資料7-1

これまでの「敬語に関する議論」について

1 国語審議会建議「これからの敬語」(昭和27・4・14)

「まえがき」: (…略…)敬語の問題は単なることばの上だけの問題でなく,実生活における作法と一体をなすものであるから,これからの敬語は,これからの新しい時代の生活に即した新しい作法の成長とともに,平明・簡素な新しい敬語法として健全な発達をとげることを望むしだいである。

「基本の方針」(3,4は省略)

1  これまでの敬語は,旧時代に発達したままで,必要以上に煩雑な点があった。これからの敬語は,その行きすぎをいましめ,誤用を正し,できるだけ平明・簡素にありたいものである。

2  これまでの敬語は,主として上下関係に立って発達してきたが,これからの敬語は,各人の基本的人格を尊重する相互尊敬の上に立たなければならない。

「1 人をさすことば」の「(1)自分をさすことば」

1) 「わたし」を標準の形とする。

2) 「わたくし」は,あらたまった場合の用語とする。(以下,略)

「(2) 相手をさすことば」

1) 「あなた」を標準の形とする。

2) 手紙(公私とも)の用語として,これまで「貴殿」「貴下」などを使っているのも,これからは「あなた」で通用するようにありたい。(以下,略)

2 国語審議会総会の懇談における「会長発言」(第2期第1回,昭和27・6・2)

土岐会長: 敬語については,「これからの敬語」は方向を決めたので,引き続いて具体的な問題があり,そのまま話しことばの部会に続けていきたいと思う。わたくし個人としては,話しことばの問題は決めなければならない重要な問題であると思う。だから,ここで第1期の審議会の部会を整理し,広げていくというふうにしていきたい。

3 国語審議会・標準語部会報告「標準語のために」(昭和29・3・15)

「第1部 標準語のために」「第2部 これからの日本語」
第2部の[5 敬語について]

1) 敬語の平明・簡素化への方針については,さきに「これからの敬語」の中で述べた。それによって,次の世代の負担をへらし,余った力を他の仕事に向けることができるようにしたい。

2) 男性と女性とでは,おのずからことばづかいに違いがあるが,それは男性のことばが,粗暴であってよいという理由にはならない。特に女性に対してのことばづかいにおいて,一般に男性の反省を求めるべき点がある。(以下,3~6省略)

4 国語審議会報告「国語改善の考え方について」(昭和38・10・11)

「これから改善をはかる必要のある問題について」

「Ⅰ これから改善をはかる必要のある諸問題」
「1 話しことばの敬語的表現について」

1) 敬語についてのいちおうのよりどころとしては,国語審議会の建議「これからの敬語」(昭和27年)があるが,特に話しことばに関しては,さらになんらかのよりどころがほしいという要望がある。(以下,2~4省略)
 以上の諸問題のうち,「話しことばの敬語的表現について」を第一に取り上げるべき問題と考える。

5 第19期国語審議会報告「現代の国語をめぐる諸問題について」(平成5・6・8)

「第2 現代の国語をめぐる諸問題」の「1 言葉遣いに関すること」

(3) 敬語: 敬語は,国語の中で非常に大切な働きをしているものであり,人間関係を円滑に進めていく上でもなくてはならないものである。今日の現実に即した敬語の在り方について,話し言葉・書き言葉の両面から検討する必要があるのではないか。

6 第20期国語審議会・審議経過報告「新しい時代に応じた国語施策について」(平成7・11・8)

「Ⅰ 言葉遣いに関すること」の「3 敬語の問題」で取り上げた項目

  • (1) 現代の敬語
  • (2) 国語審議会における敬語の取り上げ方
  • (3) 敬語の理念及び具体的な語法
  • (4) 学校教育及び日本語教育における敬語の扱い

7 第21期国語審議会・審議経過報告「新しい時代に応じた国語施策について」(平成10・6・24)

「第1 現代社会における敬意表現の在り方」

(…略…) このような認識の下に,今期は「Ⅰ コミュニケーションと言葉遣い」で現代社会における様々な言葉遣いの在り方を展望し,「Ⅱ 敬意表現の在り方」ではコミュニケーションを円滑にするための敬意表現の概要や理念を述べることとする。また,次期以降の継続審議によって「Ⅲ 現代敬意表現の使い方」として具体的な敬意表現とその運用の指針を掲げ,全体で3部構成にまとめることが予定されている。

Ⅱ 敬意表現の在り方」の「2 敬意表現の理念と標準の在り方」

国語審議会は次期の審議で具体的な敬意表現の標準を示すことに取り組むことが予定されているが,その場合も語形面での誤りを正すだけでなく,運用面の適切性についても扱っていくことが必要と思われる。すなわち,現実に行われている様々な敬意表現を整理して,平明な言い方を中心に複数の選択肢を掲げ,併せて頻度の高い誤用例についてはそれが誤りとされる理由を説明しつつ,想定される場面に応じた運用の指針を掲げることになろう。

8 第22期国語審議会答申「現代社会における敬意表現」(平成12・12・8)

「はじめに」: 国語審議会は,現代社会の言葉遣いの在り方を考える上で重要な概念として「敬意表現」を提唱する。敬意表現とは,コミュニケーションにおいて,相互尊重の精神に基づき,相手や場面に配慮して使い分けている言葉遣いを意味する。それらは相手の人格や立場を尊重し,様々な表現から適切なものを自己表現として選択するものである。

「Ⅲ 言葉遣いの中の敬意表現」

「2 敬意表現の概念」の「(2) 敬語と敬意表現」

昭和27年の国語審議会建議「これからの敬語」は,従来の複雑な敬語を廃し,民主主義社会にふさわしい平明・簡素な敬語の在り方を示した。これは当時の社会においては画期的な提案であり,これまでの国語審議会が敬語について示した唯一の見解である。ここに示された内容のうち,「相互尊敬」を旨とすることや,過剰使用を避けることなどは現代においても継承されるべきものとして,本答申はこの考えを受け継いでいる。一方,「これからの敬語」は,敬語のみを扱っているが,本答申では相手や場面に配慮した言葉遣いは敬語以外でも行われていることに注目し,敬語に加え,敬語を使わずに配慮を表す表現も含め,「敬意表現」として扱うものである。

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