第7回国語分科会日本語教育小委員会・議事録
平成20年3月28日(金)
10:00〜12:00
旧文部省庁舎2階文化庁第2会議室
〔出席者〕
- (委員)
- 西原主査,杉戸副主査,井上,岩見,尾﨑,加藤,中神,西澤,山田,(計9名)
- (文部科学省・文化庁)
- 町田国語課長,西村日本語教育専門官,中野専門職ほか関係官
〔配布資料〕
- 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会委員名簿
- 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の議事の公開について(案)
- 国語分科会日本語教育小委員会における審議について(概要及び図)
- 日本語教育小委員会の今後の検討スケジュール(案)
〔参考資料〕
- 文化審議会国語分科会運営規則
- 文化審議会国語分科会の議事の公開について
- 国語分科会日本語教育小委員会における審議について(本文)
- 日本語教育関係機関
- 日本語教育関連データ集
〔経過概要〕
- 事務局から出席者の紹介があった。
- 文化審議会国語分科会運営規則に基づいて,委員の互選により,西原委員が日本語教育小委員会主査に選出された。
- 文化審議会国語分科会運営規則に基づき,西原主査が杉戸委員を副主査に指名し,了承された。
- 事務局から配布資料の確認があった。
- 事務局から,配布資料2「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の議事の公開について(案)」の説明があり,了承された。
- 事務局から,配布資料3,4についての説明が行われた。説明に対する質疑応答の後,意見交換を行った。
- 次回の日本語教育小委員会は,各委員の都合を確認した上で,主査,副主査と相談して決めること,また開催日及び会場が決まり次第,改めて事務局から各委員に連絡することが確認された。
- 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
今日は今期の第1回,通算で第7回でございます。今後この期にどのような審議を進めるのかということにつきましては,配布資料3のカラー横長A4の一番下の部分,「?今後検討すべき課題」というところの「2体制の整備」と書いてある,ここのところからまず議論を展開してはどうかという御提案がございました。日本語教育の状況は,非常に整理しにくく,その整理しにいく状況の中で,関係者がこのごろ本当に活発に動き始めているということもあり,地域における日本語教育の体制の整備から話を始めるのが,少なくとも妥当だろうという御判断を頂いたんだと思います。
それで,ここから始める,取っ掛かりをここにするということでよろしゅうございますでしょうか。と言いましても,具体的にはいろいろあるわけでございますけれども…。今期新たに加わってくださった,井上委員と加藤委員,それから中神委員,西澤委員がおありなのですけれども,その方々の御意見も伺い,かつ前からいらっしゃる方の御意見も伺いというふうに今日はさせていただきたいと思います。
先ほど事務局から,委嘱して進んでいる研究,特に内容の改善に関しての研究があるということでございますけれども,岩見委員,尾﨑委員,山田委員には,その部分でも責任を持っていらっしゃると理解しております。後ほど,議論のまとまり具合についての御報告を伺えれば,相互の理解が深まると思います。
あいうえお順で失礼ですが,井上委員,加藤委員,中神委員,西澤委員の順で御発言いただいてよろしゅうございますでしょうか。
「2体制の整備」というところにフォーカスをしていただければ有り難いのですけれども,その他のことでも結構でございます。
○井上委員
これまでの議論をすべて分かっているわけではないんですが,私の頭の中の整理というのは,いわゆる生活者に対する日本語教育あるいは学習の機会というもの,留学生に対するもの,それから子供たちに対するものなどですね。子供の場合にはいろんな形で日本にやってきて,日本で生活をしているということなんですが,この三つぐらいに分けて物事を考えていったらどうかなと思っています。
プレーヤーは大体もう特定されているわけでして,文化庁をはじめ,国立国語研究所が基本的なところを固めながら,大学とか日本語学校とか,あるいは我々経済団体とか企業,地方自治体,それから地方自治体が主に作られている国際交流協会,あるいは民間で作られているNPO,このほかにも経団連で比較的なじみの深いJETRO辺りも,最近ではビジネス日本語ということでやっていらっしゃると思うんです。この辺りは恐らく生活者とか留学生とか学習機会の提供という意味では,今までもやってきているし,それなりに実績も上がってきていると思うんです。しかし先ほど町田国語課長がお話しになったように,コーディネーターの役割というのが昨今非常に重要になっていまして,こうした機関同士が連携するために,かなり自由に動けるコーディネーターの存在というのが必要になってくるのではないかという感じがしています。
コーディネーターというと,プログラム自体を動かすことが第一義的な役割とされていると思うんですけれども,もう少し広くとらえて,関係の研究者あるいは行政,大学,ボランティアの皆さん,それから場の提供をするようなところ,企業だったり経済団体だったり,そういう組織をつなぐ役割をする,より広い意味でのコーディネーターというものも,今言ったプレーヤーの中で自由に動けるような体制というのができればいいなという感じがします。
もう御存じだと思うんですが,文科省の方で「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」というのが動いています。その中で私と佐藤郡衛委員がちょっとかかわっています東京外大の,新年度からの「多言語・多文化社会に必要とされる新たな職種としてのコーディネーター養成プログラム」がその文科省プログラムとして採択されたらしいんです。多言語・多文化共生社会に必要とされるコーディネーターの中にも当然日本語教育のノウハウを持っていて,それを更に高めるという役割を果たす人たちの視野を広げる教育というのがされていくべきだなと思っています。したがいまして,この辺は,もう既にある施策とか組織の役割などを再整理することで,より重層的に深い教育ができるのではないかと思います。
もう一つの方の枠組みも,これも文科省が中心になるんだと思いますが,いわゆる公教育,小,中,高の中のそれぞれの学習機会の提供ということです。私が最近ちょっと申し上げているのは,小,中はいわゆる基礎自治体である市町村が担うのが中心ですが,高校は,もちろん政令指定都市などには私立高校もありますが,ほとんど都道府県立になるという問題なんですね。このところが,特に日系人の子弟等を中心に切れてしまっている部分があって,なかなか高校進学が果たせない。余り言いたくないんですが,非行とか犯罪とかという方向に行く可能性や,懸念もある。それを考えると,やはり小,中の間で漢字も含めてしっかりと教育をしながら,高校で十分に教科の学習もできるような体制にすることが重要になります。それが結果的には,日本の社会や経済にとっても非常に大きなプラスになってくるんじゃないかと思うんですね。特に学校教育の世界ですが,小,中,高,連携したような体制を何とかとれないだろうかなという感じがします。当然その中には,教材の開発もありますでしょうし,いわゆる各種受験制度への適応みたいなものもあると思います。それからこれは言わずもがなですが,日本人の子供たちに対する国際理解教育の枠組みもうまく提供していくことによって,双方に利益がある,そんな体制を作るというのが一つあると思います。
もう一つは,これは文部行政では非常にやりにくいのかもしれませんが,外国人学校の取扱いですね。各種資格試験において,受験資格を得られない学校で教育を受けてしまっている子供たちが,日系人を中心に非常に多いわけですけれども,この辺りを,もちろんこの日本語教育小委員会で結論を出すことはできないかもしれませんが,一応視野の中には入れておいた方がいいのではないかと思うんです。日本にいることは間違いないし,日本語を片言でもしゃべっていることも間違いないわけですね。特に資格を取っていない学校の場合には,何が行われているのか分からないということがあるんですが,逆に言いますと,こういう水準をクリアしてもらえれば,日本における教育の枠組みの中で一定の役割を与えることができて,そこを卒業した子供たちには,日本の公教育の受験資格が与えられるということをもう少し明確にする,あるいはちょっと幅を広げるというようなこともできるのではないかと思うんです。その基礎的な議論というのはしておいてもいいのではないか。それをしませんと,まさに,あるところが完全に欠落してしまう可能性があるので,公教育の枠組みの中以外に,外国人学校での日本語教育の問題についても少し,本当は調査ができればいいんですが,やっていただければと思います。私が聞いている限り,また,私が調査したところでは,地域における日本語教室の時間は週に2時間ぐらいだという話なんですね。そのような学習しか経験していない人は,やはり日本語は片言以下でしたね。子供たちにちょっとした質問をしたら,やはり本当に片言以下の能力しか持っていなかったということもあります。長々と話しましたが,ある程度最初は分割化してプレーヤーを特定しながら,役割分担というものを考えていったらどうかなと思っています。
○加藤委員
私どもは日本語教育機関として,一昨年,昨年,今年辺りでとても大きい動きがあったと思っております。まずは,アジア人財資金構想というのが大きく出て,福田首相が30万人の留学生受入れの計画というのを出したこと。それは,今まで進学を目指した日本語教育における私たちの存在というのがありましたが,ここで一気に大きく状況は変わって,ビジネスであったりとか,それから将来日本にいる人たち,そういった人たちが自分たちの教育対象として非常に身近になってきたなというのが今の状況です。
生活者といった場合に,この日本語教育小委員会でもそのような認識でいらっしゃるんだと思いますけれども,生活している人,イコール皆生活者なわけです。特に外国人がいかに日本の中でうまくやっていけるかということになると,先ほど,私どもが主に進学を目指した日本語教育機関だというふうには言いましたが,一方で,いわゆる留学や就学というのではない生活者としての外国人の受入れもかなり行っているんです。昨日は大阪の人と話していたんですが,4割はそういった立場の外国人が学校の中にいるという話で,そういったことを,同じ機関同士であっても,改めて聞くと,あっ,そんなにいるんですかというような感覚を受けてしまいます。とすると,さらにその外側にいる同じ日本語教育関係者であったり,その関係機関の人たちであったりすると,そのような現状は余り知られていないのではないかと思いました。ですので,ここで「連携協力」の推進ということが「?今後検討すべき課題」の3番目にも出ていますが,まずは日本語というものをキーワードにした部分での連携,それからそれを取り巻く,日本語を超えた意味での連携というのが非常に必要だろうなと思います。そして,今後検討すべき課題として挙がっているコーディネーターというものの役割というのも大きくなっていくだろうなと思います。
それから,私たち日本語教育関係者がすべきことに,日本人に対する教育というか,そういったものも非常に大きいと思っています。一つには外国人と共生していく,一緒に生きていくという中に,外国人に対してするということはもちろん,日本人に向けて外国人をどのように受け入れ,一緒に生きていくかということも併せて考えていかないといけない。外国人だけでなく,受入れ側のことも一つ課題かなと思います。
それと,ちょっとこれは外れますけれども,日本人に対する日本語ということも,恐らくとても重要なことなんだろうなというふうに考えております。
○西原主査
ちなみになんですけれども,ここに参考資料4というカラーA4横長のものが用意されています。これは公的な機関が多いので,公的なところごとにまとまっていると思うんですが,日本語教育関係諸機関というのが色分けされてあります。足りないのではないかと時々言われて,それで少し足したりしているわけでございますけれども,連携という場合に,これがこういう壮大な図になる。そこをどうつないでいくのか,つないでいくような方法があるのかということも含めて,連携についてはとても大切なことなのでございますが,一応こういうものを範囲にして考えているということも,参考までに御参照くださいませ。
○中神委員
愛知県地域振興部の中神です。私,多文化共生を中心に2年間やっておりますが,自治体では多分珍しく,外国人関係のもろもろの課題を全部取りあえず引き受けております。昔ありましたが,「すぐやる課」みたいなところでございます。課題ばかりなものですから非常に悩んでおるんですけれども,今たまたまおっしゃいました「連携協力」が一番のキーワードだと思います。
ちょっと私の経験をお話しさせていただきます。連携にもいろいろ形がございまして,例えば国と都道府県,各市町村,あるいは学会と行政,企業,それから一番必要なのは地域間の連携です。例えば愛知県は日系人が非常に多いわけでございますけれども,ほかに,岐阜,三重,静岡もそうです。そういった課題を共有している地域,都道府県での連携,それからあと行政分野,具体的に言いますと文部行政もそうでしょうし,例えば法務省,それから厚生労働省,非常に縦割りでやりにくいような分野がいっぱいございまして,すべてについて連携が必要だと思います。確かに課題としてはいろいろ出ておるんですけれども,実際に私,過去2年間これについて取り組んだ経験を申し上げますと,実は火中のくりを拾うような,もうこれはものすごいことでございまして,別にふい聴するわけではございませんけれども,バカバカにたたかれながらやっていくというのが現状でございます。
一例を申し上げますと,この1月に,外国人労働者の雇用関係で,適正雇用と日本社会の適応という,直接今回の議題と関係ないかもしれませんけれども,憲章を作りました。特徴的なのは,愛知,岐阜,三重,プラス名古屋市,その3県1市の行政団体に加えて,地元の経済団体,全部で13ございますけれども,一応束ねた形の憲章を作りました。内容的には6箇条だけの極めて簡単なものでございますし,特にペナルティーがあるわけではございませんが,地元に多い日系の方にいかにして地元に適応してもらって,最終的には良き県民,市民となっていただくかということを目標に作ったものでございます。結果的に見ますと,たかだか表裏1枚の憲章でございますが,これを作るまでに1年半,もう議論に議論を重ねて,もう空中分解しそうになりました。結果思いましたのは,いかに連携というのが難しいかということでした。そこで必要とされるのが,リーダーシップをとる方が1点。もう1点は,国としての,これは失礼な言い方なんですけれども,多分,基本的な方針がまだはっきりしていないという点。外国人の方を今後どんどん入れるのか,今いる人たちはしようがないんだけれども,できれば日本人で賄っていくのか,そういったものも当然議論してみえると思うんですけれども,この大方針が恐らくまだ決められていないということが,議論が迷走する一番の原因じゃないかと思うんです。こんなことで,私ども非常に苦労したという経験だけはたくさん持っているものですから,そんなことをお話しできるのかなと思っています。
ついでに,今たまたま井上委員がおっしゃいましたけれども,私ども,労働関係と特に子供さんの教育の関係をいろいろ進めております。一つ,今年の前半に公立の小学校,中学校で学ぶ外国人児童・生徒の親御さんに,自分の子供さんの教育についてどう考えているかという調査をいたしました。もちろん学校教育の中で加配教員を頂いてしっかりやっているんですけれども,できれば,例えば課外授業というのでしょうか,自分の今住んでいる近いところ,例えば30分ぐらいで通えるようなところに日本語の教室があれば,自分の子供を通わせたいと考えてみえる親御さんが6割以上お見えです。
もう一つ,外国人学校も私どもは調査しまして,外国人学校の場合,先ほど御指摘ございましたように,実際には1週間に2時間とか3時間ぐらいしか日本語教育はやっておりませんでした。もともと国に帰られることを前提に勉強してみえると思うんですけれども,そういった方の中でも,むしろ外国人学校,これは日系の方が中心でございますけれども,8割以上の親御さんが,できれば日本語教室に通わせたいという相当強い需要がございます。
もちろん本来の公教育の中で進めていくというのが当然でございますけれども,それだけではなくて,できれば企業の方とも連携して,課外授業のような形で少しでも日本語教育の機会を,そして勉強する機会を増やしていきたいということで,今基金を作ろうとしています。この2年間,企業も100社ぐらい個人的に回ったんですけれども,一般論として課題について理解していただいていますけれども,具体的に「分かった,協力しよう,お金を出そう」というところは,ないとは言いませんけれども,なかなかこれも非常に難しい。相当時間が掛かるということを痛切に感じております。
ただ,今ちょうど産みの苦しみの段階でございまして,だんだんこういう議論が全国的に広がっていきますので,新しい動きができてくるのではないかと思っております。いずれにしても非常に難しい仕事だなということを感じております。
○西澤委員
私,国際交流基金で日本語関係の事業をやっております。この参考資料4の図で見ますと,国際交流基金は「海外の学習者」と,こういうことになっているわけですけれども,実は,やはり人の移動というものは非常に国際的になっているということの中で,日本語教育も,国の中,外というような形では切れない状態になっているのではないかというふうに日々感じているところでございます。
特に私,昔,留学生行政をやっていたときに,竹下元総理大臣がよく,留学生の対策を考えるときに,「留学生の来る前−来るとき−来てから」,竹下さんの言葉で言えば「いんでから」と,立体的に全体を通して物事を考えなきゃ駄目だよということをよくおっしゃっていたんです。外国人問題も,やはり同じなんじゃないかなと思うんです。やはり来る前,現地でどういう日本語教育体制を考えるのか,来るときにどういうふうに考えるのか,それから来てからその地域でどう考えていくのかという全体をとらえていく必要があるんだろうなというふうに思うわけでございます。
多文化共生というか,地域で生活する外国人と日本人の共生という観点からは,確か安倍内閣のときに,官邸でかなり主導していろいろなことが検討された経緯があるやに聞いています。けれども,日本語教育という観点からは,残念ながら官邸で全体を通した検討がされていないということもあって,海外から国内含めた日本語教育全体を考えた政策的な位置付けをきちっとしていく必要があるんだろうと思っております。今おっしゃった積極的にウエルカムという形で外国人を受け入れていくのか,受け入れていかないのかというようなことも含めて考えていく必要があるんだろうというふうに思っております。
したがって,ここで文化庁の所管ということで言えば,全体をすべてカバーするということは非常に難しいのかもしれませんけれども,少なくとも日本語教育に関しては,主たる所管官庁という観点から言えば,やはり海外から国内に至るまでの全体像を見渡して,その中の日本国内地域での日本語教育をこういうふうに位置付ける,というようなことを明確にしていただくことが,政策的位置付けという観点からは非常に重要なのではないかなと考えるわけでございます。それがまず第1点でございます。
それから,具体的な概算要求と結び付けてどういうことを考えていったらいいのだろうかということを考えたときに,先ほど西原主査がおっしゃった参考資料4を見ても分かりますけれども,一つは大学というのが,教育のところでも研究のところでも指導者養成のところでも非常に広がりを持っている。それから,試験のところで大学は出てきませんけれども,実際に国際交流基金と日本国際教育支援協会でやっている日本語能力試験の試験問題作りから何から,すべて大学の先生方のお世話になりながらやっているということで,ある意味では全領域に大学がかかわっている。しかも,大学は日本語教育学科とか日本語学科という形で専門の学科を持っているところももちろんありますし,私が前におりましたような理工系の大学でも,留学生センターという形で教授あるいは助教授の下に,三,四人の専任講師を抱えて教育する体制を持っています。それから,学んでいる学生たちも,修士課程ぐらいまで持っている人がかなり増えていますから,十分教育資源として活用し得る余地がある。更に,留学生。これは母国語がちゃんと話せるということもあって,居場所作りというような観点からも協力を仰げば,いろいろ人材として活用し得る。孤立しがちな地域の外国人に対して,いろんな形で支援を求められる,そういう人材を大学は持っているんじゃないかなと思うんです。だから,大学と地域を結び付けるような,大学の方も今,地域に開かれた大学ということで地域支援室などを作っているところがかなり増えていますので,そういうところとの連携ということを考えて,何かそういう施策を,文化庁が予算を取るというのは難しいのかもしれませんけれども,考えたらどうかなという感じがしております。
もう一つ,日本語学校。全国に300か所もあるわけでございまして,英語学校等で日本人の若者が英語を勉強して転職しようとしたり,あるいは就職しようとしたりすると厚労省から支援資金が出ているわけです。だから,地域で日本語を勉強する人たちが日本語学校に行ったら,授業料の一部を支援してあげるような仕組みを作るとか,ドイツのように国の義務として,定住する外国人に対して,母国語,ドイツ語の教育を保障するというところまで現在の体制ではいかないのかもしれませんけれども,何らかの支援策を考えるということは十分打てる手なんじゃないかなというような感じがいたします。
それから,先ほど井上委員のお話にもちょっと出てきたのかもしれませんけれども,文部科学省生涯学習政策局で学校支援地域本部事業で,全国の中学校区単位に地域全体で学校教育を支援する体制作りを推進し,学校の地域的な連携を深めようというようなことを考えているようです。そういうところにコーディネーターを置いて,日本語教育もそこが一緒に支援していくというようなことも,あるいは施策としては考えられるんじゃないかということを考えているところでございます。
○西原主査
それぞれのお立場を踏まえて建設的な御意見を頂きました。大学はという話が出ました。学会にも責任を持っていらっしゃる尾﨑委員はいかがでございましょうか。それから岩見委員,山田委員にも是非。
○尾﨑委員
例えばのお話ですけれども,ちょうど今年度豊田市が市として,地域の日本語教育,主に日系の方の日本語教育を何とかしましょうということで,豊田市が具体的に動き始めたんですけれども,そのプロジェクトを実質的に動かしているのは,名古屋大学の留学生センターの先生とその周りの方たちです。私も,その運営委員に入っています。
豊田市の方から直接伺ったことではありませんけれども,今度の4月から5年間はプロジェクトを続ける。そのために,豊田市としては総額で3億円というふうに聞いているんですけれども,予算を取っています。4月からコーディネーターを期間限定で任用するということも決まっています。大学としては,これはとても大きなプロジェクトで,やっている先生方を見ていると,半分お気の毒と思うような状況ですけれども,西澤委員がおっしゃったように,大学自体が地域との結び付き,貢献をしなければいけないという上からのプレッシャーと,もう一つは,日本語教育をやっている人間として,地域のことについてやらなければならないという使命感で動いている状況です。
それで,5年たった後で,豊田市が今度は独自の予算を組んで,コーディネーターあるいはボランティア養成とかを行政としてきちっと位置付けるかどうかは,結果を見てからだろうということです。市長さんがそのとき決断をなされば,市としておやりになるでしょうけれども,やはり行政のお立場とすると,本当にやって意味があるかどうか納得できるような実績を作らないことには,とてもやっていただけないので,今,名古屋大学と豊田の,これはボランティアの方も含めて,5年間で必ず成果を出さなければいけない,そういう状況に追い込まれています。「追い込まれている」というのは否定的な言い方ですけれども,それはたまたま日系の方が集住している地域という地域特性がありますので,もしこれが山形であるとか秋田であるという地域を考えてみると,恐らく数的にも非常に限られていて,地域特性をどういうふうに考慮してやっていくのかなというのは,国としての施策を考える上では難しい面があろうかと思います。
西澤委員の大学の貢献,あるいは留学生をリソースとして協力を仰ぐというのは,これは本当におっしゃるとおりだと思います。大学もだんだん頑張らなくてはいけない状況になっていますので,私たち学会としても,こちらの動き,あるいは文化庁の委嘱事業の状況等を会員にできるだけきちっと伝えて,とにかくこれをやらないと日本語教育は社会的に責任を果たせないことになりますよと,そういうメッセージは伝えようと思っています。
○西原主査
学会として,今委嘱されているプロジェクトですが,明日,何かおまとめのシンポジウムなさいますよね。そこを,明日いらっしゃらない方もいらっしゃるので,ちょっと御説明いただくことできますでしょうか。
○尾﨑委員
これはまだ進行中で,最終的な報告が文化庁の方に提出されていませんので…。
○西原主査
配布資料3の「?−1内容の改善」にかかわる部分でございますよね,主として。
○尾﨑委員
そうですね。実際の検討の中では,地域の日本語教育と呼ばれているものをそもそもどういう理念に基づいて,日本語教育と狭く考えずに,広くとらえるかという議論をやっています。さっき加藤委員がおっしゃった日本人に対する日本語教育あるいは異文化理解教育,このことを抜きにして日本語教育だけを考えるのは,恐らく間違っているということでは,基本的な了解ができていると思います。
それから,このプロジェクトが最終的に目指しているのは地域の日本語教育を具体的なレベルで,例えば教室でボランティアの方と外国の方が実際に活動する,その具体的な場ではどういうことを考えて,どういう学習素材を用意して,どういう活動をしていけば基本理念に合致するかという非常に具体的なレベルの議論をしなければいけない。これも了解事項です。
それから,「生活者としての外国人」という言葉が行政側から出てきて,どんどんいろいろな文書に登場して,一体これは何なのかという議論もかなりありました。生活しているという意味では,大人も子供もみんな入るじゃないか。留学生も,工場で働いている人も,サービス業で働いている人も,農村の人も,みんな生活者でしょう。一体これはどういう背景から生まれたのか。これは町田課長にお伺いしてみたいなと思っているのですけれども,私の勝手な理解では,やはり日系の方は,ビザのステータス上,定住,永住なさる可能性が極めて高い。しかも,地域的に集まって住んでいらっしゃって,集住の形態がどんどん進んでいますから,このままでいくと,日系の方たちが日本語を余り勉強しなくても,自分たちで独立した営みができるようになっていく可能性があって,そのようなことについて,やはり考えなきゃいけないということがあったと思います。
それから,日系の人たちを企業から見たときに,やはり将来も企業の戦力としてきちっと位置付けていく必要がある。多分,これは企業的な発想でそういうことがあったんだろうと思うんです。ですから,「生活者としての外国人」という言葉の裏側で,行政サイドが主に念頭に置いていたのは,日系の人たちではないのかなというのが私の理解です。
それで,先ほど言った教室での具体的な活動を考えるときに,外国の方の学習環境とか生活環境とか,日本語に対するニーズとか,様々な要素を考えて具体的なプログラムを作っていかなきゃいけない。そのときに,いろいろなタイプの外国の人がいますから,恐らくは,少なくとも私がいるような,あるいは中神委員がいらっしゃるような愛知,三重,岐阜,あのエリアであれば,当面の課題,少なくとも具体的なレベルで日本語教育を考えるとすれば,日系の方たちを念頭に置くということになると思っています。
ところが,「生活者としての外国人」というときに,実は国際結婚をしていらっしゃる方も数が多く,そういう方たちのことも当然考えてやっていかなきゃいけない。それで,今のプロジェクトでは,工場で働いている方とか国際結婚をしている女性の方とか,具体的に外国の人たちがどういう生活環境で,どういうことを考えながら,どういう日本語のニーズを持って暮らしていらっしゃるか,そこをやはりきちっと調べてみようと考えているわけです。これは量的な調査は非常に難しいんだけれども,やはり我々が見落としている,外国人と呼んでいるんだけれども,そんな人はいない,もっと個別に様々な条件の中で生きていらっしゃるわけだから,そこの姿を僕たちはもっと知らないことには,日本語教育と適当に作っていいものじゃないでしょうという議論があって,今回やっているプロジェクトを四つに分けて今進めています。
一つ目は,今申し上げた外国の方の生活実態,学習環境を個別的に調査する外国人の生活実態調査です。
二つ目は,既に全国でボランティアの養成あるいは研修というのをやっています。ところが,全国調査をやったことがありませんし,一体どういう考え方で,どういう内容で,だれがボランティアの養成をやっているのか,その成果というのはどういう形で評価されているのか,とにかく調べてみないことには駄目だということで,その調査をやっています。これが二つ目です。実は,この調査をやっていらっしゃる方は,ほぼ全員がボランティア養成にかかわっている日本語教員と呼んでいいような方たちばかりです。全国に38名。実は,北海道は適当な調査員がいなくて駄目でした。沖縄は調べたんですけれども,講座を開いているというデータが出てこなかった。北海道,沖縄を除いて,過去2年半の間に開かれたボランティアの養成研修講座,700以上のチラシとか情報を集めてデータを収集して,分析を今やっている途中です。それを何とか報告書に盛り込みたい。これが二つ目です。
三つ目は,これまでに地域の日本語教育のために開発された教科書,約50冊。これは国立国語研究所が第1期の中期計画5年間の中で集められた,それ以前からもずっと集めてこられた国立国語研究所の日本語教育基盤情報センター,そちらがずっとまめに集めていらっしゃるんです。ですから,私たちが知らないようなところで,「ええっ,こういうのもあるのか」と,そういうものを50種類集めて分析し,一体こういう地域で作られた教材は,だれがどういうねらいで,お金はどこから出ていて,どういうふうにして作ったか。作った後,それはどういう形で配布されたか,情報が公にされたか,今その教科書はどうなっているのかということを分析しています。
同時に,日本語教育の中で文法というのはどう扱えばいいか,語彙はどう扱えばいいいか。生活者としての外国人の方の日本語教育を考えるとき,まずは文法と語彙に焦点を当てて議論してみようということで,半年間議論をしました。ですから,教科書の分析,文法,語彙,この三つを一つに集めて,将来の教材開発に向けた基本的な枠組みというようなものを考えようと,これが三つ目です。
四つ目は,全体を考えて,とにかくフリーディスカッションをやってみようということで議論をしています。この議論の中では,コーディネーターというのも当然議題に上っています。どういう職務を果たすのがコーディネーターなのか,あるいは地域日本語教育というのは,突き詰めれば,それぞれ外国の人が暮らしている地域社会をどのように作っていくのか,地域社会の有り様の中に,外国の人たちを,参加者,共同者ですか,一緒に地域を作っている人というような位置付けで行政としてまず考えてからやっていかないと,これはうまくいかないだろうというようなことは,四つ目のプロジェクトの議論の中で出ています。
実は,岩見委員,山田委員も御一緒にやっていますので,今の報告について,どうぞ補足をお願いいたします。
○西原主査
補足だけじゃなくて,お立場それぞれまた別に持っていらっしゃいますので,どうぞよろしくお願いいたします。
○岩見委員
今,尾﨑委員から御説明ありました,私のところはボランティア養成研修講座について全国調査700件収集をして,特に2007年度を中心に,500件近くのものを分析しております。それを一言で言えば,非常に多様だといういことです。様々な種類が
あるんです。地域ごとにいろいろな理解,行政のための地域作りをどうしていくかとか,そういった理念の明確化に対する温度差とか,日本語指導そのものの内容について,どのように活動し教えたらいいかという方法についても,やっていることがどうなのかという評価にしても,いろいろであるということが分かっています。今年は予備調査という位置付けですので,はっきりしたところまでは行っておりません。しかし,大きな流れとして,多様化の中にも新しい動きが出ているということは,担当している者が共通して認識をしております。
調査分析に当たっているのは,先ほど説明ありましたように,地域でボランティアの養成研修を担当している講師,講師には大学の先生もいますし,日本語教育機関の教師もいますし,ボランティアリーダーという人もいます。また,国際交流協会の担当のコーディネーター的な役割を果たしている人などです。
現時点で調査結果から分かるのは,ボランティア養成研修講座は,新しい動きがあるのと同時に,いろいろな動きが混在している状況だということです。それは一つは社会の変化,国のいろいろな政策の多文化共生社会推進というような動きに影響を受けたということが一つあります。ミクロ的と言いますか,日本語教育の立場から見ると,日本語教育そのものが,従来の,どう言ったらよろしいんでしょうか,構造を中心とする教育の考え方から,行動中心といいますか,総合学習型の動きに変化している様子が見られるんです。そういうところからも影響を受けて,着実に生活者のための日本語のコミュニケーション力を付けるにはどうしたらいいかということで,いろいろ模索をしているという現状が見られると思います。
担当者には,共通の認識ができつつあると言ってもいいかと思います。多文化共生のための日本語教育,生活者のための日本語コミュニケーション力を付けるためには,どういう内容で,どういう方法で,どうやったらいいかということを一つ提案しております。そのときに,先ほどの現状の多様化の下,一番ネックになっておりますのは,ボランティアに担ってもらうものは何なのかということです。現状としてボランティアというのは,生活している外国人の隣人である。その人が担うものは何なのかという議論。それからもう一つ,専門家が担うものは何かと,そこを明確にしていくこと。やはりそこが今とても混乱しているということがやはり強く日本語教育の立場からは感じるということですね。ですから,先ほどおっしゃった政策的なことを考えるときに配布資料3の?の「1内容の改善」の中の「1地域における日本語教育の専門性と内容の明確化」というのは,やはり避けて通れないところというふうに思っております。
地域の現状は,今着実に,講師あるいはコーディネーターの介在と言いますか,アドバイスの体制整備が進んできているところもある。その変化において果たすべきコーディネーターの役割というのは非常に重要であるということは,調査の中でも見えてきています。
コーディネーターといっても,抽象的につなぐ,いろいろな関係者をつなぐなど,先ほど町田課長からも説明ありましたが,いろいろあると思いますけれども,その中に,やはり具体的にどこのどういったポストに置いて,何をしていく,何と何をつなぐ役か,すべてを一人でもちろん担うことはできないわけで,どのコーディネーターをどこに置くかという具体化が進まないと,一向にシステム化が進んでいかないというように思います。かつて平成13年から5年間,コーディネーター研修というのをしましたけれども,そのころと比べて今の時代は,ずっとその必要性についての認識は進んでいると思います。けれども,そのときには,やはりイメージとか実像とか,何を具体的にするかということを,地域地域で,地域の特性に応じて考えていくということでやりました。ところが,そこまで地域が実像を明確にできなかったというところが,やはり中途半端に終わったというところの原因かなと思います。そして,それはそんなに簡単なことじゃないと思います。各地域地域で検討すると同時に,国の方でももう少し明確にしていくというようなところ,それが必要だというふうに思っております。
コーディネーターといっても,教室そのものの中にも,教室の運営ですとかプログラムをどう改善していくかとか評価とか,そういった教室の運営のコーディネーターも一つは必要であろうし,先ほど言ったような大きな範囲のシステムを考えるコーディネーターも必要でしょう。学校における子供たちの教育のためのコーディネーターも必要です。やはりそれぞれ外国人が多様化していると同時に,コーディネーターも,どこでどういう役割を果たすか,それは一つではない。「つなぐ」という抽象的な意味で役割は共通してありますけれども,そこまで具体化していかないと,進んでいかないかなというふうに考えております。
○西原主査
中神委員も,言ってみればコーディネーターでいらっしゃいますよね。非常に高い地位でいらっしゃるわけですけれども,そこから,それこそ明日の教室をどうしよう,教室の場所をどうしよう,どういう人間を配置して,何を教えてもらおうというコーディネーターまでということですので,そこを特定化していく専門職としての養成をしていくというのが,多分コーディネーターを予算化するにしても,一体何をしてもらうためにどうやって予算を取るんだというところが一番大切なところということになっていきますでしょうか。
○山田委員
文化庁から委嘱されて,日本語教育学会が行っていることからお話を始めます。私は委嘱研究の中の実態調査の担当で,現状どうかということを調べているんですけれども,これは明日,学会員に報告し意見を頂いて,それを最終の報告書のまとめに役立ててということを考えているわけです。岩見委員がおっしゃったように,まだ今回は10月からスタートしたプログラムなので,予備調査というような位置付けで考えています。
ただ,これは私自身の思い入れがあって,実際に調査にかかわってもらった人は,私はかかわっていませんで,ほかの運営委員の人たちとか部会員の人たちが直接対面して,その人たちの生活現場に訪れてインタビューをして,それで資料を収集するということをやっていただきました。私自身は,日ごろそういうことをずっとやっていて,学習者と言われる生活者ですね,生き方とこの社会の在り方というのを突き詰めながら,どうあったらいいかというのを考えざるを得ない,そういう立場で日本語教育を考えていくべきだというふうに思うので,そういうふうな思いを共有してもらう人を少しでも増やしていきたい。この調査研究というのは,国がどういう方向で進んでいくべきかという国の,ある意味の行政的な資料を作っていく。そういう中に,それは行政は行政的な判断が必要なんですけれども,そういう一人の生きている人間の声というか,その思いみたいなものを伝えていける,そういう調査であってほしいと思うので,そういうことをしています。
その中にも,ここで言うことはちょっとはばかれる面もあるんですけれども,かなり外国にルーツを持つ生活者が,悲痛な思いでこの社会を生きている。また,その中でも非常にたくましくと言ったらいいでしょうか,いろいろ条件が悪い中でたくましく生きていっている。ただし,その人たちがまだこの社会を形成して,この社会を担う一つの,もともとの日本人のパートナーとして担っていくという意識を持ちながら,そういう活動をしているという人たちは少ない。できれば,今言ったようにそういう方向に持っていくための日本語教育を考えたい。生活者というのは,生活者の日常生活にどんな日本語能力を付けていったら便利になるとか,それだけの話じゃなくて,その付けた力を,今度この社会を作っていく力に変えていくにはどうしたらいいかということです。日本人側というか,受入れ側も変わっていきながら,そういう人たちも変わっていって,この社会を共に生きる社会とするにはどうあったらいいか,そういうことを考えながら作っていく,そういう役割も担ってほしいというふうに思っています。
それで,ここまでが調査の内容ですけれども,それ以外に,私はいろいろなところでいろいろな人たちの問題を聞かされています。神奈川県で,2007年度からですけれども,高校卒業を目指してと言っていますけれども,高校卒業を目指した地域での連携を作っていこうとしています。一つは教育委員会の高校教育課の人たち。それから地域のNPO。教員組織ですね,外国にルーツを持つ子供たちの研究会をしている教員グループという3者です。高校卒業までどういうふうに子供たちを持っていったらいいか,そういうことをやっていたんですけれども,そこでもコーディネーターの役割の重要性というのを強く言われています。それは,子供たちの状況が全然違うからです。例えばブラジルから来た子供でも,ブラジルで日本語学校に行っていた子供たちがいた。漢字をある程度勉強していた。勉強して日本に来たんだけれども,兄妹なんだけれども,お兄ちゃんはそれほどしっかり勉強してこなかった。どうなったかというと,高校に入ったんだけれども,道を誤って,とんでもないことに走ってしまった。妹は,しっかり漢字を勉強していたので,その後,推薦入学で大学まで入って大学を出た。今,教育の現場に立とうとすると,そういうようなことがある。同じブラジルの子供といっても,年齢も違うし,それから学んできたことも違うし,日本で受ける物理的な教育環境も違う。そういう中で,一人一人がどういう道を歩いていったらいいのか,どういう勉強をしていったらいいかという処方せんを作っていく,そういう役割をコーディネーターは担うべきだろうし,コーディネーターは逆に,どういう物理的な条件があったらいいか,そういうことを提言していくという役割も必要だろうと,そういう話が出ています。
そんな中で,一つだけ大きな問題が,中学を卒業したんだけれども,いわゆる六・三制じゃなくて卒業しちゃった。かといって,卒業したので日本ではもう中学校に入れない。それで,高校には行きたいんだけれども,高校に行くという勉強をする場もない。そういう状況に置かれていて,夜間中学でも勉強できればいいんですけれども,それもできないというようなことがあるようなのです。それが今大きな問題になっている。それで,呼び寄せの日本人の配偶者で,国に置いてきた子供を,結婚した後呼び寄せるということが今多く行われています。その中でも,そういう公教育を受けられないすき間の人たちがいっぱいいて,その人たちの能力を社会に還元できないということがあって,そのような人たちを救うために中等教育学校という発想があります。夜間中等教育学校を作って,そういうところでだったら受け入れられるだろうというような,そういういろいろな工夫が今後必要だと思うんです。そういうことも含めて,コーディネーターの役割は大きいかなというふうに思います。
それで,今一番,これは今後の中心的な議題になると思うんですけれども,そういうことをどこが担うかということを考えると,やはり県レベルで担っていくというのがいいと思います。先ほど井上委員がおっしゃったような高校の所管というか,それは県のレベルが中心だというようなこともあって,そういう県と国と地域というようなことが連携しながら,子供も含めて,大人の問題も含めて扱っていったらいいんじゃないかというふうに日ごろ思っています。
○西原主査
委員それぞれこのテーマ,今年度のテーマにかかわることにつきましては,御経験,それから長年の実績をお持ちの方々にお集まりいただいているということでございます。
○杉戸副主査
ちょっと乱暴な言い方になるかもしれませんが,二つ申し上げたいと思います。
去年の7月,第1期のこの日本語教育小委員会が発足したときもよく似たことを言った記憶があります。ここで共有されている問題意識というか,日本語教育あるいは日本語学習,あるいはボランティア,コーディネーター,そういったもろもろの問題意識がもっと広がっていかないと,今から検討しようとされる体制が基盤の弱いものであり続けると,そういう非常に抽象的な心配をします。
この参考資料4の日本語教育関係機関,これは追加されつつあるというお話も西原主査からありましたけれども,これを含み込んでいる,これ以外の社会,その中で日本語教育の体制ですとか関係機関の活動の位置付けがはっきりされなきゃいけない。つまり我々というか,今度の報告書を書く立場で,我々はそういう認識はいっぱい作らなきゃいけないんですけれども,そのことを,この図の外にいる人たちにどう分かってもらうか,そういう情報をどうやって発信するかを工夫する必要があるなと改めて思っています。
そのことは,井上委員が最初におっしゃった中で,日本人生徒,日本語母語話者の生徒たちの国際理解の教育にも波及するような,そういう側面があるし,それを伸ばしていいんじゃないかと,そういうようなことがあったと思います。例えば,中等教育,高校で国語科とか外国語とかの科目で,そういうような日本語の事情が今国内で広がり始めているし,もう広がっている。1.63%でしたか,208万人という外国人の人たちが,地域による濃淡はあるけれども,集中しているところでは大変な日本語の課題がある。そういうようなことを,例えば国語の授業の中で扱う。そういう動きもして,関係機関のこの図の外側にいる,普通のと言っては語弊があるでしょうか,ほとんどそういう問題のある地域社会に触れないで暮らしていくような日本人にも,日本語の問題として,日本語は今大変なことになりかかっていると,そういうようなことを訴えることを,息の長いこととして,これは恐らく中等教育あるいは社会教育の課題だと私は思うんです。そういうことをこれから考えていこうとする体制を下支えする国民の意識というか,そういうものに訴えかけるような報告を,報告書の少なくとも前文においては意識すべきだろうと思います。
第1期の「今後検討すべき日本語教育の課題」という,今日の参考資料3ですとか,その要約版にも,最初の第1の項目にそのことが書かれているのですが,書きぶりとしては,どうやら問題意識を持っている人たちの自己確認ですね,そういうことになっていると思うんですが,もっと外向きに発信する意識を持っていかないといけないかなと思っています。
それで,これはちょっと補足的になるんですけれども,国語研究所,法人の種類を変われと言われて,まだはっきりしていないんですけれども,新しい在り方を考える上で研究者コミュニティー,あるいは研究のコミュニティーの在り方を非常によく反映した機関であるべきだということを言われる。そういったことを検討すると,日本語教育に携わる研究コミュニティー,研究者コミュニティーというものの総体的な位置付けが非常に小さいものだなということを最近痛感しているんですね。全体の日本語あるいは国語に関する研究コミュニティーであれ研究者コミュニティーの中で,実際上は,例えば学会の会員数からすれば,日本語学会より日本語教育学会は倍以上でしょうか,それくらいの会員組織を持っているというようなことは,数字の上で現れるんですけれども,ただ,そういうことを議論する場で共有される位置付けの日本語教育の重みというのは,まだまだ総体的に小さいものでしかないということを痛感しています。
そのことは,ちょっと飛躍かもしれません,日本社会の中で,日本語母語話者の普通の国民の中での意識と多分類推的に,あるいは平行移動的に重なるんじゃないかと思うんです。何か問題意識の在り方,あるいはこういう形で日本語が問題をはらんでいる,動いていると,そういうことを研究者コミュニティーも持たなければいけないし,一般の国民も持つようにしておかないと,繰り返しますけれども,今から議論する体制の整備,それを持続させる力が薄いままで出発することになる。これは,私がやらなきゃいけないと感じているこの図の外側の世界への情報発信というのは,これは非常に時間の掛かること,それを定着させるためには時間の掛かることだとは思うんですけれども,それも一緒に始めていくことを考えたいなと,そんなふうに思います。
○西原主査
一番大きな課題というか,制度,また法律を作る,条例を作ることにしましても,国民の支持がなければなかなかうまくいかないということであろうかと思います。
ちなみに,国語の教科書に,この間発見したんですけれども,ケニアからお母さんと一緒にやってきて,日本人のお父さんを持った子供の物語「ポレポレ物語」が,某国語教科書の4年生の中に入っていて,その子が周囲を明るくしていく。「ポレポレ」というのは,何でもいいからやろうよという精神なんですけれども,周囲を明るくしていくという。内容が国語の教科書が載っていて,これはどういうキャンペーンでどういう経緯で載ったのか分からないけれども,こういうところに国語教育も来たなと感じました。
それから,大学生が在住外国人の子供たちの学習サポートを主なテーマにしたNGOがあります「世界の子ど。もと手をつなぐ学生の会」というんですけれども,最初は多摩地区の4大学ぐらいから始まったのが,今は多分70大学,会員数約150名という世界になっている。これは恒常的に放課後に勉強を教えるのと,夏,集中的に受験勉強させるというような活動をしています。これは首都圏ですけれども,同じようなのが愛知県にも静岡県にもあって,大阪府にもあって,大学生がつながってそういうことをやっている。それは広がりが随分あって,一般的なサポートとしてできているなというのを感じます。その大学生たちと話をしますと,山田委員がおっしゃっていた制度のすき間に入っちゃう子たちの問題をよく聞きます。例えば,中学は15歳過ぎたら入れてくれないんですよね。年齢をオーバーすると,母国で小学校しか出ていないので,16歳なんだけれども中学に入りたいといっても駄目なんですよね。
○山田委員
校長がオーケーすれば大丈夫だと思いますが…。
○西原主査
そこのところですよね。校長先生によるとか,社長さんによるとか,そういうことになっているのはまずいわけですよね。また,市長さんが代わるとがらっと変わったりするというのも,これもまずい。そういうことのために下支えをする条例なり法令なりスタンダーズが必要になると,そういうことでございましょうか。
そういうことで立場を共有して,さて,体制の整備ということに向けて,日本語教育の政策的位置付けということを,杉戸副主査がいみじくも,日本語教育といって,それは何なのというようなところがまだあるとおっしゃった。そういう世論の中で,日本語をもって共同参画するような社会の在り方というところから下っていく,その日本語の問題というのが,どういう体制,政策的位置付けを持つべきなのか。その中で,コーディネーター,これは仮称でございますがこの専門職については,これから検討して提案していかなければいけないことでありましょうということも含めてですね。それがそれぞれの地域というレベルでどのような役割を持って出発するべきなのか。
先ほど,中神委員もコーディネーターじゃないかというふうに申しました。正にそうですよね。外国人に関して,横をつなぐ役割をしていらっしゃる唯一の課というふうにおっしゃったので,そういう機能を持った方がこの委員にいらっしゃって,それぞれの先生方のこの実績というのを踏まえると,さて何ができましょうかということになるのですけれども…。
○西澤委員
ちょっとすみません。今までの議論で補足したいことが1点あるんです。
時間軸で考えたときに,現状,直ちに日本語教育が問題になっているというわけではないけれども,日本社会の変化と外国との関係の変化から,これは井上委員のところと非常に関係してくるんだと思いますけれども,EPAに基づいて入ってくる看護師,介護士等の,いわゆる本当に高度の専門性を持つ人じゃないけれども,それなりの専門性を持った人たちが増えてくるということがあります。多分EPA協定がどんどん結ばれて,あなたの国からは2,000人受け入れますとかという数値目標まで具体的に書かれてくると,かなりたくさんの人たちが入ってくる。それで,2年なら2年の間に日本での公的資格をきちんと取りなさいというようなことが条件になる。そうすると,資格を取るための専門性を持った日本語教育も問題になる。いざ資格を取れば,当然日本に長期滞在していくという話で,やや未来に向けた,時間軸で言えば相当未来のことも含めた事柄について,やはり今ここでは一応視野に入れて検討しておくべきではないでしょうか。直ちにEPAについて文化庁はどうするというようなことはなかなか言えないのかもしれません。けれども,時間軸の未来のところを視野に入れることも,一応想定しながら議論していただいた方がいいのかなという感じで,その議論が全く今なかったものですから補足しました。
○西原主査
そうですね。実は前期,そのことをやっていらっしゃる方に来ていただいて,そのことの展開についてちょっと情報は頂いたわけでございます。井上委員のビジョンの中にもそのことが示されているのを聞いたことがあるんです。私がはしょるのも何ですので,井上委員に補足していただきたいんですが,結局,日本の産業構造がどう変わっていくかという議論の中で,将来的に見れば,よく分かりませんけれども,ちょっと私が解釈しているところなんですが,結局,製造業そのものは,日本で製造業にかかわるラインの人材を必要とする時代は早晩去っていくであろうと思うんです。
それはなぜかといえば,人件費,それから材料その他のことで海外移転がこれから進んでいくであろう。そうすると,日本がこれから生きていくためには,高度な付加価値を与えられるような産業構造に転換していく必要があるので,そうすると必要とする人材は,ラインというところからは将来的には遠ざかっていくだろうという議論がある一方で,サービス業に関しては,つまり外に出ていけないようなところで必要な人材というものは受け入れ続けざるを得ないであろうと,そういうことでございましょうか。その続きを…。
○井上委員
ほぼそれ以上補足することもないんですが,問題は,高い付加価値を作り出す「もの作り」という分野においては,人材難が依然として続くということなんですよね。要するにそれはどういうことかというと,最近,日本の若者がそういうところに就かなくなっていますので,去年は,例の技能オリンピックというのが静岡で行われたものですから,随分NHKでも報道されて注目されましたが,あそこに出ている人たちというのは本当にごく一部なんですよね。工業高校とか高専を出て,企業で3年間なら3年間トレーニングを積み,23歳以下なんですが,技能オリンピックに出ていくような,ああいう人たちが実はリーダーになって,将来も高いレベルの加工技術とかそういったものを維持しながら,日本はもの作りを続けていこうという戦略なんです。しかし,実際には,最後の製品化の部分,ある程度金型を作って,あとは部品を集めて組み立てるのは中国でもできてしまう。今,パソコンも全部中国で作っていますので,そうなると,今まで例えば日系人がやっていた単純ラインなどはどんどん,今現在,中国に移管しつつある。
とはいいながらも,今申し上げたように,高付加価値のところはどんどんレベルアップしながら,新しい製品のためのもの作りのラインは残るんですね。そこに,実は幾つかの企業の方は,日本語もできて,非常にしっかりと製造ができる,要するに,単純にネジを何本か締めて右に送るというんじゃなくて,一つの製品を作り上げてしまうようなラインに日系人の人たちを入れ始めているんです。それは,今まで日本人がやっていたラインだったんですけれども,そこのところは明らかに,「危ない」とか「機械をとめろ」とかそういう単純な言葉だけではなくて,完ぺきに生産管理の日本人の人とコミュニケーションができないと,その製品は作れないですね。したがって,当然ながら企業の中でも日本語教育をやろうと,それが今週,静岡で行われた,外務省と国際移住機関とでやったシンポジウムの最後にやったパネルディスカッションのヤマハ発動機の石岡部長がやっている取組なんです。もう背に腹は代えられないので,ともかく日系人に徹底的に日本語を覚えてもらいながら,いわゆる受注生産のものを作ってもらおうという考え方なんですね。この流れというのは,恐らくしばらく続くんじゃないかと思います。
一方,西原主査の御指摘のあったサービス業なんですが,これは二つに大別されていて,介護とか看護は,正に御指摘のようにハイレベルではないんですが,全く低レベルではない。ちゃんとした資格もありますので,そこを取っていただくためのシステムは一応できた。これについては,フィリピンの批准が遅れているという問題があって,それはいわゆる日本で日本語による資格試験を通らないと,その後の在留が認められないというそのシステム自体に問題があるのではないかという指摘なんですね。ただ,これは私自身個人的には,仕方のない面があるのかなと思います。やはりこれも人の体,命にかかわる問題なので,日本語でコミュニケーションが,かなりの精度を持ってできないといけないということです。だから,3年間なり4年間の研修の間に働きながら日本語を学んで,試験の勉強もする,そういうシステムなんですね。
ですから,ここのところは門戸を開放するという考え方と,ある程度日本語を一所懸命勉強して日本の資格を取ろうという意欲のある人,そのバランスの問題だと思いますので,AOTS(財団法人海外技術者研修協会)に,大変だと思いますけれども,やっていただく以外ないなと。
もう一つのグループというのは,もの作りで今まで時給,600円で雇われた日系人の人たちが,そこの職場がなくなったことによって流れてきている,例えばおにぎりだとかサンドイッチを作ったりする,ああいう分野のところです。これはもの作りとは言わないですけれども,どちらかというと流通系の仕事なんですが,この辺りは本当に今人手不足なんですね。今までは日本人の主婦のパートさんたちがやっていた分野なんですが,私も2回見に行ったことがあるんですが,最初は,やはり比率としては圧倒的に日本人の方が多かったんだけれども,最近は日系人が多いですね。そういうところは,全く日本語,これは片言ぐらいで大体済んでしまう世界でして,しかも日系人ですらこの仕事は大変だという。大体夜集まって,2:00ぐらいにピークを迎える仕事ですので,非常に大変だというのが一つ。
それから,早晩出てくるのは,まさにバックヤードの仕事ですね。例えば,最近企業の方からお聞きして,問題だなと思うのは,羽田空港の,例えば飛行機がおりて,そこで座席の後ろのところにカバーがかかっていたりしますよね。あれを取って,ごみがないか拾ってというところのアルバイトが日本人では全く集まらないんだそうです。だれがやっているかというと,中国から来た留学生がやっています,時間限定で。それからもう一つは,飛行機の中はまだ安全ですが,空港の中の荷物を降ろして,ガラガラっと引いていく車ありますね。あれを運転するような人たちも,もちろんこれは今まで安全の関係があって日本人に限定していたんですが,足らなくなっています。それで,一部やはり留学生がやっているそうです。港内業務も。こういうところのいわゆるバックヤード的な仕事を,そういう本来勉強をしに来ている留学生にやらせていいのか,あるいは日本語を学んでいる修学生にやらせていいのかということです。ぎりぎりのところらしいんですが,そういう分野を日本が在留資格の面で開放するかといったらば,今の法務省の考え方は,全く開放する気持ちはありません。ただ実態的には,そういうところに留学生が入り,ひょっとすると,これから全日空とかJALがそういうことをするとは思いませんけれども,いわゆる在留資格のない人たちが入り込んでくる可能性はないとも言えない。
そういうことも考えますと,日本の社会というのは,本当に至るところで穴が開いてきますので,先ほどお話があったように,国の施策としてどういう在留資格制度を再構築するかということを横目でにらみながら,日本語教育の問題を考えていかなければいけない時代になってきていることは間違いないですね。ですから,目を凝らしてみると,本当にぼこぼこと穴が開いていく。それを前提に,できればここでも議論をしていただきたい。そこに入ってくる,入れる人たちにはどういう日本語が必要なのか。生活者として,あるいは就労するときの問題,それから学ぶときの,いわゆる学生あるいは修学生みたいな形で学ぶときにはどういうものが必要なのかということを一つずつ,かなり丁寧に細かくやっていかないといけないのかなと思います。
○西原主査
先ほど山田委員がおっしゃったことにもつながっていくと思います。そういう方々が日本社会にとって欠くべからざる人材なのだ,私たちの隣人の一人なのだという認識を,杉戸副主査もおっしゃったように全員が持つ,国民全体が持つ,国全体で持つということ。それと同時に,そういう人材の活用を,社会への参画ということを含めてどのように導いていくかというような提言をするのかということも。それが具体の実行ということで文化庁国語課がそれを負うということは別にして,ビジョンとしての提言というのは,たとえ前文であっても持っていなければいけないということでございますよね。それは共有していただけることかというふうに思います。
ちなみに,先ほど208万人,外国人登録がいると言いましたけれども,日系人というのは約30万ですね。そうすると,あとの180万というのは,別の人がいるわけですよね。その家族というのも,もちろん入るかもしれませんけれども,その人たちも含めて日本で,そしてもちろん在日の方々が数十万人いらっしゃいますね。それを除いても,100万人以上の方々が,その他としていらっしゃるということになると思うんです。
しかも,その後ろに在留資格なしで存在するという,これは法務省のすごい努力で,どんどん減ってきているそうですけれども,それでもそうでない人たちがいる。208万人という外国人登録している方々が共同参画してくださる日本社会,外国人に掛かる期待というのが,今のお話を伺うと非常に高いというか,そういうことになるのも現実でございますよね。そう考えますととてもとても大変なことなのであろう。その208万人は,これから減っていくという数字は出ていなくて,じわじわと増加しつつある。いろんな形で増加しつつあるということですよね。
それやこれやで非常に課題が大きいわけでございますけれども,次回は4月中旬に小委員会を開かせていただくわけですが,そのときに,「体制の整備」のことについて,ヒアリングを実施できたらと思います。ヒアリングも,実は前回のときは井上委員もヒアリングの対象としてきてくださったわけですけれども,どういうような方々に参考になるような御意見を頂けるか。たかだか2時間ないし,マックスでも2時間半ぐらいの会議となると思うんですけれども,その中で,多分お一方ないしお二方が来てお話しくださるくらいだと思います。2回来ていただいたとしても4人の方ぐらいになるんですけれども,どのような方にお話を伺うことがよろしいとお考えでしょうか。
事務局の方では,何か御提案がありますか。
○日本語教育専門職
本日審議いただきました中に出てまいりましたコーディネーターについてですけれども,海外の現状と照らし合わせて,コーディネーターという業務がどのような役割を果たし,また,どういう環境であれば最も効果的に働くことができるのかというようなことが参考になるような事例をお持ちの方がいらっしゃれば,そういう方にお話を伺いたいと思います。西原主査の方からも御指摘ありましたが,中神委員は,まさにコーディネーターとして御活躍されているわけですが,こんな環境だったら,もっと私はやりやすいとかというようなことを,実情と併せて少し御紹介いただいてもいいのかなと,そんなことを考えているところでございます。もし委員の皆様から御推薦いただける方がいらっしゃいましたらお願いします。
今期の目的というのは前期とは違いまして,概要を伺うということではなくて,正に具体的な内容を詰めていただきたいと考えております。ですから,コーディネーターとはどういうものですよというのではなくて,コーディネーターを配置する意味,役割,そしてそれが最も効果的に活躍できるようにするにはというようなところまで検討していただきたいと思いますので,そういう議論につながるようなお話をしていただける方というものを探したいというふうに思います。
○西原主査
中神委員に,30分ぐらいでございましょうか,お話をしていただくということでお受けいただけると有り難いのですが…。
○日本語教育専門職
すみません,事前にお話をしていたわけではないんですが,今日の話を少し聞いただけでも,また我々が委員会の御説明に行ったときに伺った話でも,いろいろ御苦労されていらっしゃいます。非常に印象的なのは,足を使って,正に関係団体・機関をつなぐつなぎ役として苦労されていらっしゃるということです。
また,愛知県の中に設置されている多文化共生推進室も,議論の中でコーディネーターと申しますと,人を考えますけれども,人ではなくて団体としてのコーディネート業務を担う機関,部署としても考える必要があるのではないかといったところの話も参考になるような気がいたしました。すみません,突然お願いするような形になりましたが,紹介させていただきました。
○西原主査
是非お願いいたします。
それと,私個人がちょっと考えておりましたのは,前に,国立国語研究所の調査研究の中間的な御発表を頂いたときに,先進的な外国の事例を幾つか御紹介いただいたように思うんですね。オランダの事例,つまり例えば日本で言えば,昨日成田に着いた人を,そこから1週間後までにどう教育していくかというようなことがあると思います。先ほど西澤委員が言及されたドイツの事例につきましては,ドイツ語教育に600時間というのを保障しているというようなことがあって,それが直ちにはならないかもしれないけれども,ただ,その600時間がどういうことなのかというのは,多分配布資料3「?−1内容の改善」のところで参考になるかと思うんです。杉戸副主査,いかがでございましょうか。外国のこのコーディネーターに関連するところにつながるような事例をお持ちの研究員の方に制度としてどう受け入れているか,言葉の教育につながるようなところを主として説明していただくということで。
○杉戸副主査
そういうところに焦点を当てた御報告というか,調査の紹介ができるかどうか,二人くらいその調査に携わった者がおりますので,声を掛けてみましょうか。
○西原主査
そうですね。事務局と,よろしければ御連絡いただいて,もし不成功に終わった場合には,中神委員単独でということだと思いますが,よろしくお願いします。
それから,次回,その後に向けましてどのような方の意見をヒアリングしたら…。
○山田委員
国の審議会の構成メンバーというかそういうことと,地方レベルといろいろあると思うんですけれども,直接外国人自身の声というのはお聞きすべきでないかなと思うんです。この日本語教育小委員会のメンバーの中には,恐らく外国籍の方はいらっしゃらないかもしれないんですが,そういう当事者の声というのは,私はここでお聞きして何かするというのも大事です。今度はそういう方に,ここで決まったというか,ここで提案するようなことを,それこそコーディネーターとして外国人のほかの人たちの社会につなげてもらうと,そういう役割としても是非必要じゃないかなというふうに思います。
○西原主査
山田委員は,川崎市の外国人会議についてお詳しいと思いますが,例えばその外国人会議というものが川崎市の中で演じてきた役割,又はそこがどうなっているかということについても御説明いただける方はあるんでしょうか。
○山田委員
多くいらっしゃいます。
○西原主査
つまりエンパワー,外国の人たちをエンパワーする。日本社会への共同参画を促すためのエンパワーメントというか…。
○山田委員
自分たちもそこの地域の担い手だというふうに自覚して,それでもちろん要望も出すかもしれないけれども,汗をかいて,出したことについて自分なりの役割も果たすと,そういう方は大勢いらっしゃると思います。
○井上委員
川崎市にふれあい館というのがあって,そこに,キンさんという在日の方がいらっしゃるんですけれども,彼はもちろん日本でずっと育って勉強もしているんですが,彼が今お話がありました川崎市内にいる外国とつながりのある子供たちを何とか県立高校に入れようというプログラムのコーディネーターみたいなのをやっています。東京外国語大学の特認研究員でもあるんです。彼自身こういうところでヒアリングを受けるというのは苦手なタイプなんだけれども,非常に経験も深いですし,全体の中でどんな問題があるかというのはよく分かっていらっしゃると思います。
あとは,やはり浜松の話は聞いておいた方がいいと思います。浜松というのは,今,愛知県と並んで日本の産業社会の最先端をいっているところですので,浜松の国際交流協会あたりに話をできる人は何人かいますので,日本語教育をやっていくことについてそこからの話は参考になると思います。
○西原主査
そうなんですね。実は,財団法人浜松国際交流協会の日本語コーディネーターの堀さんとポルトガル語相談員の三池・アリセ・ミホさんには来ていただきまして,お話を伺ったことがあるのですけれども,ただ,今年加わってくださった四人の方は,そのことはまだ情報を共有していらっしゃらないので…。
○井上委員
であれば,なかなか企業の部長さんに来ていただくのは大変かもしれませんが,例えばヤマハ発動機の石岡部長ですかね。あの方は,企業の中で日本語教室を開いています。
○西原主査
というような方も当然考えられますし,ヤマハは,今度発動機じゃなくてピアノ部門の方が,楽器の方が家具を作っていくんですか,何かそこのところも始まったというような,そういうことが聞こえてきていますし,それから外国人では,国際交流基金はたくさん抱えていらっしゃいますよね,人材を。どうなんでしょうか。
○西澤委員
日本語教育との関係でということになると,帰って聞いてみないと分からないところもありますけれども,ただ,国際センターには外国籍の方で教員になっている方もいらっしゃいますので。
○西原主査
そうですね。主として海外とのつながりというか,連携というようなところでは,そのような方々を抱えていらっしゃいますよね。
○西澤委員
先ほどの尾﨑委員のお話に出てきた豊田市の事例を一度具体的に伺いたい。どういう経緯で,だれがまとめ役になって,つなぎ役になってそのプロジェクトが進行しているのかということについて。名古屋大学の先生がいいのか,豊田市側がいいのか,あるいは民間の人がいいのか分かりませんけれども,一度お話を聞く機会があれば…。尾﨑委員からお話を伺ってもいいんだろうと思いますけれども。
○尾﨑委員
いいえ,最前線で苦しんでいる人に話をしていただいた方が,よほどよく分かると思います。豊田市でこのプロジェクトを直接主管していらっしゃる地域振興課の課長さんとか,あるいは上に主幹というお立場の方がいて行政がこういうことを立ち上げて,例えば商工会議所であるとか,外国人の方をたくさん雇っている企業の方とかを集めて,協議会を作っているんですよ。
○西原主査
事務局とちょっとその辺のことを御相談いただいて…。
○尾﨑委員
はい,そこら辺も調べておきます。
○西原主査
事務局に,この次のことは副主査及び中神委員辺りで御相談いただき,その次につきましては,さらに事務局と委員の皆様方とのリソースの付け合わせをしていただいて,次回の議論も踏まえてその次があるのか,それともあらかじめ見当を付けておけるのかを御検討いただくということでいかがでございましょうか。
○日本語教育専門職
配布資料4になりますけれども,ヒアリングは1回だけを予定しております。
と申しますのは,前期,正に佐藤委員からもありましたように,議論のための議論で終わらせない。本日も出ましたが,具体的な策に結び付けていかないと,やはり意味がないというようなことが事務局サイドとしてもございます。一つ具体的には,夏以降始まります概算要求に本小委員会の審議の一部を活用したいということがありますので,むしろここにいる中神委員をはじめ委員の皆さんで議論をして,具体的にこういうことが必要なんだということを,いわゆる前段にあるようなポリシーであるとか概念というところはもちろんですけれども,その次ですね,前期と違い,正に具体的なところに踏み込んでいってほしいのです。余りいろいろな人の話を聞いて拡散してしまっては困りますし,むしろ,日本語教育の施策というところに審議を集約していってほしいというのが希望でございます。その周辺情報は当然必要ですし,勘案しながらやるわけですが,やはりゴールは日本語教育の部分であるというところは,是非お願いしたいところでございます。
○西原主査
今の話も,多分日本語教育の最前線というところからヒアリングを続けたいというようなことだったように思うんですけれども,そこら辺を少し流動的に事務局の方でも受け止めてくださって,次にあるところで,その後のことは,その次にお考えいただくというようなことで,よろしくお願いいたします。
○西澤委員
事務局に,ちょっとお願いがあるんですが。この配布資料の中に,全く大学の関係のデータがないんですね。要するに,専門教育として日本語教育がどの程度行われていて,卒業生が一体どうなっているのか,日本語教育に仕事を求めてきているのか,それとも違う世界に行っちゃっているのか,大学における教育状況のデータ的なところを,もし分かれば,すぐというわけではありませんけれども,議論の前提として示していただければ有り難いなと思います。
○西原主査
結局,コーディネーターの研修,教育部分を大学が担うのかどうなのかということにもなるとすれば,そこで必要なのがその資料ということでございますよね。
私は,大学にいて教員養成にかかわっておりますけれども,毎年,某出版社からアンケートが参ります。それは,かなり詳しく就職先を含めて,養成している日本語教育人材がどのような方向を向いているのかということを詳しく答えよというものでございまして,私よりは,むしろ学務課が誠実に答えているのをうわさに聞いております。そういうようなところも御参考に,もし事務局の方がしてくださると,結構それぞれの機関からそのような答えが出ているかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。