文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

日時:
令和2年10月9日(金)
15:00~17:00
場所:
文部科学省3F2特別会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定及びワーキングチームの設置について
    3. (3)WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
    4. (4)海外における著作権保護の推進について
    5. (5)その他
  4. 閉会

配布資料一覧

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

令和2年10月9日

○今期の文化審議会著作権分科会国際小委員会委員を事務局より紹介した。

○本小委員会の主査の選任が行われ,道垣内委員が主査に決定した。

○主査代理について,道垣内主査より鈴木委員が主査代理に指名された。

○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【道垣内主査】傍聴の方におかれましては,ここまで人事がございましたので非公開でしたが,ここからは入っていただけるということでオンラインになっていると思います。
 2点お願いしたい点がございます。第1点は,会議の内容を録音・録画するということは御遠慮いただきたいということです。後から申しますが,この理由は,以前からそうですが,議事録をルールに基づいて公開いたしますので,記録はそれを御覧いただきたいということです。第2点は,音声とビデオはオフにしておいてください。突然音が入ったりしても困りますし,回線を円滑にするためにもそのようにお願いいたします。
 改めて自己紹介させていただきます。道垣内でございます。よろしくお願いいたします。国際私法という分野の研究者です。国際私法というのは,ある問題について最も密接に関係する地の法というのは何かという,準拠法選択・決定というのが中心課題なのですが,著作権というのは目に見えないものですから,最密接関係地を特定することはなかなか難しいところです。国際私法は,見えないものについての準拠法決定は一般に不得手なのですが,著作権はその一つでございます。著作権そのものの専門家ではありませんが,皆さんのお力をお借りして進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それから,主査代理に鈴木委員を指名いたしましたので,この点も御報告申し上げます。
 本日は,今期最初の国際小委員会でございますので,今日御出席いただいている矢野文化庁次長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【矢野次長】失礼します。10月1日に文化庁次長に就任いたしました矢野と申します。どうぞよろしくお願いします。
 御多用の中,先生方におかれましては国際小委員会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。
 最近の国際的な著作権制度の動きとしては,我が国も締約している視聴覚的実演に関する北京条約,これが4月に発効いたしました。欧米ではEUの「デジタル単一市場における著作権指令」のEU各国内への法制化期限が来年6月に迫ってきている,そういう状況でございます。さらには,中国では著作権保護を一層強化すべく法改正の動きがあるなど,我が国を取り巻く状況の中にも非常に大きな変化が見られるところでございます。
 このような動きの中,更にコロナ禍において「新たな日常」ということが言われておりますが,今もデジタル庁の構想がございますけれども,デジタル化・ネットワーク化がますます高度化するこれからの時代におきまして,国際的に著作権に関する取組を推進していくためには,海外の動向の把握・分析,国際的な連携・協調が不可欠だと考えております。また国際調和の観点からも国際的ルールづくりへの積極的な参画や,深刻化する海賊版被害に対応するために,海外における海賊版対策の強化が必要だと考えております。
 これらの取組を進めるに当たり,専門家・実務家の先生方から御意見を頂戴することは大変有用だと考えておりまして,先生方におかれましては,引き続き,お忙しい中大変恐縮ではございますが,本委員会への一層の御協力をお願いいたします。忌憚(きたん)のない御意見を頂戴できれば幸いでございます。
 短いですけれども,私の挨拶とさせていただきます。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。
 では,議事の2番目の本小委員会の審議の予定とワーキンググループの設置について,事務局より御説明をお願いいたします。

【奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。事務局でございます。
 まず,資料2-1を御覧ください。こちらの資料は,小委員会の設置についての資料となっております。こちら著作権分科会で決定いただいたものです。その1の(3)に国際小委員会を設置することが決定されております。また,審議事項としましては,2の(3)の国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応に関することを審議事項と決定しております。
 次に,資料2-2を御覧ください。資料2-2の審議事項の丸3でございますが,こちらに具体的な検討課題例というのが2つ挙げられております。1点目としましては,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方。2点目としましては,国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方というのが具体的な検討課題例として挙げられております。
 1点目につきましては,主にWIPOの議論としまして,放送条約の議論とか,その他の議題に関連して,我が国の国際的な対応の在り方の検討についてとなります。また,そのような検討に当たっては,必要に応じまして諸外国の動向の分析などを踏まえた議論を頂きたいと考えております。なお,放送条約に関しましては,昨年度からワーキングチームで御議論いただいておりますが,今年度も引き続きお願いしたいと考えております。
 また,国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございますが,権利行使に係る課題の分析及びノウハウ整理を行いたいと考えております。
 続いて資料の2-3を御覧ください。ただいま御紹介しました検討課題のうち,放送条約に関する対応の在り方につきましては,ワーキングチームを設置して集中的に審議を進めていただくこととしてはどうかということで,御提案をさせていただいているものでございます。
 まず,1にございますとおり,ワーキングチーム名は放送条約の検討に関するワーキングチーム。検討課題としましては,世界知的所有権機関にて検討中である放送機関の権利の保護に関する新たなルール作りへの対応ということでございます。
 それから,2がワーキングチーム員の構成でございます。ワーキングチームに座長を置き,国際小委員会の委員のうちから,国際小委員会の主査が指名すること。ワーキングチーム員は,国際小委員会の委員のうちから主査が示した者及びその他の者であって,主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成される旨記載をしております。
 それから3,議事の公開につきましては,冒頭御紹介しました著作権分科会の議事の公開に準じて扱うとしております。
 事務局からは以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。
 資料の2-1と2-2は御確認ください。資料2-3に(案)と字がついております。もしここで決定いただければ,ここに日付を入れて(案)を削除して国際小委員会決定ということになります。
 このワーキンググループの設置につきまして,何か御意見いただけますでしょうか。よろしゅうございますか。
 昨年度もこのようにさせていただいて,少人数で詰めた議論をしていただいたわけでございますが,今年もそのようにお願いしたいと存じます。
 では,これを設置するということにし,構成員につきましては後日私の方で指名をさせていただき,皆さん方に事務局を通じてお知らせしたいと存じます。ありがとうございました。
 それでは,次の議事の3番目に入りたいと思います。世界知的所有権機関における最近の動向についてでございます。事務局より御説明をお願いいたします。

【奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。それでは,WIPOにおける最近の動向について,資料3を使いまして御説明させていただきます。
 今回の報告に関しましては,先月下旬に開催されましたWIPOの加盟国総会及び7月に開催されました第2回知的財産と人工知能に関する対話についての結果概要の報告となります。今年は,御案内のとおりですが,感染症の世界的な蔓延(まんえん)を受けまして,WIPOの会議も開催方法が様変わりしております。完全なオンライン参加型の会議や,オンライン参加と人数を絞った対面参加とを併用したハイブリッド型など,WIPOも会議や議題に応じた適切な開催方法を試行錯誤しながら模索しているという状況でございます。なお,今回の御報告にはSCCR(著作権等常設委員会)の報告が含まれておりませんが,これはもともと6月に開催予定であった第40回SCCRが,開催方法を慎重に検討するためということで11月に延期されたということによるものでございます。
 それでは,まずWIPOの加盟国総会の結果概要ですが,1ポツ,2ポツをまとめて御説明させていただきますと,まず日程としまして,先月9月21日から25日にかけて,先ほど申し上げましたようなハイブリッド型,オンラインと対面を併用した形で開催されました。例年ですと,加盟国総会ではSCCR報告というものも行われるところなんですが,今回は議題を絞って開催されることになりまして,SCCRの報告は扱われませんでした。
 3ポツですが,著作権関係としては,マラケシュ条約,北京条約の議題が取り扱われました。まず,(1)のマラケシュ条約につきまして,我が国では昨年より条約が発効しておりますが,実際に他国との間で利用しやすい形式の複製物が輸入若しくは輸出されるという事例が現れてきている旨の報告をさせていただき,また,さらなる条約加盟国の増加への期待を述べたところでございます。それから(2)の北京条約につきまして,今年の1月28日にインドネシアが条約に加入しまして,これで条約締約国が30か国となりました。そこから3か月後であります今年の4月28日に北京条約が発効したという運びでございます。我が国からは,加盟国拡大に向けた関係者のこれまでの努力への感謝,それからさらなる加盟国増加への期待を述べてまいりました。それから(3)の臨時総会の開催についてというところでございますが,今回の加盟国総会ではSCCRの報告等が扱われなかったと先ほど申し上げましたが,そのような今回扱われなかった議題を取り上げるための臨時総会を来年の前半に開催することが提案されまして,大筋で了承されたところでございます。
 それから最後に4ポツ,その他の動向として挙げさせていただきましたが,今年の3月に行われましたWIPOの事務局長選挙で当選しました前のシンガポール知財庁の長官であるダレン・タン氏が,新たに事務局長に就任いたしました。任期は6年間となっております。なお,事務局次長ですとか事務局長補といった他の高位幹部については,任期を3か月延長して年内いっぱいの任期とする決議がなされております。後任については,12月に開催される調整委員会で決定される予定となっております。以上が加盟国総会の御報告となります。
 それから,続きまして資料の次のページに進んでいただきまして,第2回知的財産と人工知能に関する対話についての結果概要です。
 2ポツの概要から御説明させていただきますが,こちらの会議は何かのルールをつくるとかそういった性質のものではありませんで,情報共有を目的としたものとなっております。今回はオンライン参加形式で開催されまして,WIPO加盟各国のほかNGO,企業,研究者等が広く参加して1,000人以上の参加があったとWIPO事務局からの報告がございました。議論としましては,事務局が準備したイシューペーパーというものがございまして,著作権については,3ポツにございますような(Issue 7)著作者と所有者,(Issue 8)著作権侵害と例外,(Issue 9)ディープフェイク,(Issue 10)一般政策課題といった論点につきまして,各参加者が発言する形で行われました。このイシューペーパー自体は参考資料6としてつけさせていただいておりますので,御関心のある方は御一読いただければと思います。
 このイシューペーパーには,各論点について具体化するためのクエスチョンが挙げられておりまして,こちらの資料3の方では例示として幾つかピックアップして記載させていただきましたが,この会議に初参加した発言者は特にこのクエスチョンへの回答とかそういうことに縛られることなく発言を行っております。各国の代表者からは,自国の有している制度ですとか,こういった判例があったといった事実ベースの情報共有が中心になされておりました。
 4ポツですが,今後の予定としましては,来月の4日に第3回が開催される予定です。次回扱われる議題は著作権には直接関係するものではないんですけれども,この先でまた著作権が扱われる機会もあるかと思いますので,著作権とAIの関係について,我が国として発言すべき事項などございましたら御意見頂戴できますと幸いです。事務局からは以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 WIPOの動きにつきまして,何か御質問なり,あるいは日本としてこういうふうに対応すべきではないかといったことはございませんでしょうか。せっかくの会議ですので,どなたか。

【鈴木主査代理】それでは,鈴木ですけれども。

【道垣内主査】よろしくお願いします。

【鈴木主査代理】質問をさせていただきます。今御説明いただいた内容に直接関わるものではありませんが,言うまでもなく,現在,新型コロナウイルスが我々の社会に非常に大きな影響を与えております。そこで,ウィズコロナとかポストコロナと言われる今後の社会と知財制度との関係について,WIPOの場で情報交換でありますとか,あるいは新しい政策課題について検討しようとか,そういった話は出ているのでしょうか。

【奥田国際著作権専門官】御質問ありがとうございます。
 WIPOとWHOと協力してそういった課題に取り組んでいこうという話は出ており,WIPOの中でも,まさにコロナの状況において各国の知財庁がどういう救済措置ですとか,どういう対処を取っているかといった情報共有とか,これからどういうことをしていくべきかという話合いは行われております。

【鈴木主査代理】分かりました。ちょっと考えると,結局,コロナの影響を受けた社会での知財の問題は,具体的には,デジタル化の進展でありますとか,あるいは著作権というよりも特許の関係ですけれども,公衆衛生と知財とかの,それ自体は以前からある問題が加速的に進展するということなのかなという気もいたします。しかし,私などが気づかない,新しい課題も生まれてくるのかもしれません。是非各国と情報交換をしていただいて,特に新しい政策課題が生まれてきているのであれば,教えていただきたいなと思います。以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。
 最後に全体について伺う機会を設けたいと思っていますので,その際,またよろしくお願いいたします。
 では,次に,議事の4番目,海外における著作権保護の推進についてでございます。
 この議題につきましては,まず事務局から文化庁の海外における著作権保護の取り組みについて御説明いただいた後,ここに今日いらっしゃっていただいていますけれども,最近の著作権侵害事案や海賊版対策の課題など,現場の御事情を御存じの方に内容を伺って,その後,議論をしたいと思います。
 本日ここで御説明いただくのは,一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田委員と,一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の墳﨑委員でございます。時間の関係もございますので,お二人の御説明をそれぞれ20分ずつということでお願いできればと思います。
 では,まず,事務局からの文化庁の取り組みについてお願いいたします。

【原口海賊版対策専門官】それでは,文化庁の海外における著作権保護の推進として,国際著作権室にて取り組んでいる事業について御説明をさせていただきます。
 資料の4-1を御覧ください。まず,全体像でございますが,文化庁では海外における著作権保護の推進として,著作権制度の整備,権利執行の強化,普及啓発の3つを柱として取組を実施しております。令和2年度の予算は,国内における普及啓発活動も含め,1億8,100万円となっております。この3本の柱をもちまして,国内外における著作権侵害の抑制と,我が国権利者における権利行使の推進を目指しております。
 1つ目の柱,著作権制度の整備につきましては,平成5年からWIPOに信託基金を拠出し,WIPOとの協力の下,アジア・太平洋地域の途上国における著作権制度の整備や,国際条約への加入促進,及びそれを担う人材の育成を支援しております。例年,東京における訪日研修を始め,特定対象国への専門家の派遣やセミナーを開催しているところでございますが,今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けまして,海外との往来が困難なこと,対象国における事業実施体制が整わないことから,オンラインで開催できるものについてプログラムの変更や実施の延期などの変更を,WIPOの事務局と相談しながら実施しているところです。
 2つ目の柱,権利執行の強化では,二国間協力,トレーニングセミナー,権利執行の支援事業の3つのカテゴリーで事業を実施しております。まず,二国間協力については,中国,韓国及びベトナム政府との間で締結しております著作権及び著作隣接権に関する覚書に基づき,二国間の協力事業を実施しています。こちらも今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響がございまして,韓国との間では12月にオンラインで政府間協議と一般向けのセミナーを開催する予定ですが,中国との協議とセミナーにつきましては延期となっております。次に,トレーニングセミナーについては,こちらも通常相手国で開催しているものですが,今年度については,各国と調整の上,オンラインでの実施に切り替えております。また,権利行使の支援事業として調査研究事業を行っておりますが,本年度は,『インターネット上の著作権侵害対策ハンドブック』,対象国を米国とベトナムとして作成しております。
 続きまして,普及啓発につきまして御説明いたします。3つ目の柱となります普及啓発ですが,こちらは主に東南アジアにおいて,著作権保護の推進や,違法コンテンツの流通防止に向けた普及啓発活動を行っています。具体的には,マレーシア,タイ,ベトナムにおいて普及啓発イベントの実施,教材の開発の協力などを行っております。また,本年は国内での著作権普及啓発を含めて,「ハローキティ」を著作権広報大使に任命し,広報動画の作成や普及啓発グッズの作成を行っております。
 以上が,令和2年度の事業の説明でございますが,続けて,これまでに文化庁でどのような取組を行っていたか,簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 文化庁では,積極的にこれまで著作権分野の国際協力事業を展開してまいりました。これは,アジア・太平洋地域などで著作権制度が十分に整備されていなかった頃に,その地域において日本が率先して制度の普及を支援し,著作権の国際的保護を確立するという国際貢献を行うとともに,それをもって日本の著作物が外国において保護されることを目指しております。また,特にアジアの国々との間で,その国との連携を強化するという目的もございました。これまで国際会議の開催や研修の受入れなどを単発で実施をしていたこともございましたが,継続的な事業として,著作権分野の国際協力事業を開始したという意味では,平成5年に開始したアジア・太平洋地域著作権制度普及促進事業が本格的なものとなります。このプログラムでは,アジア・太平洋地域における著作権に関する共通課題を検討する会合やシンポジウムなどを開催する地域会合を毎年開催してきました。それ以外にも,WIPOとの議論や対象国の要望を踏まえて,例えば平成12年度からは集中管理団体の実務研修の訪日研修を実施するなど,プログラムの充実を図ってまいっております。
 政府間協議に関しましては,我が国のコンテンツの海賊版被害が特に深刻な国に法整備や取締り等を要請するため,著作権担当部局との間で定期的な協議を実施しております。これはまず平成14年度に中国との間で日中著作権協議を開始いたしました。また,そのほかにも他省庁が取りまとめを行って実施しております政府間協議,例えば日中経済パートナーシップ協議,日台貿易経済会議にも参加をいたしまして,相手国との間で著作権分野の対話を行っております。平成18年からは,韓国との間で日韓著作権協議を開始いたしました。中国と韓国との間では,著作権協議で構築した関係を更に強固なものとするため,著作権分野の覚書を締結するに至っております。また,平成25年頃からは,東南アジアの国々との関係強化にも取り組んでおりまして,平成26年にはベトナムとの間で覚書を締結しております。
 また,文化庁の事業といたしまして,平成15年度に海賊版対策事業を創設いたしまして,権利行使の支援や海外における著作権普及啓発に取り組んでまいりました。この事業の主なものとして,平成19年度から侵害発生国の取締り機関職員等を対象とした日本コンテンツの真贋(しんがん)判定セミナーであるトレーニングセミナーを開始いたしました。当初は中国を中心に開催しておりましたが,平成25年度からは東南アジアにも対象地域を拡大して毎年約7都市において開催をしております。
 また,日本の権利者の海外における権利行使の支援のため,海外の法制度や権利執行の手続を権利者向けに分かりやすくまとめた『著作権侵害対策ハンドブック』の作成を行ってきております。これまでに作成した主なハンドブックは資料のとおりです。
 普及啓発につきましては,平成16年度から著作権の普及啓発教材『Asian Copyright Handbook』を作成しまして,それを用いてアジア各国でセミナーを開催するなどの取組を行ってきました。また,平成25年度からは,侵害発生国における著作権普及啓発のためのネットワーク・プラットフォーム形成事業として,東南アジアを対象に普及啓発セミナーや著作権普及啓発教材の提供を実施しつつ,相手国との関係構築に取り組みました。平成30年度には,これまでの事業で培った成果や相手国の情報などを集約するウェブサイトの運用を開始しました。また,これまでの事業で培った相手国との関係を基礎として,今度は相手国政府との協力の上で普及啓発に取り組んでおります。
 以上,簡単ではございますが,文化庁の説明を終わります。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 今の御説明に対する質疑応答は3つの御報告が終わってからとさせていただきたいと思います。ですので,続きまして,久保田委員から御説明をお願いいたします。

【久保田委員】それでは,短い時間ですが,ソフトウェア著作権協会からソフトウェアの侵害状況と侵害対策としての啓発活動について御説明したいと思います。
 この図は,うちの協会が啓発活動のときに使っているんですけれども,実態があって法改正していく中で,最近はこの10月1日からリーチサイトの違法化と違法ダウンロードの範囲拡大ということなんですけれども,侵害事犯の変遷を見ていただくと,物理的な海賊版からほとんどネットに移ってきていると。ただものすごく精巧な,本物と見まがうような精巧な海賊版というのもまだ販売されているような状況もあって,物理的な海賊版とネットの公衆送信に関わる部分の違法行為というのが中心になっています。
 あと,違法アップロードのこの辺りとか,警察で言うところのインターネットを悪用した著作権侵害と人権侵害,こういう状況が非常にメインロードです。内閣府の調査資料によると,これからのインターネットを悪用した犯罪対策は,我々の生活の安心とか安全を考えるときに,非常にネット上で行われる人権侵害とかこういう著作権侵害ということが,国民の期待もすごく高いということです。そういうインターネットを悪用した従来型の事件と不正アクセスのようなものが2通りあります。
 今日はゲームソフトとビジネスソフトの2つに分けまして,ゲームソフトの侵害状況としてはこの4つを挙げてあります。レトロゲームの海賊版販売と,後ほど画像も見てもらいますけれども,今現物を持ってきましたので,こちらにいらっしゃる方には見ていただきたいと思います。こういったゲーム機器の中に,海賊版,すなわち許諾を得ていないゲームソフトが500タイトルとか1,000タイトルとか複製されて,こういう形で売っていると。四,五千円ぐらいで買えるそうです。2番目が「マルチケイド」の海賊版販売ということで,これは「マルチプラットフォーム」と「アーケード」の造語だそうです。主に国外に向けて,国外で製造されたアーケードゲームなんかを模した機器に多数のゲームソフトが複製されており,ショッピングサイトなんかで販売されている。3番目の「リーチサイト」を通じた違法アップロードということで,今回の法改正になりましたけれども,主に国外に向けて,国外のサーバー上に蔵置された「リーチサイト」で最新タイトルとかほとんどネット上に違法にゲームが配信されている。4番目が,これは著作権法というよりは不競法の世界にどんどん入ってきているんですけれども,セーブデータの改造代行と改造ツールということで,特に,家庭用ゲーム機器のセーブデータに施された技術的制限手段の回避をして改造するサービスが横行している。回避するツールとそれを実行してあげる役務を提供するというビジネスが横行しているとのことです。改造を可能とするツール自体は国内では販売業者がほとんど摘発済みでいないんですが,国外からそういうものを流通して購入してサービスを提供している。
 映像を見てください。こういうものが売られて,なかなかこれなんか見ると本物とみまがうような,ちょっとおしゃれな形なんですけれども,こういう形でネット上で売られているということですね。
 これはさっき言った「マルチケイド」ということで,横文字で書かれたようにやっぱり外国のゲームソフトとこちらにあるゲーム機器,多分いろいろ速く動作させたり連射したりするような機能がついていると思うんですけれども,こういうハードともに販売がされている。
 これはリーチサイトにいろいろアップロードされていて,ここに行けば欲しいゲームソフト,許諾のないゲームソフトがアップロードされていて,それをいろいろな形でダウンロードし,遊べるようになるということですね。これは今回の法改正によって,刑事手続を執行していくことになると思います。アップロードしている業者とかリーチサイトを摘発することによって,相当効果は出てくるだろうなと思っております。法律をつくりましたからどんどん執行して,そういう違法な状況を除去していきたいと考えております。
 これが改造ツールの販売サイトで,先ほど言いましたように海外に行ってこういう改造販売ツールを購入する。これが国内で摘発された改造ツールの販売サイトだそうです。
 ここからがビジネスソフト侵害です。その前に,こういう改造ツールとの関係から日本のビジネスとか文化的な立ち位置を考えてみると,いわゆるネットゲームなんかでこういったチート行為があってフェアなゲームを楽しむ環境がなくなってくると,「eスポーツの健全な普及」というところを私一番気にしております。日本はゲームソフトとしては世界で最先端の国だったんですけれども,「eスポーツビジネス」に関しては非常に遅れていて,中国やアメリカや韓国と大いに水をあけられています。そういう意味では,文化的なアプローチとして,「eスポーツ」普及・啓発やオリンピックやパラリンピックといった形で,スポーツ振興法等にも関係してくる。eスポーツを見たときに,チート行為とか改造ツールとか改造行為とかというものを野放しにしていると,フェアな形でのeスポーツ,健全なスポーツとしてのeスポーツ等が普及しないということがある。ここら辺りで日本がきちんとチート行為というアンフェアな行為について,法律でアプローチしていくのか教育としてアプローチしていくのか,幾つかの方法があろうかと思いますが,そういう中で日本の立ち位置を世界に示していけるといいなと思っています。
 「eスポーツ」の健全な普及のための標準化とかISOの関係なんかも含めて,そういうフェアなゲームを,eスポーツのゲームとして,普及するというようなポリシーを持って日本はいいポジションにあると思います。改造ツール対策とeスポーツをつなげて強いメッセージが海外にも発信できるし,国内では,文部科学省を通じてもありますが,情報リテラシーの観点から,子供たちがICTの環境が今回のコロナ禍でいろいろとありますけれども,そういうこともにらみながら,フェアな形でeスポーツが健全な形で普及することが,肝の部分だと思いますので,是非そういう位置づけで考えていただきたい。
ビジネスソフトの方に移りますが,先ほど冒頭でお話ししましたように,精巧な海賊版販売ということで,一般の人ではとても見分けがつかないような外形をしております。こういったものが国外で作られてオークション等で販売されているということです。それから販売サイトを通じた違法アップロードですが,これはよくあるといいますか今までもずっと問題になっております。主に国内に向けて,ビジネスソフトを国外に設置されたウェブサイトやサイバーロッカー等に違法アップロードして,そのURLとかソフトの使用についての必要な指令符号が販売されている。違法にアップロードされたソフトをダウンロードさせて,そのときにどういうふうな形で入金させるかというのはいろいろな方法があるようです。
 それから3番目が,プロダクトキー等の指令符号の不正流通。主に国内に向けて,国外で発出されたビジネスソフトの使用に必要なプロダクトキー等の指令符号が,メーカーとの契約に反する方法で流通し,オークション等で販売されている。ここについては,今の説明だけでは理解されないと思いますのでちょっと補足しておきますと,現在のビジネスソフトはダウンロード方式によるプログラムの提供というのが中心になっていまして,クラウドを通じたサービスが多数提供されている。ソフトウェアの利用においては,正当な権限を保有するかどうかを確認して,正当な権限を持った利用者であることが分かって,ソフトウェアを利用する。そういうビジネス構造になっているんですが,このライセンス認証がとても重要なんですね。このライセンス認証を必要な形にするものがプロダクトキーです。この辺は著作権法上ストレートに当たるのか,また不競法の構成要件に当たっていくのかというのは難しい問題があるようですけれども,侵害状況としてはそういう実態があります。だから,不正流通という言い方なんですかね,今のところは。こういう実態がビジネスソフトにはあります。
 これが先ほど御説明した,ほとんど真正品と見まがうような精巧にできた海賊版であります。これは千葉県の摘発事例ですけれども,1万4,000枚,1億2,000万円も売り上げていたということです。残念なことですけれども,まだこういうものを購入する人たちがいるということですね。著作権法上は購入して海賊版として業務上利用すれば違法行為になるわけですけれども,そういった啓発の方もまだ余り理解されてない。海賊版を利用して業務上利用すること自体が違法なんだということについても,まだまだ理解の普及がされてないと考えております。
 これが販売サイトを通じた違法アップロードの例で,こういうホームページで購入するようです。
 これが先ほどのプロダクトキーの指令符号の不正流通の例ということで,契約上そういう使い方をしないでねということの契約違反です。不正行為として不正なものを正当な形で利用してしまうと,そういうプロダクトキー等の指令符号を流通させることによって,本来権限のない人の利用を可能にする。そういう不正行為が,今ビジネスソフトの中では横行しているということです。
 ここから侵害防止のための啓発なんですけれども,ゲームソフトに関しては,そう簡単に複製ができないような形で販売されているために,ユーザーに直接違法行為をやめてくれというような活動ではありません。どちらかというと,刑事等の事案に応じて,そういう類似業者の人たちに通知やそういうことをやると違法ですよという啓発を行うことが多いです。露天での海賊版販売事案というのもまだあります。私も以前秋葉原に立ってこういう活動を中国語でやってみるなど,海賊版の露天商が出るところに警察の人たちや商店街の人たちと一緒に啓発活動やってきました。そういう事案です。その他,「ゲームバー」での上映権侵害事案なんかは,先ほどeスポーツの話をしましたけれども,いろいろなこういった環境の中で,ゲームソフトを勝手に許諾を得ることなく上映して遊ばせると。そういうビジネスが広がってくる中で,「ゲームバー」というのは一つeスポーツの先駆けとして,上映権の問題等というのもきちんと対応していく必要があるだろうと。それから,ゲームセーブデータの改造代行事案につきましては,フェアな形でゲーム,スポーツを楽しむ,ゲームを楽しむという関係の中では,こういうチート行為とかデータの改造行為があると,アンフェアな,言ってみれば楽しいゲームの世界を破壊することになる。そういう観点からもきちんと対応していかなきゃいけないと考えております。
 それから,ビジネスソフトの啓発活動ですけれども,当協会はソフトウェア管理というところから,どうやってきちんと不正使用しないために管理したらいいかと。これはコンプライアンスの観点もありまして,随分と日本の企業や学校におけるソフトウェアをきちっと正規な管理をすることで不正が減っていって,現在は世界的に見ても,BSAのデータなんかを見るといつも日本は世界で2位なんですけれども,私自身はもうアメリカよりもソフトウェアの管理が徹底されて違法行為がないと認識しています。そういった管理マニュアル等を2001年ぐらいから開始しまして,セミナーも徹底して,あと管理の徹底の後には企業に向けてダイレクトメールですね,ちゃんとそういう管理をしていますかという送付によって,企業や組織の中のソフトウェアの違法コピーというのは相当きちんと対応されたのではないかと。2005年からは国外でも展開しております。特に上海ACCSというのをつくりまして,上海万博やオリンピックがあるということで,上海は北京と違ってビジネスの街なので,まずそういうところで対応しました。上海に事務局をACCSは先駆けてつくりました。その関係で,まず,ビジネスソフト系の場合には日系企業の違法行為が狙われるということがあって,当時,中国の政府当局は日本の企業をどんどん摘発するということがありましたので,日本本社の方から中国にある日系企業に向けてソフトウェアの管理を徹底してほしいと。また,日本が世界に向けて,違法行為をなくしている国として,きちんとそういう意味では守ってほしいということで運動を展開しました。
 もう一つ大きな問題は,中国で企業活動するときに,中国の企業等は違法行為で安いソフトを使って製品を作るなりビジネスを行い,一方我が日本の方はきちんと著作権を守ってその対価を払ってやると,競争にならないんですね。そういう意味では,現地でフェアな競争をするためにも,日本の方もきっちりと著作権を守りますし,中国の企業にも守ってほしいということが一つ大きな契機となりました。その方法としては,国内で活用していたソフトウェア管理パンフレットを中国語に翻訳し配布したり,セミナーの開催をしたり,優良企業の表彰もしました。それからソフトウェア管理を現地で団体が啓発するように教育支援もいたしました。そんなところが我々のソフトウェア管理の推進の活動です。あとは,中国だけでなく韓国とか,タイ,ベトナム等でもセミナーの実施をしました。
 企業の方につきましては,先ほどのBSAのデータもずっとセミナー等では見ていただいているんですが,今から五,六年前のデータですが,日本では十七,八%ぐらいが違法コピーで稼働していると。1,500億円ぐらいの侵害があるというふうにBSAは言っています。アメリカが1%ほど上で,いつも1番を取っていますが,日本では,違法行為だというふうに認識されると,民度も高いので企業・学校内の組織内違法行為は確実に減少している。できれば,こういったノウハウを近隣に,発展途上国に,そういう成功例を伝えることによって,日本の立ち位置をしっかりしていくというのもとても大事なことだと思っております。
 駆け足で恐縮ですが,以上です。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。
 では,続きまして墳﨑委員より,CODAの活動等についてよろしくお願いいたします。

【墳﨑委員】よろしいですか。CODAの墳﨑です。今日はこのようなお時間頂きありがとうございます。短い時間ですが,お付き合いいただければと思います。
 本日は,CODAの取組と課題ということで,既に御存じの方もいらっしゃるかとは存じますがCODAが現在行っている海賊版対策の取組の内容と,あとは現在抱えている課題というようなことを御紹介させていただければと思います。
 まずは,簡単ですが,CODAですが,目的は日本コンテンツの産業の海外展開への促進と海賊版対策ということを目的として設立されたものになっております。現在,会員社はここに示させていただいておりますが,アニメーション,音楽,放送,映画,出版,その他ということで,様々なコンテンツの企業様に会員として参加していただいております。従前,ちょっと前までは出版の皆様に関しては個社での参加が余りなかったんですけれども,最近では参加していただいております。また,各種団体にも御参加いただいているところであります。最近ではグッズ関係の対策等もしているということもありまして,グッズ関係の会社様にも賛助会員等で御参加いただいているところではございます。
 続きまして,CODAの取組ですけれども,大きくいうとここに書かせていただいている,いわゆる削除通知というものを海賊版の載っているサイト等に送らせていただくというようなこととか,国際的な権利執行のサポートとか,そのほか直接的な対策ができないことについて間接的な対策を行うなど,あとは普及啓発活動等を行っております。
 まずは,これも何度か御説明させていただいて恐縮ですけれども,自動コンテンツ監視・削除センターというものをCODAでは運営しております。これはこの図に書かせていただいているとおりではございますけれども,動画サイトをCODAで機械又は目視チームというのを最近ではつくっていて,人による目で調査した上で,その上でフィンガープリントという照合システムに当てて,これが海賊版なのかどうかというものをチェックした上で,削除通知というものを自動で生成した上で。権利者の名義で各サイトに送付するというシステムを運営しております。
 どれぐらい削減通知を送られているかということなんですけれども,2011年8月から本格的に稼働しておりまして,本年の3月までですと合計通知数が108万件程度になっており,削除率が91.41%ですね。昨年だけですと40万ぐらいとなっております。こちらですが,すみません,一部誤解のないように申し上げておきますと,2019年の実績値でフェイスブック等が削除率が大分低くなっておりますが,これはチェックのタイミング的なものもありまして,最近ではほぼ100%消えております。
 続きまして,国際連携や国際執行ですが,CODAでは著作権による権利行使というのもありますが,CJマークというものを商標として取得しております。こちらを取得して日本コンテンツのDVD,ブルーレイなどのパッケージや映像内にこのマークを入れてもらうことによって,商標権侵害で権利行使ができるというような体制を整えております。何でこんなことをするかと,著作権は無方式ということもあって権利証明が結構どの国でもいろいろと面倒くさかったりもするので,商標権でできるのであればその方がいいんじゃないかということで,2008年からそれに基づく侵害対策等も実施させていただいております。
 国際連携で権利行使ということを実際の摘発等もやってきておりますが,モーション・ピクチャー・アソシエーションというアメリカのハリウッドとの団体とも協力をして,海賊版対策をやって海外での取締り等を実施しております。ここに掲載させていただいておりますとおり,中国,香港,台湾で主としてやらせていただいていて,取締り件数も中国では1万件超えで香港,台湾も1,000件,2,000件ということで,一定数量の件数での取締りを行っております。やっぱりこのように共同で実施することにも当然意味はありまして,模倣品対策とかですと,工場とかだと同じものを作っているので一権利者が権利行使しても多量の模倣品を摘発できたりするんですけれども,海賊版のこういうDVDショップとかですと,一権利者についての権利侵害品の枚数は決して多くはないんですね。そうすると,やはり協働でやることによって,販売者の多量のDVD等を取り締まることができますので,打撃をできるだけ与えられるということで協働してやることが常に必要になってくるということになっております。
 また,最近の摘発事例ではございますけれども,これはCODAの課題の一つではあるんですが,最近の海賊版の一類型としてISDというものがございます。これはIllegal Streaming Deviceの略ですが,海賊版を視聴するための機器だけを販売しているというようなものでして,それをネットとかで販売しているんですが,購入してテレビに差せば海賊版のテレビを100チャンネルとか200チャンネルとかいうのを無料で見られますよというような侵害があって,その機器自体には全く何のコンテンツも入ってなくて,なかなか対策が難しいというようなものになっております。やはりこれへの対策というのは現状課題の一つではあるんですけれども,台湾で2018年と2019年でこのISDを販売している業者を摘発することができたというような事例がございます。ただ,これはちょっとアップロードもやっている人たちだったので,ISDだけでどうにかできたということではないんですけれども,やはり今このISDというのがちょっと広まり始めていて,一つの課題となっております。
 更にそのほかの実績として,以前こちらで御紹介させていただいた中国の海賊版サイト,MioMioというものがありました。これは,中国では見られないけれども,日本を含めた海外では見られるというようなサイトでして,なかなか対策が困難だったんですけれども,中国のFirst Brave社と連携することで,MioMioの運営者から違法配信を中止して今後はそういうことはしないという誓約書を受領(じゅりょう)して,完全にサイトは今閉鎖された状況にあります。また,CODAは中国の国家版権局などとも非常に連携を取らせていただいていて,そういった関係もあり,中国当局側からこれが海賊版サイトなのか確認してくれというようなものの確認依頼なども来て,その流れの中で,中国の海賊版サイト,Dilidiliとかの逮捕ができるとか,そういった照会によって様々な摘発等をこのとおり実施しているところではございます。
 こういった直接的な対策,最初の削除センターの対策もそうですし,今のこれはもう実際に運営者等に権利行使をするというような,今御紹介させていただいたものがありますけれども,それだけでは当然できないケースもいっぱいあります。運営者が分からないケースがインターネット上の匿名性という関係から出てきます。それらについて,手をこまねいているというわけにもいかないですので,それについても現状ではできる限りの対策をとらせていただいております。
 これは全体の俯瞰(ふかん)図になっておりますが,ユーザーが侵害サイトのアプリにたどり着けないように,セキュリティソフト会社様と連携した上で,そこにユーザーが行こうとすると注意喚起のメッセージが表示されるとか,あとは検索エンジンに表示させないようにするとか,ちょっと後ほど御説明しますけれどもコンテンツ・デリバリー・ネットワークへの削除要請,広告表示の停止や決済処理の停止ということで,資金元を絶つというようなこともやらせていただいております。
 まずは,フィルタリングというか注意喚起メッセージの表示ということですが,先ほども申し上げましたとおり,コンテンツホルダーからここは海賊版サイトなんだと,ここに行ってもらったら困るんだというような情報をCODAに頂いた上で,CODAの方から連携しているセキュリティソフト会社様の方へそのリストを提供することで,セキュリティソフト会社様のデータベースにそれを登録していただいて,実際にユーザーがそこのサイトに行こうというときには不正なウェブサイトですよという表示が出るというような取組をさせていただいております。スライド上は,セキュリティソフト会社様とだけ書いていますけれども,現在では業界団体とも連携を進めておりまして,セキュリティソフトの業界団体にもリスト等を提供させていただいております。
 続いてこれももう何年ですかね,2014年からの取組なのでもう5年以上にもなりますけれども,Google様と連携させていただいていて,検索結果の表示抑止というようなことをやらせていただいております。検査結果に,要は海賊版の掲載されているURLについて,検索結果に表示しないでくれというようなことを申請することによって検査結果に表示されなくなって,そのURLの数が多くなってくると,サイト全体が検査結果の上位には表示されなくなるというようなことになっております。Google様に関しては,Googleの広告ネットワークもあるところなんですが,ここの検索結果の方の削除要請が認められますと,広告の方も出てこなくなるというような仕組みになっておりますので,その点からも一つの有効な対策にはなっております。
 もう一つが,これはなかなか対策というか,これも課題の一つなんですけれども,最近というかちょっと前からですけれども,コンテンツ・デリバリー・ネットワーク・サービスというのを海賊版サイトというのが使用しております。これは速度を上げるためにいろいろなところに中継した上で,ユーザーがアクセスしようとするときに速度を早く見られるように様々なところを中継して海賊版を配信しているというようなサービスのものになるんですけれども,これに関してはもっとも有名なCloudflareというところに対して,昨年1年間で2万5,000件ほどの削除要請などを行っております。一応,全く非協力的というわけではなく,削除要請をすれば海賊版の運営サイトの運営者の方に削除要請は転送されますし,情報等の開示も行われるんですけれども,ただそこまでにとどまって,実際のサービス提供の停止とかまではやってくれないので,なかなかこれは今後どうにかしていかなきゃいけないなという課題の一つになっております。
 続いて,広告抑止ということもやっております。これは様々な資料が出ていますけれども,海賊版の収入源の一つにやっぱりネット広告というのが使われているということもあって,広告関連3団体とも協力させていただいて,その海賊版のところにインターネット広告が出ないというような取組をやっております。具体的には,著作権関連団体9団体の方からサイトのリストを出した上で,団体の方から各広告会社様の方に共有していただくというような取組をしております。これは,やはり今の資金元を絶つというようなことの効果も一つありますし,もう一つ,やはりこういう取組をCODAなりその他の団体も含めてやっているということで,少なくとも交渉とか話ができるサイトに関して言えば,やはりこういったことに掲載されるのは困ってしまうというような部分もあって,そういった意味での抑止力の一つにもなっていて有効な手段にはなってはおります。ただし,広告団体さんに全ての広告会社様が入っているわけではないので,その点はやはり今後の課題の一つかなと思っております。
 あとは,最近は余りこういうことはないんですけれども,決済の銀行口座の凍結というようなことも行うこともございます。ただ本当に最近は無料で見られるものの方が多いので,この辺りについては現在はそれほど行ってはおりません。
 その他としましては,いろいろと実施しておりますが,普及啓発活動というのを結構やらせていただいております。消費者対象の著作権啓発イベントも行っていて,ACA様と協力して「ほんと?ホント!フェア」というものに参加したり,海外でも同じようなイベントを,ここでも中国やインドネシア,タイ,マレーシア,ベトナム等で行ったりさせていただいております。
 これまででもいろいろな課題がありますよということをいろいろと言わせていただいたんですが,最大の難点というのはインターネット上の匿名性というものがやはり極めて大きな課題となっております。さっきお話もありましたけれども,やはり侵害物のメインはインターネットに移っております。従前はやはりYouTubeさんとかそういった大きなサイトのところを対策することで対応ができていたのですけれども,当然YouTubeさんのところはしっかりシステムとかも整えていますしきれいになっているというところの状況からすると,ほかの小規模なサイト等がいろいろ出てくるわけですね。しかも,それについて,以前はやはりドメインを取得したのが誰かとか,そういったこととかが結構普通に容易に知り得たんですけれども,その辺を隠す業者,プライバシーの関係で隠していますという話なんですけれども,隠す業者さんとかも結構いて,そうなると本当にどこに運営者がいるのかということを特定することさえもかなり難しいというような状況が続いております。
 更に,運営者が複数いて複数の国からやられているとか,サーバーの所在地がころころ変わったりして,そうすると本当にどこで調査したり,どこで権利行使をすればいいのか分からなかったりとかいうようなこともありますし,仮にドメインをブロックしてもらったとしても,すぐに別のミラーサイトが出てきたりするというようなこともあって,なかなかいたちごっこになったりするというようなこともありますし,更に法執行,正に道垣内先生の御知見等も頂いて今後考えていきたいと思いたいところでありますけれども,執行ができないと。要は,例えば日本で判決を得たとしてもそれが本当に執行できるのかとか,そういったところとかも一つのハードルになっているところではございます。
 以上となります。御清聴ありがとうございました。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。
 3つの御報告,御発表していただきました。御報告の趣旨の確認あるいは論点についての質問等,何かございますが。
 私の方から1点よろしいですか。文化庁の御報告によりますと,これまでいろいろな事業をやってきていらっしゃり,今年も予算はちょっと多いくらい獲得されているようですが,今年はウィルス蔓延(まんえん)による異常で予算の消化が進んでいないのではないかと思います。外国出張等を伴う事業の予算はほかのことに流用できるんですか。もし流用できるのであれば,いつもはできないことをこれからでも考えてやったらどうかと思うんですけれども,どうでしょうか。

【原口海賊版対策専門官】そうですね。当初計画していたイベント等ができなくなったりしておりますので,オンラインでできることに振り替えて,できることを増やしていくなどの対応を今取っているところでございます。どのくらい予算に余裕が出るかちょっと分からないところなんですけれども,今年できることについては検討しております。

【道垣内主査】私の経験では,オンラインで会議をするとすごく安上がりになると思います。そうすると,どうしたってお金が余るように思うんですけれども,流用はできないのでしょうか。

【原口海賊版対策専門官】目的の範囲内であれば,ある程度の流用が可能です。

【道垣内主査】分かりました。
 ほかの方,いかがでしょうか。
 どうぞ,今村委員。

【今村委員】CODAの墳﨑様にお伺いしたいのですが,資料4-3で削除の通知をして削除される割合が非常に高いということはよく分かりました。けれども,この通知から削除に至るまでの手続としてどのぐらいの期間がかかるのかということで,これは時間がすごくかかるようだとモグラたたきみたいに出ては消えて,通知して削除,また出ては通知して削除って,結局のところ見ている人はコンテンツを享受しているという感じになってしまうと思います。ですが,すごく迅速に通知から削除が進むようであれば非常に効果的に進んでいることになります。その辺,期間としてはどのぐらいの迅速さで対応がそれぞれのサイトでなされるというイメージでしょうか。

【墳﨑委員】ありがとうございます。資料の削除センターの図が出せますか。今の削除の率の数字の前のページを御覧いただきたいんですが,まず削除の通知とかが始まるというところはかなり期間を短縮しようとしております。だから2つの期間があると思っています。要は,放送等をしてからアップされてクローリングというか調査を開始するまでの時間と削除通知を作るまでの時間,それで削除通知を作って発出するまでの時間,これも短縮しなきゃいけないと思っています。かつ,通知をした後で対応される時間という2つあると思うんですね。
 前者の方はこちらでできることなので,できるだけ早くしようという取組を行っていて,ちょっと説明を割愛してしまいましたけれども,現状では,一部のコンテンツに限りますけれども,放送されたと同時に機械でそれを取り込んで,いわゆる照合システムの方には照合のための準備をできるようにして,即日調査が開始できるようにしております。なので,そういう意味ではもう1日足らずで調査を開始して,発見したらすぐに通知を出すので,今CODAでは毎日そういった通知は出しておりますので,即日出せるというような体制を整えております。
 その上で,どれぐらいで削除されるのかというのは,本当にサイトごとになります。早いサイトであれば,本当に1日もたたずに消してくれるサイトもありますけれども,やはりまだまだ1週間ぐらいかかるサイトなどもあって,おっしゃるとおりそこをどうにか早くしろ早くしろというような話をやっているところではございます。

【今村委員】どうもありがとうございました。非常に効率的な手続をどんどん進めていただいて頼もしい限りで,あとは各サイトがどのように対応するかということで随分差があるようですので,その辺もそれぞれのサイトに対応の迅速さをより求めていければと思いました。どうもありがとうございます。

【道垣内主査】YouTubeは100%対応ということですね。Googleの御対応について,野口さん,何か付け加えることはございませんでしょうか。

【野口委員】著作権関連のいろいろなところでしばしば御紹介はさせていただいておりますが,Googleでは著作権侵害に対する取組が幾つかございまして,インターネットでも公開をしています(注)ので御覧いただければと思います。今御指摘のありました削除要請につきましては,検索結果からの削除の平均処理時間は,2018年時点で,6時間以内でした。ただ,平均でございますので,ほとんどはそれより短い時間で対応していると思いますので,いろいろなサイトの中では対応が早い方であると思いたいなと思っております。
 それ以外にも,先ほど墳﨑様の方から簡単に御紹介もございましたけれども,検索でより見つかりにくくする対策や,「Follow the Money」と社内でも申しておりますけれども,お金をもうける手段を絶つということで,著作権侵害を行っているサイトについては広告が出ないようにするとか,弊社の力の及ぶ限りではできるだけ対応をさせていただいているものと考えております。権利者の皆様方とも定期的に意見交換をさせていただいていると理解しておりまして,引き続き,御意見等聞きながら,対応できる範囲で努力してまいりたいと思っております。
(注)Googleの著作権侵害対策(知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(第5回)資料) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/kaizoku/dai5/siryou1-2.pdf
Googleの著作権侵害対策(下記ページ下のリンク参照)
https://www.youtube.com/intl/ALL_jp/howyoutubeworks/our-commitments/safeguarding-copyright/

【道垣内主査】どうも,突然お名前を出して申し訳ございません。
 ほかにいかがでしょうか。

【渡邉委員】すみません,電通大の渡邉です。よろしくお願いします。
 CODAの墳﨑様の御発表から「ドメインの変更・ミラーサイトの作成が容易」という御報告があったと思うんですけれども,その件に関してちょっとコメントというか追加のことをお話ししてもよろしいでしょうか。

【道垣内主査】よろしくお願いします。

【渡邉委員】まず,2019年の5月から2019年9月に,「漫画村」のクローンと呼ばれている「星のロミ」という海賊版サイトは皆様の記憶に新しいと思うんですけれども,こちらは出版社の4社共同で大変な御尽力で訴訟して,その訴訟がきっかけとなって閉鎖されたと考えられています。このサイトは,立ち上がりから閉鎖まで約3か月間の期間があり,非常に多くのアクセスで大きな被害になっていました。最近の状況について,2020年9月の例えば3つの海賊版サイトにおける月間アクセス数をお伝えしますと,大体それぞれが2,000から3,000万の月間アクセス数がありまして,3つ合計で大体月間7,750万アクセスあります。これは相当なアクセス数で,これらの海賊版サイトも先ほどのCODA様の御発表にありましたように,もともと別の海賊版サイトのクローンとして閉鎖されたサイトが復活している可能性が高いと考えられます。
 というような形で,海賊版サイトはドメインを変えるだけでクローンサイトが簡単に作成できて,かつそれはなかなか削除というか閉鎖されるまでにかなりの時間がかかってしまうという状況があることを,コメントとしてお伝えさせていただきたいと思います。

【道垣内主査】ありがとうございます。
 そのほか,いかがでしょうか。
 著作権の審議会の中で国際的な問題を扱っているわけで,条約で何らかの対応ができるのかとか,あるいは日本法の国際的な適用ということによって何かできるのかという問題かと思います。もしこういう何かいい手段があったら助かるとか,今御発表のお二人,例えば久保田委員から,こういう手当てはできないものかといったことその他何かございますか。

【久保田委員】そうですね。先ほど独自のeスポーツ普及に関わる日本の戦略として,法律の最低限のところを「フェア」として普及・啓発するのか,もうちょっとスポーツとか文化とかというところで,教育的,文化的なアプローチを試みる。発展途上国を含め,真とか善とか美とかをベースにしたところでそういうデファクトの標準みたいなものを日本が文化的にぶち上げていって,相互に,それが標準化だったりISOの世界になっていったりというようなことをやると,運動としても著作権保護を土台にした,そういうモラルやリテラシーの普及みたいなものも,日本がフェアな国としてアピールをしながら海賊版や改造ツール等を追い詰めていくみたいなことというのも是非やってみたい。日本がそこは得意なところだと思うんですね。
 ゲームメーカーの人に話を聞いてみると,発展途上国のゲーマーとかゲームクリエーターたちはとても日本のことをリスペクトしていると。そういうもので,日本がそういうものをやろうとしたときに諸外国が乗っかってくる可能性が非常に高い。この辺りがこれから日本の立ち位置なんかでは非常に重要なイメージ戦略であり,日本の立ち位置,世界的なバランスを取っていく中で,そういう意味で標準化というのはビジネス的な標準化ではなくて,何かその辺りが著作権法の持っている文化に貢献するという目的にも合致する,ポジティブな部分で,何かそういうことで海賊版対策運動にも広げて,情報モラル普及というふうにする,何かそんなことがここから発信できると面白いなとは思います。

【道垣内主査】墳﨑さん。

【墳﨑委員】やっぱり最後にちょっと申し上げたとおり,インターネットの匿名性というのはかなり厳しいと思っています。インターネットのビジネスというものがやはり匿名性のところで成り立っている部分もあって,ビジネスを阻害するという話も多分出てくるとは思うんですけれども,やっぱりサービスを提供するときに提供する相手の情報をしっかり取得して,確認して,提供して,問題があった場合にはそれを開示するというところを,何か国際的なルール的なものがしっかりあって,法的手続を取らなきゃいけないと結構大変なんですけれども,できればそういったところも余りなく出せるというようなものができると非常に助かるところです。
 現在も,そもそもそういった運営者の情報とかも取らないでドメインとかサービス提供をしてしまっているところもあって,そういうところですと聞いても知らないと言われてしまうので,そうしたらどうしようもないなというところがあるので,その辺りはやっぱりどうにかできないかなと思うところではございます。

【道垣内主査】分かりました。ほかにどなたかございますか。

【生貝委員】じゃあ,よろしゅうございますか。

【道垣内主査】どうぞ。

【生貝委員】東洋大学の生貝でございます。御質問は,ACCSの久保田様になのですけれども,国際小委員会は初めての参加になりますので,勝手のつかめない質問になったら申し訳ないんですが。
 御紹介いただいた中で,例えばレトロゲームであれば,お見せいただいた画面の中でもかなり見慣れた大手ショッピングモールのウェブサイトというものの上でしたようですし,あるいはソフトウェアのプロダクトキーにしても,ちょっと詳細は分からないんですけれども,今手元で検索して見た限りでもそれとおぼしきものがそれなりに見つかるのかなといったときに,このことというのを素直に考えれば,先ほどの今村先生の御質問にあった論点と同じ種類のそういった対応,今回はショッピングモールさんというプラットフォーマーにどのくらいしっかり頑張っていただくかというところも深く関わっているのかなと考えましたときに,久保田様の御感触として,実際のショッピングモールの方々,プラットフォーマーの方々というのも非常に様々な御努力をされていると思うんですけれども,実際にしっかりとできる努力はしていただいている上で,それでもこういうものが出てきていってしまうのはある程度仕方がないことなのか。あるいはもっとこういうことを頑張っていただければ,こういった問題というのは更に解決していくのにといったような部分というのが果たしてあるのか,その御認識について教えていただければと存じます。

【久保田委員】そうですね。今,墳﨑さんがお話ししてくれたようなところに我々が関わりながら団体同士でそういうところを少し詰めていくとか,正に野口さんのような個々の企業さんともそういう話をする中で,何かいいアイデアが出てくるような意味でコミュニケーションしているというようなレベルだと思うんですね。だから,まず実態みたいなものがあって,どこでそういうことを効果的にやっていくかという問題や,多分これは私の部下の方が詳しいんですけれども,今,法で構成要件を作ってストレートにそういうものが当たるか当たらないかというところで,かなり苦労して警察の人たちと構成要件該当性があるのかと。そういう意味ではここは著作権ですけれども,だんだん不競法の世界と著作権の方が重なる部分だとか,そういう意味では業法と著作権法のような形の違う中で,ここ業法として押さえればここが止まるけれども,じゃあ個々の人がやる,例えば変えてしまうところの解除するところまでは何の法の規制もないわけですよね。
 そういう問題も,これも墳﨑さんのお話となりますが,著作権法的には個人がそういう行為をすることをどこまで法的に規制していいのかということと,情報が流通する中で,これは本当に生貝さんが一番御専門ですけれども,そうやって技術で押さえちゃうと,本来自由に流通するべきデータが流通しなくなるんじゃないかという問題もあって,特にうちの協会としてはソフトウェアというデジタル生まれのデジタル育ちの中で,常にその保護の対象になる情報それ自体が著作物かその周辺のデータなのかによっても随分と考えるべきアプローチは変わってくるのです。なので,どうしてもその辺りというのが,具体的に訴訟をやってみて,結局今回ここの中でも詰めて言うと,実は警察にはやってもらったけれども不起訴になっちゃったとかという事例もあるわけです。ただ,行政国家的な社会のとらえ方として,警察が動くよということで,やっぱり我々としてはそこはやめてほしいと。だけれども,刑事的なアプローチとしては限界があります。
 この辺りが,今の御質問に答えられているかどうか分からないんですけれども,とても情報社会というか超情報社会の中で,データの保護と流通をどうするかという問題が常にそこにはあるので,特に我々の協会はそこには慎重に。何でもかんでもかぶせちゃってやれればいいとは思ってないので,非常に慎重な対応していると思います。だから,どうしても教育とか啓発とかという中で,やれてもやらないみたいな人たちをつくっていくしかないなといったときに,そんな性善説でいいのかよという話にもなるんですけれどもね。悩ましいところです。

【生貝委員】ありがとうございます。まさしく特にこういったプラットフォームと関わる部分というのは,ハードローや訴訟による解決よりも,場合によってはソフトローによる改善というのが意味がある場合というのもあると思いますし,それからもう一つ別の観点からですと,特に今こうしたプラットフォーマー関連の分野に関しては,消費者保護等の分野でもやはり様々な取組が現在進行形で進められているところ,法律の立てつけこそ違いますけれども,実際やらなければいけないことというのは相当程度共通している部分も多いかと思いますので,そういったところとの協力関係やプラクティスの共有なども同時に考えていく価値があるのかなとお聞きしていて感じたところでした。どうもありがとうございます。

【久保田委員】生貝さんのところに勉強に行きます。

【道垣内主査】分かりました。
 今日のところはそれくらいでよろしゅうございますでしょうか。
 日本国が鎖国をしていればもっときれいにきちっとできるのでしょうが,鎖国しているわけではないので,日本で法整備やそれに基づく執行をきちんとすればするほど外国に逃げて外国から日本向けに活動する人たちがいるので,なかなか難しいところですが,そのような状況を何とか徐々にでも改善していければと思います。時々は国境をまたぐ行為についてもとっちめることが見せしめ効果にもなると思いますので,よろしくお願いします。
 今のような御意見を踏まえて,また文化庁におかれましては,海外における著作権保護の在り方について御検討いただければと思います。
 最後に議題の(5)でございます。その他ですが,私は特にないのですが,事務局側あるいは委員の方々から何かこの際こういう点をということはございますか。事務局の方は何かございますか。よろしいですか。
 では,本日の国際小委員会はこれで終了といたします。本日は誠にありがとうございました。

【奥田国際著作権専門官】それでは,本日はありがとうございました。次回の委員会は日程調整の上で御連絡いたします。

【道垣内主査】次回,分かりました。またワーキンググループの検討を待ってということですね。

【奥田国際著作権専門官】そうです,それも報告いたします。

【道垣内主査】では,よろしくお願いいたします。以上でございます。ありがとうございました。

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