文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)

日時:
令和3年1月21日(木)
10:00~12:00
場所:
AP虎ノ門 D室

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
    2. (2)放送条約の検討に関するワーキングチームの報告について
    3. (3)公共貸与権について
    4. (4)今年度実施した調査研究について
    5. (5)令和2年度国際小委員会の審議状況について
    6. (6)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

資料1
WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について(92.8KB)
資料2
放送条約の検討に関するワーキングチーム報告(120.4KB)
資料3
公共貸与権に関する事務局説明資料(91.5KB)
資料4
公貸権制度について(稲垣様発表資料)(482.5KB)
資料5
令和2年度 国際小委員会における審議状況について(案)(208.7KB)
参考資料1
第20期文化審議会著作権分科会国際小委員会委員名簿(75.4KB)
参考資料2
小委員会の設置について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)(53.1KB)
参考資料3
SCCR追及権タスクフォース サブグループ1報告書(449.9KB)
参考資料4
SCCR追及権タスクフォース サブグループ2報告書(774.6KB)
参考資料5
SCCR追及権タスクフォース サブグループ3報告書(67.8KB)
参考資料6
各国公貸権概要(380.1KB)
別添1
en20161494(フィンランド著作権集団管理法2016)(535.2KB)
別添2
マルタレポート2019(6.6MB)
別添3
Public Lending Right for New Zealand Authors Act 2008(302KB)
別添4
Act of 4 February 1994 on Copyright and Related Rights (Consolidated text)2020(ポーランド著作権法)(621.3KB)
別添5
Act of 15 June 2018 on the Collective Management of Copyright and Related Rights2020 (1)(ポーランド著作権集団管理)(437.7KB)
別添6
AZ_eng(スロバキア著作権法2015)(836.2KB)
別添7
ZASP_EN_2007(スロベニア著作権法2007)(453.2KB)
別添8
es177en(スペイン著作権法)(1.5MB)

第20期文化審議会著作権分科会 国際小委員会(第2回)

令和3年1月21日

【道垣内主査】10時になりましたので,まだオンラインになっていらっしゃらない委員もいらっしゃるようですけれども,ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては,ビデオはオンにしていただくとともに,御発言いただく際にだけミュートを解除していただき,場合によっては事務局で解除もできますので,うまくいかなければビデオの前で手を挙げていただければと思います。
 議事に入る場合に,本日の会議の公開につきまして確認いたします。予定されている議事の内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴の方々にはオンラインで参加していただいているところでございます。この点,このまま進めてよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】特に御異論ないようですので,本日の議事は公開ということで,傍聴の方々にはそのまま傍聴いただくことにいたします。
 なお,傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することは御遠慮いただきますようお願いいたします。
 議事次第を御覧いただきますと,本日の議事は6つございます。1番が,WIPOにおける最近の動向,2番,放送条約の検討に関するワーキングチームの報告,3番,これはゲストスピーカーをお呼びしていますけれども,公共貸与権についてでございます。4番目は今年度実施した調査研究,5番目,令和2年度の国際小委員会の審議状況について,最後,6がその他になります。
 では,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。事務局でございます。
 本日お配りしている資料ですが,資料が5点,参考資料が6点ございます。まず資料1としまして,WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について。資料2としまして,放送条約の検討に関するワーキングチームの報告。資料3で,公共貸与権に関する事務局の説明資料。資料4としまして,公貸権制度について,こちらは有識者の稲垣様の発表資料になります。資料5としまして,令和2年度国際小委員会における審議状況について(案)となっております。続きまして参考資料ですが,参考資料1としまして,第20期文化審議会著作権分科会国際小委員会委員名簿。参考資料2としまして,小委員会の設置について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)。参考資料3としまして,SCCRの追及権のタスクフォースのサブグループ1報告書。参考資料4としまして,同タスクフォースサブグループ2報告書。参考資料5としまして,同タスクフォースのサブグループ3報告書。参考資料6としまして,各国公貸権概要ということで,こちらも稲垣様の参考資料となっております。
 資料に不足等ございましたら,事務局までお知らせいただけますと幸いです。

【道垣内主査】ありがとうございます。もし何かございましたら,おっしゃってください。
 では議事の1番,WIPOにおける最近の動向について,まずは資料1に基づきまして事務局より御説明をお願いいたします。

【奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。それでは,WIPOにおける最近の動向について,資料1を使って御説明させていただきます。
 今回の報告に関しましては,昨年11月に開催された著作権等常設委員会,以下SCCRと呼ばせていただきますが,こちらの会合についての結果概要の報告となります。
 今回のSCCRも,WIPO総会等の他の会議と同様に,オンライン参加と対面参加を併用したハイブリッド型で開催されましたが,特に今回はスイスでの感染症の拡大というのが深刻な状態だったということで,対面参加の人数をそれまで以上に絞った形で行われました。議題としては,これまでと同様,放送条約,権利の制限と例外,その他の3つが議論されております。
 3ポツの各論です。(1)放送条約につきまして,こちらは1998年から続けられている議論になりますが,近年では,重要事項に関する加盟国の合意を条件として2020/2021年期間中の外交会議開催を目指すとの勧告が一般総会で採択されるなど,条約策定に向けた機運が非常に高まっているところでございます。
 イの議論の概要でございますけれども,これまで条約の案文である議長テキスト案に基づいて議論されてきたのですけれども,今回のようなオンライン会議でテキスト交渉を行うことには慎重な意見もございまして,今次会合ではテキスト交渉は行われておりません。各国が自国の見解を表明するステートメントの発出のみが行われました。そのステートメントのうち,条約の実体面についての発言としては,保護対象として同時再送信や時差放送を含めるべきとする意見ですとか,保護方法に柔軟性を与えるべきとする意見がございましたが,我が国からは,これまでと同様の主張になりますけれども,条約に柔軟性を持たせることが早期妥結に資するのではないかと発言しております。
 また,今後の進め方についての発言としては,コロナ禍においても建設的な議論を行うべきとの意見が多かったのですが,オンラインでテキスト交渉を進めることには慎重な意見もございました。
 次に,(2)の権利の制限と例外です。現在のところ,図書館とアーカイブ,教育と研究機関等のための制限例外というのが議論の対象となっておりますが,近年では,SCCRで承認されたアクションプランに基づいて,研究報告やセミナー等が行われておりました。今次会合では,スイスで開催されました国際会議と,シンガポール,ケニア,ドミニカ共和国で開催された地域セミナーの報告が行われました。以上でアクションプランが全て終了したのですが,今後どのような課題について議論するのかは決まっておりません。ただ,制限と例外の議題自体は次回以降も継続されることが決まっているという状況になっております。
 続きまして,(3)その他の議題ですけれども,4つございまして,デジタル環境に関連する著作権の分析と追及権,舞台演出家の保護,それから,新しく提案されました公共貸与権調査となっております。
 まず,アのデジタル環境に関連する著作権の分析ということで,こちらはブラジルから提案があったものですが,特にデジタル音楽サービスにつきまして事務局で調査が行われております。今回はその進捗報告がございました。進捗といいましても,タスクフォースで1回打合せを行いましたとか,そういう程度の簡単な報告だったのですけれども,見通しとしては,次回若しくは次々回の会合で研究発表したいとのことで,引き続き調査状況について報告されることになっております。
 それから,イの追及権につきましても,事実調査を行うタスクフォースを事務局が作って,そちらで調査が行われております。これまでは,なかなかタスクフォースの調査状況については報告が上がってこなかったのですが,今回中間報告がございました。3つのサブグループで調査を行っているとのことで,それぞれのサブグループから報告がございました。
 まず第1のサブグループは,画廊に関する調査を担当するグループとなっておりまして,こちらは理論的な側面には立ち入らず,追及権の制度が画廊に適用される場合の具体的な課題にフォーカスして,客観的な証拠や統計に基づいた調査を行うということを説明しておりました。
 第2のサブグループですが,こちらは追及権のマネジメントに関する調査を担当するグループとなっておりまして,追及権を有する国の制度面の調査を行っておりまして,各国での具体的な手続ですとか主要な特徴を把握するということを目的としていると説明しております。
 それから,第3のサブグループですが,こちらはマーケットの構造や南北間の経済格差の調整といった面での追及権の役割に関する調査を担当するグループとなっておりまして,アフリカの有名な芸術家にヒアリングを行ったということで報告がございました。
 調査報告の詳細につきましては,参考資料3,4,5を御参照いただければと思います。
 なお,タスクフォースの調査項目につきましては,2018年のこちらの国際小委員会で委員の皆様から頂きました御意見を踏まえて,これまでも我が国からも調査項目について提案してきておりましたが,今回の報告では調査が及んでいない部分もございましたので,改めて指摘を行ってきたところでございます。
 続きまして,ウの舞台演出家の権利保護ですけれども,こちらも事務局で調査が行われておりまして,法制度の分析を進めていること,それから,コロナ禍の影響で舞台関係者へのヒアリングが滞っているということの報告がなされた次第です。
 最後に,エの公共貸与権の調査ですが,こちらについては昨年のSCCRでシエラレオネから発言があったものですが,今回,正式に文書をもって提案がなされたところです。提案の趣旨としましては,特に途上国が公共貸与権について学ぶ機会を提供したいというもので,条約策定等を目指すものではないということ,調査は事務局が行うもので,各国に負担をかけるものではないということなどが説明されております。今次会合では,議論の時間が短かったこともございまして,採択には至っておりません。次回の会合で引き続き議論される予定です。
 最後に4ポツ,今後の予定ですが,まだまだ感染症の拡大については予断を許さない状況ということもございまして,次回SCCRの日程は未定でございます。
 報告は以上となります。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。皆様方から今の御説明に対して御質問,あるいは日本の対応方針とかについての御意見等々,何かございましたらどうぞお願いいたします。よろしゅうございますか。
 せっかく動けるかなと思われた放送条約が,もうちょっと時間がかかるかもしれません。
 では,今日は議題も多いので,次の議題に入らせていただきます。議題の2番目,放送条約の検討に関するワーキングチームの活動報告について,このチームの座長をしていただいております上野教授から御説明いただきたいと思います。
 では,よろしくお願いいたします。

【上野委員】上野でございます。WIPOにおきまして検討中の放送機関の権利の保護に関する新たなルールづくり,すなわち放送条約への対応に関しまして,ワーキングチームでの検討状況等,御報告させていただきます。
 資料を御覧いただきますと,ワーキングチームのメンバーを資料2ページ目に掲載しておりますので,適宜御参照いただければと思います。
 この課題につきましては,今年度,昨年の10月26日と12月23日の2回にわたりまして,ワーキングチームにおいて集中的に議論を進めてまいりました。今年度は,放送事業者及び有線放送事業者の方々からのヒアリングを交えて検討を行った次第でございます。今後の方針につきましては,国内外の放送に関する実態・動向の分析を行いつつ,放送条約における保護対象,そして与えられる権利というものに関する対応を中心といたしまして,WIPOでの議論の進展に応じて我が国の対応の在り方の検討を進めていくというふうにまとめられたところでございます。今後はこの方向性に沿って議論を重ねていくこととなるかと存じます。
 簡単ですが,以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。委員の方々から何か補足することはございますでしょうか。ないようでしたら,ほかの方々から何か御質問等ございますか。
 私の方からですが,これはWIPOの議論を追い越すというわけにいかないと思うんですが,専門の方々から見ていらっしゃって,そもそもWIPOはどうなりそうなんですか。

【上野委員】この議論はWIPOでも20年以上前から続けられているというふうに承知しておりまして,その動向や展望につきましては,後ほど事務局の方からお考えが示されるかもしれませんけれども,このワーキングといたしましては,そうしたWIPOにおける動向を踏まえながらどう対処していくべきなのかということを,クローズドではあるんですけれども検討するということでありまして,今後もそういったWIPOの動向についてはしっかりウオッチしていきたいと思っております。十分なお答えになっておりませんで恐縮ですが,もし事務局の方から御説明いただくことがありましたら。

【道垣内主査】優等生的なお答えですね。おっしゃる通りですね。事務局から何かありますでしょうか。

【奥田国際著作権専門官】上野先生がおっしゃったとおりでございまして,WIPOのSCCRの活動というのがどういう状況にあるのか,この先どういう感じで進んでいくのかというのがまだまだ不透明な状況でございますので,そちらを見据えながら,適宜ワーキングチームの進め方についても検討してまいりたいと思っております。

【道垣内主査】こういう議論を始めた頃の人たちはみんないなくなって,人が替わってしまっているとおもいますが,今やっている人たちで何とかまとめていただきたいと思います。
 よろしゅうございますか。――はい。では,議題の3番目です。
 稲垣先生から公共貸与権あるいは公貸権について御報告いただきます。まずは事務局より,この議題を取り上げる趣旨について御説明いただいた上で,稲垣様より御説明を伺って,その後,議論ということにさせていただきたいと思います。御発表は40分くらいでお願いし,質疑応答は20分程度というふうに考えておりますので,よろしくお願いいたします。
 では,まず事務局より趣旨説明をお願いいたします。

【 奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。それでは,このたびの小委員会で本議題を取り上げた趣旨について,事務局から御説明させていただきたいと思います。
 資料3を御覧いただけますでしょうか。先ほどのWIPOの報告の最後でも触れさせていただきましたが,SCCRでは公共貸与権の調査に関する提案がなされたところでございます。この提案に対して,日本としてどのような対応,発言をしていくべきかということについて委員の皆様から御意見を頂戴したいというのが今回の趣旨となります。同資料には,過去に国内でも議論があったということを参考として,2ポツで御紹介させていただいております。こちらは平成15年の著作権分科会審議経過報告書からの抜粋です。ですが,本日の会議は国際小委員会ですので,飽くまで我が国の国際的な対応について御議論いただきたいと考えております。
 3ポツで,例示として論点例を挙げさせていただいておりますが,WIPOの議場で日本としてどのような発言を行うべきかということを念頭に,著作者への補償を目的とするのであれば公共貸与権は効率のよい方法であるのかであったり,仮にWIPOで調査することになった場合,どのような調査を行うべきかなどといった点について,この後の有識者からの御発表を踏まえて御議論いただけますと幸いです。
 事務局からは以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。著作権分科会の下に幾つかの小委員会が設けられておりまして,公共貸与権という法制度を日本でつくるということになりますと,法制小委員会といったところで議論することになりますので,この国際小委員会としては,国内の制度導入について議論するわけではなくて,WIPOでのシエラレオネの提案に基づいてこれから議論が始まるかもしれない公共貸与権について勉強しておくということです。文化庁にもそういう情報をためておいて,いざとなったら使えるようにしておこうという趣旨だということでございます。
 では,稲垣様から御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【稲垣様】中央大学日本比較法研究所嘱託研究所員の稲垣行子です。本日はお招きいただきましてありがとうございました。公共貸与権の現状と,導入を予定している台湾や,導入を検討して見送ったアメリカ合衆国について御説明をさせていただきたいと思います。
 本日の議題であります公共貸与権とは,図書館が行う図書の無料の貸出しに対して著作者の利益の損失を請求する報酬請求権と位置づけられています。著作権法上の権利ではありませんが,書籍の貸与と深く関わりがあります。そこで,まず著作権法の貸与について簡単に御説明をさせていただきます。それから,公共貸与権の概要について説明を進めていきたいと思います。私は,公共貸与権について,よく使われる公貸権という名称を使用させていただいていまして,資料には公貸権となっておりますが,公共貸与権と同じ意味ですので,説明では公共貸与権を使わせていただきます。
 では,貸与について説明をさせていただきます。斉藤博先生によりますと,日本の著作権法の貸与は次のように考えられています。貸与は,有償無償を問わない広範囲な概念であります。営利を目的としない貸与については貸与権が制限されているので,事実上は貸与権は営利を目的とした貸与のみに働くことになり,我が国著作権法が公貸権を認めるわけではありません。著作権法の貸与権は,皆様御存じのように,26条の3として,昭和59年,1984年に創設されました。当初はレコードのレンタルだけに適用され,書籍,雑誌については著作権法附則4条の2により,当分の間適用しないとしました。一方で,書籍と雑誌の貸与については,平成16年,2004年に著作権法を改正し,附則4条の2を廃止して適用されることになりました。
 書籍の貸与については,民間のレンタル店で扱う有償の貸与はコミックがほとんどであります。一方,書籍や児童書などは公立図書館の無料貸出しがほとんどであります。また,新刊小説,特によく売れる職業作家の小説,ベストセラー小説などは,ほぼ全国の公立図書館で発売直後に貸出しをされています。この状況を踏まえて,公立図書館の書籍の無料貸出しによる損失部分について,著作者の報酬が得られないだろうかという問題について述べていきたいと思います。
 では,公共貸与権の概要について説明いたします。公立図書館が行う貸出しは,各国の図書館法の無料原則により,利用料は徴収していません。そこで,著作者の中でも小説を書くことをなりわいとしている職業作家は,公立図書館が行う著書,書籍の貸出しによる損失部分について何らかの報酬を受け取れないだろうかという問題を考えました。
 欧州諸国では以前より,著作者の損失の補塡について,次のように取り組んできました。著作者の著作物が,図書館の図書の貸出しにより引き起こされた収入減の損失に対して,報酬を著作者に与える権利を認めるという制度を導入しています。この制度は公共貸与権制度,パブリック・レンディング・ライトと呼ばれています。この制度は,著書が図書館で貸し出される際の損失部分に対する著作者の報酬請求権を認めるものであります。
 公共貸与権制度は,英語のパブリック・レンディング・ライトに由来します。無償の貸与を示す貸出権,レンディング・ライトに,公共,「パブリック」の文字が頭についているため,著作権法上の権利であると誤解されることが多いです。しかし,公共貸与権とは,1,著作者が被る損失の補塡をするという報酬請求権であり,著作物利用の許諾権ではないため,著作権法上の権利ではありません。加えて,公共貸与権制度は国の文化支援という一端も担っているため,国が基金を創設して著作者に支援している諸国がほとんどであります。公共貸与権制度とは,以上2つの目的を有する制度であります。さらに,公共貸与権という用語は英国のSir Alan P. Herbertにより創設されましたが,国際的な調節をする条約の中で創設されたものではないので,統一した見解や制度の要件が持たれておらず,様々な解釈がされています。
 では,制度の沿革について簡単に御説明いたします。公共貸与権制度は,北欧の各国が1940年過ぎから,自国語の保護のために,図書館の貸出しによる損失補塡制度を導入したことから始まります。デンマークが1942年,ノルウェーが1947年,スウェーデンが1954年,フィンランドが1961年に導入しております。その後,1970年代を中心に欧州大陸で,主に自国の著作者の損失補塡の報酬請求権として制度化され,次々と導入されていきました。いずれの国も導入までに30年前後の時間を要しています。さらに,1986年当時,10年,15年ぐらいたった時点ですが,導入国は10か国しかありませんでした。
 その後,EU統合の際に,加盟国の著作権をハーモナイズする必要性により,EUは92年,EC理事会指令を発令しました。この指令により,商業的な貸与に対する権利としての貸与権・レンタル権と,図書館の資料の無料貸出しに対する権利としての貸出権・レンディングライトの創設を加盟国に求めました。EC理事会指令が発令された1990年初頭は,既に図書館の貸出しに関する報酬請求権である公共貸与権制度を導入している加盟国が存在していました。公共貸与権制度を導入している国には,指令5条の特別な問題として,貸出権の制限を認めました。1992年のEC理事会指令は2006年に廃止され,2006年12月に,92年理事会指令を引き継いだ2006年理事会指令が発令されています。
 各国の導入の状況であります。2020年12月時点で公共貸与権を導入している国は34か国となっています。内訳は,EU加盟国が23か国,それ以外の各国が11か国の,合計34か国であります。こんな感じになっています。これは地理的な要因で分けた感じであります。欧州大陸と近隣の国が30か国であります。この2つのデータは,公共貸与権制度の国際組織であるPLRインターナショナルが調査したものによります。各国の公共貸与権制度の実施内容については,それぞれの国内事情によります。
 このように,EC諸国に公共貸与権制度が普及したのは欧州委員会によるものであります。2004年12月に欧州委員会が,公共貸与権制度の適用不適切や未導入などで,欧州司法裁判所にスペイン,アイルランド,ポルトガルを提訴しました。2005年3月にはイタリアとルクセンブルクを同じ理由で提訴しました。スペインとルクセンブルクは適用の不備を是正し,アイルランドは2007年,イタリアは2006年に公共貸与権を導入しています。ポルトガルは,2006年の欧州司法裁判所の判決にもかかわらず,依然として公立図書館を公共貸与権から除外しています。今,EU加盟国で公貸権を導入していないのは,ギリシャとブルガリアとポルトガルとルーマニアの4か国になります。一応ギリシャは1993年に法を制定しています。公共貸与権制度はまだ開始されていません。公共貸与権を導入する2017年著作権法改正後の議論を待っているというような状況であります。
 では,公共貸与権制度の要件について説明していきます。公共貸与権制度の要件については,根拠法から対象資料まで6つあります。次にそれぞれ詳しく説明していきます。
 まず根拠法なんですけれども,公共貸与権制度を独自の制度として法律を制定しているタイプと,著作権法の中に規定しているタイプ,制度として立法化していないが独自のプログラムとして制度化しているタイプの3つがあります。著作権法を根拠にしているタイプは結構多くて,前の公貸権法を根拠にしている国の方が少ないんですけれども,これは多分,EUがEC指令を出したことにより,著作権法の中に規定しているのではないかというふうに思います。
 次に,報酬の算定基準なんですけれども,貸出し回数を算定基準とするタイプ,図書館の蔵書から算定するタイプ,その他の算定基準を設けているタイプの3タイプがあります。権利の対象者の点から分類を試みると,著作者が主ですが,著作隣接権者及び出版者を受給対象者としているタイプもあります。貸出し回数を算定基準にしている国はこんな感じで,23か国あります。蔵書を算定基準にしている国は8か国になります。下の方に,その他の算定基準とあるんですけれども,キプロスは認可によるものとしています。フランスは購入された著作物に対して支払を行っています。イタリアは,文化プロジェクトのための基金として文化目的に使用され,著作者には直接配付しないというふうにしております。いろいろな算定基準があるということになります。
 次に,制度の性格について説明します。公共貸与権の権利の性格は,根拠法が公共貸与権法であるか著作権法であるかプログラムであるかにかかわらず,ほとんどの国が報酬請求権となっています。また,根拠法が公共貸与権法の場合,登録が要件になることが多いです。登録が要件になると,補塡される図書が特定されます。それから対象施設なんですけれども,公立図書館のみのタイプ,公立図書館と大学などの学校図書館に適用されるタイプなど,様々であります。対象資料ですが,書籍,図書が主でありますが,視聴覚資料及びeブックなどにも最近は適用されるようになっています。対象資料にISBNコードの必須条件や,自国語のみ,あるいは自国で発行するという要件を求める場合があります。このように公共貸与権制度の要件は,一言では説明することができません。
 これらの要件を総合して,各国が採用している制度のタイプを分類すると,次のように考えられます。1番目として,公共貸与権法プラス貸出し回数のタイプ。2番目として,公共貸与権法プラス蔵書,所蔵タイプ。3番目として,根拠法プラス,自国の言語又は自国で発行された書籍を条件にしているタイプ。著作権法に規定している著作権法タイプ,プログラムタイプ,ISBNコードを必須条件しているタイプの6つが考えられます。
 タイプ1は,主に英国が当てはまるので,英国タイプと私は呼ぶことにしています。タイプ2を取る国は多いんですが,他の条件が加わることが多いので,オーストラリアとニュージーランドが該当します。そこで,このタイプをオセアニア型と呼びます。タイプ3は,自国の言語を保護する目的である北欧の国がほとんどであるため,北欧型と呼びます。タイプ4は著作権法型と呼びます。タイプ5はプログラム型と呼びます。タイプ6はISBN型と呼ぶことにします。
 では,英国型について説明をしていきます。英国型は,サンプル館での貸出し回数を算定の基礎データとしていることが,他国と比べて大きな特徴であります。また英国は,作家たちが図書館の無料貸出しによる利益損失の補償を訴えて導入した制度でありますから,職業作家が次の作品を生み出すための補償金という意味合いが北欧諸国より強いものであります。英国型の特徴はほかに,対象図書館が公立図書館だけであること,対象資料が書籍と,2017年からはeブックが加わりました。受給資格者は,自国民に加えて,2011年からはEE諸国及びEFTAの公貸権制度に登録した著作者まで拡大しております。
 次に,オセアニア型です。オセアニア型の特徴は,対象図書館は公立図書館,対象資料は書籍,サンプル図書館での蔵書冊数を算定の基礎データとしています。これらの要件は,公共貸与権制度の中では一般的であります。特殊な要件として,オーストラリアは自国の国籍要件又は居住要件と,対象資料のISBNコードを必要としています。ニュージーランドは永住権,又は1年のうち半年の居住を課しています。
 次に,北欧型です。北欧型は,根拠法プラス,自国の言語,自国民が書いたもの,又は自国で発行された書籍を条件にしています。北欧型は,制度を最初に導入したため,制度の根拠となる根拠法を有しています。根拠法は公共貸与権法や著作権法など,国により様々であります。北欧型の対象図書館は公立図書館と学校図書館などがほとんどでありますが,フィンランドだけが公立図書館だけであります。対象資料の書籍について,自国語の言語で書かれているもの,自国民が書いたもの,自国で発行されたものなどの条件を国により課しています。サンプル図書館又は各図書館での所蔵冊数を算定の基準としている国が多いです。自国語の文化の育成及び発展に寄与することを主眼として公共貸与権制度を導入してきたため,貸出し回数による具体的な補償をするという考え方を取る国が少ないです。算定基準を貸出し回数にしているのは,スウェーデン,アイスランドだけであります。
 次に,著作権法型です。著作権法型は,著作権法の中で公共貸与権制度を構築していることが特徴であります。著作権法の中で規定しているので,権利の対象者,著作権者や対象資料を限定しないことや,受給資格の譲渡が可能になります。集中管理団体により金銭の管理がされている国が多いですが,支払者は政府,図書館,図書館を運営する法人など,様々であります。対象図書館は公立図書館と学校図書館などであります。オランダだけが公立図書館のみであります。
 著作権法の中でフランスが少しユニークな制度を有しているので,説明したいと思います。フランスは,著作権法の中に公共貸与権を設置しております。著作権法第3章図書館の貸出しにおける報酬,133の1から4条として規定されています。報酬は第1の部分と第2の部分の2つに分かれています。第1の部分は利用登録者数に応じて国が支出するものであり,学校図書館は算定の基準から除外されています。著作者と出版者の間で等分に分配されます。第2の部分は,図書館設置主体が書籍購入の際に支払う部分であり,公の書籍販売価格の6%を当てています。この部分は全体の半分を超えるものではありません。また,文筆活動及び翻訳を業とする者に補充退職年金として支払われる保険料に充てるものであります。これが管理団体のホームページに載せられていた最近の支払報酬額の配分の表であります。大体合計で1億7,000万円ぐらいを支払っているものと思われます。
 では,次にプログラム型です。根拠法を持たないプログラム型は,カナダやイスラエル,マルタが該当します。算定基準は,カナダが図書館の所蔵蔵書,イスラエルとマルタは貸出し回数を基にしております。対象資料は,いずれの国も書籍であります。イスラエルのみヘブライ語で書かれたものを要件とし,マルタはISBNコードを要件としています。カナダは国籍と永住権を要件とし,イスラエルは国籍を要件としています。マルタは特に国籍要件はありません。対象図書館は,いずれも公立図書館のみであります。受給資格者は,カナダは著作者,イラストレーター,写真家,編著者,ナレーター,翻訳家などで,出版者は含まれません。イスラエルとマルタは作家のみであります。
 ニュージーランドは1973年に,根拠法を持たない著作者基金として導入されていましたが,その後,2008年に著作者のための公共貸与権制度として根拠法を持つことになりました。
 では最後に,特殊な要件としてISBN型について説明します。2016年当時はISBNコードを要件にしていた国は,英国,オーストラリア,カナダ,オランダ,マルタの5か国でありました。もともと要件に入れていた国は少なかったのですが,2020年現在,ISBNコードを要件とする国は,紙の書籍だけを対象としているオーストラリアとマルタだけになっています。eブックやオーディオブックなどが導入されている国は,ISBNコードを要件としなくなっているようです。
 それでは,導入を検討している国について説明していきたいと思います。
 まず,台湾です。2019年12月31日に,台湾の教育部及び文化部――部は日本の省レベルであります――が,国立公共情報図書館及び国立台湾図書館において公共貸与権を試行導入することを発表しました。試行期間は2020年1月1日から22年12月31日までの3年間であります。適用される試行の範囲は,台湾人,台湾の法令に基づいて登記された法人又は民間団体が,国家言語,国家言語発展法3条に基づく台湾の全てのエスニックグループが使用する自然言語及び台湾手話を指します。又は外国で創作し,台湾で出版され,ISBNコードが付与されている紙の図書であります。補償対象は作者と出版者であります。補償金は作者が70%で,出版者が30%の比率で配分されます。作者には著作者,絵本の作画家,編著者,改編者,口述者などが含まれます。複数の場合は等分されます。死亡者や解散された団体には支払はされません。政府機関や公立学校などは支払の対象外であります。両館で補償金の適用対象となる資料は125万冊となっています。
 先ほども事務局の方から御説明がありましたマラウイ共和国なのですが,今,導入に向けて,2017年3月から草案に取り組んでいます。2017年1月に貸出権を認める新しい著作権法が議会を通過しているというような状況で,多分,このような状況なので,いろいろな情報が欲しいということではないかなというふうに思います。
 それでは,導入の検討をしたんだけれども,結局導入しなかったという国がアメリカ合衆国なんですが,それについて,アメリカ合衆国の経過,経緯について説明したいと思います。
 何度も繰り返しになりますけれども,公共貸与権制度とは,図書館の資料の無料貸出しによる著作者への損失補塡を行うために導入された制度であります。書籍の貸与権が権利化されていないアメリカ合衆国では,1980年代に公共貸与権制度の導入を検討しましたが,見送られています。アメリカ合衆国での議論は著作権法の改正によるもので,3つの方法が検討されました。その3つとは,1番として,強制使用許諾理論を利用する方法,追及権を導入する方法,ファースト・セール・ドクトリンの例外規定として定める方法の3つでありました。
 強制使用許諾理論とは,著作者の許諾を得ることなく当該著作物を利用できる理論であります。強制使用許諾の下では,著作権者の許可なく著作権に関わる作品を利用することができることになります。ライセンシーが制定法上の手続に従い定められた使用料を支払う限り,強制使用許諾は適用されていることになります。著作権法に規定されているものは111条,114条,115条,118条,119条の5つの条文と,第10章のデジタル音声録音機器及び媒体であります。
 次に,追及権について説明します。追及権とは,美術家が,自己の作品が再販売されたら常に販売価格から利益を受け取る資格があるという考えに基づく権利であります。この権利の問題点は,次の3つが考えられます。問題点1は,再販売が行われたら,何回でも再販売価格から報酬金が受け取れることであります。絵画という1点物の有体物の商品の販売に対して何度でも権利者に報酬金を支払うことは認められても,それは他の物品の商慣習に反するものであるからです。問題点2は,販売者が何回でも交代していくので,固定していないことであります。問題点3は,絵画等を媒介とした私人間の契約事項であること。支払原因となるのは私人間の契約であり,著作者が現実の占有をしていないものを基に契約を行うことになるため,追及権を基礎とする金銭支払も実質的には私人間の契約とならざるを得ないことであります。
 アメリカで,カリフォルニア州のみ導入されています。アメリカでの問題点は2つ考えられます。問題点1として,管理をしているカリフォルニア・アーツ・カウンシルの役割が,不明者の報酬金の一部を預かる程度の役割であること。問題点2は,報酬金は販売者が直接著作権者に支払うため,実際どの程度支払が行われているか把握しかねることであります。
 最後に,ファースト・セール・ドクトリンの例外規定について説明します。公共貸与権を著作権法の中に規定する場合,ファースト・セール・ドクトリンが最大の障害となります。法ではファースト・セール・ドクトリンが,書籍を公衆に貸し出す権利を図書館に与える根拠となっています。ファースト・セール・ドクトリンとは次のような内容であります。書籍の著作者は,その最初の書籍の販売からロイヤリティーを得ることはできるが,当該書籍が再販売されても,そこから経済的利益を受け取ることはできない。一旦販売された書籍の次の頒布において,著作者の権利は存在していないからである。
 3つの方法の説明は以上であります。
 これらのことを検討して導入しなかった理由は,2つあります。まず第1の理由,法律的な理由について説明します。公共貸与権が著作権法との関係で,著作権法の枠内に導入されなかった理由は,前に述べたように,著作権法109条(a)のファースト・セール・ドクトリンの原則との衝突が原因であります。ファースト・セール・ドクトリンが図書館に,書籍を公衆に貸し出す権利を与えているからであります。また,立法の審議の場で不成立になりましたが,その理由は,法案を提出する連邦議会の議員が公共貸与権制度の趣旨を理解していなかったため,公聴会も開けず,実質的な審議が行われなかったことが最大の要因であります。
 次に,経済的な理由であります。公共貸与権制度を導入した場合,報酬金が連邦政府の基金から出るものであれば,公立図書館の運営は州によるものであるため,公共図書館の大部分は影響を受けることはありません。しかし,公共貸与権制度の導入について検討していた当時,1980年代はレーガン政権であります。レーガン政権は,予算が歳出配分転換で軍事に転換されたことにより,福祉予算が削減されました。したがって,連邦予算から公共貸与権制度の基金の予算を取れる可能性が低い状況にありました。新たに予算を必要とする公共貸与権の導入については消極的にならざるを得ない状況でありました。
 様々な要因が考えられますが,最大の理由は,作家たちの補償金制度を求める運動の熱意が少なかったことも起因するように思われます。
 最後に日本の現状なのですが,先ほど事務局の方からも説明がありましたので,こういう事実があったということだけ述べたいと思います。我が国でも平成15年,2003年1月に文化庁の文化審議会著作権分科会で,図書館資料の貸出しについて補償金を課すことという議題で,公共貸与権について報告がありました。基本的には反対はなかったものの,日本の図書館における公共貸与権制度の付与については,その時点の議論のままで止まっています。また,平成15年,2003年は,書籍・雑誌に貸与権が付与されていない時期でありました。平成16年,2004年には著作権法附則4条の2が廃止され,書籍・雑誌に貸与権が付与されました。公立図書館の書籍の貸出しについて補償金を課すという制度は,その後検討されていません。
 最後にまとめなんですけれども,各国の公貸権制度を全部調べてみて,何か参考になることはないかなというふうにちょっと探していたんですけれども,ニュージーランドが今こんなことをしているので,これが参考になればと思って,まとめの言葉と代えさせていただきます。
 ニュージーランドは2019年の内務省の規制審査で,公共貸与権制度の改善の必要性を確認しました。2020年3月より公共貸与権制度の見直しが始まりました。見直しの項目は,公共貸与権制度の政策意図,資金調達,規制,範囲,運用手順であります。現在,対象資料は印刷された書籍のみとなっているため,電子書籍,オーディオブックなどの電子メディアの検討や,対象施設が全ての図書館になっていますが,学校図書館の除外などを検討していくことであります。ニュージーランドの見直しがWIPOにおける公共貸与権調査に関わる議論の参考になるのではないかと思い,まとめとさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

【道垣内主査】どうもありがとうございます。では,委員の方々から,今の御説明に対しまして御質問等ございましたら,是非よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

【鈴木委員】それでは,鈴木ですが,よろしいでしょうか。

【道垣内主査】どうぞ。

【鈴木委員】大変詳細な説明を頂きまして,稲垣様,ありがとうございました。大変勉強になりました。2点,質問とコメントのようなものを発言させていただきます。
 1つ目は質問ですけれども,先ほど事務局から御説明があったように,WIPOでマラウイ等から提案があったとのことであり,また,今の御説明の中でもマラウイが導入を検討しているというお話もありました。それにしても,途上国の観点から,こういった制度について勉強したいという,その背景はどんなものなんだろうというところがよく分からないでおります。このテーマについてずっと研究されてきた中で,途上国にとってこの制度がどのような意味を持つのかについて,何か思い当たる点があればお伺いしたいと思います。
 私が思いますところは,途上国にとってはむしろ,知識へのアクセスということが非常に重要なので,公共図書館の充実が非常に大事であり,そういう中で若干コストが上がる制度の導入について,どうして強い関心を持つのかなという点が,ちょっと気になるところです。
 2点目は,ほとんどコメントですけれども,この制度は,国によって違いはあるものの,著作権制度の中というよりも,それ自体,独自の文化政策的な措置という印象を持ちました。お話にありましたように,国の予算で対応する国が多いようですし,著作物性とか,あるいは著作権の存在とリンクしていないようにも理解しました。その著作物性とか著作権とリンクしていないということから,逆に自国民とか自国語の本に対象を限定するということが可能になっているのかなというふうに感じました。
 法的な観点から考えますと,もし著作権とリンクさせてしまうと,自国民に限定した制度は,多分,ベルヌ条約やTRIPS協定上の内国民待遇に違反するという議論もあり得ると思います。逆にいえば,そのように対象を限定する制度とするためには,著作権とリンクしない制度として設ける必要があるともいえると感じました。
 2点目はほとんどコメントで,もし理解が間違っていたら御指摘いただきたいという趣旨でございます。
 以上です。

【道垣内主査】では,よろしくお願いします。

【稲垣様】私も実はお話を頂いたときに,シエラレオネとかマラウイの国からこういう提案が出ているということを聞いて,大変驚きました。ある程度この制度は,ちょっと申し訳ないですが,文化的に発展している国でないと厳しいのではないかなというふうに思っています。おっしゃるとおり,図書館でまず本を読むことが今一番最大の,この2つの国では関心事ではないかというふうに思うんですけれども,私は,あえてこの調査を依頼してきた熱意を買いたいというふうに思うようになりました。将来に向けて,こういうような著作者を守るとか自国の文化を守るというようなことを国の政策として盛り込んでいけるようであれば,両国にとって,発展するに当たり,大事なことではないかなと思います。
 2点目なんですけれども,文化政策という意味合いが強いので,最初に導入した国の著作権法の中に枠組みで導入することをかなり検討してやめている国が多かったんですけど,やはりそれはおっしゃるとおり,著作権法の内国民待遇と衝突するので,ほかの国には払いたくないとか,自国民の著作者だけに払いたいという希望が強かったので,別の法律,公貸権法として制定して導入したという国が多いです。
 その後,EUの貸与権貸出権制度の導入により,強制的に著作権法に規定しなさいとなったので,EU諸国は著作権法の中に規定を入れていますが,5条(92年指令当時)にある貸出権の制限を認める指令の条文がありますので,著作権法と必ずしもリンクしていないような状況になっていると思います。
 あんまり回答になりませんけど,よろしいでしょうか。

【鈴木委員】ありがとうございました。

【道垣内主査】ありがとうございます。
 そのほか,何かございますでしょうか。

【前田委員】よろしいでしょうか,前田です。

【道垣内主査】どうぞ。

【前田委員】今日は大変詳細な説明ありがとうございました,勉強になりました。
 先ほど鈴木先生が2点目で質問されたこととほとんど同じなんですけれども,著作権法でやる国と,それ以外の法律でやる国があって,著作権法以外でやることのメリットというのは,内国民待遇の話もありましたけれども,例えば登録の有無とか,あとは権利の存続期間をどうするかとか,様々,自由に設計をすることが可能になって,よりその政策目的に照らして,公貸権という制度を設計できるようになるということなのかということでよろしいのかというのがまず1点目。
 2点目は,ちょっと細かい点なんですけれども,お話を伺っていると,ISBNがついているものに対象を限定するということがかつては多く取られていたということですけれども,これの目的というのは主にどういったところにあると理解すればよろしいでしょうか。
 最後,3点目お伺いしたいのが,特段,根拠法がないプログラム型で行っている国があるというお話でしたけれども,この法根拠法なくプログラム型ということの意義について,もう少しお伺いできればと思います。
 私からは以上です。

【道垣内主査】はい,よろしく。

【稲垣様】最初の著作権法との関係は,おっしゃったとおりでよろしいかと思います。
 それとISBNコードなんですけれども,これは紙の書籍についている書籍の番号でありまして,最初は紙の書籍,図書がほとんど――ほとんどというか,だったわけですから,これがあると特定しやすい。それから,かなり前から導入していますから,コンピューターが今ほど発展してなかったので,書籍の識別をするために必要としたんだと思います。
 根拠法なしのプログラムについてなんですけれども,特に,余り表明はされていませんが,やっぱり,著作権法との関係ではないでしょうか。自国民とか,そういう制限がありますから,法律をつくってしまうとやっぱり縛られると思うので,制度はやりたいけれども,法律まではつくりたくないというようなことではないかなと想像します。
 以上でよろしいでしょうか。

【前田委員】ありがとうございます。

【道垣内主査】ちょっと私から補足の質問ですが,そうすると,プログラムという意味は何ですか。法律でないのにお金を徴収できるのでしょうか。

【稲垣様】そうですね,企画,プロジェクトみたいな形で,一応,規定のあれはあるんですけれども,法律によって縛られてはいない,制度はあるけれどもというような形なんですけど。

【道垣内主査】全て国の予算で出すのであれば,予算の審議の中で,その項目を立てておくという意味ですか。

【稲垣様】はい,そういう意味だと思います。

【道垣内主査】よろしいでしょうか。

【前田委員】はい,ありがとうございます。

【道垣内主査】そのほか,いかがでしょう。
 どうぞ,奥邨委員。
 音が出ていません。出ていないですね。駄目ですか。通信が回復するまでの間,ほかの方,いかがでしょうか。
 では,私から1点だけ。電子化してきた場合に,これらの制度は対応できるのでしょうか。そもそも電子化された状態で,図書館でどのように貸与するのかがよく分かりません。eブックも公共貸与権の対象になっている国もあるようですが,eブックを借りるということがよく分からないので,ちょっと教えていただければと思います。

【稲垣様】英国では,一応,eブックを借りる権利として,レントアウトという権利を創設したようなんですね。それを貸出しとするみたいなことで,多分,各国もそれなりにしていると思うんですけど。

【道垣内主査】これは譲渡ではないわけですから,返すという行為が必要なんですよね。

【稲垣様】はい。始まったばっかりだと思いますけど,2017年から導入しています。課題になるのかもしれないですね,今後。

【道垣内主査】ほかの方,いかがでしょう。
 シエラレオネあるいはマラウイのためにWIPOの予算を使って調査するというのは全く筋違いだと思うので,条約をつくるつもりはないなんていうことを発言するセンスを疑いますが,日本としても,向き合うとすれば,当該国のためではなくて,国際社会として,このような制度を各国が共通に持つという状態をつくるのがいいのか,それとも無理なのか,あるいは理論的に著作権の枠組みの中に組み込むのが適正なのか,そうでないのか,そういうことが問題ではないかと思います。
 奥邨さん,いかがですかね。
 すいません,つながらないまま次に行くわけにいかないので,誰かつなぎをしていただきたいんですが。

【上野委員】では,ちょっと1点。

【道垣内主査】はい,どうぞ。

【上野委員】コメントさせていただいてよろしいでしょうか。

【道垣内主査】はい。

【上野委員】公貸権は,映画の著作物については日本も導入している(著作権法38条5項)と理解してよいと思いますし,その趣旨は,たしかに公益的な意味合いが強い国もありますけれども,他方では,公共図書館等が無料で貸し出しできるという大きなメリットを社会に与えている以上,著作者等に一定の利益が分配されるべきであるという私益的な側面もあると思いますので,私自身は,我が国でも映画のみならず他の著作物についても検討に値する課題ではないかと思っております。 稲垣さんに1つお伺いしたいのは,先ほどの御説明で,ヨーロッパの指令では,一定の公貸権を導入することが義務づけられているけれども,実際には導入できていない国もあるということでした。他方,私も昔,スウェーデンの公貸権制度について書いたことがありまして,北欧を中心として,自国の言語を用いた文芸作品・文化を保護して発展させるという意味合いの強い国がEU加盟国の中にも含まれると理解しておりますけれども,そのように公貸権の対象を自国のある言語に限定することが許されるのは,先ほどの御説明だと,貸与権指令5条の制限という規定に基づいて許容されているという理解になるんでしょうか。そもそも,内国民待遇みたいなこととは関係がないのかもしれないんですけれども,もしその辺で何か御存じのことがありましたら御教示いただけませんでしょうか。
 以上です。

【稲垣様】ちょっと言い方が悪かったのかもしれないですけど,公貸権制度を認めるという意味の例外規定なので,自国民うんぬんではないと思います。

【上野委員】そうすると,自国民だけに限定しなければ,自国語で書かれたものだけに公貸権の対象を限定するというのは,自由にやっていいということになるんでしょうかね。

【稲垣様】公貸権制度自体が自由なので,公貸権制度を認めるために貸出権に制限をかけたということだと思うんですけど。

【上野委員】どうもありがとうございます。

【道垣内主査】奥邨さん,いかがですか。もう1回トライしてみていただけますか。

【奥邨委員】聞こえますか。

【道垣内主査】聞こえます,はい,どうぞ。

【奥邨委員】すいません,ありがとうございます。
 2点あります。1点は質問で,2点目も質問と意見という形になります。ちょっとよく分かりづらかったんですが,資料に「対象」の記述はあったんですが,支払義務者は,基本的には,大体,どの国も図書館の設置者ということになっていると理解をしてよろしいんでしょうか。この制度の「対象」は図書館という説明があったんですけれども,誰が支払うんだろうということですね。例えば,場合によっては図書館ではなくて,図書館の利用者が支払ったものを図書館が支払うみたいな話もあるのかどうかですね。そこが1つ目の質問になります。
 2点目は,アメリカについて,強制使用許諾理論があげられていました。ただ,もともとアメリカには,日本風の貸与権というのはないわけですね。1回販売してしまうと,その後は,コンピュータープログラムと,それから,レコードを除く全ての著作物については,貸与権は全くないわけです。したがって,例えば,日本だったらレンタルビデオというのはきちんと許可を取らないとできないわけですけど,アメリカはレンタルビデオというのは自由にできるという国なわけですね。レンタルCDはできませんけれども。で,強制使用許諾理論というのは,権利があって強制使用ということなので,これが単独であるというよりは,まず,ファーストセールの例外とした上で,強制使用許諾という順番なのかなと思ったわけです。もともと権利がない場合は,強制使用許諾というか,そもそも勝手に使えるわけなので,ここのところはそういう関係なのかなと思ったので,そこをちょっと伺いたいなというのがあります。
 あと1点,コメントみたいなものですけれども,仮にこれ,国際的に著作権の枠組みでハーモナイズするかというと,私はないと思います。というのは,アメリカが絶対にこの枠組みに入ることはないと思います,ほぼ断言できると思います。というのは,現状,アメリカのファースト・セール・ドクトリンの考えは極めて強力で,従来ずっとアメリカ政府は,並行輸入について国際消尽は認めないと言っていたんですけれども,最高裁が,ファースト・セール・ドクトリンというのは,国内であろうが,国外であろうが,特許であろうが,著作権であろうが,全て認められるんだと言ってしまったというぐらい強力なものですから,その流れの中で,著作権という枠組みでは,アメリカは,やはりハーモナイズは難しいのではないかなと。ですから,最初,鈴木先生からお話がありましたように,文化政策としてこれを考えていくということは十分あっていいと思うんですけれども,著作権という枠組みでは難しいのかなと個人的には思っております。質問は最初の2点になります。
 以上です。

【道垣内主査】お願いします。

【稲垣様】最初の御質問は,支払者についてですよね。ちょっと分かりにくかったと思うんですけど,国とか設置者の基金からでないとお支払が難しいので,ほとんどが設置者となっております。図書館が払うという国は,オランダが有料なので,利用者からお金を取っているので,オランダは図書館からの利用料も含めて支払をするようになっているようです。
 それから2点目は,ちょっとよく分からなかったんですけど,ファーストセール……。

【奥邨委員】すいません,強制使用許諾というのは,そもそも権利があるから強制使用許諾という話になるわけですね。ところが今,アメリカは貸与に関して権利がないので,なぜ,いきなり強制使用許諾という話になるのかなというところをお伺いしたということになります。

【稲垣様】強制許諾理論というのを使って導入できないかなということなので,貸与権ということではないんですけど,これは公貸権が導入できるかどうかと検討したときに出てきた話であります。

【奥邨委員】分かりました,ありがとうございます。

【道垣内主査】ほぼ予定の時間になりそうですけど,何かあれば。
 どうぞ。

【生貝委員】よろしいですか,ありがとうございます,すみません。
 稲垣様,非常に貴重な御説明ありがとうございました。僕自身もやはり本件,シエラレオネ,マラウイからこういった提案が出てきているということ,非常に背景が不思議に思っているところはあるのですけれども,ある種の,特に途上国向けのアドボカシーといったようなことをWIPOを通じて行おうといったような向きというのも,もしかするとあるのかなとは想像するところではあるのですけれども,いずれにしましても,やはりこの問題,途上国とそれ以外の間でも,あるいは様々なステークホルダーの間でも,いろいろな議論が,意見の立場というものがある問題だと認識していまして,そして実際に,特に図書館団体の国際関係のホームページなどを見ていても,やはりこの提案が出された後に,いろいろな慎重意見ですとか,あるいは,そもそもこれはWIPOではなくてユネスコで取り扱うべき問題なのではないかといったような意見を含めて,様々出ているところです。今回は,国内問題ではないにしても,国際的に我が国がこの問題についてどういうスタンスを取るべきかというのは中長期的にも非常に重要なことになってくるかなと思うのですが,恐らく,様々なお立場の意見というものをしんしゃくする必要があるといったときに,稲垣様が把握している限りで,こういった制度そのものに慎重である立場といったような議論というものは,どういう論拠や理由に基づいているのか,これが1つ,質問でございます。
 それからもう一つ,これはコメントなんですけれども,先ほど座長からもございましたデジタル貸出しに関わる部分というのは,2016年にEU司法裁判所でも重要な判決が出ていて,公共の貸与というものをデジタル形式でも現行指令で行うことができるという判断を出されたところで,こうしたものが,ある種,図書館あるいは知識のデジタル化の促進というものに関わっていくことができるのだとすれば,やはり,これからの非常に重要な論点にもなってくるかと思いますので,これは我々,国内的にも勉強しておく必要がある論点だと意識しています。
 すいません,1点目だけが質問です。

【稲垣様】御質問は,慎重な対応を取っている国があるかということでしょうか。

【生貝委員】こういった仕組みの導入に慎重な意見を出している方々の立場からの意見ということです。

【稲垣様】もう大分,導入すべき国は導入しているので,今,そういう話は余り聞かないんですけれども,先進国とかEUに関してはほとんど入っているわけで,導入するかしないかだけかなと思うんですけれども,どのぐらいの程度のことをお聞きになりたいのかよく分からないので,すいません,この程度しか答えられないんですけど。

【生貝委員】分かりました,すみません,ありがとうございます,大丈夫です。

【道垣内主査】WIPOで何か条約をつくりましょうみたいな話になってくると,多分,いろいろな意見が出てくるのだろうと思います。
 ありがとうございました。
 今日は有益なお話を頂きまして,ありがとうございました。
 続きまして,議題の4番です。今年度実施した調査研究についてでございます。
 文化庁では,海賊版対策の事業の一環として,日本の権利者の海外における権利行使の支援のため,海外の法制度や権利執行の手続を権利者向けに分かりやすくまとめた著作権侵害対策ハンドブックの作成を行っております。
 今年度は,特にインターネット上の海賊版対策に焦点を当てて,そのハンドブック,特にアメリカ,ベトナム,ロシアについてのものを作成しております。この調査研究の委託を受けておられるコンテンツ海外流通促進機構CODAの墳﨑委員から,現時点までの作業状況を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑でございます。
 本日は,このハンドブックの作成について,私の所属する事務所でも業務をやっておりますので,その表題でスライド作成させていただいております。まだ仕掛かりのものになっておりますので,途中経過ということでお聞きいただければと思います。
 まず,本件の作成の経緯としましては,インターネットが普及し,かつUGCの発達やSNSの普及ということがあり,侵害態様が多様化しているということは従前から言われているところではございますが,これに加えて,発信の場が広がってきたという部分もあり,1ユーザーがいわゆる権利者となり発信して,そのコンテンツが侵害にさらされるというような状況もありまして,侵害対策についてのハンドブックを作成するということで,1ユーザーの方も自分で対応できるようなものを作っていければということで作成を進めております。
 本件ですけれども,内容に入る前に,進め方としまして,まず,CODAで会員企業や業界団体の皆様にアンケートやヒアリング等を実施して,現在の権利行使の状況や,また,関心のある国などについて聴取,お話を伺った上で,項目等を決めさせていただいております。その上で,CODAで案文等を作成して検討委員会というものを組成して,そこで項目及び内容について検討していただいているところでございます。検討委員会の御参加メンバーについては,詳細は割愛させていただきますが,本日御出席いただいている道垣内先生や奥邨先生にも御参加いただいており,また,各権利者,音楽業界,その他アニメなどのコンテンツ業界の皆様にも御参加いただいているところでございます。
 続きまして,内容ですけれども,大きく総論と各論に分かれております。
 まず,総論については,どういう態様の侵害というものがあるのかということの簡単な御紹介の後に,どういった対応が取り得るのかということ,インターネット上の侵害なので,様々な国から侵害が行われております。それについて,もちろん各国での対応というのがあるんですけれども,いわゆる削除要請など,各国におけるいわゆる権利行使とは別に,我が国で取り得ることを,まず,総論でまとめさせていただいております。
 その後,各論で,各国における対応方法を論じさせていただいております。本年度は,先ほど道垣内先生から御説明のあったアメリカ,ロシア,ベトナムを対象国とさせていただいております。こちらは,先ほど申し上げたアンケートの中で,皆様の関心の高い国というものを文化庁様とも相談させていただいてピックアップさせていただいたものになります。なお,最も関心が高かったのは中国だったんですけれども,中国に関しては,皆様御存じのとおり,今,法改正が大きく進んでいるところでございますので,今回のタイミングでやると改正内容が反映されないということになりますので,本年度は中国については見送るということで,この3か国を対象とさせていただいております。
 まず,内容,項目ぐらいの説明にはなってしまうのですけれども,まず,総論としまして,著作権侵害の対応として,ここに書かせていただいたような動画配信サービス,ファイル共有サービス,ファイルストレージサービス,オンラインリーディングサイト,スマートフォンアプリやソーシャルネットワークでの侵害,掲示板,また,リーチサイトについても言及させていただいております。
 また,これまでのハンドブック等では余り言及していなかったんですけれども,いわゆるEコマースサイトでのキャラクターグッズの販売等も,最近,CODAに質問等も多く寄せられている部分でありますので,今回のハンドブックでは対象として上げさせていただいております。
 インターネット上の海賊版コンテンツの対応としましては,正に先ほど申し上げたとおり,削除要請というのがメインになりますので,まず,削除要請の内容を説明させていただいて,その後に代表的なサイトの削除要請窓口と権利保護プログラム等の御紹介をさせていただき,その他の対応方法について御紹介させていただく予定であります。
 削除要請方法につきましては,皆様は御存じのことだと思いますので割愛させていただきますが,どのような形で削除要請をするのかということを記載させていただく予定です。申請書や例文等も含めて,ここで御紹介させていただく予定です。
 また,代表的なサイトというと,よく皆様のお話の中で上るのは,やはりYouTube,量が多いだけに対応することも多いので,YouTube等についてのプログラム,ここは制度自体は整っておりますので,どうやればいいのかという御紹介をさせていただいております。
 また,先ほど申し上げましたとおり,コンテンツサイトに関して言うと,結構,権利者の皆様も独自に対応されたりすることもあって,情報はある程度お持ちのことが多いんですけど,他方で,先ほど申し上げたキャラクターグッズとかのグッズの対策に関しては,まだまだ難しい部分もあったりして質問等が多いということもありまして,タオバオ,アリババグループという中国におけるECサイトにおける削除要請の仕方についても,別途,詳細に御説明をさせていただく予定です。
 また,その他,CODAで削除センターを現在も運営しておりますので,そのところで利用している各ウェブサイト等への削除要請の窓口等についても御紹介をさせていただく予定です。
 さらに,削除要請,当然ながら,基本的には任意の削除を求める対応になりますので,前回のCODAの取組の御報告でも御紹介させていただきましたけれども,削除要請に対応できない場合においても,我が国において取り得る手段を紹介させていただいております。ここに挙げている5つのようなものがありますが,1つ目がGoogle様等にも御協力いただいております検索結果の表示の停止要請やアプリの配信を止めていただく要請,また,侵害サイトにおける広告出稿の停止要請,また,侵害サイトにおいて利用されているカード決済や銀行口座の停止の要請,さらには,セキュリティーソフト会社様へ情報提供させていただき,いわゆるユーザー様がそこの侵害サイトに行こうとしたときに警告が出るような仕様としていただくというようなことがあります。
 また,日本における刑事告訴や民事訴訟というものも一応考えられるところではありまして,それを前提とした警告状の送付などもあり得るかと思います。ただし,これは相手方の所在地などが分かっていないと難しいところでありますので,限定的な対応になるかなとは思っております。
 さらに,今回の構成としましては,今言ったような実務的な対応をどうするかということを記載させていただいた後に,参考として,法的な解説等を入れさせていただいております。総論においては,削除要請における著作権法に関わる部分と,あと,DMCAが削除要請の基本的な内容をつくっていますので,そこについての簡単な説明。
 さらに,こちらも検討委員の皆様からお話のあったところではありますが,インターネット上の侵害の場合の裁判管轄や準拠法はどうなっているんだということが御関心のある部分ということですので,こちらについても,ここで解説をさせていただく予定です。
 総論としては,今のような形で,全般的な,どの国の侵害であっても,こういうことを一応やることが考えられますよということを紹介させていただいております。その上で,運営者の所在地が分かったとき,プラットフォームか運営者の所在地が分かったときの各国対応としての各論というのを別途つくらせていただいております。
 各論につきましては別途,先ほど申し上げましたとおり,アメリカ,ロシア,ベトナムが今回の対象となっております。アメリカについては,実は以前にもハンドブックが作成されたところもありまして,ロシア,ベトナムが今回正に新たに作成させていただいている部分になります。時間の関係もありますので,本日は,新しいところのロシアとベトナムについて,現状,こういったものが報告対象となっておりますということで,さわり程度ではございますが,御紹介させていただきます。

【中村様】弁護士の中村と申します。このたび,本ハンドブックの作成業務に従事させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では,私から,まず,ロシアにおける侵害対策の方法について御説明させていただきます。
 侵害対策の方法としては大きく6つでございまして,まず削除要請,続いて警告状の送付,刑事告訴,民事訴訟,行政手続,最後に,その他侵害対策となっております。
 続いて,ロシアにおける,刑事手続の流れは以下のとおりとなっております。まず,①刑事告訴状の提出又は情報収集活動。こちらは新会社の土地家屋への強制捜査による偽造品の発見等が含まれますが,こうした情報活動の結果としての警察若しくは調査委員会,こちらは厳密にはロシア連邦捜査委員会というようですが,こちらによる犯罪摘発。
 続いて,②調査委員会による刑事訴訟の開始。こちらは,刑事訴訟の開始後,より多くの証拠を入手するために,さらなる強制捜査が行われるということもあるようです。
 続いて,③調査中に調査委員会の申立てに基づいて暫定的な差止め命令が出されることがございます。こちらは被疑者の逮捕等が含まれております。
 続いて,④検察庁による正式な起訴の承認。
 続いて,⑤検察官が国の代理人として行う裁判所における事実審。
 最後に,⑥判決ということになります。
 刑事手続の要件ですが,ロシア刑法第146条第2項に基づく刑事上の著作権侵害における唯一の条件として,著しい損害との因果関係というものが求められております。この因果関係についてなんですが,無権限の複製物の対価又はライセンスが10万ロシアルーブル,約1,300米ドルを超える場合に認められるとされております。
 続いて,ロシアにおける民事手続の流れなのですが,以下のとおり,①訴訟提起,②予備審問,③主審理,④判決言渡しとなっております。モスクワ市裁判所における訴訟手続に関しましては,侵害が繰り返される場合,原告は当該ウェブサイトの永久遮断,サイトブロッキングを求めることであったり,著作権侵害のあるウェブサイトのミラーサイト,すなわち,異なるドメイン名で複製されたブロックされたウェブサイトのコピーでありますが,こちらに対する裁判外での遮断手続を求めたりすることもできるとされております。
 続いて,ロシアにおける行政手続,いわゆるウェブサイトの遮断,ブロッキングの流れは,①検察官への告訴状の提出,②当該ウェブサイトへのアクセス制限に係る検察官による公訴提起,③マスメディア,情報技術及びマスコミュニケーションの監督に関する連邦政府サービス,検察官,当該ウェブサイトの登録者及び権利者が参加する裁判所による審理の実施,④裁判所の判決に基づく当該ウェブサイトへのアクセスの制限ということになっております。
 次に,ベトナムの説明に移らせていただきたいと思います。
 ベトナムにおける侵害対策の方法としては,以下の6つが考えられます。(1)削除要請,(2)警告状の送付,(3)刑事告訴,(4)民事訴訟,(5)行政手続,最後に,(6)その他の侵害対策となっております。
 ベトナムでは,著作権問題に関する判例や裁判例を閲覧できる制度というのは存在しておりません。そのため,注目度の高い著作権侵害については,非公式な概要を示す報道記事等が存在はするのですが,詳細な情報を入手することは難しい状況となっております。従いまして,裁判例を具体的に検索し,権利行使の実情を知るということは,現時点では難しい状況となっております。
 続いて,ベトナムにおける行政手続について説明させていただきます。ベトナムにおいては,迅速性及び費用対効果の高さから,行政手続による救済というものが最も利用される手続の1つとなっております。具体的な行政処分の内容なのですが,警告,罰金,模倣品原材料及びこれらの模倣品の製造又は取引に主に使用される手段の利用の阻止,侵害を行われた領域による事業活動の一定期間の停止,模倣品を強制的に破壊,流通ルートの阻止又は非営利目的における使用並びにこれら模倣品の生産または使用された材料の利用停止,権利を侵害する通過貨物のベトナム領域外への輸送,強制輸送又は模倣品の強制的な再輸出,こちら,原材料及びこれらの模倣品の生産又は取引のために使用原材料及び材料については商品化などの状況も含まれます。
 続いて,インターネット若しくはデジタルプラットフォーム上における複製物の強制的な除去又は物理証拠の破壊。
 行政手続の流れにつきましては,以下のとおりとなっております。①権利者の請求又は関連当局による違反の発見,②管轄当局による違反内容の審理,③行政処分の適用決定,④処分対象侵害行為の停止命令,最後に,⑤行政違反の記録となります。
 以上となります。ありがとうございました。

【道垣内主査】ありがとうございました。報告書の納品期限が迫っている状況ですので,この時点で新たにあれもこれもと言われても困るかもしれませんけれども,委員の方々からコメントあるいはこの点を少し調べてみたらというアドバイスがありましたらいただければと思います。いかがでしょうか。

【今村委員】よろしいでしょうか。

【道垣内主査】はい,どうぞ。

【今村委員】いろいろな調査項目があって,調査研究の結果,が楽しみになるのですけれども,先ほど,権利行使の費用対効果という話があって,これは調査報告書に盛り込むべきとか,そういう話ではないのですが,実際,外国でこういった権利を行使するときの相場感というんですかね,実際にやって意味があるのかどうかということ,意味がなくても,使命感で,何か著作権を行使するという部分も権利者の中にはあるのかもしれませんけど,実際には,費用に見合わなければ野放しにしてしまうということも多くあるとは思うんですよね。その相場感みたいなものが少しでもそのハンドブックの中でうまく分かるような形になれば,読む方にとって,実際,活用してみようかという気持ちにもなったりするかなと思いました。今回,もうそろそろ納品が迫っているということなので,どのぐらいコストがかかるかということは盛り込めない部分はあるかもしれませんけれども,実際に,国ごとにかかる費用なんかも随分違いそうですし,やって意味があるのかどうか,ロシアとベトナムでも随分違うような気もしますので,その辺の費用ですね。もちろん,行政手続にどのぐらい費用がかかるのかとか,そういったことは入っているんだと思うんですけれども,実際,トータルでどのぐらいの費用が海賊版対策にかかるのかということの目安みたいなものが分かるようになったらいいなと感じました。ただ,今回,そういうことを報告書に盛り込むということとは別の話でございます。

【道垣内主査】御配慮いただきながらの質問,ありがとうございます。答えられる範囲でお願いします。

【墳﨑委員】ありがとうございます。正に今回,各国の情報は当然,各国の代理人事務所,弁護士事務所を使ってやっておりますので,その事務所において,平均的にこれぐらいかかるよということは,当然,出せるかなと思っております。ただ,事務所によって当然金額が変わってくるので,どこまで出すかというのは,情報は収集させていただきたいと思っていますが,どこまで書くかは文化庁様と御相談させていただければと思っております。
 また,効果というのは結構難しくて,要は,あるコンテンツを消せるという部分と,結局,また次,わらわらと出てきてしまうではないかという部分で,どこまで効果があるのかというのは,やはり海賊版対策の永遠の課題みたいなものになってきていて,もちろん,民事行使とか刑事手続をやって,その他の侵害者に対する抑止力という部分もかなりあるわけで,1つのアクションにおける効果というのがどこまで波及するかというのは,正直言うと正確には把握し切れないので,なかなか言及が難しいのかなと思っております。
 実は,これに関しては御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが,2009年だと思いますけれども,経済産業省で,模倣品海賊版対策の費用対効果みたいな研究をやっているんですね。それの中でも,結局,算定はものすごい難しいみたいな結論が出ているところでして,実は私が経産省にいたときに関わっていたものではあるんですが,そこもあるので,どこまで書けるかという部分は,まだ検討会は2回ほど残っておりますので,そこで委員の皆様に御意見を伺った上で検討させていただきたいと思います。

【道垣内主査】ありがとうございます。確かにサンプルだけでも,大体の相場が分かれば参考になるのではないかと思います。ただ,ロシア,ベトナムといった国は調べるのが大変そうかなと思いますが,可能であればやっていただきたいと思います。
 そのほか,いかがでしょう。
 どうぞ。

【渡邉委員】電気通信大学の渡邉と申します。
 この調査報告にということではないんですけれども,最近のインターネット上の海賊版のアクセス状況に関して,少し伝えさせていただいてもよろしいでしょうか。

【道垣内主査】どうぞ。

【渡邉委員】ここ数か月において,海賊版のアクセス数がものすごい急激に増加している状況がありまして,どの程度かを簡単にお伝えすると,漫画村などの影響で,海賊版のアクセス数が顕著に多かったと言われている,2018年の3月の海賊版総アクセス数をここ数か月は超えている状況です。出版社の皆さんも,危機的な状況だと思っていると思います。また,先ほどリーチサイトの報告がなされましたが,主要な海賊版サイトは日本のサーバではなく,現在伸びている海賊版サイトももちろん日本のサーバではないので,先ほどもおっしゃっておりましたが,海賊版対策はいたちごっこで大変であるなと感じております。すいません,何の解決もないコメントだけになって。

【道垣内主査】ありがとうございます。それは特定のサイトについて,アクセス数を,調査した結果なんですね。

【渡邉委員】そうですね。海賊版の調査を継続的に行ってきています。前回もお伝えさせていただきましたが,3サイト,新規に急激に伸びているサイトがあり,それらの影響で,ここ数か月海賊版サイトアクセス数の勢いが増している状況です。

【道垣内主査】分かりました。この報告書の意義が高まっているということかとも思えます。ありがとうございました。
 そのほか,よろしゅうございますか。
 どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】本当に基本中の基本だと思うのですが,権利の上に眠らないというのは絶対大事なこと。効果とかいろいろなことを言う前に,やっぱり権利者が権利主張しない限り,私権である以上,行政,国家に対してのアピールという側面もありますし,私がかつてイタリアでやったときの経験から言うと,日本と同じようなレベルの民主国家で,自由主義国家については,権利主張しないことには相手にされない。また,メディアも巻き込めないので,やはり原則,効果とかいう前に,まずは権利の上に眠らないというのを権利者が徹底しなければならない。このネット社会では主張しないと,権利の主張だけではなく,日本の文化を愛でてもらうためにもきちんと主張すべき。コストとの関係は難しいのかもしれないけど,権利者の気持ちとしては,常に権利主張していくんだと,権利の上に眠らないというのが,私は40年近くこの仕事やっていて,そういうところを絶対に忘れないというのが大事だと思います。

【道垣内主査】ありがとうございます,御経験に基づいての御意見ですね。イタリアについて御報告された際のことを覚えておりますが,イタリアでは正規版が流通してない状況でしたね。そういうことだと,海賊版対策をとるビジネス上のインセンティブは全く湧かないわけですよね。

【久保田委員】おっしゃるとおりです。

【道垣内主査】ロシア,ベトナムで正規版のルートは持っているところでないと,なかなか,やろうという気にならないのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

【久保田委員】そうですね。

【道垣内主査】墳﨑さん,いかがでしょうか。

【墳﨑委員】貴重な御意見ありがとうございます。正に正規版が流れているところでないと,余りやろうと思わないというのはおっしゃるとおりなんですが,インターネット上の話ではありますので,例えば,ベトナムでやられているインターネットにアップされている行為であっても,日本で見られてしまうんですよね。そうすると,日本の市場が荒らされるので,そういう意味では,やはり権利者としては,やらざるを得ない状況にあると考えております。

【道垣内主査】分かりました。海賊版という名前も変えなければいけないですね。
 時間の関係もございますので,よろしゅうございますでしょうか。もうあと2つ,あります。
 では,次の5番目の議題です。この小委員会の審議状況の取りまとめでございます。分科会が近々予定されていまして,そこにおいて私から,今期の国際小委員会の審議状況の報告をいたします。そのベースになる紙について原案がございますので,それを見ていただいて,御意見をいただければと思います。これについて御説明いただけますでしょうか。

【奥田国際著作権専門官】ありがとうございます。事務局でございます。
 それでは,資料5を御覧ください。こちらは,先ほど道垣内主査からもございましたが,今年度の国際小委員会の審議のまとめとなっておりまして,この資料に基づいて,本小委員会の親会である著作権分科会において,主査から審議状況を御報告いただくことを予定しております。
 お配りしている資料5は,10月に開催された第1回国際小委員会の内容を中心に記載しておりますが,この会議終了後に,本日の御議論の内容について事務局で追記いたしまして,改めて委員の皆様にメールでお送りして,御確認をお願いしたいと考えております。
 資料の建て付けとしましては,1ポツのところで,本小委員会の検討課題である(1)著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,(2)国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方を記載しておりまして,2ポツの(1),それから5ページ目にございますが,2ポツの(2)がそれぞれの課題に対応した審議状況についての記載となっております。
 委員の皆様には,特に御自身の御意見で見落とされている部分がないかといった点を中心に御確認いただければと考えております。現時点で内容についてお気づきの点がございましたら,この場でも結構ですし,後ほどメールでお送りしますので,追記部分に関する御意見と併せて,そのメールに御返信いただく形でも結構ですので,御指摘いただけますと幸いです。
 なお,非常にタイトな日程となることが予想されますので,非常に短い期間で資料の御確認をお願いすることになるかと思います。委員の皆様には,お忙しいところ大変申し訳ございませんが,どうか御協力のほど,よろしくお願いいたします。
 以上です。

【道垣内主査】いつもながら,短い期間で見ていただくことになります。
 この小委員会は,必ずしも対立した意見があるわけではないので,何を盛り込むかということかと思います。よろしゅうございますか。
 この後意見を頂いて,更に再修正しなければいけないわけですけれども,最後の段階の修正は私に御一任いただくという形でお願いしたいのですが,よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】どうもありがとうございます。
 では,そうやってまとめることになる経過報告書を文化審議会著作権分科会に報告させていただきたいと存じます。
 最後,6番目は,その他と書いているだけですが,事務局あるいはその前に委員の方々から,この際,何かございますか。
 事務局から,はい,お願いします。

【白井専門官】事務局から,2点,御報告させていただきます。
 資料がなくて恐縮ではございますが,国際小委員会ですので,日英EPA,それからRCEPの現在の状況,その中でも,著作権の扱いにつきまして御報告させていただければと思います。
 まず,日英EPAですが,こちらは10月に署名,先の臨時国会において条約が承認され,1月1日に発効しております。著作権に関しては,著作者と実演家,レコード製作者及び放送機関に対し,譲渡権や送信可能化権等の排他的権利を与えること。著作物等の保護期間を原則著作者の死後70年以上とすること。それから,日英双方の著作権等の集中管理を行う団体間での協力の促進等に努めることなどの規定が設けられております。基本的には,日EU・EPAの規定内容をベースとしており,我が国については,日英EPAを締結するために,新たに著作権法の改正を行う必要はありません。
 次に,RCEP協定ですが,こちらは11月にRCEP首脳会合がテレビ会議形式で行われました。そこで署名が行われております。著作権に関しては,主に,署名国に対し著作権関連条約へ加盟する義務。それから,実演家,レコード製作者,放送事業者の権利を保護する法制上の措置を講ずること。それから,著作権等を侵害する行為に対する民事及び刑事措置を設けることなどの規定が設けられております。こちらも,我が国については,RCEP協定を締結するために,改めて著作権法の改正を行う必要はありません。ただ,RCEP関係国においてこのような措置の法整備がされることとなることで,ひいては我が国の権利者も適切に法的措置を講ずることができるようになることが期待できると思っております。
 事務局から,最近の条約及びEPAの関係の動きにつきまして,報告は以上となります。

【道垣内主査】どうもありがとうございます。
 ほかの方からもよろしゅうございますでしょうか。
 では,この国際小委員会,今年度はこれで最後になります。いろいろ助けていただきながら進めてまいりまして,一応,無事に終わりました。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。

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