法制度に関するワーキングチーム(第3回)

日時:令和7年2月21日(金)

10:00~12:00

文部科学省(東館)3F2特別会議室
   (オンライン併用)

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)海外における権利執行の課題について
    2. (2)令和6年度法制度に関するワーキングチームの検討経過等について
    3. (3)その他
  3. 3閉会

配布資料

資料1
出版権登録制度におけるプライバシーに関する情報の取扱いについて(451KB)
資料2
令和6年度法制度に関するワーキングチームの検討の経過等について(案)(139KB)
参考資料1
第24期文化審議会著作権分科会 政策小委員会 法制度に関するワーキングチーム 委員名簿(125KB)
資料2について以下の通り了承されました。
資料2
令和6年度法制度に関するワーキングチーム検討の経過等について(178KB)

議事内容

【早稲田座長】では、定刻になりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会 政策小委員会 法制度に関するワーキングチーム第3回を開催いたします。本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

委員の皆様には会議室とオンラインにてそれぞれ御出席いただいております。オンラインにて参加されている皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開にするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【早稲田座長】異議がないということで、では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴をいただくこととします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。配付資料の確認をさせていただければと思います。本日の配付資料は次第のとおりとなります。対面で御参加の委員の方で、もし不足などがございましたら、近くの事務局職員にお声がけいただければと思います。

資料の確認は以上です。

【早稲田座長】ありがとうございました。

それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(3)までの3点となります。

まず、議事(1)海外における権利執行の課題についてに入りたいと思います。

本議事は前回に引き続いての議事となりますが、前回のワーキングチームにおいて、出版権登録制度におけるプライバシーに関する情報の取扱いについて御議論があったことを踏まえ、改めて事務局にて考え方を整理されたということですので、それに沿って御議論いただきたいと思います。

それでは、事務局より資料1に関して説明をお願いいたします。

【三輪著作権課調査官】事務局でございます。それでは、資料1を御覧ください。「出版権登録制度におけるプライバシーに関する情報の取扱いについて」という題としております。

最初の枠囲みでございますが、前回のワーキングチームで、出版権登録制度における自然人の氏名・住所といったプライバシーに関する情報の取扱い(登録の要否・是非、公示の是非)について、どのように考えるべきか。また、登録制度の目的と著作者・複製権等保有者のプライバシーの確保を両立させつつ、訴訟等の実務において不都合が生じないようにするための方策としてはどのような方法が考えられるかといった点を御議論いただいたところでございます。

まず、1ポツといたしまして、前回の本ワーキングチームにおける議論の内容をまとめております。

(1)実際の氏名・住所への登録を求めることにつきましては、出版権登録において著作者や複製権等保有者の氏名・住所の登録を不要としても実害は生じないのではないかといった御意見をいただいた一方で、登録自体を仮名や代理人の住所で可能とした場合、虚偽申請での悪用や、個人の特定として十分かという観点での懸念があるのではないかといった御意見をいただいたところでございます。

また、(2)実際の氏名・住所を記載した書面の交付・閲覧を受けられる者の範囲については、第三者に対して著作者や複製権等保有者の氏名または住所が開示される可能性が残るとすれば、出版権登録が積極的に行われることは見込めないといった御意見や、著作物の利用許諾を得ようとする場合は利害関係ありと判断されるとすれば、利害関係を要件とする意味は乏しいのではないかといった御意見をいただいたところでございます。

また、(3)その他の意見といたしまして、不動産登記制度における同種の措置に関する議論も参考となるのではないかといった御意見や、何を登録事項とすべきかという点と、閲覧・交付の際に登録事項記載書類等に何を記載すべきかという点とは別の論点であり、区別して検討すべきではないかといったような御意見をいただいたところでございます。

こうした御意見を踏まえまして、前回から改めて整理を加えまして、以下、事務局からの御提案として改めて記載させていただいております。

まず、2ポツといたしまして、出版権登録制度の今後の方向性について、(1)他の法制度における対応例を記載しております。

次のページに参りまして、前回のワーキングチームにおきましては商業登記制度における制度を御紹介させていただいておりましたが、今回は不動産登記制度において設けられております「登記事項証明書等における代替措置」を御紹介させていただいております。

この制度について概要を申し上げますと、まずアのところですが、不動産の登記記録に記録されている自然人の方の住所が明らかにされることにより、人の生命または身体に危害を及ぼすおそれがある場合等に該当するときには、その者からの申出により、登記事項証明書等にその者の住所に代わって「公示用住所」というものを記載する措置でございます。

公示用住所は、下のイにございますように、申出人と連絡を取ることのできる者の住所または営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地とされております。

このような申出がありました場合、下のウのところですが、申出に係る御本人の住所に代えまして公示用住所を記載する措置を、登記事項証明書等において講ずるとされております。

代替措置が講じられていない登記事項証明書の交付の請求が可能となりますのは、申出人御本人と、その相続人に限られております。

このような制度を踏まえまして、(2)の論点でございますけれども、「登記事項証明書等における代替措置」を参考として、出版権登録制度においても、以下のような措置を講じることとしてはどうかとさせていただいております。

まず、アの措置の概要でございますが、まず現状と同様に、登録自体は実名(本名)及び実際の住所により行うこととしつつ、御本人の氏名または住所が明らかにされることによって、その方が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合等に該当する場合には、申出があれば、その氏名及び住所に代わって「公示用氏名」及び「公示用住所」というものを記載する措置を取ることとしてはどうかというものでございます。

この公示用氏名というのは、下のイに記載をしておりますけれども、代替措置の申出に際して、その方が申し出たもの、具体的には著作者(複製権等保有者)の方が現に使用している(または過去に使用していた)ペンネーム等を想定しております。

次に、ウの公示用住所に関しましては、こちらは申出人と連絡を取ることができる方の住所または営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地という形で想定しております。

具体的には、著作者または複製権等保有者の方の著作物に係る出版物を出版している出版社、その所在地等が該当すると想定しております。

次にエの登録事項記載書類等における代替措置の内容でございますが、このような申出がございました場合、文化庁長官が登録事項記載書類等を作成する場合には、この申出に係る御本人の氏名及び住所に代えまして公示用氏名及び公示用住所を記載するという措置を講じるものとしております。

この代替措置が講じられていない登録事項記載書類の交付の請求等をすることができる者は御本人またはその相続人に限るという形といたしまして、前回の御提案に含まれておりました利害関係を有する者という場合は、この代替措置が講じられていない登録事項記載書類の交付等を請求することは認めないという形にしてはどうかという形で、今回、御提案をさせていただいております。

また、下の②のところでございますが、論点の2つ目といたしまして、前回から今回に亘っての御議論は基本的に出版権登録制度にフォーカスしたものでございましたが、他の著作権法上の登録制度についてはどのように扱うかといった点につきましては、先生方からも御指摘等いただいたところでもございまして、今回論点として挙げております。すなわち、登録事項記載書類等における代替措置の対象に、出版権登録制度のみならず、著作権法上の他の登録制度を含めることとする場合、特に検討するべき点はあるかという形で論点として記載しております。

出版権における議論と別途、特に議論すべき点があれば、その点について御指摘、御意見等いただきたいという趣旨で記載をしているところでございます。

資料1につきまして、事務局からは以上でございます。

【早稲田座長】ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえ、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。𠮷田委員、どうぞ。

【𠮷田先生】大阪工業大学の𠮷田でございます。資料1の中で、情報共有いただけたらと思うのですが。

今回、出版権登録制度ということで、今後、海外を視野にいれた検討もしていくということだと理解したのですが、資料には、参考として、不動産登記制度が書かれていますが、著作権の登録というと、以前からプログラムの著作物の登録というのがあったのではないかなと思います。それはSOFTICがなさっていると思いますが、例えば開示とか、これまでの取組においての情報交換や制度比較などは全くする必要はないのかなというのが質問でございます。

【早稲田座長】事務局、いかがでしょうか。

【三輪著作権課調査官】事務局でございます。ただいま御質問いただきましたプログラムの著作物の登録制度との比較でございますけれども、今回、まず出版権登録についての議論というところで御議論いただいているところでございますが、まず1点目としまして、今後、仮にプログラムの著作物の登録制度等にも今回の代替措置というものを広げていくのであれば、その点の比較というのは改めてその際に検討が必要となるだろうという点が、まず1点ございます。

次に2点目といたしまして、そのプログラムの著作物の登録というものも、今回、出版権登録では、本来的な対抗要件としての登録というところの、ある種の副次的な効果といたしまして、権利行使をしていく上での、海外当局に対して出版権の所在を説明するよすがとなるという効果も踏まえまして、今回議論をいただいているところでございますが、こういったことはプログラムの著作物の登録等でも、例えば創作年月日の登録等がございますが、そういったものが種々の用途で、必ずしもその創作年月日自体というよりは、例えば著作権等の所在であるとか、そういったところの主張のよすがとして使われているというような事象もあるというふうには認識をしておりますので、そういった点で今回の出版権登録と類似するところはあるのだろうなと認識をしているところでございます。

【𠮷田先生】ありがとうございます。

【早稲田座長】ほかに御質問、御意見はいかがでしょうか。澤田委員、どうぞ。

【澤田先生】ありがとうございます。今回の御提案は、海賊版対策やプライバシーへの配慮といった必要性の部分と公の登録制度の在り方というところでのバランスが取れている御提案であると考えておりまして、基本的な枠組みには異存ございません。

今回の資料2ページの一番下のところで、公示用氏名と住所が使える場合を「その者が社会生活を営むのに著しい支障が生じるおそれがある場合」に限定するという例が記載されています。この場合に確定したものではないとは思いますが、こういった要件を課す必要があるのかという点について、公示用住所の方は何らかの要件を課すことでよいと思っているんですけれども、公示用氏名については、氏名表示権が与えられてはおりますので、個人的には特段の要件を課さなくても、公示用氏名で出すということを認めてもよいのではないかなと思います。

この辺りは、どういう要件が課されて、そのハードルがどれぐらい高いかにもよるところかだと思いますが、氏名表示権との関係は配慮してもよいのではないかと思いました。

②の他の登録制度という点ですけれども、実名登録に関しては、実名を出さなければ意味がありませんので、公示用氏名のところを同じ扱いにするのは難しいかなと思います。それ以外の登録制度については、私は特に何か差を設けるべき点というのは思い当たりませんでした。

以上です。

【早稲田座長】ありがとうございました。

今の御意見について事務局から、よろしくお願いします。

【三輪著作権課調査官】事務局でございます。今、澤田委員から御指摘いただきましたうちの1点目、要件のところでございますけれども、御指摘のとおり、前回のワーキングチームの資料でもお示ししておりましたが、氏名表示権というものが、著作権法上は著作者の方に認められているということがありますので、その点、特に他の登記制度等と比較してもプライバシー性を確保する、氏名の表示について御自身の意向を尊重するという必要性は高いのかなと考えているところでございます。

ですので、一旦この資料のところでは要件といたしまして、「その者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合」と記載させていただいておりますけれども、実際上は、この氏名についてペンネーム等を用いられている等の一定の疎明があれば、基本的には、そういった申出があれば要件としては満たすような形で制度は構築していくのかなと考えているところでございます。

【早稲田座長】澤田委員、いかがでしょうか。よろしいですか。

【澤田先生】大丈夫です。ありがとうございます。

【早稲田座長】ありがとうございました。

ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。福井委員、どうぞ。

【福井先生】まずは、この間の御検討、大変にありがとうございます。前回、そもそも実名や実際の住所での登録でどのぐらい、この出版権登録に作家の方に協力をいただけるかというところが読み切れないというお話を差し上げたところですが、この間、私のほうでも可能な限りのサウンディングをしてみました。そうしたところ、もちろんやってみてなんではありますけれども、ここまで本人及びその相続人のみが、実名や実住所に触れることができるように配慮をいただけるのであれば、特に海賊版対策など海外での権利執行の必要があるときに、ある程度の数の有力な作家さんの協力はいただけるんじゃないかと、試みられるんじゃないかという感覚もあります。

よって、この現在提案いただいている制度、私としては賛成いたしたいと思います。また、改めまして様々な御配慮に感謝いたしたいと思います。

それから、澤田委員のおっしゃった御意見に賛成です。

その意味でいうと、この社会生活上の著しい支障のところに例示として、ペンネームを用いている場合といったようなことを、もし現在ないのであれば、記載することで、それは社会生活を営むのに著しい支障の一つの例なんだなということが分かるので、いいかもしれないなとも感じました。

それから、もう1点は、これを実際に海外の裁判所や法執行機関に示していくときの、言わば分かりやすい英文での証明書の表現は今後、鍵になっていくだろうと思います。

一例ですけれども、今、出版権ですと、print rightsなどと訳されることもあるわけですけれども、単にprint rightsとだけ訳してぱっと見せると、海外の機関には、それが電子での出版を含むものだということは多分理解できないと思うんですね。printという言葉にその意味合いは、英文にはないので。

ですから、そこが電子出版も含むんだということが分かるような記載の工夫があるとよいかなと感じました。

私からは以上となります。

【早稲田座長】ありがとうございます。今の点につきましては、今後また御検討いただくということでよろしいでしょうか。

【三輪著作権課調査官】事務局でございます。今御指摘いただきました海外当局に伝わる形での表現という点も工夫をしていければと思っております。

以上でございます。

【早稲田座長】ありがとうございます。

ほかに御質問、御意見いかがでしょうか。オンラインの先生方もよろしいですか。ありがとうございます。

それでは、本件につきましては、今、貴重な御意見いただきましたので、それを踏まえて、また御検討いただくということとさせていただきたいと思います。

それでは、(1)につきましては以上とさせていただきまして、(2)令和6年度法制度に関するワーキングチームの検討経過等についてに入りたいと思います。

事務局において検討経過報告(案)を作成いただいておりますので、資料2に関して事務局より御説明をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。それでは、資料の2を御覧ください。「令和6年度法制度に関するワーキングチームの検討の経過等について」の案でございます。

本件につきましては、本日御了解いただきました後に、今期最終の政策小委員会に対して報告をさせていただくものとなっております。

では、中身の説明を始めます。

1ポツ、「はじめに」でございますけれども、今期の本ワーキングチームにおきましては、ここに挙げられておりますAIと著作権制度に関することについてと著作権侵害の国外犯処罰の執行の在り方についての議題について検討などを行ったところで、その点を記載しております。

具体的な検討の経過等については、2ポツの記載のとおりとなります。

まず1つ目はAIと著作権制度に関することについてですが、AIと著作権の関係については、昨年度、著作権分科会法制度小委員会において「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめたところでございまして、この考え方においては、ここの2段落目になりますが、今後、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関連する技術の発展、諸外国における検討状況の進展等が予想されることから、これらを踏まえて、引き続き必要な検討を行っていくとされておりました。

また、昨年策定されました知的財産推進計画2024においても、「生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声等の利用・生成に関し、不正競争防止法との関係について、考え方の整理を行い、必要に応じ、見直しの検討を行う。また、他人の肖像や声等の利用・生成に関し、その他の関連法についても、法的考え方の整理を行う」とされたところです。

そこで、本ワーキングチームでは、生成AIをめぐる最新の状況として、文化庁の文化芸術活動に関する法律相談窓口に寄せられたAIに関連する主な相談内容の概略を紹介し、現状の生成AIに対する各国の対応や動向を共有するとともに、生成AIによる声優を模した声の生成・利用と著作権との関係について議論を行っていただきましたので、その旨、記載させていただいております。

そして、これらのうち、次の段落になりますが、生成AIによる声優を模した声の生成・利用と著作権との関係については、実演の録音そのものではないものの、特定の声優に似せた声をAIで生成し、既存の楽曲を歌わせるなどした音源や動画に、当該声優が演じるキャラクターのイラスト等が使用されている場合、イラスト等の著作権者が権利を行使できる可能性がある一方、著作権法は声そのものを保護しているわけではなく、声そのものに著作権法上の権利は及ばないという方向で議論が進められたかと思いますので、その点、こちらで確認したとさせていただきました。

また、生成AIによる声優を模した声の生成・利用時に保護すべきものを鑑みたときに、パブリシティ権や一般不法行為による保護の可能性があり得ること、知的財産推進計画2024で例示されたほかの法律による規律における対応もあり得るのではないかという意見もございましたため、その点、なお書きで記載させていただきました。

本件に関しては、次期以降についても、引き続き関連の動向を注視しつつ、必要に応じて検討を行うことが必要かと考え、そのようにまとめさせていただいております。

次に、2つ目の著作権侵害の国外犯処罰の執行の在り方についてですが、こちらは大きくは2つのテーマで御議論いただきましたので、それぞれ記載しております。

そのうちの1つ目が、(1)の著作権侵害の国外犯処罰の執行の在り方についてとなります。こちらでは、「日本国内において罪を犯した」と評価できる場合以外にも日本の著作権法に基づき刑事処罰を行う、いわゆる国外犯処罰を求める声を受け、検討した内容をまとめております。

こちらの2段落目になりますが、本ワーキングチームで、文化庁において令和5年度に主要国を対象に行った「諸外国における著作権侵害の国外犯処罰について」の調査結果を紹介しましたので、その旨、記載しております。

この調査では、令和5年11月時点において、国外における著作権侵害に対する当該国の著作権法適用に関する規定を設けている国は存在しなかったという報告がされておりましたので、その点、併せて記載させていただいております。

そして、本ワーキングチームにおいては、この点を踏まえ、国外犯処罰の在り方について、国外犯処罰を行うことの合理性、諸外国の法制における状況等を踏まえた方向性等について議論を行っていただきました。

この議論においては、海外に拠点を置く海賊版サイト等であっても、国外犯としてよりもむしろ国内犯として捉えることができるものもあり、国内犯の処罰規定の活用も検討すべきなどの意見が交わされたところでございます。

また、国内犯の処罰規定が適用される場合における、その処罰の実行性の確保がより重要であるという課題意識が共有されたかと思いますので、そのようにまとめさせていただいております。

次に(2)ですが、海外における権利執行の課題についてとなります。こちらは本日の議題の1つ目にもございましたが、出版物の海賊版被害に対しての権利執行の課題に関する議論に関するものでございます。

まず1段落目ですが、課題認識を記載しております。出版物の海賊版被害に対しては、出版権者による権利執行に当たり、出版権者が出版権を有していることの証明が必要となりますが、この証明に関して、出版権登録に当たり、著作者や複製権等保有者の氏名(実名)や住所が公表されてしまうことや、登録を行った場合でも、権利執行に当たり海外当局に登録事項記載書類を提出した場合、氏名(実名)や住所を含め紛争相手方に提供される可能性があること、海外当局に対し、当該文書及び翻訳文の正確性等の説明等を行う出版権者の負担が大きいことなどが課題として挙げられておりました。

そこで、先ほどの著作権侵害に関する処罰の実効性の確保に関連し、現状の出版権登録制度のうち、登録事項記載書類におけるプライバシーに関する情報の取扱いや、登録事項記載書類の在り方について議論を行っていただいたところでございます。

そして、このうち、登録事項記載書類におけるプライバシーに関する情報の取扱いについては、ほかの制度による例も参考として、登録は実名(本名)及び実際の住所により行うこととしつつ、実名や実際の住所が明らかにされることにより、社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合などに該当するときは、その者からの申出により、「公示用氏名」及び「公示用住所」を記載する措置を講ずることについて検討を行っていただきました。

また、登録事項記載書類の在り方については、英文での証明書を発行する他の例も参考としつつ、現行の和文によるものに加え、申請者の求めに応じて一定の事項を英文で記載した登録事項記載書類を発行することについて検討を行っていただきました。

これらの措置については、先ほどの議題で一定の方向性が得られたかと思いますので、そちらに従いまして、対応の必要性が高いと考えられる出版権登録について実現に向けて所要の措置を講じつつ、出版権登録以外の権利変動を伴う登録についても、文化庁において、当該措置を設けることに対するニーズや当該措置の運用に伴うコスト等を検討し、対応の必要性の程度に応じて同様の措置を適用していくことが期待されるとして、まとめさせていただいております。

課題の検討状況については以上となります。

この後のページでは、3ポツで開催状況を記載しておりまして、4ポツでチーム員の皆様の名簿をつけております。

以上でございます。よろしく御審議のほど、お願いいたします。

【早稲田座長】ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえて、本件に関する御質問、御意見がありましたらお願いしたいと思います。福井委員、どうぞ。

【福井先生】今日は何か大変スムーズに短い時間で終了しそうな予感もしましたので、若干、私のほうから、AIに関してになります。

去る2月11日、米国で初めてAI学習のフェアユースの扱いについて、連邦裁判所での判決が出されました。デラウェア州の連邦地裁で、事例が我々にも身近なウエストローの判例についての説明文等を、競合する法律情報のサービスの事業者が学習したと。恐らく生成物自体は著作権侵害ではないという判断が想定されているんだと思うのですが、学習の是非が問われた。フェアユースの抗弁が行われたことについて、地裁では、競合サービスのための学習の場合、フェアユースで最重要と言われる第4ファクター、いわゆる市場でのネガティブな影響があることは明らかであると述べて、この点を重視し、更に第1ファクターも同様に原告に有利に判断しましたけれども、サマリー・ジャッジメント、略式判決ということでフェアユース否定、著作権侵害という判断を出しました。

これは非生成AIという扱いに一応なっていますが、見たところ、ちょっと生成AIにもかなり親和的なケースなのかなという気もするところです。

今後のAI開発や、続いている他の生成AIをめぐる訴訟へのインパクトが相当に米国でも取り沙汰されているようですね。

この判断を見ますと、1年前、日本の本審議会でも、AIによって著作物の表現が再現されるような学習でなくても、オリジナルの作家に市場で打撃を与えるような場合には、30条の4のただし書、著作権者の利益を不当に害する可能性はあり得るんじゃないかという、私も含む少数意見に近いのかなということも感じないではありません。ちょっとほほ笑んでいらっしゃる委員の方もいらっしゃいますけれどもね。もっとも、だから、やったーなどと言いたいのじゃなくてですね。実際この裁判自体は、上訴の行方含めて、まだ米国での帰趨は正直言って分からないと思うんです。この裁判の扱いにも若干戸惑いも見られるなと思うところです。

とはいえ、こうした米国での裁判例の動向は、やはりAI開発の言わば主戦場ですので、事実上、非常に重要。そうすると、今回の文章への付記もあっていいのかなとも思うところです。

と同時に、こうした海外裁判例へも、言うまでもないことですが、注視を続けて、有益なAIの開発が日本でちゃんと花開きながら、他方では、学習されるコンテンツの作り手があまりに不利益は被らないような工夫と、本当の意味での協力体制ですね。この点は、文化庁が非常にもう既に腐心されているところですので、私から申し上げるまでもないんでしょうけれども、そういう工夫と協力体制の醸成が重要かなと感じましたので、一応、意見として申し上げます。

それから、もう1点。学習コンテンツについて開示の仕組みがあっていいんじゃないかということが内閣府知財本部のほうでも今、議論になっています。これも、全く開示がないと、やっぱりブラックボックスでは、コンテンツ側との共存共栄といっても、交渉にすらならないという声も聞こえますので、その辺の実態も把握しつつ、開発の現場を害さないで、必要な場合には、学習コンテンツの開示を求められるような工夫も今後、考えられていいのかなと感じたところでした。

以上です。

【早稲田座長】ありがとうございました。事務局から何かございますでしょうか。

【籾井著作権課長】ありがとうございました。まず、前半のほうの国際的な動向については、基本的な考え方の中でも、そうしたものをきちんとフォローしながら、必要に応じて、また検討していくということを記載させていただいています。前回のワーキングでも、もろもろ御報告をさせていただいて、今言及のあったデラウェアの件は前回のワーキングの後だったので、資料には含まれていなかったと思うのですけれども、例えば、本日の資料2の2ページのAIの最後の部分の「引き続き関連の動向を注視しつつ」の中に、当然、国際的なもろもろは含まれておりますので、今の御指摘も踏まえて、再掲にはなるんですけれども、国際的な動向ということを、より明示的に記載させていただくということでいかがかなと思っておりますというのが1点目です。

それから、2点目の学習データの開示については、著作権法上の考え方について、依拠性のところの整理を「AIと著作権に関する考え方について」の中でさせていただいておりますけれども、より大きく、著作物、著作権侵害の観点のみではなくて、学習用データというか、何を学習しているかの透明性の確保の話は、AI開発全体の議論の中で、内閣府が「中間まとめ(案)」を年末にまとめておりまして、そういう中で、透明性の確保というのは論点として挙げられておりますので、内閣府のほうときちんと連携をしながら、著作権侵害における場合どうなのかということは考えていきたいと思います。

【福井先生】ありがとうございます。全くおっしゃるとおりだと思います。内閣府のAI時代の知的財産権検討会のほうの中間まとめでも議論された論点であり、私も委員で加わっておりましたが、さらに状況は動いてきておりますので、そのフォローアップも、おっしゃるように、ぜひ図っていっていただければというふうに思いました。

以上です。

【早稲田座長】ありがとうございました。それでは、今のところ、修正等御検討をされるというところでよろしいでしょうか。

ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。オンラインで参加の先生方、よろしいですか。

中川委員、どうぞ。

【中川座長代理】ありがとうございます。資料2自体の加筆や変更ということではございませんが、せっかく福井委員から御発言いただきましたので、それについて若干、私からもコメントさせていただきます。

もともと「AIと著作権に関する考え方について」のときにも一般不法行為による対応の可能性ということを述べてきていたと思いますが、最近、一般不法行為に関する複数の裁判例が出てきて、裁判実務においても一般不法行為の可能性が改めて検討される状況になってきていると思います。そうした議論も踏まえつつ、AIに落とし込んでいくとどうなるんだろうかという視点も改めて必要になってきたのではないと感じているところでございます。

簡単ではございますが、以上です。

【早稲田座長】ありがとうございました。

ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。

それでは、(2)については以上とさせていただきたいと思います。

それでは、先ほども事務局のほうから御回答いただきましたけれども、本日いただいた御意見を踏まえて、修正等を御検討いただきまして、本ワーキングチームにおける検討経過報告として取りまとめるということにしたいと思います。

修正につきましては、座長である私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【早稲田座長】ありがとうございます。

ワーキングチームでの検討状況については、著作権分科会政策小委員会で報告することとなっておりますので、検討経過報告については、座長である私から、今後の著作権分科会政策小委員会において報告することにいたします。

その他、全体を通して何か特段ございますでしょうか。

ありがとうございました。かなりスムーズに進ませていただきました。

それでは、事務局からも特に御意見よろしいですね。

それでは、本日は今期最後の法制度に関するワーキングチームということでございますので、私から一言御挨拶を申し上げたいと思います。着座にて失礼いたします。

3回のワーキングを開いていただきまして、今日の方向性ができたというようなところもあり、委員の皆様及び事務局のほうで熱心に議論していただきましたので、大変ありがとうございました。御礼申し上げます。以上でございます。

それでは引き続いて、最後に、中原文化庁文化戦略官からも一言御挨拶をいただければと思います。

【中原文化戦略官】中原でございます。今期の法制度に関するワーキングチームを終えるに当たりまして、一言御礼を申し上げさせていただきたいと存じます。

今期の法制度に関するワーキングチームにおきましては、3回にわたりまして、AIと著作権制度に関することについて、そして著作権侵害の国外犯の処罰の執行の在り方に関して、法制的な面から精力的に御議論を頂戴したところでございまして、この場を借りまして深く御礼を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。

とりわけAIと著作権につきまして、昨年3月に取りまとめをいただいてから、まだ1年もたっていないのかというような気もいたしますけれども、この間、いろいろなことを説明をさせていただいたりとか、いろいろな方と、この基本的な考え方を各界各層に御説明する中でも、私どももいろいろな空気感を感じながら、法制度的なところのみならず、様々にわたって勉強させていただいたところでございます。

この問題につきましては、本当に最新の状況というものを共有させていただくとともに、生成AIによる声優を模した声の生成・利用と著作権の関係につきましても御議論をいただきましたところ、委員の皆様からも幅広く重要な御示唆をいただくことができました。この検討事項につきましては、来期以降も、新技術の動向ですとか、あるいは今日、福井委員からも御指摘もありましたような諸外国での検討の動き、国際的なアリーナでの検討の状況や、それから他の知財法制の動向といった、こういったことを総合的に、知財法制のみならず、一般的な法制といったようなことも見ながら、こういった関連の動向を注視しつつ、必要に応じて、またその検討を行ってまいりたいと思っておりますので、今後とも御指導をよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

それから、インターネット上の海賊版の被害の深刻化を踏まえまして、著作権侵害の国外犯処罰の執行の在り方に関しても闊達な御議論を頂戴しました。まずは、その国内犯の処罰の実効性確保のための出版権登録制度の在り方について、本日もその方向性をお示しいただいたことでございます。

今後、また政策小委員会に報告の上で、所要の措置を進めてまいりたいと思います。

何分にも技術の動向や、それからクリエーターの現場での環境というものの変化には著しいものがありまして、私ども文化庁としましても、こういった動向にしっかりと目を向けながら検討を継続させてまいりたいというふうに思っております。

委員の皆様方におかれましては、今期の本ワーキングチームの充実した御議論のために多大な御尽力を賜りましたことについて、改めて感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。お世話になりました。

【早稲田座長】ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、第24期文化審議会著作権分科会 政策小委員会 法制度に関するワーキングチームを終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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