文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

日時:
令和4年8月23日(火)
13:00~15:00
場所:
オンライン開催
(文化庁特別会議室)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)主査の選任等について 【非公開】
    2. (2)第22期国際小委員会における検討の方針及びワーキングチームの設置について
    3. (3)WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
    4. (4)今年度実施している調査研究について
    5. (5)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

第22期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

令和4年8月23日

  • ○今期の文化審議会著作権分科会国際小委員会委員を事務局より紹介した。
  • ○本小委員会の主査の選任が行われ、上野委員が主査に決定した。
  • ○主査代理について、上野主査より茶園委員が主査代理に指名された。
  • ○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【事務局】お願いします。

【上野主査】傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮ください。また、音声とカメラをオフにするようにしてください。

改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど本小委員会の主査の選出が行われ、私、上野が主査を務めることとなりまして、主査代理として茶園委員を指名いたしましたので御報告申し上げます。

さて、本日は今期最初の国際小委員会となりますので、中原文化庁審議官から一言御挨拶をいただきたいと存じます。

【中原審議官】文化審議会著作権分科会国際小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして、御協力、御指導いただいておりますとともに、このたびは、御多用の中、国際小委員会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。

昨年度は、昨年7月に文部科学大臣から諮問されました「デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」を踏まえまして、我が国のコンテンツの海外展開、及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方について集中的に審議を行っていただきまして、それぞれ中間まとめを取りまとめることができました。また、昨年度の本小委員会でいただいた御意見も踏まえまして、今月中に著作権侵害対策のための相談窓口というものを開設する予定でございます。

今年度は、WIPOにおいて議論されている、放送条約を含みます著作権保護に向けた国際的な対応の在り方や、正規版の流通を含めまして、国境を越えた海賊版による著作権侵害について御審議をいただきたいというふうに考えてございます。委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、積極的な御議論をお願いしたいと存じます。

私からの挨拶は以上でございます。何とぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】中原審議官、どうもありがとうございました。

それでは、初回でございますので、議事の2に入る前に、委員の皆様からの自己紹介をいただきたいと存じます。一応1人当たり一、二分程度でお願いしたいということでございます。資料1の名簿の順でお願いしたいと存じます。

では、まず、生貝直人委員からお願いいたします。

【生貝委員】一橋大学の生貝でございます。去年から引き続き参加させていただいており、専門の情報法の観点から著作権法を勉強しております。

簡単にということでございましたので、2点ほどなのですけれども、やはり今、特にデジタルプラットフォームの拡大でございますとか国際的なコンテンツ流通含めて、各国の法制が我が国に直接影響を与えてきていたり、そのこととのハーモナイゼーションというものの重要性が改めて高まる中で、本当にこの国際小委における活動というのはますます重要性を増しているんだろうと思います。

そうしたときに、例えばヨーロッパで著作権法というとデジタル単一市場著作権指令が有名ですけれども、海賊版対策ではデジタルサービス法が非常に重要だ、あるいは様々な著作権政策に競争法ですとか消費者、契約法が関わってきたりといったような、様々な法同士のネットワークというのも今、国際的な構築が進んでいる。そういったようなことをどう参照して我が国に生かしていくのか、私の専門からもそういったことに貢献したいなというのが1つ。

2つ目は、やはり改めて技術の重要性、これは海賊版対策、例えばCGMの上での仕組みなどについても技術の重要性というのはますます拡大していますし、あるいは、以前も少し言及したコピーライト・インフラストラクチャーでありますとか、ヨーロッパで進展するデータスペースの取組というのが著作権政策にどのような影響を与えていくのか。テクニカルスタンダードのようなところも含めて、法だけにとどまらない、まさにそういう技術、スタンダードの進展というのも、こういった国際小委では見ていかなければならないのだなということを最近改めて感じております。

以上、今期よろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、伊東敦委員、お願いいたします。

【伊東委員】一般社団法人ABJで、あと集英社という出版社で海賊版対策に従事しております伊東と申します。私も昨年より引き続きということになりますが、一般社団法人ABJという海賊版対策の団体で、プラス集英社という出版社で海賊版サイトに日々向き合っておりまして、海賊版サイトの運営者は、ほぼ100%近くが海外に在住していて、使っているサービスは全て海外のITサービスであったり、広告出稿も広告配信事業者等、全部海外ということで、今、日々戦いは海外が主戦場になっております。ですので、その海外においてどのように海賊版対策、海賊版に向き合っていくかということが、今非常に、本当に重要になっておりまして、なかなか出版物、特に漫画やアニメに関しては、日本国内だと非常に重要なコンテンツという認識がありますけれども、海外においては、何それ、大事なものなのとかという残念な対応をされることも結構ありますので、海賊版対策という部分と、あと大事なコンテンツであるということを世の中にきちんと発信していく必要があるということを日々強く感じております。

この会議体が有効な対策を生み出せるものになるように協力していきたいと思っていますので、皆様よろしくお願いいたします。

以上になります。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、井奈波朋子委員、お願いいたします。

【井奈波委員】井奈波朋子と申します。よろしくお願いいたします。私は平成8年に弁護士登録をし、現在に至っております。弁護士になった後にフランスに留学しまして、その関係で、フランスに関する著作権制度について、文化庁様が主催する研究などにおいて御報告する機会をいただいております。平成25年からは本国際小委員会の委員を務めております。

著作権関係の弁護士業務としましては、主に個人アーティストの方々から様々な御相談を受けております。このようなアーティストの方々の個々の力量は非常に大きいと思いますので、こういった方々が国際的に活動できるように、日本のコンテンツの国際的な流通と保護のためにお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、今村哲也委員、お願いいたします。

【今村委員】明治大学の今村でございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

私自身はイギリスの法制度などを中心に、著作権について研究をしております。特に近年ではイギリスも、2010年代の初め頃に拡大集中許諾を採用しまして、まだ実際に運用されていませんが、そこでの問題点とか課題とか、そういったことを最近では研究しております。

海賊版との関係でいきますと、コロナ禍の中、やはり家族で家にいることも多く、そうするとゲームとか映画や音楽、アニメや漫画などについて、日本のコンテンツの力をすごく感じる機会が多くなりました。それで、特に漫画業界の皆さまを中心とした、出版業界でもかなり積極的な取組を始められて、何か訴訟でうまくいったとかいう話を聞くと、心強い気持ちになったりとかしております。やはり日本のコンテンツというものが世界でどれだけ収益を上げられるのか、あるいは日本でどうやって海賊版の視聴を防ぐのかということも含めて、条約という枠組みが世界にあるわけですから、それを活用しつつどう守っていくのかという議論について、積極的に、この小委員会なども含めて参加させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、唐津真美委員、お願いいたします。

【唐津委員】弁護士の唐津真美と申します。よろしくお願いいたします。私も昨年度に引き続いての参加となります。

弁護士としては今年で27年目になります。国際小委員会ですので国際的な経験を申し上げますと、弁護士になった後にアメリカのロースクールに留学しまして、その後イギリス系の法律事務所のロンドンのオフィスと日本のオフィスで数年間、仕事をしておりました。現在の中心的な業務は、アート、メディア、エンタメ業界の会社様の依頼が多くて、あとは個人のアーティストの契約交渉のお手伝いですとか、著作権法などを中心とした知的財産権に関する相談対応というのが一番多くなっております。そういった関係でこちらの委員会にもお声をかけていただいた次第だと思います。

弁護士業務のほかに、委員会活動として、小中高校に行って法教育を行うという活動をずっとしておりました。ここでの活動は、決して著作権法ということではなくて、模擬裁判をやってみましょうとか、ルールづくりをしてみましょうといった授業をしていたのですが、多分そういった活動と、それからこちらの委員会に参加させていただいているということを踏まえて、今年の夏、つい先日だったんですけれども、「こども霞が関見学デー」という企画が各省庁でありまして、その文化庁のブースのお手伝いをさせていただき、初めて小学生のお子さんに著作権法について考えてもらうというイベントを担当しました。そこですごく印象的だったのが、小学生のお子さんが、非常にある意味正しい著作権の感覚を持っていることです。「歌ってみよう、踊ってみよう」の動画を題材にしたんですけれども、「家で家族に見てもらうのとネットに上げるのはすごく違う」とか、そういった感覚を持っているのが新鮮でした。

海賊版対策の中の一つに普及啓蒙活動が入っていますが、幼い段階から、適切な、そういった啓蒙活動というのをしていけば、長い意味では海賊版対策、「そういうものを見ちゃいけないんだ、誰かの権利を侵害しているんだ」という意識を持ってもらえるんじゃないかという感覚を持ちましたので、そういった面でも何かお手伝いできればと考えているところです。よろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、後藤秀樹委員、お願いいたします。

【後藤委員】お世話になります。ソニー・ミュージックで海外事業の推進を担当しております後藤と申します。昨年に続きまして、よろしくお願いいたします。

ソニー・ミュージックは、アニメをはじめとして、音楽やソリューション等をどうやって海外に展開していこうかという問題意識を持っており、とりわけ正規の流通というものをいかに伸ばしていくかということに問題意識を持っております。そのためアニメも番組のライセンスだけでなく、商品化のライセンスや登録商標申請など、許諾や権利確保などの活動も多様化してきておりますし、音楽領域ですと、例えばライブイベントの海外展開において、各国の法制、個人情報、税務であったりとか、そういうものを真面目にやろうとすればするほど非常にハードルが高いと、なかなか一筋縄ではいかないというところを日々体感しております。また今後は、NFT、ブロックチェーン、メタバースといった、国という概念もちょっと超えたような、非常にフラットな取引の中でどういう権利者の価値を守っていくのかというところが直近の問題意識となっております。

いろいろ勉強させていただければと思っております。よろしくお願いします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、須子真奈美委員、お願いいたします。

【須子委員】2020年からこの国際小委員会に参加させていただいておりますJASRACの須子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

最近の著作権問題を語る上で、グローバル化、デジタル化、大量データ、DX対応などという言葉は、もう必ずと言っていいほどキーワードになっております。これらに応じた制度設計を進めていく上で、効率性や簡便性の追求ばかりに目を向けてしまって、創作者一人一人の意思や権利といったものが退けられることがあってはならないと最近特に感じているところでございます。この委員会において国境を越えた海賊版対策についての議論を深めていく上でも、コンテンツの健全なエコシステムを実現する社会をどのように構築していくのかといったことも根底に置いた議論ができたらいいなと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、茶園成樹委員、お願いいたします。

【茶園主査代理】どうも、大阪大学で知的財産法を教えております茶園成樹と申します。よろしくお願いいたします。

国際的な著作権問題の解決には、法制度上の対応と、技術上の対応があります。とりわけ今ではインターネットや情報技術が非常に発展しましたから、その技術上の問題も考えなければいけませんし、さらに、人と人との関係といいますか、実際にどういう方法でするかという、実際上の取組の問題もあると思います。その点で、昨年度この国際小委で検討しました海賊版対策のポータルサイトをつくることは、非常にすばらしい取組だったのではないかと思います。今後もさらに発展させていく、そのために議論されていくと思いますが、このような、法制度上の対応、技術上の対応、それから実際の運用というか取組、これらが合わさって、統合して、いい対策ができるのではないかと思っております。

といいましても、私自身は、技術や、実際の取組は全然よく分かっておらず、そのため、どれぐらいお役に立てるかどうか心許ないのですけども、微力でも貢献させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、墳﨑隆之委員、お願いいたします。

【墳﨑委員】コンテンツ海外流通促進機構の墳﨑と申します。弁護士もしております。私も昨年から、もっと前からですけれども、継続して委員をさせていただいております。

現在の著作権侵害の対応等については、繰り返し述べさせていただいているとおり、グローバル化という点がやはりずっと問題として付きまとっていて、これはなかなか解決がいまだに難しい部分で、この場でも議論ができていけたらなと思っております。司法権が国によって異なっている中で、どうやって法執行をやっていくのかとか、そういったところに関して、やはり日本の裁判ができないで海外でやるというのは、権利者の負担はものすごい大きいんですね。今も私は弁護士としてアメリカで裁判やっていますけれども、著作権侵害訴訟1個やるのに1億円かかったりしていますので、そういったところも踏まえると、そういった権利行使の在り方ということ、やりやすさとか、そういったものをやはり権利者に、権利行使しやすいような形で考えていく必要があるんじゃないかなというふうに考えております。

また、インターネットの発展、技術の発展というところは、もう私もなかなか理解が及ばない部分も多くなってきていて、先ほどからお話あるように、メタバースとかブロックチェーンとか、そういったところの話も出てきていて、それらの対応というのは世界的に各国が今検討しているところだと思いますので、各国の情報等も踏まえながら対応方法について検討していけるといいなというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、渕麻依子委員、お願いいたします。

【渕委員】神奈川大学法学部の渕麻依子と申します。今回初めて委員を務めさせていただきます。

私は大学で、著作権法を中心として、知的財産法の研究・教育を行ってまいりました。最近では、著作権をはじめとする知的財産権侵害が生じる場面におけるプラットフォームの責任などにも興味を持ちまして、研究を進めているところでございます。

このたびは国際小委員会に所属させていただくということで、条約の問題をはじめ、様々な問題について国際的な観点からの議論を御一緒させていただき、それから実務上の問題点なども教えていただきながら、何らかの形でお役に立てればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、森下美香委員、お願いいたします。

【森下委員】皆さん、こんにちは。映像産業振興機構VIPOの森下と申します。よろしくお願いいたします。私も昨年度より、こちらの国際小委員会に所属させていただいており、本当に毎回参加するたびに、法律のプロフェッショナルの皆さんの御意見などに、とても勉強になるなと思いながら参加をさせていただいております。

私ども映像産業振興機構VIPOは、皆様が法律でいろいろ著作権を保護する、守るほうを担っていらっしゃるとすると、どちらかというと攻めのほうを実施しております。特にコンテンツの海外展開に関しては、私自身は二十数年、いろいろな形でこの分野に取り組んでまいりましたし、現在ですと、文化庁さんからいただいているお仕事ですと、文化庁メディア芸術祭の海外展開事業で、6月にアニメーションの海外展開でアヌシー、それから、間もなくですが、10月に、今年は出版にちょっと力を入れようということで、コミックの海外展開ということで、フランクフルトブックフェアで、企画の、いかにそれを出版してもらうのかというピッチを現地でやるような、そういった、すごく大きなものではないんですけれども、必ず相手の顔が見えるような形で、ビジネスを成約に結びつけるというような形での活動をしてきております。

私自身は、皆さん御存じかどうか分からないですが、既に10年ぐらいたっておりますコンテンツ海外展開の助成金、J-LODというのがあるんですけれども、こちらのもともとの仕組みをつくるところに携わらせていただいて、ですので一応、民と官とがちゃんと手を取り合って海外展開をしっかりやっていこうということを、我々自身がやるのではなくて、そういった仕組みであるとか場をつくるというのが私どものミッションだと思っておりますので、そういった形で今回も参加させていただこうと思っております。今年の12月には東南アジア向けの海賊版対策の侵害セミナーなどもオンラインで実施する予定となっておりますので、また皆様にはぜひ御参加いただければと思っております。

私からは以上となります。よろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、和田成史委員、お願いいたします。

【和田委員】コンピュータソフトウェア著作権協会の理事長をしております和田でございます。本年より理事長を拝命いたしました。前理事長は24年間、ゲーム会社のカプコンの辻本憲三さんです。私はオービッグビジネスコンサルタントという会社で、「勘定奉行」をつくっている会社の責任者であります。本年、替わりました。初年度でございます。国際小委員会委員もです。よろしくお願いいたします。

ゲーム業界は、国境を越えた海賊版の著作権侵害に関することについて、海外での正規版の流通を進めており、海賊版の対策をどのように組み合わせていくか、徐々に仕組みと構造、あるいは法的関係、あるいは裁判を通じて、非常に進んだ段階に来ております。しかしながらビジネス版というのは、国際関係についてはこれからという段階、スタートしたばかりというイメージでよろしいかと思います。そういう意味では、これからの著作権に関する国際的な問題をどのように解決していくかということで、当協会のビジネスソフト系のメンバーを理事にも少し増員して、著作権全体の国際的考え方をつくり上げてくことを目的として、就任させていただきました。

今後ともひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、渡邉恵理子委員、お願いいたします。

【渡邉委員】電気通信大学の渡邉恵理子と申します。私も昨年度から引き続いて委員をさせていただいております。

私は2次元、3次元も含めて、画像処理を主に専門としている技術者で、2007年頃にインターネット上の動画とか音源の識別システムを構築してから、インターネット上の海賊版の動向調査を長年実施してきています。これまで様々な調査や対策が行われてきています。現状分析と効果の分析に加えて、最近は、インターネット上の海賊行為のエビデンスの取得というのが非常に重要であると痛感しております。また、先ほど唐津委員がおっしゃっていたと思いますが、幅広い世代での教育啓蒙活動というのも非常に重要だなというふうに、大学での講義などを通して感じております。

技術畑ではありますが、何らかお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【上野主査】どうもありがとうございました。

では最後に、私からも簡単に自己紹介させていただきます。

早稲田大学で知的財産法を担当しております上野達弘でございます。著作権法を中心に研究しておりまして、文化審議会著作権分科会でも以前からいくつかお世話になっておりますが、一番長いのがこの国際小委でありまして、国際的な関係というのは著作権制度にとって非常に重要でございますので、この国際小委も重要な委員会だと思っております。

私自身も常々できるだけ国際的な活動をしようと思っておりますが、コロナの関係で2年半も海外へ行けておりませんでした。実は再来週久しぶりに2週間ヨーロッパに行きまして、3つほど学術的なイベントに参加する予定でおります。この国際小委も、外に開かれたフォーラムになればと思ってしております。委員の皆様方におかれましては引き続き御指導をお願いしたいと存じます。

それでは、議事の2に入りたいと存じます。第22期国際小委員会における検討の方針及びワーキングチームの設置についてということでございまして、まず事務局より、簡単に御説明のほうお願いいたします。

【長谷川国際著作権専門官】事務局でございます。まず資料2-1を御覧ください。こちらは第22期国際小委員会における検討の方針案でございます。

1ポツ、本委員会で扱う審議事項でございますが、資料2-2の6月の著作権分科会決定を踏まえまして、(1)、(2)の2点を挙げてございます。(1)著作権保護に向けた国際的な対応の在り方についてですが、こちらは主にWIPOの議論を中心として、放送条約の議論や、その他の議論に関連して、我が国の国際的な対応の在り方の検討について審議を行いたいと考えております。なお、放送条約に関しては、令和元年度からワーキングチームで御議論いただいており、昨年度はコロナウイルス感染拡大の影響で、WIPOでの議論が進展しなかったことから設置をしませんでしたが、今年度はWIPOでの議論が通常に戻りつつあることを受けて、ワーキングチームでの御議論をお願いしたいと考えております。

また、(2)国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございますが、昨年度の国際小委員会で取りまとめられた「我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応」及び「国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方」についての中間まとめを踏まえまして、引き続き、被害状況や課題の把握、相談窓口の設置等の具体的な取組等について審議を行いたいと考えております。

なお、我が国のコンテンツの海外展開に関しましては、中間まとめにおいて、正規版の流通と海賊版対策は両輪として取り組むことが重要と言及されていることに留意しまして、(2)の議論の中で併せて審議を行いたいと考えております。

2ポツ、スケジュールになります。2ページ目になりますが、今年度は3回の開催を予定しており、本日第1回は、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方、第2回は、国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応を取り上げ、年明けの第3回では、引き続き海賊版対策の議論を行うとともに、放送条約ワーキングチームからの検討状況の報告、それから審議経過報告の取りまとめを行いたいと考えております。

続いて、資料2-3を御覧ください。ただいま御紹介した検討課題のうち、放送条約に関する対応の在り方については、ワーキングチームを設置して、集中的に審議を進めていただくことを提案させていただいております。

まず、1にございますとおり、ワーキングチーム名は、放送条約の検討に関するワーキングチーム、検討課題は、世界知的所有権機関にて検討中の放送機関の権利の保護に関する新たなルールづくりへの対応でございます。

それから、2がワーキングチーム員の構成でございます。ワーキングチームに座長を置き、座長は国際小委員会の主査が兼任すること、ワーキングチーム員は国際小委員会の委員のうちから主査が指名した者及びその他の者であって、主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成される旨記載をしております。

3、議事の公開につきましては、冒頭御紹介した著作権分科会の議事の公開に準じて扱うこととしております。

事務局からの説明は以上となります。

どうもありがとうございました。それでは、ただいまの点に関しまして、何か御質問、御意見等ございましたら出していただきたいと存じますけども、いかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。

でしたら、ただいまの議事の(2)につきましては、資料2-1及び資料2-3に関しまして、事務局から御説明があった案のとおりとしたいと存じますけど、よろしいでしょうか。

ありがとうございました。それでは、本小委員会といたしましては、この検討の方針に従って審議をお進めいただきたいと存じます。また、ワーキングチームの構成員につきましては、一応私のほうで指名するということになっておりますので、後日、事務局からお知らせをさせていただきます。

では、続きまして、議事の3でございます。WIPOにおける最近の動向についてということでございまして、資料3-1及び3-2に基づきまして、事務局より御説明お願いいたします。

【長谷川国際著作権専門官】ありがとうございます。事務局でございます。それでは、WIPOにおける最近の動向について、資料3-1、3-2を使いまして御説明をさせていただきます。

まず、今年の5月に行われた著作権等常設委員会、SCCRの結果概要について御説明させていただきます。

資料3-1になりますが、SCCRは、著作権分野における実体法や国際調和について議論する会議で、通常1年に2回開催されておりますが、新型コロナウイルスの感染拡大以来、年1回の開催が続いており、今年も年1回のみの開催となっております。また、会議の形式は、昨年に引き続きハイブリッド形式での開催となりました。

議論としましては、これまでと同様に、放送条約、権利の制限と例外、その他の議題の3つの枠で議論が行われました。

3ポツの各論です。(1)の放送条約ですが、こちらは1998年から議論が続けられておりますが、近年、2020年から2021年の期間中に外交会議開催を目指すとの勧告が一般総会で採択されるなど、条約策定に向けた機運が高まっていたところではございますが、コロナ禍の影響で、昨年、一昨年と議論の進展はありませんでした。そのような中で、今回の会合では新しい動きがあり、約2年半ぶりに、条約案として新たな議長テキストが会合で示されました。この議長テキストは、会合の活動が通常に戻ったときの議論の基礎とすることを想定して、議長の権限でつくられたものであり、前回のテキストで複数並列的に記載されていた代案が統合されて、代案のない形のテキストになっております。

資料3-2を使って、この議長テキストの特徴点を簡単に説明させていただきたいと思います。

1ポツ、受益者ですが、これはこれまでどおり、インターネット配信のみを行うような事業者を除く、伝統的放送機関となっております。

2ポツ、保護の対象ですが、(1)のいわゆる伝統的な放送と、(2)のサイマルキャスティングや見逃し配信といったインターネット上の放送コンテンツの送信、(3)の放送前信号、これはスポーツの試合会場から放送設備までの放送素材を含むような信号ですが、この(1)から(3)を義務的保護とした上で、3ポツの与えられる権利として、排他的権利による保護と、その代替である他の適切かつ効果的な保護とを組み合わせて保護することを選択可能にした点に特徴があります。また、他の適切かつ効果的な保護を選択する場合には、例えば放送機関が放送コンテンツの独占的ライセンシーである場合、放送機関がコンテンツの著作権に基づく権利行使を可能とするなど、著作権、不正競争防止法、電気通信法等による権利等を行使できるようにする必要があります。

なお、今回の議長テキストでは、「放送」の定義から「コンピュータ・ネットワーク上の送信は除く」という文言が削除されており、その結果、保護の対象に放送機関が行うインターネット独自コンテンツの送信が含まれるのか否かが不明確となっております。

続いて、資料3-1に戻りますが、第42回SCCRでは、このような新議長テキストについて起草者から説明があり、その後、各国と起草者との間で質疑が行われました。質疑における各国からの指摘として、「放送」の範囲が広く、明確化が必要であること、それから異時送信の保護期間の始点の議論が必要であること。異時送信におけるストアード・プログラムズ、これは保存されたプログラムですが、これの保護は放送信号の保護というよりも、実質的にコンテンツ保護であり、義務的保護の対象として適切か議論が必要ということ。それから、適切かつ効果的な保護が具体的にどのように機能するかについて、さらに明確にする必要があることなどが指摘されました。

我が国からも、本議長テキストについて、これまでのコンセンサスに反して、異時送信を義務的保護の対象とするなど、保護範囲が過度に広くなっており、幾つかの点で懸念がある等の指摘を行いました。そして、本格的なテキスト交渉の前には、さらなる明確化と議論が必要であることも併せて述べました。

また、今後の進め方について議長から、本議長テキストを議論するための3日間の追加の技術会合を今年の秋に開催することが提案されましたが、こちらについては最終日までにコンセンサスは得られず、追加の技術会合は開催されないこととなりました。他方で、2023年は2回の通常の会合を開催することについて合意され、今後、本議長テキストは、各国等からの意見を踏まえ、議長の権限で修正され、次回の第43回会合でさらに議論が行われる予定です。

次に、(2)の権利の制限と例外ですが、現在は、図書館とアーカイブのための制限例外、教育と研究機関等のための制限例外というのが議論の対象となっております。今回の会合ではアフリカグループより、例外と制限に関する作業プログラム案が提案され、作業プログラム案に含まれていた項目のうち、オンライン授業等における国境を越えた環境での著作物の利用に関する専門家等によるプレゼンテーションを実施すること、教育、研究及び文化遺産の保存を支援する法律及び政策の作成を支援する技術支援プログラムの指針となるツールキットを開発することについて合意がなされました。国際的な規範を創設する等の他の項目についてはコンセンサスに至らず、次回会合で引き続き議論することになりました。

(3)のその他の議題では、デジタル環境に関する著作権の分析については、前回の第41回会合で示された音楽分野の調査報告に基づきまして、調査を担当した専門家からプレゼンテーションが行われました。詳細は割愛させていただきますが、調査報告等の会議資料はSCCRのホームページから入手可能となっております。また、このとき、ラテンアメリカ・カリブ諸国グループ(GRULAC)から、次回会合でデジタル音楽市場についての半日の情報セッションを行うことが提案され、こちらについて異論は出ませんでした。

それから、追及権、舞台演出家の権利保護については、会合の時間的制約等により、実質的な議論は行われませんでした。また、公共貸与権の調査についても、改めて提案国から提案が行われたものの、実質的な議論は行われず、次回以降、引き続き議論されることとなりました。

それから、4ポツの情報セッションですが、こちらはCOVID-19パンデミックが著作権エコシステムに与えた影響に関しまして、専門家からのプレゼンテーションが行われた後、パネルディスカッションが行われました。本セッションでは、デジタル化が進展したことを好意的に捉える発言があったほか、ゲーム産業において増収が見られた等のメリットが紹介された一方で、アーティスト等の減収が各分野で見られたことから、政府による財政支援の必要性を強調する発言がありました。また、義務教育へのアクセスの不均衡といったデジタルデバイドの問題や、出版分野では海賊版被害の問題があること等も紹介されました。

今後のSCCRの予定としましては、時期は未定ですが、来年、2回の通常会合が開催される予定となっております。

続きまして、先月行われたWIPOの加盟国総会の結果概要について、簡単に説明させていただきます。こちらWIPOの加盟国総会も、SCCRと同様に、ハイブリッド形式での開催となりました。

著作権に関する議題といたしまして、前述のSCCRの結果報告がございました。まずSCCRの活動についてWIPOの事務局から報告があり、その後、各国からステートメントの発出が行われました。放送条約については、我が国を含む多数の国々が議論を進展させることの重要性を指摘しましたが、その一方で、法的にも技術的にも複雑な問題を扱う放送条約について、検討に時間が必要であるといった慎重な発言も見られました。また、権利の制限・例外については、先進国から、法的拘束力のある枠組みの設定に反対する発言があった一方で、開発途上国やNGOの多くは同議題を重視しており、アフリカグループのワークプランの提案を歓迎・支持する旨の発言がありました。

なお、WIPO総会の場で何か新しい決議が行われるといったことはありませんでした。説明は以上になります。

【上野主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいま事務局から御説明がございました資料3-1、そして3-2に関しまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。

【伊東委員】今村ですけれども。

【上野主査】お願いいたします。

【今村委員】1つは御質問で、1つは意見ですけども、今回、代案のない形のテキストができたということで、それを聞くといよいよまとまりつつあるのかなという印象を受けるんですが、他方で、結構無理に代案のない形のテキストにしているようにも見えます。今後、今の代案のないテキストの形から大きく動いていく可能性もあるというふうに見てよいのでしょうかというのが1つ目です。

あともう1点は意見なのですが、条約というのは基本的に、国外で日本国民とか日本の企業の権利がどうやって保護されて、利益が保護されているかというためのものであると思います。昨今やはり放送の分野では、同時配信も、本格的に日本でも進んできましたし、放送局がインターネットを用いて放送コンテンツをサイマル、ニアサイマルで、あるいは見逃し配信のような形で配信しているということも非常に増えてきています。

そういった中、今後海外で、日本のそういった放送が、インターネット送信も含めて様々な形で、魅力的なものであることは確かだと思いますから、侵害事例が増えていく可能性もあると思うんです。そういったときに、与えられる権利の場面で権利として定めるということは、権利ですから定型的な権利行使が可能となり、アメリカでもイギリスでもヨーロッパでも、権利があるということで円滑な保護が実現できて、非常に効率的になると思います。他方で、妥協策として出ているような、米国などで想定される他の適切かつ効果的な保護というものが、我が国の伝統的な放送機関にとって実際に適切かつ効果的な保護となり得るものなのかどうかというのは非常に難しいところで、権利行使はできるけど非常にコストがかかってしまうかもしれません。そうした条件は、外国人にとっては特に分からないわけです。そういった部分で、もちろんその方策が本当に明確で、適切、効果的なものであれば差し支えないと思いますけれども、こういった妥協策みたいなものを入れたときに、様々な国がそれでいいんだという形で取ったときに、結果としてはあまり伝統的な放送機関の与えられた権利の保護にならないという結果になる可能性もあります。したがって、そうならないように、どういう形のものがモデルとして想定されるかということを注意深く見ていったほうがよいかと思いました。

以上です。

【上野主査】どうもありがとうございました。

では、事務局から何か。

【長谷川国際著作権専門官】コメント、御質問ありがとうございました。まず最初の質問の、代案がなくなって、見た目がきれいに見えるようになって、これから交渉が進み、条約の締結に向けて動きが進むんじゃないかということですが、やはり説明の中でも申しましたとおり、コンセンサスが取れていた部分を超えて、やや強引に条約を1つの文書にまとめてしまったようなところがありますので、こういったところ、まだまだ議論が必要なところがあったり、明確化が必要なところがあったりと考えておりますので、次回以降のSCCRで引き続き、明確化を含めた議論が行われていくので、もう少し条約の締結には時間かかるんじゃないかなと考えております。

また、適切かつ効果的な保護、代替措置のようなところにつきましては、やはり各国、どれぐらい実効性があるのかというところに関心を持っておりまして、こういったところはしっかり今後もっと議論していかなければいけないということで、それぞれの国が思っておりますので、引き続き我々としても注視しつつ、どんなものがよいのかということを議論していきたいと考えております。

以上です。

【上野主査】どうもありがとうございました。今村先生、よろしいでしょうか。

【今村委員】はい。ありがとうございました。

【上野主査】ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうかね。

では、ありがとうございました。

それでは続きまして、今度は議事の4番目でございまして、今年度実施している調査研究についてでございます。

今年度文化庁が委託して実施してございます著作権法改正状況及び関連政策動向並びに拡大集中許諾制度に関する諸外国調査というものにつきまして、本日は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの萩原様に御発表いただきたく存じますが、その前にまず事務局に趣旨の御説明を、簡単にお願いしたいと存じます。

【長谷川国際著作権専門官】事務局でございます。今年度の調査研究としまして、DX時代に対応した著作権制度を検討するための基礎資料とするために、EU諸国を中心とした拡大集中許諾制度や、DSM指令に対応した著作権法の改正動向等の調査を、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託して実施しております。調査は前期と後期に分けて実施しておりますが、前期分の調査項目である拡大集中許諾制度について萩原様より御報告いただき、委員の皆様から内容についての御意見等をいただければと考えております。

事務局からは以上です。

【上野主査】どうもありがとうございました。

それでは、萩原様には、一応御発表時間20分というふうに伺っておりますが、発表後に質疑応答、意見交換の時間を設けたいと存じますのでよろしくお願いいたします。

【萩原様】三菱UFJリサーチ&コンサルティングの萩原と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、上野先生や文化庁さんから御紹介いただきました著作権法改正状況及び関連政策動向並びに拡大集中許諾制度に関する諸外国調査ということで、本日は主に拡大集中許諾制度について御紹介させていただければと考えております。20分でということもありますので、主要な点について御紹介させていただき、後ほど質問の時間もございますので、御質問等ございましたらばいただければと考えております。

まず、調査目的でございます。こちらは文化庁さんから御紹介いただきましたが、簡単に申し上げますと、昨年の著作権分科会において、簡素で一元的な権利処理方法と対価還元についての中間まとめが行われたところです。こちらの1つの観点として、EU諸国を中心とした拡大集中許諾制度が参考になるのではないかという考えの下、こちらの調査研究を進めてきたところでございます。

この調査は前期調査、後期調査ということで、2つで構成されておりまして、前期調査については主に、先ほど申し上げた拡大集中許諾と言われる制度を中心に調べ、先月、7月末に調査を終えて、近日中ぐらいには報告書とかも公表されると思います。後期調査については、主に欧州地域についての改正動向、DSM著作権指令と言われているようなもののうち、プレス隣接権やオンラインプラットフォーマーの規制、あと著作権契約法とか、その辺りを中心に調査する予定となっておりまして、そのうち前期調査分について御紹介させていただく内容となっております。

今回の調査対象地域は、EU、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、こちらの4つの国・地域と、あとは対比としてアメリカも比較しているといったところでございます。

それぞれの抽出理由は、ドイツについては2014年より個別ECLを導入され、2021年に、一般ECLというものを導入しているので、対象としたといったところでございます。

続いてハンガリーは、集中管理団体が1分野に2団体存在する場合に、どのように対応しているのかを調べたいと考えまして選定しています。

フィンランドは、個別ECLと呼ばれているものは導入済みであるんですが、一般ECLは導入していないという背景もあります。そこで現状についてリサーチしているといった内容でございます。

最後、米国は、対比として入れているというところですが、ECLのパイロットプログラムを導入したのですが、諸般の事情もあって導入は、断念しているという背景もございます。この辺りについて本日はあまり詳しくは紹介していないんですけれども、リサーチを行っておるところです。

調査については、いわゆる文献や法令、それに関連する議論などを整理することに加えて、関連する主体の方々にインタビューして、実際どういうふうに運用しているのかを聞き出していって報告書を取りまとめています。

先ほどから拡大集中許諾、ECLという言葉を使っておりますが、そもそもどういった制度なのかということを簡単に御紹介させていただきたいと思います。

こちらの制度ですが、法律に基づき、集中管理団体――以下CMOと呼ばせていただきますが、こちらの構成員ではない権利者の著作物について、相当数の権利者を代表するCMOと著作物の利用者の間で締結された著作物の利用許諾契約と同じ利用条件で利用することを認める制度というふうになっています。通常、集中管理団体さんにお金を払って使用する場合については、CMOのみなさんが管理している権利のみが対象となるところですけれども、ECLについては、ここに入っていない非構成員の方々も対象になるといったところが特徴になっています。もちろん非構成員の方も、管理されるのは望ましくないと感じられている方については、オプトアウト方式によってその管理から抜けることができるといったところが特徴となっています。

このECL、拡大集中許諾、こちらについては大きく2つ種類がございまして、いわゆる法律の中で利用行為を個別に指定している「個別ECL」と呼ばれているものと、対象となる利用行為を特定しない「一般ECL」という方法の2つがあります。後段でも、国によって採用状況が異なりますので、こういった使い分けで表現しているというふうに考えていただければと思います。

では早速ですが、各国・地域の導入状況について御紹介させていただきたいと思います。

まずEUです。2019年のDSM著作権指令の中で、ECLについて2つ大きな規定がありますので、それについて御紹介させていただきたいと思います。

まず、DSM著作権指令の大きな背景について簡単に御紹介させていただきますが、こちら2010年頃から欧州委員会の中で、デジタル時代に対応した単一市場のための新しい戦略ということで、オンライン取引において、ECLなども含める調和のための追加的措置が必要ではないかということが提言されたところでございます。そのときにも提言あったんですが、結果的にはECLについての議論は深まらず、孤児著作物、オーファンワークスをどうするのかという指令と、あとはオンラインでの音楽利用だったりとか、集中管理団体どうするのかといった指令が発効されていたところではございます。現代的な著作権制度をつくっていくのだという観点から、2015年には「デジタル単一市場戦略」が発表され、こちらを踏まえてDSM著作権指令と呼ばれているものの前段階のものの最初の提案があり、約3年の議論を踏まえて発効されたといった指令となっております。

本当にこちらのDSM著作権指令は、とても議論するところが多い指令ではございますが、今回は拡大集中許諾ということで2つ、関連するものを紹介します。1つはアウト・オブ・コマースに導入されていて、もう一つは、いわゆる一般的に拡大集中許諾と言われているようなもの、あるいはそれに類する制度も含めた「拡大効を有する集中管理」の制度を導入することができるという指令の2つがあります。

1つ目のアウト・オブ・コマースについてですが、非営利の文化遺産機関、いわゆる図書館、博物館、アーカイブが、アウト・オブ・コマース作品、つまり絶版・廃刊になっているようなものの利用について、十分に代表する集中管理団体によって、当該集中管理団体に加盟していない著作者の権利を含めて非独占ライセンスをする仕組みをEU加盟国に規定する義務を課したといったところになっています。すごく簡単にいいかえると、こうしたアウト・オブ・コマース分野において個別ECLの導入が制度化されたといったところになります。

こちらの導入の背景としては、文化遺産機関によるデジタル化計画においては処理しなければならない著作物の量がとても多いといったところ、あとアウト・オブ・コマースの作品の許諾を得ることがそもそもとても困難であること。あとは、古いので連絡が取れないとか、商業的に限定された価値ということもあって、出版者に問合せをしてもなかなか対応いただけないといったところもあるということで導入されたと規定されているところです。

制度の特徴としては、先ほどECLの定義のところで御紹介させていただいたとおり、簡単にオプトアウトできるような仕組みを担保する必要性があるといったところと、その他規定は様々あるのですが特徴的なものとしては、EU以外の第三国での著作物とか、製作者が第三国にある映画の著作物については対象ではないとか、あとは、どっちか分からないようなものについては対象としないという条件などはついています。ただし、アウト・オブ・コマースについて文化遺産機関が活用するときには比較的簡便な方法で使うことができるといったことが定められたところでございます。

では、どういったものなのかということで10ページ目をごらんください。もう既にこの制度は運用が開始されており、全てのEU加盟国が移管しているわけではないんですけれども、Out-Of-Commerce Works Portalというようなデータベースを使って申請することが可能になっています。データベースを検索すると、ライセンス単位、どの著作物がどの団体に対してライセンスする、この制度を使ってライセンスしているのかということが整理されているようなデータベースになっています。作品の個別のサイトに入っていくと、オプトアウトとアイコンがついていまして、こちらから簡単に申請することができるといった内容になっているところです。ここまでがアウト・オブ・コマースについて、簡単な御紹介となっています。

もう一つは、このDSM著作権指令の12条の中に、拡大効を有する集中許諾の仕組みを構築できるといった規定がございます。これは拡大集中許諾ではなくて、あえて拡大効となっているのも、条文の中見ると、ECLという拡大集中許諾のほかに、法的委任と言われているもの、また代理権の推定、結構ECLに似たような制度についても実施することができるといったものになっています。EU加盟国のところの(a)のECLが導入されており、(b)の法的委任、代理権の推定については、フランス、代理権の推定についても2つ、3つぐらいの国だけで導入されていたとされています。第12条の拡大効を有する集中許諾はあくまでも「できる規定」なので、必ずしも導入しなくてもよいという規定になっています。

なぜわざわざこういった拡大集中許諾をやってもよいという規定ができたのかといいますと、1つはCJEUの裁判例がありました。詳細はかなり省略しますが、フランスで拡大集中許諾を使って国立国会図書館がアウト・オブ・コマース作品を無料で公開することは情報社会指令に反するんじゃないかという意見を出された方々がいて、CJEUに付託されました。ECLは、オプトアウトを可能にする前提であること、あとは事前に通知することの2つを条件として、拡大集中許諾を行ってよいと判示したところでございます。こういったところをより明確化して制度化していこうという観点から12条ができたというふうに伺っているところです。

では、こういった12条、拡大効を有する集中許諾を導入するときにはどういったところが要件になるのかということで、DSM著作権指令で詳細に説明されているところでございます。1つが対象となる権利の範囲ということで、これについては、何でもかんでも、どの権利でも使えるというわけではなくて、すごく簡単に申し上げると、政府または集中管理団体によって明確に定義された使用分野に限られるといったところが一つ特徴となっています。

もう一つ、権利の範囲については、求められるライセンスの取得に必要な取引を見込めないほどに一般的にものすごい費用がかかって困難であるようなケースとか、あとは重要な商業的利益を奪うようなものではないとか、そういったところが、まず権利の要件として挙げられているところです。

そのほか文化庁さんの過年度の調査などでもかなり言及されていますが、代表性です。ECLを扱うCMOさんが、その分野について代表できるのかどうかといったところとか、あと平等性、オプトアウトは必ず用意しなければならないとか、いつでも簡便にというところが条件になっています。

あと、実際実施する前に公表する期間を一定程度取らなければいけないとか、当該加盟国は欧州委員会に通知しなければならないとか、こういった限られた条件の中で、先ほど申し上げた拡大集中許諾を実施することができるといったことが条件となります。

すみません、長々と説明してしまったので、以降、ちょっと駆け足で説明したいと思いますが、各国の状況も御紹介していきたいと思います。

ドイツです。ドイツは、冒頭申し上げたとおり、2014年から導入されていて、2021年より一般ECLが導入されたといったところでございます。現状、個別ECLについては、先ほどの指令と同じく、アウト・オブ・コマースの作品のみ活用できるとなっているところです。また、一般ECLについては、EU指令で定められた要件に基づけば、CMOが所管の省庁に申請しなくても、自団体の意思でECLを実施することができるといったルールづくりになっているところです。この辺りについては結構、各国違う要点になっているところです。また政府も、個別・一般ECLともに、政令による詳細な規則を設けることができるというふうになっていますが、調査した2022年7月時点では、そういった規定についてはまだ定められていないと伺っています。

まず個別ECをみると、VG Wortさん、言語の著作物を扱っているところ、また、写真を扱うVG Bild-Kunstにおいて導入されているところでございます。ただし現在は、EUIPOに管理を移管していくと、データベースを移管していくということで、一時受付を停止しているといったところになっています。

また、2022年7月末時点では一般ECLの導入事例はありませんが、団体さんにお伺いすると、先ほど申し上げた言語の著作物を扱うCMO、VG Wortさんについては朗読のイベント、VG Bild-Kunstにおいては、SNSプラットフォームにおける写真利用についてECLを導入していきたいというお話を伺っていまして、後者の話とかは、今御検討されている簡素で一元的な権利処理方策といったところにもかなり関係するのかなというふうに感じているところでございます。

ドイツのノンメンバーへの分配方法についてですが、簡単に申し上げると、ノンメンバー、いわゆる集中管理をしていない団体についても、配分の方法は同額配るといったことになっています。しかし、当然のことながら、ノンメンバーの方々の連絡先、振込口座などの情報は持っていませんので、そういった連絡が取れなかった方々をリストあるいはデータベースに公表して、ノンメンバーの方々が自分の名前をそこで検索したりとかすることによって、発見した場合については、それを交渉して、連絡が取れなくなってから3年以内に申請を行うと、本人確認の上、使用料を支払うといった仕組みになっているところでございます。

3年以内に受け取られなかった使用料については、メンバーに分配する、つまり連絡が取れる方々でもう一回案分して配分し直すというやり方と、共通目的費の2つのパターンがあります。インタビューした結果によると、ほとんどメンバーに分配していますよというコメントをいただいているところでございます。この配り方についても国によってばらつきがあるので、一つ特徴があるのかなといったところでございます。

オプトアウトの件数については、4万5,648件に対して、合計13件程度というふうに伺っています。ものすごく少ないといえそうです。オプトアウトの理由については、直接聞くことはできないので伝え聞きなんですがという前提条件付きで聞きましたが、今後商業化の見込みがある、いわゆる財産権的な理由と、あとは若いときの作品で、あまり目に触れてほしくないといった人格権的な理由と、2つ挙げられたところでございます。

ECLの評価はいろいろ書いてありますが、導入時においても、北欧諸国などでも実績がある制度だという観点から、割とポジティブな反応が多かったといったところは聞いています。また、導入後も利用者は、申請さえすれば使うことができるし、法的なリスクがかなり少ないといったところで、かなりポジティブな評価がされています。ただし課題としては、権利者ごとに支払われる使用料がとても少ない一方で、対象となる権利者がものすごく多い、つまり金額が少なく対象者が多いので不経済だといったところが課題だということでコメントをいただいているところです。

続いて、ハンガリーでございます。ハンガリーにおいては1910年代、20年代ぐらいにはECLの考え方は既にあったというふうにインタビューで伺っているところでございます。同国では2004年のEU加盟以前は、1つの分野、支分権に対して単一のCMOしか存在しないという、規定になっていたんですが、あとはEU当局から競争政策上は望ましくないのではないかと指導があって、加盟から8年を経過した2012年以降は、単一分野について複数のCMOを設立することができるといったルールに変更になっている国になります。もともとハンガリーは、集中管理イコールECLだったという歴史があります。しかし、2016年になって、いわゆる普通のECLと、我が国で導入されているような一般的な集中管理ということで、2つに分かれたと伺っています。

こちら集中管理の方法については大きく3つございまして、強制的集中管理といわれているオプトアウトができない個別ECLと、オプトアウトができる個別ECL、自主的な集中管理があり、これはECLと日本で導入されているような一般的な集中管理に分けられています。このうち自主的な集中管理においてECLを使いたい場合については、所管官庁の審査を受け、それをクリアするとECLを受けることができるといった制度になっています。つまり、一般ECLとして運用されています。

導入されている権利、一つ一つ読み上げませんが、ものすごく幅広く導入されていますので御覧いただければと思います。

複数団体がECLを申請したときの取扱いについては、先ほど申し上げたとおり、同一分野・同一支分権について複数の集中管理団体は過去なかったのですが、一度裁定されたケースもあります。ルールとしては、当事者間で協議して、合意に至らない場合については担当官庁が判断するといった内容になっています。過去にこの裁定が行われていた経緯があるので、簡単に御紹介します。私的複製の補償金について、学術分野の著作物を扱う団体が、既に存在している文学と学術分野を管理していた団体と、協議をすることになったんですが、結局協議はまとまらず、結果的にはハンガリー知的財産庁が、もともとあった団体が代表性を有していると判断した事例でございます。

また、ハンガリーについては、ノンメンバーの分配は、3年間の間にもし問合せがあれば、本人確認の上、お支払いするという形になっており、リストが公開されています。ただし、連絡がなかった場合は、メンバーで再配分するのではなく、ハンガリー国家文化基金という文化団体に全て移管するというルールになっているところでございます。

オプトアウトの件数、先ほどのドイツの例と同じく、あんまり件数はないというふうに伺っていまして、Artisjusという音楽の団体によると年間10件、20件あるときもあるけれども、ゼロ件しかない年もあると伺っています。

ECLの評価、こちらはおおむねよい制度ではないかということで、これも、ハンガリーが社会主義国家だった時代もありますけれども、いろいろ権利者中心に議論してきたところが、やっぱりうまく運用できている要因になっているのではないかというところでコメントをいただいているところです。

続いて、フィンランドです。こちらについては1961年から個別のECLが導入されていて、現時点でも個別ECLのみとなっています。北欧5か国での議論を通じてECLがつくられていて、現在でもいろいろな分野において個別ECLが導入されているというふうになっています。

個別ECLではオプトアウト可能なものとオプトアウト不可なものの2種類ありまして、こちらのページで整理されているような様々な分野において導入されているというふうに伺っているところでございます。下線部が引いてあるところについてはオプトアウトができない分野というふうになっていまして、やはりオプトアウトすると混乱してしまうような放送分野だったりとか、写真の利用についてはある程度パターンが決まってきているからということでオプトアウトできないと伺っています。

今回インタビューしたのはKopiostoという団体になっていまして、教育分野における視聴覚作品の利用についてのCMOになります。同団体は、アンブレラ団体ということで、その下にもCMO等がぶら下がっていて、それからメンバーに還元していきます。教育分野のオンライン利用は、サンプリングで調査を行って対価還元をしておりますが、こちらも同じく3年以内にノンメンバーの方から申請があれば、本人確認の上、お金を支払うというルールになっています。実際ノンメンバーからの問合せが年間どの程度あるのかと伺ったところ、年当たり5件から10件程度というふうに伺っていまして、根拠が弱いもので結局支払えないというケースがあって、実際にノンメンバーに配分されるのは年間1~2件程度と伺っているところでございます。実際、3年間の期限を過ぎると、文化活動への助成金や奨学金などに使われているというふうに伺っています。ただし、その運用は団体によって異なると聞いております。

こちらの評価についても、オプトアウトの件数はとても少ないと伺っていまして、実際ECLの評価についても、オプトアウトが少ないことは、ELCに対して肯定的な印象を持っている一つの証左ではないかというふうに伺っているところでございます。

一般ECL、こちらは現時点では導入されていないんですが、今国会審議中の著作権法改正案を見ると一般ECLに関する条項が書いてあるので、おそらく新年1月など近いうちに導入されるのではないかと感じられるところでございます。

対比として米国についても入れていますが、こちらは内容省略して概略のみとさせていただきます。2011年頃から検討は進められていたんですけれども、2017年に、結果的には反対が多数。その理由としては、フェアユースが制限されてしまう可能性があるのではないかという意見の下に、反対が多数で、結果的には導入されなかったという経緯がございますので、簡単に御紹介して、終わらせていただきたいと思います。

最後に、まとめ、表もつけていますので、御参照いただければと思います。

【上野主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの萩原様の御発表につきまして、御質問、御意見をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

では、生貝委員、お願いいたします。

【生貝委員】ありがとうございます。せっかくなので。

大変貴重な調査報告、ありがとうございました。1つ御質問と、2つ感想なのですけれども、御質問についてはすごく細かいところで、13ページの一番下で、VG Bild-KunstさんがSNSプラットフォームの写真利用に関してECLを使おうかと考えているといったときに、このSNS上の写真利用というのは、利用主体が誰なのか、様々なプラットフォームに消費者がどんどん投稿する写真についてECLを使おうとしているのか。つまり、その写真は主にプロの写真であったりするような場合が想定されているのか、あるいはSNS上に消費者がCGM的にどんどん投稿するたくさんの写真そのものについて、つまりまさにCGMコンテンツそのものについてECLをしようとしているのか。

これがもし分かれば教えていただきたいというのが1つの質問で、2つ目の感想、コメントについては、後半にDSM指令の別の条文についても調査をしていただけるということをおっしゃっていて、今の質問とも少し重なるんですけれど、15条、17条、要するにプラットフォーマーが大量の著作物を利用するに当たって権利者の許諾を取るようにしなければならないという、それぞれ規定でありますけれども、そこにおけるECLの利用というのが果たしてどのくらい今後進んでいくのかなというのが一つ、すごく重要かなというところが1点。

それからもう一つ、個人的に、やはりこのECLのような仕組みというのは、アーカイブ分野がすごく一つは有効なんだろうなと思っているときに、21ページにフィンランドのECLの対象一覧をつけていただきました。やはりいずれも先ほどのDSM指令等の要件と、まさに様々な形で関連するような分野が多いのかなというふうに思いましたときに、右側の上から3ブロック目のところに、放送局がアーカイブ化した番組に含まれる著作物の再利用というものが含まれている。これはやはり日本でも、すごく貴重な放送アーカイブがたくさんあるときに、権利処理がすごく大変で、なかなか活用ができないということをよく聞く。

日本だと、先般の31条改正で、書籍等の分野についてはかなり法改正が、これは世界にも類を見ないぐらいで進んだところなんですけれど、この分野というのは、恐らく先般の法改正ではなかなか対応し切れない部分というのが仕組み上、大きい。そのようなことが今後もし可能になる、可能性があれば、すごく価値のある分野かというふうにも思っていて、少しよく見ていく価値があるのかなと感じました。

以上、質問とコメントです。

【上野主査】ありがとうございます。それでは、萩原様。

【萩原様】質問、コメント、感想ありがとうございました。御質問の件、Bild-Kunstさんについては、実はニュースリリースでは全然細かいところが書いてなくて、SNSプラットフォームの写真利用ぐらいしか書いていなかったんですが、どれなのかというところは、ちょっと私のほうも現状判断つかないところでございます。ただし今現状、EU指令を見ると、やっぱり基本的には大量使用で、権利処理が難しいことが対象になっていることから推定するとなると、いわゆるSNS上にあるような大量利用のものを、例えばほかの利用をしたいとか、SNSにアップロードされている写真を使って、1つまた別のコンテンツをつくりたい、そういったときにライセンスを取るとか、そういった理由が想定されているのかなという推測になります。

ほかコメントの件についても大変興味深くて、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。

【生貝委員】ありがとうございます。今のところはまさに、本当にECLという仕組みがCGM的なことをどのくらいヨーロッパのほうでは対象にして考えているのかなという意味でも結構重要なところかなと感じたので、僕も機会があれば調べてみたいと思います。ありがとうございます。

【萩原様】ありがとうございます。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。では、唐津委員、お願いいたします。

【唐津委員】大変貴重な発表ありがとうございます。非常に勉強になりました。

私からは質問なんですけれども、実施されている国の中でノンメンバーへの分配方法についても幾つかお話があったかと思います。例えばフィンランドの場合、22ページで御説明いただいたのは、ノンメンバーからの申告に基づいて分配するんですけれども、申告数ももともと年に5から10件で、さらに根拠が希薄なものもあって、分配は一、二件程度ということでした。ノンメンバーへの分配というのは、多分どの国でも難しい、実務的に一番難しいところかなと思うんですけれども、実際にノンメンバーに本来分配すべき使用料というか分配金で、分配できずに終わるものは大体割合でどれくらいというお話は、調査では出てきたのでしょうか。もしそれがあればお聞きしたいなと思ったんですが。

【萩原様】結構各団体にはそのあたりはしつこく聞いたんですが、すぐぱっとクリアに答えられなくて申し訳ないです。団体により多少のムラがあると思いますが高い割合ではないとコメントはいただいているところでございます。(会議後追記:フィンランドではノンメンバーの構成比でいうと契約の本数ベースで3%程度、金額ベースだと2%程度)

【唐津委員】ありがとうございます。

もう一つ、ついでにお伺いしたいんですけれども、現在実施しているときに、ノンメンバーが何人いるかというのは難しい問題だと思うんですけれども、大体スタート段階で、業界で関係するような著作権者のうち、どの程度の人がメンバーになっている管理団体が実際にこれを行っているのでしょうか。そういうお話はありましたか。もちろん実際には誰でもノンメンバーになる可能性があるので、難しいと思うんですけれども、把握できている中で、大体業界で仕事として著作活動を行っているメンバーのうち、何割ぐらいがメンバーになっている集中管理団体というのをイメージすればいいのかというのを伺いたいのですが。

【萩原様】ありがとうございます。これについては、フィンランドについてはかなり、ヒアリングをしていると9割ぐらいはカバーできているという話を伺っています。それはもともと組合みたいなところができやすい国だというところも本人たちはおっしゃっていました。なお、この9割の算出方法は、日本でいうところの国勢調査のデータに対して、メンバーがどれだけカバーできているのかということで出されているようです。

少し話がそれますが、先ほどの発表資料のうち代表性について少し補足させていただきますと、一応この割合はECLを行うCMOが9割以上じゃないと駄目だとか、そういう定量的な規定はなくて、分野によってもそういったところの割合についてはばらつきがどうしても出てくるだろうから、それについては都度判断しているというふうに伺っています。たしかハンガリーで1度、ECLを認めなかったケースがございまして、それは、業界に対して集中管理できている割合が1割とか2割ぐらいしかなかった場合は、代表していないということでECLを認めなかったというケースはございます。一応この点についても補足して御紹介させていただきたいと思います。

【唐津委員】どうもありがとうございました。

【萩原様】ありがとうございます。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

では、井奈波委員、お願いいたします。

【井奈波委員】今の御質問の代表性の問題とも絡む問題ですが、ハンガリーやフィンランドについては、もともと集中管理団体制度に対して特徴的なところがあったので取り上げられていると思うのですが、他の国も含めて、各国がどういった素地を持った国なのか、例えば代表性の前提として、特に、そもそも1分野1団体なのか、それとも1分野複数団体なのかという点も、拡大集中管理制度の導入のしやすさや、団体の適格性に対する判断などに影響を与える観点ではないかと思いますので、その点についてもまとめていただけるとよいと思いました。

また、欧州に関して、欧州指令8条に基づくアウト・オブ・コマース作品に対する義務的な集中管理と、そうでない任意的なものがありますが、特に後者の拡大集中管理についてどの程度進んでいるのかという点も、参考になると思いますので、明らかにしていただけると非常にありがたいと思いました。

以上です。

【萩原様】ありがとうございます。本編版も近日中に公開できたらというふうに思っていますのでそのあたりの情報が不足しており申し訳ございません。前者のところですが、逆に質問になってしまうんですが、これは制度上、2団体以上認めているのかという論点と、この国においては、例えばドイツの映像分野だったら4団体ぐらいあったりするんですが、実態として複数団体存在するのかという論点があります。前者はEU国もハンガリーの議論を観て言う限りは原則2団体以上作れるようにしないとならないということになっていると考えており、そういう意味では当該国は1分野にすべて2団体以上作れることになっています。もしくは、後者の団体一覧みたいなものを分野別に作っていれば分かりやすいんじゃないかという御意見でよろしいでしょうか。

【井奈波委員】例えばイタリアは制度的に集中管理がある団体(SIAE)に集約されていたと思います。そのように国別に特徴があると思いますので、今調査されている国は恐らく1分野複数団体の国を調査されていると思うのですが、もし今後調査されるにあたっては、そうではない国の状況も参考になると思いました。

【萩原様】ありがとうございます。すみません、報告書では団体の分野別一覧であったり、DSM著作権指令で第12条が今回の指令で導入していて、もともとどれぐらい入っているのかみたいなところも含めて一覧的に整理していますので、お待ちいただければありがたいなというふうに感じています。

【井奈波委員】ありがとうございます。

【萩原様】ありがとうございます。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

では、渕委員、お願いいたします。

【渕委員】今日は詳細な御報告をいただき、ありがとうございました。大変勉強になりました。今の井奈波先生の御質問とも若干関係するところですけれども、スライドの9ページで御紹介いただきましたアウト・オブ・コマースのお話ですが、このアウト・オブ・コマースの定義について、もともと法案ではあったものが、最終的には定義がない形になったことについては、どのような議論があってそのようなかたちにまとまったのかということを教えていただければ幸いに存じます。

【萩原様】ありがとうございます。すみません、ちょっと現時点では答えられませんが、もし見つかるようであれば報告書のほうに反映したいと思います。力及ばず申し訳ございません。

【渕委員】すみません、急に質問申し上げまして。ありがとうございます。

【上野主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

今村委員、お願いいたします。

【今村委員】詳細な御報告ありがとうございました。非常によく分かりました。

1つは質問で、もう一つは意見ですけれども、12条の拡大効を有する集中許諾に関しては、アウト・オブ・コマースのECLにあったような制限、つまり対象外となる第三国での著作物とか、加盟国なのか第三国なのか定めることができない著作物とか、そういった対象外の条件が、12条のほうにも当てはまるのかどうか。これは日本の著作物の著作権との関係で割と大事な点だと思うので、念のため確認しておきたいと思いました。

もう1点は意見で、やはり著作物の利用に関して、権利の制限や例外ではなくて、ライセンスとしてECLで処理することの意義は、権利者のイニシアチブ、すなわち権限によるオプトアウトが可能だということを、正面から認めるという点にあるといえます。他方で、集中管理に参加していない権利者は、基本的には権利の行使に関心が薄い場合が一般的に多いかもしれない。また、申込みをされても応答コストに手間がかかるから何もしたくないという権利者が世の中結構たくさんいるから、そういった場合にECLというのは、対価の還元も含めて、多少権利者と利用者の利害をうまく調整できる枠組みだと思います。アウト・オブ・コマースのECLについては、そもそも時間がたっていますし、アウト・オブ・コマースになっていますから、権利の行使に関心が薄い権利者も典型的に多いとは思うんです。完全にないとは言わないですけれども。なのでECLが制度的に有効に機能しやすいと思うんですね。

問題は一般ECLのほうで、実際にどのようなプロジェクトでこれを使うのか、運用の事例が非常に参考になると思います。今回の御報告でも、13ページでドイツの事例が、構想というレベルですけども、挙がっていましたが、本当は許諾を得て使えばいいだけの話であるとすれば、それをあえて一般ECLの枠組みでやるという、そういう具体的な事例がヨーロッパでどういうふうに蓄積されているのかというということが、今後関心の中心になるかなというふうにも思いました。

以上です。

【萩原様】ありがとうございます。まず1つ目、御質問いただいた件についてですけれども、例えば8条の規定が12条にどれだけ及ぶのかって結構難しいなと思っています。一応コンメンタールとかを見ると、例えば公表措置を例に挙げさせていただくと、こちら12条のほうは特に期限は記載されていないと。8条のほうは半年前にということで書いてあるので、コンメンタールでは、おそらく8条の6か月ではないかというふうに書いています。しかし、実際ドイツでは一般ECLのところについて見てみると、3か月と書いてあったりするんですね。ですので、必ずしもコンメンタールのとおり解釈していいのかなというところは、ちょっと悩ましかったところではあります。

特に海外の権利については、アウト・オブ・コマースでは8条7項について第三国については対象とならないとされていますが、実際のところ、12条は広くECLについて記載されているところであり、本日紹介したドイツ、ハンガリー、フィンランドとかの、いわゆるノンメンバーで配分できなかった権利者のリストを見ると、日本人の名前だったりとか、明らかに当該国に住んでいなさそうな方々の名前が結構載っていました。そう考えると、8条7項の規定については12条に及ばないのではないかというふうに推察されます。断定的に言うのはちょっと難しいところであるので、推察というレベルですがそのように感じているところでございます。

【今村委員】ありがとうございます。

【萩原様】コメントについてもありがとうございました。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

和田委員、お願いいたします。

【和田委員】今回初めて出席させていただいて、いろいろと話を聞きまして、非常にアカデミックな分野で、著作物といっても、音楽などいろいろとある中、ソフトウエアとしては、ゲームは比較的近い部分があるかなというふうには感じてはいますが、それでもまだ距離感、対象としている考え方というのがまたちょっと違っていました。ましてビジネスソフトは、権利者が法人であり、集中管理もできませんし、さらにいろいろな制約がありますので、ビジネスのほうは全くこれからで、一番距離感のあるところにいるのかなというのを感じながら、今の話を聞かせていただきました。ちょっと恐縮ですが、感じた感想を率直に、話をさせていただきました。

以上でございます。

【上野主査】どうもありがとうございます。

須子委員、お願いいたします。

【須子委員】多岐にわたる御発表ありがとうございました。今のお話の中で、ECLを既に導入しているところでオプトアウトの件数があまり多くはない、極端に言ってしまうと非常に少ないということが発表の中にありました。これが少ないから権利行使の意識が少ないのではないかというような議論になっていくことは危険かなと思っております。フィンランドにしてもハンガリーにしても、人口は非常に少ないです。その中で、特に音楽に関しては、クリエイターと言われている人たちは、ほとんどの人たちが団体に所属をして権利行使をしています。そういう背景の中でオプトアウトの人たちが少ない、つまり、これはもう権利行使をする人は少ないというふうな、そういう議論に傾いていくということはよくないかなと、もうちょっと背景事情とかを理解してからのほういいかなという、そんな感想を持ちました。

以上です。

【上野主査】どうもありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。

あまり時間ないんですけど、私からも1点だけお伺いしてもよろしいでしょうか。ハンガリーとかフィンランドでは、分配できなかった使用料について、文化基金に支出したりするという例の御紹介がありました。ドイツでは、そういう支出もあるけれども、実際には団体内部で分配している場合があるというお話がございました。これは、権利者に分配できなかった使用料の使途に関してそれぞれの国で法律上の決まりなどがあるのでしょうか。

【萩原様】時間の関係で簡潔に説明できるように頑張ります。先ほどのDSM指令とはまた別に、オンライン音楽著作物指令、ものにより集中管理指令と略されるものがあります。その中に分配できない使用料の規定について記載されています。そこには、今回関係する論点を中心に御紹介したいこととしては2つあります。1つは3年以内に配れなかったら分配できないとみなされるといったもので、もう一つは、「できる」規定なんですけれども、配ることができなかったお金については文化団体とかに再分配することができる。あくまでも「できる」規定となっています。こちらはできる規定だということもあって、ドイツでは導入されておらず、ドイツでは、あくまでもこの3年間経過した分配できない使用料は、CMOの使用料規定の中で定めるとだけしか規定しないとされているところです。

ハンガリーについては、明確に法律上、ハンガリー国家文化基金に移管すると法律で明確に定められています。フィンランドは、すぐ思い出せないのですが、使用料規定の中で定める、つまり、フィンランドでは文化とかに使わなきゃいけないとか、そういった規定はされていないという整理になっておりました。(会議後追記:フィンランドのKopiostoについては奨学金・文化振興に使うこととされているが、法律上はドイツと同様に使用料規定で定めることになっている)

すみません、簡単ですが、以上です。

【上野主査】どうもありがとうございます。この問題は、いわゆる「簡素で一元的な権利処理方策」、あるいは権利制限に基づく補償金制度を運営していく上でも我が国にとって重要なポイントになるかと思いましたので、お伺いさせていただいた次第です。どうもありがとうございました。

それでは、他に特にございませんようでしたら、事務局におかれましては、ただいまいただいた御意見を踏まえまして、今年度の調査研究の対応について御検討いただければと存じます。

では最後に、議事の5、その他でございますけれども、資料4につきまして、事務局よりでは最後に、議事の5、その他でございますけれども、資料4につきまして、事務局より御説明をお願い申し上げます。

【加茂下海賊版対策専門官】事務局から失礼いたします。資料の4を御覧ください。

国境を越えた海賊版による著作権侵害につきましては、昨年度のこの国際小委員会において御審議いただきまして、課題解決のために考えられる方策として様々挙げていただきました。中でも当面文化庁が実施すべき対策の一つとして、特に相談窓口に関しましても御審議いただきまして、その内容は中間まとめにも言及されているところでございます。その審議を踏まえまして、本年度の文化庁の事業として、相談窓口の設置に向けて準備を進めているところですが、本日は、その準備状況について御報告申し上げます。

資料4の上段でございますけれども、こちらはポータルサイトでございます。既に6月に文化庁のホームページで公開しておりまして、これまで文化庁が有するノウハウをそちらに掲載しているものでございます。内容としましては、削除要請のガイドブックですとか、国別の著作権侵害の対策ハンドブック、また、よくある御質問というものを整理して載せております。

資料4の下段でございますが、これは今月下旬に開設予定の相談窓口でございます。相談までの流れですけれども、相談者はまず、この上段にありますポータルサイトの内容を確認していただきまして、解決しなければ、ポータルサイトを入り口とする相談窓口で、メールベースで相談をしていただきます。さらに、案件によっては弁護士による無料の個別面談も行われるというものでございます。相談者につきましては特段制限を設けず、例えばコンテンツ系企業ですとか個人クリエイターの方々、また代理人弁護士、委託や信託により権利の管理を引き受けている方などを想定しております。

文化庁としましては、これらの取組を通じまして、引き続き海賊版対策を積極的に講じてまいりたいと考えております。

資料の説明は以上でございます。

【上野主査】どうもありがとうございます。国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応につきましては、次回の国際小委で議論することとしておりますけども、ただいま御説明いただきました資料4につきまして、何か御質問、御意見ございますでしょうか。特段、よろしいでしょうか。

それでは、ありがとうございました。

では、全体を通しまして、もし何か御発言ございましたらと思いますけれども、よろしいでしょうか。

特段ございませんようでしたら、本日はこのぐらいにしたいと存じます。

最後に、事務局から連絡事項ございましたらお願いいたします。

【長谷川国際著作権専門官】本日はありがとうございました。次回の本小委員会につきましては、11月21日月曜日の10時からの開催を予定しております。今後ともよろしくお願いいたします。

【上野主査】ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会国際小委員会の第1回を終了とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

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