図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム(第3回)

日時:令和2年9月29日(火)

13:00~15:30(延長の可能性あり)

場所:文部科学省旧文部科学省庁舎5階テレビ会議室(508)

議事次第

  • 1開会
  • 2議事
    • (1)論点整理について(絶版等資料へのアクセスの容易化(法第31条第3項関係))
    • (2)自由討議(図書館資料の送信サービスなどについて)
    • (3)その他
  • 3閉会

配布資料一覧

資料1
入手困難資料へのアクセスの容易化(法第31条第3項関係)に関する論点整理(たたき台)(256.2KB)
参考資料1
図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム委員名簿(82.2KB)
参考資料2
図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチームにおける当面の審議スケジュールのイメージ(62.1KB)
参考資料3
図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する検討に当たっての論点について(219.5KB)
参考資料4
ヒアリングにおける図書館等関係者・権利者の意見概要【絶版等資料へのアクセスの容易化(法第31条第3項関係)】(143.2KB)
参考資料5
自由討議(第2回WT)における委員の意見概要(131.4KB)
参考資料6
科学技術・学術審議会 学術分科会(第81回)・情報委員会(第13回)合同会議「コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について(案)」抜粋(161.5KB)
参考資料7
病院図書館に関する要望書(近畿病院図書室協議会,日本病院ライブラリー協会,日本図書館協会)(214.8KB)

議事内容

【上野座長】それでは,ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会「図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム」第3回を開催いたします。

本日も新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために各委員の先生方には基本的にウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。お忙しいところ,御参加いただきまして誠にありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,前回同様,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと存じますので,既にインターネットを通じまして傍聴者の方には傍聴していただいておりますけれども,特にこの点,御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【上野座長】では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただきたいと思います。本日,資料は1点だけでございまして,「入手困難資料へのアクセスの容易化に関する論点整理(たたき台)」をお配りしております。

参考資料は,関係する基礎資料を幅広くつけておりますが,新しく参考資料6を用意しています。科学技術・学術審議会においてコロナ新時代に向けた今後の学術研究の振興方策等について議論が行われておりますところ,その中で図書館関係の権利制限の見直しについても重要な課題として進めるべきという方向性が記載されておりますので,参考としてお配りをしております。

また,参考資料7といたしまして,病院図書館から著作権法における図書館として指定してほしいと要望をいただいておりますので。,本格的な議論は次回以降になろうかと思いますが,お配りをしているものでございます。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。それては,議事に入りますけれども,本日は論点3つございまして,まず1つ目が31条3項の関係でございますけれども,絶版等資料のアクセスの容易化につきましての論点整理についてでございます。2番目が,図書館資料の送信サービスを含めまして自由討議というで,最後に「その他」という3点でございます。

では,まず1つ目でございますけれども,論点の整理としまして,絶版等資料へのアクセスの容易化に関する31条3項関係でございます。これまでヒアリングや自由討議において議論をいただきまして,その意見等を踏まえまして事務局のほうで論点の整理を行っていただきましたので,まずはその御説明をお願いしたいと存じます。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料1を御覧いただきたいと思います。入手困難資料へのアクセスの容易化に関しまして,これまでの議論などを踏まえて事務局として論点整理のたたき台を御用意しております。

まず1ポツは,「現行制度及び課題」でございまして,(1)で現行規定の概要,趣旨を記載しております。御承知のとおり,31条3項におきましては,国会図書館でデジタル化された絶版等資料を他の図書館等に送信し,そこで閲覧,複写することなどが可能になっております。

こうした権利制限が設けられておりますのは,アにありますように,国民が市場等で入手・閲覧することが困難であるため,公的機関の責任において国民の情報アクセスを確保する必要が高いこと,一方で,イにありますように,市場等で流通していない,マネタイズしていない資料であれば,権利者に大きな影響を与えることも想定されないこと,こういう趣旨から権利制限が設けられているものと記載しております。

(2)は国会図書館における運用実態でございます。「図書館向けデジタル化送信サービス」といたしまして,約149万点の資料が1,200余りの図書館で閲覧できることになっております。多くの図書館では複写サービスも実施されているという状況でございます。

その次の段落は,運用についての関係者間の合意でございまして,その中では,将来の電子出版市場への影響,権利者の利益保護等にも配慮した形でのルールが定められております。

その具体的な内容が2ページの①から③でございます。まず①にありますように,送信対象資料については,流通在庫がなく,かつ商業的に電子配信されていないなど,一般に図書館等において購入が困難である資料としつつ,オンデマンド出版,電子書籍として流通していれば送信対象としないということになっております。

②は,対象とする資料の射程でございまして,様々ある資料の中で「図書・雑誌・博士論文」を送信候補とするとしつつ,その中でもさらに漫画,商業雑誌,出版されている博士論文などについては取扱いを留保,除外する,すなわち送信しないという取扱いが決まっております。

さらに③では,②で送信対象候補となったものについても,実際送信する資料についてはさらに絞り込みを行うこととなっておりまして,ローマ数字ⅰ,ⅱ,ⅲと3つの除外手続が定められてございます。

ⅱとⅲにおきましては,出版社,権利者からの除外の申出を受けて対応するということになっておりまして,ここに記載のとおり,ア,市場で流通している場合(おおむね3カ月を目安として流通予定である場合を含む),イ,著作権が著作権等管理事業者により管理されている場合,ウ,著作者から送信利用の停止の要請があった場合,エ,出版社から経済的利益以外の正当な理由により停止の要請があった場合このいずれかに該当すれば除外を行い,送信をしないというルールになっております。

次に(3)が現行制度の課題と要望でございます。御承知のとおり,現状では,図書館等の館内での閲覧しかできず,家庭から閲覧できないといった課題がございます。このため,2段落目ですが,これまでも縷々御説明しておりますとおり,感染症対策のために図書館等が休館している場合や,病気や障害等により図書館等まで足を運べない場合,そもそも近隣に図書館等が存在していない場合など,図書館への物理的なアクセスができなければ,資料自体へのアクセスかできないという課題がございます。

また,実態上も全ての図書館等が絶版等資料の送信を受けているわけではないということや端末が限定的であるといった課題もあるものと承知しております。

こうしたことを背景にしまして,現に国会図書館に対しましては,インターネット公開を求める要望が寄せられており,身体障害で来館できない利用者からも遠隔地から資料にアクセスしたいという要望が寄せられているところでございます。

さらに3ページ目でございますが,「図書館休館対策プロジェクト」からは,ヒアリングでもございましたとおり,アンケート調査を実施したところ,絶版等資料を各家庭等に送信することのニーズが極めて高いということが報告をされております。

こうした状況を踏まえまして,国会図書館のほか,図書館協会,国公私大学図書館協力委員会などからも制度改正の要望が出されております。

次に2ポツ,「対応の方向性」でございます。こちらもこれまで共通認識になっていたかと思いますけれども,権利者の利益を不当に害しないことを前提に国会図書館が一定の条件の下,絶版等資料のデータを各家庭等に送信することを可能としてはどうかとしております。

なお,平成24年の議論におきましても,最終的には各家庭等での閲覧を可能とすることが目標とされておりまして,今回はその流れに沿ったものであることを確認的に付記しております。

3ポツからが内容面でございます。(1)から(6)まで区分しておりますので,順次御説明をいたします。

まず(1)が「絶版等資料」の用語,内容についてでございます。まず①「用語,呼称」でございます。前回も議論がありましたとおり,法律上は「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」という定義になっております。「絶版」という言葉は使われておりますが,あくまで例示でございまして,一般に入手困難かどうかということが権利制限のメルクマールになっております。

そういう意味で,「絶版」という言葉が用いられていることで実質的に何か問題があるわけではないと承知をしております。ただ,前回も御指摘がありましたように,絶版ということの意義がそもそも多義的であるということもありますし,最近では絶版かどうかと市場で流通しているかどうかというのが必ずしもリンクしないという状況も生じておりますので,「絶版」という言葉を強調することで権利制限の対象範囲の誤解なども生じることが想定しております。

このため,権利制限の対象となる資料については,便宜上,「入手困難資料」という呼び方に改めてはどうかとしております。

なお,法律上の定義の扱いにつきましては,内容面の取扱いも踏まえながら法制的観点からの検討が必要になるものと理解しています。

次に②が入手困難資料の内容面の話でございます。ローマ数字のⅰは,現行規定の解釈,運用などを整理した部分でございます。先ほど御説明したとおり,現に一般に入手することが困難かどうかがメルクマールになっておりまして,これによると,次の段落にアからオまで書いたような取り扱いになろうかと思います。

アは,絶版であったとしても,電子出版,オンデマンド出版等により円滑な流通が確保されている場合には権利制限の対象とはならないこと。イは,逆に,絶版でなくても,流通在庫がなく,かつ電子出版,オンデマンド出版等もされていないなどの場合には権利制限の対象になり得ること。ウは,そもそも絶版という概念自体が存在しない資料ですとか,最初から広く一般に流通させることを目的としていない,ごく少部数しか発行されないような資料につきましても,一般に入手困難であれば権利制限の対象になること。エは,将来的に再販等の構想があったとしても,現実化していない場合には権利制限の対象となり得ること。他方で,オにありますように,単に値段が高くて購入が困難であることや,郵送等の手続のために時間がかかるということなどは権利制限の対象かどうかの判断に影響を与えるものではないということでございます。

この点,次の段落にありますように,関係者間の合意事項の中には,法解釈を示したものもある一方で,いわゆる留保,除外というものにつきましては,法律の解釈というよりは,運用上の配慮として,将来の電子出版市場の発展,権利者の利益に悪影響が生じないようにするため,法解釈とは少し離れた世界で独自に定められたものだろうということを記載しております。

これを踏まえた関係者の意見が5ページ目の上の部分でございます。図書館関係者からは,現状よりも送信対象資料の範囲が縮小することには反対という御意見や,安易に除外手続が行われないようにする必要があるなどの御意見をいただいております。

他方,出版社・権利者団体からは,各家庭等まで送信するという場合には,対象資料の範囲について厳格に現行の運用を維持・尊重,またさらに厳格化すべきという御意見もございます。

これを受けた対応方針がローマ数字のⅱでございます。①にありますように,送信先が広がることに伴って権利者への影響が大きくなること,また,②にありますように,今回の見直しの主眼というのは,現状で図書館に行けば閲覧できるけれども,家庭等からは閲覧できないという課題に対応することでございますので,少なくとも各家庭等から見られるようにする資料というのは,現行の運用よりも広げることは慎重に検討すべきではないかとしております。

この点,権利者からの御懸念も強いということがございますので,法整備に当たっては,現行の運用をより狭めるという趣旨ではありませんが,対象資料の範囲が過度に拡大しないような法令上の担保を行うということも検討する必要があるのではないかと考えております。

他方,各家庭等への送信ではなくて図書館等への送信につきましては,様々な状況を踏まえつつ,現行の運用の在り方について別途検討を行う余地もあるのではないかとしております。各家庭等までの送信と図書館等への送信,切り分けた議論というのもあり得るのではないかということでございます。

いずれにしましても,次の段落にありますように,具体の運用につきましては,基本的には国会図書館と,資料の流通状況などを的確に判断できる立場にある出版社,権利者との間におきまして,権利保護,利用円滑化のバランスを考慮の上で議論されるべきではないかと考えております。

ただし,本件は,国民全体の情報アクセス,権利者全体の利益に関わる重要な事項でもありますので,今後の議論に当たっては,関係府省,研究者,弁護士など,中立的な第三者も参画することが望ましいのではないかと考えております。

次に中古本市場との関係でございます。前回のワーキングでも御議論があった部分でございます。新刊本が入手できなくても中古本が容易に入手できるという場合がありまして,それと入手困難資料の定義の関係をどう評価するかという論点でございます。

視点を3つ書き出しております。1つ目は,当事者間の合意に基づく現行の運用におきましても中古本の流通状況は考慮されていないということ。この点,国会図書館からは,仮に中古本が入手可能な場合を権利制限から除外するということになりますと,現状で送信しているものの大半が送信できなくなり,サービスの水準が大きく低下するという強い懸念が示されております。

6ページ目の2つ目の観点は,権利制限を行う許容性でございます。前回複数の委員から同趣旨の御意見をいただきましたとおり,中古本の流通によって権利者への対価の還元はなされませんので,権利者の利益保護からは必ずしも考慮するが必要はないだろうということでございます。

他方,ローマ数字のⅲ,権利制限を行う必要性という観点から見ますと,中古本が容易に入手できる場合にまで権利制限を行うことについては議論の余地があるものと理解しております。

ただ,このⅲ番につきましては,※に記載のように,中古本については幅広いニーズに応え得る分量が確保されていない場合も多いだろうということや,価格が流動的であること,また流通状況につきまして統一的かつ確実なチェックも困難だという点で,新刊本と比べると入手の容易性,確実性に少し差があるのではないかという議論もあり得るかと思っておりまして,こうした点を踏まえながら権利制限の対象に含めるべきか否かについて御意見をいただきたいということでございます。

なお,次の段落で確認的に記載しておりますが,仮に法律上,権利制限の対象から除外されないと整理をした場合でも,関係者間の運用の議論に当たって一切その考慮をしてはいけない,ということにはならないだろうと思っております。

ただ,いずれにしましても,先ほど申し上げましたとおり,運用についても国民全体の利益に関わる大きな話ですので,中立的な第三者を交えて議論すべきということは共通かと思います。

次に(2)が「補償金の取扱い」でございます。前回かなり議論がありましたので,基礎となる情報や論点を幅広く書き出しておりますので,改めてじっくりと議論していただきたいと思います。

まず①,前提といたしまして,現状補償金が課されていない理由を書いております。1つは,市場等で流通していない資料,かつネバー・イン・コマースのものも相当程度含まれるという性質上,権利者への影響は軽微だろうということ。2つ目としては,国立国会図書館が非営利で行う極めて公益性が高い行為であること。3つ目は,送信先が図書館等に限定されていること。こういった点を考慮して,現状補償金が課されていないものと承知しております。

その上で,先ほどから御説明しておりますように,関係者間の合意におきましては,送信対象資料の範囲などがかなり厳格に制限されておりまして,資料の範囲を定める段階で将来の電子出版市場,潜在的市場や権利者の利益などに悪影響を与えない形になっているということがございます。これを踏まえて,②補償金の要否を議論いただきたいと考えております。

4つ視点を書いておりまして,まずⅰが,送信先の拡大が権利者にどのような影響を与えるのか,補償の必要性があるのかどうかという点でございます。この点,2つ目のポツにありますように,上記①のローマ数字ⅰ,ⅱの事情は変わらず,さらに現行の対象範囲について厳格な運用を尊重するということを前提にいたしますと,資料の範囲を画する段階で権利者の利益への影響が最小限にとどめられていることになりますので新たに補償金を課すだけの不利益があるかどうかという論点が問題となります。

この点,7ページの上の※に記載のとおり,権利者団体におきましては,送信先が拡大すれば補償金を課すことが必要,望ましいという御意見がある一方で,厳格な運用が維持されるのであれば,補償金は必ずしも必要ないという団体も多いところでございます。

次にローマ数字のⅱが「国民の情報アクセスへの影響」でございます。入手困難資料の性質上,国会図書館の送信サービスがほぼ唯一の情報アクセス手段になりますところ,新たに補償金を課し,それがさらに利用者に転嫁されるということであれば,国民の情報アクセスに影響が及び得るものと理解してございます。

特に物理的に図書館等に足を運べる方は無償で閲覧できて,そうでない人は有償ということになりますと,イコールフッティングなどの観点も論点になろうかと思いますし,また,資料の閲覧自体に対価が発生するということについて,図書館サービスの無償原則の理念との関係でどう考えるかという点も論点になろうかと思います。

次にローマ数字のⅲがサービスの利便性を高める観点から補償金を積極的に使っていくという可能性でございます。前回複数の委員からこの趣旨の御意見をいただいたものと理解をしております。送信対象資料を拡大したり,送信形態の利便性を向上し,ダウンロードなどを可能とするために補償金をうまく使っていけるのではないかという問題意識でございます。

権利者団体の中には,様々条件が整えば,送信対象の資料を拡大してもいいという御意見がある一方で,仮に補償金があったとしても送信資料の範囲は拡大すべきでないという御意見が多いということがございますし,いずれにしてもダウンロードまでは認めるのは反対という御意見が大半であるものと承知しております。

ローマ数字のⅳは,補償金の徴収・分配システムについてでございます。仮に利用者に転嫁すればという前提ではありますが,国会図書館からはシステム構築についての懸念もいただいております。

また2つ目のポツは分配についてですが,入手困難資料については権利者が所在不明などの場合も多いと考えられますところ,補償金を適切に分配できるかという見通しも現状では立っていないところかと思います。

次に8ページに参りまして,こうした点を踏まえて,③で考えられる選択肢を機械的に4つ書き出しております。アは,厳格な運用を尊重しつつ,送信先を各家庭等に拡大し,補償金制度は導入しない。イは,同様の条件で補償金制度を導入する。ウは,送信対象資料の拡大などにより利便性を高めつつ,送信先を拡大し,併せて補償金制度を導入していく

このウを支持する御意見が前回多数ございましたが,現状では権利者の理解を必ずしも得られていないという点も踏まえまして,例えばエのように,まずはアの対応を早急に進めながら,引き続きウの可能性についての議論を継続するというオプションもあるのではないかと考えております。

続いて(3)「送信の形態」でございます。1段落目に記載のところはほぼ共通認識だったかと思いますけれども,特定の属性を有する方だけが閲覧できるという仕組みは望ましくない一方で,権利者の利益保護の観点からID・パスワードなどによる管理をしていくという必要性があるのではないかということでございます。その場合には,ID・パスワードなどの取得登録時に利用規約等への同意を求めまして,不正な利用を防止することも可能だろうと考えております。

2段落目は,ストリーミングだけなのか,ダウンロードまで認めるのかという論点でございます。前回も,利用者のニーズを踏まえますとストリーミングだけでは十分と言えないのではないかという御指摘がありました。この点,ダウンロードを認めることにつきましては,かなり権利者側の御懸念が強い一方で,例えばプリントアウトにつきましては,データの不正拡散等の懸念も少ないため,プリントアウトまで認めるということもオプションになり得るのではないかと書いております。

データのダウンロードを認めることにつきましては権利者側の懸念が強いということがございます。これは括弧書きにありますように,入手困難資料かどうかは流動的に変わり得るところ,入手困難資料でなくなり国会図書館から送信されなくなった後も,いったんダウンロードされてしまいますとデータが残ることになるため,,市場で流通した後の段階でも幅広く無償での利用が継続されてしまうという御懸念も含まれているものと理解しておりまして,こうした点を踏まえた取扱いの議論が必要かと思います。

なお,※に記載のとおり,仮にプリントアウトなどを可能とする場合には,31条3項後段におけるコピーサービスについても,同様に全部のコピーを可能とすべきかどうかということなども論点になろうかと思います。

いずれにしましても,最後に記載のとおり,送信の形態などにつきましては,システム上の実行可能性なども踏まえて柔軟に対応していく必要がありますので,法律に直接書き込むということではなくて,政省令,ガイドラインなどで定めていくという方向かと思っております。

次に9ページから,これは付随的な論点を幾つか書き出している部分になります。(4)は受信者側での複製でございます。(3)とも連動しますけれども,仮に受信者側での複製を認めるという前提で送信する場合には,受信者側での複製を認めていく必要があるだろうということでございます。私的使用や授業目的など,現行権利制限で認められている場合は当然問題がないわけですけれども,それに該当しない場合も含めて,自ら閲覧するためであれば権利制限を認めてよいのではないかということを記載しております。

(5)は,公の伝達権についてでございます。現行規定上,公の伝達については明示的な規定はございませんけれども,現行規定の規定ぶりから,当然に公の伝達も可能だというふうに解されているものと理解しております。ただ今回,送信対象を大幅に拡大することに伴って公の伝達のニーズも高まると思いますし,さらに現行の規定ぶりから当然そう読めるという状況自体も変わっていくことが想定されますので,明確に規定を設けたほうがいいのではないかということを記載しております。

その際には,図書館など以外の場でも幅広く公の伝達を認める必要があるのではないかという一方で,何らかの要件もかけないということはバランスを欠くのではないということで,例えば38条で一般化している非営利・無料という要件など,一定の要件を課す必要があるのではないかと考えておりまして,こうした具体の要件についても御意見をいただきたいと思います。

(6)は,国会図書館以外が保有している入手困難資料を上手く流通させていこうという問題意識に関わる部分でございます。大学図書館・公共図書館などが国会図書館の持っていない資料を保有しているということも想定されまして,こうした資料の情報のアクセスを確保する観点から,アからエまでに記載したような流れを通じて,いわば国会図書館をハブにしながら資料の全国的な共有を図っていくということが望ましいだろうということを記載しております。

この点,10ページに記載のとおり,既に平成29年の著作権分科会報告書におきましても,それぞれの行為が可能だとされておりますし,エについては今回見直しをすれば各家庭まで送信ができるようになるということだと理解をしております。

この点,(イ)につきましては,現行規定上,「他の図書館等の求めに応じ」と要件がございまして,これとの関係が若干論点になろうかと思います。国会図書館が個別に資料を特定して要請をしないといけないのか,もしくは,国会図書館の役割や,包括的な要請を行うことでこの要件を満たせるのかどうかという論点でございます。

さらに一番下の段落は技術的な話になりますが,現行規定上,「複製物を提供」という文言が記載されておりますところ,これでどこまでの行為が可能かという点でございます。メールでの送信が可能か,国会図書館の管理するサーバーに大学図書館などから直接データを蓄積していくというやり方が可能かなど,こうした行為も含めて可能としていく方向だと思いますが,現行の文言で読めるかどうかについては精査が必要だということを記載しております。

少し長くなりましたが,事務局からは以上です。

【上野座長】ありがとうございました。それでは,ただいま御説明いただきました内容について御議論いただきたいと思いますけれども,全体は少し長いですし,内容面で踏み込んで書かれているところもあるかと思いますので,先生方の御認識を確認する上でも,いくつかに区切って議論を行いたいと存じます。まずは,1ページ目から3ページ目の上の10行目ぐらいまでですけれども,「1.現行制度及び課題」について御意見をいただきたいと思います。もっとも,ここは事実関係を整理した部分ですので,特に大きな問題にならないかとは思いますけれども,もし御質問や御意見等がございましたらお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。ここはこれまでの資料にもありましたし,よろしいでしょうか。

それでは,続きまして3ページ目……。

【竹内委員】恐れ入りますが,1点よろしいでしょうか。竹内でございます。恐縮でございます。ぴったりここに当てはまるかどうかは分からないんですけれども,最近ちょっと実際にこういうことができるかということを北米の図書館から問合わせがありましたので,ちょっと御紹介をさせていただきたいんですが,今議論されている家庭等への送信というのは,基本的にはエンドユーザーが直接ログインするような形で利用するということが想定されていると思うんですけれども,例えばエンドユーザーに対するサービスを図書館が介在して行うようなケースというようなことです。

具体的には,例えば,図書館の端末に絶版等入手困難資料が表示されているという状況のものを,図書館とエンドユーザーの間を例えばZoomのようなもので画像でつないで,図書館に表示されている著作物を図書館員が必要な説明などを加えながらエンドユーザーに提供するというケースです。こういったような利用形態をとったとしても,特に大きな権利者側への損害をもたらすものではないと考えることができるわけですけれども,今規定されているものがそこの文脈に入り得るのかどうかということがちょっと気になっております。

以上でございます。

【上野座長】ありがとうございます。介在というお話でございましたが,そこでの介在者は図書館等になるのでしょうか。

【竹内委員】はい,そうです。

【上野座長】分かりました。何か事務局から御発言ございますか。

【大野著作権課長補佐】後ろのほうの論点と絡むと思いますけれども,公の伝達であれば,現行でも認められておりますし,それを広く認めていくという方向に異論はないものと思います。

一方で,国会図書館以外の図書館等が公衆送信の主体となるということになりますと少し影響が異なってくるのかなと思っておりまして,これまであまり念頭に置かれていなかった新しい論点になり得るものと考えております。これまでは国会図書館が一元的にエンドユーザーに送信するという前提で,様々なID・パスワードなどによる管理もできるのではないかという議論でしたけれども,図書館が中に介在して主体となって公衆送信していくということになると,もう少し別の議論も必要かなと認識しています。

【竹内委員】了解いたしました。実際にそういうことができるかというお問合わせがあったということがあって,考え方としては,権利者の利益を害するということがないのであれば,図書館が介在してもよいのではないかと私は考えているんですけれども,ちょっとその辺が法的にうまく読めるかどうかということについて,特に事務局のほうでも御検討いただければと思います。ありがとうございます。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは,続きまして,これも少し短い部分ですが,3ページ目の中腹にございます「2.対応の方向性(案)」というところについて,いかがでしょうか。特に問題ございませんでしょうかね。

それでは,ここからがいろいろ大変なところでありまして,「3.論点整理」とございまして,1から6までございますけれども,これを6つに分けた上で,このうち(1)の絶版等資料につきましては,さらに3つに分けて議論させていただきたいと存じます。詳しく書き込んでいるところもあるかと思いますので,先生方の御認識と一致しているかどうか,御意見を頂戴できればと存じます。

まずは,(1)の「『絶版等資料』について」というところでございますけれども,4ページ目の上まで,つまり①の「用語・呼称」というところ,ここまでで御意見,御質問等がございましたらお願いしたいと存じますが,いかがでしょうか。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。「入手困難資料」と呼称することには賛成です。その上での資料という概念についてなんですけれども,1つの書籍の中で複数の論文が掲載されている書籍を考えた場合に,論文単位で見ると,電子出版されているものもあり,他の論文は電子出版されていないものもあるというときに,書籍全体としては入手困難資料だと思うのですけれども,その中に入手困難でない著作物が含まれるという場合が生じるかと思います。私の理解としては,そういう場合においては,入手困難でない著作物を除いた部分が入手困難資料としてこの対象になるというふうに考えるべきではないかと思うのですが,そういう理解でよろしいでしょうか。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。1つの資料が可分で,部分的に入手困難であるというときに,現実に入手困難である部分だけを入手困難資料と呼ぶという理解でよいかというようなご指摘かと思いますけれども,ほかの先生方,何か御意見よろしいですか。

【生貝委員】では,一言よろしいでしょうか。最終的にこの文言を変えるかはともあれとして,こうした呼称の在り方を再考していくというのは,ヨーロッパでは約10年前に「絶版」という言葉からアウト・オブ・コマースという言葉に使い変えたところでございましたけれども,よいのではないかと思います。

ただ,少し細かいところなのですけれども,入手困難という言葉を使うかということに関しては,例えば御紹介をしたデジタル単一市場著作権指令の中ですと,通常の商業流通経路で入手困難だという定義にしているところ,日本語の文言上,一般的に入手困難であることを求めると,例えば自治体の刊行物ですとか,そういったもの,しかるべき場所に行けば手に入るですとか,図書館にはかなり冊数が存在しているですとか,あるいは,それこそインターネットには実は,それが合法か違法か等含めて載っているというものを含めて,様々入手自体は可能なのだけれども,商業的には流通していないといったようなものとの兼ね合いというのがもしかすると具体的な運用の中では論点になってき得るのかしれません。

このことは,前回少し申し上げたとおり,アウト・オブ・コマースという概念をこれからこの条項以外で使っていくことがもしあるのであれば,例えば図書館権利制限,教育権利制限規定等でもドイツでは使われていますけれども,少なからず影響をしてき得るところかと思います。

そういった観点から,個人的には通常の商商業流通経路に乗っているかどうかということをある程度前面に出す定義の仕方をするのが,比較法的な点からは1つの選択肢ではあるのかなと考えていたところがありまして,これはあくまで1つの参考意見ということでございますけれども,用語の選択の可能性として一応御検討の片隅には置いていただけるといいかなと思いました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【大渕委員】よろしいでしょうか。今の点につきまして,前回も絶版というところで引っかかって議論が止まってしまったので,そこに入り込んでも仕方がないと思います。もともと絶版のほうは例示で,主たる部分は入手困難資料だったから,それを前面に出すということで,便宜上,今まで「絶版等資料」と法令上では略称にしていたのですが,そこで引っかかっていたから,それをやめて「入手困難資料」にすれば絶版部分に入らなくなります。これはいわばワーキング・デフィニションとして,今後,最終的にはまたきれいな形にすればよく,その際には今言われたようなことなどを考えればよいと思います。要するに,絶版問題を避けるためには非常に優れた呼称ですので,もともと便宜上の作業用呼称として,「入手困難資料」とするのは大変よろしいかと思いますので,この辺は早く固めて先に進んだほうがいいかと思います。

【上野座長】どうもありがとうございます。では,中身のほうに入らせていただいてよろしいでしょうか。続きましては,4ページ目の②内容・外延ですね,ここから5ページ目の下から8行目までについて御議論いただきたいと思います。「中古本市場との関係」については,また次に御議論いただきたいと思いますので,まずは②の前半の部分,5ページ目の下から8行目までのところで御意見,御質問がございましたらお願いしたいと存じますが,いかがでしょうか。

入手困難資料の具体的な内容ということになろうかと思いますが……。そして,各家庭に送信する場合と図書館に送信する場合とで区別するという余地があるかどうかというようなことも書かれておりますけれども……。さらには,関係当事者の協議には第三者も参画することが望ましいのではないかといったことも書かれておりまして,もともと先生方の御意見を反映した文章かとは思いますけれども,特によろしいですかね……。先生方の御認識と齟齬がなければとは存じますが……。

【福井委員】少し質問をさせていただければと思います。

②内容・外延のうちのⅰですかね,現行規定の解釈・運用等で,(ア)から(エ)までに関しては権利制限の対象になり得ると。ただし,当事者間における運用上の配慮としての留保・除外が様々あるということがその前の箇所との関連でも御紹介いただいているところです。今回について,「いずれにせよ」ではじまる5ページのちょうど中ほどの段落では,上記(ア)から(オ)に記載した考え方をベースとしつつ,基本的には国会図書館と出版社・権利者との間においてバランスを考慮した議論を行われるべきである。ただし,これ,国民全体の情報アクセスの確保やノンメンバーの利益にも関わる重要な事柄であるから,中立的な立場の第三者も参画することが望ましいのではないかと述べており,考え方としては基本的によろしいと思うのですけれども,これはある程度現状での関係者間協議の内容を前提にした運用ということを含意しているんでしょうか。それとも,現時点での国会図書館や権利者団体との間の協議には必ずしもとらわれずにゼロベースで中立的な第三者の参画も得ながら運用については議論していただくということを含意しているのでしょうか。若干玉虫色の文章のようにも読めましたので,お答えいただけることがあればお教えいただければと思います。

【上野座長】ありがとうございます。では,この点,起案された事務局のほうから何かコメントございますでしょうか。

【大野著作権課長補佐】まさにこれからの御議論次第だとは思いますが,事務局としては,その前のあたりの段落に記載のとおり,各家庭等への送信については特に影響が大きいということがありますので,現行の運用ベースで進めていくべきだろうという問題意識を持っております。

他方で,各家庭等まで送るのでなくて,図書館等にだけ送るという部分については,少し切り分けまして,今の運用を必ずしも厳格に維持するだけではない議論もあり得るのではないかと,そういう仕分けをした上で,「いずれにせよ」という段落を記載しているということでございます。

そういう意味で,ゼロベースということにはならないかと思いますが,今のものを当然動かせない,所与のものとして議論するわけではなく,その中でどういう方向で第三者を交えて議論を進めていくのか,ということだと理解しています。

【福井委員】ありがとうございました。その理解を前提にしてこの先の論点の中でちょっとまとめてコメントさせていただくことはあろうかと思います。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【前田座長代理】よろしいでしょうか。この今の点につきまして,私はこういうふうに整理する可能性が1つあるのかなと思いましたのは,現行規定の下で図書館側と出版側とで協議して行っている絶版等資料の範囲の確定については,24ページの上のほうに御紹介があります①から③の形でやっていると。そして4ぺージで説明がありますように,①は,現行規定の意味をするところを具体的に示したものであると考えられる一方,②,③で記載した留保,除外については,法律の解釈というよりは当事者間における運用上の配慮として定められたものであると考えられる。今後につきましては,各家庭まで送信することについては必ず②,③も取り入れる。それに対して,図書館に送る分については,②,③の留保・除外ということについては別に考えることもあり得る。こういうことが1つの整理の方法としてあり得るのかなと思いました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。では,先も長いですので,もし何か思いつきましたら,また後ほど御発言いただくということも可能ということで次に行かせていただきまして,5ページ目の下から8行目のところでございますけれども,「(中古本の市場との関係)」ということでありまして,6ページ目の上から十数行目までにつきまして御意見,御質問いただきたいと存じますけれども,いかがでしょうか。大体このような書きぶりでよいかどうかということでございますけれども。特段違和感がなければ,よろしいかと存じますけれども……。

【福井委員】福井です。では,連続になりますが,ここについて意見を申し上げさせていただきます。一読した限りですと,ⅰからⅲまでではむしろやや両論併記的に双方の立場が記載されており,ただし,ⅲに関しては,その後の※において疑義が呈されているということで,ニュアンスとしては,中古本流通ということは必ずしも考慮しない方向性を私個人は感じるところでした。現にその後なお書きで,運用の議論においては中古本の市場との関係を考慮することまで妨げられるものではないと記載しているということは,逆に言うと,法律上の議論としては権利制限の対象から除外されないという整理を感じさせるニュアンスなのかなと感じたのですが,やっぱりはっきりしないなと思ったところです。でも,これは,とても影響が大きな問題ですよね。もし中古本が入手可能であるから,よって入手困難資料ではないということになるのであれば,国会図書館が指摘しているとおり,大半の資料は送信対象でなくなる可能性があります。どこかで中古本の入手可能性というのはあるし,確認は非常に難しいでしょう。よって,ワーキングチームにおいて議論をする以上は,しっかり方向性を出したほうがいいんじゃないかというのが私の感ずるところです。いかがでしょうか。

【上野座長】ありがとうございます。では事務局からコメントを。

【大野著作権課長補佐】事務局としては,この資料は方向性を出していただくために論点を提示しているという位置づけで用意しているものですので,このままの記載で報告書になるというよりは,これに基づいてさらに議論を頂き,方向性をお決めいただきたいと,そういう趣旨でございます。

【福井委員】その御趣旨であれば了解です。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【田村委員】田村ですが,よろしいでしょうか。私も完全には定まっていませんが,頑張って議論してみます。福井先生から御示唆がありましたように,確かに中古本で出回っているかどうか確認が難しいということでした。そこで,必ずその案というわけではないですが,少なくともこう考えられないかと思います。確認が難しいということは,それは入手困難だろうという気がいたします。ですから,そこは最終的かどうか分かりませんが,少なくとも確認が困難な場合には入手困難という整理でよろしいのではないかと思います。それから先ですね,確認できるけれども,中古本でしかないという,その場合どうするかを,すみません,前回から悩んでおりまして,皆さんの御議論を聞いてからというふうに思います。以上です。

【上野座長】ありがとうございます。この点いかがでしょうか。

【大渕委員】よろしいでしょうか。この点は前にもはっきり申し上げたかと思いますがもともと中古本というのは,クリエイターにリターンが行かないような付随的なマーケットなものですから,これは基本的に関係がありません。

私はこの点がクリアに出ているのではないかと思っていまして,「なお」と書いてあるとおりで,そのようなものも排除はされないのですが,その程度にとどまって,基本的には中古本の点は考慮されないということだと思います。全く考慮してはいけないことはないということが「なお」に書かれているだけで,基本的には考慮しないということであり,国会図書館等が御懸念された点なども払拭されて,中古本があるから入手困難ではなくなるとか,そのようなことには関係ないということで,ほぼコンセンサスがあって,それをまとめられたのかなと思って,その書き方が「なお」と出ているのかと思っています。もう少しちクリアにするのであれば,それはそちらにしていただければと思います。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【福井委員】田村先生,大渕先生,ありがとうございました。実は私も,大渕先生がおっしゃったように,ある程度方向性を出そうとしたのかなと思って,そうであればクリアにというつもりで申し上げましたが,今,事務局からすると,これは論点の提示にすぎないという御説明もあったので,そうであるとすると,これはしっかり議論せねばならないなという思いがしたところです。ちょっと十分理解できていなくて恐縮なんですが,進行としてはそれはいつしっかり議論することになるのでしょうか。

【大野著作権課長補佐】まず前提といたしまして,前回までの議論を踏まえますと,中古本の流通状況は必ずしも考慮せず,権利制限の対象にしていいという御意見が多かったと理解をしておりまして,そのニュアンスを十分出しながらこの資料をつくっております。その上で,前回の議論では最後まで結論は決まり切っていなかったかと思いますので,その判断を今回いただきたい,そういう趣旨でこの論点整理をつくっているところでございます。

【福井委員】そうすると,議論する場は今日ということになりますね。

【大野著作権課長補佐】はい。

【福井委員】分かりました。では述べますと,先ほどの田村先生の御指摘,非常に鋭い御指摘だと思います。同時に,なお書きの上の※にも記載があったとおり,幅広いニーズに応える十分な分量が確保されていないことも多い,価格も流動的であるなどといったような事情を考えると,さらにそれを一歩超えて,中古本流通の現状があるということは入手困難性の議論においては影響を与えないという方向性をやはりこの場では出すべきではないか,そのように私は感じます。

【上野座長】ありがとうございます。いかがでしょうか,この点,ほかの先生方。

【生貝委員】私も今の福井先生の御意見と同趣旨かというふうに思うのですけれども,仮に中古考慮しようとすると,今,中古ものの市場というのは非常に様々なルートがあり,それこそ大手ショッピングサイトのセカンドハンドのコーナーですとか,あるいは,フリマアプリでありますとか,果たしてどこまでを確認すればよいのか,もっと個人的な売買がSNSでされているといったようなこともございます。

そして,さらに分量でいったときに,例えば5点以上出品されているのか,50点以上出品されているのか,あるいは,例えばフリマアプリで3日以上出品されていたら入手可能なのかですとか,これ,やはり入り込んでいくと物すごい迷路になるのだと思います。やはり私としても,著作権法が守ろうとしている利益は何なのかという原則論を念頭に置いた上で,除外するのであれば,クリアカットに除外をするというのが一番制度運用をしていく上でも現実的なのではないかと考えるところです。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。私は前回,中古本に関しては,権利者のほうがそれから利益を得ていない点は確かにそのとおりだけれども,他方において,図書館にとっては必ずしも入手困難と言えない場合があるので,そうすると,権利制限の必要性がどういうところにあるのかという問題も出てくるという問題があるという意見を申し上げさせていただきました。

今,皆様の議論を聞いて私が思うことといたしましては,ちょっと論点先取りになってしまうかもしれませんけれども,入手困難資料というものをどの範囲で各家庭までの送信を認めるかという点について,現行の厳格な運用を尊重しつつ,送信先を各家庭まで拡大していくという方針をとるのであれば,中古本が売られているからといって入手困難資料から除外する必要はないということでよろしいんじゃないかと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

【田村委員】田村ですけれども,もし私が消極的なほうにカウントされていて話が進まないなんていうことがあっては困りますので,私は白票ということで,皆さんの多勢に従いたいと思います。

【上野座長】ありがとうございます。大体そんなところでよろしいでしょうか。

それでは,(1)の論点につきましては差し当たり以上とさせていただきまして,6ページ目の真ん中にございます(2)の「補償金の取扱い」という点について御議論いただきたいと思います。この辺は前回もいろいろと御議論いただきましので,既に文章でも8ページ目の上のところまで記述がございますけれども,この全体について改めまして御議論いただきたいと存じますけれども,いかがでしょうか。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。考えられる選択肢の中で,私が思うこととしましては,アまたはエであり,少なくとも各家庭までの送信については現行の厳格な運用を尊重する。そのことを前提として,先ほど申しましたように,中古本があったとしても,入手困難資料の中に含める。そしてその上で,今度,補償金の問題についてどうかというと,現行の厳格な運用が尊重されるのであれば,権利者への不利益の程度は大きくないという判断ができると思いますので,補償金制度は少なくとも直ちには導入の必要性はないと思います。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。おそらくいろいろ御議論,御意見があるかと思いますけれども,いかがでしょうか。

【大渕委員】よろしいでしょうか。この補償金の点は,前回,これだけ思考実験できたことは大変よかったかと思います。これは,8ページにあるプリントアウトを認めるかという論点とワンセットになっているので,少し先走ってしまいますが,前回も主にあったのは,当時はプリントアウトという案があまり明示的に出ていなくて,ストリームオンリーだとやはり利便性の点で問題があるということでした。ストリームオンリーでない,利便性の高いものを入れるとなると,ワンセット的に補償金を入れて,ストリームオンリーでない何かしらに広げたいという,ワンセット論のため,補償金の取扱いというのはかなり脚光を浴びたかと思います。後ろのほうを見ると,ダウンロードでは影響が大き過ぎて,権利者のほうでも抵抗感があるということ等もありますので,ストリームオンリーではなくて,利便性を高くとすると,プリントアウトということになってくるかと思いますそして,プリントアウトだと,さほど補償金でもって賄わなければいけないほどの不利益はないということになりそうなのです。他方で私が一番思っていますのは,プリントアウトも含めて,限られた時間の中で最も現実的なアプローチをとらなくてはいけないということです。補償金制度を入れるとなると時間もかかってしまいます。私としては,プリントアウトが早く,来年にでもできるほうがよいと思っていますので,そうなると,後ろも手堅くプリントアウトにとどめ,補償金もなしというあたりが現実的路線であります。いろいろ議論はやろうと思えばできるのですが,やはり限られた時間で確実に成果を出すという点からすると,後ろでプリントアウトを認めるにとどめて,ここでは補償金なしというのが現実的な解かと思っています。

【上野座長】どうもありがとうございます。御指摘のとおり,送信の形態とも関連する問題かと思いますけれども,ほかの先生方,いかがでしょうか。

【福井委員】福井です。今の大渕先生の御意見とも重なるところが多いのですけれども,本来は,私もしっかりと補償金の議論を,権利者団体等が中心で組み立て,そして金額についても,従来の汗をかいただけばからしくなるような金額にならないように,しっかりとしたデジタル立国のための財源を政府に対して要請して,確保していただき,そうした補償金の下で利便性を高めていくことが真っ当な本丸であろうと考えています。

しかし,残念ながら,補償金は,構築するには時間がかかり,そのような議論の準備はこれまで行われてきませんでした。これは必ずしも権利者だけが責めを負うべき問題ではなくて,我々全体として,十分な議論は行われてきませんでした。

そうすると,この補償金の議論は,現在,なかなか現実的に短期間で進められないということであるなら,前田委員がおっしゃったとおり,厳格な運用を前提として補償金なしでの制度導入ということをまずは考えるのが恐らく最も社会の要請に従うことになるのじゃないかと思います。そして,そのことを前提として,中古品の市場は存在していても考慮しないという前田先生の御意見に私は賛成いたします。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。いかがでしょう,この点は。

【田村委員】田村です。前回,補償金積極派が3人くらいいたかもしれません。その3人目になります。前のお二人の御意見もよく伺いまして,おっしゃるとおりかと思います。そもそも,最終的には,福井先生と若干違う方向を目指しているのかもしれませんが。私は,前回も申し上げましたが,完全な逸失利益のような,福井先生もそこまでおっしゃっていなかったと思いますけれども,しかし,逸失利益に匹敵するような補償金は不要だろうと,思っているところです。そういう意味では,フルの補償金は導入する必要ないだろうと思っておりますし,また,今日,先ほどからお二人が御指摘なさったような論点は十分分かりますので,私も事務局の現在のこの案で賛成したいと思います。

【上野座長】ありがとうございます。ちなみに,ア,イ,ウ,エは一応選択肢ということでしょうかね。

【田村委員】すみません。では,今,議論の方向に賛成したいと思います。

【上野座長】ありがとうございます。

【福井委員】福井です。念のため,選択肢エに賛成いたします。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。茶園先生,お願いいたします。

【茶園委員】どうもありがとうございます。議論の方向というのはよく分かりませんが,それはともかく,今,緊急に対応をする必要があるということであれば,そして,補償金,制度を構築することが容易ではないということであれば,選択肢としてはエが妥当であると思います。ただし,その前の7ページに記載されているように,今後の国民の情報アクセスについて考えると,現状で利便性が十分であるとは言い難いと思いますし,さらにこれを高めて,国民の情報アクセスをより実質化していく必要があると思います。

そうなると,現状よりも対象資料を拡大し,また先ほど大渕委員がおっしゃったように,プリントアウトなり,送信形態も広げていくべきであり,そのためには,補償金を課す必要があると思います。

このように,国民の情報アクセスというものをより実質化するという点からしますと,2つ目のイコールフッティングの問題に関しても,物理的に図書館に足を運べる人と運べない人との間での不平等の問題は,これは不平等だということになると,現状の利便性が高くないものが維持されて,結局,物理的に図書館に足を運べない人は十分な情報アクセスが得られないということになります。そのため,実質的に適切な情報アクセスを全ての国民に対して確保するためには,補償金が必要であり,補償金があって初めて実質的なイコールフッティングになるのではないかと思います。

3つ目の図書館サービスの無償原則に関しては,まだよく分かっていませんが,この問題に関する文献によると,無償原則自体がこれまでもずっと議論がされてきたようですけれども,例えば少なくとも図書館サービスの基本的なサービスといいましょうか,物理的に図書館というものがあって,そこに足を運んで行って,図書館資料を閲覧する,このような。基本サービスが無償であれば,それに付加されるサービスを有償としても,無償原則を大幅に損なうということはないというように理解できるのではないかと,今のところは考えております。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。生貝先生,お願いいたします。

【生貝委員】ありがとうございます。私のほう,今お話ございましたとおり,5ページ目でいいます選択肢のところのまずはア,9ページ目ですね,中長期的に,8ページ目の利便性をどう拡大していくかということを様々なやり方との兼ね合いで考えていくという方向が望ましいのかと思います。

そのときに,中長期的に,あるいは最終的にどこを目指していくかということについて,少し追加の意見を申し上げさせていただくと,前回も少し申し上げたのですけれども,私,やはりアウト・オブ・コマース条項というのは,本来的には国際的な制度構築を見ていても,様々な文化施設が非営利目的でそれぞれが構築する使命を負ったデジタルアーカイブの中でアウト・オブ・コマースの作品をより円滑に使えるようにしていくといったような意味合いが強いところかと思います。

そうした観点から,例えば最初のヒアリングの際にも全国美術館協会様からネバー・イン・コマースの資料のより円滑な使い方をというふうな御意見もありましたとおり,本来はまさしく欧州のデジタル単一市場著作権指令8条から11条のように,様々な文化施設が,国立国会図書館以外もこの条項を活用できるようにしていくということが中長期的には私個人としては望ましいことだと思っているところです。

ただ,もちろんそこまで制度設計をし出そうとしますと,それが仮に補償金なのか,あるいは,その他の分野ごとの特性も含めた取扱いという,かなり入念な時間をかけた議論が必要になってくると承知しておりますので,私としては,特に今迅速に行うべき国民の知へのアクセスの拡大というところから,まずはアの方向性でということに関して望ましいものだと考えます。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。大渕先生,お願いいたします。

【大渕委員】少し追加しますと,今回目指しているのは,いわば最低限でありまして,プリントアウトまでできるなら,かなり大きく前進しますが,そのようなサービスについては補償金なしでいける範囲でやるということであります。前から出ているとおり,お金を払ってでももっと付加サービスを得たいというユーザーの人は多いかと思います。そのような意味では,ユーザーとクリエイター,権利者がWin-Winの関係に立ちますので,うまく両者をWin-Winに持っていける重要なツールが補償金であり,補償金を払うことによってより利便性の高い図書館サービスを受けられるようにするのは本当に重要な将来的課題だと思います。補償金を使っての非常に付加価値の高いサービスというのをまた今後も検討し続けるのですが,今回のものとしては,やむを得ずというか,補償金なしでもできる範囲でできるだけ頑張るということで,まずは確実に図書館サービスで,私としてはプリントアウトができればよいと思っていますが,その点で手堅く確実に成果を上げることが現段階では重要だと思います。ただ,将来的には議論を続けるべきだと思っております。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【竹内委員】よろしいでしょうか。竹内でございます。ここの部分でいうと,8ページのところの選択肢をどう考えるかいうのがまず1つ,今の論点になっているかと思いますけれども,そこについては,基本的には多くの先生方がおっしゃっているように,なるべく早く制度を進めるということをチョイスしつつ,今後の方向性についてさらに検討を広げていくということだと解しております。

ただ,ここでちょっと気になっておりますのは,諸先生方がおっしゃっておられるサービスの利便性を高めるということについて,現行の厳格な運用からちょっとでも出たら,それはすぐ補償金の対象という議論は少し違うのではないかという気がしております。と申しますのも,今日の議論の中でも,1ページ,2ページのところにあったと思いますけれども,現在の国立国会図書館と出版社等の権利者の方々が決めていらっしゃる除外手続等の部分について,今回,御提案があるように,第三者が入ってきちんと議論すべきだというところがあるということは,現行の制度が国民のアクセスと権利保護という観点から見て本当に公平かというところにやはり議論すべきことがあるのだということを含意しているのではないかと私は感じているからです。

それから,先ほど委員からも御意見がありました図書館における無料の原則等の問題でございますけれども,確かに現在の図書館の無料の原則というのは,紙の資料が図書館に蔵書として納められて,それを提供するということをベースとして,資料へのアクセス,情報へのアクセスについて経済的な格差を導入しないということで運用されてきているものであると考えます。法律的には図書館法で決められていることですから,公共図書館への適用ということになりますけれども,一般的に図書館の利用においてはこの原則というのは確立されているというふうに言っていいだろうと思います。

ですので,今回行われているような議論,つまり,付加的なサービスとしての電子的な提供という議論でいけば,確かにその部分は付加的だから,補償金等によって補償されるということはあると思うんですけれども,今後,もう紙の資料はないという状況が出てきた場合,つまり,出版物が全て電子になったといったようなときには,それを図書館がどう扱うのかというところが非常に大きな問題になってくるだろうと考えております。

ですので,今のところは電子は付加的なものということで議論されていると思いますけれども,電子オンリーになったときの図書館の在り方についての議論を,ここであまり強く規定してしまわないような御議論をお願いできればと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。いかがでしょうか。では,村井先生,お願いいたします。

【村井委員】「考えられる選択肢」で示された方向性でいいますと,先生方の御意見に賛成で,(ア)か,もしくは(エ)の選択肢がよいように思いました。

大きな方向性としては,対象を厳格に規定して補償金を導入しないという方向性と,一方で,対象を緩やかに規定して補償金制度を導入するという2つの方向性があるように思いましたが,対象を緩やかにして補償金を導入するという方向性は,今回改正を目指している31条1項1号の送信サービスに近づくような印象を受けました。確かに,趣旨や要件は異なっているものの,インターネットを通じて図書館資料にアクセスすることが可能となる点で,利用者にとっては重なる部分があるように思います。

しかし,31条1項1号の送信サービスのほうは,利用者の利便性を特に高めていくという側面があるように思いますが,一方で,こちらの31条3項のほうは,先ほどから先生方も御指摘されていた「国民の平等な情報へのアクセス」という趣旨が重要なように思います。そのような図書館の基本的な機能に関わる部分であると考えると,やはり利用者にとって無料でアクセスできるというのは重要なように思います。

ですので,差し当たり,補償金は導入せず,アクセスを保障するという方向性がよいように思いました。以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。

補償金につきましては以上でよろしいでしょうかね。

それでは,次の点に進ませていただきます。既に御議論していただいていますけれども,(3)の送信の形態について,8ページ目の(3)のところでございますけれども,この点いかがでしょうか。既に大渕先生からはプリントアウトにとどめるべきといった御意見がございましたけれども。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。私は前回ここの点については,ストリーミングに限るべきではないかということを申し上げました。その理由は,今回のペーパーにも書いていただいていますけれども,31条3項後段との関係が1つあることと,もう一つは,31条1項との関係も出てくるのではないかと思ったからでございます。これは事務局への御質問なんですが,仮に3項のほうでプリントアウトまでが可能な形での送信を認めるとした場合は,31条1項で,来館者に対して複製物を一部提供する場合においても,入手困難資料であれば,一部分という制限はかけない,かからなくなるという理解になるでしょうか。これが1点です。

もう1点事務局にお伺いしたいのは,1項のほうでは,調査研究の用に供するためにという要件があり,それから,営利を目的としない事業としてという要件があるかと思うのですが,3項で提供するときも,やはり図書館がやるのだから当然かもしれませんが,営利を目的としない事業として配信する。かつ,調査研究の用に供するために3項の各家庭までの配信ができるようにすると,こういうことになるという理解でよろしいでしょうか。以上です。

【上野座長】では,事務局,いかがでしょうか。

【大野著作権課長補佐】絶版等資料,入手困難資料,アウト・オブ・コマースにつきましては,現行規定上,閲覧の際の利用目的は必ずしも限定はされていないと思っておりまして,今回は,そこは維持しながら送信先を広げていくという方向での議論だと受け止めております。

このためで,各家庭などからアクセスするに際して,一定の目的に絞るということは想定されていなかったかなというふうに理解をしております。その前提でプリントアウトを認めるかどうかという議論をいただきたいという趣旨でございます。

また,ここでプリントアウト,個々の家庭でのプリントアウトを認めるという判断をするということになりますと,当然それを図書館におけるサービスとして受けることもできるようにするのがバランスのとれた対応だと思いますので,その点も意識をしながらプリントアウトを認めるかどうかという点の議論をいただければと思っております。

1項1号の議論は,まさに次回以降本格的にやっていただくわけですけれども,1項1号を送信に広げるときは補償金という話が出てきます。当然補償金の扱いも,こっちの絶版等資料・入手困難資料については,3項ないし新しい4項なりで補償金なくプリントアウトなりコピーできるということの整合も意識をしながら議論する必要があろうかと思います。

ただ,その際対象の資料の範囲が若干異なる可能性はあろうかと思っていまして,国会図書館がデジタル化して送信しているものと,そうではないがそれぞれの図書館で保管しているものというのは,若干のずれはあろうかと思いますので,そこも意識しながら1項の議論を進めていっていただきたいと考えております。

【上野座長】前田先生,よろしいでしょうか。

【前田座長代理】はい。ありがとうございました。

【上野座長】ほかにはいかがでしょうか。送信の形態についてでございますけれども。ブラウジング,印刷,そしてダウンロードという選択肢がございますが。

【生貝委員】特になければ,よろしゅうございますか。まさしく様々な形で,特に今般の改正等に当たっては,現行の厳格な運用を保ちつつ,そして権利者の利益を不当に損なわないということを前提として考えていく必要があるという前提を認識しています。

他方で,そのようなときに,まず1つは,こちらのたたき台のほうの今のコーナーの最後のところに,送信の形態というところで,8ページの最後のところで書いていたように,技術の進展等に柔軟に対応する観点から,できるだけ法律ではなくて政省令・ガイドラインで具体的な取組を定めるということに賛成でございます。

そうしたときに,できるだけ印刷はしたくない,紙は扱いたくないなといったようなことが,特定の世代ですとか,特定の専門分野にはあるんだろうと思います。僕はその1人で,つい最近まで自分の部屋にプリンターがなくて,政府の審議会の承諾書を郵送するために購入したということもございましたん。

いずれにしても,本来そういった紙代ですとかインク代といったようなものというのは,もっと様々な形で使い道を考えられてもいいのではないかというふうにも思いますし,例えば印刷か,ダウンロードか,あるいはストリーミングだけかといったようなことのほかにも,技術的には非常に様々な手段があるのだと思います。

例えば,第1回で御紹介させていただいた英国ブリティッシュライブラリーのBLオンデマンド,あそこでは権利制限部分に関しては特にDRM等は課していないようなので,英国法全体としてはないようなのですけれども,権利者からライセンスを受けてドキュメントデリバリーサービスをやるときに,DRMライトというアドビのアクロバットのバージョン10.1以降であれば無料で利用できるソフトウェアを利用して,暗号化された状態でダウンロードをして,そして一定期間ファイルを保存することができる。印刷は何回まですることができる。デジタル形式での認められた以外の複製はできないという形で,DRMをうまく使った形での対応というのも,かなり創意工夫を含めてしているようでございます。

まさにそういった仕組みというものを,関係者,権利者,出版社を含めて幅広く,これが最も望ましいのではないかというものを考えられるように少し幅広に考えていけるといいのではないかなと感じています。御参考までに。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。茶園先生,お願いいたします。

【茶園委員】私は逆に,自分が読もうという資料は,全てプリントアウトしようとする人間で,紙でないと読めない人間です。そのような人間からするとストリーミングだけというのは,研究や調査のために利用しようとする場合,サービスとして極めて不十分ということになると思います。

私のような人間も一定程度はいるでしょうから,先ほど大渕委員もおっしゃっていたと思いますけれども,ストリーミングだけではなくて,さらにプリントアウト,あるいはダウンロードが必要と思います。今,生貝委員がおっしゃっていた,ダウンロードにもいろいろなやり方があるということについては,私はよく知らないのですが,少なくともプリントアウトとダウンロードのいずれかは行うことができるようにすべきではないかと思います。

ただ,その場合に,全部ができるかと言われると,それはやり過ぎであると思います。例えば,今は入手困難資料であるとしても,将来において何らかの事情により商業的に利用されることになる場合も考えられますし,その場合に,全部のプリントアウト,あるいは全部のダウンロードデータが存在していると,それが利用の障害になることもあり得るように思います。そのため,プリントアウトあるいはダウンロードを認める場合に,31条1項1号の「一部」の解釈は再検討すべきと思いますが,ともかく,全部はやはりやり過ぎで,一部にとどめるべきだろうと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【生貝委員】あと,今の茶園先生の全部か一部かというところに関して,ちょっとこれ,御参考なんですけれども,ドイツでまさしく2013年改正で絶版等,アウト・オブ・コマースを公開できるという仕組みをつくっていると御紹介したんですが,あそこを見ると,特に法律上そういう規定が書かれているわけではないんですが,例えばダウンロードも,ページ単位ですとか,一定単位,つまり,実質的にスクリーンショットを1ページずつとるのと変わらないくらいであれば可能にする。ただ全部やろうとすると物すごく手間がかかるといったようなアーキテクチャで,このページとこのページとこのページはちょっと後でもしっかり読みたいというところだけ,技術的にもどうせスクリーンショットができてしまうんだからという形でダウンロードができるようにしたりもしているようです。

やはりダウンロードということに関して非常にいろいろなものがある。1冊全部なのか,一部なのか,あるいは,本当に確かにバルクで何十冊もダウンロードできるようにしてしまうということは,これは恐らく利用規約なりで,一定の配慮をしていく必要はあるのだと思います。まさにおっしゃったような意味での一部分,いろいろな単位の中での部分ですとか,実質的な用途というところも含めて考えていく価値があるのかなと思います。

【上野座長】どうもありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。田村先生,お願いいたします。

【田村委員】今のお話で少しよく分からないのですが,中古市場があった場合にも入手困難とするとか,多少微妙になっています。しかし,今,一応アウト・オブ・コマースが前提であるとすると,全部ではなくて一部というふうにこだわる必要はあまりないのではないかと思います。やはり私も含め,研究者のような者は,割とフルで全部読まないといけないと思うような本がかなりありますので,あまり部分にする必要はないのではないでしょうか。また,今,部分とおっしゃっている方も,ストリーミングについては恐らく制限するおつもりは全くないんでしょうから,何でプリントアウトのところだけ絞るのかがよく分からないです。ダウンロードですと,私はどちらかというとダウンロードもパスワード付きか何かで認めていただきたいと思います。もしダウンロードを認めるときには,その後のアウト・オブ・コマースじゃなくなったときの市場への影響などを考えますと,いろんな制限というのもよく分かるんですが,プリントアウトしたものはそれほど市場を害さないような気もするので,あまりプリントアウトを認めるといったときに,特に部分という制限はなくてよろしいのではないかというふうに私は思っております。

【上野座長】ありがとうございました。ほかには。大渕先生,お願いします。

【大渕委員】よろしいでしょうか。今やっているのは絶版等資料のほうの話なので,もともと一部だとか,そのような話ではなかったのに,先ほどどなたか言われたとおりで,プリントアウトになったら急にここで突然一部が出てくるのには少し違和感があります。ダウンロードだとまた補償金をつけないととんでもないということになるのですが,プリントアウトだけなら,そのようなことを言われずに,研究なり何なりに必要なものができる範囲にとどまるのだろうと思って,プリントアウトというのを支持しています。やは紙というのはよくできているもので,紙のプリントアウトにとどまる限りはさほど権利者には影響が大きくないと思います。私はダウンロードも今後,先ほどのようにプロテクトかけるなどして利便性をプリントアウト以上に高めていくべきだと思いますが,当面の問題としては,現実的にはプリントアウトだと思っております。紙でのプリントアウトって,やっぱり紙でうまくできていて,自然の歯止めがかかって,ある程度以上は権利者に害が及ばないようになっています。研究その他の必要性からは,せっかくプリントアウトできるのに,また半分しかプリントアウトできないといういうのは不便ですので,あまりそちらの議論にしないほうがよいと思います。1号というか,あちらのほうはまた別途のもともと一部という問題があるので,それも私は補償金をかませることによってなるべく緩和していくべきだと,利便性の観点から思っているぐらいなので,プリントアウトにとどまる限りはあまり一部というのを強調するのはいかがかという気がいたします。

【上野座長】どうもありがとうございました。今の点を含めましていかがでしょうか。では,事務局からお願いします。

【大野著作権課長補佐】一応,確認的に事実関係だけ申し上げておきますと,現行法におきましては,図書館に行けば絶版等資料について全体が見られるということになっております。他方で,図書館でそのコピーをもらおうとすると,一部分のコピーだけがもらえるようになっております。そういう形で,閲覧とコピーをもらうという場面で若干の差はついているというのが現行規定の取扱いであり,それを前提に前田委員の御質問がなされたのかなと理解をしております。

ただ,今回の制度改正に当たって必ずしも現行規程の取扱いに縛られる必要はありませんので,その点はニュートラルに御議論をいただければいいのかなと思っております。

【福井委員】福井でございます。意見が全部,一部について,いろいろお伺いして,いずれも非常に引かれるところではあるのですが,私はここについては一部分でもやむなしかなと感ずるところです。

1つは,やはり補償金がない中での早急な導入を行おうとしているということ。これを考えたときに,一部分という歯止めは私には理解できるところです。ただし,もちろん一部分の意味合いにおいては,ばからしい運用にはならないような,そういう整理は必要かなと思います。短い論文の半分だけなどというような運用を正当化するような,そういう議論の整理はよろしくないわけで,すが,大きく言えば一部分。その代わり,生貝委員がおっしゃったとおり,今,プリントアウトした紙が大事だよという方もいれば,むしろ紙であるよりは,部分でもいいから何らかのデータでという方もいらっしゃると思います。データの形式に関しては,私もこの場で自信を持って申し上げることはできませんので,事務局おまとめのとおり,政省令やガイドライン等で,現場においてこれであれば各ユーザーにとっては最低限の利便性は確保できるかなというものを探っていただく。こういうことでよろしいのではないかと感じました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。では,村井先生,お願いいたします。

【村井委員】この点については,先ほどの田村先生の御意見に賛成なのですが,対象となる資料をかなり厳格に制限できるとすれば,原則的には権利者の市場に影響を与えないということで,一部分に限らず,なるべく広く利用を認めることが可能となるように思います。ただ,特に現在では,例えば一度絶版となった資料が再販されるなどの可能性があり,どうしても市場で流動的な部分が残るとすれば,やはりダウンロードを完全に可能としてしまうと後の市場に影響を与える可能性があるため,例えばIDやパスワードを何もかけずにダウンロードを認めるというところまでは難しいように思います。

ただ,プリントアウトについては,この資料にもまとめていただいているように,必ずしもデータが不正に拡散するような懸念が大きいわけでもなく,また,利用者にも多様な人がいて,機器などを使うことが難しいために紙媒体にプリントアウトしたものを読みたいという要望もあるように思いますので,国民全体のアクセスの確保という観点から考えると,やはりプリントアウトもできたほうがよいのではないかと思いました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。そうしますと,送信先が各家庭の場合と各図書館の場合とがありますけれども,特に後者については,現状の31条3項後段の限定をどうするかということも含めて検討が必要ということになるのかもしれませんね。

それでは,同じ複製の取扱いということに関係しますので,次の第4点目に進ませていただきまして,9ページ目の上の(4)でございますが,受信者側での複製の扱いということで,私的使用目的に限られない場合もあるのではないかという問題提起でございますが,この点はいかがでしょうか。

31条で複製を認める以上は,それが私的複製に当たらなくても許されるということになるのだろうと思いますけれども,この点について,このような書きぶりで差し支えございませんでしょうか。では,茶園先生,お願いいたします。

【茶園委員】今,上野座長がおっしゃったことでよろしいと思います。受信者側が私的使用目的であるのかとか,35条の適用を受けることができるかということは判断できません。そのことも考慮すると,対象が絶版等資料であり,図書館から送るという,そういう非常に限定された場合ですので,30条とか35条の適用がない場合でも,許容するということでよいと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【大渕委員】先ほどプリントアウトを認めたということとも関連してきますが,単なるストリーミングではなくて,見た人が,一部か全部かは別として,最後には複製するということが前提になっているのであれば,ある意味,一連の流れの一番しっぽの部分なので,別にそれが30条だろうが,企業内複製だろうが,関係ないと思います。一連の流れの一番しっぽの部分の話を明確化というか,ある意味,これは当然想定されていると考えております。ストリーミングだけというのであればまた別かもしれませんが,私としては,プリントアウトを認めるということだったら,それは当然入ってくるという点もあるかと思います。いずれにせよ,肯定するということで大変結構だと思います。

【上野座長】ありがとうございます。田村先生,お願いいたします。

【田村委員】私も皆さんと意見が同じです。もともと私的複製と趣旨が違います。私的複製のほうは,要するにアウト・オブ・コマースと関係なくもちろん著作権を制限するものですから,著作権者に与える影響を勘案して,家庭内で,これに準じて限られた上での限定的なときに使ってくださいねという,そういう趣旨の規定だと思います。

ところが,今回のは,むしろ,入手困難というところに着目して,入手困難だからこそ権利者に与える影響がないという,そういう整理になっておりますので,30条に縛られる必要はないだろうということで,皆さんの御意見に賛成です。

【上野座長】ありがとうございます。よろしいでしょうか。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。ここの点について,もちろん私的複製だけでは足りないとは思うのですが,調査研究目的に限定するということは考えられると思います。以上です。

【上野座長】ありがとうございます。そうですね。現在の31条3項後段には,「調査研究の用に供するために」という文言がございますけど,それ自体も検討の対象になり得るかもしれませんね。いかがでしょうか。

特段よろしいでしょうか。

それでは,先に進ませていただきまして,次は(5)でございますけれども,国会図書館から送信される入手困難資料に係る公の伝達権についてでして,これも細かい話ではございますけれども,先生方,御意見いかがでしょうか。現状の31条3項も公の伝達をできることが前提になっているというふうに解されているところですけれども,今回もし送信先を拡大するのであれば,これに伴いまして,その点も改めて規定する必要があるかどうか。さらには,目的などで限定する必要があるかといったあたりが課題になるかと存じますけれども。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。まず図書館等において公の伝達ができることは当然のことだと思います。その上で,図書館等以外の場における公の伝達を幅広く認めるべきかどうかという点についてなんですが,これは,さっきから1項との関係ということに私が,こだわってしまっているんですけれども,1項のほうでは図書館等が提供等できるのは,あくまで営利を目的としない事業としてであることとの平仄を考えると,図書館等以外の場,例えば公民館における公の伝達を認めるんだけれども,それはやはり非営利・無料で行う場合,営利を目的としない事業事業として行う場合に限るべきではないかと思います。

以上です。

【上野座長】ありがとうございます。この点はいかがでしょうか。

【大渕委員】よろしいでしょうか。私は,今前田委員が言われたところに賛成であります。31条全体が先ほどのような前提で組まれていますので,今回それを広げるとなると,また短期にできるような,あくまで図書館スキームの中で非営利等々の中で組まれているものなので,広げるかどうかというのはまた大きな立法政策課題になるかと思います。この短期の中でやるというのであれば,大きな枠組みは崩せないのではないかと思います。その中でバランスがとれて,先ほどのようなところが展開できるものですから,そこを崩すとまた全体のところをゼロからやり直さなくてはいけなくなってしまうので,そこのところは手堅く,現行の大きな枠組みを維持した上での議論のほうがよろしいかと思います。

【上野座長】ありがとうございます。茶園先生,お願いいたします。

【茶園委員】先ほど,受信者側の事情は考慮せずに,これを認めるべきと申し上げましたけれども,そうだとしますと,受信者のところで,情報アクセスを確保することを超える行為が行われるというリスクもありますので,ある程度の制限をかけておく必要があると思います。(5)については,非営利,無料といった制限を公の伝達に関して設けるべきであると思います。

それとち,すみませんが,(4)に戻っていただいて,これについても同様に,受信者側で複製がされて,その後に予想外の利用が行われるリスクがあり,それを防ぐためには,何らかの制限をかけておく必要があると思います。前田委員は調査研究とおっしゃっていましたけれども,その制限が適切かどうかについては,調査研究は極めて広い範囲に及ぶことから,やや躊躇があります。ただ,代替案を思い当たらないので,今のところは,調査研究という要件を定めておくことが適当ではないかと思っております。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。いかがでしょうか。

【大渕委員】今の点よろしいですか。先ほど申し上げた点にも関わるのですが,営利,無料等の枠組みを残すというのと同じように,図書館の場合には基本的に調査研究的なものを中心に考えていることは間違いありません。先ほど言われたように,今回改正してみて,とんでもないところに使われたのに野放しになるということになっても困りますので,やはり何らかの絞りをかける必要があると思います。逆に言うと,きちんと絞りをかけられるからこそ今回のように拡大が安心してできるということがあります。そのような意味では,ベストかどうかは別として,調査研究というのは1つ考えられる,現行でもありますので,図書館利用に関しては,当然の前提のようなものだとは思いますが,何か絞りをかけておいたほうが安心だと思います。

【上野座長】ありがとうございます。では事務局から。

【大野著作権課長補佐】9ページの(4)のところです。先ほどちゃんと説明したかどうかちょっと自信がないんですけれども,(4)の2段落目の3行目あたりから記載をしておりまして,あくまで自ら閲覧するために複製する限りにおいては,権利者の利益を不当に害さないので,その限りにおいて認めるべきという御提案をさせていただいております。そういう意味で,自ら閲覧することを超えて別の目的で使われるということは既に防げているのではないかと思っておりまして,この自ら閲覧するという縛りを,さらに調査研究目的などの目的で絞っていくのかどうかが論点になろうかと思っております。

【上野座長】ありがとうございます。受信者側の複製については,調査研究目的を課すかどうかが問題になり,受信者側の公の伝達については,非営利目的という限定を課すかどうかというあたりが問題となりますでしょうかね。この点いかがでしょうか。

【池村委員】池村ですけれども,よろしいでしょうか。私としては,今大野さんが説明した「自ら閲覧するために」というところでいいんじゃないかなという気がしています。1項の1号にせよ,3項にせよ,複製の主体が図書館であることを前提に,調査研究の用に供するためという要件がついているわけですけれども,ここでいう受信者側は,複製の主体は受信者ですので,そこは必ずしも取扱いを一緒にする必要はないんじゃないかなと思いますし,「自ら閲覧するために」というところで限定できているんじゃないかなと思いました。

以上です。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

いずれにしても公の伝達が31条によって許されないとしても,例えば適法引用に当たるということであれば,32条1項によって,たとえ営利目的でも許される余地があるということになるのでしょうかね。

【大野著作権課長補佐】それはそのとおりでございます。

【福井委員】福井です。公の伝達権については,本来で言えば38条3項全体の見直しの議論として非営利・無料での許容を議論すべきではないかなと感ずるのですが,ただ,今回の31条に対象を絞って,そういう場合での公の伝達を認めるということ自体に異論はありません。ただ,また条文が長くなっちゃうな,という点がちょっと気が重いというぐらいでしょうか。

以上です。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。

それでは,6番目に行かせていただきまして,9ページ目の下ですけれども,「大学図書館・公共図書館等が保有する入手困難資料の取扱い」ということで,最後の10ページまでの部分に関しましていかがでしょうか。

国会図書館というのは網羅的に常に資料を集めていることから,「求め」というのは常にあるというふうに言える見れるのかどうかというところですとか,あるいは「複製物を提供する」という文言になっておりますけれども,これは送信を伴うような場合やクラウドにアップするような場合も含むと解釈できるかどうかといったようなことが問題になるかと思いますけれども,いかがでしょうか。

【福井委員】福井です。口火を切らさせていただきますと,この結論自体には異論がなく,ハブとして全国的な共有を図る場所としてNDL,国会図書館はふさわしいと思います。

ただ,今回,対象は図書館等ですよね。そこには理念上,博物館,美術館が含まれるわけですが,今回の議論では比較的議論の中心からは外れているような印象をずっと受けております。実際には入手困難資料の博物館・美術館におけるデジタル化も認められ,また,その他の博物館・美術館を含む図書館等との共有ということも,潜在的な需要は極めて高いように思いますが,そのハブとしても現実に国会図書館が機能できるかというと,恐らく図書と,それに類するもの以外についてはハブとしては,現状なかなか機能できていないし,今後も難しいのではないかなと思うところです。現に国会図書館の図書館送信サービスの参加館の中には若干の博物館,美術館も入ってはおりますが,ほとんどが全国の図書館です。そういうことを考えますと,この結論そのものに異論はないのですけれども,ハブに関してはさらなる検討も必要ではないかなと感じたところです。

とりあえず問題提起のみで,以上です。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【生貝委員】生貝です。まず,今福井先生がおっしゃったハブというものを国立国会図書館以外も含めて考えていくということは,最初に申し上げた国立国会図書館以外も主体としてどのように考えていくのかということと深く関わります。例えば全体に広げるのは時間がかかると認識しているのですけれども,例えばですが,政令指定で,国立国会図書館以外もそれに類することができるようにするというふうにいったような,少しずつの進め方というのはもしかするとあり得るのかなというふうにも考えたところが1点です。

それから2点目は,まさにこれ,お書きいただいた全体的な方向性というところについて賛成でございます。まさにお書きいただいているとおり,大前提として,国立国会図書館すら持っていない資料ということで,多くが地方の郷土資料をいかに広く全国に発信していくかというふうな目的であり,または,本当に過去の,私自身も何度か使ったこともあるのですけれども,やはり国会図書館でも,昔のコレクションですとか,号の一部が欠けている,けれど,どこかの大学図書館にあるといったようなことがしばしば,特に昔の本に関してはやっぱりありまして,それ全体として調査研究の用に資することができるというのが知識基盤としても大変重要なのだろうと思います。

今挙げた例などは,これは権利者の利益を不当に害するということとは本当にほど遠い場所にあるものだと認識しておりますので,少なくとも書籍分野に関しては,網羅的なコレクションの主体としての国会図書館の役割というものを念頭に置いた制度設計が行われるのが望ましいのではないかと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。やや文言解釈的なところも問題提起されているようですけれども。こちらの方が御意見をおっしゃりにくいかもしれません。

よろしいですか。もしこの場で特に御発言なければ,お時間のこともありますので,先に進ませていただいてよろしいでしょうか。

では,これにて今日の議題1を終わらせていただきたいと存じます。事務局には,本日の議論を踏まえまして,本課題に関するワーキングチームとしての取りまとめ案を御作成いただければと存じます。もちろん委員の先生方には次回の会議の冒頭で改めまして内容につきまして御確認いただき,必要に応じて御議論いただきたいと考えております。

続きまして,議事の2でございますけれども,図書館資料の送信サービスとして,31条1項1号関係について御議論いただきたいと存じます。参考資料3というのがございまして,これは以前にお配りしたものと同じでございますけれども,3ページ目の(2)の図書館資料の送信サービスについて,31条1項1号関係というところがございます。前回はこの点に関しまして御議論いただく時間があまりございませんでしたので,今回改めて幅広く御意見を頂戴したいと考えております。

特に送信の形態,補償金制度の在り方,あるいは主体となる図書館等の範囲など,前回までに御議論が特にされていない点を中心に御意見,御質問等がございましたらお出しいただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。

こちらのほうは,絶版等入手困難資料に限らない図書館資料の送信ということになりますけれども……。31条1項1号のほうですけども……。既に資料にもいろいろと選択肢は示されているかと存じますけれども……いかがでしょうか。特に送信の形態ですとか,補償金制度,そして主体の問題ということでございますが,いかがでしょうか。はい,では茶園先生,お願いいたします。

【茶園委員】どうもありがとうございます。この31条1項1号についても,先ほど31条3項について述べたのと同じようなことです。送信の形態については,送信も認めるほうがよろしいと思います。このように今以上に利便性を高めるべきであり,そうであれば,やはり補償金を認める必要があるのではないかと思っております。

そして,補償金制度を構築するのが直ちに難しいということであれば,その場合にはストリーミングだけを許容するということにならざるを得ないのかなと思っております。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。いかがでしょう,今の送信の形態に関しましては。では生貝先生。

【生貝委員】まずこちら,様々,多くの論点があると思うのですけれども,議論の下敷きとして,主にこのサービスがどのような主体によってどのような著作物を対象にして行われることになるのかということは,ある程度念頭に置いて制度設計を進める必要があるんだと思います。

といいますのも,正直なところ,例えば個人的なイメージとなりますが,これは外国の取組などを見ていましても,いわゆる普通の単行本など,そういうところに関してはほとんど用いられないのではないかと思います。ノンフィクションですとか,あるいはある種の専門書といったようなところも含めて。

といいますのも,既にこのコロナ禍で,ちょうど先日も新聞記事で図書館からの書籍の郵送貸出サービスというのが行われているのを紹介されていましたし,最近ですと,東大ですとか,幾つかの大学図書館も来館困難者に関して本をそのまま送ってしまうといったような貸出の仕方というのがかなり増えてきてはいるようであります。

そういったときに,実際問題180円で本1冊というのは,よほど重くないと送れますので,じゃあ,このデジタル送信サービスがどういうときに利用されることが多いのかというと,1つは,本当に急いでいて,どうしてもコピーがすぐに必要だといったような場合,こういったようなものはどちらかというとメディア関係者ですとか,そういったようなプロユース向けの方々というのが恐らく主な顧客になってくるのだろう。そして,そこで生じる手数料というのも,基本的にはスキャンの手数料と,それから,ほとんど人的サービスの世界でありますので,これは恐らく20ページ,30ページでもそれなりの金額にはなってきますところ,本当に急いでいるときにだけ使うといったようなことが多いのだろう。あるいは急いでいなければ,アマゾンで1円ですとか,100円ですとか,そういうところ含めて売っている中古を購入するほうが合理的だということも多いだろうと思います。

それから,もう一つの用途としては,やはり諸外国を見ていても,大学図書館の貸出不可の雑誌類であります。大学図書館は,書籍は貸出ができるのですが,先生方御承知のとおり,雑誌類は貸出,館外持ち出し不可でございます。そういうときに,館に来てコピーをする代わりに,デジタルでもメールで限定的に送ってあげるといったようなことを前提としている。大きくはこの2つの市場があるのだろうなと考えているところです。

そうしたときに,例えば仮に補償金を導入するといったときに,金額そのものというのは恐らく法律そのものに書き込むものではない可能性も高いと思うのですけれども,果たして公益ですとか,あるいは目的というところに関して,全く同じ扱いというのが望ましいのだろうか。そのあたりも含めて考えていく必要があるのだろうと認識しています。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。大渕先生,お願いいたします。

【大渕委員】先ほどの入手困難資料のほうでは,補償金は課さない代わりに,現実的にという話をしたのですが,こちらのほうでは,補償金も迅速に進めて,かつ送信の形態も,ここだとファックス送信,メール送信,ID・パスワードに管理されたサーバーへのアップロードということで,先ほどの入手困難資料というのは,入手困難資料という別の理由があるからプリントアウトぐらいまではいけそうなのですが,こちらはやはり補償金と組み合わせないとなかなか利便性の高いサービスは苦しいかと思います。補償金だから時間がかかると思わずに,これをどのタイミングで出すかというところにも関係してくるかとは思いますが,これは単発の補償金の形になっていて,そう時間がかかるような話でもないのではないかと思いますので,迅速に補償金とワンセットできちんと利便性が高いサービスを提供するようにすべきだと思っております。

【上野座長】どうもありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【前田座長代理】前田です。よろしいでしょうか。ちょっと先走ってしまうかもしれませんが,この1項の論点に関しては,下に書いていただいている電子出版等の市場との関係が非常に重要な問題ではないかと私は思います。電子出版等の市場を阻害しないような担保が必要ではないかと私としては思うのですが,例えば過去の雑誌に掲載された論文が論文単位で電子市場で購入できるという場合が結構今は多いと思うのですが,その場合は,電子出版等の市場との関係からすると,1項の各家庭までの配信が許されない,今回の1項の拡大の対象にならないとするべきと思いますが,そういう理解でよろしいのでしょうか。もしそういう理解でよろしいのであれば,その点が今度は補償金の要否に影響してくる可能性があるのかなと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。今の点はただし書きの内容とも関係してくるのかもしれませんね。また,ただし書きが,従来の複製にもかかるのか,それとも新たに対象となる送信のところにのみかかるのかということにも関係しますでしょうかね。今の点も含めまして御意見ございましたらお願いしたいと存じます。

次回は,今回と同じように論点の整理文書をつくっていただくことになるかと思いますけれども,今までの御議論で大丈夫ですかね。

【大野著作権課長補佐】今日は時間も長くなっておりますので,会議後,改めて御意見があれば,メールなどでいただくということにさせていただければと思います。次回までかなり時間がありますので,追加で御意見があれば提出していただき,それを反映した上でとりまとめ案をつくりたいと思います。

【上野座長】では,また御意見がありましたらお寄せいただくということで,最後に(3),同じ資料の4ページ目の下でございますけれども,(3)のその他関連する課題ということで,一部分,要件の取扱いですとか,その他幾つかの点がございますが,この点に関しまして何か御意見,御質問ございましたら,いかがでしょうか。図書館等の範囲ですとか,小中高の学校図書館どうするかといったような点もありますし,また「一部分」というのも大きな問題で,すぐには解決できなくても,課題になろうかと思いますけれども,いかがでしょうか。

【生貝委員】ほかにいらっしゃらなければ。一部分要件というところに関しては,前回も少しだけ論点出しをしたところでありますけれども,諸外国を見ていても,ドキュメントデリバリーのサービスに関しては,例えば1書籍から1チャプター,2チャプター,あるいは10%,20%ないしは1論文,2論文といったようなある種の分量というものを,ほかの先生たちがおっしゃった,まさしく市場流通単位を念頭に置きながら考えているところであり,電子書籍市場との競合の有無というところも含めて,一般的な図書館での複製とは違った分量が,これを法律に書くのか,あるいはガイドライン等で示すのかということは別としても,考慮されてもよい余地があり得るのかなと感じています。

そして,その上で,諸外国を見ている限りですと,そういったごく小部分のデジタル送信というところに関して言えば,補償金を設けている国というのは,私が知っている限りですと,ドイツと,それから,もしかするとスイスがやっているくらいかなと。本当に分量を区切った上ででありますけれども,米,英などでは,ハーバード,ケンブリッジ等の例も紹介いたしましたけれども,厳密な運用というのは難しいのですけれども,特に非営利のところに関しては,あくまで郵送や複製の代替で,学術資料が事実上の中心だということで,補償金ということは入れずにやっている。

もちろん教育のほうは,多くの国で様々補償金等あるわけですけれども,一番最初のときに竹内先生がおっしゃったことにも近いかと思うのですけれども,場合によって,しっかりと企業さんのユースですとか,ある種の営利的なユースですとか,そういうところからはしっかりとある種のECL代わりの補償金といったような仕組みはあり得ると思いますが本当にごく限定的な,これまでの枠組みと大きく変わらない部分に関しては,各大学ですとか,各小規模の図書館等で課金システムを設けることのフィージビリティというところを含めて,分けて考えることも一案なのではないかと感じています。

差し当たり以上です。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

特にこのおまとめで差し支えないようでしたら,一応お認めいただいたということでよろしいでしょうかね。

【福井委員】福井です。今の議論の中に図書館等の範囲についても含まれると考えてよろしいでしょうか。

【上野座長】はい。

【福井委員】図書館等については,前回も学校図書館,小中高等を含めない理由はないのではないかということを申し上げたところですが,これについては再度申し上げておきたいと思います。もちろん授業の一環と言えるような利用については,現行法でも35条で複製や送信が行える場合もあるでしょう。しかし,そうでない場合,31条でこれまで私たちが時間をかけ,ユーザーの利便性や,権利者の保護,図書館の使命について議論していた多くの事柄が,このままでは学校図書館には全くその恩恵が及ばず,当てはまらないということになってしまいそうです。ですが,学校図書館においても,単に授業の補完だけではない,児童や生徒の健全な教養を育成するというような目的のための多くの役割があるはずであり,また我々の成長過程においてその果たす役割は絶大と言っても過言ではないと思うんですね。その学校図書館を,しっかり図書館等として位置づけることを考えていくべきじゃないかなと思います。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。今の点も含めまして,何か御意見ございましたら,いかがでしょうか。よろしいですか。

それでは,以上で全体の御質問をいただいたということで,本日はこれぐらいにしたいと存じます。最後に事務局から御連絡事項等ございましたらお願いします。

【大野著作権課長補佐】本日は,大変活発に御議論いただきまして,ありがとうございます。特に入手困難資料につきましては,細かい論点も含めて御議論いただき,おおむね認識共有が図れたかと思いますので,今日の議論も踏まえて,とりまとめ案を作成したいと思います。

また,入手困難資料以外の論点につきましては,次回整理をした上で,より深い議論をいただくということにしておりまして,次回まで1カ月弱時間がございますので,今日言い残した御意見などあれば,幅広にご提出いただければありがたいと思っておりますので,よろしくお願いします。

日程につきましては,既に御連絡しておりますが,10月26日,月曜日の15時からを予定しております。詳細はまた御連絡いたしますので,よろしくお願いいたします。

【上野座長】それでは,第3回ワーキングチームはこれにて終了させていただきます。

本日も長時間にわたりまして,どうもありがとうございました。

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