されてございます。
 現在の放送条約の主な論点といたしましては幾つかございまして,1つ目が伝統的放送機関が行うインターネット放送の取扱い。固定後の権利をどうするか。インターネット上の送信に対する保護をどのようにするか。放送前信号の保護。暗号解除。保護期間等が主な論点として議論されてございまして,これからも議論されていくという状況でございます。本議題につきましては,先進国を始め,南アフリカ・メキシコなどの途上国側も早期の条約採択につきましては異論をとなえない,前向きな姿勢という状況でございまして,2014年の外交会議の開催を目指して,今年度の前半に3日間の中間会合を開催するなど,活発な議論を引き続き行っていくとされているところでございます。
 まとめといたしましては,我が国としては各国における議論などを踏まえながら,著作権法等の法制度による対応の状況を考慮しつつ,引き続き積極的に対応していくべきであるというふうにまとめてございます。
 続きまして,マル2-2といたしまして,視覚障害者等の方のための権利制限及び例外の議論につきましてです。こちらも最初の2段落は経緯につきましてまとめておりますので,説明は割愛させていただきます。6ページ目の2段落目,5行目のところですが,第22回SCCRにおきまして,米国・EU・中南米諸国の提案を統合しました提案がシングルテキストという形でまとめられてございまして,それ以降の会合,第24回SCCR,中間会合,第25回SCCR等の各会合につきまして議論が重ねられている状況でございます。本小委員会におきましては,そのうちテキストの主な論点対象となる著作物の定義ですとか,アクセス可能な形式の複製物の輸出入の仕組み,Authorized Entityと呼ばれる団体の定義などにつきまして,現状報告を逐次させていただいてございます。従来条約が求めていた途上国のみならず,先進国側も条約を受け入れる機運が高まった結果,先ほど御報告させていただきましたとおり,昨年12月に開催されたWIPO総会及びそれに引き続く外交会議の準備委員会におきまして,本年2月に追加会合を開催して,実体条項を更に議論するとともに,本年6月に条約採択のための外交会議がモロッコにおいて開催されることを決定してございます。
 まとめとしては,我が国としては本条約の内容としてはスリー・ステップ・テスト等の既存の国際約束等と整合的な内容とすることを前提としつつ,我が国の視覚障害者の方などのための著作物へのアクセス性の向上に資するものであることにかんがみ,今後の議論の動向も注視しつつ,積極的に対応を検討していく必要があるというふうにまとめさせていただいてございます。
 マル2-3といたしまして,視覚障害者の方以外の権利制限及び例外につきましてまとめてございます。こちらは図書館ですとか公文書館ですとか教育機関のための権利制限及び例外等につきましても,昨年から具体的な議論が始められているところでございます。こちらの議題につきましては,まだ議論が始まったばかりというところもございますし,先進国側,途上国側との間に議論の進め方及び議論の範囲等につきまして,まだまだ意見の相違があるところでございます。こちらの権利制限及び例外につきましては,我が国としては引き続きスリー・ステップ・テストの考え方を踏まえまして,適切な議論を行うことが重要でありまして,各国の国内事情をそれぞれ踏まえまして,柔軟な対応が可能となるようにすべきであるとまとめさせていただいてございます。
 (3)の「知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方」ですが,こちらもその他の権利制限及び例外と同様に,先進国と途上国間で根本的なところで意見の隔たりが見られる状況でございます。第2回の国際小委員会におきまして,第22回IGCのフォークロアに関する議論につきまして報告させていただいてございます。保護の対象,受益者の対象範囲,どのような保護の方法が適切かなどの基礎的な項目につきまして,テキストに多くの修正提案,選択肢が追加された一方,意見の収れんが見られた項目は少なくなったこともあり,更に複雑なテキストとなってしまった状況を報告させていただいているところでございます。
 (4)といたしまして,主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点の整理をまとめさせていただいてございます。近年,マルチのフレームワークのみならず,FTA・EPAの枠組みにおきましても知財保護の推進の取組がございますし,また,著作権法制度をめぐる様々な動きが諸外国においてもございます。したがって,それらの動向に目を配る必要がありまして,今年度の国際小委員会におきましては,韓国・米国・EU等の諸外国の法制と我が国の著作権法制との比較を中心に有識者の先生方からヒアリングを行いまして,あり得べき論点につきまして議論を行ってございます。
 まず,韓国につきましては張先生から,米国・EUとのFTAの御紹介をいただきました。それに伴う韓国の法改正につきましても御紹介いただいております。米韓FTAの合意内容として,一時的複製の問題,複製権の認定,著作権の保護期間を50年から70年に延長,技術的保護措置の回避規制強化,権利情報について一定行為の禁止措置,法定損害賠償制度の導入,侵害情報提供命令制度の導入を裁判所に付与,著作権侵害物品の税関申告制度の導入,あとは非親告罪化の問題がありまして,また,EU韓FTAでは,著作隣接権保護期間を50年から70年に延長,放送事業者への公演権の付与,権利者推定規定の拡大,また,追及権,再販売権の導入の協議開始が規定されたことが報告されてございます。法改正はこれらの対応に加えて,FTAの合意には含まれておりませんが,フェア・ユース規定が導入されたことも御紹介されてございます。また,政府関係者等の方々の検討によりガイドラインが策定され,運用が試みられてきているという点が,質疑応答で御報告されていたところでございます。
 8ページ目にまいりまして,米国につきまして山本委員から御紹介いただいてございます。日本法との比較という観点から,特徴的な観点として御紹介いただいてございまして,まず憲法に著作権条項が存在すること,著作隣接権制度がないこと,実演・レコード製作・放送などは「視聴覚著作物」「録音物」としてそれぞれ保護されること,著作権の登録制度があること,権利内容に違いがあること,フェア・ユース規定が存在すること,技術的保護手段としてアクセス・コントロール技術の保護があること,救済制度に違いがあるなどの点を御紹介いただいてございます。
 また,EUに関しましては小川先生と上野委員から御紹介いただいてございます。まず,追及権制度について小川先生から御紹介いただいてございまして,欧州につきましては追及権に関しまして欧州指令が導入されております。この指令については,追及権は譲渡不能・放棄不能の権利であること,美術市場の専門家が介在する取引すべてが対象であること,1万ユーロを超えず,3年以内に行われる取引については除外するといった義務規定が含まれておりまして,またその原作品の複製の定義ですとか徴収率につきましても規定されているところが紹介されてございます。また,その後の議論の中では,追及権制度導入の必要の理由として,著作権法第47条の2でいう例外規定とのバランスを考慮するという意義があること,また,著作権法の主な著作物では一般的である複製物を中心に頒布される形式ではなくて,美術品におきましては主に原作品が取引されるという特殊性に鑑(かんが)みて,販売に関与する権利を著作者に与えることが許容されている見解が紹介されてございます。また,その一方で,市場の原理をもとにしますと,追及権による販売価格が上昇する可能性があるという懸念につきましても御紹介されてございます。
 更に,上野委員から,EUにおける著作権制度の動向に関する一例といたしまして,欧州諸国の研究者による共同研究の成果物でございます著作権法全体をハーモナイズする試みであります欧州著作権コードにつきましても御紹介いただいてございます。
 今後,FTA・EPA交渉を進めていくに当たりましては,議論の中で指摘された論点について留意するとともに,権利保護と利用のバランスや国際的な潮流,国益の保護といった観点からも検討を深めていく必要があると思われるとまとめさせていただいてございます。
 3ポツ,4ポツにつきましては,開催状況と委員の皆様の名簿をおつけさせていただいてございます。
 以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。参考資料2の2ページにありますのが今年度の初めに決めていただいた検討事項を4つの事項が挙げられています。それについて4回にわたって審議をしてきたというのが経緯でございまして,それに沿って整理してあるものでございます。これにつきまして,本日の御意見を踏まえて修正すべきところは修正していきたいと存じております。本来,この小委員会がドラフトするものかと思いますが,便宜上,事務局にしていただいたので,作成名義人は後ろの名簿の方々でございますので,よろしく御審議いただければと思います。
 何かお教えいただく点,その他ございますでしょうか。
 野口委員,どうぞ。

【野口委員】 すいません,2点あるのですけれども,1点は3ページで,非常に形式的ですが,最後の段落,「本小委員会においては,第12条を含む」とあるのですけれども,これはすぐ上に記載されている条文案のまとめから拝見すると12条が記載されておりませんので,第11条の誤りなのか,御確認いただきたいのが1点でございます。
 もう1点は6ページから7ページの,余りこの委員会でも議論を行っていない図書館・アーカイブ・教育機関の一番後のまとめのですが,私の認識では,図書館・教育機関については我が国でもある程度の対応がされていると思うのですが,アーカイブの例外規定はまだ日本の著作権法では米国等に比べて限定的な範囲だと思います。その点を踏まえますと,最後の「適切な議論を行うことが必要であり,何らかの国際文書を作成する場合には,それぞれの国内事情を踏まえ,柔軟な対応が可能となるようにすべきである」とまとめていただいているのですが,これは我が国の著作権法を変えなくてもいいように協議に対応する,という含意が含まれているという御趣旨なのか,あるいはある程度柔軟性を持たせる必要があるという程度の御趣旨なのか,質問させていただきたいと思います。
 以上です。

【堀国際著作権専門官】 まず,1つ目の御質問につきましては,第12条につきまして,第2回の国際小委員会におきまして御報告をさせていただいているところでございます。これは第12条と申し上げますのは権利の行使に関する条文でございまして,そこが北京条約の主たる内容から抜けてございますので,第12条に関する内容を北京条約の主たる内容に追加させていただく修正をさせていただければと思います。
 もう1つは,御質問はその他の権利制限及び例外についてというところで,アーカイブ,日本語では公文書館に相当するものでして,こちらはまだ議論が深まっていなくて,アーカイブ,日本語でいうと公文書館のようなものだと思うのですが,それが一体何なのかという議論すらまだ国際的な場では始まっておりません。著作権法でいうと第42条の幾つかですか,そういったところに対応するようなところはあるかもしれないですが,いずれにしましても,各国,先進国と途上国で図書館の事情や公文書館の事情等は全く異なるところがございますし,先進国の間でも制度はかなり違っているという状況がございますので,そのあたりの国内事情を踏まえて,柔軟な対応が可能となるようにすべきであるとしております。従来の条約の規範としてはスリー・ステップ・テストという柔軟性のあるものが今現在国際標準でございまして,そのような点も踏まえて柔軟な対応が可能となるようにすべきであるとまとめさせていただいてございます。
 こちらは,今年度国際小委員会で初めて書いた点ではなく,前期か前々期か,前の国際小委員会でこうまとめられていたという記憶がございまして,そちらを引き続き書かせていただいているところでございます。

【野口委員】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 原案をつくっていただいているだけで,国際小委員会が書くことなので,もし違う御意見があれば,こう書いた方がいいのではないかとおっしゃっていただく,あるいは何か不都合が生じるのであれば御指摘いただきたいと存じます。今の御指摘は少し後ろ向きではないかということでしょうか。

【野口委員】 柔軟な対応というのが何を意味しているのかがよくわからないため,多義的に解釈される余地があるのかなと思いました。例えば深読みをすると,この例外規定の議論については国際小委員会は消極的だと,思われるのではないかという印象を持ったものですから,「踏まえ,更に検討する」といった書きぶりが中立的でよいかなと思った次第でございます。

【道垣内主査】 「踏まえ」の後ですね。そこのところをどう書くかですが,この主語「我が国としては」はどこまでつながっているのでしょうか。

【野口委員】 「必要であり」だと思います。

【道垣内主査】 「我が国としては」「必要であり」までで終わっているのでしょうか。最後は主語なしで書かれている文章でしょうか。方向性は示さないという意味で,「踏まえ,適切なルールの構築を目指すべきである」の方が無難ではあると思います。

【佐藤国際課長】 ルールを構築するかどうかを含めてです。

【道垣内主査】 含めですか。「する場合には」と書いてあるので,既にそこで場合分けができている。最終的には今日最後にお願いいたしますけれども,細かい修正は座長にお任せいただくということで,もう少し一般的な表現にしておいてはどうかということにつきまして,ほかの委員の方はいかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。御意見を踏まえて,最終調整をすることにさせていただきたいと思います。
 そのほか,いかがでございましょうか。
 浅原委員,どうぞ。

【浅原委員】 先ほどの野口先生が御指摘の3ページの北京条約のことですけれども,回答ということでいうと,下から2段目の段落の中に第12条の権利の移転を入れるという回答でよろしかったのですか。

【堀国際著作権専門官】 はい,そのように対応させていただきます。

【道垣内主査】 そのほか,いかがでしょうか。
 審議の経過についてですので,余り結論めいたことを書くのは書き過ぎになるかと思います。つきましては,先ほどの「すべきである」みたいな話はなくていいのかもしれません。そのような点は,ほかのところにもありますけれども,そのあたりは整合的に調整させていただきたいと思います。ここで十分な審議なく方向性を出すのはいかがと思いますので。
 どうぞ,浅原委員。

【浅原委員】 とても細かいことで申し訳ないのですけれども,この経過についての書き方の1ポツの「はじめに」のところがマル1,マル2になっております。しかしながら,2ポツの下からは(1),(2)になっていて,前期の国際小委員会の進め方,参考資料2の方も最初の1の,ポツがないのですが,「背景」がテーマとして(1),(2),(3)と挙げてあります。今回の経過についての「はじめに」のところがマル1,マル2,マル3になっていると,2ポツのマル1,マル2と混同されやすいので,ここは(1),(2),(3)になさった方がいいのではないかと思います。

【道垣内主査】 ありがとうございます。私もそのように思っておりました。それから,「越えた」が平仮名が漢字になったりしていますけれども,そのあたりも含めて調整するのと,読みにくいので,(1)はゴシックにするかアンダーラインを引くことをしていただかないとわかりにくいと思いました。
 そういうことでも結構でございますので,御指摘いただければと思います。
 もう少し時間がございますけれども,もし御意見が特にないようでございましたら,いただいた御意見を踏まえまして,最終的に修正させていただきたいと思います。その修正につきましては座長に御一任いただければ幸いでございますが,いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 ありがとうございます。それでは,今期の国際小委員会の議論を踏まえ,来期の国際小委員会において来期以降の小委員会の議題・課題を検討していくということになります。
 その他につきまして何か事務局から,あるいは委員の皆様からございますでしょうか。
 事務局からはいかがですか。

【堀国際著作権専門官】 特段,その他の議題はございません。

【道垣内主査】 この際,委員の方から何か国際小委員会につきまして,全般的な御意見でも結構なのですが,いただけることはございますでしょうか。
 よろしゅうございますでしょうか。特にその他ございませんようでしたら,本日の会議はここまでとしたいと思います。
 本日は今期最後の国際小委員会でございますので,次長にいらっしゃっていただいておりますけれども,ごあいさつを一言いただければと思います。ありがとうございます。

【河村文化庁次長】 文化庁としての事務局一同を代表いたしまして,一言お礼を申し上げたいと存じます。
 今期の国際小委員会,今,審議経過についての審議をちょうだいいたしましたけれども,WIPO等における最近の動向の報告,国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,主要諸外国の著作権法制度に対する課題や論点の整理などを行いまして,これらに基づいた委員の皆様方からの御審議をちょうだいしてまいりました。特に第1回から第3回にかけて行われました諸外国の著作権法や諸外国間のFTAの御発表では,有識者の方々から,米国・EU・韓国に関する著作権法及びFTAに関する御説明をちょうだいいたしまして,その後の委員の皆様方の御議論において大変貴重な御意見や御示唆を賜りましたことをお礼申し上げたく存じます。
 また,WIPOでの議論においても,視聴覚的実演に関する北京条約の採択を始め,視覚障害者等に関する外交会議が今年6月に予定されているところでございます。また,放送条約についても先ほどのお話にもございましたように,種々動きがございます。また,本日は二国間協議の概要等について御報告をさせていただきました。このことに関しても貴重な御意見,御示唆をありがとうございました。
 文化経済にかかわる活動は,まさに国境を越えてグローバルに展開してきております。この状況下において,やはり著作権に関しての課題が多々発生し続ける状況であると認識しております。これからも,例えば海賊版対策などについて,その他の面での国際協力や国際的な共通な枠組み,土台づくりについて私どもも努力をしていかなければならないと考えております。どうぞこれからもまた皆様の御指導をよろしくお願いいたします。
 今期の委員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中と存じ上げておりますけれども,御審議に多くの御協力,御尽力をいただきましたことに改めて感謝を申し上げます。まことにありがとうございました。

【道垣内主査】 御丁寧にありがとうございます。
 それでは,第4回国際小委員会はこれで終了いたします。
 本日はどうもありがとうございました。

○11:47閉会

―― 了 ――

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