日時:令和6年10月21日(月)
16:00~18:00
場所:文部科学省東館3F1特別会議室
(オンライン併用)
議事
1開会
2議事
- (1)DX 時代における適切な対価還元についての関係者からのヒアリング
- (2)その他
(Netflix/日本動画協会)
3閉会
配布資料
- 資料1
- Netflix 提出資料(令和6年10月25日一部修正)(3.5MB)
- 資料2
- 日本動画協会提出資料(903KB)
- 参考資料1
- DX 時代におけるクリエイターへの適切な対価還元に係るこれまでの議論及び今後の進め方について(案)(前回配布資料)(666KB)
- 参考資料2
- 令和7年度概算要求関係資料(DX 時代の著作権施策の推進)(457KB)
- 参考資料3
- 「知的財産推進計画2024」及び「新たなクールジャパン戦略」等の政府方針等(著作権関係抜粋)(前回配布資料)(1.5MB)
議事内容
【太田主査】委員の皆様、こんにちは。定刻になりましたので、会議を開始したいと思います。昨今は、1日に15度ぐらい気温が乱高下するので、どういう服装を着たらいいか分からないような状況ですね。とはいえ、時間ですので、ただいまから文化審議会著作権分科会政策小委員会(第3回)を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、委員の皆様には、会議室とオンラインにてそれぞれ御出席いただいております。オンラインにて御参加されている皆様におかれましては、ビデオをオンしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。
議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段、非公開とするには及ばないと思われます。したがいまして、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが、特に異議はございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【太田主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴していただくことといたします。
また、前回の会議(令和6年7月31日)以降に事務局内で人事異動がございましたので、事務局から御報告をお願いいたします。
【持永著作権課課長補佐】事務局です。
人事異動を御報告申し上げます。10月1日付で文化庁著作権課著作物流通推進室長に着任しております八田聡史でございます。
【八田流通推進室長】よろしくお願いします。
【持永著作権課課長補佐】以上です。
【太田主査】ありがとうございました。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【持永著作権課課長補佐】配付資料の確認をさせていただければと思います。本日は、Netflix様と日本動画協会様のヒアリングがございますので、その資料を御用意しております。
また、本日の御議論の際の参考となるよう、前回の本小委員会で配付しておりました「今後の進め方について」を参考資料として用意しております。ほかは議事次第のとおりとなります。
対面で御参加の委員の方でもし不足などございましたら、近くの事務局職員にお声がけいただければと思います。
資料の確認は以上です。
【太田主査】ありがとうございました。
では、議事に入ります。
本日の議事は議事次第のとおりとなります。早速、議事(1)の「DX時代における適切な対価還元についての関係者からのヒアリング」に入りたいと思います。
本日は、Netflix、日本動画協会様より、「DX時代における適切な対価還元」について、それぞれ御発表をいただきます。Netflix様からは、プラットフォーマーの立場から見たクリエイターへの対価還元について御発表いただきます。日本動画協会様からは、アニメの製作委員会における収益分配の在り方等について御発表いただきます。
それでは、初めに、資料1に基づき、Netflix様より御発表いただきます。御説明は、ディレクター・公共政策担当の杉原佳尭様にお願いします。それでは、よろしくお願いいたします。
【Netflix(杉原氏)】皆さん、こんにちは。Netflixの杉原でございます。今日は、よろしくお願いいたします。座長の先生、御紹介ありがとうございます。本日は、「クリエイターへの対価還元」というお題をいただいておりますので、私どもの考えるところについて申し述べたいと思います。
まず、1枚おめくりいただきまして、これが今回の題目でございます。
2枚目めくっていただきまして、そこで少し見ていただければ、クリエイターの平均年収と平均労働時間の改善と弊社の貢献というタイトルで書いておりますけれども、今まで、クリエイター業界というか、コンテンツ業界は、労働時間が長く、休日がなく、なおかつ賃金が安いと、そういうような業界であり、この価格転嫁のところでも28業種中の26位と一番低位であったと。しかし、このトレンドが最近少しずつ変わってきていると言われておりますし、ここに出ている資料がそれを示していると思うんですけれども、弊社が適正な価格を支払って価格転嫁や労働環境の改善に取り組んでいるというのも影響していると考えております。ここで言う適正な価格ですけれども、実は、後のほうに述べますが、日本はこういう職種だからこういう値段というものが決まってはおりません。ですが、私たちの中で、こういう技量を持っていらっしゃる方でしたらこれぐらいの報酬をお払いするべきであろうというようなところを考え、もう一つ、労働時間を定め休日を増やすことによって、事実上、作品を制作する時間が長くなりますので、最終的には報酬も高くなるという、この2つの影響が出ているのではないかと思います。また、労働環境の改善についても、後のほうで幾つかの例をお示しさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
もう1枚めくっていただきます。クリエイターへの適切な還元における2つの課題ということで、まず1番ですけれども、発注者から制作会社への発注価格が低廉だと、そもそも分配の原資が不足する。当たり前のことを書いているんですけれども、この発注金額というのがコストに見合うだけのものであるかどうか、そのコストだけではなくて、その後、管理費であるとか、普通に考えて適正な利潤というのがその上に含まれているかどうかということがすごく大事であると思っております。次ですけれども、仮に発注者が十分な報酬を制作会社に支払っても、次は、制作会社からフリーランス等従事者の方々に十分な報酬が支払われるかどうかというのも問題であると。ここの確保が結構難しいと思っております。3つ目ですけれども、これも当たり前の話なのですが、発注者からの適切な発注額と、制作会社からきちんとクリエイターに適切な報酬の、この両方を担保しないと、クリエイターの皆様にとっては十分な報酬あるいは適正な報酬というものが頂けないというようなことではないかなと思っております。
そこで、私たちとしてどういうことをやっているかと申し上げますと、Netflixでは、コンテンツのクオリティーをまず上げると。そのために必要な大規模な発注額の確保と投資。コンテンツのクオリティーを上げるというのはどういうことかと申しますと、今までですとコストの関係上できなかったというようなことが結構あります。ここでロケをしたいのにロケができなかったとか、ここのシーンは例えばVFXをもう少し多用したかったのにできなかったとか、幾つかあるようなそういう妥協を基本的にはしないような形でクオリティーを向上させると。これは当然、発注額にも跳ね返ってきますと。しかし、その投資をすることによって、私たちとしてはお客様に満足をしていただく、また、クリエイターの皆さんにとっても、本来はこういう絵が作りたかったんだというようなものをそこで実現していただくということが大事ではないかと思っています。
次に、先ほども述べましたように、クリエイターへの適切な対価還元と賃金向上に必要な人材育成、それから就労環境の改善というところですが、今も申し上げましたみたいに、適切な対価を還元する、あるいはクリエイターの皆さんに長期で作品に取り組んでいただくことができるような形というものを目指しています。ただ、それだけでは今のことでしかありませんので、先のためには、クリエイターの皆さんがもっと上のスキルを身につけていただくためのトレーニングであるとか、あるいはパワハラ・セクハラ、そのほかいろいろな就労環境の改善をしていくことによって、優秀な方々にこの業界に入ってきていただく。優秀な方々が入ってくるということは自動的に賃金のベースも上がっていくということなので、全体を押し上げていくということです。そのような優秀な方々がコンテンツ業界に入ってくるような形の取組をいたしております。しかしながら、このような取組は弊社1社だけではできませんので、コンテンツ業界全体に普及させていただくことを目的としておりまして、私どもは経団連のメンバーでもございまして、経団連のクリエイティブ委員会のところでもいろんな発言をさせていただいて、今般出されている提言書にも大分反映してくださっているのかなと思います。
スライドの下のところに、一つ一つ読み上げることはしませんけれども、その上で申し上げたところに関してどういうことをしているかというのを書いております。特に、次から出てきますけれども、取り組み1番、2-1.というところを深く話していけたらなと思っております。
また、2枚めくっていただきます。適切な制作予算確保に向けた業界の自主取り組みというタイトルで、ここでは、映適さんのことを書かせていただいておりますけれども、Netflix自身は、実は映適さんができる前から、映適の皆様方と密なコミュニケーションを取っております。それで、弊社としては、1日の稼働時間を10時間、それから次の日まで10時間空ける、週に1回完全な休みがあるというのを自主的なガイドラインとしてやってきましたけれども、映適様もそれにほぼ同じような形で休憩時間の有無というのがありますが、ガイドラインを制定されていると理解をしています。、もう一つですけれども、この予算の1番の途中にありますコストをきちんと積み上げていくということ。この予算でやってくれということも世の中ではあるのでしょうけれども、やはり人一人の費用とかというのは積み上げていって、そこにしわ寄せが来ないようにするということが非常に大事かなと思いますので、コストアップによるマークアップ方式であるとか、必要な間接費は認めるんですけれども、後で申しますが、そうでないものは反対に削っていくということが重要じゃないかなと思っています。
2つ目です。次のページになりますけれども、これはかなり関心を寄せていただいている視聴時間の公表ということで、弊社では去年から半年に1回、5万時間以上視聴されたオリジナル及びライセンス作品の視聴時間をエンゲージメントレポートとして公表しておりまして、これは誰でも見れるようになっております。まず、ここでなぜ5万時間なのかという御疑念があるかなと思うんですけれども、ここは、どこかで足切りをしないと、やっぱりクリエイターの皆さんは非常にセンシティブな人も多いので、全くもって見れなかったみたいな話になると少しショックを受ける方々もいるので、ある程度この辺、5万時間というのを一つの区切りとするのがいいんじゃないかというので、弊社で決めたことですけど、その辺よりも以下のことはいいじゃないか、5万時間ということで見ようじゃないかということにしておりますので、1分1秒もやってくれという話もあるかなとは思うんですけれども、その辺はその事情で5万時間ということを一つの区切りにしております。
エンゲージメントレポートですが、皆さんに見ていただくことによって、今後の作品作りの示唆を与えたり、いろいろな形で次の交渉についての道具になっているということは事実です。例えばですけれども、シーズン1がはやって、次、シーズン2のライセンスの更新をするときに、当然シーズン1がベースとしてお話になるわけですので、それがはやったということでシーズン2をやるわけですから、当然高くなるということはありますし、例えば、ちょっとタイトルは申し上げないほうがいいと思いますけれども、少し前、昔に作られた放送局様のコンテンツを私どもがライセンスをして世界中に配信すると、特にヨーロッパとかすごく見られたことが、ありました。そうするとやっぱりその次のシーズンはライセンス料も高くなってくるということで、これ、当たり前なビジネスの原則かと思いますけれども、それも、こういうものを公表することによって、コンテンツを持っていらっしゃる方々がどの程度の交渉をしていかれたらいいのかという一つの指標にもなっていますし、私どもにとっても、きちんとそれを紹介することによって次のライセンスの交渉の一つのベンチマークとしているというところです。
今の話はエンゲージメントレポートですけれども、それ以外にも、その次のページになりますが、「今日のTOP10リスト」とか「NetflixのTOP10」あるいは日本のTOP10、全世界のTOP10とか、いろんなものが見れるようになっております。今のところ、これを1年で集計してお見せするということは弊社としてはやっておりませんけれども、世の中、いろいろな会社がそれをもう既にやられているというところで、パブリッシャーの方々であるとか、IPのホルダーの方々はそういうところから弊社のこういうデータを手に入れられて、提供していただいているコンテンツの順位であるとか、あるいはほかのコンテンツの順位であるとかということを勉強されているというのは仄聞しております。弊社Netflixでは、クリエイターをはじめとしたコンテンツの制作関係者に適切な情報を公開して、適切な価格あるいは適切な交渉ができるということを目指しているということで、こういうものも発表しているということです。
次のページですけど、2-2.なんですが、制作会社からクリエイターへの適切な還元ということで、ここで私のほうから皆様方に少し質問したいなと思うのですが、そもそもクリエイターって誰のことなんだろうか?、これ、大きな疑問だと思うんです。ちょっとそれを頭に置いていただいて次の発表を聞いていただければと思います。
次のスライドですけれども、これはアメリカの労働者組合のストライキ、これはテレビで御覧になった方々もいっぱいいらっしゃると思うのですが、これが去年の11月に妥結しましたと。少なくとも最低賃金の7%上げを獲得したというふうにも書いておりますが、実はアメリカあるいはヨーロッパでは、こういう組合であるとかギルドが、この方々も私はクリエイターと呼んでしまいますけれども、クリエイターの方々の保護の役割を果たしていらっしゃいます。その上で、どういう職種のクリエイターの人が、一定視聴時間以上の視聴があった場合、弊社からお支払いさせていただくアディショナルなボーナスというか、対価というか、それはこのSAGならSAGが配られるということで妥結をしているということなので、まずベースにあるのは、クリエイティブ業界で働いている方々皆さんがきちんと職種が定義され、その職種に松竹梅というか、A、B、Cのランクがついていて、その方々が幾らでなければいけないというテーブルがもう既に欧米ではできているのです。脚本家のトップの人たちは何十万ドル以上とか、あるいは助監督の人たちも、例えば中間水準の人たちは何万ドル以上というのがもう既にテーブルとしてできていて、それ以上の契約をしなきゃいけないということになっています。アメリカの場合はそういう組合が健康保険とか年金とかの保証もしているというような形になっているので、ある意味では、いわゆるクリエイターでもスタッフ的な人たちのお仕事というのはそこできちっと定義され、価格が決められております。人件費だけではなくてプロジェクトごと、例えば開発ですね、それがどうなるか分からない開発も、開発に従事すれば最低幾らと決まっていますし、私たちがバイブルと呼んでいる総合企画書のようなものが大きな作品では出てくるのですが、それを作るのにも幾らということが出てきておりますので、欧米の制度を見習うと、もし仮定するのであれば、そういうものが決まっている社会であるという前提を皆様方に理解していただきたいと思います。その中で配分されたアディショナルなリミューネレーションをどのように配られるかということは、その国あるいはその組合の幹部の方々がお決めになられていることでございます。
なので、今、私が申し上げたような前提の異なる欧米のクリエイターへの還元を日本に導入しても、日本のコンテンツ産業の問題点が解決するとはなかなか思えないと思っております。まず、日本の場合、これは慣習的ですけれども、口約束も多いですし、報酬も細かい数ではなくて7・5・3みたいな形で、そこで決まってしまっているような慣例が非常に多く受け止められております。なので、ここをやはり解決しなければクリエイターへの還元というのは、ままならないなと思っております。
私、もうNetflixに入って5年以上になりますけど、この前は、長くIT業界におりました。ほぼ、20年前のIT業界も実は、今のエンタメ業界と変わらないところも多くて、人月単価60万円とか、あるいはプログラマーさんだったら人月単価30万円と、そういう決め方をしていた業界ではあります。それを、経済産業省様がITスキルスタンダードというのを作られました。これが、最初導入されたときはかなり批判が飛んできたと聞いてはいるんですけれども、もう十何年やられていると非常に精緻なものができ、その技術者の皆さんのスキルマッピングができて、と同時に、どのようなスキルを持てば次の段階に上がれるのかということがここで分かるようになりました。また、業界もこれを一つの目安として、例えばレベル1のプログラマーさんだったらこれぐらいの報酬、レベル7だったらこれぐらいの報酬ということで、業界の中でもいい人を採りたい、これぐらいのレベルを採りたいという人の一つのメジャーメントになっているということは事実ではないかなと思います。今日、可能であれば私の一つの提案として、このITスキル標準を参考に、日本ではコンテンツ産業におけるクリエイターのスキルマッピングをまずはやってはどうか。この業界には、どういう方々がいるのか、どういう職種があるのか、いい報酬をもらうためにはどういうふうにトレーニングをしなきゃいけないのかというのを可視化する必要があるのではないかなと思います。
次、めくっていただきますと、その上の方ですが、これは国土交通省が検討している標準労務費の勧告制度ということですが、昨今、トラックのドライバーの方々とか建設の方々とか人が少ないということで、もはや国土交通省様でも、標準的な賃金をここで出していかないとなかなか人手不足は解消しないというようなことを考えていらっしゃると聞いておりまして、何もコンテンツ業界だけではなく、人手不足は全ての業界に起こっていることでございますので、こういう政府の動きも一つ参考になるのではないかなと思います。スキルマッピングができた後、こういう勧告あるいは標準賃金みたいなものを制定していくというのも一つの手ではないかなと思っております。
2つ目、これも今日、ぜひとも皆様方に頭の中のどこかに置いていただきたいことなのですけれども、弊社では制作経理を導入して、制作費全体に対する管理費の導入を行っております。どういうことかというと、この絵にありますけれども、いわゆる子請、孫請、下請、階層が下がるごとに管理費を取られるというようなことは健全ではないと思っておりまして、グローバルでスタンダードの制作経理を導入する。これは見える化の一つの手段であると考えておりますし、例えば日本の方々にとっても、外部から資金を導入するには、やはりグローバル標準な制作経理を導入しないと、外部からの資本導入というのは難しいと思います。誰が見ても分かりやすいメジャーメントを導入して、私どもは、全制作費に対して管理費をお支払いすると。その管理費をどの階層でどの制作会社が分けるのかは、それは皆様方で決めてくださいということで、その階層ごとに乗ってくる管理費というのを私たちはなくしております。特に、これ、私が結構こだわっててやったことなのですけど、去年からインボイス制度が始まっております。インボイス制度は、フリーランスの人たちは嫌がる人も中にはいらっしゃるかもしれませんが、考えようによっては、これは一つのチャンスであると。なぜかというと、多重下請構造の中で制作費の見える化がこのインボイスの導入によってできるからなのです。きれいな形で書いています制作費の見える化、ストレートな話でやるとピンはねの防止です。誰がピンはねをしているのか、このインボイスを導入していることでみんな分かってきます。ですので、やはりインボイス制度は非常に重要であると思っておりまして、弊社ではフリーランスのクリエイターの方々に適格事業者になられることもお勧めしているということでございます。私は、政府の別の会議体で3つの重要なことがあるとお話をさせていただいたことがあります。1つは契約、今まで契約のない人が非常に多かったからです。契約があって、2、納税があって、3、社会保障がある。この3つをきちんと整えることによって、クリエイターの皆様に対して適正な対価あるいは適正な報酬が払われていくのではないかなと考えております。
次、めくっていただいて2-3番、これは賃金向上に資する人材育成ということで、賃金を向上するには大きく分けて2つしかないと。スキルを上げてもらうか、生産性を上げてもらう、この2つしかないなと思います。まず、スキルを上げていただくために、アメリカの撮影監督協会から一線の講師の方々をお招きして、若手の撮影監督の皆さん、2日間にわたってワークショップを開きました。この監督さんとも、私は、直接話しましたが、監督いわく、(日本人は)技量が低いのではないと。チャンスがないんだと。反対に、何人かの監督の方々は、私達アメリカから来た人たちに「日本ではこういうやり方があって」ということを教えてももらったともおっしゃっていまして、やはり若手の人たちが新しいことにトライするチャンスがないというのが、スキルアップができない結構大きな原因の一つでもあると私はここで伺いました。
その次ですけど、ここに書かせていただいておりますのは、去年と今年、慶応大学でフジテレビさんと共同で、寄附講座で「コンテンツビジネスの現状と将来」ということで、コンテンツ業界に行こうかな、でも、興味あるけど、どうしようかなと思っている人たちに、ここの業界はこういうことなんですよということをフジテレビさんと一緒に慶応の学生さんたちの前で講義をさせていただいています。去年で100人程度、今年は180人程度取っていただいて、今年はその中から、どうしてもコンテンツ業界に携わりたい、プロデューサーになりたいという24名の学生さんがいましたので、私どもの費用でVIPOさんにお願いして、国際プロデューサー講座初編というのをやらせていただきました。まずこの業界に興味を持ってもらい、どういう職種があるか、何をしなきゃいけないのかということを理解してもらう、入り口での人材育成にも取り組みました。
その次ですがまた、技術のほうに戻りますけれども、まずアナログな制作手法ですが、ここも全部が悪いというわけではないんですが、やはり現場の情報を効率よく後工程に引き継げないと長時間労働してしまいます。そこで、デイリーという1日の撮影日報みたいなものを全部電子化しています。デイリー電子化のワークショップもやっています。ということで、今まで紙に鉛筆で書いたものを家に帰って打ち直してという、そこの手間が要らなくなりました。
その次ですけれども、ここは今までやったことを1つ紹介させていただきますが、バーチャルプロダクションであったりフォーカスプラーですね、カメラなんですけれども、4Kのテレビが今やデフォルトになってきているこの中で、カメラ撮影も4Kでやらなきゃいけません。ということは、フォーカスが非常にシビアであるということなんです。今までですと、カメラの助手、カメラマン、それからフォーカスプラーと、この3人で1個小隊ですけれども、やはり4Kをきちんと作っていこうと思うと、それを2個小隊つくっていかなきゃいけないと。となると人手が足りないので、助手の人がフォーカスプラーをしたりみたいなことも起こってくるわけなんです。解像度の高いテレビに替えて本当は解像度が高い作品が見られるのに、フォーカスがぼけているというのが結構日本作品ではありがちな話で、ここをやっぱり改善していかないといけないということで、このフォーカスプラーのワークショップは22年からずっと続けて私たちもやらせていただいております。それ以外にも、ここの写真で出ているところはVFXです。今まで日本で取り入れたことのないようなVFXを画像に取り入れて皆様方に見ていただいておりますけれども、そのVFXのワークショップもやったり、あるいは日本の企業にたくさんVFXの発注をしていたりもします。こういうような技術を導入して日本のVFX技術の向上に努めてはいるんですけど、資源不足はいかんともし難く、人も会社も少ないということで、この『幽遊白書』においては、日本人の方がオーストラリアのクイーンズランドで起業されたVFXの会社まで使うというようなことになったというのが顛末でございます。
次をめくっていただきまして、これは参考ですけれども、海外における人材育成です。いろいろと書いていますが、まず、私たちが考えている中でここは改善しなきゃいけないなと思っているのは、皆さん、大学あるいは専門学校を卒業してそのまま会社あるいは現場に働きます。ということは、基本的に素人さんなんです。現場の経験がないんです。日本ではOJTといういい呼び方で呼んでいますけど、昔の呼び方で言えば丁稚さんですね。なので、低賃金で雇われ、見よう見まねで技術を身につけると。これはもはや人材育成のメインの手段としては、不可能であると。OJTだけで日本のエンターテインメント産業を引っ張っていくことはもはや無理ですので、これこそ欧米にあるようなアカデミーですね、きちんとその業種の基礎的な技能と基礎的な知識を身につけさせてから業界に入ると。そうすれば、当然のことながらきちんとした初任給ももらえていくということで、この最初のOJTの期間にこの業界を辞めていく若手の人たちが非常に多いんですね。ですので、ここを何とかしなければ上に続いていかないと思っていまして、幾つかの試みを私どももやっています。弊社の中でプラクティカルトレーニングというものをやってみたりとか、あるいはVIPOさんにプラクティカルトレーニングみたいなものの重要性をお話しして国に予算をつけてもらったりみたいなことも、これはうちの現場ではないですけど、この若い人材が入ってくる入り口のところで何かをきちんとした人材育成としてやっておかないと後には続いていかないということが1つとしてあると思います。
もう一つですけれども、このスライドのオレンジのところに入っていることですが、エンターテインメント業界、クリエイティブ業界といっても職種が多うございます。作品を作るクリエイティブだけではなくて、私のような法務とか渉外をやっている者、マーケティング、ビジネス、あるいは海外の動向はどうなっているのか、実はいろんなことを身につけないと世界に向けて日本のコンテンツは出ていかないと思います。これをやっぱり若いうちからきちんと勉強していただくことも重要ではないかと。あるいは、今、ほかの分野で、ほかの業種で、例えば、マーケティングであったりとか、あるいは金融の資金調達をやっている方々をこのコンテンツ業界に引き入れてくるということも重要かなと思っています。
次です。課題ということで、対価還元が行われない背景の一つとしては不明瞭な契約ということで、これは最近の文化庁さんの契約書の話を書いています。これは11月1日からフリーランス新法が施行されることによって改善されるであろうと私は非常に期待をしています。その次のページを見ていただきたいのですが、2020年に、コロナのときですが、Netflixでは救済ファンドというのをやりました。私が責任者です。1億円を1,000人の方に配りました。VIPOさんを通じてなんですけど。その中で分かったことは、給付の希望者のうち87%が契約書がなかったということなんです。ですので、VIPOさんにお願いして、どういう現場があったか、あるいはそこの制作会社の方々からの一筆をもらうことによってここは給付をしましたけれども、契約書がない人達が87%というのは結構大きな数であると思っております。その時点で契約はそれぐらいなかったということです。
その次のページですけれども、実はそういう事実を基に、フリーランス新法の一つにある契約が必要だということにつながっていったのかなと思っております。ただ、今のフリーランス新法、その後、エンターテインメント業界のガイドラインが出ると聞いておりますけれども、それも最初から完璧なものができるとは思っておりませんので、これを磨いていくということも必要かなとは思います。ここにある、まずはさっきの3本柱、契約、納税、社会保障の契約のところをきちっとすることによって、例えばですけれども、現場でけがをされたとか、いろんなことが生じてくるのですから、そこの補償にも結びついていくと思っております。
次ですけれども、1ページめくりますが、ここも先ほどと同じようなことでございますので、生産性の向上がもう一つの賃上げの原資になっていくということで、ここに書いてあるのは制作経理のシステムが経産省の補助で実はつくられているんですよと。これを皆さん使っていきましょうよというようなことをここで述べておりますので、ぜひやっていただきたいと。ここで契約が口約束にならなかったり、検証が可能であるということがあると。あと、海外の人と共同制作したり、海外の人たちが出資するときに、やはりどうしてもこれが必要になってくるということがありますということです。
その次ですけれども、これはまた、映適さんのことで書いておりますが、弊社も先ほど申し上げた同じようなガイドラインを持っていまして、映適さんのガイドラインの一つの参考になったと思っております。
最後からあと幾つかですので、お付き合いくださいませ。それ以外にも安全な職場ということで、まず、インティマシーコーディネーターの導入と。インティマシーなシーンの中で、演じる俳優さん同士、また監督さんと俳優さんの間、どうしても現場は監督さんがヒエラルキーの上でいて、その下にいるスタッフの方々、たとえそれが俳優さんであっても、監督さんになかなか物を申せないというようなことが結構生じるわけです。そこのところで間に入って、本当にそういうシーンが必要なのか、あるいはこういうことをすることをあまり好まれない俳優さんがいらっしゃったら、それ以外のやり方ってないのかみたいなものをサポートさせていただいております。これは、一番最初、『彼女』という作品で始めたのですけれども、実は女性だけではなくて、右側『サンクチュアリ』、男性がメインのお相撲の作品ですので、それでも導入されているということで、これ、性別関係なく必要であると思っています。
次ですけれども、リスペクト・トレーニングということで、パワハラ・セクハラ廃止と言っても、廃止をすればいいというのはなくて、相手にきちんとリスペクトを持って接しましょうという、そういう気づきというか、自分たちの行動変容ももたらすようなトレーニングを、私たちの場合、全てのオリジナル作品の制作をする前にやっておりますし、実は私の部署の取組として、VIPOさんにお願いして、今年中に300人を目標に、うちの現場にもいらっしゃらない方々に、この研修をさせていただくよう今進んでおります。17日にたしか3回目か4回目の研修が終わって、政府の方も御覧いただいていたというようなことも聞いております。パワハラ・セクハラは、もちろんダメですけれども、じゃあどういう形で接していけばいいのかという気づきの機会も提供させていただいているということです。
最後になります。クリエイターとの協働ということで、まず、弊社の中で『ONE PIECE』という非常に日本の優秀なというか、非常に人気のIPをアメリカで実写で制作させていただきました。これは、原作者様、それから出版社様とアメリカのプロダクションの間にNetflix Japanの者が入って、クリエイター様の御意向とか世界観をきちんとアメリカに伝えるというようなことをしていました。共同制作と一言で言えば非常にきれいな言葉ですけど、実は考え方の違い、撮り方の違い、やり方の違い、いろんなものがあって、クリエイターさんの思いが実現できないことが非常に多いんですね。そこにやっぱりブリッジのようなプロデューサーが入ることによって、ある程度の世界観をここで実現したというのがクリエイターとの協働ということです。
最後にですが、新しいクリエイターさんとの長期の契約、メディアによっては「囲っている」とかいろいろ書かれてはいますが、契約ですので、社員とかそういうのではないので、囲っているわけではなくて、5年間契約しますよと。その間、自分のお好きなこういうことを開発してくださいというようなことで契約をさせていただいております。5年間、弊社の作品を考えていただき、作っていただくというような長期の契約もして、できる限りプロデューサーやクリエイターの方々が創りたい作品を実現する。創りたい作品ができるような形にするにはどうしたらいいかということも模索をしているということです。
【太田主査】杉原様、恐縮ですがそろそろ予定の時刻を過ぎておりますので…
【Netflix(杉原氏)】そろそろ、はい。ありがとうございます。
海賊版対策のところはお読みいただければいいかなと思っておりますので、ここで発表を終わらせていただきます。すみません、長くなりました。発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。
【太田主査】どうもありがとうございます。最後のほう、せかしてしまいまして大変失礼いたしました。
ただいまの御発表につきまして、御質問がございましたら挙手をお願いします。オンラインの方は挙手ボタンにてお知らせください。なお、御意見もあろうかと思われますが、それはこの後の日本動画協会様の御発表が終わった後にまとめて意見交換の時間を設けますので、その際によろしくお願いします。質問をお受けしたいと思います。
菅委員、どうぞ。
【菅委員】ありがとうございます。とても興味深い発表でした。アニメ業界、関係なくはないので、たくさん話したいことがありますが、1点だけお聞きします。Netflixさんは資金が大きくて、アニメ業界の者から昔から「Netflixの仕事はいいよ」と聞いております。ただし、完パケ、全話を一気納品して初めて支払いを受けるということも聞いておりますが、その制度は今もされているんでしょうか。
【太田主査】杉原様、お願いします。
【Netflix(杉原氏)】御質問ありがとうございます。まず1つですけど、100%というわけではありませんが、そういうふうにして完パケで納入していただくということはお願いしています。そこには1つ理由がありまして、どういうことかというと、私ども、およそ180以上の国と地域に配信をしておりまして、サブタイトルをつけたりとか、あるいは吹き替えをしたりということで約30言語以上でやっておりますので、そこをするためには、きちんとした日本の言語で作られたものを頂かないと、ほかの言語に翻訳あるいはダビングをしたときに正確なことにはならないし、もう一回、手戻りも生じてくるということで、そういう形でお願いしていることが多いかなというふうには思っております。
【菅委員】ありがとうございました。こちらのほうの意見はまた後ほどまとめて言いたいと思います。どうもありがとうございます。
【太田主査】ありがとうございます。
ほかに御質問は…坂井委員、どうぞ。
【坂井委員】発表ありがとうございます。
2点教えていただきたいんですけれども、1つ目が視聴時間の公表というところで、5万時間のところですね。これというのは、大体、Netflixさんが持っていらっしゃるライセンスとかオリジナルの作品数のうち、どのくらいの割合を占めているものなのかというのを教えていただきたいのが1点と、あと、制作経理のところなんですけれども、これ、多分、発注先の商流を全部把握されているということなんだろうと図を見ると思うんですが、例えば、東アジアの国々なんかに発注されたオリジナルの作品が日本で構造としては下請として作っているみたいなものも、Netflixさんは把握をされているんでしょうか。2つお願いします。
【Netflix(杉原氏)】1つ目の5万時間のところですが、会社として全体の量の何分の1とかということをデータとして出したことはあまりないです。それは、全体の母数が毎日のように変わっているので、あまりそこを出しても意味がないかなと。ただ、見ていただいても分かるように半年に1回こういうふうに出しているので、この時点での量が出ているので、ここで計算していただくというのが一番いいかなとは思います。と同時に、5万時間以下だったから見られていないかというと、このロングテールの理論みたいなのもあるわけで、そんなにたくさんの人が御覧になっているわけじゃないですけれども、長く見られる作品というのもあるわけですので、そこの価値も高いと思っていますので、例えば5万以下だから次はライセンスを更新しないという理由にしているわけではありません。
次の契約の話ですけれども、基本的には、日本だからとか、ほかの国だからとかという違いはありませんので、例えばですが、日本の制作会社が韓国の制作会社に委託をされてみたいなものがあったりとかしても、それは日本の制作会社が日本の制作会社に委託されるのと同じ形で把握し、制作経理につけていると。ただ、私が理解しているのは、日本の制作会社より韓国の制作会社のほうが厳しく経理をしていると思いますし、さっき少し申し上げたような、クリエイターとか、あるいはスタッフと言ってもいいのか、皆さんの報酬も高いと理解しております。
【坂井委員】ありがとうございます。
【太田主査】ありがとうございます。
ほかに御質問はありませんでしょうか。はい、仁平委員、どうぞ。
【仁平委員】日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。よろしくお願いします。
私どものところにも動画制作のクリエイターさんがたくさんいて、私自身も実は専門学校で動画制作の部分での著作権等について講義させていただいているんですが、今回いただきましたクリエイターさんのスキルマッピングの話、とても興味を持ちました。こちらのほう、Netflixさんのスキルマッピング、このスキルだと幾らだよという金額までは言えないにしても、スキルマッピングの公開というのはされているんでしょうか。
【Netflix(杉原氏)】まず、日本においてスキルマッピングは作っていないです。
【仁平委員】分かりました。海外のスキルマッピングというのを例えば我々が参考に見ることってできるんですか。
【Netflix(杉原氏)】多分、組合の、例えばアメリカの組合の方……。
【仁平委員】クローズドなものなんですね。
【Netflix(杉原氏)】どうなんですかね。すみません、私はどこまでがクローズで、どこまでがオープンかは分かりませんが、ヨーロッパにもアメリカにもそういうテーブルは存在します。
【仁平委員】分かりました。ありがとうございます。すみません。
【太田主査】よろしいでしょうか。
今の議論についてちょっと私の方から関連する質問をさせてください。アメリカ合衆国の場合、原則は産業別組合で、それに対し、日本の場合は企業別であることが通常です。産業別組合であることが、そういうスキルマッピング等の発達や普及に影響があるのでしょうか。
【Netflix(杉原氏)】それはないと思います。なぜかと申しますと、アメリカもそうですけど、ヨーロッパはまた別でございますし、例えば日本でも、ここはIT業界のことを書かせていただきましたけれども、IT業界でも、例えば大手の会社さんですと組合に入っていらっしゃったりしますが、そのスキルをはかる一つのメジャーメントと考えていただければ、所属しているのが組合員さんであれ、非組合員さんであれ、会社員であれ、そこは同じかなと思います。
【太田主査】どうもありがとうございました。
中原様、どうぞ。
【中原文化戦略官】事務局から一言だけ御質問なんですが、スライドの11ページのところで、今の御質問に関連して、欧米ではヒット作でのクリエイター還元というのは業界のトップ層のみが対象で、それ以外の層に対しては、ギルドが相応の役割を果たしているという御指摘があったところでございます。この点につきまして、大ヒットのものについて業界のトップ層に業績連動の報酬をというのは容易に想像がつく一方で、トップ層以外にも業績連動の報酬というのはある程度渡っているんじゃないかなとは思うんですが、欧米ではその割合がどのくらいなのかという相場観をお尋ねさせて頂ければと思います。それから、欧米そのままではないとしても、今後そのメリットが得られると思われる面を日本に持ってくるとした場合において、業績連動的な在り方をクリエイター全体において渡せるためにはどのような方法が有効かどうか、スキルマッピングに併せて、何かそういうお考えがあればお聞かせいただければと思います。
【Netflix(杉原氏)】まず1つですけど、私も全てを知っているわけではありませんが、アメリカでは、例えば監督さんとか俳優さんとかそういう方々が、一定時間以上見られたとか成功したということの分配の対象になっていると聞いておりまして、言葉はいいかどうかは置いておきますけど、いわゆるビローザラインと言われているような方々がその中に入っているとは聞いてはいないです。そのロジックは、そこの人たちは組合で守っているわけだからと。先ほど申し上げましたみたいに、きちんとした高い賃金をそこで得て、なおかつ賃上げの交渉も組合としてやっているということで、そこはリスクとして、成功のリスクをそこにリターンはしていないみたいな形では伺っています。ヨーロッパの場合は、もう少しそこは下りてはくるらしいですが、ヘアメイクさんとか照明さんまでが成功報酬的なものをもらっていらっしゃるとは聞いてはいなくて、あくまでも、さっき私が疑問を投げかけた何をもってクリエイターというのかというのは、各国により違うとは思うんです。ヘアメイクさんとかも私はクリエイターだというふうには思いますけれども、そこでの一つの線の切り方が、ギルドや組合によって価格や生活が保障されている人のレベルと、そうじゃなくて、もちろんその人たちのほうが報酬は高いんでしょうが、その上でもっと成功したら還元される人という意味で、二極化しているというのが現状です。なので、私個人としてはですけれども、それを日本に持ってくるのはちょっと切ないなというか、全くもって同じやり方をすると、上層部の人たちだけがボーナスをもらって、本当に頑張って働いた人たちに還元されないという形になるので、切ないなと思いますので、その辺は日本の制作会社あるいは製作委員会様とかクリエイターの中で、もしそういうボーナスみたいなものが成功で入ってきたときにはどのように還元するかというのをあらかじめお決めいただくとか、あるいはさっきの契約書に書くとか、昔であれば大入袋というのが出て、そこの関係者の人たちは大入袋をもらって、はやったんだなというのがあると思うんですけど、現代版の大入袋みたいなものの制度を考えてもいいのではないかなとは思います。
【太田主査】ありがとうございます。
オンライン参加の内山委員から質問が来ております。お願いします。
【内山委員】すみません、今日はカメラなしで失礼いたします。
たまたま今、スキルマップの、だから今日の資料の12ページ辺りがちょっと話題になっていたので、ぜひ杉原さんの個人的な御意見で構わないのでお伺いしたいんですけれども、確かにおっしゃるように、アメリカやヨーロッパですと、例えばディレクターズギルドにしても、ライターズギルドにしても、あるいはSAGにしても、一人一人のスタッフさん、クリエイターさんのランクがあって、レベルがあって、それに応じて最低ランクが決められているのは確かにそのとおりかと思います。こういったものをもし日本に導入しようとしたときに、どこから手をつけるとすんなり導入できるかなという意味で、ちょっと杉原さんの肌感覚的な御意見を伺いたいなと思います。やっぱり一人一人のクリエイターさん、あるいはスタッフさんにランクをつけるという話になってくるので、なかなか大変な話かなという気もしないでもないので、その辺り、導入の入り口みたいなところで何か御示唆をいただければと思うんですが、いかがでございましょうか。
【Netflix(杉原氏)】ありがとうございます。先生、いつもいろいろ御示唆をいただくんですけれども、まず、レベルのA、B、Cは考えなくて、縦軸ではなくて、まず横軸から考えてもいいんじゃないかなとは思います。そもそもどうやってレベルをはかるかというのを一番最初に考えるのは非常に難しいと思いますので、まず、どんな職種があるんだろうということをそこに出していく。もっと言えば、そこに何人働いているんだろうかということも重要ではないかなと思います。何人働いているということも分かってくると、そこの年齢とかも分かってきますし、性別とかも分かってきますし、だんだんだんだん見え方が変わってくると思いますので、まずはそこが一番最初の取っつきなんじゃないかなと思っております。その後、いろいろな方々の経験とか、あるいは職種の中でも2つ一緒にできるんだよみたいなものもそのうち出てくるとは思うので、そこは第2段階でやっていけばいいかなと思いますね。まずは、マッピングですから、どこにどういう人がいて、どういう仕事をしているのかというのを調べていくということからやってはどうかなと思います。
【太田主査】よろしいでしょうか。
【内山委員】ありがとうございます。そうすると、例えば映職連8団体辺りはもうちょっと頑張れみたいなところなんですかね。
【Netflix(杉原氏)】いや、私はまず、すみません、せっかく文化庁さんに来て言っているので、文化庁さんが頑張ってやっていただければありがたいかなと思いますし、経産省の方々はITスキル標準という経験もお持ちなので、御協力したらいいんじゃないかな、御協力というか、文化庁様なのか、経産省様なのか、御一緒なのか、あるいは知財事務局なのか、分かりませんけれども、縦割りで考えるのではなくて、いろんな方々が今までの知見を持ち寄って、政府と民間が一緒になってこういうものをつくっていけばいいんじゃないかなと思っております。
【内山委員】どうもありがとうございます。
【太田主査】どうもありがとうございます。
はい、唐津委員、どうぞ。
【唐津委員】今日はありがとうございました。私自身、いろいろなところでアニメ産業が重要と言いながら、同時に、末端の若いアニメーターが食べていけなければ絶対産業としては衰退するというようなことをあちこちで言っているので、Netflixさんの取組というのは非常に共感できるところがあるんですけれども、一方で、今ちょっと言われているのは、Netflixさんの投資って、さっきおっしゃいましたけど、やっぱり資金力があってこその高い報酬という面もあるので、結局、日本のほかの制作者の分を全部持っていかれちゃうんじゃないかと。例えば昔でしたら、ネットのドラマというのはそんな有名な俳優さんは出なかったのが、今、全く状況が変わっていて、その理由は企画の面白さもあると思うんですけれども、テレビのドラマと全然報酬が違うというようなことも言われているかと思うんですね。その中で、メディアで「ネットフリックスとクリエイターとの独占契約」という言葉を拝見したときに、これ、本当に持っていかれちゃうのかなという危機感を覚えたんですけれども、ただ、先ほどお話をされたときに、独占契約といってほかの仕事を取ってはいけないということではないという説明をされたので、私の思っていたイメージと違うのかなと思いましたので、ここで言うクリエイターとの独占契約というのは、細かいところはもちろん守秘義務があると思うんですが、大体どういったお話をされているのかお伺いできるでしょうか。
【Netflix(杉原氏)】多分、新聞の見出しをそのまま持ってきたのが、要するに、独占契約というのは、うちの独占配信というのがありますよね。いわゆるNetflixオリジナルとかライセンスオリジナル、その独占配信の作品を作っていただくという意味で使っていまして、多分、見出しが悪いんじゃないかなとは思っています。当たり前のことですけど、相手は人なので、人の契約の自由であるとか、あるいは安全とかそういうことを脅かすわけではないので、誰ともほかは契約していけないとかという話ではないと。もちろん、契約の中ではいろいろな制約もあるとは思います。例えばですけれども、その期間中、うちが契約している間に温めたものを自分で競合他社に持っていかないとか、そういうのは当然あるんじゃないかなとは思います。それはコスト負担をしたわけですので、それをほかに持っていくというのはないと思うんですけれども、そういうところ以外のところで、例えばほかのことをするなみたいな話ではないと思います。
1点、先生がおっしゃった値段が高くなる、全部持っていかれるという話ですけど、現状は必ずしもそうなっているわけではないです。まず、値段が高くなった最大の原因は、アニメが世界品質というか、世界プロダクトになったことです。Netflixが高い賃金を払ったからアニメ業界がどうのこうのというのは、そこだけ切り取っていけば確かにそう見られなくもないんですけど、今や日本のアニメは世界のアニメになったと。だから、プライスは世界のプライスになったと。言葉は悪いですけど、ニセコのスキー場が世界のスキー場になってリフトの値段が1万円以上するようになったのとほぼ同じではないかなと思いますし、例えばですけれど、世界で一番売れているキャラクター商品は、もはやミッキーマウスではなくてポケモンです。ですので、私どもだけではなく競合他社さん何社かいらっしゃいます。そういう方々も、あるいは日本の会社のアニメのプラットフォームも御承知のとおりあるわけですので、そういう方々がまさに切磋琢磨し、業界の中でいいものを作っていく、そのためには大きな投資をする、そして人件費も上がっていくという流れが今、アニメに来ている。しかし、最大の原因は世界プロダクトになったということだと理解しております。
【太田主査】よろしいでしょうか。
ほかに質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。はい、早稲田委員、どうぞ。
【早稲田主査代理】大変興味深い御報告ありがとうございました。Netflixさんの御報告については、やはりハリウッドの映画制作がこういう契約をしたり、制作費の管理をきちんとするとか、それからクリエイターを育てるというような、かなり進んでいるところがそのまま取り入れられているのかなと思って聞いていたんですけれども、今日の御発表で、いろいろと契約をきちんとするとか、適正な契約をするとか、働き方についても契約をきちんとやろうというふうなことを日本でもやりましょうと言っていらっしゃるわけですが、これは今後、日本でも取り入れられて改善になりそうだとお思いになりますでしょうか。
【Netflix(杉原氏)】そう思っていますし、そうなるように個人的には努力しています。そうなると思っている一つの原因は、この業界だけではないということです。皆さんも例えばトラックドライバーのお話とかお聞きになっていると思いますし、あるいは、さっきの国土交通省の建設労働者の話もお聞きになって思います。あるいは今や勤務医の先生の残業制限とか、いろんなところで人々の働き方改革で変わってきていると。それは取りも直さず、少子高齢化の中で日本の優秀な人をその産業にちゃんと就いてもらうためにはそうせざるを得ないと思っていますので、それだったらいち早くしたほうが優秀な人材を引っ張ることができるんじゃないか。反対に言えば、それに気づいた業界が、今後、日本でも残っていくんじゃないかと思っています。
【早稲田主査代理】ありがとうございます。
【太田主査】ありがとうございます。
もし他にご質問がないようでしたら、時間も5時過ぎましたので、次に行きたいと思います。よろしいでしょうか。何か最後に1つ御質問があるという方、いらっしゃいますか。では、ありがとうございました。杉原様、本当にどうもありがとうございます。
それでは、次に、資料2に基づきまして、日本動画協会様より御発表いただきます。御説明いただくのは、著作権委員会副委員長の中場崇之様でございます。それでは、どうぞよろしくお願いします。
【日本動画協会(中場氏)】本日はお声がけいただきましてありがとうございます。日本動画協会の中場より、「アニメビジネスと製作委員会」というテーマで御説明をさせていただきます。
まず、動画協会について簡単に紹介をさせてください。制作会社を中心にアニメ事業に携わっている法人で組織する業界団体となっております。アニメ事業といいましても、いわゆる独立資本系の会社もあれば、映画会社の資本、放送局の資本、出版社の資本と、様々な出自の制作会社やアニメ事業の会社が集まっております。また、制作会社の中でもアニメの著作者たるいわゆる元請という制作会社が中心となっている団体となっております。私も、本日は動画協会の人間として参加しておりますけれども、会員の制作会社で国内外の契約実務を担当する部門の人間でもあります。
次、めくっていただきまして目次になりますけれども、本日の御説明の内容としまして、1点目はアニメの企画から制作の流れというところをざっと御紹介したいと思います。2点目のところは、製作委員会の構成だったり、収益配分がどうなっているかというところをお話しさせていただきます。
次が、アニメの企画から制作の流れというところになります。いわゆるプロデューサーだったり、プロデューサー候補の人間が企画を発案いたします。そこから大きく流れとしては2つに分かれておりまして、1つ目は、発案したプランに合う漫画や小説などの原作を探して、その原作をベースにアニメ化を目指すというルート。このパターンが日本のアニメ制作としては数としてもメジャーなほうなのかなと思っております。また、もう一方のやり方としましてはアニメオリジナルということで、原作なしで企画開発をして、いきなりアニメ化を目指すというルートもございます。当然、こちらは種となるキャラクターとか設定とかというものがなくて、自分たちでそれを生み出さなければいけないというところでカロリーはかかるということになります。プロデューサーが所属し企画を行う会社というのは、映画会社だったり、放送局だったり、また我々のような制作会社だったりと様々ですけれども、後ほど御説明する製作委員会を組成した際に幹事会社に立つということが一般的なのかなと捉えております。
次が、企画から制作の部分をざっと流れにした図になっております。先ほどお話しした2つのルートを含めまして記載しております。左側の列が原作ありの企画開発の場合になっていまして、原作許諾の取得というところが必要になりますので、それに向けて、原作の出版社へのプレゼンをしたり、最近は有力原作は枯渇していると言われており、奪い合いが激しい状況にありますので、コンペにかかるということも多くなっています。コンペにかかるというときには、企画書を持ってプレゼンをするというだけではなくて、数百万円予算を組んで、デモンストレーションの映像を作ってお見せして、うちの制作会社だったらこういう映像でお作りしますよというところまで見せてコンペにかけるというようなこともやっていたりします。
そのようにして原作許諾を取得した後は、アニメの一次利用先というところを選定していく流れになります。「一次利用」というのは、アニメ制作の当初の利用目的として定める利用形態の範囲を指します。それ以外の利用というのをざっくり「二次利用」と呼んでおります。劇場用作品であれば、もちろん劇場配給にかけるということが一次利用になりますし、放送局で放送にかけるとか、今日いらっしゃっているNetflixさんのような配信プラットフォームに出しますということを一次利用とする作品もございます。ステップとしましては、この一次利用先がある程度固まった段階でプリセールスということで、製作委員会組成前ですけれども、幾らで買っていただけますかというところを事前に営業して、金額を詰めていくという活動を行う場合もございます。
ある程度その一次利用先のめどがついたという段階になると、出資やその見返りとしてどういった窓口を担当すべきか、利益配分が見込めるかというのが、出資しようかなという会社にはイメージがつきますので、出資営業と窓口調整というところをセットで進めていくという形になります。後ほどもまた御紹介しますけれども、二次利用の利用形態だったり、もしくは海外販売だったら地域ごとにどの地域を担当するかという、その担当範囲のことを「窓口」と呼んでおります。流れのほうに戻りますと、それぞれその後、会社の決裁を経て、共同製作契約書などの締結をもって製作委員会が組成されるということになります。実際の物事の順番としては先行する場合も多々あるとは思いますけれども、実際に物理的にアニメーションを創作する「制作」というところがその後の作業ということになります。また、その先に一次利用、二次利用とありますけども、利用に先立っては、作品の宣伝、プロモーションも仕掛けるというところで、事前にそういった準備も進めていくという形になっております。
この「制作」のところをちょっと掘り下げて次のページで御紹介しております。ざっとの説明にとどめたいなと思いますけれども、これがアニメを物理的に作り出す工程についての概観図となっております。工程としてはここにあるように多岐にわたるんですけれども、太字の矢印で記してある部分、これがメインの部分になりますので、こちらを主に御紹介いたします。もともとある企画から、まずは文字の情報でストーリー・演技・セリフといったものを形づくっていって、文字情報で全体の設計図を作っていくということをします。それがシリーズ構成だったり脚本だったりというところになります。その上で、脚本を今度はビジュアル化して、具体的にイメージを絵で表現を交えながら作っていくというところが絵コンテという作業になっています。ここまでが「プリプロダクション」(プリプロ)と呼んでいる作業になっています。この後の実制作に入るまでの準備作業という位置づけになります。
その後は「プロダクション」というところで、実際に映像の1コマ1コマを構成する内容を作っていくという作業になっております。レイアウトというのは、1枚の絵の中でキャラはどう置いて、背景はどう配置してといったところの絵の設計を決めるという作業になっています。そこから動きがある絵があれば、動きの起点とか終点もしくは重要な中間地点の絵の線を描く作業というのが必要になってきます。こちらが原画という作業になっています。そういった重要な部分の間をさらに細かく作っていくというのが動画という作業になっております。アニメというのは、こういう絵の1枚1枚を重ね合わせて作っていく壮大なパラパラ漫画のようなものになっていますけれども、この1枚1枚のベースとなる絵を作るのが原画とか動画という作業になってきます。よく言う「アニメーター」と呼ばれている人は、この原画・動画というところを担当する方を呼ぶ名称となっています。それからその後、彩色・仕上げというところになりますけれども、動画では主に輪郭の線だけの状態ですので、そこに色を塗っていくということで仕上げと呼んでおります。その後は、撮影といって、その背景とキャラクターの部分と別々にもともと作っていますので、それを1枚の絵としてフィックスした状態にするというのが撮影になっています。特殊効果というのは、つやをつけたり、影をつけたりというのを撮影の際に一緒に行ったりすると。ここまでが1枚1枚の絵を作っていく「プロダクション」という作業になっています。
その後は「ポストプロダクション」(ポスプロ)の工程になります。1枚1枚の絵を今度、絵コンテを基につなぎ直して、それをパラパラとして動かして初めて映像として束ねた状態になるというのがこの「編集」という作業になっています。その後は、「アフレコ」というところで声優さんの声の収録をして、そこで取った声だったり効果音だったりに、プラスで映像を重ね合わせて「ダビング」という作業で映像とか音声のバランスの調整をします。最後の「ビデオ編集」、V編とも呼んでいますけれども、ここで、放送局さんだったり配信プラットフォーマーさんだったりから求められている納品のフォーマットに沿った映像データの調整をするといったことをやっております。
次のページに行っていただきまして、「製作委員会とは」というところを御紹介したいと思います。以前は、編成発注方式とか広告収入方式といった名称で、放送局さんから番組制作の発注を受けて、制作会社がその予算の中で制作して放送局さんに納品するという方式が多く取られていました。現在の相場でいうと30分尺のアニメで1話2,500万円から5,000万円ぐらいみたいなところが中心かなと思いますけれども、それが1クール12話だと3億円とか6億円といった事業規模になります。時代とともに、そういう番組として求められるクオリティーと、今申し上げた制作の予算というところがなかなか折り合いが合わないということが多くなりまして、外からスポンサーを募るという形の製作委員会方式へシフトしてきたという歴史があるのかなと思っております。この製作委員会自体は、法的には民法上の任意組合という形での組成方法として認識しております。ただ単に金銭を出資して、その見返りが分配されるのを口を開けて待っているということでは決してなくて、資金を出資し、かつ、その作品の収益拡大のための役割、先ほど申し上げたように「窓口」と呼んでいますけれども、それを各出資者自身が主体的に担うというような形態になっております。近年のトレンドとしては、スムーズな意思決定を優先しようというふうにしまして、構成員を少数とする傾向もあるのかなと認識しております。『鬼滅の刃』みたいな感じで、大ヒットして認知も広がって、消費者の皆さんにたくさんお金を落としていただいているというときには、もちろん製作委員会も構成員へのバックというところも多くなりますけれども、そういった作品に恵まれるケースというのは本当に一握りとなっておりまして、日本のアニメ制作においては多産多死、ハイリスク・ハイリターンな状況と我々認識をしております。
次のページを見ていただきますと、一部例外も交ざっているんですけれども、2024年7月から9月、この前までやっていた新作アニメ、ここにあるだけで64作品あります。ここでちょっと皆さんにお聞きしたいなと思うんですけれども、3か月の間にこの64作品、放送だったり配信していましたが、この中の半数以上、内容を把握されているという方、いらっしゃいますでしょうか――(挙手なし)ありがとうございます。実際にはなかなか、これだけあって、みんなが認知している作品というのは本当に数限られているのではないかなと思っております。例えば、先ほど例に挙げました『鬼滅の刃』だったら、皆さんも、竈門炭治郎という主人公が妹の禰豆子を背負って鬼退治をするんだみたいなことは、アニメそのものを見たことない方であってもうっすら御認識されているんだと思います。ですけれども、この64作品の中でそこまで認識・認知をされているものというのは本当に一握りかなと思いますし、アニメであっても他のコンテンツであっても、ターゲットの層を超えて一般的な認知を獲得するというのがヒットの基準でもありますし、お金を落としていただいているという状態の一つの表れでもあります。残念ながら、その域に達する作品というのは本当に限られているという状態になっております。
次は、アニメの権利関係の俯瞰図といったところを、ざっくりの図になるんですけれども、載せております。まず、左上の部分ですね、原作の漫画や小説、脚本、音楽といった基本的にはクラシカルオーサーの著作物がございますけれども、これらはアニメの外から借りてきて、許諾をいただいて取り込んで使わせていただくという形になっております。もちろん、制作会社だったり制作手法によっては、これらを職務著作等で内部的に供給するというやり方を戦略的に取っている場合もございます。次に中央の部分になりますけれども、アニメの制作については、製作委員会から予算と納期が提示されて、元請制作会社がその予算・納期に合わせてスタッフをかき集めて制作を行うということをやっております。決められた予算・納期の中で、どのようなスタッフで、どのようなクリエイティブで作品を仕上げるかという、まさにクリエイトする部分の全体的な責任を元請制作会社が負っているという形になっています。例えば、スタッフの人繰りを見て予算を超過するみたいなときは、じゃあ、それ、製作委員会が負担してくれるかというと、そういうわけではなくて、制作会社負担でカバーすると。一次利用の放送や配信に間に合わなかった修正は、その後、必要に応じてリテイクして納品し直すといったことも実態として行われていたりします。こういったところも元請制作会社の責任でアニメ制作をしているという部分になります。また、通例、制作工程の全体の作業といったところを元請の制作会社で全てカバーするというところは難しいので、それぞれの工程をそれぞれのプロフェッショナルの会社とか個人の皆さんと協力しながら作り上げていくという形を取っております。そのようにして映画の著作物としてのアニメを完成させて、製作委員会やその指定放送局、配信先に納品して、納品とともに著作権も譲渡するという形を取っております。そこから先の作品の運用といったところは、製作委員会の構成員が放送・配信・商品化といったそれぞれの窓口を担当しまして、国内外のライセンシーに許諾をして、全世界の視聴者、アニメファンの皆様に作品を届けていくという流れになります。一方で、逆に、そういった消費者の方が落としてくれたお金というのは、国内外のライセンシーを通じて窓口の会社に入ってきまして、必要に応じて権利処理という、原作とか脚本の権利者さんにお金を払うという作業を行いながら、最終的に手元に残った利益は製作委員会の構成員で分け合うという形になっております。
次のページで、その製作委員会の構成員の役割だったり、その内容といったところを書かせていただいております。上から3つ目の「放送」から下から2つ目の「海外販売」まで、この辺りは、その名前のとおりですけれども、その窓口を担当して、その利用形態の許諾を行っていくといったところが内容になっています。上の2つ、まず、「代表幹事」ですけれども、これは製作委員会全体の幹事業務を行う会社を指しております。原作とかの使用料を幹事から払うというやり方を取る場合もありますし、制作会社に対して、制作の納期を守れているか、クオリティーは求めたものになっているかみたいなところの制作管理もしますし、あとは原版管理といって、完成版の映像のファイルを幹事会社が保管するといった役割を担うことも多いです。あとは、構成員に分け合う配分の作業というのがございますので、その配分の作業を最終的に担うといったところも幹事で行うということが多いです。あとは、製作委員会という名前のとおりですけれども、実際のフィジカルな会議体を開くということもございますので、そういったところの会議運営なども担っているということになっています。2つ目の「宣伝幹事」といったところは、やっぱり一次利用=最初の利用のところで、アニメの作品をどのように世に打ち出していくかみたいなところがその後のヒットにもつながる大事なところですので、製作委員会に参加している中でそういう宣伝業務を中心にやる会社がどこだというのを定める場合もございます。一番下に行って、「その他」というところで、必要に応じて制作とか音楽原盤、海賊版対策の窓口をどこがやりますといったところだったり、音楽出版権についても取り決めるといったことを製作委員会の中でやっております。
次のページが、ちょっとアペンディクス的なところですけれども、幹事会社になるのはどういった会社かというところで、映画会社とか放送局などがなりますと。その他の構成員として製作委員会に入るメンバーとして、ビデオメーカー、レコードメーカー、配信事業者、商品・玩具の会社、ゲーム会社、遊技機のメーカーとかというのが、それぞれ自分たちで窓口を持ったり、何か優先権を得てこの作品に携わろうというところで出資構成に入ってくるというふうになっています。あと、配分の方式もパターンが幾つかございまして、「窓口会社型」という形で、それぞれの窓口で窓口手数料を取った後、権利処理も自分たちでやるし、他の構成員への配分も窓口会社から行うというパターンのやり方もあります。一方で、「ワンポット方式」と呼んでいますけれども、幹事会社でなるべく権利処理だったり配分の作業を集中して行うというやり方も行われています。後でまた御説明いたしますけれども、制作会社の成功報酬とかを定めていたりしますので、じゃあ、その成功報酬のラインに行っているかどうかみたいなところは、やっぱりワンポットでないと管理が難しかったりしますので、そういうのを定めていると幹事会社で配分を行うという方式を取ることが多いかなと思います。あとは「共同窓口」ということで、例えば海外販売というふうに1つの窓口であっても、その中で、アジアはこの会社がやります、欧米はこの会社がやりますと分かれているケースもありますし、アジアをやりたいという会社が複数いるので、アジアを共同で複数の会社でやりましょうと定めたりということも、それぞれ任意にやっております。
次のページが、収益配分の、どういう流れで、どこに払ってというふうに発生しているのかといったところを代表的なケースを例に書かせていただいています。一番左側、窓口会社収入というところで、例えば配信事業者に許諾して、その配信の許諾料が入ってきましたと。それをベースに、原作使用料、脚本使用料、スタッフ追加報酬とか、代理店印税・局印税とか、制作会社印税、窓口手数料、こういったところを先に計算すると。あと、配信の会社に出すのであれば、その会社に応じたエンコードをするとかという必要経費があったりしますので、そういうのもトップオフをすると。それらを計算した上で残額を製作委員会で分け合うということになっています。製作委員会の中で分け合うにおいても、まず順番として、幹事手数料とか宣伝幹事手数料、あと制作会社の成功報酬を定めているときはそちらを先に計算して、最後、本当に残ったものを出資者の出資比率に応じて配分をするというような流れになっております。
次のページで、それぞれの項目を御紹介しております。「原作使用料」、原作の漫画だったり小説だったりというのを借りてきていますので、その対価としてお支払いするということですね。近年、アニメの制作会社としてなかなかつらいなというところは、配信だったり商品化、ゲーム化の原作使用料の料率というのはちょっと上昇する傾向にあるのかなと感じております。それから、「脚本使用料」とか、あと「スタッフ追加報酬」ということで、例えば監督さんとの契約によっては、窓口会社収入をベースに、監督さんにも脚本家さんだったり原作と同じような形でロイヤリティーをお支払いするという取決めをしている場合もございます。それから、「代理店印税・局印税」ということで、特に一次利用が国内放送の場合は広告代理店とか放送局さんからこういったものを求められるということで、我々としても、根拠が曖昧なまま、長過ぎる設定期間だったり、広過ぎる設定範囲、高過ぎる料率といったところで苦しんでいるケースというのがまだまだあるのかなと認識をしてございます。
次のページで、「制作会社印税」といったところで、特に放送局さんからの発注、放送局さん幹事で行う番組などが多いのかなと認識していますけれども、予算の都合からアニメの制作費自体が低く抑えられるということがあって、予算としてそれしか出せないんですと。その代わり、こういう形で印税でお支払いするということにさせてくれというふうになるケースも一部ございます。あとは「窓口手数料」ということで、窓口を担当する会社が窓口として稼働した分の対価ということで取得するということをしております。傾向としては、間接費がかさむ海外販売などは比較的高額な料率で定めているということになっています。それから「必要経費」というのは、やっぱり製作委員会全体の利益に資するような出費をした場合にはトップオフでまず費用負担をしましょうということで、ここに記載しているようなもろもろの費用は控除していいよというようなことを定めている場合が多いです。
次のページが、「幹事手数料」、「宣伝幹事手数料」、それから「制作会社成功報酬」といったところです。出資者へ配分した配分金の累計額というのがもともとの出資総額を超過した場合などに、制作会社がいいクオリティーで作ってくれたからこれだけみんな出資が回収できたねということで、制作会社への貢献分としてこういう成功報酬といったものを設定いただく場合もあります。最後に、「出資者配分」として、出資比率に応じて分配するというところになっております。
次が、追加の収益配分があった場合にどうなるのかという御質問をいただいていたので書いております。一次利用については収益が発生しないという形で行うことが多いですが、それ以外の二次利用といったところは、もちろんビジネスとしてやりますので、収益を発生させるということが前提になっています。こういったところで追加の収益が発生した場合には、これまで御紹介したような費用を、権利処理とかしながら、最終的には構成員のメンバーで配分・分配をするというような形になっております。追加の収益配分がないという例もございますので、ちょっと御紹介で載せております。あるグローバル配信事業者さんの例ですけれども、許諾対価はフラットフィーでしかやりませんよと。しかも、四半期ごと4年払いとか、もっと長期にわたるというケースもあると聞いています。一括で払ってくれるということは決してなくて、契約期間中のこういった分割払いというのが前提で、高い金額をつけていただいているというところはすごいありがたいんですけれども、なかなかお支払いは渋いなというのが正直なところです。さらに、もちろんフラットフィーですので、その作品がそのサービスの中でどれだけヒットしようと、我々、その権利者にその作品での追加の配分を頂くということはございません。さらに、視聴者のデモグラフィック、どういった視聴者、男女、年齢層、家族構成がどうとか、そういったデータを十分に開示いただくといったこともなかなかしていただけないと。さらに、フラットフィーですので、これは契約上、仕方ないと思いますけれども、権利者からロイヤリティー監査で踏み込んでいくということもなかなか難しいというふうになっております。
最後、参考として、やっぱりアニメ制作に関わる方の収入面がよく話題になりますので、念のために関連する統計を載せております。まず、平均年収というところで、先ほどNetflixさんの発表にもございましたけれども、文化庁さんとJAniCAさんで取られている統計を見ると、年間年収の平均値が455万円となっています。ここで言うアニメーション制作者というのは、原画・動画を担当するアニメーターだけではなくて、監督とか作画監督、プロデューサー、制作進行など、広くアニメ制作に関与する人たちが対象となっていますが、給与所得者の平均給与458万円と比べても遜色のない数字のように、これだけ見ると感じます。もう一つ、年収1,000万円超の割合というところで見ております。NAFCAさんという団体が取られたアンケートによると、アニメーター、これは原画・動画を担当する方を限定して指すということになると認識していますけれども、給与所得者が1,000万円超は5%だというところに対して、11%という数字になっているそうです。これだけで即断して何かを語るというところはなかなか難しいとは思っていますけれども、アニメ制作者やアニメーターの環境だけが突出して悲観的な状況にあるかというと、そうでもないように私には感じられます。我々制作会社から見ても、なかなか競争の激しい環境にありますので、発注単価といったところも上がっていますし、実力のあるアニメーターさんというのはやっぱり奪い合いになりますので、当然、お支払いの金額も上がっていっているという状況にあると認識しております。
以上、少し蛇足的な部分もありましたけれども、動画協会より御説明させていただきました。御清聴いただきましてありがとうございました。
【太田主査】どうもありがとうございました。
ただいまの中場様の御説明を踏まえ、御質問がございましたら挙手をお願いします。オンラインの方は挙手ボタンにてお願いいたします。
菅委員、どうぞ。
【菅委員】ありがとうございます。日本動画協会様、日本動画協会の白書と言われているレポートも毎年読ませていただいております。ありがとうございます。
製作委員会について少し現状をお聞かせいただきたいんです。三、四年前でしょうか、製作委員会のよいところ、悪いところがあるんですけども、製作委員会の悪い点として、製作委員会側からすると、これは任意団体ですから無限権利が発生するので、ほかに投資家が相乗りしにくいこと、そしてやっぱり二の足を踏む人がいるということですね。もう一つ、製作委員会を外から見る場合だと、製作委員会というのは、中のどこかの会社が倒産したり合併したりとかして、著作権を誰が持っているか分からない状態になりがちだと思います。それがいかにもオーファンワーク的に、あれを使いたいけども、もう製作委員会、どこがやっているか分からないから使えないという、著作権上とてももったいないことになっています。という前提で、三、四年前から海外を中心にLLPというものなどを利用して会社にしてしまって、幹事をみんなで持ち寄りではなくて、その会社が著作権なり分配なりを全部負おう、製作委員会の中の幹事会社ではなくて、それを全部まとめてさらに親となる会社をつくってしまおうという動きがあったと思うんですけども、なかなか進んでいない状況かと思います。何かそれについて情報をお持ちでしたら、なぜ進まないのか、また現状どうなっているか、お教えいただければと思います。
【太田主査】よろしくお願いします。
【日本動画協会(中場氏)】では、中場から御説明させていただきます。御質問いただきましてありがとうございました。
まず、製作委員会の欠点というか、脱退できないとか、脱退といったところの懸念ですけれども、製作委員会を組成するときに共同製作契約を結びますが、その中で、持分の譲渡はできませんよというところを定めたり、脱退をするときにはほかの全当事者の書面による合意が必要ですというふうに取り決めるということをやっております。また、会社として解散してしまうとかいう場合ももちろんあると思いますので、そういった場合には、自動的に脱退をして持分はなくなりますよというところまで定めるというところで、現行の共同製作、製作委員会という仕組みの中でもカバーする手当てを実務としてはしているというふうな認識をしております。
LLPについては、確かにお話しいただいたように、そういったものを組成するという流れが頻繁にあった時期はあったように感じています。ですけれども、LLPにすると、じゃあ計算書を誰がどう作るんだとか、結構、法律上求められている手続が煩雑で、アニメのビジネスの流動的な部分になかなかマッチしにくいというところがあって、今はなかなか選択されないということになっているのかなと認識しております。
【菅委員】ありがとうございました。
【太田主査】よろしいでしょうか。
では、ほかに御質問ございますでしょうか。はい、福井委員どうぞ。
【福井委員】すみません、私、以前からの案件がありまして今日遅参いたしまして、その結果、もう済んでしまったかもしれないんですが、Netflixさんへの御質問も併せて行うことは可能でしょうか。それとも、それは今日はやめておいたほうがよろしいでしょうか。
【太田主査】後でまとめて御意見を伺うときに御質問もお受けしますので、その際にお願いできますでしょうか。
【福井委員】分かりました。じゃあ、そのときに一緒に。
【太田主査】ありがとうございます。分かりました。
ほかに質問はございますでしょうか。早稲田委員、どうぞ。
【早稲田主査代理】大変貴重な御報告ありがとうございました。我々の昔の感覚では、アニメーターというのは、労働時間がものすごく多くて、かつあまり収入も高くないんじゃないかというイメージがずっとあったところなんですけれども、Netflixさんの先ほどの資料の比較でも、2009年から2023年ですとかなり違ってきて、2009年のJAniCAさんの報告だと、平均値255万円で、労働時間も273時間のところを、2023年だと455万で、労働時間も200時間切っているようになっているんですが、この傾向、労働時間も減っているし、収入も増えてという、これはなぜこうなったのかお分かりになりますでしょうか。
【日本動画協会(中場氏)】そうですね、こういうフリーランスのアニメーターの方々に発注する元請の制作会社とかの労働環境というのも次第に変わってきたというのがあって、残業時間とかに対する規制も厳しくなっていますので、そういったところが個人のアニメーターさんとかといったところにも徐々に波及して、いい意味で効果が広がっていっているのかなとも感じております。
【早稲田主査代理】ありがとうございます。
【太田主査】よろしいでしょうか。
ほかにございませんでしょうか。はい、中原様、どうぞ。
【中原文化戦略官】一言だけ御質問でございます。9ページのスライドで、当分科会は著作権分科会ということでございまして、9ページの真ん中に元請制作会社から製作委員会さん、著作権譲渡という矢印がございますけれども、今後の対価還元の在り方を考えたときに、現在、この契約の在り方がどんなふうになっているかということと、今後、例えばこの契約について、何らか監督とかアニメーターとかいったところについて対価還元を向上させるような余地のある契約の見直しはできるものなのかどうなのか、お考えを聞かせていただければと思います。
【日本動画協会(中場氏)】まず、製作委員会の構成員の中で共同製作契約というものをつくります。その中で、アニメ制作に係る予算は幾らで、納期はいつでと。その予算の中で幹事会社が共同製作契約の中で具体的に指定する場合もあると思います。これこれの元請の制作会社に発注してアニメ制作をきちんとやりなさいというふうになっております。その共同製作契約の中でスタッフにも対価還元をしましょうということで、監督にはこれこれの追加報酬を払うとか、そのほかのスタッフへのボーナスとしてはこういうやり方で設定しましょうみたいなところを、共同製作契約自体も任意の契約ですから、当事者が合意をすれば、その範囲で設定をするということはできるのではないかなと思います。
【太田主査】よろしいでしょうか。
ほかに質問はございますでしょうか。唐津委員、どうぞ。
【唐津委員】先ほどお名前は出さなかったですが、あるグローバル配信事業者の例ということで、配信事業者との間の契約で制作者側から見ると必ずしも満足のいっていない条件があるというようなお話ではあったんですけれども、先ほどのNetflixさんの発表の中でもあったように、例えばアメリカでも、最初から制作者側にとってすばらしい条件を提示してもらったわけではなくて、ストライキをしたり、あるいはギルドとの交渉があって条件が改善してきたというお話はあったかと思います。日本の場合、同じようなギルドがあるわけではなくて、業界団体といっても、入っている業者もあれば、入っていない事業所もいるということで、なかなか足並みはそろわないかと思うんですが、こういうふうに配信事業者との契約条件について制作者としてある程度共通した不満な点があるというときに、業界として、こういうふうに交渉していって条件を改善しようというような動きは今あるのかというのと、具体的にどういったことをされているのかというのをちょっとお伺いしたいんですが。
【日本動画協会(中場氏)】御質問ありがとうございます。私が承知している限りでは、そういったグローバル配信事業者に対して、共同で何か戦線を張ってみたいな動きを制作会社同士だったり、もしくは製作委員会間で具体的にやっているという話はなかなか聞かないですね。ただ、どういう配信事業者に対してこんなひどい条件で言われたんだとか、こういうことはやってくれないんだみたいなところは、それぞれの会社の担当者間で情報共有をするということはありますけれども、NDAとかもあって、なかなか具体的なところに踏み込んで情報共有も難しくて、その程度が限界というのが現状かなと思っております。
【唐津委員】そうすると、今後、別に自分たちだけではなくて、例えばこういった形で何か契約交渉ができたらいいなとか、何か期待されていることで、黙っていると、多分、契約条件なのでなかなか自然によくなっていくということはないかと思うんですけれども、今後、こういうことを例えばこの人たちとかこの団体にしてほしいですとか、政府にこういうふうに動いてほしいとか、そういった御要望というのは出ているんでしょうか。
【日本動画協会(中場氏)】そうですね、やはりマーケティングのデータを十分に開示してほしいといったところは、それぞれの製作委員会だったり制作会社から声が上がることというのは多いです。高額な値段をつけていただいたとしても、それが本当にアニメを見る全世界の視聴者の人たちにどういうふうに届いているのかというのが分からないことには、我々、じゃあ次、どういったアニメを作って世界に届けていくのか、その次のステップにつながるような活動になかなかなっていないというところがありますので、そういった情報の開示みたいなところを何かしら義務づけるみたいなところを国の施策としてやっていただけるのであればすごいうれしいなと思います。
【太田主査】よろしいでしょうか。
【唐津委員】はい、ありがとうございます。
【太田主査】ほかに質問はございますでしょうか。ありがとうございました。
では、少し時間も押しておりますが、次に、ただいまの2団体のヒアリングを踏まえ、クリエイターへの対価還元に関して意見交換の場を持ちたいと思います。御意見がございましたらお願いします。また、もし御発表者への御質問がございましたら、このタイミングでも受け取りたいと思います。
それでは、よろしくお願いします。福井委員、どうぞ。
【福井委員】ありがとうございました。その後の委員の先生方の御質問とも重なるところが出たなと思いましたけれども、適切な対価還元ということで、Netflixさんの御発表資料を拝見しました。対価や予算額での還元ということがかなり中心的に書かれている。確かにこれらの金額は高く、それが多く日本の業界にとってのチャンスにつながっているということは事実であろうと思います。他方、こちらは著作権分科会ですので、権利についてやはりお伺いしたいと思います。2つあります。
1つは権利帰属でして、ハリウッドとか、あるいは配信プラットフォームが、団体や個人を問わず、著作権譲渡もしくは将来の続編やリメイクの権利も含めたオールライツの長期取得というモデルであることは、これはもう周知のところかと思います。これをきっちり交渉できるごく一部のキラーコンテンツホルダーを除けば、事実上、権利を吸い上げるのに近いとも評価できるわけですが、この点についてこうあるべしというお考えがもしNetflix・杉原様のほうにおありであれば、伺えればと思いました。
それから2番目、この関連で、では収益は、ということになります。配分について動画協会さんからも、グローバル配信事業者について追加配分がない、データ開示がないというお話が出ました。また、文春の報道でしたが、『イカゲーム』が全世界的に1,000億円以上の収益を上げても、韓国のクリエイターに対しては0.2~0.4%程度の配分しか行われなかったということも報道されたところです。杉原様の資料では11ページから12ページ辺りに、ヒット作のクリエイター還元は、欧米では一般スタッフの報酬は増えないんだという記載、あるいは、こうした欧米型のクリエイター還元は日本に導入しても問題は解決しないという記載があります。
ただ、これは私の理解が不十分であるのかもしれませんが、少なくともアメリカのユニオンではレジデュアルと言われる二次使用報酬が相当に発達しており、というか、ユニオン交渉とは要するにこのレジデュアルの交渉であって、先般のWGAのストライキでも海外のレジデュアルの大幅な増額を獲得した。あるいは、動画ストリーミングについて視聴数に応じたボーナスを獲得したというようなことが公式に発表されています。そのほか、いわゆる年金とか、あるいはヘルスプラン、これらがユニオン条件によって充実していることも指摘されるところです。そうすると、例えば同じ稼働量のスタッフに支払われる二次利用や社会保障も含めたトータルな平均総額、これは米国のほうが日本よりも有意に高いんじゃないかということも指摘されるところですけれども、この辺り、金額の比較は存在するのでしょうか。また、感覚としてはいかがでしょうか。
【太田主査】よろしくお願いします。
【Netflix(杉原氏)】2番目からでいいですか。1番目は後で。
まず、レジデュアルのことですけれども、先生が、先ほどいらっしゃらなかったんですが、そこ、まさにそのお話をしていて、その文脈としては、アメリカでは、あるいはヨーロッパもそうなんですけれども、いわゆるスタッフの人たちは賃上げ交渉の中で賃上げをしていくと。それでレジデュアルの分は、本当のトップのかすみの人たちだけが分け前をするようなシステムになっているんだと。なので、これを日本にそのまま導入しても日本のクリエイターの人は潤わないといったのが私の趣旨でございまして、だから日本の今のシステムを何とかよくするために、ここに書いているようなスキルマッピングを行い、どんな職種があるかまず見て、その人たちがこういうスキルを身につければもっと高い報酬がもらえるというインフラをつくらなきゃいけないというのが、すみません、私の今日の発表の趣旨の一つでございましたので、ちょっとその辺が伝わっていないと思いますので、欧米でそういうことはしていないというわけではなくて、しているからこそ、そのまま持ってくることができない、その切なさみたいなものをお話ししたのがまず第1点。
年金や健康保険云々と、これ、政府によって制度によって違うのは事実ですので、アメリカの場合、国民健康保険ではないし、年金も違うので、同列に比べることはできませんし、ヨーロッパの場合はまた違ったシステムであるんですけれども、一般論として、アメリカのクリエイターの給料のほうが高いです。それは間違いないです。韓国も高いです。これも間違いないです。なので、これも私のスライドのどこかに書いてあると思いますが、日本も質を上げて報酬価格を上げるか、生産性を上げて報酬価格を上げるか、言ってしまえばこの2つしか報酬価格を上げるすべがないので、この2つを今後も日本のエンターテインメント業界で取り入れるべきだし、私たちも努力をしていくというのが、報酬を上げる要素としてはそれであると。
韓国の『イカゲーム』の話については、誤報とまでは言いませんが、ちょっと偏った報道だと思います。『イカゲーム』のプロデューサーは、すごいボーナスもらっていますので。一番最初に契約したところの値段とその後にもらったボーナスというのがちゃんと書かれてない。1番目の契約のところは、正直、当たるか外れるか分からないので、それほど高価ではなかったことは事実かもしれませんが、当たったので、それはもう目がくらむほどの、私たちにとっては持っていかれましたという話なのかもしれませんけれども、報酬を手に入れられましたし、今年の終わりに『イカゲーム2』というのがありますけれども、それはもうべらぼうな制作費になっておりますので、もう韓国はリトルハリウッドだと思っていただいたほうがいいかなと思います。何か買いたたいているとか、報酬を与えていないみたいなことがそこで存在しているかというと、そういう形ではありませんので、それは誤報ないし一部の部分しか報道されていないことかなと思います。
データ開示についても、今、私たちの間でできる限りデータ開示はさせていただいていますし、半年に一度やっていますし、TOP10とかもやっていますし、あと、なかなか人数がそんないないので、全部の会社とはやっていませんけれども、私たちがアニメの方々あるいは実写の方々のプロデューサーないし制作会社と向き合っているプロデューサーは、細かいデータもその方々と相談しながら次の作品を決めたりもしているので、全ての会社とできているとは言いませんけれども、やっぱり次の作品を作る、それがはやってもらわなきゃいけないというのは、同じ船に乗っています。なので、そういう方々と一緒にいいものを作るために必要なデータはその担当者が開示をしているということは当然あり得ますということが、2番目の全体のお答えでございます。
1つ目の権利の話ですけれども、先生が役所に出された権利のテンプレートみたいなものも拝見していましたが、正直申し上げて、ごく一部の限られた部分での契約書であるというのが弊社の契約の担当の答えでございました。弊社、御承知のように、大きく分けて3つの作品群がございまして、フルオリジナル、それからライセンスオリジナル、それからライセンスとあります。当然のことながら、フルオリジナルというのは自分たちが企画から始めるわけですので、その分、リスクも取っていることもありますので、当然、二次使用、三次使用みたいなものの原作ないしそれに近いようなものの契約を取っていくことは事実ではありますが、これが、ほかのものと違うのは、IPというのは唯一無二の存在で、そこにしか存在しないんですね。例えば自動車会社が下請工場から何かを買いたたくという商流と全く違うので、最終的にはその人たちがどのお金でそれを提供していくかということなので、この間、先生が役所で出していらっしゃった契約は、うちとは言いませんけど、ああいうものを認めるということは相当お金が欲しかったんだなというのがストレートな回答です。
なので、ちょっと言葉は気をつけて使いますけれども、この契約って、契約だけではなくて、その対価としてのお金というのが必ず同列で生じています。契約の中で使える部分が少なければ少ないほど当然お金は少なくなっていくというのは当たり前の理由で、そこのバランスをどこでお取りになるか、あるいは、それが2つの、例えば著作、IPを持っていらっしゃる側と利用者側のネゴシエーションで、昔の言い方で言いますけど、かまどの灰まで売りたいとか、お金が必要だみたいな人も中にはいっぱいいらっしゃるわけですね。そういう方々はその人たちのニーズに合った契約をさせていただきますし、そうじゃなくて、非常にIPに自信を持っていらっしゃる方は本当に限られたIPの権利だけしか頂戴できていません。そして、最近の傾向でいうとまさに後ろ側のほうです。最近の傾向は私たちにとって極めて厳しい権利が多くて、特にアニメとかはそうですし、実写のほうもかつてと比べて、オリジナル作品を作るときでも、皆さん、もはや弊社と契約をされる方は、いろいろな方の知見を、多分、福井先生とか先生の事務所とかだと思いますけれども、知見をお持ちになっているので、何かすごい根こそぎ持っていかれたみたいな契約が今あるかというと、ゼロとは言いませんが、ほぼなし。もしそれがあったとしても、それは非常にお金を必要とされていた人たちが多いというのが私の感覚でございます。
【福井委員】よろしいでしょうか。
【太田主査】どうぞ。
【福井委員】前提としての事実は非常に重要ですので、私からも申し上げます。一応30年間、ハリウッドに始まり、配信プラットフォームさんとの契約も随分と拝見してきましたが、オールライツあるいはそれに近い許諾を要求されるのがスタンダードということは紛れもない事実だろうと思います。もしそれが事実でないというのであれば、これは一番重要な前提に関わることですから、徹底的に実態の解明を行う必要があるだろうと思いますね。そうでなければ、とてもではないが、正しい政策議論はできない。よって、この点にぜひ御協力を今後いただければと思います。これが権利についてです。
それから2番目、収益ですね。『イカゲーム』については、報道されていることですので、もし間違いがあるというなら文春さんにどうぞ抗議していただければと思いますけれども、でも、おっしゃりたいようなこともきっと何かしらはあるのかなとは思います。
ただ、ここで問題なのは、私は、例えば日米での、配信プラットフォームからクリエイターやスタッフへの還元の金額比較は存在しますか、そして平均の総額が米国ユニオンのほうが有意に高いとしたら、その事実に対してまずは我々は考えなきゃいけないと思ったのでお尋ねしたのですね。平均総額は米国・韓国のほうが間違いなく多いというお話はいただきました。具体的な金額比較、これは存在しないのですか。そして、レジデュアルはごく一部のクリエイターにしか渡っていないというのは、これもまたデータで示していただかないと。一般のユニオン交渉では、レジデュアルが増えたというのはユニオンメンバーみんなへのメリットだということで非常に皆さんが喜んでいるものですからね。数式も公表されている。だから、それがデータとしてどういうふうに一部のクリエイターにしか還元されないというご説明なのか示していただかないと、ちょっと言葉だけになっちゃうかなって気もするところでした。この辺はいかがでしょう。
【Netflix(杉原氏)】一つの価格の違いというのは、アメリカと同じ価格にしたらいいとまでは言えないと思うんです。だって、世界中ではコンテンツを作っている国は多いですから、アメリカあるいは韓国のような高い賃金のところが比較優位かと言われると、いや、例えばインドであるとか、場合によってはイギリスであるとか、最近ですとメキシコとか、アメリカほどの賃金はもらっていません。日本と比べたわけではないですけれども、そういうところで非常にいい作品がいっぱいできているわけですので、あくまでも賃金の決め方って、その国、その国のいろんなベースがあって、アメリカが高いから日本も高くあるべきだというのはどうかなと思いますし、反対に言うと、そこをいかに競争力に転換していくかというのがこの国に求められていることかなと思います。
レジデュアルについては、ちょっと私の口から言うべきことではなく、これは、組合の中でどうお分けになられるかは、私たちはあずかり知らぬことですので、それは組合の方々に聞いてください。それは相手方がどのように配られるかという形の……。私たちは提供しますと。そこから先のことは組合の意思決定においてされていることですので、私がとやかく言う話ではないかなと思います。
【福井委員】お尋ねしたかったのは、まずはデータが重要なので、例えばユニオン条件とどのぐらいの差があるんですかということだったんですけれども、私としては時間はこのぐらいでしょうかね。ありがとうございました。
【Netflix(杉原氏)】すみません、何度もですけど、なのでスキルマッピングが必要ですと。要するに、メジャーメントがないものをどのようにしてはかるのかという話で、じゃあ、こういうレベルの脚本家さんがいました、アメリカは幾らです、日本は幾らですとしたときに、松竹梅でどこか、こういう見本みたいなものがないときに、いや、単にアメリカの脚本家は高いですよと言っても、それはちょっと同じ比較にはならないので、やはりある程度スキルのマッピングをしてレベルを出さないと難しいんじゃないですか、そのためのインフラをつくったらどうですかというのが、すみません、今日の私の提案の一つで、一足飛びに3段、4段跳びみたいなものを目指すのもあるかもしれませんが、大きな業界ですので、インフラを整備することからまずは始めていく。その中でインフラの、例えばメジャーメントの精度をだんだん上げていく、ここにあるITスキルスタンダードはまさにそれで、最初に来たときはIT業界からボロボロに言われたんですよ。でも、それを毎回毎回改善していくことでIT業界はこれを一つのメジャーメントとして使うようになっていったわけですので、ちょっと地道かもしれませんけど、こういうことを始めないと、歴史が違うわけですし、今までやってこなかったということもあるわけですから、まずは、同じもののはかり方をすると仮に仮定したら、そのためのメジャーメントが必要かなと思います。
【太田主査】はい、恐縮ですが、時間も過ぎておりますので、もし必要なデータ等ございましたら、事務局を通じて提出していただければと思います。
伊東委員が先ほどからお手を挙げになられているので、どうぞ。
【伊東委員】Netflixの杉原さんに質問です。海賊版対策のところが全く触れられないまま終わってしまったので、Netflixさんのオリジナルの作品に関して海賊版が出た場合は、当然、Netflixさんが対応すべき案件だと思いますが、Netflixさんオリジナルの作品の海賊版の数というか、実態というのはどれぐらいひどいのか、実はひどくないのかというところを教えていただきたいのと、あと、対策に関しては、ACE、メジャーハリウッドの対策の団体にお任せと書いてありましたが、具体的にACEがどんなことをやっているのかというのを分かる範囲で教えていただければと思いました。
以上2つになります。
【太田主査】杉原様、よろしくお願いします。
【Netflix(杉原氏)】海賊版については国によってすごく違います。私たちのオリジナルでも、例えば南米とかアフリカでは非常に多く海賊版が出ております。日本ではそれほど多くはございませんけれども、世界的に見て比較的多い地域が多いなと思いますので、当然対策はしていますし、各国のいろんな方々と協力をしてやっています。
このACEについては、例えば一つのアクティビティーとしては、そういう海賊版が配信というか、アクセスできるようなサイトが出た場合、それを、検索エンジンをやっていらっしゃる方々とか、あるいは私たちとは違った部分での動画配信やSNSをやっていらっしゃる方々にレポートし、その方々のいち早い対策をしていただけるというような取組もあります。ここのメンバーの中だけではなく、検索エンジンなどの皆様のご協力もいただいております。
【太田主査】ありがとうございます。よろしいでしょうか?
【伊東委員】ありがとうございます。では、日本のコンテンツ企業が関連する御社オリジナルの海賊版の削除状況に関しては、例えばブラジルで1万本、海賊版が上がっていたからそれを8,000本削除しましたとかという開示は、お願いすれば開示していただけるという理解でよろしいでしょうか。
【Netflix(杉原氏)】その数を弊社が把握しているかどうか、私には分かりません。海賊版の数というのはそもそもどうやって数えるのかというのもありまして、数については、申し訳ないですけど、私が知っている限りで、そういう細かい数が出せるかどうかはやぶさかではありませんけれども、対策はしており、かつこういういろいろな組織を通じて講じています。決して海賊版を見逃したりとかしているわけではなく、例えばですけれども、海賊版のものだけではなくて、海賊版で御飯を食べている人がいるわけですよね。その方々に対して、全米映画協会等を通じてですけれども、フォロー・ザ・マネー・アプローチというのですが、その人たちのところのサイトに誰かが広告を打っていたりとかすると、その広告を止めに行ったりとか、いろんな手だてをしております。
【太田主査】どうもありがとうございます。
【伊東委員】分かりました。はい、どうも。
【太田主査】ありがとうございます。
ほかに御意見のある方は…。仁平委員、どうぞ。
【仁平委員】すみません、日本ネットクリエイター協会、仁平と申します。
日本動画協会様にちょっと質問というか、我々のほうからの情報提供アンド質問なんですけども、実は我々のところにKADOKAWAさんが正会員として入っていただいているというところもあって、KADOKAWAさんの過去の作品を、これ、一部実験的にやっている段階なんですが、過去の作品を二次創作用に一部、ほんの一部ですけども、公開して、それをユーザーさんに自由に二次創作してもらって、それをユーチューブに上げると。そしてそれにContent IDをつけて収益化すると。その収益を全部、我々というか、KADOKAWAさん側に一旦入れて、その収益をその二次創作をしてくれたクリエイターさんに一部返す、そして元のKADOKAWAさんの権利者にも返すというようなことを、ほんの実験でやっています。そういったことで過去の作品の再収益化みたいなものを促進すると同時に、我々、二次創作文化をつくろうという団体なので、二次創作文化を推進しているんですが、動画協会さん的に、そのような作品を二次創作化に積極的に利用して、過去の作品を再燃焼させると同時に再収益化するというのはどうなんですかね。気持ち的にこういうのって広く成り立つようなものなのか、どうなんでしょうかという質問なんですが。
【日本動画協会(中場氏)】御質問ありがとうございます。お話を聞いて再収益化の一番のハードルになりそうだなと思ったのが、やっぱり原作の権利者さんの許諾が得られるのかなといったところかなと思いました。ただ、一方で、例えば過去作に関連する新作をこれから公開しますというタイミングで、宣伝の手法としてそういうふうに原作の方の許諾も得ながら取組の一つとして行うみたいなところは、何か可能性がありそうだなと思いましたので、その個別の作品の施策としてという意味では可能性はあるのかなとは感じました。
【仁平委員】ありがとうございます。ボカロ楽曲をはじめとして我々の楽曲のプロモーション手法というのは、まさに二次創作を積極的に活用することによってプロモーションすると同時に収益を上げるということをやっていますので、ぜひそういうプロの方が作った作品を二次創作の、言葉は悪いですけど、材料・ネタにさせていただけると、より我々の文化は広がるのかなとちょっと思いまして、ぜひ参考程度に覚えておいていただけるとうれしいなという感じです。ありがとうございました。
【太田主査】どうもありがとうございます。
坂井委員、どうぞ。
【坂井委員】すみません、手短に。先ほど杉原さんと福井委員であった話のところなんですけども、やっぱり事実関係が分からないというのは議論できないと思うので、太田主査、ぜひよろしくお願いいたします。
その上で、今いろいろ話を聞いていて、制作会社さん、あるいは個人のクリエイターさんに仕事をもらう選択肢がないというのは、一つやっぱり問題としてあるのかなという気はしていて、そのためにも、例えば日本の制作会社あるいは企画をするような会社が、今あったような二次創作を含めた二次利用であったりとか、あるいは海外への展開であったりとか、J-LODとか、経産省さんかな、やっていますけれども、そういったようなところもやっていかないといけないのかなと思っています。特にやっぱり我々として感じるのは、日本のプラットフォーマーと海外のプラットフォーマーだと、いわゆるポリコレという観点でいうと、表現できる幅というものも違いますし、日本の多様な価値観とかおおらかな文化というようなところを活用できるということがクリエイターとしても選べるということは、一つクリエイターにとってもメリットとなるのかなと考えています。
すみません、長々と。
【太田主査】ありがとうございます。何かリアクションはございますか。よろしいですか。
では、大分時間も過ぎてしまいましたが、ここらで終了したいと思いますが、もし、ぜひ絶対に今、語りたいという御意見がございましたらお受けいたしますが、いかがでしょう。どうもありがとうございます。
では、議事(2)のその他に移ります。
事務局より報告事項が2点ございますので、説明をお願いいたします。
【持永著作権課課長補佐】すみません、時間も押していますので、さらっと説明させていただきます。
参考資料2で、来年の概算要求の内容についてお示ししております。3点ございまして、1つが、未管理著作物裁定制度に関する事業でございます分野横断権利情報集約化促進事業です。2点目が、海賊版対策をさらに強化していこうという海賊版対策事業となります。3点目が、DX時代に対応した著作権施策の推進に必要な調査研究として調査研究に関する費用を要求しております。
以上が来年の概算要求の説明となります。
もう1点、前回、政策小委員会で太田主査からお尋ねのあった知財計画の中の記載で、海賊版サイト等に関する情報提供のインセンティブ付与について、誰に対するインセンティブ付与なのかという御質問がございましたが、こちら、担当の知財事務局に確認したところ、海外の方に対する情報提供のインセンティブということでした。今後、具体的な取組をどうするかということについては検討していくということでした。
以上です。
【太田主査】どうもありがとうございます。
ただいまの御報告を踏まえ、御質問等がございましたら挙手をお願いいたします。オンラインの方は挙手ボタンでお知らせください。
ありがとうございます。特にございませんようですので、本日の議事全体を通じまして、何か御意見、御批判、コメント、御質問等ございましたら、お受けいたしたいと思います。ありがとうございました。
それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、特段ございませんようでしたら本日はここまでとしたいと思います。
最後に、事務局から連絡事項がありましたらお願いします。
【持永著作権課課長補佐】本日はありがとうございました。
次回の政策小委員会は、改めて事務局にて調整の上、日程をお知らせいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【太田主査】それでは、以上をもちまして文化審議会著作権分科会政策小委員会(第3回)を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
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