第5回国語分科会日本語教育小委員会・議事録
平成19年12月6日(木)
10:00〜12:00
三菱ビル地下1階M1会議室
〔出席者〕
- (委員)
- 西原主査,杉戸副主査,岩見,尾﨑,佐藤,中野,山田各委員(計7名)
- (文部科学省・文化庁)
- 町田国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官
〔配布資料〕
- 第4回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
- 第4回日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめ
- 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会報告書骨子(案)
〔配布資料〕
- 日本語教育の現状と課題
- 第2回日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめ
- 第3回日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめ
〔経過概要〕
- 事務局から配布資料の確認があった。
- 前回の議事録(案)が確認された。
- 事務局から配布資料2についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
- 事務局から配布資料3についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
- 次回,第6回の日本語教育小委員会は,予定どおり1月21日(月)の10:00〜12:00に開催されること,また場所は旧文部省庁舎2階の第1会議室で行われることが併せて確認された。
- 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
配布資料2について
○西原主査 |
配布資料2は,長時間にわたる御議論のまとめでございますので,ポイントが挙がっているということになるかと思います。これにつきまして,何か御質問や御意見などがありましたら,どうぞよろしくお願いいたします。 項目ごとにちょっと整理させていただきたいと思いますけれども,この項目三つということでよろしいでしょうか。更に付け加えておくべき点などがありますでしょうか。 |
○中野委員 |
長期的視点の国益の中に入るかもしれないんですが,日本のことだけを考えて言うよりも,周辺とか,ほかの国々との関係の中でというのも,そこの長期的国益に入っていればいいんですけれども,とりわけ東アジア諸国を中心とする海外の国との関係の中でも考えなければいけないんじゃないかと思います。 |
○西原主査 |
そうしますと,「短期的利益ではなく,海外諸国との関係性において長期的な視点で」というふうに入れたらよろしいんでしょうか,そこに。 |
○中野委員 |
そうですね,世界も含めた。 |
○西原主査 |
はい,ありがとうございます。 では,今度は「2.国内の日本語教育施策について」ということになりますけれども,「(1)日本語教育の体制整備について」,「(2)日本語教師の役割について」ということでまとめられております。 この体制整備については,いろいろな御意見を頂きました。それをこのような形で事務局にまとめていただいたわけでございます。いかがでございましょうか。 ちなみに,最後の方に,第2回目,第3回目のヒアリングについてこのようにまとめましたという資料も付いておりますが,それらを御参考になさって,このポイントについて何か御意見をいただければと思います。それぞれとてもコンパクトに簡潔にまとめられております。ちょっと抽象的な書き方にはなっているかと思うんですけれども…。 |
○佐藤委員 |
「日本語学習機会の差別化」という言い方を,日本語教育ではされることがあるのでしょうか。 |
○西原主査 |
いかがでございましょうか,これは。 |
○佐藤委員 |
学習機会の不均衡を通して,結果として,差別化が生じるわけで…。もともと差別化があれば,いいんですけれども。 |
○西原主査 |
「学習機会の不均衡から生じる差別化」ということですか。 |
○佐藤委員 |
ちょっと回りくどいですけれども。 |
○西原主査 |
その方が正確ではあります。 |
○佐藤委員 |
学習機会そのものが差別化されているのであれば,それはそれに従うしかないのではないでしょうか。 |
○西原主査 |
それもあるかもしれないですけれども。この辺は本日御議論いただく報告書の骨子案のところにもっと具体的にまとまっていくことかと思います。教師の役割につきましても,もう少しこれを中心に骨子として報告書に書き込んでいくということが必要かと思いますけれども。「日本語を母語にしている人たちのコミュニケーションの問題」というような言い方でよろしいでしょうか。 |
○山田委員 |
文言がどうのこうのじゃなくて,コミュニケーションという言葉もそうだし,前回出てきた多文化共生っていう言葉もそうなんですけれども,人によって描くものが違っているということがあるので,そういうことを踏まえた上で,今後議論あるいはまとめを進めていく作業をした方がいいと思うんですけど。 |
○西原主査 |
特に報告書で,多文化共生について十人十色の前提の下になされた話では困りますね。 |
○山田委員 |
明らかに,コミュニケーションが大事だっていうのは,みんなそうだって言っているんだけれども,コミュニケーションをスキルという面からとらえる人もいるし,それから人と人とが結び付くための何らかの意識の共通化みたいなことを考えている人もいるし,あるいは,それらの前提になっている人間性っていうようなものも大事だっていうふうな人もいるし,いろいろレベルがあると思うんですけれども。 |
○西原主査 |
そうですね。そして,もう一つのポイントとして「3.これからの地域日本語教育の在り方について」ということが挙げられております。これもかなり活発な御議論が展開されたことを踏まえていると思います。例えば,学校教育の問題ですとか,それから日本に入ってくる人の持ってくる文化の問題ですとか,それから国語審議会の平成12年の答申を考えつつ,このことを提言していかなければならないのではないかというような,そういういろんな御意見があったのを,このように一応まとめているということでございます。 ポイントとしては,これは明らかに大きなポイントであったということなんですが,いかがでございましょうか。 |
○山田委員 |
これでよろしいと思うんですけれども,第三の文化というようなことも議論されたと思うので,2行目なんですけれども,「日本で定住を希望する外国人に日本文化が尊重されるような」というのが,その前の「外国人の持つ文化は当然尊重しなければならないが」との続きで,「関係性の中で」というふうに来るところの前に「双方向の関係性の中で」ということを入れたら,よりその統合というのが,一方から一方というだけじゃないという意味が加わっていいんじゃないかと思います。 |
○西原主査 |
ありがとうございます。ほかに,よろしいでしょうか。 |
○杉戸副主査 |
2の(2)の1行目から2行目にかけての「日本語を母語にしている人たちのコミュニケーションの問題にかかわる」というその部分ですが,ちょっと先走りをして次の資料3を見たり,あるいは1回前の第3回のヒアリングの参考資料3を見ますと,参考資料3の一番下,3の(3)に同じ趣旨のことが書いてあるのですが,そちらの方が分かりやすいと感じました。というのは,「多文化共生社会における」という言葉が入っているかいないかの差だと思うんですね。日本語を母語にしている人たちのコミュニケーションの問題というと,非常に幅広く,例えばいわゆる初等,中等教育の国語教育とか,あるいはいろいろな国語にかかわるコミュニケーションの問題が入ってしまうので,もう少し絞り込んだ方がいいと思いながら,2の(2)を見ていたところ,かつての第3回のヒアリングのまとめで3の(3)が,そちらの方で使っている多文化共生社会というその用語の定義は問題だと先ほどの山田委員の発言もありますけれども,その言葉を取り込むことによって絞り込むことができると,そんなふうに感じます。 |
○西原主査 |
そうしますと,「日本語教師は,日本語を第二言語として学ぶ人たちの問題にかかわること及び多文化共生」,そこに入れるんでしょうか。 |
○杉戸副主査 |
「日本語を母語にしている人たちの多文化共生にかかわるコミュニケーション」。 |
○西原主査 |
「多文化共生にかかわるコミュニケーション」。 |
○杉戸副主査 |
狭くなり過ぎかもしれませんね,いや,そうは思いません。やっぱりあった方がいいと思います。 |
○西原主査 |
はい,いかがですか。 |
○杉戸副主査 |
先走りですが,資料3を見てみますと,2枚目の「今後取組むべき課題」の中に,この参考資料2,3,それから今日の今の「3.第4回日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめ」が引用されているんですね。文字の小さい部分です。 |
○西原主査 |
そうですね,1の四つ目の中ポツのところですね。 |
○杉戸副主査 |
その中に,今話題にしている資料2の2の(2)というのはないんですね。どっちかと言うと3の方に…。 |
○西原主査 |
日本語教師のことは,体制整備の中に織り込まれてれているということになっていると思いますが。 |
○杉戸副主査 |
1の教育内容の3−3−(3),そこだけに集約されているように思うんですが…。今日の資料2の,今,話題にした2の(2)というのが活用されていないわけです。 |
○西原主査 |
さっき山田委員がおっしゃったことと,この問題はどのように絡むんでしょうかね。 ここを限定的に,コミュニケーションということを多文化共生にかかわるコミュニケーションというふうにして,先ほどの山田委員の趣旨とつながるでしょうか。「第4回日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめ」の2.(2)の「日本語を母語にしている人たちのコミュニケーション」というところに「多文化共生にかかわる」と入れた場合に…。 |
○山田委員 |
この資料2については,第4回のヒアリングということだったので,その中での議論では多文化共生についてで,日本語を母語としている人と非母語の人たちの間でのコミュニケーションという限りはなくて,日本人そのものも日本人に対して行うべきコミュニケーションの在り方がそれで良いかが問われている時代だという,そういう背景があった。 |
○西原主査 |
サードカルチャーのサードの方向。 |
○山田委員 |
ええ。それで日本社会側も,外国にルーツを持った人たちが日本社会でサードカルチャーを生みだすだけでなく,日本側の,ホスト側と言ってもいいですけど,そちら側もサードカルチャーを生みだすような方向も考えていいだろうと,そういう…。 |
○西原主査 |
サードっていうのは両方で生み出すんですよね。片方側だけが生み出すものではなく。 |
○山田委員 |
ええ。それがよく分かるように,コミュニケーションの問題を,日本人同士のコミュニケーションということも含めて議論がされたかなというふうに思っていると…。 |
○西原主査 |
はい。 |
○中野専門職 |
先ほど副主査の方からお話があった件です。日本語教育小委員会ヒアリングを受けての議論のまとめに出てくる項目ですが,既に話が進んでおります資料3のローマ数字の?の中に,これまでのヒアリングの議論のまとめを盛り込んでおりますが,ここに盛り込んだものは,具体的な取組につながるような内容のもので,ここに取り込まれていないと一見見えるようなものにつきましては,ローマ数字?の2.に,この報告書を取りまとめるに当たっての,いわゆる哲学に当たる部分にできるだけ反映させる形で作成しております。 |
○西原主査 |
分かりました。そうしますと,多文化共生ということをどこに入れるかということなんですが,「日本語教師は」というところに「多文化共生時代にかかわって」というふうにしてしまってもいいわけですよね。コミュニケーションを多文化共生時代のっていうふうに限定するということもそうですけれども…。一番頭に来てもいいのかもしれませんね,「多文化共生時代に日本語教師は」とか,そういうふうに。多文化共生ということがこれから起こるだろうということを想定して。 |
○山田委員 |
それじゃ,「多文化共生を目指す社会にあっては」とか何かそういうのを入れたらいいと思います。 |
○西原主査 |
そうですね,分かりました。ほかにこれに関して御意見がございますか。実は,もう資料3の方のお話にもなりかけているので,もし格別の御異論がなければ…。どうぞ。 |
○尾﨑委員 |
「日本語」以下をクリアにしていただきたいんですけれども。一番下の3番のところの1行目の終わりの方に,「日本に定住を希望する外国人」と外国人をここで修飾していますけれども,定住というのがこれまでの議論では,特に前回の井上さんのお話などを聞いていると,定住はむしろ期待しないような方向にあるような気が随分するんですが。 |
○西原主査 |
何をもって定住と言うのかですよね。例えば,市民権を得るっていうのも一つですし,それからもう一つは永住ビザ的なところに行くか,それからただ数年とどまるっていうのを定住傾向と言っていますよね,このごろは。 |
○尾﨑委員 |
ですから,ここで修飾を付けると誤解を…。 |
○西原主査 |
修飾を付けないとすると,どうしたらいいんでしょうか。 |
○尾﨑委員 |
どうなるんでしょうね。「日本に暮らす」とか。 |
○西原主査 |
「日本で生活する」,正に…。 |
○尾﨑委員 |
そのくらいの方が,はい。その生活する人の中に,いろんなタイプの方がいて多様でという話の方がいいかなと思います。 |
○西原主査 |
じゃ,単に「生活する」にさせていただくと。生活するというのはいろいろあるので,よろしいでしょうか。 |
○尾﨑委員 |
よろしいです。 |
配布資料3について
○西原主査 |
はい,分かりました。では,そういうことの延長線上に資料3の骨子案がございます。これが今年度の,実はもう後1月に1度,21日に会合がありまして,そこで今年度の骨子案というか,報告というのが出てきます。先生方には,もうあらかじめお願いしてございますように,その報告書を踏まえて,更に本格的に来年度御議論いただくということになっているのだと思いますので,議論はこれで終わるわけではございませんが,報告書については,後1回で,目次立てができなければならない,内容も確定しなければならないということでございますので,今日は活発な御議論を期待しております。 それではまず,このような項目だけでよろしいかということを御確認いただきたいんですが,いかがでございましょうか。 |
○尾﨑委員 |
ローマ数字?のところの,これまでの施策と評価というところですけれども,国語審議会の答申を受けて以下のようなことが行われたという記述になっているんですけれども,地域で活動している立場からすると,国語審議会の答申は全く無関係であったという意識があるものですから,そのギャップをどのようにうまく文章化していただくのがいいのかなという…。この答申を受けてというところで,受けてなされたこともあるんですけど,当事者としてはこれを見るとかなり違和感があるなと,これが一つです。 それから,地域の方から見ると,むしろ文化庁がこれまでずっと積み上げてこられたモデル事業であるとか,親子教室であるとかっていう一連の活動,それから日本語教育大会であるとか,そういうところでどういう問題を取り上げて,どうしてきたかということの方が,このテーマとは近いかなと…。ですから,この審議会の位置付けとして国語審議会の答申があって,それが一つベースになっているということは確認が必要なんですけど,それ以外に既になされてきたこともまとめるのはどうでしょうか。という感想です。 |
○西原主査 |
では,?−2の方に,御指摘がありましたが,確かに「審議された課題に対する取組とその成果」というときに主語がないんですよね。それで,主語としては,文化庁国語課が施策として行ってきたことというまとまりが一つあり,かつ一方,その他の部分で,現状に対応するという現状が先に走ってきた部分についても,ここは取り上げた方がよろしかろうということですね。そうしますと,?の日本語教育施策という,この施策の意味が,官主導でやってきたという意味で,取られない方がよろしいということでしょうか。 |
○尾﨑委員 |
いや,むしろ…。 |
○西原主査 |
むしろ対策というようなことでしょうか。 |
○尾﨑委員 |
ええ。国として,直接的には文化庁が,国としてどういうことをこれまでやってきたかということを伝えていただいて,それについての何らかの,評価と言えるかどうか分かりませんが,こういう面ではそれなりのいいこともあったんだけれどもとか,何かそういう国としてやったことをお書きになった方が,読む方は分かりやすいという気がします。 |
○西原主査 |
そうですね。国というのもいろいろあって,文化庁国語課ではなく,例えば,経産省の海外技術者研修協会とか外務省の国際協力機構とか,それから総務省の自治体国際化協会とか,そういうところまでを施策として入れちゃうとこれまた…… |
○尾﨑委員 |
大変なことになります。 |
○西原主査 |
大変ですね。何か文化庁とか,何か主語を補って範囲を決めて,そしてこういうことがなされた。そして御指摘は,この文化審議会の答申があったからこういうことをやったんじゃなくて,その前からずっとやっていたということも入れたらよろしかろうと…。 |
○尾﨑委員 |
はい,そうです。 |
○西原主査 |
という整理の仕方ですが,それはいかがでございましょうか。 |
○佐藤委員 |
賛成です。伺っていると?の位置付けがちょっと分かりにくいんです。?に理念があって多文化共生に向けて,これからの日本語教育の在り方が述べられる。実際,様々な課題が出てきて,政策的には,こういう方向に持っていきたいということを言うわけですね。しかしながら,そこで審議会がこれまでやってきたことを,積極的に評価されるのはいいんですけれども,そこはちょっと何かすわりが悪いと言いますか,聞いていてですね。 |
○西原主査 |
小さくなり過ぎた。 |
○佐藤委員 |
そうですね。だから,どうするかというのはちょっと考える必要があると思うんですけれども,尾﨑委員がおっしゃったような形でもよろしいですし,3番のところで,そういう審議会の答申と同時に,もう一方で現実に対応する形で地域のボランティアを中心とする活動が起こり,そしてそれに対して,文化庁が様々な施策をやってきているわけですから,ちょっと足らない部分を補っていただいて,また新しい課題に対応して,?の方に私たちはこういうことをやっていきますよという,この範囲でつながりを付けていただけると非常に分かりやすい。審議会の答申だけになってしまうと,非常にすわりが悪く,何かどう考えていいのかがちょっと分かりにくいなという思いがあります。 |
○西原主査 |
そうですね。この審議会を含む文化庁の施策とかそういうことを少し広げてお書きくださると。で,他省庁までは言及しなくてよろしいということでございましょうか。そうしますと,これを?として立てる意味についてなんですけれども…。はい,山田委員。 |
○山田委員 |
そういうふうにしていただいた方がいいと思うんですが,その一つの理由というのが,ボランティアの人たちのかなり多くの部分だと思うんですが,本来,公的に外国から来ていて日本で生活している人たちに対する言語の教育についての何らかの取組というのは,保障されるべきだと思っている。であるにもかかわらず現状でそれがなされていないので,自分たちが能力も,それから時間的なものとかそういう物理的な条件も十分ではないんだけれども,今こうやってやらざるを得ないんだっていうことをずっと主張してきて,それを何とか本来責任が持てる主体に変わってほしいと思って,自分たちはそれまで踏ん張っているという,そういう意識が一方にある。それを文化庁国語課がある種のこういう施策によって,ボランティアを利用してみたいな,そういうふうにやられているんじゃないかと誤解した考えを持っている人たちがかなりいるわけです。 ですから,その御努力も十分に分かっているんだけれども,そういう場に対して国もこれだけのことをある程度やってきていると…。それが人々の気持ち,それから国の政策,というようなものを変えていきながら,より理想的な形にしていこうという過程にあるというようなことを,何らかの形で示しておいていただいた方が,そういう誤解が解けていくっていうか。最初から何でも理想的な形っていうのは私は難しいんだろうと思うんですね。それを一つ一つ積み上げていく中で,国としてもこれだけのことを今しているというような,そういうニュアンスで書かれた方がいいと思います。 |
○西原主査 |
分かりました。中野専門職のお立場に,かつて山田委員もいらっしゃったし,後ろの方にいらっしゃる野山さんもいらっしゃって,代々のそういうかかわり方の中で,徐々にではあるけれども方向を探ってきているわけですね。そこをどういうふうに上手にここのところに反映させるかというときに,確かにおっしゃるように国語審議会の答申だけが走ると,ちょっと難しいかなということであろうかと思います。 それでは,?に戻らせていただいて,?はこんなようなことでよろしいのでしょうか。「外国人の現状」っていう言葉は,どぎつくないでしょうか。それから,「日本語と日本語教育の在り方について」という,2の(1),(2)というような,こういう項目立てでよろしいでしょうか。 |
○杉戸副主査 |
二つ申します。一つは,?の1の第2パラグラフですね,「このように」から始まる2行です。ここの,「このように」というのが何か続きが悪いなと気になります。 |
○西原主査 |
上を受けてないっていう。 |
○杉戸副主査 |
そうですね。 |
○西原主査 |
そうすると,「このように」はなくてもいいかと…。 |
○杉戸副主査 |
残すとすれば,「このような」というふうに,「多文化化の現状を受け」という方がいいと思います。 それから,「重要性が述べられている」というのも,提言の中で述べられているということなんでしょうが,「指摘されている」の方が迫力があるかと。まあ,それだけのことです。それらは表現上のことです。 もう一つ申し上げたいのは中身にかかわることで,?の2の(2)ですね。ここの2行目から3行目にかけて,「その際,日本に暮らすすべての人が等しく社会参加できるように十分に配慮する」と。ここに少し追加したらどうかと思うのは,この参考資料1の「検討課題」の右下の5の辺りを議論した時のことを思い出しているのですが,この辺りは,「他の政策との連携の強化」ということの中で,具体的には介護とか福祉とかあるいは災害時の安全とかそういったことの政策,ほかの政策の中に具体的に入るんだという,そんな議論があったかと思うんですね。それを,ここの2の(2)の中になら入るんじゃないかと…。ほかに具体的に書けそうなところはないかとさっきから見ているのですが,この段階で具体的に書き込めない段階のものであるとすると,例えばですが今読み上げた「日本に暮らすすべての人が」の後ろに,「健康かつ安全に等しく社会参加できるように」というように入れておくと,健康の方には福祉とか介護とかが入り,安全っていうのは災害時の何とかっていうそういうのが入り,そういった議論も反映できるんじゃないかと考えたわけです。いかがでしょうか。 |
○西原主査 |
はい。もう一つの可能性としては,?の1.の後ろに2.を作って,そこに現状とこれからの課題として,少し膨らませても大丈夫ですね。 |
○杉戸副主査 |
そうですね。それだと課題になります。 |
○西原主査 |
そして,2が3になると,何かそういうことを。 |
○杉戸副主査 |
これの重みを与えてもいいかもしれませんね。 |
○西原主査 |
ええ,書き加えられないことはないですよね。又は,現状というところをもう少し書き足してみるということもあるかもしれません。?の2は,日本語と日本語教育ということを考えているので,先ほど杉戸副主査がおっしゃった健康と安全ということはもちろん入れるけれども,「他の政策との」というところを,1の現状のところにもう少し加えていくということもできないことではないかもしれないですね。それはいかがでしょうか。 |
○杉戸副主査 |
?の1に入れるとすれば,正に現状の問題点の方に力点が置かれると思うんですね,こういう状態で今あると…。2の方に入れるとすると,だからこういう課題があるというふうに,ちょっと微妙な差が示せると思う。 |
○西原主査 |
具体的には,「社会参加」の前に杉戸副主査がおっしゃったことを入れると。 |
○杉戸副主査 |
はい。そうすると,まあ。 |
○西原主査 |
?に関しましてはいかがでしょうか。 |
○佐藤委員 |
やはり,今,主査がおっしゃったように?のところに,社会の多文化化に伴って多様な層の人たちがかなり増えているんだということを,2のところでこれは強調しているわけですから,多様であるが故に,日本語教育そのものが問われ始めてきているということですから,是非?の,もう一つ項目を立てて入れていただければ,非常に分かりやすくなってくるかなと思いますけれども。 そうすると,例えば,今,杉戸副主査がおっしゃったように,検討課題の5のところにかかわるような様々な意見の問題,あるいは私どもに直接かかわる子供の問題なども当然入ってまいりますので,今までにない新しい状況の中で日本語教育も多様化を迫られてきているということを強調していただいた方が,論理的に分かりやすくなるかなと思いますけれども。 |
○西原主査 |
実は,後で申し上げることですけれども,骨子としてアウトラインを今日は固めていただきますけれども,それから1月21日までの間には,骨子案の修正案を先生方に別途お送りして,かつフィードバックを頂いて,1月21日までにもうちょっと中身を増やした上で,再度確認していただくという予定です。ですから,2についてはもうちょっとメモを頂くという,そういうことをよろしくお願いいたします。 |
○尾﨑委員 |
今日,頂いたのは骨子ということなので,骨子そのものをどう組み替えるかという議論と,もう一つは骨子にどう肉付けをするかという面があって,ある部分はまとめてくださる文化庁の方で,これは肉付けにしようとか,これは別立ての骨子にしてみようっていうことで御判断いただければいいと思うんですけれども。まず,佐藤委員が今おっしゃった子供の問題とか,これはもう最初の会議から出ていることなので,これは非常に大きなことだというのはみんなが了解していますから,そのことを少なくともここで話題にしたという証拠が残るようにしていただきたいと思います。 それから,日本語教育は当然世界的な規模で考えるという面もあるというふうに言ったつもりなんですけれども,今日のまとめを見ていると,それに関連しているようなところがあります。それは,2の(2),「多文化社会に対応した日本語教育」という項目の最後です。「国益に資する戦略的な言語政策の検討」っていうところのこの具体的な中身というのは,多文化社会に日本ということを超えているものが何となく含まれているようで,このヘディングとこの戦略的言語政策の関係がちょっとあいまいかなと…。むしろ東アジアとか,先ほど中野委員がおっしゃっていたようなことも含めて。ですから,余り国内の地域の外国の方に収斂し過ぎちゃうとまずいような気がするんですけれども。 言いたかったことは,飽くまでも議論の焦点は,地域に暮らす外国の人の日本語教育ということだと思いますけれども,一応ここは日本語教育小委員会ということで考えたときに,もうちょっと世界的な視野で日本語教育を見ていかなきゃいけない,それは戦略的言語政策の意味かなって私は読んでいたのですが,いかがでしょうか。どこかに項目を立てるとするとどうしたらいいか,分かりませんが…。 |
○西原主査 |
具体的な文言としましては,この最後の「国益に資する戦略的な言語政策」ということに,さらに,世界的な視野からとか,そういうことを入れるということでございましょうかね,取りあえずは。 |
○尾﨑委員 |
そういうふうに入れた場合に,この(2)のヘディングと整合性が取りにくいかなと。 |
○西原主査 |
国内のと限定しているわけではないので。 |
○尾﨑委員 |
わけではないんですね。 |
○西原主査 |
「これからの社会」っていうのは,別に日本である必要もないわけですよね。 |
○尾﨑委員 |
しかし,読む方はそういうふうに読まないと思います。 |
○西原主査 |
読まないというと。 |
○尾﨑委員 |
はい。頭がもう,国内における外国人の現状ということでストーリーが作られているので,そうすると「国益に資する戦略的な言語政策」の中に,海外における日本語の位置付けとか,日本語教育のあるべき姿っていうのは文脈的には含めにくいですよね。そこら辺をちょっとクリアにしていただいた方がいいような気がしたという感想です。 |
○中野委員 |
それと私も全く同じことを思っていたんですけれども,最終的にこの日本国内の地域における日本語教育を考えるというのは間違いないんですけれども,それを考えるときに,その人たちには外国にルーツがあるわけですね。そうすると,当然本国での日本語教育にすごく影響を受けてしまうことがあると思うんです。あるいはそこを配慮すると,もっと効果的になることも考えられたりするので,関連していることを,単にその他として位置付けるのではなく,最終的に地域なんだけども,そこにつながっている非常に重要な問題があって関連することがきちんと位置付けられるとすごくいいと思ったんですね。ちょっと違うことですけれども,毎度言うようですが,外国語というのがやっぱりこの中に消えてしまっているんですね,日本人の外国語学習が。やはり,日本語教師も学習者の母語を知っていた方がすごく効果的だったり,あるいは子供たちのケアをしたりするときも,外国人の母語を知っていることでものすごくケアが進むことは多いと思うんですね。多文化共生あるいは多文化社会という,この中で文化のことはすごく尊重されているんですけれど,多言語であるという部分が全然今ないですよね。その人たちは文化が違うだけじゃなくて,本来言語も違っていて,日本語を共通言語にするっていうのはもちろんそれでいいと思うんですけれども,そのときに多言語の状況の中で日本語を共通言語にするっていう視点がどこかに,支持していただけるかどうか分からないですけど,やっぱり入れておく必要が私はあるかなっていうふうに思うんですね。 |
○西原主査 |
そうですね。この(1)の中で,「文化の相互尊重を前提としつつも,日本語という共通のコミュニケーション手段を持つ」ということが,例えばこの2の中では,日本語っていう話をしているということになろうかと思うので,おっしゃったような視点は,むしろアラビア数字の1の中に,又は2を作った中にそれらのことが入って,この2が3になって,ここでは日本語と日本語教育の在り方を論じているので,そこのところを余り不自然に膨らませるというよりは,むしろ2のところにそのようなことを入れて…。 |
○中野委員 |
大きな現状認識の中で。 |
○西原主査 |
ええ,現状認識の中にということは必要なんじゃないでしょうか。 つまり,多文化共生ってことを考えるときに,一体何を皆さんが考えているかっていうのが,読者によってもみんな違うと思うんですね。例えば,今の多文化共生は,強制居住区域ができているっていうようなことも含めているわけですね。つまり,混じり合うんじゃなくて,圧倒的に在日が多い地区,圧倒的にブラジル人が多い地区,そして圧倒的に他国人,だれかが多い地区っていうのができつつあって,それも共生ですかという,そういう考え方がありますよね。言語教育の中では,バイリンガルであることとダイグロシアであることは全然違うことで,ダイグロシアっていうのは,X語の母語話者とY語の母語話者が全然交わらずに住んでいる状況っていうのをダイグロシアっていうわけですよね。 で,多文化共生っていうときの言語を文化で考えてみると,それも多文化共生なわけですよね。私たちが考えている多文化共生って一体何なのかというときに,頭の中までということと,それで言語が混じり合うというか併存するってことの意味をちゃんと定義しないといけないですよね。 そういうことを含めてなんですけど,この日本語教育っていうところでは,フォーカスを日本語と日本語教育からずらすと,報告書が,何か骨子がちょっと浮いてくるような気がするので,これもむしろ「国益に資する戦略的な言語政策の検討」というのの外へ出た方がいいんでしょうかね。 |
○佐藤委員 |
これ,戦略的な言語政策なのか日本語教育政策なのか,読んでいると日本語教育政策,しかしそれをやるためには言語政策,戦略が必要だという二段構えになっている。一挙に言語政策というふうになると,やっぱり非常に読みにくいということですよね。 |
○西原主査 |
言語政策という場合には,おっしゃるように外国語教育も言語政策の話ですし,何かそういう話になって…。 |
○佐藤委員 |
ですから,そこがどういうことなのかなっていうのは,私も気になりました。言語政策ということをそこまで広げてここで議論するのか。その検討も必要だというのは重々承知しておりますけども。 |
○西原主査 |
「言語」を入れないで,政策又は施策,戦略的な施策とする。 |
○佐藤委員 |
いや,言語政策そのものが必要だということを全体として主張したいのであれば,これは入れるべきかもしれません。しかし,論としては非常に飛び過ぎますよね,ここは。 ただ,主査がおっしゃったように分けて書くか,あるいはそこを,もう少し日本語教育政策であるとか施策の検討も必要だと。施策だとちょっと弱いのかもしれませんが。その上で新たな言語政策の検討も再度必要だというような書き方であれば,納得できるのですけれども。つまり何かというと,日本語教育というものを,言語政策を作った上で日本語教育政策というものをここで考えるのかと,そういう大きな議論にするのかどうかということですね。 |
○中野委員 |
さっき言いたかったのは,いわゆる日本語を共通のコミュニケーションの手段に持つということを鮮明に出したいわけですよね,論理的にそれが必要だという。その前段で,現状認識がきちんと,ここにもありますけど,文化の多様性を尊重するとか,それを含めた現状認識をちゃんと小委員会としてしているという,そこの中に何か一つ…。 今の?−1は,ただ数字,今外国人がこういう現状にいますということなんですけれども,それをもうちょっと,それに対して小委員会がどういう認識を持っているかっていうようなものが何か前段にあれば,?−2番に,そこに海外の日本語とか外国語とかが一切入ってこなくても全然いいんですけど,何かどこかに入れていただきたいと。 |
○西原主査 |
そうですね。日本語が大切というのは,多文化共生を極端な形で実現してしまった場合に,X語の母語話者あるいはX民族が,ある日本の地域を占めて自治を要求してくるっていう,そういう多文化共生もあるわけですね。カナダにおけるケベックのようになるかという,そういう極端なところを目指すのではなく,多分日本語という共通の何かこうドレッシングでいろんなサラダがおいしいっていう,そういうことをここでは考えてこういう文言になっていると思うわけですよね。そこのところを何とか間に挟んでいただく,文言の中に入れて,現状認識のところに入れていただくのではいかがでございましょうか。 |
○山田委員 |
このローマ数字?のアラビア数字の2の(1)のところに,せっかく「多様性に対する理解の促進」っていう部分があるので,今言われた多文化だけじゃなくて,多言語というようなことも含めて,そういうある現状での相互尊重を基にした在り方っていうのはそれでいいんだけれども,それでそれを尊重していって,このままそれは残していきたいと。それも一つのポリシーなんだけれども,もう一つそこで懸念されるのが,今言われたような,言語も文化も異なった者が,ある種,混じり合わずに共存するっていうことを我々は目指すのではなくて,それらの多様性を持った者がぶつかり合いながら第三の文化を作っていくということを,一つの豊かさだっていうふうに思いつつ,そのベースに日本的な,そういう日本文化がそうだというのも常識にしているパターンなんですけど,多くのものを互いに受け入れられる気持ちっていうようなものを,日本語教育の中で作っていけるようなそういう日本語教育を目指す,ある種の教育として目指すべきだという,一つの宣言みたいな形にしたらいいんじゃないかと思うんですね。 この場として目指す方向性っていうのは,いろんな可能性があるかもしれないけど,そのうちのこれにするんだと。今はサラダのドレッシングでおっしゃったんですけど,そういうものを目指しているんだと,ここに言っておいていいんじゃないかと思うんです。 |
○西原主査 |
じゃあ,その部分はそれで,事務局にお願いするということでよろしいでしょうか。 |
○尾﨑委員 |
一つだけ確認をお願いします。 日本語という共通のコミュニケーション手段を持つことが不可欠だっていうのは事実としてそうなんですけれども,理念的には多文化多言語を尊重するっていう,尊重するってことが原理であれば,日本語以外の外国語も可能な限りっていう考え方がありますよね。それはさっきの外国語教育につながることなんですけれども,具体的にポルトガル語なり中国語なりが社会的に機能する状況ってことは普通考えられないにしても,そういう言語教育なりそういう社会を目指すというのは理念として私はあると思うんです。ですから,「日本語という共通のコミュニケーション手段を持つこと」の,日本語だけっていうと,僕たちの枠組みで宣言している感じがするので,そこは若干引っ掛かりがありますね。 |
○西原主査 |
引っ掛かる人もいるだろうなと,私もこれを見て思いましたけど,逆にとっても大切なことは,じゃあ代案があるんですかというと,ないでしょう。つまり,日本語が共通の言語になって,一方的に適応してもらうのではないにしても,そこを,私は何か焼き鳥のくしっていうふうに考えているんですけれども,くし刺しにする,そのくしっていうものの位置は日本語だっていうことは,少なくとも文化庁国語課ベースの報告書ではきっちりしとかないと,さっきも言ったように多言語が好きなように林立してくださいという話ではなくて,だからこそ日本語教育施策っていうのが大切なんですよね。 どこまで,どういうふうに重みを付けるかっていうものがすごく問題で,歯止めを掛けなきゃならないその歯止めの範囲が,私がさっき言ったように,カナダの中のケベックのような状況を作ってしまうのではないかと…。そういうことまでを考えて共通言語日本語というのを前提にしておかないといけないのかなというふうに思うので。 |
○尾﨑委員 |
さっき山田委員がおっしゃったように,文化を尊重するっていうことと同時に言語も尊重するということをやっぱりきちっとうたう,それから,言語政策として考えたときに,日本人が英語一辺倒になるような状況でいいのかっていう意識は,この委員会でははっきり書かないにしても,戦略的な言語政策っていうところにそういうニュアンスが私は込められていると理解して,ここの文言自体,日本語を共通のコミュニケーション手段にするということについて全く異論はないんですけれども,そういうところが読む人に分かってもらえるとか,あるいは必要があったときに,ここにはそういうつもりで書いているんだと言えるような報告書であっていただきたいと,そういう趣旨です。 |
○西原主査 |
そうすると2の(1)のところが,さっき中野委員がおっしゃったようにもう少し書き加えられて,多言語尊重ということが(1)に書かれた上で,(2)のところではそういう施策ということが響いてくるという,そういうつなぎ方だったらよろしいわけですか。 |
○尾﨑委員 |
だと思います。 |
○佐藤委員 |
すみません。理念の2のところが,頭のところに理念を書いていただいて,要するに論理的に抽象度が高まれば高まるほど,何をやっているか分からなくなってしまうことがあるんですね。私たちは何を議論するのかっていう。そうすると,やっぱりそういう理念を入れていただくのだと,多分2の(1)に書かれて,その(1)のところの「日本語という共通のコミュニケーション手段を持つこと」がもしかしたらこれ必要だと,国策として必要であると。そして,そのためにはどういうことをしなければいけないのかっていうふうにしていただいた方が,いいと思います。何か全体を玉虫色にして,理念は結構なんですが,私たちが何を議論するのかってことが分からなくなってしまうと,結局,何にもつながっていかなくなってしまいますので,理念は理念として,少し簡潔に多言語多文化の尊重ということを1でうたう。そして,そのための言語政策が必要だと…。そして,そのためには日本語という共通のコミュニケーション手段というものが必要なのではないか。で,そのためには何をするかっていう議論を,そういう構成をしていただかないと非常に分かりにくくなってしまいますので,何か全体のところにそれぞれ入れ込まない方がよろしいのではないかなということです。 |
○山田委員 |
尾﨑委員がおっしゃったことを十分踏まえて。「共通のコミュニケーション手段を持つことが相互理解や社会統合のために必要不可欠である」の主語として,日本語をここに入れることについて,私は賛成なんです。日本語をここに据えたことで,日本語を保障するということを,社会及び社会を構成している一人一人の人間に伝えることだと思うので,私はこれをはっきりこういうふうに言うべきと思うのです。ただし,それを一方的な押し付けじゃなく,ほかの言語もほかの文化も受け入れるというのを,前の「文化の相互尊重を前提としつつも」といところで表す。ただ,何か「…つつも」がちょっとそこで逆転しちゃうような感じがするのですが。 |
○西原主査 |
「つつも」をやめて,「尊重し」,又は「尊重する。」。 |
○山田委員 |
うん,「前提とし」でいいと思うんですよね。 |
○西原主査 |
はい,分かりました。 では,?のところがとても重要だと思いますので,少し時間を掛けて?のところの議論をしたいと思います。これからの課題ということで,1,2,3という順序になっております。日本語教育の課題ということになりますが,まず教育の内容ということが,そこに挙がっております。これについては,いかがでございましょうか。1,2,3取り混ぜても結構でございます。この「今後取組むべき課題」のところは,今までの4回の会合かつ3回のヒアリングに基づいて立てられております。 |
○佐藤委員 |
「教育内容」というと,学校教育にいる人間としては何か狭い意味合いに聞こえてしまうんですけれども。言葉の問題かもしれませんが…。 |
○西原主査 |
シラバスとかカリキュラムの話。 |
○佐藤委員 |
カリキュラムが多分一番分かりやすいと思います。教育内容だと,例えば,学習内容とどう違うのかっていう話にもなりかねませんので…。日本語教育の世界で教育内容というと,そういう広い概念としてお使いになってきたのか。その下を見てみますと,「教育内容及び教育方法」とも書かれています。それじゃあ,方法の話は内容の中に一括するのかという。その辺のところを,何か課題として出すのであれば,もう少し包括的な…。 |
○山田委員 |
これ,恐らく1と2が対置されていて,1の方が内容で,2の方が体制だと,そのぐらいの意味なんじゃないかと。 |
○佐藤委員 |
取りあえず,まずそういう意味合いでよろしいんですよね。 |
○山田委員 |
ただ,そのためには誤解を生まないようなタイトルにしといた方がいいんじゃないか。 |
○西原主査 |
目標とか,何かそういう。 |
○佐藤委員 |
目標,内容,評価,方法,それらの全体を通して,まず学校教育の中ではカリキュラムとかって言いますよね。 |
○西原主査 |
ええ,そうですよね。 |
○佐藤委員 |
そして,そのカリキュラムとそれを支える体制整備とは一般的なんですけれども。 |
○西原主査 |
カリキュラムというのは片仮名語なのですが,よろしいでしょうか。 |
○杉戸副主査 |
構いません。 |
○尾﨑委員 |
定着しています。 |
○西原主査 |
でも,例えばカリキュラムというと,ナショナルカリキュラムとか,そうすると国全体の言語教育にかかわる方針,ナショナルカリキュラムを指すこともあり得ますよね。 |
○佐藤委員 |
カリキュラムって言うときに,例えば私たちがアメリカなどに行ってカリキュラムを見せてくださいと言うと膨大なものを,つまり,ものすごいシラバスみたいなものを含めて持ってきますよね。ですから,別にナショナルカリキュラムだけではなくて,個々人が実践する授業実践そのものがカリキュラムだったりするんですけれども。いずれにしても,ここは,もうちょっと広い概念としてくくった方が分かりやすいかなって感じはします。 |
○西原主査 |
何かよいアイデアはありますでしょうか。 |
○佐藤委員 |
そうですね,ちょっと今すぐじゃ無理かもしれませんが。 |
○岩見委員 |
例えば,今まで議論されてきたことは,要するに,生活者のための外国人の使っている日本語,スタンダーズを決めていくということで,専門家の果たす役割,ボランティアとの役割の分担とかあります。そういうことの中で,生活者のための日本語の教育,スタンダーズと言いますと,教育の内容とか方法とか評価とかすべてを含んでいるわけなんですけれども,その辺りを包括するような何か言葉があればと思いますけど。例えば,内容,方法,評価,そういうふうに並列して書くとかは,どうでしょうか。 |
○西原主査 |
教育内容っていう言葉を聞くと内容が書いてあるんだろうと,目次的には思ってしまったりするけど,ここは内容が書いてあるわけじゃないんですよね。必要性とか,それからどういうカリキュラムが立つかとか。それから,多様化ということは一体何を意味するのかみたいなことが,中ポツの中の内容ですよね。そうしますと,これは項目立てとしては「教育内容」じゃない方がいいのか…。 |
○中野委員 |
この,日本語教育の在り方ですか,内容,方法とかすべて含んだことですよね。日本語教育の中身をどうするかということですよね。 |
○西原主査 |
そうですね。 |
○杉戸副主査 |
取りあえず,さっき佐藤委員のおっしゃったのを入れれば,四字熟語じゃなければいいわけですよね。 |
○西原主査 |
教育の内容。 |
○佐藤委員 |
それであるとですね…。それなら,日本の教育の在り方と,大きい教育の…。 |
○西原主査 |
教育の課題とか。 |
○山田委員 |
在り方にすると,2も入っちゃう。だから,そこを分けるの結構難しいですね,これ,今考えても。 |
○佐藤委員 |
これは後で宿題にして考えてくると…。 |
○西原主査 |
各委員に出してもらいましょう。この中ポツの内容はいかがでございましょうか。これはヒアリングの2回目及び3回目ですが…。 |
○山田委員 |
その前なんですが,1行目,一番上ですね。「地域における日本語ボランティア及びその団体は数的には充足しつつある」というのが,最初にこれが出てくると,そこをうまく利用していけば余りやるべきことはないみたいな,そういうふうに解釈されかねない。1行目にこれが出てきて,かつ,整備すべき点が少なくないということを言っている。外国人は地域的に偏在していますが,点在している地域では,外国人が学びたいと思ったときに学べるようなところはないと。それを通信教育とかそのほかでカバーしようとしているんだけれども,それに対応できるのはある種の学習適性がある人で,それが十分でない人は,はじかれちゃう人もいる。そういう人たちこそ,…」。ちょっとお金は掛かるかもしれないけども,法的な形での対応が必要だと言っている人もいるので,そういうことを考えると「充足しつつある」は,やめた方がいいんじゃないかと思うんですが…。 |
○西原主査 |
分かりました。しかも,?の教育政策のところでさっき山田委員が御指摘くださったように,こんなこともいろいろとしてきたということが述べられた後に,ここが来るわけですよね。数的には充足ということだけじゃない,いろんな側面があるので,ここをもう少し包括的な書き方にした方がいいという御指摘でしょうか。 |
○山田委員 |
はい。 |
○杉戸副主査 |
ここの1行目に,なぜ地域におけるボランティア及びその団体のことが出てくるのかとちょっと不思議だなと私も思っていたんです。つまり,これは前のページの一番下の?の2のところを,ちょっと受け過ぎているんじゃないかと。 ですので,ローマ数字?というのの前文としては,例えばですが,今話題になったところを全部削っちゃって,「これまでの取組によってもいまだに解決されない課題や,新しい課題への具体的な対応策の検討が必要となっている」とだけ書いておけば,いいと思います。ボランティアあるいはその団体の数のことが,この課題の前文に出てくるのはおかしいというか,重過ぎる扱い方だと思うんです。 |
○西原主査 |
そうですね。この中に,先ほど佐藤委員がおっしゃった年少者の部分が含まれるのか。それから,受容する社会が外国語をどのように学ぶかということも含めて,中野委員のポイントというのが,ここに教育の内容ないしは総合的に考えるべき教育的課題というようなことに入っていくのでしょうか。教育的課題,教育の課題とすれば,ここにはいろんな課題が入ってくるということになると思うんですけれども,そこまでは含まなくてもよろしいでしょうか。 |
○山田委員 |
含んだ方がいいんじゃないですか。 |
○西原主査 |
そうですね。それから,地域性に応じたそれぞれの日本語教育ということだけでよろしいでしょうかね。つまり,持ってくる文化言語的背景,住んでいる地域ということだけではなくて,に対応した中身というのも一つですよね。 |
○中野委員 |
それに関連して,最初に「日本に在住する外国人の増加に伴って」とありますよね。増加っていうんだったら数字だと思うんですけど,その中身の対応というのをもうちょっと言うために,少し補強できるといいなと思ったんですが。いわゆる日本語教育をする学習の目的というんでしょうか,あるいは対象といってもいいし,あるいは住んでいる社会が抱えている課題みたいなものによっても随分違ってきましたよね。「日本語教育のニーズは多様化している」と行く前に,属性の広がりについて触れて,その中に年少者っていうのが見えるような文言も入るといいのではないかと…。 |
○西原主査 |
そうですね。正確に言えば外国人じゃないですね。この1ページのところに国際結婚のことが書いてありますけれど,国際結婚の子弟たちは日本人なので,国籍としては。文化的背景は違いますけれども。だから,ここで外国人と決め付けてしまうのはもしかしたら短絡的なことかもしれないですね。 |
○杉戸副主査 |
この資料を,次の段階で,この報告書の骨子をまとめる過程では,今の中ポツの活字の小さくなっている項目はこういう姿で残るんですか。それとも…。 |
○中野専門職 |
今日,議論していただきたいことの一つですね。いろいろ検討すべき課題はあると思うんですね。その中でも特にここをというものをやはり議論していただいて,実際にそれを来年度以降,具体的に議論して取り組んでいくというようなことを考えたいと思いますので,全部取り上げていただいてももちろん結構ですけれども,その中でも特にというものを御議論いただけると有り難いと…。ですから,今の副主査からの御質問への答えとしては,すべて残していただいてもいいと思っておりますが,どうでしょうか。 |
○西原主査 |
これが文言として書き込まれていくという,そういう段落的に,こういう段落があるっていうことが今の御提案ですよね。これは要らないという御提案もあり得るでしょうし,もっと書き加えてという御提案もあり得るでしょう。 |
○杉戸副主査 |
一つはまとめ方,体裁の問題として,「1」の教育内容で2行,主文のようなものがあって,中ポツの箇条が4項目並ぶという,そういう見掛けになるのか,それとも,この中ポツの箇条は何か文章の中に,うまく書かれるのか。それによって今の,つい先ほどの議論は,例えば中ポツで言うと二つ目か三つ目にかかわる話かなと思って聞いていたんですね。それは,箇条書にすると,きちんとどちらかに,先ほどの学習者の多様性とかそういった要素を入れるかという議論をよりはっきりさせなきゃいけないけれども,文章の中に溶け込ませるというまとめ方をすると,要点だけをメモしておいてもらって,文章化してもらえばいいと…。 |
○西原主査 |
報告書ですから,文章としてまとまっていくと,事務局は受け止めていらっしゃったように…。それは,これから2週間の宿題だと思っていらっしゃるのではないでしょうか。 |
○中野専門職 |
そうです。 |
○西原主査 |
それでよろしいでしょうか。 |
○中野専門職 |
はい。 |
○西原主査 |
つまり,これは報告書になるので,報告書として書いていただく。そのための骨子を今検討していただいているということですね。ですから,これは入れるな,又はこれは入れろという御指示は積極的に頂きたいと。 |
○国語課長 |
体裁としては,文章に全部入れ込んじゃうというやり方もあるでしょうし,今のような形で箇条書に並べるということもあるとは思います。例えば,ここに書かれているものの多くは,何々について検討する必要があるという書き方がされているので,例えばそれであれば,まとめて検討課題として簡潔に示すということも考えられると思います。 |
○杉戸副主査 |
私個人の意見としては,今,課長のおっしゃったような方がいいと思います。つまり,報告書,今後取り組んでいく課題という表題で,そういう報告書を出すとすれば,問題のある課題は箇条書の方がいいだろうと思うんです。 |
○西原主査 |
見えやすいですね。 |
○杉戸副主査 |
はい。 |
○西原主査 |
佐藤委員が,お時間の都合で先にお帰りにならなければいけないもので,佐藤委員から御意見を。 |
○佐藤委員 |
さっき主査が地域性とおっしゃっていただいた,これ例えば,子供たちの持っている,外国籍やあるいは外国につながる人たちの持っている,そのそれぞれの文化に代えてというふうになると,読み取るというのは非常に難しい面もありますよね。だから,逆に言うと,抽象度の高いもの,コミュニケーションもそうかもしれませんけれども,より具体的な形で議論する必要があるのであれば,入れていただいた方が分かりやすいかなと思いますね。これは飽くまでも,要するに提供する側からのこういう課題ですけれども,学習する側から見ると,違う課題がまた見えてくるので,そこは少し具体化していただいた方が有り難いというふうに思います。 |
○西原主査 |
はい。「体制整備」,「連携・協力」の項目についても,佐藤委員,時間が足りなくなる前に何か御意見があれば。 |
○佐藤委員 |
何かありましたら,途中で手を挙げさせていただきます。 |
○西原主査 |
はい。 |
○中野委員 |
報告書の書き方と関係するんですけど,小委員会の報告書となるとやっぱり一番大きかったのは,インタビューというか,毎回発表があってそれを踏まえてというのが大きかったですよね,何をしましたかと言われたら。その発表を踏まえて,こういう箇条書のいろんなコメントが出てきたという。 |
○西原主査 |
ただ,これは経過報告ではありませんで…。 |
○中野委員 |
もちろん,そうなんですけど,中ポツの前段になっている内容,いわゆる4回にわたってやった内容っていうのは,ちゃんとどこかに入るわけですよね。 |
○西原主査 |
そのままの形では入らないと。また,この部分は入れるべきだという御意見があれば,それはもちろんそうだと思いますけれども…。飽くまでもこの委員会が主体的に今までのお話を伺って,何を我々の課題とするかというところが,この報告書になると思うので,あの人の言ったあの部分は是非含んでおいた方がいいという御意見はもちろん積極的に頂きたいと思うんですけれども。 |
○中野委員 |
どういうヒアリングが行われたかというのは出てこないということですね。 |
○西原主査 |
こないです。 これ多分すごく重たいですよね。「体制整備」の中ポツの1ですけれど,「国が行うべき日本語教育の政策的位置づけを明確にし,大きな枠組みを示す」。これ。 |
○中野専門職 |
ガイドラインとしてのカリキュラムといったものを示す必要があるのではないかという議論が,第3回の小委員会の中であったと思うんですけれども,ここに大きな枠組みというふうにしましたのは,地域の特性というものがあるので,必ずしも一つの枠組みをもって,具体的に対応することはできないけれども,大きな枠組みを示すことによって,地域で活動する支援者の方であるとか,専門家の方であるとかが活動しやすくなるのではないかというような御指摘だったかと思いますけれども。 |
○西原主査 |
具体的にはヒアリングの中では,例えばドイツではワークビザをもらったら何百時間,ドイツ語を学ぶということになっています,というようなことも大きな枠組みというんでしょうかね。 |
○中野専門職 |
そうですね。私が第3回のヒアリングを聞いて,すぐにイメージしたのは,オーストラリアで成人の難民・移民に対する英語教育の中で示されているガイドラインとしてのカリキュラム,非常に漠としたものでありますけれども,ポイントは押さえられているものです。 |
○西原主査 |
そうですね。それは教育の内容も含むと同時に制度的なバックも含みますね。 |
○中野専門職 |
そうですね。 |
○西原主査 |
つまり,休職した後の再就職義務っていうのを企業が負うっていうこととか,それからその間の保険は保障されるとか,そういうことも含めて移民の人たちは英語を学んでよろしいということになっていますね。そこまでを我々がここに含めるかというと,ちょっと及び腰でしょう |
○中野専門職 |
そうですね。ただ,以前,文化庁の研究協力者会議で教員養成の内容について,大きな枠組みを示したことがございます。現在,地域のボランティアを中心とする支援者たちが一体何をどのように,教えるというか一緒に学んでいけばいいかが千差万別であります。 そういったところに一つ参考になるようなものが,この小委員会で必要だというようなことが提言されれば,例えば今,文化庁で実施しております生活者としての外国人のための日本語教育の事業がございますが,中に,カリキュラム開発の研究事業というものもございまして,来年度以降,成果が順々に示されるわけでもございますし,国立国語研究所では,またその基盤になるようなデータベースの整備というものも進行しておりますし,そういうものが報告書においても,後押しされれば,地域における日本語教育は,更に充実していくのではないかという思いがございます。 |
○西原主査 |
はい。それから,尾﨑先生が3回目のところでおっしゃった,日本語教師という,又は日本語教育ということが,社会的にどのように認められ,定義されていかなければならないかということによって,自分の職業として誇りを持つということにつながるというような御意見がありましたよね。そこら辺のところも。つまり収入が増えて,それで食えるようになるとかそういうこととは別に,日本語教師の役割っていうのも,「体制整備」の中に入れていかなければいけないことかもしれないですね。 |
○佐藤委員 |
今,中野専門職のお話を伺うと,教育の内容にかかわるような,ガイドラインみたいなお話を少しお考えのような感じも受けるんですが,一つだけ伺いたいのは,「体制整備」というときに,書かれている上の4行の文言は何となく分かる,役割ということですけれども。具体的に何を,ここで言うのか。今の日本語教師をどう位置付けるかという,これは制度上の話です。これはよく分かるんだけれども,ここの体制整備というときの中に,例えばカリキュラム,ガイドラインについての話になると,教育の内容ともかかわってくるので,その辺の切り分けが,ちょっと今伺っていて,よく分からない。これから何か私たちは宿題としてやるんだろうと思うんだけれども,その辺りのところが,もうちょっと具体的に提案されるときに,体制整備というものと教育の内容,連携・協力というものとの切り分けを,もちろん密接に関連しているんだろうけれども,やっぱり提言していくときには,切り分けをして何かを指摘していかないといけない。もうちょっと何か具体的に,分かる範囲で結構ですが,教えていただければ有り難いんですけれども。 |
○西原主査 |
今,中野専門職がおっしゃったようなことは,もしかしたら1の方に入るようなことかもしれませんね。 |
○中野専門職 |
そういうことです。むしろ,2の「体制整備」というようなところで言えば,中ポツの一番下にあるようなことが,例えば,「広域行政機関としての都道府県の役割を明確化する」というようなところ,そういう…。 |
○佐藤委員 |
「都道府県の役割を明確化する」というとき,この「広域行政機関としての都道府県の役割」というものを,多分いろんなネットワークだとか,制度上の問題であるとか,推進する組織の問題だとか,そういうようなイメージでいいんですか。そういうことを,この「体制整備」という概念で語ろうとしているという,そういう意味ですか。 |
○中野専門職 |
そうです。中野委員が先ほどおっしゃったように,1はいわゆる日本語教育の中身の話ですね。2は,その「体制整備」。つまりは中身を動かしていく制度であるとか団体であるとか,そういったところのかかわりといようなことになるので…。 |
○西原主査 |
そうしますと,例えば,日本語教育っていうのを課程認定する,教師を課程認定するとかっていうのも,この「体制整備」と考えてよろしいのでしょうか。これは佐藤委員から難しいぞという話がのっけからありまして,だけども,それはつまり外国籍の子供が入ってきたときに,日本の学校が負うべき義務というようなことの中に,先ほど日本語というものが共通の情報伝達及びコミュニケーションの手段として位置付けられているということであれば,教師はそれに対応しなければならない。後は教育制度が,それに対応していかねばならぬということになっていくわけですよね。そういう提言も含んでいる…。 |
○中野専門職 |
発言が多くて大変恐縮なんですが,この報告書の特に?番の部分については,できるだけ具体的で実現可能なものを載せていきたいんですね。それは,いわゆる報告書のための議論ではなくて,実際の活動につながるようなものをここに残していきたいという気持ちがあるからです。そういう意味で,優先順位を付けていただきたいと思うんですが,もちろん今おっしゃったようなことも課題としては取り上げていただいても構いませんが,全くできもしないことは書きにくいので。 |
○西原主査 |
ただ,どこかで旗が揚がらないとできることになっていかないという,そこのところはどうしたらよろしいのでしょうね。 |
○佐藤委員 |
二つありますよね。旗を揚げて推進役になるということと,もう一つは具体的に文化庁そのものがこれから具体的な政策を展開していくときに,実現可能なものを優先していくのか,あるいは課題と具体的な施策というふうに分けていくのかということは分かりませんけれども。体制整備というふうに言われてしまうと,今のような制度改革というような話になっていき,旗振りの部分も多少ないと制度改革になっていかないという思いもあるんです。そこをどうしたらいいのかっていうことと…。 分かりました。そうすると,「連携・協力」というのは,それを進めていくためにどういうふうにして関係機関が連携・協力をしていくのかということを,イメージとしては考えればいいということですね。制度を動かしていくために,あるいは教育の内容を。 |
○中野専門職 |
日本語教育の内容,それを動かすのはボランティア団体であるとか,日本語学校であるとか,あると思いますが,これまでのヒアリングを受けて,日本語の問題だけで地域の教育の課題は解決されないということがかなり明確になったと思うんです。そうした場合,日本語以外の関係機関との連携というものが非常に重要になってくると。最初の「検討課題」の5の部分でも五つ並べてございますけれども,こういったことを可能な限り言って考えるということが必要であるということでございます。 |
○西原主査 |
経団連の井上さんが随分,経団連としての体制整備についてお話しになりましたよね。そこは多分,この?の2の「体制整備」の中には入っていかないと思うけれども,ただ,そういう経済団体が考えていることとの連携というのは,この3の部分には入ってくるということじゃないでしょうか。 |
○佐藤委員 |
ありがとうございました。 |
○国語課長 |
?の2と3というのは必ずしも明確に分けられない部分もあるんだと思います。
多分,連携・協力というのは,ある意味,体制整備の一環でもあるので,例えば制度改正にかかわる話っていうのはどうしても関係するほかの機関のことがありますので,そういうところと当然,連携・協力しなければ実現できないので,ここは2でもあるんだけれども3でもあると。 最初に佐藤委員がおっしゃった,日本語教育の政策的位置付け,大きな枠組みというのは,昔はよくボトムアップなのか,トップダウンなのかとそういう議論が,ヒアリングの時に,杉戸委員の方から提起されたことがありました。地域の実態に合わせてやらなきゃいけないという指摘がある一方で,やっぱり国が大枠を示すことが必要だみたいな,両方があったんで,その関係はどうなのかっていうところから,多分,国は,大きな部分を示す役割ですよという意味で,ここには書いてあるので,制度的に必ず日本語教育の時間を保障しようという,そういうことではないように私は記憶しているんですけれども。 |
○西原主査 |
そうですね。かつ,文化庁国語課がこの報告書を読んで,次に予算要求すべき課題っていうか,次のお仕事というのに直接つながっていく部分も含まないといけないですよね。こういうことが報告書で書かれたので,私たちはこういうことをしますと言えるという,その方向付けも重要な方向付けになりますよね。 |
○杉戸副主査 |
今の点は,課題の2の「体制整備」の最初のポツが「国が行うべき」というふうに書き始めの1行だけになっているんですけど,参考資料3を見ると,飽くまで地域の役割と課題領域と国が行うべき政策的位置付けと,対比的に書かれている中の国の行うべき仕事なんです。 それが,今日の資料のこの課題の書き方だと,地域でやることとの対比の中でというのが箇条書からは消えちゃっているわけで,それでもっと大きな話まで,例えば「国益に資する戦略的な言語政策」なども,私はこの項目に読んじゃうわけですよ。それも含めるかどうかも議論が必要なんですけれども,「体制整備」の中で「国が行うべき」というのは,やっぱり地域の,都道府県とかそういう地方自治体がやるべき仕事との対比の上で,あるいは非常に具体的に言えば,参考資料1の検討課題の4の「日本語教育拠点の整備」っていうのが,この案の中に消えているなと思うんですけれども,そういうことを国の,これは全体として拠点の地域的なバランスとかを考えるのは国の立場なんでしょうから,そういうのを入れる,具体的な課題を示すという,そのきっかけとして,この最初の箇条は必要だと思うんです。そういうことが言いたかった。 |
○西原主査 |
その体制というのがあるようでないようなっていうところが,今の大きな問題ですよね。このごろ高校生たちに面接するチャンスがあったりすると,日本語教師になりたいという人口がものすごく多いっていうことに気が付きますね。この間は何か全然関係のない中学校の風景というのがテレビに出てきて,それを見ていましたところ,中学の卒業の時に,将来なりたい僕,私みたいなことを書く時,日本語教師って,全くそういう文脈とは関係ないところで,日本語教師というのが黒板に書かれていることに気が付きまして,中学生が将来の自分は日本語教師って思っているっていう世界があるんだなってことを,高校生だけじゃなくて気が付いたんですね。その時に,なりたい職業のうちの,ノンノ,アンアンのたぐいでは日本語教師ってとっても大きな部分を占めつつあるということの中で,我々日本語教師たちは「さあ,いらっしゃい。」ってどういうふうに言えるのかっていう問題がありますよね。これは尾﨑委員のポイントにつながっていくと思うんですけれども。「さあ,いらっしゃい。」って今言えない現状っていうか,あなたたちは今そう思っているけれどねって言わざるを得ない現状っていうのを,どうしたらよろしいかということも含めて,体制整備っていうのがあるんじゃないかなって考えております。これはどうしたらいいんでしょうか。 |
○尾﨑先生 |
何も知恵はありません。コメントだけです。 地域の日本語教育の実施主体,あるいは責任の所在っていうのを,もうちょっと明確にしていかなきゃいけない。で,この文言を読んでいると,何かボランティアがかなり主体のような書き方があったり,それから先日見ていた麻生外務大臣に提出された,日本語教育懇談会の文言を見ていても,ボランティアの養成をと書いてあるんですよね。だけど,一体だれが主体になるのかっていうのが見えない。 やはり,これは国もそうだし,都道府県もそうだし,市町村もそうだし,多分市民もそうだし,我々かかわっている者もそうだし,それぞれが責任を持たなきゃいけなくて,それをどういうふうに持ち合うのかっていうことだろうと思うんですよ。そこら辺りが,今話題になっている「体制整備」の最初の中黒の「国が行うべき日本語教育の政策的位置づけ」というところをもうちょっと広げていただいて,地域の日本語教育っていうのはどういう人がどういうふうに責任を持ち合うのかっていうようなことがもう少し書かれているといいかなという気がします。 |
○西原主査 |
これ,国が何をすべきかというのを,杉澤さんなんかは,とにかく国がっていうふうに言ってくれなかったら,地域は動けないというふうにおっしゃいましたよね。 |
○尾﨑委員 |
それで,すみません,ついでに言わせてください。この図を最初頂いて,4番目の「日本語教育拠点の整備」というところがあって,これが落ちていますって,杉戸副主査から御指摘があったんですけれども,こういうところを,やっぱり体制として整えていかないと,もうとても身動きならないので,そういうことは是非。しかも,文化庁はこれを推し進めやすいですよね,状況として。ですから,国の政策って漠然としているんだけれど,具体的には例えば教育拠点,どういう拠点でどういう仕事をするかっていうのを次に検討できるようだといいなという希望です。 |
○山田委員 |
それで,この3の「連携・協力」というところの文言が「日常生活全般に渡る学習者の多様なニーズに応えつつ,教室を継続して開催するためには」とあるのですが,この教室っていうのはボランティア教室だと思うんですけど,「継続して開催するためには,日本語ボランティアが,日本語教育及びその他の専門家,地方自治体等行政機関,地元企業等からの協力・支援を得るなど,関係者間の連携協力が欠かせない」とこう言っているんですけど,ここでは明らかに担うべき主体が「日本語ボランティアが」なので,ここはちょっと見逃せないなというか,これは異議が一杯出ちゃうんじゃないかと思う。これが,例えば,「地方自治体と行政機関は地元企業等と連携するなどして,日本語ボランティアや日本語教育及びその他の専門家の協力・支援を得るなど,関係者間の連携協力が欠かせない」みたいなそういう書き方だといいんだけれども,この書き方だと,やはり主体は日本語ボランティアなんだと,それにほかがサポートするんだと,そういうふうにしか見えなくて,これが結論だと考えられてしまうと,ちょっと問題かなと思います。 |
○西原主査 |
そうですね。そしてまた,しつこいようですけど,ボランティアってだれなのという,そういうことがありますね。例えば,課長がオフの時間を御利用なさって,X県の日本語教育体制整備に国家公務員としての経歴を生かして貢献なさるというのもボランティアなんですよね。で,日本語のプロの日本語教師が,その本務だけでなくて,ボランティアで先生方がもう既になさっていらっしゃるような地域の日本語教育を支えるっていうのもボランティアで,ここで言っているボランティアというのは多分,教室で自分の時間を提供して教育活動に参加する人というのがボランティアと,ここでは読めるような書き方になっていて,何かそこら辺のところがボランティアとして一くくりにされちゃうとあいまいだというのもあるし…。 それから,ボランティアということが単にお金を受け取らないということだけではないような書き方にも,善意のってここでは書いているような書き方になっているので,そこも整理していかなきゃいけないという,将来的には。今,山田委員がおっしゃったことが録音できていると思うので,そういうふうにちょっと書き直してみていただくと。 |
○杉戸副主査 |
今の山田委員の指摘の箇所を,私は別の観点から気にしていたのですが。つまり,3の1行目に,「教室を継続して開催するためには」とこう書いてあるんです。これが最大の目標なのかっていうふうに読んでしまったんです。それはやっぱりおかしいであろうと。一つの項目ではあるけれどもという意味ですね。それが一つです。 それから,これはお願いなのですが,ちょっと2の「体制整備」の3行目,「企業や大学等の団体」の中に,「企業や団体・研究機関」と入れていただけないでしょうか。 |
○西原主査 |
もちろんです。 |
○杉戸副主査 |
これは,私が本務のことを思っても言っているんですけれども,そうじゃなくて,もっと基盤となる日本語のいろいろなタイプの情報がやっぱり必要で,それは大学でもなさるんでしょうけれども,研究所もやりますので…。すみません,お願いです。 |
○中野委員 |
地域の日本語を考えるときに,地域によって抱えている課題は違いましたよね。その日本のいわゆる地域の拠点づくりみたいなことを考える上でも,やっぱりどういう地域があるのか,どういう類型化が可能なのか分からないですけれども,何か分析をするっていうのが必要な気がしています。地域がみんな同じ問題を抱えているわけじゃないし,多分拠点づくりだったら,日本語を母語としない方が多い地域から手を付けるのがやっぱりいいだろうと思うと,どういう地域にまず支援が必要かと。その地域はどう類型化されるかみたいな,何か現状認識があって,体制なり教育内容なりが検討されていいような気がしたんですけれども。 |
○西原主査 |
そうですね。そして今,外国人集住都市会議が走っています。その会議の中で検討課題に上がってくるようなことというのは,その部分を踏んでいる。となると,集住都市会議というのは,どういう母体なんですか。今年は岐阜県の美濃加茂市が開催都市でしたね。来年はまた別のところへ移ったりするんですかね。あれはどういう団体なんですか。 |
○中野専門職 |
飽くまでも,自主的に課題として考えている自治体が集まって検討しているものと認識しておりますけれども。 |
○山田委員 |
ちょっとだけ知っているんですけれど,浜松市長から提案があって,それで浜松市長のブレーンでもある国際化を担当している職員の人が,関係する同様のというか,そういうところに呼び掛けてできたというふうに聞いています。 |
○西原主査 |
そうですよね。で,浜松市長だった人は,11月1日から東京外国語大学の教授として研究部分を担うようになられましたけれども。だから,そういう情報収集,中野委員がおっしゃったような情報収集をするときに,国語課あるいは国語研究所がそういう外国人集住都市会議というところとつながれば,情報がかなり流れてきますよね。 |
○中野委員 |
何回かのヒアリングで,やっぱりそれだけでも,もう課題が類型化するパターンが見えますよね。 |
○西原主査 |
そうです,見えましたよ。 |
○中野委員 |
だから,それもというか,やっぱり報告書にあった方が良いのかなと。 |
○西原主査 |
何人がどこに多いか,三重県はアフリカ人が多いとかね,何かそういう情報っていうのが伝わってくるという。 |
○岩見委員 |
「検討課題」の1番がどういうふうにここに反映されるかが,ちょっと見えにくいところがありまして…。3も,例えばヤマハの浜松の提案のように,企業と日本語教育機関,研究機関との連携ということで,その内容そのものについてもやっぱりそういうことはとても大事なことだと思うんですね。その辺をどこかに埋め込んでほしい,内容的なところにも連携が必要だということだと思いますね。 |
○尾﨑委員 |
「体制整備」というところに一つ加えていただけたらどうかと思うんですけれども,井上さんも杉澤さんも確か発言の中に,コーディネーターという言葉が出ていて,コーディネーターは恐らく仕事の内容が多岐にわたると思うんですが,必ず日本語教育の内容とか学習活動についてコーディネートする仕事が必要になる。将来的には,日本語教育を目指している人たちが地域に貢献して,仕事になり得るところというのはそこかなと…。で,実際必要ですから,それを入れていただけると,この4番の教育拠点とくっ付けて,是非引き続き検討してほしいと思います。 |
○杉戸副主査 |
Ⅲ−3の上から5行目,「国益に資するような戦略的な展開を検討することが必要となっている」という,その「検討」の2文字を取ったらどうかと。そして,その次の「しかし」を「このため」に直すというのはどうかと。結論だけ言うと。 |
○西原主査 |
「戦略的な展開をすることが必要になっている」。 |
○杉戸副主査 |
はい。 |
○西原主査 |
それから,次の「しかし」を取って…。 |
○杉戸副主査 |
「このため」とする。これは検討してください,ここまで言っていいかどうかを。 |
○西原主査 |
はい。そろそろ時間的にきつくなってきました。それで,まだ御意見をたくさんお持ちであること,それから,今日おっしゃらなかったことについても,更に御意見がおありであろうことは推測できますので,次が1月21日のようですけれども,これから1か月半ありますので,その間にやり取りが活発に行われるということを期待しています。 それでは,本日はこれで小委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。 |