侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)

日時:令和元年11月27日(水)
8:00~11:00
場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)海賊版による被害の実態等について
    2. (2)パブリックコメント及び国民アンケートの結果について
    3. (3)検討に当たっての基本方針について
    4. (4)制度設計について
    5. (5)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」開催要綱(構成員名簿を含む)(73.5KB)
資料2-1
海賊版サイトによる被害と法整備の必要性について(出版広報センター御提出資料)(1.1MB)
資料2-2
出版以外の分野における海賊版による被害実態について(74KB)
資料3-1
「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果について(全体像)(233.3KB)
資料3-2
「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「(別紙)質問事項及び回答様式」)(405.2KB)
資料3-3
「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「意見提出フォーム」)(301.2KB)
資料3-4
「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(団体等)(803.9KB)
資料4
侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査の結果(270.6KB)
資料5
侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る制度設計等の検討に当たっての基本方針(案)(59.7KB)
資料6
侵害コンテンツのダウンロード違法化等に係る制度設計・論点(案)(167.7KB)
資料7
侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主な事例の取扱い(案)(55.9KB)
参考資料1
文化庁当初案の概要・条文等について(496.1KB)
参考資料2
侵害コンテンツのダウンロードに関する主要国の著作権法制について(227.7KB)
参考資料3
インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表について(2019年10月18日 内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省)(345.4KB)
机上資料1
「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」に関する資料一式
机上資料2
文化審議会著作権分科会報告書(2019年2月)(抄)
机上資料3
リーチサイトと海賊版ダウンロード行為(赤松構成員御提出資料)
出席者
第1回出席者名簿(51.5KB)

議事内容

【岸本著作権課長】それでは,ちょっと早いんですけれども,皆様,おそろいですので,これから始めたいと思います。ただいまから侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)を開催いたします。

本日は,皆様,お忙しい中,朝早くからお集まりいただきまして,どうもありがとうございます。私は事務局を務めます文化庁著作権課長の岸本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

まず初めに,本検討会の開催要綱,構成員について御説明をいたします。お手元の資料1を御覧ください。

まず,1ポツの「目的」のところですけれども,侵害コンテンツのダウンロード違法化について,「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく並び立つ,適切な制度設計等について検討を行うほか,併せて,リーチサイト対策の在り方等について検討を行うこととしております。

次に3ポツ,「検討事項」のところですげ,目的に従いまして3つの事項に関して検討を行うものとしております。1つ目が侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する制度設計等,2つ目がリーチサイト対策の在り方,3つ目,その他となっております。

次に5ポツの「議事・資料等の扱い」についてですけれども,まず本検討会は,原則として公開としております。また,本検討会で使用した資料及び議事録につきましては,原則として文化庁のウェブサイトに掲載することにより公開いたします。

ただし,公開することにより,当事者もしくは第三者の利益を害するおそれがある場合,または座長が特に必要と認められた場合には非公開とすることとなっております。

それでは,本日の議事は特に非公開とすべき内容はないと思いますので,既に傍聴者の皆様には御着席を頂いております。

次に構成員の皆様を御紹介いたします。資料1の別紙の方,構成員名簿に従いまして五十音順に御紹介をさせていただきます。

まずは公益社団法人日本漫画家協会常務理事の赤松健様でございます。次に,東京大学大学院法学政治学研究科教授,大渕哲也様。

【大渕構成員】大渕でございます。よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】特定非営利活動法人うぐいすリボン理事の荻野幸太郎様。

【荻野構成員】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】一般社団法人日本消費者協会理事,NPO法人消費者スマイル基金事務局長の河野康子様。

【河野構成員】河野でございます。よろしくお願い申し上げます。

【岸本著作権課長】一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事の後藤健郎様。

【後藤構成員】後藤です。どうぞよろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】東京大学大学院法学政治学研究科教授の田村善之様。

【田村構成員】本日はロースクールの授業がございまして,途中で中座いたしますことを,お詫びいたします。

【岸本著作権課長】一橋大学名誉教授,弁護士の土肥一史様。

【土肥構成員】土肥でございます。よろしくお願いします。

【岸本著作権課長】土肥様には事務局から座長をお願いしております。

次に,日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会部会長代行の萩原恒昭様。

【萩原構成員】萩原でございます。よろしくお願いします。

【岸本著作権課長】骨董通り法律事務所弁護士の福井健策様。

【福井構成員】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】出版広報センター副センター長の堀内丸恵様。

【堀内構成員】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】染井・前田・中川法律事務所弁護士,前田哲男様。

【前田構成員】前田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】慶應義塾大学大学院法務研究科教授の和田俊憲様。

【和田構成員】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】以上12名の方に構成員として御就任を頂いております。

なお,本日は,海賊版被害の実態の御説明のため,オブザーバーとして集英社の伊東様に御出席を頂いております。

続きまして,文化庁関係者を御紹介させていただきます。まず,文化庁次長,今里譲でございます。

【今里文化庁次長】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】文化庁審議官,森孝之。

【森文化庁審議官】どうぞよろしくお願い申し上げます。

【岸本著作権課長】続いて,著作権課長補佐,大野雅史でございます。

【大野著作権課長補佐】よろしくお願いします。

【岸本著作権課長】著作権調査官の高藤真人でございます。

【高藤著作権調査官】よろしくお願いいたします。

【岸本著作権課長】そして,私,岸本でございます。

それでは,これからの進行は土肥座長にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【土肥座長】おはようございます。土肥でございます。改めまして,一言御挨拶を申し上げたいと思います。

この検討会ですけれども,侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計に関する検討会,こういうタイトルでございます。海賊版製品による被害が非常に大きくなってきているという現状が1つございまして,同時に,これに対する従前の規制を変えるという場合には,国民の情報アクセスの自由なり,情報アクセスについての萎縮化,こういったものをもたらさないようなバランスのとれた制度設計の検討が求められているんだろうと思います。

そもそも海賊版行為というのは2,30年前から世界中で問題になっておりましたけれども,その場合は,大体有体物を通じてということでございました。海賊版行為と,それから,我々が日常的に生活をする上で偶発的に生ずるような著作権侵害,こういった行為との関係を留意する必要があるわけでございますけれども,顕著に海賊版行為の場合には特色があると考えております。つまり営利の目的を持って業として意識的に,計画的に,集中的に侵害を起こして,そしてすぐ逃げる。そういうことが顕著にあったわけでございますので,こういったことに関して,製品海賊禁圧法なり,そういったものをEUレベルでは構築をして対応してきたわけでありますが,昨今は,デジタルネットワーク技術を通じて行われる海賊行為というのが極めて顕著になってきたわけであります。

ネットワーク技術については,私ども,多大の利益を受けていることは皆さん御承知のとおりでございますし,私も福岡に住んでおりまして,地方にいて非常に便利なことが多いわけでございます。それはそのとおりなんですけれども,その中で,やはりデジタルネットワーク技術を使った製品海賊行為についての対応は喫緊のものではないかと考えております。

ここにちょうど12人おいでになりますので,陪審員裁判で有名になったハリウッド映画を思い起こすわけでございますけれども,皆さんのお知恵を結集させていただいて,文化庁著作権課にはこういうものでいったらどうかというような提案ができればと考えておりますので,是非ともどうぞよろしくお願い申し上げまして,冒頭の私の挨拶に代えさせていただきたいと思います。

これからは着席させていただいて,議事に入りたいと思いますけれども,その前に文化庁の今里次長から御挨拶を頂戴することになっておりますので,お願いいたします。

【今里文化庁次長】先生方,どうもおはようございます。検討会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては,御多用の中,この検討会の構成員をお引き受けいただきまして,また本日は大変朝早くから,誠にありがとうございます。

侵害コンテンツのダウンロード違法化につきましては,リーチサイト対策とともに,総合的な海賊版対策の一環としてさきの通常国会への法案提出を検討していた。皆様よく御存じのとおりでございますけれども,国民の皆様の不安ですとか懸念,こういったことを払拭するに至りませんで,最終的には当国会への提出を見送ることといたしました。

文化庁といたしましては,こういった経緯を重く受け止め,関係省庁と連携しつつ,より一層丁寧に検討を進めているところでございます。

まず,政府全体では知的財産戦略本部の検証・評価・企画委員会におきまして,漫画家,消費者団体を初め,様々な関係者の皆様からのヒアリングを行いつつ,海賊版対策全体のパッケージ,これを各施策の進め方について議論が行われまして,10月18日に政府一丸となって総合的に対策を講じていること,これを関係閣僚間で確認したところでございます。

その中で侵害コンテンツのダウンロード違法化もリーチサイト対策とともに速やかな法整備を行うものと位置付けられておりまして,具体的には,今,座長の方からもお話ございましたように,深刻な海賊版被害の実効的な対策を講じることと国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないことという2つの課題を両立すべく,国民の皆様の声を丁寧に伺いながら,引き続き法案提出に向けた準備を進めるということとされているところでございます。

文化庁といたしましては,その検討の第一歩といたしまして,パブリックコメントや国民アンケートを実施したところでありまして,本検討会ではその結果を十分に踏まえながら,バランスの良い,適切な制度設計等について検討をお願いしたいと考えております。

検討に当たりましては,さきの通常国会に向けて提出を検討していた文化庁当初案にこだわらず,漫画家や出版社を初めとするステークホルダーの皆様の御意見やパブリックコメント等で把握された国民の皆様方の声に留意しながら,疑念や不安を払拭できるよう丁寧に検討を進めていくことが重要であると考えております。

皆様方におかれましては,それぞれの分野における専門的な知見を基に忌憚のない御意見を頂ければ考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥座長】今里次長,どうも御挨拶ありがとうございました。それでは,次に,事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,議事次第に記載の配付資料一覧とお手元の資料を照らし合わせながら御確認をお願いできればと思います。

まず資料1が本検討会の開催要綱でございまして,裏面に構成員の名簿が付いております。次に資料2-1が「海賊版サイトによる被害と法整備の必要性について」と題する出版広報センターからの御提出資料,資料2-2が「出版以外の分野における海賊版による被害実態について」と題する1枚ものの資料となっております。次に資料3-1から3-4までがパブリックコメントの結果をまとめた資料となっておりまして,まず3-1が全体像をまとめた資料,3-2が個人からの御意見のうち文化庁の指定した別紙様式で頂いた御意見のまとめ,資料3-3が個人からの御意見のうちe-Govの意見提出フォームで提出された御意見のまとめ,資料3-4が,非常に分厚くなっておりますが,団体から頂いた御意見を集約した資料となってございます。

次に,資料4が侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査の結果をまとめた資料,資料5が「検討に当たっての基本方針(案)」と題する1枚ものの資料となってございます。次に資料6が「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に係る制度設計・論点(案)」という資料で,最後,資料7が「侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主な事例の取扱い(案)」と題する横書きの表形式の資料となってございます。

それから,参考資料1といたしまして,「文化庁当初案の概要・条文等について」,参考資料2として,「侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主要国の著作権法制について」,参考資料3として,「インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表について」という資料をお配りをしております。

また,構成員の方限りでございますけれども,机上資料1として,パブリックコメントに関する資料の一式,机上資料2として,本年2月の文化審議会著作権分科会報告書,机上資料3として,赤松構成員からの御提出資料をお配りしております。

非常に大部になっておりますが,不足などございましたらお近くの事務局員までお伝えいただければと思います。

【土肥座長】どうもありがとうございました。それでは,早速ですけれども,議事に入ります。本日の議事でございますが,5点ございまして,1,海賊版による被害の実態等について,2がパブリックコメント及び国民アンケートの結果について,3,検討に当たっての基本方針について,4,制度設計について,5,その他と,このようになっております。

まず,議事1の「海賊版による被害の実態等について」でございます。この議事の進め方として,初めに出版分野における被害実態につき,出版広報センター及び日本漫画家協会からのヒアリングを実施したいと思います。その後で,出版以外の分野における被害実態につき,事務局に整理をしていただいておりますので,これについても御説明をお願いしたいと思います。

それでは,まず,出版広報センターの堀内様,伊東様,その後で日本漫画家協会の赤松様から御説明を頂戴いたしますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【堀内構成員】それでは,出版広報センターから御説明します。資料2-1に基づいて御説明させていただきます。

まず,被害の実態の前に,現在の正規版の流通状況ということで,簡単に1ページで,2012年からの電子書籍配信の実情,その中でのコミックス市場の推移,こういったグラフを用意してあります。

現在,2019年で,電子書籍市場とは3,300億ぐらいの市場に大きく成長しています。この間,著者の協力の下に,各社が様々な工夫をして,いろんなサービスを提供した結果,このように大きく成長している市場でございます。

参考に音楽配信の実情があります。また,きょうの新聞に動画配信の市場というグラフが出ていましたけれども,2018年で2,000億ぐらいでしょうか。

正規版の流通の努力をしていないから海賊版がはびこるんだというような御意見をよく聞きますけれども,電子配信市場でこういう出版物を中心にした配信市場というのは非常に大きな市場規模になっているということをまず御説明したいと思います。

そうした中で,その大きな障害といいますか,それが海賊版の出現ということでございます。

次に,3枚目ですけれども,そういう市場が大きくなっている中で,一番代表的な大きな海賊版サイトとして「漫画村」というのがあったんですけれども,今,閉鎖になって,運営者たちが逮捕されて,裁判になっておりますけれども,最盛期は最大で月間1億以上の訪問者があったということで,これは下にありますCODAの試算によりますと,およそ3,000億円に相当するコンテンツがただ読みされたということでございます。これは訪問者数とか滞在時間とかで掛け算をして推定するとこのくらいがただ読みされたということでございます。

それと実際に漫画家,出版社がそれによって売上収入が減ったというのは,順調にいっていればこのくらいだったものが,少なく言って20%ぐらいは減ったと。それ以上減ったというような試算もあり,これは著者にとっても出版社にとっても大きな問題であります。

これは1つの事例でございますけれども,これは株式会社メディアドゥホールディングスのグラフでございますけれども,メディアドゥホールディングスいうのは,日本の漫画配信の中で電子取り次ぎの最大手でございますけれども,そこの資料でございます。

「漫画村」が始まる以前,始まって,そして閉鎖して,そしてその後,「星のロミ」というサイトが出たんですけれども,この前と後でがくっと減って,「漫画村」が閉鎖になったらまた順調に伸びていると。そしてまた「星のロミ」というサイトが出たときに,これがまた大きな影響を受けたということで,もちろん海賊版だけとは言いませんけれども,それが大きく影響しているという分かりやすい図でございます。

前の表と矛盾するようでございますけれども,これは1年間ごとの電子書の売上額を線で結んだので,この1年の間にこういうことが起きているということでございます。

次をめくっていただきますと,5ページ目ですけれども,無料で読ませる海賊版というのがどういうビジネスをしているかというと,大きなものは広告モデルでございまして,どんどんどんどん訪問者が増えれば,媒体価値が高まって,そこに広告を載せる。この広告から収益を得ているということです。これはまた後ほどこの対策については御説明をいたしますけれども,訪問者が来て,それを見るたびに運営者にお金が入っていくと,こういうのが大きな仕組みです。

そして,6枚目でございますけれども,警察の捜査によって「漫画村」の運営者が逮捕されました。サイトも閉鎖されました。しかし,まだいまだに多くの,ここには把握しているのは500以上とありますけれども,600近くのサイトがいまだに横行しているというのが現実でございます。

もう1枚めくっていただきまして,7枚目になります。500以上のサイトのうちの上位10のサイトで月間延べ6,500万人が利用しているということでございます。そして,上位10位のうちの7サイトがダウンロード型の海賊版サイトでございます。

ということで,海賊版サイトにおいては,アップロードするものと同時に,またそれをダウンロードする行為を防ぐということ,そして,海賊版コンテンツにアクセスしやすくなるような,それに誘導するような悪質な行為を防ぐと,この2つが対策として必要ではないかと考えております。

8枚目は今申し上げたことをもう一度繰り返していますけれども,そういったことで,2つの法整備を含めた総合的な対策が必要だと考えております。

そして,もう1枚めくっていただきますと,先ほどの詳細でございますけれども,ダウンロード型海賊版サイトが上位10位のうちの7つ,まだ依然としてある。ダウンロード型じゃなくて,今,ストリーミング型が主流じゃないかとかというような御意見もパブコメの中にあったと思いますけれども,依然として上位はダウンロード型が多いということでございます。

そして,先ほど申し上げました上位10位で月間6,500万人の利用者がいるということで,9月に閉鎖になった「星のロミ」を加えると1億を超えていたということで,「漫画村」に匹敵するサイトがダウンロード型であるということです。

次に,10ページ目に1つの海賊版サイト,大規模サイトの「海賊版サイトA」と言いますが,これは自らダウンロード数を公開しているわけで,その数字でございます。ここにタイトル別に今までの累計ダウンロード数を自ら発表しております。

そして,11枚目に「海賊版サイトA」より1つの具体的な作品の例を挙げますと,『NARUTO』という作品。これは日本国内で1億5,000万部以上,海外でも累計発行数,9,700万部以上,そして,こういう作品が漫画からゲームやアプリや,あるいはミュージカルやグッズや展覧会という様々なことに展開されて楽しまれているわけですけれども,この「海賊版サイトA」の資料によって,広報センターのスタッフが過去の全部このところだけ拾い上げて計算すると,国内外でコミックスの単行本にして2,000万部相当が「海賊版サイトA」からダウンロードされているというようなことでございます。このうち,国内からは1,500万部相当というような数字が,「海賊版サイトA」自身が発表している資料によってこういう数字が明らかになっております。

そして,12ページ目ですけれども,海賊版といいますと,どうしてもコミックというようなことが大きいんですけれども,コミック以外の雑誌においても,文芸書においても,写真集においても,大きな被害を受けているということです。

「漫画村」以前の「FreeBooks」なんかは,村上春樹さんの最新作が発売日の日に日本語で読めるようになっていたといようなことで,コミックのみならず,文芸書でも,写真集,イラスト集,雑誌,こういうふうに広く出版物が被害を受けているということでございます。

そして,13枚目です。なぜダウンロード型が主流なのかということでございますけれども,海賊版サイトを運営する者にとっては,捕まりにくい。それから,コストが安くできる。捕まりにくくて,安くて,そして確実に稼げると,こういうことでダウンロード型がなくならないということでございます。

また,運営者だけでなくて,ユーザーにとっても,一旦ダウンロードしてしまえば,そのサイトが閉鎖になってもその後も閲覧できるということです。それから,複数端末で共有したり,第三者に譲ったりと,こういうこともできる。

ですから,運営者のみならず,使う方にとっても便がいいということでなかなかなくならないということでございます。

14ページ目にありますけれども,これは2017年の秋から2018年の9月末までの1年間の1つの数字ですけれども,出版社が海賊版サイトに年間200万件以上,削除要請をしたんですけれども,トレント,リーチサイト,赤字のところがダウンロード型ですけれども,削除要請しても応じない。削除率が12.7%,12.3%とございます。なかなか削除に応じない。

一方,サイバーロッカーというのは,これは非常に削除率が高いんですけれども,一旦削除して,すぐ再アップするというのが実情でございます。

こういったことで,民間としても,関係省庁の協力を得たりしながら,こういうことをずっと長年にわたって行っておりますけれども,なかなかなくならないということで,民間の努力にもちょっと限界があるということです。

15ページ目に海賊版サイト,「漫画村」も運営者逮捕までに我々が相談してから2年以上かかっております。ですから,今の法律で,警察が,サイバー犯罪の専門のチームがやっても,なかなか巧妙で,2年近くかかったわけです。

そして,この関係者にお伺いすると,「漫画村」のときよりも例えば「星のロミ」,どんどんどんどん巧妙に技術が進化している。更に捜査が困難になっている。この2年間の間に失われた損害というのは相当大きな額になっていると思います。

そして,最後になりますけれども,こういう法制度を望みながら,一方で我々が今まで様々な海賊版対策を行ってきた。にもかかわらずこういう実態があるということですが,我々が今まで取り組んできた1から12までの,サイトへの削除要請,あるいはネット接続業者,ドメイン登録業者への削除要請,閉鎖要請ということをやりながら,また,裁判所への発信者情報開示請求,仮処分の手続と。

ここのところ,Googleとかヤフーの検索大手に「漫画 ただ」とか,「漫画村」とか「星のロミ」と入れると出ていたんですけれども,それを表示の抑制。現在は,Google,ヤフーさんに協力していただいて,海賊版とか,「星のロミ」とか入れると,広報センターの「STOP!海賊版」というようなことが表示されたり,あるいは,こういう海賊版サイトは違法ですよと,こういうことにアクセスするとこうこうなりますよというようなことをやって,検索大手も非常に協力をしていただいているということです。

それから,7番目は,資金源を断つということで,インターネットの先ほど言った広告の出稿停止をするように。これはCODAが仲立ちして,広告業界の様々な団体と定期的に話し合いをしながら,こういう違法サイトには出稿しないようにと,こういうことを今進めて,随分それは行き渡っていると思います。

それから,8番目は,複数の出版社の連合で法的アクションを起こす。以前ですと,「FreeBooks」,これは出版社6社が法的アクションを起こしている最中に自ら閉鎖となりました。

また,「星のロミ」については,米国で出版社4社で向こうで法的手続を進めたところ,9月19日,閉鎖になったということです。

一番直近の話題では,辞典の海賊版ということで,これも出版5社が今法的な手続を進めていると聞いております。

そして,9番目は,警察と連携して,「マンガパンダ」,「はるか夢の址」,「ネタバレサイト」,「漢化組」など,「漫画村」も含めて,警察と相談して連携して摘発を行う。これも捜査に着手する,あるいは逮捕までいくというのはほんの一部で,非常に困難な仕事になっているかと思います。

そして,先ほど報道されておりましたけれども,講談社が民事でも訴訟を起こすというようなことで,刑事,民事でも対応しているということです。

そして,10番目に一般読者・ユーザーに向けた普及啓発活動ということで,出版広報センターが中心になりまして,例えば全国紙,新聞5紙に広告を打つ。あるいは,雑協加盟社の出版社の雑誌200誌に,およそ2,000万部,こういう雑誌でも訴える。それから,ユーザー向けには,SNSを各社共同で活用して,4回にわたって「STOP!海賊版」というキャンペーンをやって,海賊版がこういういけないことですよ,それから,こういう弊害をもたらしますよというようなことを訴えて,そのほかにも,総務省が実施しているe-ネットキャラバン,こういうところで普及啓発活動。これは年間,昨年だと47万人ぐらいの児童・生徒,保護者の皆さんに向けて,ネットの正しい使い方,こういうことにも我々の漫画を使って分かりやすく説明するとか,そういう形で協力して,普及啓発活動にも努めております。

それから,よく聞くのが,どれが海賊版でどれが正規版か分からないという声も以前ありました。「漫画村」を契機に,出版広報センターが中心になって,ABJの事業組合を作りまして,オーソライズ・ブック・ジャパン,そのマークを作って,それを登録して,それに一つ一つ通し番号が打ってあって,これを付けてください。電子書店さんに協力をあおいで,それを今付けています。今,170ぐらいの事業所で700近いサービスにABJマークを付けて,一目瞭然,これが正規版だと,安心して使ってください。そういうことも,先ほど申し上げたキャンペーンで皆さんに周知,ABJのマークはこういうマークですよと。こういうマークを付けているもの以外は使わないようにと,こういうことで。これは日本電子書籍協会と日本デジタルコミック協議会が協働して運営をしているということでございます。

ほかにも,関連する企業,業界,それから,各省庁と絶えず連携をして,情報共有をして,様々な対策に当たっていると。

こういう民間ででき得る様々な対策を講じながらも,依然として500以上のサイトが横行しているということで,是非とも法整備が一刻も早く実現するということを私たちは望んでおります。

以上です。では,赤松構成員。

【赤松構成員】おはようございます。日本漫画家協会常務理事の赤松健です。ふだんは「少年マガジン」系列で連載させていただいております。これ,『進撃の巨人』が載っている雑誌ですよね。それで先月,単行本21巻が出ました。よろしくお願いしますって,ここでCMしてどうするんだ。漫画家ですので,砕けた感じでいきたいと思います。すいません。

その前に,春に日本漫画家協会から声明を出しまして,そこでは余りにも適用範囲が広いことから,静止画ダウンロード違法化に関して反対の声明を出させていただいたんですけれども,当時から,要件さえ適切に絞れば,是非規制の方はやっていただきたいということは主張しておりました。また先日,出版広報センターと漫画家協会で共同声明を出しまして,改めて我々一枚岩で海賊版に対抗していこうと。そのための法的な手続きなどを整備していただけたらという希望を今は持っております。

さて,一番下の資料ですね,リーチサイトと海賊版ダウンロード行為。先ほど堀内さんから数字に関していろいろ説明いただきましたけれども,漫画家の方では怒っているポイントが少し違います。そこをちょっと説明させていただければと思います。

漫画家が怒っている5つのポイントとありますけれども,1つずついきますね。まず,私は海賊版サイトによくアクセスするんですが,私は他人の作品じゃなくて自分の作品を必ずダウンロードしていますので,全く問題ないですよね。自分の作品ならね。

リーチサイトというのは,サイバーロッカーにアップロードされているこういう作品のURLをまとめてあるサイトです。昔はこういうふうに裁断をして,スキャナーでスキャンして自炊をしていたんです。2ページ目の「最初のアップロード者」というやつですね。これはデータをサイバーロッカーに,昔はみんなに読んでもらいたいなと思ってアップロードしていたわけです。それを次の「ダウンロード&アップロード者」というのが,無料で読みたいのでダウンロードすると。ダウンロードした後に,これをまたほかのサイバーロッカーにアップロードしちゃうわけなんですよ。その理由は後述します。4ページ目はサイバーロッカーの基本的な構造なんですけど,こういう漫画の海賊版データをサイバーロッカーにアップロードして,それが誰かにダウンロードされると,1,000ダウンロードごとに5ドルもらえちゃうと。つまり特に漫画描く能力がない人でも,我々の本をアップロードするだけで,ダウンロードされるとどんどんお金が入ると。これはかなり悔しいですよ。そしてダウンロードして,今度は自分もインセンティブが欲しいから,いろんなサイバーロッカーにどんどんアップロードするということで,全世界に一瞬にして広まってしまうと。

その広まってしまうスピードが結構すごくて,3ページ目を御覧ください。これ,私の『UQ HOLDER』の21巻。これ,10月9日に出ました。10月9日に出て,10月10日には登録されているんですよ。これは痛いですよ。翌日は勘弁してほしいですよ。

それで,サイバーロッカーは幾つもありまして,ZippyShareとか,ZeroShare,Uploadedとか,TakeFileとか,いろいろありますけれどもどれも古参サイトですよね。先ほど堀内さんから説明がありましたけれども,サイバーロッカーは削除要請に関して95%くらいは削除をしてくれるんです。でもリーチサイトは削除してくれないですね。これは今,法的には叩けないんですよ。このリーチサイトは今,海賊版ではアクセス数1位ですね。またサイバーロッカーの評価表で,削除が早いところは推奨しないとか,一々怒りポイントが多いんですよね。漫画家,みんな,これ見たら怒りますよ。

話を戻すと,アップロード者とリーチサイト登録者が発売日翌日にアップロードするのがまず怒りポイントの1です。

そしてダウンロードされると,なぜかアップロード者がもうかる仕組み。これもものすごく怒りポイント2ですよね。

それで,実際に私,リーチサイトからサイバーロッカーに行ってきました。『UQ HOLDER』の21巻が無料でダウンロードできます。フリーダウンロードというのがそうですね。押すまでにまず30秒待つと。その後,ダウンロードすると,無料版だと1冊51分かかりますと書いてあるんですけど実際やってみたら,1時間半ぐらいはかかります。これ,いらいらするので,みんな,有料プレミアムに入るんですね。プレミアムならダウンロードが30秒切っちゃうということで,これで今度はサイバーロッカー側がもうかるということですよ。これもまた,何で我々の漫画が勝手にダウンロードされてサイバーロッカーやらアップローダーがもうかるのかというのがすごい怒りポイントですよね。これが3番。有料プレミアム登録でダウンロードが高速化。なぜか業者がもうかっちゃうと。

出版社とは一番違う怒りポイント,それは6ページ目です。6ページ目に実際にダウンロードした本物の海賊版データがあります。これ,私の作品です。すごく画質がきれいなんですよ。昔は紙を裁断してスキャンしていたものだから,網点なんかぼけていて,ああ,汚いなという感じはあったんですけど,今は,紙の自炊は行われてないです。明らかに正規版の電子書籍を違法にキャプチャしたものですよね。何でそれがわかるかというと,一番最後のページが紙の単行本とは,全然違うんですよ。これ,元は正規の電子書籍なんです。電子書籍がキャプチャされることに関しては,結構防ぎようがない上に,すごくきれいだというのがあって,これも相当な怒りポイントですよね。怒りポイント4番。画質がとてもきれいで,正規版電子書籍を違法にキャプチャしたものであると。ここは非常に許せないポイント。

そして,7ページ目,何と雑誌が丸ごとアップロードされていると。これは先月の「別冊少年マガジン」。手元のこの雑誌と同じものです。雑誌が丸ごとアップロードされているのがなぜよくないか。それほど実績のない作家さんは紙の単行本が出ないことがあります。出るのは電子版コミックスだけなんですよ。電子版だけの作家というのが海賊版にやられると,ものすごい100%被害が直撃しちゃうの。私みたいなベテラン作家は,今まで紙の単行本で買ってくれていた層が,まだ紙で買ってくれることもあるので,被害が多少軽減されるんですけど,新人さんで電子版だけの作家さんは,雑誌でも海賊版が出ちゃうし,さらに単行本の電子版も海賊版が出ちゃうということは,丸々ダメージをくらってしまうんです。新人さんが特に深刻なダメージを受けるというのは,要するに将来の日本の漫画業界,漫画文化に関してものすごくダメージがあるということを意味しています。これが怒りポイントの5番です。

最後に8ページ目です。怒りポイントのまとめに関してですけど,アップロード&リーチサイト登録が発売日の翌日。これ,サイバーロッカーに海賊版データがアップロードされた事実をなぜリーチサイトの運営者がすぐ知ることができるのか。一番合理的なのは,アップロードした人がリーチサイトの運営者と同一人物であるということでしょう。それなら,全て納得がいくんですよね。

そしてダウンロードされると,アップロード者がもうかる仕組み。有料プレミアム登録でダウンロード高速化。これはサイバーロッカー側もある程度悪用されているのを認識しているはず。しかし苦情が来たら削除すればいいので,これを放置してしまう。

画質がきれいな件に関しては,画面キャプチャはOSの機能なのでなかなか,防げない。

雑誌丸ごとアップロードで,新人作家に深刻なダメージ。これは将来の漫画界に大きな悪影響が予想されると。

こういう現状を鑑みて,我々としては,法的に手出ししにくい,特にリーチサイトの規制と侵害コンテンツのダウンロードの違法化のための迅速な法整備をすごく求めているわけです。実は,動画と音楽は既にダウンロードの違法化はされているわけですよね。そういう状況で,漫画はどんどん海賊版のダウンロードをしてもいいんだよ,というようなメッセージを我々の方から出すというのはものすごく抵抗感があります。

そういう気持ちがありまして,先日,大手出版社9社の出版広報センターと漫画家協会で改めてこういう違法化のための法整備を求めるという声明を出したところです。これに関して,是非この検討会で検討を進めていただければと思っている次第であります。

ありがとうございます。

【土肥座長】どうもありがとうございました。侵害実態について,構成員のお二人のお話が熱を帯びまして,予定している時間を若干過ぎつつあるわけでございますけれども,ただいまの説明につきまして御質問等ございましたら是非お願いをいたします。

よろしいですか。非常に的を射た御説明であったと思っておりますので,構成員の皆様,よく御理解いただいたものと思います。けれども,御質問もしありましたら,いかがでしょう。よろしいですか。

ありがとうございました。それでは,続いて,出版以外の分野における被害実態について,事務局から,これも的確に要領よく御紹介いただければと思います。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。それでは,資料2-2を御覧いただきたいと思います。右肩にございますとおり,関係団体による調査結果・情報提供を基に事務局で整理した資料となってございます。2つ目の※にありますとおり,既にダウンロード違法化の対象となっている音楽・映像は除いて記載をしております。

まず1番がコンピューターソフトウェアの被害でございまして,1つ目に不正なビジネスソフトの利用による日本での損害額が1,106億円というデータを記載してございます。こちらはBSAの調査によるものですが,この中には海賊版,企業内不正コピー,インターネットを利用した複製を含むとされておりまして,それぞれの内訳は不明ですので,いわゆる違法ダウンロードによる被害が幾らかというのは必ずしも明らかでないという点には留意が必要かと思います。

2つ目は,コンピューターソフトウェア著作権協会による調査での推計として,ある1つのインターネットオークションサイトにおいて違法アップロードされたビジネスソフトをダウンロードするよう指示する出品からの落札数が約1万件余りに及ぶという結果もございます。

また3つ目にありますとおり,ビジネスソフト,ゲームソフトともに,海賊版サイト,リーチサイト,ファイル共有ソフトなどにおきまして違法アップロードされたコンテンツが多数掲載されているという実態もございます。

次に2番,学術論文についてでございます。これは大型の論文の海賊版サイトがございまして,そこからの日本でのダウンロード数が127万件余りに及ぶという調査結果がございます。※にございますとおり,このデータは,2017年のデータですけれども,2015年から2017年の間に5倍以上に利用数が増加しておりますし,このうち98万件余りがいわゆる講読型の有料の文献に当たるという結果もございます。この講読型文献の数に,仮に学術著作権協会における許諾使用料,1論文当たり2,800円を機械的に当てはめて計算をした場合,被害額が約27億円となるという報告も頂いております。

それから,3番が新聞記事についてでございまして,1つ目にありますとおり,特定の1つのまとめサイトにおける新聞社,通信社7社の画像の無断転載,結果的には削除されておりますけれども,合計で約34万件の画像が違法にアップロードされていたという実態もございます。

また,ある新聞社Bというところが発見した記事の無断複製,転載件数は2年間で約23万件に及ぶという結果も御報告を頂いております。

そのほか,4番にございますとおり,写真集,グラビア写真の海賊版被害につきましては,先ほど出版社からも御紹介がございましたし,そのほか,ブログ,SNSなどにおきましても,写真,イラスト,楽曲の歌詞などが多数無断でアップロードされている実態もあります。また,撮影用の台本が不正に流通し,SNSに写真がアップロードされると,こういう事例についても御報告を頂いておりまして,分野を問わず海賊版のアップロード・ダウンロードによる被害が深刻になっているということが確認できているところでございます。

【土肥座長】ありがとうございました。ただいま出版分野以外の分野における海賊版の被害の実態について御紹介を頂いたところでございます。これについて何か御質問ございましたら,お願いをいたします。福井構成員,どうぞ。

【福井構成員】福井でございます。ご説明,どうもありがとうございました。2-2ですけれども,1番にはデータの出典が記載されているように思うんですが,2番から4番がデータの出典が必ずしもないようにも見えます。次回で結構ですので,これはお教えいただければと思います。

【土肥座長】次に御質問ございましたら,いかがでしょうか。

よろしいですか。じゃあ,事務局におかれましては,次回までに出典をお願いいたします。

それでは,次に,パブリックコメント及び国民アンケートの結果というものが出ておるようでございまして,これについてなんですけれども,本年9月30日から10月30日にかけて文化庁において侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントというものが実施されておりますので,その結果につき,事務局より説明をお願いしたいと存じます。意見交換の時間を十分確保するために,構成員の皆様には事前に資料を御覧いただいておるかと思いますので,その点を踏まえて簡潔に説明をお願いしたいと思います。加えて,パブリックコメントと並行して侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する国民アンケートも実施されておりますので,その結果についても併せて御説明をお願いいたします。

では,よろしくお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料3-1を御覧いただきたいと思います。パブリックコメントの結果の全体像をまず御紹介をしたいと思います。

1ページ目,冒頭にパブリックコメントの趣旨を記載しておりますが,本件につきましては,バランスのとれた法整備が必要でございまして,その検討に向けた第一歩として,国民の皆様の懸念事項,具体的な要件に関する御提案などを幅広く把握するということで実施をしたものでございます。

本年9月から10月にかけて実施しまして,全体で4,437件の御意見を頂いております。内訳としては,個人からの御意見が4,386件,団体からの御意見が51件となっております。

なお,この団体の51件には個人が連名で御提出頂いた意見を含んでおります。

個人の4,386件の御意見につきましては,文化庁の指定した別紙様式による御意見とe-Govの意見提出フォームによる御意見がございまして,それぞれの内訳はこちらに記載のとおりでございます。

それから,2ページに参りまして,個人から提出された意見の概要を御紹介いたします。まず1ポツ,侵害コンテンツのダウンロード違法化についての御意見のうち,(1)基本的な考え方につきましては,全体で4,386件の御意見がございました。その内訳としては,①賛成,どちらかといえば賛成と思われる御意見が151件,反対,どちらかといえば反対と思われる意見が3,792件など,内訳はこちらに記載のとおりとなってございます。

それから,(2),文化庁当初案に対する考え方につきましては,別紙の様式で提出された御意見1,013件を集計してございます。内訳は,①「文化庁当初案のままで良い」が10件,②,「違法となる対象が広い」ので,違法化の対象を絞り込むべきという御意見が285件など,内訳は記載のとおりでございます。

2ポツのリーチサイト対策につきましても,全体で452件の御意見を頂いておりまして,内訳は下に記載のとおりとなってございます。

それから,3ページに参りまして,団体などから頂いた御意見をまとめております。まず1ポツの(1)ダウンロード違法化に対する基本的な考え方につきましては,全体で48件御意見を頂いておりまして,その内訳としては,「賛成」が28件,「どちらかというと賛成」が1件,「反対」が8件,「分からない」が2件,「無回答」が9件となってございます。

なお,この無回答の御意見の中には,海賊版対策の実効性確保と国民の萎縮を生じさせないという2つの要請が両立しがたいのではないかという趣旨で無回答にされている御意見も見受けられました。

それから,(2),文化庁当初案についての御意見も全体で48件ございまして,このうち,①の「当初案のままで良い」という御意見が16件,「違法となる対象が広い」ため,違法化の対象を絞り込むべきという御意見が15件,4ページに参りまして,「違法となる対象が狭い」ので,違法化の対象を広げるべきという御意見が1件,具体的な要件の適否は分からないけれども,バランスのとれた内容とすべきという御意見が4点,要件にかかわらず,違法化自体を行うべきではないという御意見が8件,「その他」が4件という内訳になってございます。

また2ポツ,リーチサイト対策については,全体で38件御意見を頂いておりまして,内訳は①の賛成,どちらかといえば賛成と思われる御意見が21件,②の反対,どちらかといえば反対と思われる御意見が2件,③「要件次第であるという意見」が14件,「その他」が1件という内訳になっております。

全体像については以上でございます。

続いて資料3-2から3-4まで,ざっと御紹介をさせていただきたいと思います。まず3-2が個人から頂いた御意見のうち文化庁の指定した別紙様式で御回答いただいたものでございます。別紙様式では,目次にございますとおり,基本的な考え方,懸念事項,要件設定,その他という区分で御意見を頂いておりまして,それに沿った集計結果をまとめてございます。概略だけ御紹介いたします。

まず1ページ目が「基本的な考え方」ということで,侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うこと自体についてどう考えるかという質問でございます。「賛成」から「無回答」まで,こちらに記載のとおりの内訳となっております。

それから,2ページ目以降では,懸念事項と要件設定についての御意見をまとめております。まず3ページから4ページにかけましては,パブリックコメントで例示をしたローマ数字ⅰからⅶまでの懸念事項のそれぞれについて,どの程度懸念されるかという御意見を集約したものでございます。おおむね全ての懸念事項について懸念が大きいということが把握されたかと思いますが,例えば4ページのローマ数字のⅴについては,ほかの事項と比べて「とても懸念される」という回答が若干少ないなど,懸念事項によって多少の国民の方々の不安にも違いがあるのかなと受け止めております。

それから,5ページ目から6ページ目にかけましてが,その他の懸念事項として,例示をしたもの以外に御提出いただいた懸念事項についても全て記載をし,意見の件数についてもまとめてございます。

それから,7ページに移っていただきまして,ここからが具体的な要件設定についての御意見でございます。7ページでは,文化庁当初案についてどう考えるのかという件につきまして,「適切である」から「無回答」まで内訳を含めて記載をしております。

また,8ページ目以降では,「適切である」,「違法化の対象を絞りこむべき」などの回答に応じてそれぞれの御意見の理由,要件設定の御提案などについて頂いた御意見を件数を含めて整理して記載しております。

それから,ページが,飛びますけれども,15ページからが「その他」についての御意見でございまして,15ページからはダウンロード違法化に関しまして,これまでの様式で指定されたものにとどまらない御意見を幅広に頂いておりますので,その結果を集約して記載しております。

また,17ページからはリーチサイトについての御意見を記載しておりまして,まずそれぞれの賛成,反対,要件次第という件数を記載した上で,それぞれの御意見について主なものを具体的に記載させていただいております。

最後のページになりますけれども,23ページにおきましては,海賊版対策全般についての御意見ということで,リーチサイト,ダウンロード違法化にとどまらず,様々な対策を構ずべきという御意見を頂いておりますので,それらについても件数を含めて記載しているところでございます。

続いて,資料3-3,これも同じく個人からの御意見でございますが,e-Govの意見提出フォームで自由記述として頂いた御意見をまとめたものでございます。こちらは自由記述でございますので,事務局の方で確認をさせていただきまして,1ポツ,ダウンロード違法化,2ポツ,リーチサイト対策,3ポツ,海賊版対策全般というふうに区分をしまして,それぞれについて賛成,反対,要件次第,この区分をした上でそれぞれの具体的な御意見をまとめるという形で,先ほどの資料3-2となるべく近いような形で集計をしてございます。詳細については説明を割愛をいたします。

続いて,資料3-4が団体から頂いた御意見をまとめた資料となっております。非常に分厚くなっておりますけれども,団体から頂いた御意見を全てそのまま掲載しております。

目次にございますとおり,文化庁当初案に対する考え方に応じまして全体で6つに大きく区分しまして,それぞれ提出いただいた順番で機械的に並べているという形になります。

一例として4ページを御覧いただきたいと思います。日本文藝家協会から頂いた御意見を記載しておりますが,我々の指定した様式に沿って,選択式,自由記述,それぞれ御回答いただいた意見について,加工することなく,そのまま全て掲載をさせていただいているものでございます。ほかの団体からのご意見についても同様の取り扱いにしております。

なお,一部現存する海賊版サイトの名称などが含まれている部分には黒塗りをしておりますが,その他一切加工しておりませんので,それぞれの団体から御提出され,生の御意見をそのまま整理をしているということで御覧を頂きたいと思います。詳細な説明は割愛をいたします。

続いて,資料4を御覧いただければと思います。文化庁の方で実施をしたアンケート調査の結果につきまして御紹介をいたします。

まず1ページに調査の概要を記載しております。調査趣旨にございますとおり,今回の法整備が国民に与える効果・影響を把握するために,ダウンロード経験の有無等の実態,ダウンロードが違法化・刑事罰化された場合の行動変容などを調査したものでございます。株式会社マクロミルというところに調査をお願いいたしまして,インターネットリサーチの手法でモニターを対象に全体で2,583サンプルとなるように調査を行っていただいております。

回答者の構成につきましては,円グラフに記載のとおり,男女比,年齢別,地域別,それぞれ偏りのないように調査を行っていただいております。

2ページ目以降に調査結果を記載しておりますので,簡単に御紹介をいたします。まず(1)が現行制度の理解でございまして,違法にアップロードされた漫画などのコンテンツを違法にアップロードされたことが確実だと知りながら個人が楽しむ目的でダウンロードすることが現行の著作権法に違反するかどうかという質問をしております。回答は「違反する」が79.7%,「違反しない」が9.7%,「よくわからない」が10.6%となっております。

現行の著作権法に照らしますと,2ポツ,「違反しない」が正しい回答になるわけですけれども,1ポツと回答された方も多いという結果になっておりまして,こういった行為が法規範に反する悪い行為だということが案外多くの人に認知をされているということだと受け止めております。

次に(2)が侵害コンテンツのダウンロード経験の有無でございまして,違法にアップロードされたことが確実だと知りながら漫画などのコンテンツをダウンロードした経験について質問をしております。結果は,「あり」が6.2%となっております。また,二次創作の漫画,スクリーンショットについては,特筆すべきものとして別途確認をしておりますが,それぞれ2.2%,2.3%という結果になっております。

次に(3)も同じく侵害コンテンツのダウンロード経験の有無を聞いておりますが,こちらは違法にアップロードされたのかもしれないと思いながらダウンロードした経験を聞いております。結果は若干数字が増えまして,「あり」が10.3%,「二次創作」が3.8%,「スクリーンショット」が4.8%という結果になっております。

次に3ページに参りまして,ここからがより詳細なダウンロードの実態ということになります。冒頭※に記載しておりますとおり,これ以降の問いについては,(2)ダウンロード経験の有無(その1)で「あり」と回答した方159人,全体の6.2%にのみ質問した結果を集約しております。

まず(4)がダウンロードの頻度でございまして,「ほぼ毎日」が2.5%,「週数回程度」が10.1%,「月数回程度」が18.2%,「月1回未満」が69.2%ということで,比較的少ない回数ダウンロードしている方の割合が多いという結果になっております。

(5)はダウンロードの場所,手段でございまして,海賊版サイト,リーチサイトが42.1%,ファイル共有ソフトが20.8%,投稿型サイト・掲示板が34.6%,ブログ・SNSが26.4%などとなっておりまして,海賊版サイトに限らず,様々な場所から侵害コンテンツがダウンロードされているという実態が明らかになったものと受け止めています。

次に(6),ダウンロードの目的につきましては,「楽しむため」というのが87.4%で多くを占めておりまして,その他,業務,研究,スクリーンショットでたまたま入ってしまうなどについても若干数おられるという結果になっております。

次に4ページを御覧を頂きまして,こちらは違法化・刑事罰化された場合に行動がどう変わるかということを質問した部分でございます。(7)が侵害コンテンツのダウンロードが違法化され,民事責任を負い得ることとなった場合どうするかという質問に対する回答でございまして,「やめる」が69.2%,「減らす」が22%,「変わらない」が8.8%という結果になっております。

(8)も同じく行動変容を質問しておりますが,こちらは刑事罰化された場合どうするかという質問でございます。「やめる」は若干数字が増えまして,77.4%,「減らす」が16.4%,「変わらない」が6.3%という結果になってございます。

最後,5ページが違法化・刑事罰化による影響ということで,侵害コンテンツのダウンロードが違法化・刑事罰化された場合に困るかどうかという質問をしております。結果としては,1ポツの必要性の低いダウンロードは行わず,必要性の高いものは正規版を利用するなとするので,特段の不都合を生じないというのが44%でございます。2ポツの,現状より不便になるが,そういったダウンロードが禁止されるのであればやむを得ない,すなわち,日常生活に支障が生じないというのが45.3%。3ポツの日常生活に支障が生じるというのが10.1%などという結果になっております。

3ポツの10.1%の方々につきましては,具体的な支障を自由記述で記載をしていただいておりまして,その結果は括弧書きで記載をしております。刑事罰が科されると困る,いちいち許可を必要とするのが面倒,具体的には分からないが,そんな気がする,経済的に難しい,生活が困難となるといった御意見が見受けられたところでございます。

この機会に参考資料の2につきましても簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。参考資料の2は,諸外国の著作権法制について調査をした結果をまとめたものでございまして,今回,外務省を通じて各国大使館などに調査訓令を発して,その結果などをまとめてございます。

まず1ページ目が,カナダ,ドイツ,フランスの例を挙げておりますが,私的使用の複製を認める例外規定が存する主要国の扱いを記載しております。枠囲いにございますとおり,こういった国におきましても,侵害コンテンツの私的複製は明文で禁止されております。

また,その際,著作物全般を対象にしておりますし,規定上,著作物の一部分の複製などやスクリーンショットなども除外をしておりませんので,幅広い行為が違法になるという仕組みになっております。

罰則につきましては,カナダでは罰則はございませんけれども,ドイツ,フランスでは民事の要件と同じ要件で罰則がかかるという規定になってございます。詳細については表を御覧いただきたいと思います。

なお,表の下側に小さい※で記載をしておりますけれども,スペイン,フィンランド,ハンガリー,スウェーデン,デンマーク及びオーストラリアにおきましても同様に違法なソースからの複製は例外規定から除外されており,違法という扱いになっております。

一方,スイスにおきましては,先般,著作権法の改正が行われておりますが,その中に侵害コンテンツのダウンロードを規制する内容というものは含まれていないということで,国によっても対応に違いがある部分もあろうかと思っております。

次のページがフェアユース規定を有する国などの取り扱いをまとめた部分でございます。アメリカ,韓国,シンガポール,台湾という例を挙げておりますが,これらの国におきましては,フェアユース規定はありますけれども,侵害コンテンツのダウンロードがフェアユースに該当するというふうに判断された事例は現時点では確認をされておりません。

一方で,逆にアメリカ,台湾,韓国におきましては,侵害コンテンツのダウンロードがフェアユースに当たらないというふうに判断された事例が存在しているものと承知をしております。

なお,イギリスにおきましては,ソースの適法,違法にかかわらず,一般的には私的使用の複製を認めるという規定がございませんので,そういった行為をすると違法になるという扱いかと承知をしております。

事務局からは以上です。

【土肥座長】どうもありがとうございました。それでは,ただいまの説明につきまして,御質問等ございましたらお願いをいたします。田村構成員,どうぞ。

【田村構成員】大変詳細に調べていただき,また,パブコメ等でいろいろな意見を徴収していただきまして,大変ありがたく思っております。私の話は,少し細かい話ですが,アンケート結果についてです。私なども,同僚が社会科学の調査をしたり,私自身も特に商標等の事件でアンケートに携わることが結構あるのですけれども,そうしたときにどうしても匿名であっても,人はわりと「違法なことですよね」と言われたら,「そういうことはしません」とかいうふうにわりとうそをつく傾向がある。それをいかに見抜くかというのが,社会学のアンケートを工夫するときにかなり頭を悩ませるところです。今回頂いた,このデータがあれば,皆さんの行動がより分かりすいかなと思うところがあります。この調査結果を見ていただくと,確かに行動変容は7や8などで,違法化されると私たちはやめるというふうに宣言してくださっている方が大変多いです。これは心強いことですけれども,他方で,本当にこの人たちがそう動くかどうかというのは,調査の際は疑わしいといえます。今頂いた設問からも,それがある程度調べることができるようなデータがあるかと思っていまして,それは最初に現行制度の理解で,違反するというふうに分かっていると言っている人が79.7%いて,この方たちが(2),(3)の行動をどうとっているのかというところが非常に知りたいところなのですね。違反すると分かっているのにもかかわらず,(2),(3)で実はダウンロードしていると。でも,その人たちが最初にやめると7,8で答えていたら,それは矛盾でしかないので,そういった形で,より様々なアンケート結果のバイアスをより逃れた数値を出していくことができるのではないかと思いますし,既にデータもおありのなで,大変恐縮ですけれども,見せていただけると,より実効性がよく分かるのではないかと思いました。

【土肥座長】ありがとうございます。これはおっしゃるとおりなので,つまり,現行法上違反するというのは79.7ありながら,行動変容の部分について,やめるとか,この辺の数値の説明としては,確かに疑問を感ずるところでありますけれども,アンケートをやる人って大体主催者の意図を読んだり,先取りしたりするので,こういうことが起こるのかもしれませんが,何かございますか。

【大野著作権課長補佐】データの詳細については,確認して,またお示しをしたいと思います。ここの評価は難しい部分あろうかと思いますが,(1)では,著作権法に違反するかどうかというのをある意味フラットに聞いておりますので,法に違反する悪い行為なんだと感じて1ポツを選択された方が多いのではないかと受け止めております。一方で,(7),(8)につきましては,民事措置,刑事罰として,その具体的な内容も明確に示した上で御質問をしておりますので,そういった具体的な民事責任,刑事罰が負わされるということをこの問で理解をされて,そうであればやめるというふうに回答された方が多いのかなと受け止めております。

いずれにしても,データは確認して整理をしたいと思っております。

【土肥座長】特に分からないのは,アスタリスクで現行の著作権法上違反しないが正しい回答というのは,設問にあるんですか。

【大野著作権課長補佐】(1)の現行著作権法上違反しないが正しい回答というのは,当然アンケートの際はなかった記載でございまして,この資料で分かりやすくするために付けた注釈でございます。

一方で,(7)と(8)の※はアンケート調査の段階から明記をしておりまして,こういった措置を具体的に受けることについてイメージを持っていただきながら回答をしてもらっていましたので,この部分はしっかりと御覧いただいた上で回答された結果なのかなと思っております。

【土肥座長】その点,分かりましたけれども,事務局によって,次回までに可能な範囲でよろしくお願いします。ほかに。大渕構成員,どうぞ。

【大渕構成員】今の点は,さっと見ると矛盾するように見えるからという御趣旨で言われたと思うのですが,先ほど事務局が言われたとおり,漠然と認識しているというのと,今後このような形で法的な措置がとられるというのは,同じ認識といってもレベルが非常に違います。なお,これは,本当は違反しないから間違っていると言えば間違っているのですが,私はここにこそ健全な常識が表れているものと思います。この点こそが極めて重要であり,この点こそを重視すべきと思います。当然このようなものはいけないだろうという漠然とした認識があるという話と,それから,今後具体的に民事・刑事の責任を問われるようになったらやめるという話は,別の次元のことなのであります。調べていただくのはよいのですが,またそれで過度にデータをとり直すというのも大変なので,そこのところは普通に読めば,人間の行動として十分合理的に理解できる範囲の話ではないかと思います。

【田村構成員】すみません,それほど大きなことを言おうとしているのではないのです。私の言い方が悪かったのか,趣旨を正確に言いますと,(1)で1を選択した人が,(2),(3)でなお1を選択しているのかというのが私が聞きたいことなのです。皆さんいろいろ推測していますけれども,私はどちら,どっちとも言っていません。結局,違反したと分かっているときに行動を変容するかどうかが分かるわけで,その人たちが仮に更に(7),(8)でやめると言っていたら,それは矛盾しているかもしれない。あるいは,もしかしたら,今言ったような認識の角度の問題なのかもしれませんが,それは推測をするよりも何よりも,データがおありになるので,もしお手数でなければ見せていただきたいという趣旨です。特に聞きたいのが,1と(2),(3)の設問の流れの関係です。

【土肥座長】私,申し上げている,可能な範囲でということでございますので,改めてやり直すようなことは必要ございません。

ほかにございますか。萩原構成員,どうぞ。

【萩原構成員】1つコメントをさせていただきたいんですけれども,資料3-1です。3ページ目なんですけれども,ここは団体等から提出された意見の概要ということで,まず基本的なコンテンツのダウンロードについての考え方ということで,日本経済団体連合会なのですけれども,6の「無回答」のところに入れていただいております。何も考えていないんじゃないのかと,こういうふうに思われてしまうと問題なので,少し解説させていただきたいんですけれども,このパブリックコメントに対して,経団連は,文化庁さんの用意された様式を使わずにフリーで出させていただきました。なので,この「無回答」というところに入っているのかもしれませんけれども,基本的には,コンテンツ産業の振興という観点を非常に経団連として,重要視していますので,海賊版サイトの存在ということになりますと,コンテンツ産業の健全なスムーズな発展を妨げると考えております。

したがいまして,侵害コンテンツのアップロードをされるところでの規制と,一方では,その出口に当たる無断ダウンロード,この両方をしっかりと法制度でカバーする,担保するということが必要かと思っていますので,そのように書かせていただいたつもりだったのですけれども。ですから,基本的な考え方については賛成ということにしていただきたいと思います。

それから,もう一つコメントさせていただきたいんですけれども,このアンケートを見ますと,個人の方のかなりの多くが違法ダウンロード,侵害コンテンツのダウンロードの違法化の規制に反対。一方で,団体の方はほぼほぼ賛成ということで,もし仮に制度を導入するということになれば,いかに個人の方々に理解してもらうかということが非常に重要なことなのではないかということをこれは表していると思うんですね。ですから,その辺のところは文化庁さんで,最終的にどうなるか分かりませんけれども,是非検討していただきたいなと思います。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。

【河野構成員】消費者としてまた,一般ユーザーとして参加させていただいております河野から,今のパブコメとアンケートについて受け止めをお伝えしたいと思っております。

一般ユーザーの多くは,今回の侵害コンテンツのダウンロード違法化に関しては,正しい認識を持っていないといいましょうか,行為全体が実は見えていないということをまずお伝えしたいと思います。ダウンロード違法化と書いてありますので,アップロードの方はどうなんだろうとか,間を取り持つリーチサイトはどうなんだろうとか,行為全体の見える化というのを一旦していただいて,改めてアンケートなりパブコメなりをとっていただくと回答は違ってくるのかなと思っております。

消費者としましては,公正なマーケットの維持向上に責任があると思っております。悪質事業者に対して,意識する,しないにかかわらず加担するということは,消費者としても無責任な行為だと思っておりますので,今回の対策の全体スキームについて,先ほど赤松さんからここでもうけているのが許せないというふうな御説明もありましたけれども,収益構造も含めて,まず全体像を見せていただき,どこに一般ユーザーが関わっているのかというふうなところから進めていくのが大事ではないかなと思っております。

インターネットはものすごいスピードでユーザーのところに広がりました。残念ながら,うまく利用すればただだという認識も同時に広がってしまっていると私は思っています。高い通信料を払っているんだから,ただなものを利用して楽しむのが当然だというふうに思われているところがあります。まずその意識から変えていかないといけないと思います。私の育ってきた世代は,漫画を読むときには,まず週刊で買って,それから単行本化されると,そこにまたお金を払って自分で楽しみました。それが今は技術の進歩によって変わってきています。その時代の変化にどうやって規制を合わせていくのか,それから,消費者の正しい行動を合わせていくのかというのは,このワーキングといいましょうか,検討会の知恵の出しどころだと思っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。パブコメ,アンケート,この両方でかなり時間をとっておりますけれども,本題は今からの部分でございますので,是非ともその辺は十分御了解いただきたいと思いますが,残る時間が基本的にあと1時間半ちょっとぐらいになっているんですけれども,場合によっては少し延びるようなことも,お忙しい皆様ではあるのは重々承知でありますけれども,そういう場面もあり得るということを御了解しておいていただければと思います。すいません。

今の部分,パブコメ,アンケートに関する御質問ということ,それから,御要望については可能な範囲で反映させていただくし,頂戴した意見はテイクノートさせていただいているところでございます。

次に,「検討に当たっての基本方針について」に入りたいと思います。具体的な制度設計の議論に入る前に,基本的な方針については認識の共有を図っておかなければならんだろうと思っております。そこで,事務局から基本方針(案)についての説明をお願いしたいと思います。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料5を御覧いただければと思います。今後の具体的な制度設計等の検討に当たっての基本方針を案として5点まとめておりますので,順に簡単に御紹介をいたします。

まず1点目が本年2月時点の文化庁当初案にこだわらず,2つの要請がバランスよく並び立つ適切な制度設計について検討を行うということ,2点目は,漫画家・出版社を初めとするステークホルダーの御意見や国民の皆様の懸念・不安に十分留意することを記載しております。

3つ目は,本検討会の目標ということになろうかと思いますが,民事・刑事それぞれの要件設定等について,条文ベースで具体的な案を取りまとめることを目指す。また,必要に応じて運用面での留意事項等についても併せて示すということを記載しております。

4点目は,本検討会における議論の射程についてということになろうかと思いますが,本年2月の著作権分科会報告書で特段の意見の相違がないものと整理され,先般の法案提出に向けた審査プロセスでも,特段の御指摘がなかった内容についてはこれを尊重するということを記載しております。

例えば※で記載しておりますとおり,ユーザー保護の観点から厳格な主観要件を設定すること,刑事罰については,特に悪質な行為に絞り込むために,民事に加えて,更に要件を加重する,また刑事罰については全て親告罪のまま維持する,こういった内容については異論がありませんでしたので,基本的に尊重しつつ,それ以外に文化審議会での審議,その後の審査プロセスなどによって様々な御意見があった部分についての議論をお願いしたいと思っております。

最後の5点目は,音楽・映像の取り扱いでございまして,御案内のとおり,既にダウンロード違法化・刑事罰化の対象となっております。この点,今回の改正によって,音楽・映像に関する規律を現行より後退させることは適切ではなく,関係団体からも懸念が示されております。このため,今回の改正では,音楽・映像については切り離しまして,それ以外の部分,今回,対象を拡大する部分の取り扱いについて検討を行っていただきたいと思っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ただいま基本方針(案)についての説明をいただいたところでございます。この基本方針(案)についての1から5まで,これについて何か御質問,御意見ございましたらお願いいたします。

【後藤構成員】CODAの立場から,まず5でございますけれども,音楽と映像ということで現行がございますので,この水準が後退することがないように是非ともお願いしたいということでございます。

それと④でございますけれども,リーチサイトに関しましては,2016年2月,知財本部の次世代知財システム検討委員会でCODA,私の方から提案をさせていただきまして,その後,2016年8月から2018年9月の間,文化庁の法制基本問題小委員会において,集中かつ丁寧な議論がなされまして,法改正に向けて整理がされているところでございます。是非ともその辺を尊重していただきたいということでございます。

それと1点御質問でありますけれども,本年,法改正が見送りとなりましたが,いわゆる著作権法改正案というこのパッケージでお進めになったという部分がありますが,今回の場合,パラレルで法改正という可能性があるのか否かというのを御質問したいと思います。

【土肥座長】じゃあ,お願いします。

【大野著作権課長補佐】法の内容につきましては,まさにこの検討会で議論いただきますので,その結果次第だとは思っております。ただ,政府としましては,海賊版対策は様々な施策を総合的にやっていこうということで議論をしておりますので,内容がまとまるのであれば,リーチサイト,侵害コンテンツのダウンロード違法化,セットで法案化していくというのがこれまでの考え方からして自然なものだと理解をしております。

【土肥座長】よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。田村構成員,どうぞ。

【田村構成員】今CODAさんからお話のあった点,4と5の関係ですが,先般の文化庁さんの改正案では,録音・録画に関しても横並びで現行法を少し絞るような案であったのではないかと思います。ですから,4だけ尊重すれば横並びという話もあると思いますが,ただ,お話もよく分かります。既にダウンロードについてきちんと規制を持っていらっしゃるところが,今回の更地で議論するところにつき合わされて,相当な変革をこうむるのはかなわないという御趣旨であれば,それはよく分かりますので,そういう意味では,5については,私は賛成します。そういう理解ですね。つまり,今回は議論にしないということで。先ほどCODAさんは,もちろんお立場上そうおっしゃるのはよく分かるのですが,もう未来永劫変わるものではないような形で理解を示されたので,そういうことではなくて,今回いろいろと議論して,私は,多分この有識者の中で,バランスがとれた大変よい案ができるのではないかと期待しています。それをごらんになられて,これならばと思っていただく可能性もあるのではないかと思います。うなずいていただいてありがとうございます。私の意見は以上です。

【後藤構成員】はい,そのとおりです。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにございますか。荻野構成員。

【荻野構成員】今回議論の対象になるのが録音・録画以外の全ての著作物ということになってくるかと思うんですけれども,その議論の対象の中でも,先ほどのプレゼンの中でも漫画というのが特に問題のあるものとして,時事的にも注目されたものとしてクローズアップされているわけなんですけれども,アンケートですと,漫画,書籍,雑誌,論文,プログラム,イラスト,画像というふうに並列的に書いてあって,特にその中で何が分かれるのかというあたりが,質問項目がここには表れていない形になっていて,二次創作とスクリーンショットだけ,何かちょっと特出しであるんですけれども,もしこれ,アンケートの段階で何をダウンロードしていたのかというのがあれば,クロス集計するのはそれこそが一番重要だったんじゃないかという気もするんですけれども,今後の議論については,録音・録画以外の著作物に関しては全部一緒くたでやるのか,若干そこは差異を付けて議論するべきなのか,そのあたりはどうなるんでしょうか。

【大野著作権課長補佐】アンケート調査の事実関係について事務局から御説明をいたします。今回のアンケートについては,国民の皆様,個々に御回答いただくということで,それほど複雑になってはいけないという思いがありましたので,個々のコンテンツごとに分けて調査するということはしておりません。したがって,ダウンロードしていると回答された方が,漫画,書籍,そのほか,どのようなコンテンツをダウンロードしたかというのは必ずしも明らかではないということになってございます。

【土肥座長】ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますか。

もし御異論がないということであれば,今回の検討会においては①から⑤までを基本方針として共有したいと思いますけれども,御異存ございませんか。

御異存ないということのようでございますので,そのように扱わせていただきたいと思います。若干絞りはあるようでございますけれども,ここに書いてあることを前提に基本的には30条の枠内において,いわゆる侵害コンテンツ対策としての関係のある部分,周辺部分も含めますけれども,基本は30条との関係での議論という了解をしておりますし,また,法制基本問題小委との関係が若干気になるわけでございますが,法制基本問題小委の取りまとめられた審議の結果については,これは最大限尊重するというところで,④のところですね。ここにあるような部分については基本的に維持をしていくという御了解をいただければと思います。

それでは,次の話に入っていくわけでございますけれども,今度は,ただいま基本方針(案)について御了解を頂戴しましたので,制度設計の部分でございます。ここの部分は非常に重要なところになってまいりますので,十分時間をかけ,かつ,皆様の意見を十分頂戴したいと思っております。幸いに時間的にもまだ1時間半ございますので,御発言は適宜いただきたいと思っております。

制度設計の部分でございますが,これは事務局に資料6を準備していただいております。資料は1ポツから4ポツまでで構成されておりますけれども,それぞれの議論を一つ一つ丁寧に行っていきたいと思います。挨拶の中で田村構成員が早めに授業の関係で退出されたいということでございますので,1回伺った上で,すぐにお願いできますかね。

【田村構成員】はい。

【土肥座長】それでは,事務局からまず1ポツの部分から説明を頂きたいと思います。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。それでは,1ポツの部分について,御紹介をいたします。侵害コンテンツのダウンロード違法化に関しまして,パブリックコメントの結果などを踏まえますと,文化庁としては,2月時点の当初案に少なくとも3点の措置を追加的に構ずることが必要ではないかということで御提案をしております。これらについては,パブコメで多く強く示された懸念事項に対応しつつ,一方では,海賊版対策の実効性にそれほど大きな影響を与えない事項として優先的に採用すべきではないかと考えている事項ということになります。

まず(1)が改正案の附則に,普及啓発を初めとした規定を追加するという内容でございます。具体的には①から④まで記載をしておりまして,まず①が国民に対する普及啓発,学校等における教育の充実について規定するというものでございます。今回の改正案の内容を正確に御理解頂きまして,とりわけ違法にアップロードされたことが確実だと知りながらダウンロードする行為が規制されるということもしっかりと御理解を頂き,無用な萎縮を招かないようにするということも重要かと思っております。

②は,関係事業者による措置として,適法サイトにマークを表示していくなどの取組でございます。既に出版社ではABJマークの付与を行っていただいておりますが,そういった取組を引き続き充実させていくということが重要かと思っております。

③は,インターネットによる情報収集等が不当に制限されないような運用上の配慮を行っていくということで,刑事罰の運用の不当な拡大防止などにつきましてもこの中で配慮を頂くということになろうかと思います。

④は,施行後1年を目途としたフォローアップということで,施行後の運用状況をしっかりとフォローしまして,何か問題が起きていれば必要な対策をとっていくということを想定しているものでございます。

それから,(2)が写り込みに関する権利制限規定として30条の2という規定がございますが,これを拡充することで,スクリーンショットの際に違法画像などが入り込むことを適法化することとしてはどうかと考えております。この点については,先般の法改正プロセスでも今回のパブコメでも非常に多くの懸念が寄せられたところでございますので,明文で適法にしてはどうかと考えております。

それから,(3)は,スクリーンショットに限らず,「軽微なもの」につきましては,違法化対象から除外することで,例えば数十ページで構成される漫画の1コマなど,一部分だけのダウンロードは適法にするという内容になってございます。

これらの内容の詳細につきましては,同じ資料の6ページ目以降で別紙という形で条文のイメージなどを付けてございます。6ページは,「附則への規定の追加」ということで,先ほど御紹介した4つの措置についてそれぞれ条文のイメージをお示ししているものとなります。

また,7ページからが(2),(3)でございますが,(2)の写り込みにつきましては,現在別途文化審議会の小委員会で中間まとめをおまとめいただき,パブコメ中でございますので,現時点で具体的な条文は示しておりませんけれども,ここに挙げた現行規定の①,②,③という部分について主として改正をして使いやすくしていくということが想定されております。

(3)「軽微なもの」につきましては,赤字に記載したような形で要件を追加することで軽微なダウンロードが規制の対象にならないように明文化してはどうかということでございます。

事務局からは以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ただいまの説明につきまして御質問,御意見をこれから頂いていくわけでございますけれども,田村構成員からまずお願いします。

【田村構成員】ロースクールの授業がありまして,早めに退室いたしますので,誠に失礼ながら私がトップでお話をさせていただきます。少しだけお時間を頂ければと思います。

【土肥座長】全体にわたっても構いません。

【田村構成員】ありがとうございます。やはりこの問題を考える上では,どういう世界や社会を目指すのかということに関して,そのイメージが大切だと思います。インターネットは決して悪ではありません。当然のことながら文化の重要なインフラであります。そして,これは著作権の制度史上初めてだと思いますが,インターネットによって,誰もが公衆に著作物を届けることができるようになりました。それまでは,かなり投資をした方だけが届けることができたということですね。ところが,インターネットで一挙手一投足で誰もが届けられるようになりました。つまり,現に営利でもうけていない大量の著作物に公衆がアクセスできるようになった時代がインターネットの著作権法における意味だと理解しています。

その結果,今までと違いまして,インターネットの時代では,利用できる著作物も著作権者も非常に多様化しています。昔であれば,現にもうけている方ばかりが公衆に届けられていたわけですけれども,現在ではそもそもアマチュアのもの,あるいは孤児著作物という言葉に代表されますが,既に著作権者が,所在不明になっているもの等がありまして,全く著作権の保護に関心を持たないような方たちの著作物もインターネットに上がっており,ダウンロードできるという,そういう時代になっていると思います。

その中で,一体我々は何を目指すべきかということですね。私は,目指すべきは,保護を欲している著作物はしっかり保護することだと思います。きょうも,出版社の方,あるいは赤松先生から大変心に響くようなお話がありました。

他方で,特に保護を欲していないような著作物というものも,実は今,相当にネットにあふれ,更に皆がそれをダウンロードしています。それを自由に利用できる世界を目指すべきではないのか,つまり,著作権ということで,著作物すべて一律に十把一絡げではなくて,めり張りをつけるべきではないか,そのようにすることで,保護を欲しているものは守り,特に保護を欲していないものについては放任してよい。それで実は誰も困らないのですね。これを私は,英語の翻訳ですけれども,寛容的利用と呼んだりしているわけです。あるいは,福井先生はグレーの領域と呼んだりするのかもしれません。言葉遣いはともかくとして,こういった著作権がありながら行使されていないことによって文化が栄えているという側面を,私は無視してはいけないと思うのです。

このような中で,望ましい法制としては,専ら保護されている著作物の保護を実現する記述というのは非常に望ましいわけでして,バランスというのはそういうことだろうと思っています。例えば,私は,リーチサイト規制特に今回のものは,方向性としてターゲットが相当絞られているということで良いと思います。

他方,ダウンロードについては,リーチサイトに比べますと,ユーザーの手元の話になってきます。著作権者の利益状況に鑑みることなくダウンロードを広範に違法化することは,結局,権利者が保護を欲していない,あるいは権利者がいないかもしれない著作物についても人々の利用を萎縮させることになると思っています。

今回,文化庁さんもいろいろと考えてくださって,私も勉強になるような様々な案を幾つか基本方針の1ポツで提示していただきましたが,その中で少し抜けている視点があると思われます。これらは,全てユーザーの手元の方に着目しているのですけれども,著作権者の方で保護を欲している著作権はもちろん守ってあげるけれども,そうでないものについて十把一絡げにやっていいのかということが,私は一番の問題だと思っています。きょうこれまでにお話しいただいたものも,基本的には,保護を欲している方たちの権利は絶対に保護すべきだというお話ばかりで,保護を欲していないものについて保護すべきだという御意見は聞いていないように私は思いました。

具体的には,例えば刑事罰の方ではかなりそれが実現できるような要件論を事務局さんの方で出していただいているので,これなどが1つの参考になるでしょう。あるいは,前回の小委員会の方でも私は,例えば,有償著作物に限ると当初から申し上げているわけですけれども,有償だと,例えば無料で提供しているけれども広告収入がある場合はどうなるのだという話があります。それはおっしゃるとおりだと思うのでその辺の要件は工夫の仕方だと思いますが,そういった形で実際に現に営利で提供されているものあたりに絞っていくというような形での提案が,この後,細かな方で,論点の方に後ろに書いてありますので,そこで議論すべきだと思うのですけれども,私はそれが望ましいのではないかと思います。

最後になりますけれども,このように保護の必要性もない著作物を含めて一律に著作物を利用する自由を萎縮させることが本当に目指すべき世界かということを問いかけたいと思います。

トップバッターで,しかも時間をとらせていただいて大変恐縮でした。ありがとうございました。

【土肥座長】どうもありがとうございました。ほかに。じゃあ,大渕構成員,制度設計の案についてお願いします。

【大渕構成員】今,田村構成員が大きな話をされましたので,私の方でも多少付け加えさせていただければと思います。

著作権法には,17条という有名な条文ありまして,これはベルヌ条約に沿っているわけですが,要件を満たせば,当然に無方式で誰にでも権利が発生する。特許と比べれば明らかですが,特許は出願して,行政処分をしてもらわないと特許権はもらえません。権利を欲している人が出願して,権利をとれば,保護されるという特許法型と,著作権法型はその全く逆で,別に欲しようが,欲しまいが,当然に全員権利は得られます。それでどうなるのかというと,その話は単純でありまして,私権ですから,行使するも,しないも,権利者御本人の意思次第です。権利の発生のときに絞っているわけではなくて,全員が欲する,欲さないにかかわらず,権利はあるのだけれども,行使するときには,行使したい人だけ行使するというわけです。

これは民事で明らかですけれども,刑事の方もうまく出来ていまして,親告罪ですから,権利を侵害された被害者たる私人が告訴をしない限りは公訴が提起されないということになっています。先ほど田村委員が御懸念されたようなところは実は現行法の中ですごくきれいに処理されているのであります。それを,ダウンロード違法化のところだけ現行法を変えて,欲する人は何か特別のものを一般的に要求するというのは,場合によってはベルヌ条約違反にもなりかねないし,そもそも私権たる著作権の本質に反しているのではないかと思います。

それを反映してかと思いますが,先ほど御説明いただいた参考資料2にある各国法制,私は,これは,国際標準を示していると思いますが,権利を欲している人のものをダウンロードした場合だけが違法ダウンロードになるというような特異な法制には一切なっておらず,先ほど述べた普通の著作権法と同じように,要件を満たせば全員について侵害が成立します。ただただ,違法ダウンロードになった後で,権利行使するかどうかは先ほどの著作権の「いろは」と同じであって,権利行使したい人はする。恐らく,違法ダウンロードは,軽微なものが多いから,権利行使する人はあまりいないとは思うのですが,理論的には権利行使したい人だけがするし,欲しない人は別に権利行使しなければよいだけの話なので,先ほど御懸念の点は,一般といい,ダウンロードの点といい,全てきれいに解消済みであり,現に,各国を通じての国際標準になっております。

先ほどあったように,国民の間で懸念があったから,いろいろ動きがあったかと思うのですが,そこのところは我々法律家がきちんと現行法の著作権法,ないしは各国がどうなっているのかというのを正しく情報発信していく必要があります。ので,現行著作権法は,これは見れば明らかですから,そこのところは誤解のないように。

あと1点だけ,先ほどのところで(3)でしたっけ,軽微なものを除くというのがあって,これは法制・基本問題小委のものでは軽微なものを除くとはなっていません。「デ・ミニミス」という言葉を聞かれた方は多いかと思うのですが,de minimis non curat lexという有名な法諺があって,法は些事,些細なことは顧みずということです。デ・ミニミスというか,軽微なものはもともと顧みないという,いわば一般法理であって当然すぎて,わざわざ法律に書く必要もないようなことなので法・基小委のときにもわざわざ明記しておりませんでした。法というのは,当然過ぎることを書くと,何か特殊な意味があるのかと徒に深読みされてしまいますし,また何がデ・ミニミスかについても無用の争いにもなるのでそのようなことをさんざん考えた上であのようにしたわけです。また,デ・ミニミスについて権利行使がされること自体が実際上考えられません。別にデ・ミニミスを打ちたいから書いていないわけではなくて,そのような当然のことはあえて書かないということは,また特許を例に挙げて恐縮ですが,特許の差止めが場合によっては権利濫用になるということについて,民法には権利濫用が書いてあるので,特許法にも書いてほしいという意見があったのですがすが,殊更に書くと,いやに特許の差止めだけ権利濫用がぎらつくし,反面で特許が弱くなりすぎるとよくないということもあって現に現行の特許法でもそのようなことは書いてないということがあります。本来の筋からいうと,各国もデ・ミニミスを外すなどという当然のことは書いていないわけです。そうであるとしても,やはり不安がある,各国と異なり,日本だけでは特にそこが気になるので,国民の方々方々の不安を払拭するためにどうしても必要ということであれば,検討するのはやぶさかではありませんがただ,ただ,背景としては,本来,当然すぎることは書かないというのが法の原則だという点だけは御理解いただいておいた方がよいかと思います。

【土肥座長】どうぞ。

【田村構成員】行使しないからよいのではないかということにはなかなかならなくて,この人が行使するか,しないか,事前に分かっていればよいのですけれども,分からないので,萎縮するということを特に問題視しているということです。その点だけ確認でした。大変失礼いたしました。

【土肥座長】(1),(2),(3)ございます。今,大渕構成員からは(3)についての御意見を頂戴したところでございますが,(1)ですね,レビューをきちんとするし,啓蒙,普及啓発活動もちゃんとやるし,これ,非常に大事なことであります。これを反対される方はお出でにならないと思うんですけれども,この点についてはよろしゅうございますか。これをきちんとやると。これを附則に書いておきますということなんですけれども,これは非常に大事なことであると思います。普及啓発活動の重要性というのは指摘されているところでございますし,こういう重要な問題について1年をめどにフォローアップをする。大事なことだろうと思います。

それから,(2)の写り込みですよね。これとの関係で,30条の問題なんですけれども,30条の2の写り込みに関するこの部分を拡充すると。で,どうしても分離できない。分離できないと言われると,これはどうしようもないところがあるわけでございますけれども,この点について何か御意見ございますか。

【荻野構成員】これは写真の適用をこちらにも,スクリーンショットにも入れるというような御趣旨のことだと思います。ちょうど今パブリックコメントもやっているあれだと思うんですけれども,もう一つ,私たちがインターネットで情報収集する際によく使う手法としてコピー&ペーストというのがありますよね。全部選択してコピーと。特にテキストなんかはその手法でやるかと思うんですけれども,これも基本的には写り込みに似たような話でして,しかも分離がなかなか,見ているウェブのところから持ってくるときに難しいというのがあるかと思うんですけれども,これに関してはどういう扱いにすることが可能かというあたりは御意見を伺いたいなと思っております。

【土肥座長】それは御質問ということですか。

【荻野構成員】はい。

【土肥座長】それを含めて検討するということなのかなと思うんですけれども,可能な範囲でお願いします。

【大野著作権課長補佐】審議会におきましては,コピー&ペーストの事例は明確に出ておりませんでしたけれども,きょう御質問も頂きましたので,また審議会の方で専門家の方々も交えた議論をした上で,具体的にどういうものが対象になっていくのかということを明らかにしていきたいと思っております。

【土肥座長】2,あるいは3,いかがでございましょうか。堀内構成員,お願いします。

【堀内構成員】今御説明のあった文化庁の3つの追加措置については,我々出版広報センターと漫画家協会の共同声明で求めた善良なユーザーに過度な萎縮が生じないようにするということを書かれていますけれども,そういう配慮がおおむね十分な印象でございます。1,2,3についてはそのように思いました。これからは,同じく声明で求めた脱法行為を容易に招かないようにするという点について,我々としてはいろいろ議論に参加させていただきたいと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。一言言わせていただきたいのは,先ほど大渕構成員が言われたデ・ミニミスの話なんですけれども,これは侵害を固定するということですよ。著作権者の複製権を侵害を固定して拡大再生産をするということを含んでいるということなんですね。つまり,日本の著作権法の30条って何でもいいわけですよ,原本は。侵害物を原本にしてコピーができるわけ。だから,最初に取り組んだ人にとって何か言っても,残っているやつをどんどんどんどんコピーされていったら,それがとまらないという。僕は赤松構成員から何かあってもおかしくないなと思っているんですけれども,個々のクリエイターからすると,著作権侵害というのは砂をかむような思いをするんじゃないかと思うんですよ。つまり,金の問題で全て型がつくわけではなくて,何十ページかの漫画の中のこの1つと言われますけれども,1ページ全部コマの場合もあるし,半分コマの場合もあるんだけれども,そこに重要なあれを取り込まれて止められないということになるわけですよね。そもそも剽窃とか侵害行為というのは,プラギアート,ドイツ語ではそう言いますし,フランス語でも同じような単語を使いますし,英語でもプラギアリスムと言いますけれども,これ,もともと語源は古代ギリシャ語ですよ。古代ギリシャ語の単語が世界的に同じ単語が使われるわけですけれども,その意味するところは,キッドナッピングです。自分の子供を誘拐するという意味なんですよね。

つまり,著作物というのはクリエイターからすると自分の体の一部なんです。それが勝手にとられて,それをとめることができなくなるというのは大変なことで,複製権という,さっきベルヌ条約違反というのがありましたけれども,まさにそういうことで,複製権侵害という実効性がなくなるんですよね。そこをどう考えてこの軽微を入れられるのかというのはよくよく考えていただきたいと思います。そこのところが最大の問題じゃないかなと思うんです。

分離できないというのは,これ,仕方ないなと思うんですね。分離できないと言われればどうしようもないですからね。分けられないんだから。

ほかに何か1,2,3について御意見頂けるところがあれば,頂いた上で,個別のところに入りたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。ここでは,以上のところを踏まえた上で1,2,3ということを条件付きで了解すると。疑念も一部あるという形で事務局においては整理しといていただければと思いますけれども。よろしゅうございますか。

じゃあ,今のような条件付きで制度設計案については了解をした上で次に入りたいと思います。1つずつやったことになるんですが,よろしゅうございますか,事務局は。それで,無理やり意見を求めてもいいものなんですかね。まだ発言されていない方,前田構成員とか,和田構成員とか,何か御発言頂けるところがあれば,制度設計案の基本について御意見頂戴しておきたいと思いますが。

【和田構成員】和田でございます。あえて求められればという程度のことでございますが,軽微なものを除外するというときに,やはり基準が重要だと思います。刑事との関係でいえば,何か侵害行為があるときに,その侵害の程度を,その犯罪が何を守ろうとしている犯罪なのかという性質をちゃんとはっきり確定した上で,それに照らして軽微か,軽微でないかということを判断することになると思いますので,何となく感覚的に軽微,軽微と言っていても話は進まないと思いました。

【土肥座長】ありがとうございました。前田構成員,どうですか。

【前田構成員】今回の検討会では,海賊版被害への実効的な対策を講じることと,国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないことの2つのバランスをとることが大きなテーマになっているかと思います。軽微なものを除くという要件については,その概念の明確性の問題もあるかと思いますけれども,正当な情報収集等に萎縮を生じさせないという観点からは,この要件を入れておく必要があるのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。福井構成員,どうぞ。

【福井構成員】もうちょっと後の具体的なところでお話ししようかと思いますけれども。

【土肥座長】後の方ですか。

【福井構成員】ええ。

【土肥座長】じゃあ,萩原構成員,どうぞ。

【萩原構成員】ありがとうございます。まず附則ですけれども,今4点挙げられておりますけれども,これで十分なのかというところをもうちょっと我々としても考えておきたいなと思います。

それから,(2)の写り込みですけれども,今,ちょうど法改正しようとしているところなので,分離性というのはとっちゃった方がいいのではないかとか,いろいろ議論があると思うんですね。ですから,ここでどこまで30条の2に頼るのかというところは,条文がどうなるかというところに関係してくるんじゃないかなと思ったりしています。この2点ですね。

【土肥座長】ありがとうございました。後藤構成員。

【後藤構成員】この案でよろしいかと思います。

【土肥座長】じゃあ,河野構成員,お願いします。

【河野構成員】私も特に(1)番の附則の①ですね,国民に対する普及啓発,学校等における教育の充実は是非お願いしたいと思っております。

それから,先ほども申し上げましたように,ダウンロードの方にフォーカスされていますが,実はアップロードがなければダウンロードにはならないということで,全体像を見せるような形で国民に公表していただければありがたいと思います。

それから,(2)と(3)は,恐らく前回の法案提出に関わって,一般から寄せられた漠然とした不安,それから,今後に対するネット利用の萎縮というところに対して具体的に対応してくださったものだというふうに好意的に理解はしておりますけれども,やはりどういう条件の下にどういう基準でという,特に先ほどから課題になっております軽微なものという表現において,これは一般人が考える軽微と法律要件として考える軽微の違いは,明確にお示しいただければと思います。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。荻野構成員,お願いできますか。

【荻野構成員】先ほども発言しましたので,(1)から(3)に関しては基本的にこれでよろしいかと思います。

【土肥座長】じゃあ,大渕さんは。

【大渕構成員】写り込みが出ましたので,追加で申し上げます。これは,ペンディングと言われたのですが,法・基小委の方では30条の2の改正で現在,パブコメが回っているぐらいであります。以前,前30条の2を作ったときに,文化審としては一定の方向性を示しましたが,条文化に当たって恐らく法制局が具体的なものに絞ったので,条文の現在の見た目はやや狭い感じがありますが,私が理解しているところでは,何年か前の法・基小委で決めたような,社会通念からして写り込みと言えるようなものが全て入るような形に,そのような意味では元の文化審どおりの条文になる方向になっています。そこのところはスクリーンショットなどで今まで心配されたところ,今の条文だけパッと見るとやや狭いかなという印象を受けられるかもしれませんが,それはきちんとしたと言ったら怒られますけれども,普通の写り込みがカバーされるような条文に今後なりますから,ここの部分は大きな意味を有します。先ほど文化庁の当初の案からと言われましたけれども,あのときには30条の2の部分は含まれていなかったので,本体だけなのですが,それとワンセットになる,30条の2の明確化が別途なされます。したがって,全体として,国民の不安の払拭というのは,本体もさることながら,(2)の部分だけでも大きく図られているといえると思っています。

それから,先ほど田村委員が権利行使されたら終わりでしょうと言われましたが,それはダウンロードの場合だけでなく,普通の著作権だって同じなのであって,全く権利行使されない権利であれば何の意味もありません。権利行使される可能性があるから国民が不安であるというのも変な話であります。デ・ミニミス的なものというのは,実際上上行使されることはないかと思うのですが,デ・ミニミスではないような大きいことをやれば,行使されるのは権利として当然なので,そこまで否定しろと言われれば権利ではなくなってしまいます。そこのところは極端に走らずに,普通の権利として考える必要があると思います。

【土肥座長】赤松構成員。

【赤松構成員】権利者団体ですので,規制は強化せよ,みたいなことを本当は言いたいんですけど,軽微なもの,例えばある画像ツイートに対して,ドラゴンボールのシェンロンが,好みの画像だったんで保存した,さらばだ,とか言うネタを1コマだけパロディでやることに関しては,問題視する作家は少ないですね。軽微なものに関しては,それも日本漫画文化の一部であるというような認識,これによって漫画文化が発展したみたいな点は確かにあるので,そこはパブコメを見ても,ほとんど導入反対という事実がありますし,こういう不安に対する回答としても,軽微なものは除外する方向性を推奨したいとは思っています。まとめますと,漫画文化の一部なので,軽微なものに関してはとがめたくない,というのが私の意見です。

【土肥座長】そうですね。じゃあ,堀内構成員,お願いします。

【堀内構成員】先ほど申し上げたとおり,この文化庁の3点の追加措置については賛成と申し上げましたけれども,ただ,③については,著者とずっと一緒に仕事して,この数十ページの何ページ,1ページであっても,1コマであっても,著者の心情からすると,というのはよく我々分かってはいるんですけれども,それと海賊版対策として実効性のあるのをやるときに,ユーザー,国民の皆さんのそういう漠然とした不安とか懸念,こういうものを配慮すると。こういうことで考えたとき,著者の方々にこのくらいは少し我慢をしてというようなことで,そういう著者の,権利者の気持ちも踏まえた上で,なおかつ海賊版対策について対策を進めるためには,1,2,3,賛成ですと,こういうようなことでございます。無条件で3が問題ないということではないんですけれども,実効性のある対策を実現するためにはいたし方ないかなというような気持ちでございます。

【土肥座長】ありがとうございます。いくら軽微と書いたとしても,それは保護される著作物の話なので,30条の権利制限の対象になっているわけですから。例えば江差追分のときにクリエイターがなぜ大放送局相手に最高裁までやったかというのは,金の問題じゃないと思うんですね。要するに,砂をかむような思い。これはあるんですよ。そこは,こういう場においてもやっぱり併せて考えとかなければならんだろうと思います。

一応,いろいろ御意見を頂戴しましたので,その意見は基本的に制度設計の案については了解するということのようでございます。もちろんこれから先まだ2ポツ,3ポツ,4ポツとまだまだございますので,その中でまた皆さんの御意見を頂戴できればと思います。

それじゃあ,次お願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料6の2ページから2ポツの部分について御説明をさせていただきたいと思います。先ほどの1ポツは文化庁からの御提案でございますが,2ポツは,そのほかにパブリックコメントで様々頂いた提案を列挙しております。これらについては,海賊版対策としての実効性に与える影響と国民の正当な情報収集等に与える影響,その,両面を考慮しながら導入の可否等について御議論を頂きたいものということでございます。

まず冒頭※を記載しておりますとおり,これらの要件につきましてはどれか1つということではなくて,複数の要件をセットで追加すべきという提案も見られたことにはまず留意が必要かと思っております。

順に御紹介をいたします。まず1つ目の囲いが,民事・刑事共通で要件の追加・対象範囲の限定を行うべきという提案があったものを(1)から(5)まで並べております。

(1)は,「原作のまま」という要件を追加することで,二次創作作品・パロディなどのダウンロードを違法化の対象から除外するという提案でございます。この点,※にございますとおり,刑事につきましては,当初案でも既に「28条に規定する権利を除く」という形で,規定の方法は違いますけれども,二次創作,パロディなどのダウンロードが外れるように規定をしておりましたので,実質的には民事についても同じような限定をかけるかどうかという議論だと思っております。

それから,(2)が著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定する。

(3)が,著作物の全部または相当部分をいわば丸ごとダウンロードする場合に限定する。

(4)が,いわゆる海賊版サイトなどからのダウンロードに限定するということで,ダウンロードする場所で限定をしていくという御提案かと受け止めております。

それから最後の(5)は,違法ダウンロードにより不当に利益を上げている場合だけ違法にするという御提案でございます。

そのほか,小さい※で記載をしておりますとおり,パブコメでは,裁判の証拠収集・研究など,正当な目的でダウンロードを行う場合を除外すべき,商用利用を目的としてダウンロードを行う場合に限定すべきといった御意見もございましたが,こういう目的は私的使用とは言えないため,今回の議論の射程の外にあるものと理解をしております。①は違法ということではなくて,42条という別の規定で適法になる部分も多いと思いますし,研究につきましては,現在,文化審議会で権利制限の創設に向けた議論を行っているというところでございます。

次に民事についての御提案として2点記載をしております。これは,いずれも既に刑事について導入している要件を民事についても課してはどうかという提案だと理解しております。

(6)が有償著作物への限定,(7)が反復・継続してダウンロードを行う場合への限定でございます。

次に3ページに参りまして,刑事についての御提案が(8)から(12)までございます。(8)は,「当該有償著作物等の提供又は提示により,著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合」に限定するという御提案でございます。この点,※にございますとおり,現行法上,外国レコードの還流防止措置,著作権等侵害罪の一部の非親告罪化において,似たような要件が用いられておりまして,恐らくこれを念頭に御提案をされているんだろうと理解しております。

ただ,これらにつきましては,いずれも頒布,譲渡,公衆送信という形で広く外部に提供していくという場面,もしくはそのために複製,所持を行うという場面を想定しておりますので,私的使用とは少し文脈が違うところで使われている要件だという点には留意が必要かと思います。

それから,(9)は,先ほどもございました,丸ごとダウンロードする場合に限定するという提案でございます。

(10)は,刑事特有の話でございますが,警察等が違反者に対して事前に警告を行うことを要件とするということで,手続面で絞りをかけていこうという御提案かと理解しております。

(11)は,先ほどもあった不当に利益を上げている場合への限定,(12)は,刑事罰自体を課さずに,まずは民事措置のみを行うという提案でございます。

そのほか,※に記載のとおり,「自動公衆送信の用に供する目的で」という要件を刑事罰については追加すべきという御意見もございましたが,これは拡散目的ということになり,私的使用とは言いがたいので,そもそも30条の射程外であり,現行法上もこういう目的でダウンロードすれば違法で,刑事罰の対象になっているものだと理解しております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。今,2ポツについて,都合12,(1)から(12)まで説明を頂きました。これ,基本的に1つずつやっていくというのが非常に大事なところだともちろん承知をしておりますけれども,くくらせていただいて,まず最初に①から⑤まで,これについて一つ一つやらせていただければと思います。まず(1)から(5),民事,刑事共通で,要件追加対象範囲の限定を行うべきという意見があった。提案があった。この(1)から(5)までの提案について,どこでも結構でございますから,あるいは,自分は両括弧これがいいとか,これはちょっとまずいんじゃないかというような意見で結構でございますので,頂ければと思いますが,いかがでしょうか。堀内さん。

【堀内構成員】4ですね。4の海賊版サイトのみにするということでございますけれども,先ほど調査でもありましたけれども,海賊版サイト以外からも。例えばSNSのフェイスブックなんかですと,ある漫画の紙のこういう単行本のですね,フェイスブックで800ページ相当……。

【伊東氏】800ページぐらいの画像が。

【堀内構成員】そうですね。そのぐらいの画像が一気に送れるということなので,海賊サイト以外でもそういうことが行われるということがあるので,海賊版サイトだけに限定するというのはちょっと漏れがあるんじゃないかなと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。今のような御意見で結構でございます。4の海賊版サイトに限定するというのはおかしいのではないかと。

【伊東氏】すいません。ちょっと補足させていただきますと,フェイスブックに関していうと,今,集英社でいろいろな海賊版の対応をしていますけれども,月に1万4,000件ぐらいの削除対応をしていて,今,ユーチューブよりもひどいぐらいな状態になっていますので,SNSが外されると,非常に海賊版対策として困るということになります。

【土肥座長】ありがとうございます。大渕構成員,何かありますか。

【大渕構成員】ほかの方が終わった後で。

【土肥座長】大事なところを的確にお願いします。

【大渕構成員】分かりました。要するに,(1)から(5)まで全部上がっている,何らかの絞りをかけましょうというわけですが,国際標準について,参考資料2を御覧いただくと,どの国でもこういうものをかけてない。あるとしたら,ドイツのように,日本の主観要件に結び付くかと思いますが,明らかに違法なものというのでバッファかけようというのがあります。しかし,それ以外には,客観要件につき,特に二次創作を外すも何も,要するにここに上がっているものは全部ありません。私としては,法・基小委で,主観要件を入れない方がよかった,主観要件を入れ出すと,また刑法等で御異論もあるかと本当は思っております。そうではあるのですが,あの時点では,国民の方の萎縮のことを考えるとやはりということで,主観要件はやむを得ないと思いました。それ以外でここに上がっているのは客観要件の方ですが,これを一ついれるだけで,ループホールというか,抜け穴になってしまいます。例えば,1の二次創作というのは,翻案か複製かというのは法的にものすごく微妙で,たくさん裁判例になっているぐらいですから,これを入れた瞬間に,どちらか分からないので,全部翻案というように持ってこられると底抜けになってしまうということもあって,抜いてあるものです。そうはいっても,これがないと国民の萎縮があるということであれば,最後は,そのような意味での考慮として,主観的要件として同じように。ただ,そのようなものを1つ入れると,また後から理論的におかしいのではないかなどと,かえって別の不安が生じたりしますけれども,要するに,理論としては本当はこのようなものは入れない方がよいのですが,最後のところは考えますよというそのような性質のものかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。不要であるということで。じゃあ,赤松構成員,どうですか。中の1から5までで御意見頂きたいんですけれども。

【赤松構成員】二次創作に関しては,商業漫画家と出版社が非常にコメントしにくいところでありまして。

【土肥座長】むしろ大事なところですよ。

【赤松構成員】二次創作というものがあるということを認識していて,それを黙認しているんだ,みたいなことを公式に言うと,それは黙認じゃないわけじゃないですか。でも,これは駄目なんだよということも実は言いたくない。ジャンプやマガジンでも,コミケ出身の作家なんかいっぱいいるわけだから。先ほども申し上げましたけれども,二次創作も含めて漫画文化の1つなので。そういう配慮が前回なかったので法案が潰れたんでしょう。だから今回は議論して何とか入れていくべきだとは思っていますよ。

【土肥座長】ありがとうございます。例えば原作のままという要件を追加するという,これについて賛成の構成員お出でになりますか。福井構成員,お願いします。

【福井構成員】やや全体についてのお話をさせていただきます。

【土肥座長】そこは的確に短くお願いします。全体はですね。時間がどんどんどんどん過ぎていますので,残り45分ということになっていますから。

【福井構成員】はい。関係ありませんけれども,私,この委員の就任を打診されたとき,最初お断りいたしております。申し上げたのは,現場で現行法でできることにもっと汗をかきたいということでした。先ほど資料2-1の最後のページに載っていたような様々な対策で現場や実務家の皆さんと一緒にこの間汗を流してきました。それなりに成果も上げてきたと思っています。

とはいえ,アップロードに対してこれだけ手を打ってきて,現状は先ほどの紹介のとおりだというのも事実です。被害の深刻さは異論のないことだと思うのですね。その意味で,ここで更なる法的措置をという権利者,創作者の皆さんの御要望は理解できます。

ただ,このダウンロード違法化は恐らく,実際の摘発や責任追及に至る可能性はかなり低い法制度だろうと思います。これは抑止力ですね。抑止力という点で大きな意味があるだろうと恐らく権利者,創作者の方は考えている。よって,対象は最も悪質なケースに絞るようなものであっても,恐らく目的のかなりの部分は達するのではないかと思います。

その意味では,大渕先生が先ほどおっしゃったような,厳密な法理論面も分かりつつも,萎縮への懸念に対してはできるだけ応えて,人々が不安を抱かないようにするという視点は大事かなと思います。

そういう意味で,セーフガードはできるだけ増やすことに賛成いたします。先ほど御質問のありました軽微条件についても,私はその意味で賛成です。

また,今回も例えば2ポツの今の御質問の1の「原作のまま」を含めて,2,3などは導入を検討してもいいのではないかと思います。あるいは,先ほど田村構成員が言い残していかれた有償著作物の条件を,対象を広告モデルなどにも拡大した上で民事にもという提案も検討に値するように思います。

ただ,最後に1点。条文の明確性ということを考慮しなければいけないだろうと思うのですね。全て入れれば確かに安全度は上がるかもしれませんが,そんな長い条文は見たことないというようなものが出来上がりかねない。これ,仮にも刑事罰につながることですから,一般の方が読んで理解できないものはいかんだろうと思うのです。

ですから,セーフガードはできるだけ増やしつつも,例えば明らかに重複に当たるようなものは,ここでは外して,国民の皆さんの理解を得るという視点も必要ではないかと思います。

長くなりました。

【土肥座長】いえいえ,ありがとうございました。セーフガードをたくさん作れば作るほど長くなるものなんですけど。前田構成員,ありますか。

【前田構成員】まず(1)については,今回の対策というのはあくまで海賊版対策の一環であって,二次創作やパロディの流通を抑えることが目的というわけでは決してございませんので,その趣旨を明確にするために(1)の要件を入れるべきではないかと思います。

ただ,その際,「原作のまま」という言葉が適切なのか資料で(※)が付けられている「28条に規定する権利を除く」という形が適切なのか,これについてはいわば法技術的な面での議論が必要になるかと思います。

それから,(2)なんですけれども,これもちょっと漠然としたものではございますけれども,萎縮を懸念する声が大きいということもございますので,(1)に加えて(2)も導入するべきではないかと思います。

ただ,書き方としては,著作権者の利益を不当に害することとなる場合という書き方にするのか,あるいは逆に,不当に害しない場合を除きという形にするのか,この辺の書き方については議論があり得るのかなと思います。

(6)の方にちょっと飛んでしまいますけれども,有償著作物に限定するというのは,広告モデルで提供されるものもございますので,民事ではすべきではないと思います。世の中では著作権者が権利行使をする意思が全くない著作物もたくさんあるという御指摘がございましたが,その点に関しては,(2)の要件を入れることによって,この要件の解釈としてある程度の対応ができるかもしれないと思います。

それから,(3)についてなんですけれども,「丸ごと」というのは日常用語としては分かりやすいのですけれども,なかなか丸ごとという概念の定義が難しいかなという気がいたしますこと,それから,先ほどの軽微なものを除くということ,(1)の「原作のまま」を入れるということさらに,(2)を入れるということを前提とすると,(3)の限定は要らないのではないかと思います。

それから,(4)については,これは先ほどお話がありましたように,海賊版サイト以外からのダウンロードも深刻な状況であるということに加えて,そもそも今回は違法にアップロードされていることを知りながら行うものに限定されることが大前提となっておりますので,(4)の海賊版サイトからのダウンロードに限定する必要はないと思います。

それから,(5)の違法ダウンロードにより不当な利益を上げている場合に限定するということについては,今回の議論はそもそも私的使用目的のダウンロードであることが前提ですから,私的使用目的のダウンロードで不当な利益を上げていることは基本的にはないと思われますので,(5)の要件はそもそも不適切ではないかと思います。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。じゃあ,萩原構成員,お願いします。

【萩原構成員】ありがとうございます。まず,(4)と(5)につきましては,この要件を入れると明らかに海賊版対策としての実効性に穴があくと思っております。その上で,(1),(2),(3)なんですけれども,実際に現場で海賊版対策をされているコンテンツホルダーの方々の立場で,どこまで入れれば海賊版対策として実効性が出てくるのかというところにかなり大きなウエートがかかっているのではないかと思っているんですね。ですから,その観点を重視してどこまで取り込むのかというようなことでいいのではないかと思っております。

それから,今,前田構成員からありましたけれども,先ほどの軽微性要件の観点と,それから,(3)については,かぶるところもあるのではないかと見受けられるのですけれども,その辺はどういうふうに文化庁の方ではお考えなのか,ここはちょっと確認させていただきたいと思います。

【大野著作権課長補佐】利用の分量に着目しますと,全く利用していない,軽微な利用,相当部分の利用,全部という,そういうグラデーションがあると思っておりまして,我々が1ポツで提案しているのは,軽微なもの以下のものは違法性を問わないという提案でございます。

一方で,(3)の御提案は,相当部分以上のものを違法化の対象にするということですので,相当部分より下のものは軽微なものに限らずわりと広めに適法な領域を確保しようという御提案かと思います。

したがって,軽微を超えて相当部分に至るまでの部分の取り扱いが,我々の軽微なものを除くという提案と(3)の提案との間で結論に違いが出てくる部分なのかなと理解をしています。

【土肥座長】それじゃ,後藤構成員。

【後藤構成員】CODAとして常日ごろから侵害対策やっている立場から申しますと,やはり要件の絞り込みというのは抜け穴を作るということで,実効性が担保されないというのが大前提にあります。ただ,パブリックコメント,国民の皆さんの懸念ということを考えれば,ある程度の要件というのは必要かと思います。

(2)利益を不当に害することとなる場合ということになると,やっぱり権利者が立証しなきゃいけないのかなという部分もあります。また,軽微との関係でどうなのかなというのが1つあります。

それと,3は,今の議論でございまして,4については,おっしゃるとおりで,これは当然だと思います。

5については,これも前田先生から御指摘ありましたけれども,不当に利益を上げている場合というのでちょっと具体性がないと思うので,これはなくてもいいのかなと思います。

以上でございます。

【土肥座長】ありがとうございます。河野構成員,お願いします。

【河野構成員】一般ユーザーの視点からしますと,刑事罰が科せられるというところにはなかなかなじみがないといいましょうか,共感しにくいところでございます。ただ,今回の対策の大きな目的は,一般ユーザーもしっかりと理解しなければいけないというふうに思っておりまして,やはり先ほど意見がございましたように,4番と5番は,除く。それから,1番から3番に関しましては,実際の著作権者の皆さん,団体の皆さんがどういうふうな対応を望んでいらっしゃるかという御意見を伺ってそのご意向を尊重したいと思います。

そして,何よりも今回,主観要件が付いているところですので,そこがもう少し広く一般ユーザーのところに今回の対策の肝であることが周知されるということで,少しでも不安の解消につながるかもしれないと思います。その上で,ここに書かれている内容への対応として,ユーザーとするとありがたいと思いつつ,法律に書かれる方がいいのか,法律の解釈で,例えばこういう場合はここには当たりませんよみたいな形で,ガイドラインとして,運用のところでグリップをはめていただく方がいいのかというのは,明確に分かりませんけれども,そんなふうな感触を持っております。

【土肥座長】次の6とか7でもらってもいいですか,意見。要するに,まだ先があるので。今,10時25分なんですね。25分で,予定されているのは11時ですから。今,どこに行っているか,2ポツのここですからね,まだ先は長いんですよ。

【荻野構成員】(4)について発言したいんですけど。

【土肥座長】(4)だけですね。じゃあ,お願いします。

【荻野構成員】残念ながら(4)に関しては限定しない方がいいという御意見が多数派のようなんですけれども,(4)に限定すれば,かなり国民の理解が深まると思うんですね。というのは,言論表現への萎縮,あるいは,何か情報をインターネットで,著作権的にちょっとまずいものはあるんだけれども,拡散したいと。商品を盗む目的ではなく拡散したいと,情報を知りたいというところに何らかの権利濫用によって制限がかかってしまうのではないかという懸念をしている人たちというのは多いかと思うんです。きょうのプレゼンの資料で,まさにこれですよね。リーチサイトのこういうものは,ここからダウンロードすることが泥棒であるということは普通の国民感覚に非常に合致すると思うんですね。しかし,こういうところではなくて,情報が,何か著作物が含まれているかもしれないけれども,ダウンロードするというときに,それを全部違法化すると,あるいは刑事罰も付くということの理解というのはなかなか得られない場合もあるだろうと思うわけなんです。

もちろん著作者の方とか,出版社の方,心苦しい部分があるのは理解できるんですけれども,そこを絞るというのは,むしろ戦略的にも正しいのかなと思います。

きょうの資料の2-2も,コンピューターソフトとか学術論文,それから,その他の写真集なんかに関しては,基本的にリーチサイトからのダウンロードの事例というのが挙げられて,そこが深刻なんだよということが書かれているんですけれども。新聞記事ですよね,まとめサイトからのダウンロードが違法になってしまうということになってくると,社会問題とか時事問題について議論をしましょうというときの問題というのが結構大きくなるのかなと。それ,ダウンロードだけで果たして違法にしてしまっていいのかというところはかなり疑問に思うわけなんです。

ですから,繰り返しになりますけれども,こういったまさにインターネット上から商品としてのコンテンツを盗むという,ほとんどの人から見てこれは悪いことだろうというところに合致するものに絞って違法化するということが正しいことのように私は思います。なので,(4),いわゆる海賊版サイトなどからのダウンロードに限定するという項目は是非入れた方がいいと私は考えます。

以上です。

【堀内構成員】簡単に。

【土肥座長】おっしゃりたいところはよくよく分かるんですけれども,2回目あるんですよね。きょうでおしまいというわけではございません。きょうの御発言を整理した上で2回目もちゃんとやりますので,そこでも反映させていただきます。申し上げておきますけれども,知りながらですからね,あくまでも。侵害著作物であることを知りながらダウンロードするんですよ。そこを十分考えといていただかないと,更に海賊版サイトであることが必要とか,かなり重たい話になってくるなと思うんですけれども,いずれにしても,御発言を整理した上で2回目やらせていただきたいと思います。

ので,次の6,7,民事のところですね。民事において有償著作物に限定するということに関しては,前田構成員,ちょっとおっしゃっておられましたし,田村構成員も言及されておられました。反復・継続してダウンロードを行う場合に限定するという6,7について御意見頂けますか。大渕さん,どうぞ。

【大渕構成員】以前も申し上げたのですが,昔は有償を押さえていればよかったのかもしれませんが,現在は無償モデルというのが非常に発達してきています。従前でも本当は問題があったかと思いますが,特に今の時代にこれだと半分底抜けてしまっているような感じになってしまいます。反復・継続の方も,何をもって反復・継続か分かりませんが,単発やってすぐやめるとかだと全部逃げられるのかということになってくるのでこのような余計な制限は付けない方がよいと思います。

それから,前の方で先ほどあったのですが,私は1から5は全部反対です。とりわけ(2)は論外だと思っていまして,これを認め始めると,今まで文化審で決してやってこなかった「日本版フェアユース」という,アメリカ型になってしまいます。アメリカにはコモンロー・トラディショントラディションありますから,民法典もなくて全て判例法で決めている国なので,それでよいのですが,日本のように,法典法国でここだけアメリカ法になってしまうというと訳が分からなくなって,かえって国民の方でも使えなくなってしまいます。これだけ見ると,同床異夢があまりにひどくて,人によっては利益を不当に害する,害さないというのは水掛け論になって終わってしまったら,結局,何か侵害しても,こんなのは利益を害しないと言い立てたら,居直り侵害,藉口侵害になってしまって,裁判所に持ってこられても裁判所も判断も困りますし,裁判所に持っていかない限り,どちらか分からないというのは最も好ましくないものなので,全部反対ですが,特に(2)は論外だと思っています。

それから,(1)も,強いて言うのであれば,必要であれば,「原作のまま」というのは,出版権の文言ですが,ここでは文脈が全く異なるために全く好ましくないので,どうしても,何か入れなくてはいけないのであれば,その後ろの方だったらまだしもという気がします。

【土肥座長】堀内構成員,お願いします。

【堀内構成員】6,7についてですけれども,やはり有償でという限定には反対いたします。先ほど,無償だけど,広告モデルというのもありますし,有償と無償がセットになったサービスもあります。有償の部分はプロの作家が書いて,無償のゾーンは若い書き手に書いてもらって,そこは誰でも無償で見られると。そういう混在したサービスもある。あるいは広告モデル。こういうことなので,有償に限定することは反対しますし,7についても,既に当初案で刑事については反復・継続ということになって,民事までそれを広げるということには反対します。

それから,先ほど4について特に反対ということで申し上げましたけれども,2,3,4,5についても実効性の観点から反対します。

【土肥座長】2回目やりますので。6,7についてはいかがでしょうか。御意見ございますか,6,7について。

【萩原構成員】大渕先生と同じです。

【土肥座長】大渕先生どういうご意見でしたか。

【大渕構成員】両方とも反対です。

【土肥座長】そうですね。特に反復・継続というのはどういう意味です? つまり,業としてということを裏から書いているということですか。これ,どういうことですか。

【大野著作権課長補佐】まさに反復又は継続してという字義のままの意味だと理解していまして,毎日繰り返しているとか,定期的に毎週やるとか,そういった行為を刑事罰においては悪質性が高いものとして絞り込んで要件化をしていたところ,恐らくそれを御覧になった方が,民事も同じような絞りをかけることで,ちょこっとやってしまったユーザーは違法にならないようにすれば良いのではないかということで御提案されたものだと思っております。

【土肥座長】それは分かるんですけど,業としてというのが普通知財一般で使われますよね。それをあえて反復・継続にしている理由はあるんですか。

【大野著作権課長補佐】「業として」という要件の中には,反復・継続する意図で行う場合も含まれるという解釈もあるものと理解していまして,そうなると,1回目で違法になってしまうこともあり得るところです。今回は私的領域内での行為ですので,明確に反復・継続してやっているという行為を捉える観点から,審議会でもそういった提案も一部出てきたことを踏まえて,このような形で,刑事罰の要件を課していたという経緯があります。

【土肥座長】事務局においてまた調べていただければいいと思いますけれども,商人の定義とか,附属的商行為における業としてというのはあるので。福井構成員,お願いします。

【福井構成員】諸々の御意見,大変もっともだと思うんですけれども,一応御指摘として,原作のまま要件と,それから,不当に害する要件は,現行法の他の箇所に既に条文例としては存在しておりますね。これが1点。

それから,有償著作物の要件については,誤解のないように申し上げれば,私も現在のままの定義ではだめだと思いますので,もしも広告モデルなども広く拾えるような知恵があるならば要件として検討しては,という意味でした。

最後に海賊版サイトに絞る点なのですが,お気持ちは分かるんですが,私もこれはちょっと難しいような気がします。1点は,先ほど御指摘があったとおり,フェイスブックに対する削除要請だけで,月間でしたか,1万4,000件というように,他の流通ルートが無視できないのは事実である。

それから,もう1点は,海賊版サイトを定義しようとすると,これはなかなか地獄道になるというか。

【荻野構成員】リーチサイトの定義がある。

【土肥座長】それは議論またやりましょう。

【福井構成員】そこはおっしゃるとおりではあるんですが,またちょっと複雑化するなという懸念を感じたところでした。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。事務局におかれまして,6,7についての意見,大体集まったかなと思いますので,よろしいでしょうか。

じゃあ,刑事についての要件追加,8,9,10,11,12について,どれでも結構でございますので,御自由に御発言いただければと思います。刑事に関してです。じゃあ,前田構成員からお話があって,和田構成員に次にということにしましょう。

【前田構成員】(8)についてなんですが,これは(※)に書いていただいているように,私的使用目的のダウンロードにはあまり適切な文言ではないように思いますし,また,私は(2)で,著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定するという要件を,民刑共通の要件として入れればいいのではないかと思っておりますので,(2)が民刑共通の要件として入るのであれば,(8)は不要になるのではないかと思います。(9)については,先ほど申しましたように,丸ごとという概念が難しいことと,軽微性の要件を入れるということ,それから,(1),(2)の要件を入れれば,(9)の要件は要らないと思います。

それから,(10)は,ちょっと現実的な法制度としてなかなか考えにくいのではないかなと思います。

(11)については,先ほども申しましたように,私的使用目的のダウンロードによって不当な利益を上げるということはなかなか考えづらいので,(11)の要件は不適切だと思います。

(12)については,民刑共通の要件として,(1),(2)の要件を満たしていることを前提として,刑事罰については,有償著作物という要件がもともとかぶっていると思いますし,それから,先ほどの問題となった反復・継続してという要件ももともとかかっているところでございますし,更に今回,軽微なものを除くということもございますので,かなり絞りがかかっている状態になっていると思いますので,刑事罰を科すことには賛成です。

【土肥座長】和田構成員,お願いします。

【和田構成員】時間がないということなので,ほかの方が指摘されないであろうところだけ,ごく簡単にお話ししたいと思うのですけれども,今,新たに作るとすれば,作られることになる新しい犯罪類型が,確かにダウンロードするところを見れば,著作権侵害なわけですから,著作権を保護法益とする犯罪であるという共通了解だと思うのですけれども,今回,海賊版対策ということを考えているのであれば,単に個別にその行為が,そのダウンロード行為で著作権が侵害される特定の1人の著作権者に対して被害を生じさせる行為だというところにとどまるのではなくて,違法なアップロードを助長するような性質のダウンロード行為に処罰対象を限定するという,そういう観点があってもよいのではないかと思いました。それは,急にここで新しく出てくる観点ではなくて,現に刑法の中には盗品等関与罪という犯罪が存在していて,それは直接誰かから窃盗犯人が盗んできた物を更に買い受けるような行為を処罰対象にしている犯罪ですけれども,これは当初盗まれた人,当初の被害者の利益を害するというだけでなくて,買い受ける人がいると,将来に向けて窃盗行為を助長してしまうというところを捉える犯罪だと理解されていて,それと同じような観点を入れて要件を絞るという手もあるのではないかと思いました。具体的にどうするかというのはまた別問題ですけれども。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかに。大渕構成員,どうぞ。

【大渕構成員】今の点,贓物罪というか,盗品等に関する罪の視点は大変重要だと思っております。ただ,少し御注意いただきたいのは,刑法の場合であれば,窃盗罪は成立しないが,贓物罪が成立するということでありますが,ここでは,これとは全く異なり,プラスアルファになっております,自分自身が複製することによって,自分も正犯になる,すなわち,窃盗罪を犯しつつ,それと同時に贓物罪も犯しているということなので,そこでは絞るといっても,上乗せの部分が絞られるだけで,本体が残ります。そこのところは御注意いただければと思います。

【土肥座長】荻野構成員,どうですか,刑事ですし。

【荻野構成員】8番から。基本的には全部入れていただきたいというのはあるんですけれども,音楽と映画のときのことがあったので,12番ですよね。刑事罰自体を科さないことにするというのを1回やっても,その後付くだろうというふうに皆さん考えると思いますので,それをやるとしても,要件はしっかり限定していただかないと安心できないというのは恐らくあると思うんですね。

先ほど10番は現実的でないという御指摘があったんですけれども,行政法に関しては,直罰ではなくて,何らかの警告をするというのはあり得る方式ではありますので,それも検討するということは,それほど非現実的ではないのかなと思うところです。

以上です。

【土肥座長】いかがですか。

【河野構成員】簡単に。12番の刑事罰自体を科さないこととするについて,先ほどから御議論になっているように,本当に悪質な事業者に加担して,そこを反復・継続的に利用してしまうというのは,一般ユーザーにとってみても,問題だと思いますし,それがこういったサイトの存在や利用を,助長するということは問題だと思っておりますが,刑事罰という言葉を聞いた瞬間に,ユーザーが,どういうことが起こるんだろうというふうな漠然としたおそれを抱くのはもちろんでございます。全体のバランス等を考えて,本来の目的を達するためにはということで,今後の議論でこのあたりの精緻な御検討をお願いしたいと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかに刑事罰について,8から12までの要件を追加することに……。

【大渕構成員】8から12まで,これも全て入れない方がよいと思います。特に12番は全く論外です。先ほどどなたか,民事でやっても,弁護士費用がほとんどペイしないとおっしゃいましたが,あまり言うと抑止力なくなってしまうのですが,そのような中で,効果的な抑止があるとしたら,やはり刑事しかないので,これをなしにしたら恐らく今回の立法の抑止はほぼゼロということになって,何をやっていたのだということになりかねません。12は,刑罰だから不安というのは分かるのですが,やはりこれがなかったら今回の意味は大幅になくなってしまいます。今までも,普通の著作権侵害罪も刑罰対象になっていますが,その中で,我々,日常普通に暮らしていますから,ここは変わるとも思いません。そこのところは御心配なくということで。

強いて言えば,ただ,刑罰の場合に丸ごととかあるかと思うのですが,私,大きいと思ったのは,軽微で絞ると,もとは入っていなかった軽微なわけですから,軽微が明示されるだけで,細々としたところを入れなくてもものすごく大きなインパクトがあります。私は軽微を入れるのは反対なのですが,それ以外にまたこのようなものを入れ出すと,大変なことになります。私は福井先生が先ほど言われたことに,全く同感であります。国際標準にも全くない,いろいろな余計なものを入れ出すと,相互関係も含めて,訳が分からなくなってしまいます。特に刑罰法規としては,これでは大変に困ります。国民が見て理解できるようなものにするという意味では,次々入れると訳が分からなくなってしまいますので,そこは理解可能でシンプルなところで収めるべきだと思っています。

【土肥座長】ありがとうございました。後藤構成員。

【後藤構成員】先ほど申したように,やはり要件の絞り込みですね。これは抜け道を作ることとなり,実効性が少なくなるということであります。今回要件を絞り込むということでありますので,刑事罰が抑止力になりますので,絶対これは必要だと思います。

【土肥座長】堀内構成員,どうぞ。

【堀内構成員】私も8から12まで,これは必要ないと思います。当初の文化庁の3点の,スクリーンショットとか,あるいは軽微なものを除くとか,そういうことでユーザーの人たちの不安,懸念は払拭されるという。それ以上に絞り込むことは,今回の目的である海賊版対策の実効性というものが疑われると思いますので,反対します。特に12は今回の趣旨からいってあり得ないと思っております。

【土肥座長】分かりました。どうもありがとうございます。一応(1)から(12)まで満遍に御意見を頂戴したと思います。これについては整理した上で,更に2回目ということにつなぎたいと思いますが,そこで,3ポツのパブリックコメントにおいて指摘のあったところが2点あったということのようでございますので,これについて事務局からお願いします。

【大野著作権課長補佐】2ポツでは要件の追加のご提案を記載しておりましたが,3ポツではその他の事項について整理をしております。1点目が(ア)対象著作物の範囲でございまして,パブリックコメントでは,対象の著作物を漫画・アニメなど,一部のものに限定するのがいいのではないかという御意見もありましたので,この点をどう考えるかについて御議論をお願いしたいと思っております。

2点目は,(イ)の主観要件の取り扱いでございます。当初案におきましても,厳格な主観要件を設定し,違法なアップロードだということが確実に分かっているという場合のみ規制対象にするとこにしておりましたが,これが逆効果,不合理ではないかという御指摘がございました。①のように,様々なことを口実に違法・刑事罰の対象にならないという主張・行動を誘発する可能性があるので,海賊版対策の実効性を損なうのではないか,また,②のように,ユーザーの知識・能力によって取り扱いが異なってくるのは不合理と,こういった御意見もありまして,この点,どう考えるかについて御議論いただきたいと思っております。

また,4ページにございますとおり,仮に主観要件を緩めるということになりますと,ユーザーに不測の不利益を与えることにならないか,具体的にどういう主観要件が望ましいのかという点についても併せて議論が必要かと考えております。

【土肥座長】ありがとうございました。御意見頂ければと思いますけれども,どうですか。

【後藤構成員】やはり幅広く網をかけるべきだと私は思います。

【土肥座長】ほかに。堀内構成員,どうぞ。

【堀内構成員】冒頭説明しましたように,電子配信の85%ぐらいは漫画で,被害も漫画が圧倒的に多いんですけれども,じゃあ,残り15%,例えば極めて少部数の専門書とか,学術書みたいな,これは少量でたくさん出て,これもいろんな意味で,実は,漫画もそうですけれども,そういう少部数の専門書とか学術書も,むしろ被害は深刻なわけでございます。冒頭も御説明しましたように,国語辞典ですね。これは三省堂と岩波と学研と小学館と,あとどこかあったな,5社がそういう法的手続を進めていますけれども,何十年もかかって大変な費用と労力かけて,そして今ネットの時代で部数も減っている。そういう中でもきちっとそういう辞典を出している出版社が,それを海賊版でただで読まれるというのは,本当に深刻な課題です。ですから,漫画・アニメが大きな被害で,そこにいろいろ議論がいきますけれども,それ以外のものにも被害は深刻であるということなので,あまり絞るということには反対をしたいと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにございますか。大渕構成員。

【大渕構成員】私はまず(ア)の方は限定すべきではないと思っております。法は等しきものは等しく扱うという原則があります。海賊版被害が深刻だという点では,漫画・アニメが特に深刻ということはありますが,ほかを無視してよいという状態では全くありませんので,ここは限定すべきではないと思います。

それから,(イ)の方は,私は本当を言うと,客観要件だけでよいと思っているのですが,国民の不安を払拭すべく法・基小委のときにもこれを入れておりますので,やはり国民の方々に御理解いただくためには,もう一度主観要件が,いかに重い意味を有するかをお考えいただきたいと思います。うなずいておられますけれども,これがあると安心して,本当はこれだけでも十分なぐらいで,本当は,軽微も何にも要らないのであります。そのために諸外国にないような主観要件を,日本は甘すぎると言われつつも法・基小委でも入れたわけであります。刑法の先生はご異論がおありかもしれませんが,国民の不安を払拭するためには非常に重要なファクターなので,理論的にはない方がよいと思いつつも,不安を払拭をする必要があるのであれば,現実的にはこれしかないのかなと考えております。

【土肥座長】ほかにございますか。どうぞ。

【河野構成員】アの対象の範囲ですけれども,漫画・アニメに限定しなくていいと思っております。

それから,主観要件は,本当に安心材料のために是非取り入れていただきたいと思います。

以上です。

【土肥座長】どうぞ,和田構成員。

【和田構成員】ごく簡単に限定する安心材料として,「常習として」という点もあるかなと。「常習として」という要件を,反復・継続と主観要件を合わせたようなものとして入れる。現行法にある要素として,これを使うのもあるかと思いました。

【土肥座長】赤松構成員,どうぞ。

【赤松構成員】ちょっと忘れていたんですけれども,これ,1コマ漫画がもしかしたらフォローされていないかもしれない。1コマって言うと軽微に見えるけど,それ単体で丸ごとになっちゃうんですよね。漫画家協会には1コマ漫画の作家たちも結構いるので,そこ,ちょっと念頭に入れてもらえると助かるかもしれないです。

【大野著作権課長補佐】軽微なものを除くという要件は事務局から提案しているものでございますけれども,これはあくまで全体の分量との比率で判断されるものでございますので,作品が本当に1コマで成り立っており,それ自体が作品なのであれば,それを1コマ使っている以上は……。

【赤松構成員】全体。

【大野著作権課長補佐】そのとおり,全体を使っており軽微ではないという評価になろうかと思います。

【赤松構成員】分かりました。

【土肥座長】ほかに3ポツについて,よろしいですか。よろしいですね。確定的な違法性の認識を要件とするということについては,大渕構成員も言われてございますし,確かにそんな国はないんですからね,そこはよくよく御理解いただければと思います。

それでは,4ポツに入りましょうか。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料6の4ページから4ポツのリーチサイト対策の部分についても幾つか御意見頂いておりますので,順に御紹介をいたします。

まず(ア)がリーチサイトの定義,対象範囲についての御意見でございます。1つ目のポツにありますとおり,例えば引用の要件を満たさないニュースまとめサイトのリンク集,剽窃論文のリンク集,素材をライセンス違反して利用されているスライドのリンク集を初めとして,いわゆる海賊版対策と直接関係しないものがこの規制の対象に入ってしまうのではないかという懸念がパブリックコメントで多く示されたところでございまして,この点の整理が必要かと思います。

事務局としては,※に記載をしておりますとおり,リーチサイトは,条文上,「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの」,「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの」といった形で定義されておりまして,この定義との関係でこのような事例については多くが外れてくるのではないかと思っております。

例えば引用の要件を満たさない記事,剽窃論文などにつきましては,そういった記事とか論文全体のうち,他人の著作物を不適切に引用・剽窃している部分が部分的に侵害著作物等という評価になるものと思っております。一方で,リンクを張る際には,その記事とか論文全体に飛ぶようにリンクが張られるということが通常だと理解をしております。そうしますと,侵害著作物等となっている不適切な引用・剽窃部分に殊更に誘導していない,主としてその部分の利用のためには用いられていないという評価が可能だと思っておりまして,そういう考え方から多くは規制対象にならないだろうと思っております。これは①と②を例にとって説明をしましたが,③とか,⑤とかも同じような整理になろうかと思います。

一方で④につきましては,ライセンス違反の内容次第ではありますが,そのソフトウェア全体が侵害著作物等という評価になる場合もあろうかと思います。ただ,こういった点も含めまして,※の2段落目にありますように,例えば不適切な事例があるということを適示(告発)したいという目的でリンクを張っている場合は,リンク先を積極的に使ってくださいという形で促しているとは認められませんので,こういった事情があれば,規制対象にならないものもあると理解をしております。

2つ目のポツが,同じようにリーチサイトの範囲を絞り込むべきという問題意識の下,「原作のまま」「丸ごと」「権利者の利益を不当に害するもの」という要件を付すべき,対象の著作物をマンガ・アニメ・ゲーム・雑誌,有償のものに限定すべき,運営者が広告収入など利益を得る目的で侵害を促進している場合に限定すべき,こういった意見も見られたところでございまして,併せて議論をお願いしたいと思っております。

次に(イ)が刑事罰の扱いについてでございます。当初案では,リーチサイトの運営行為につきましては,刑事罰を非親告罪という扱いにしておりましたが,この点について多くの懸念が出されておりましたので,改めて非親告罪という扱いが妥当かどうかについて御議論を頂きたいと思います。その際には,仮に親告罪にした場合,実務上何か困ることがあるかという点にも留意する必要があるかと思っております。

次に5ページに参りまして,リーチサイトについても刑事罰自体を科すべきではない,事前の警告を与えるなどの場合に限定すべきという御意見もございますので,この点も議論をお願いしたいと思っております。

次に(ウ)がプラットフォーム・サービス提供者の取り扱いについてでございます。当初案では自ら直接的にリーチサイトの運営,リーチアプリの提供を行っているものを規制しておりまして,いわゆるプラットフォーム・サービスの提供者等には基本的に規制は及ばないという考え方の下,立案をしておりましたが,こういった考え方でよいかどうかということを確認する必要があろうかと思っております。

また,そういった考え方で問題ないようであれは,悪質な業者の潜脱行為を招かないという注意は必要ですけれども,条文上,何らか明確化することが可能かどうかということも併せて御議論をお願いしたいと思います。

事務局としては,リーチサイト運営行為やリーチアプリ提供行為の「機会を提供したに過ぎないものを除く」といったような形で記載することが考えられるのではないかということで一案を示しておりますが,こういったものが妥当かどうかを御議論いただきたいということでございます。

それから,(エ)は投稿型サイトの取り扱いでございまして,113条2項1号というところでリーチサイトの定義をイとロと2つに分けて規定をしておりました。このうちロにつきましては,「,主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられているもの」という形で規定をしておりまして,サイトの設置者が積極的に誘導しようという意図がない場合も想定されるところでございます。この定義が広く解釈をされると,投稿型サイトの設置自体を避けるようになってしまうのではないかという懸念が示されておりまして,これをどう考えていくかという論点でございます。

事務局としては,2つ目のポツにありますとおり,少なくともロの類型では,イの「殊更に誘導」というものと同様の法益侵害を生じさせるような悪質なものを想定しておりまして,一般的な投稿型サイトのようなものには規制は及ばないという理解をしておりましたが,こういう考え方でよいのかどうかを確認いただきたいと思います。

※で記載をしておりますとおり,これは民事の話でございますが,当然故意がないと刑事罰の対象にはなりませんし,民事についても,113条3項では相当厳格な要件の下でサイト運営者の責任を法的に裏付けるという位置付けをしておりますので,サイト運営者が積極的にサイトを監視しないといけないというような義務を課すものでは全くありませんので,その点も踏まえて御議論をお願いしたいと思います。

最後の(オ)はリンク提供者等に係る主観要件の取り扱いでございます。当初案ではリーチサイトにリンクを張る行為をみなし侵害にすることにしておりました。その際,リンク先が侵害コンテンツであることについて,過失がある場合も民事上は規制対象にするということになっておりましたが,この取り扱いが妥当かどうかということを御議論いただきたいということでございます。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ただいまの御説明をお聞きいただいたとおりでございますけれども,4ポツ,リーチサイト対策でございますので,ここはまず荻野構成員からお話伺った方がいいのかな。

【荻野構成員】リーチサイトの話は,まさに今回の立法事実に合致したものでして,しかも要件も非常に時間をかけて練られていて,懸念も大分払拭されたものになっていると思いますので,先ほどの提案にも合わせますと,このリーチサイトと対になるような形でダウンロードの方もやっていただければ,ほかの要件は必ずしも要らないものもあるのだろうなと思うわけなんですね。ですから,このリーチサイトの方をしっかりと,民事,刑事で規制していただいて,そこに合わせる形で,先ほどの議論も引き付けてやっていただくというのがよろしいのかなと私は思っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにこのリーチサイト。赤松構成員,お願いします。

【赤松構成員】刑事罰の点ですけれども,非親告罪にしたときに,理論上は我々権利者に無断で検察官が起訴できちゃうみたいなことに関しては,便利だとは思いません。むしろちょっとむかつく。こういう件に関しては,我々権利者が自由にコントロールできるようにしてほしい。黙認したいきには黙認できると。そんな形で我々は大丈夫なので,権利者を守るために非親告罪にしてあげようみたいに考えないでほしいと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。じゃあ,大渕構成員,どうぞ。

【大渕構成員】リーチサイトに関しては,ここに書かれているとおり,定義では「殊更に」というのと「主として」とで,特に「殊更」というので非常に絞り込んでおります。これはいろいろ議論した結果,萎縮効果などがないようにということで,殊更というのは日本語としても非常に絞り込んだものなので,先ほど御説明のあった4ページの①から⑤に関しても,先ほどのように部分だけ侵害していて,論文全体に張っているという,「部分・全体」の場合には「殊更」というのには当たらないから外れるというのはおっしゃるとおりだと思います。他方,④はそうでなくて全体だから,定義に当たることとなります。要するに,「部分・全体」という事案は,先ほどの「殊更」というので普通に当てはめていくと,先ほど御説明があったとおりだということで,その辺,全部いろいろ考えた上でこの定義ないし要件を作ってありますので,先程のように個別の案件にも対応できることが分かったかと思います。

私は,本来,下の方に書いてある原作のままとか,このようなものは一切要らないと思います。どのように考えるのかというのは,このようなものを全部考えた上で,あのときの法・基小委で決まっておりますので。またこのようなものを入れ始めると,抜け穴になってしまいます。要するに,「殊更」という定義のところで非常に絞り込むというのが全体的な考えなのであります。ほかのところで絞らなくても,最初の定義のところできちんと非常に絞りがかかっているわけです。

非親告罪化につきましては,どなたかが,社会的法益と言われたのですが,リーチサイトだと,個別の案件だけでない,社会的な面があるから本当は非親告罪でよいので,そのようにしたわけですが,それもまた国民の不安の払拭という事情や,必要ない,非親告罪ではむかつくなどというご意見もありましたので,その辺はいろいろ。個別法益を超えているという意味では非親告罪の方がよいと思いつつ,またユーザー御自身がむかつく等と言われれば,この点は,柔軟に考えてよいと思います。

あと,プラットフォーム・サービスのあたりも,ここに書かれたとおりで,あのときにも,プラットフォーム・サービスなどは,別途間接侵害などの一般理論で処理されるので,ここでの擬制侵害の対象にはしないという前提だったと思います。このあたりも納得できる内容に,過失の点も含めて,なっていると思います。もともと過失が何で入るのかと思われる方いらっしゃるかもしれませんが,差止めには本来帰責事由としては,過失は要らないが,それとは全く別に,絞り込みのために過失が入っているので,ここのところはそのような目で見ていただければ,合理性が分かるかと思います。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。リーチサイトのアのところですよね。これでいわゆる海賊版対策と直接関係しないものというものがきちんと落ちていると。①から⑤までね,こういったようなものがリーチサイトに該当しないというのが事務局の説明であったところでございます。これについて何か御異論のある方おられませんか。なければ,これはこれで了解したということにしたいわけですけれども。和田構成員,ありますか。

【和田構成員】イの方です。

【土肥座長】分かりました。アはよろしいですかね。

それでは,次の刑事罰のイでございます。非親告罪か,親告罪かというところでございますけれども,これ,リーチサイト運用行為ですよね。運営行為ですよね。リーチサイトの運営行為に関してどうかということなんですけれども,これ,和田構成員。

【和田構成員】親告罪化したとき,被害者が複数出てきたときに,誰の告訴があれば十分とするかは何らかの形で決定する必要があるという点に注意が必要だと思います。

【土肥座長】複数か。ほかにございますか。福井構成員,どうぞ。

【福井構成員】私もここは非親告罪化にこだわる必要は必ずしもないように思います。やはり以前の非親告罪化全般の議論のときに非常に国民的な不安が高まったわけでありますね。そのとき,多くの権利者,創作者すら,この非親告罪化にはそれほど積極的に賛成はしませんでした。なぜならば,本当に悪質なケースだったら,権利者は告訴を行うからです。権利者が告訴が必要だと思っていないものに対して,警察,検察に殊更に摘発,あるいは起訴をしていただきたいとは思っていないケースが多いからですね。そういうことを考えたときに,やはり社会の理解を得て,ちゃんとみんなのためになる制度を入れていこうと思うのであれば,余計な不安をあおる部分は落としていく。こういう発想があってもいいような気がします。

その意味で,現在はたしか原作のまま要件,不当に害する要件もない状態での非親告罪化が想定されているように思いますが,それでは前の議論と同じことになりかねませんので,ここは柔軟に親告罪化,考えてもよろしいんじゃないかなと思いました。

【土肥座長】どうぞ。

【後藤構成員】今のお話ですけれども,一応TPP整備法によって3要件満たす場合は非親告罪ということがありますので,その要件を満たしたものと差別化する必要もないのかなとは思いますけれども,ただ,福井先生が今おっしゃった部分も十分理解するというところであります。

それと非親告罪ですけれども,実務的に被害届というのを絶対とりますから,それで反対すれば犯罪事実から落ちるというのが実務のやり方だと思います。

【土肥座長】ほかにございますか。要するに,字は「非」があるかどうかでえらい違いですけれども,実際の運用ではそんなに変わるものではないというのが聞いている範囲でございますけれども,何かこのところでございましょうか。よろしいですかね。

次のページに入って,ポツの一番上の事前の警告を与えるなどしてもなお反復・継続してやる場合ということについて,パブコメではこういう意見があったようでございますけれども,これについて特段……。お願いします。

【後藤構成員】これも多くの場合,警告する窓口がないというのがリーチサイトですから,ついては,これは広報・啓発で皆さんで補うしかないなと思います。

【土肥座長】「漫画村」の場合は,すぐ逃げられましたので,警告していると,フィリピンの方に行かれたりすることもあるのかもしれませんね。

ほかにイのところで何かございますか。よろしいですかね。

じゃあ,ウ,プラットフォーム・サービス提供者の取り扱いですけれども,ここまで規定する必要はないというのを大渕構成員,先ほど言われたと思うんですけれども,これについて何か一歩踏み込むことが必要なのかどうか,何か御意見ありますか。

【後藤構成員】現況のリーチサイトはグレーゾーンですから,それで採用されないという部分もありますが,ただ,実務上はプラットフォーマーも協力して削除してくれているというのが実態でありますから,ここまでする必要はないと思います。

【土肥座長】いわゆる機会を提供している,場を提供しているにすぎないものとそうでないものは当然おるんだろうと思いますけれども,そのあたりは,ここから先は裁判所で十分対応してくれるんじゃないかなと思いますけどもね。御意見があれば伺いますが,いかがでしょうか。前田構成員。

【前田構成員】私もこれはいわゆる主体論一般の問題であり,それで解決できるものであって,裁判所の判断に委ねればよいことだと思います。

【土肥座長】ほかにございますか。よろしゅうございますか。今,5分過ぎているんですよ。7分ですかね,過ぎているので,ウが終わったということであれば,投稿型サイトに入りたいと思いますけれども,投稿型サイトについて,一応事務局は説明をしておるところでございますけれども,このあたり,何か御意見ございますか。私,最初読んだときに,113条第3項で既に対応しているとか書かれているので,あっと思ったんですけれども,これ,今からの話なんですね。何かこのあたりのところでいかがでしょうか。このあたり,どなたか詳しい方お出でになりますか。

113条3項というのは,2項とかは,後ろに付いておりますよね。後ろに規定が。

【大野著作権課長補佐】参考資料の1の方に付いております。

【土肥座長】付いておりますので,こういうふうに変わったらということですよね。結構この点,構成員の間に御認識にいろいろあるようでございますので,一言大野さんの方から補足していただければありがたいのですが。

【大野著作権課長補佐】それでは,まず,参考資料1の11ページ目をごらんいただければと思います。先ほど来リーチサイトの定義,対象範囲についての議論がございましたけれども,113条2項1号というところで,規制対象となるいわゆるリーチサイトについて規定をしております。類型として1号のイとロと2つに分けて規定をしておりまして,イの方が「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」ということで,吹き出しにありますように,サイト運営者の側が侵害コンテンツに誘導するために,デザイン,表示内容等を作り込んでいる,意図的に作っているサイトを想定して規定をしております。

一方でロにつきましては,「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」としておりまして,吹き出しにありますように,掲示板などの投稿型サイトで,設置者としては悪質なものにする意図はなかったけれども,ユーザーが結果として違法リンクを多数掲載し,侵害コンテンツの利用が助長されてしまっていると,こういう場合を想定しております。

このように,ロにつきましては,設置者が悪意がないという場合が想定されていますので,過剰に規制がかかってしまうのではないかという懸念がパブリックコメントで示されたところでございます。

一方で,先ほど御説明しましたとおり,刑事につきましては故意が必要ですので,こういう悪質なサイトになっているということを運営者が認識している場合に初めて罰則がかかることになりますし,民事についても要件が相当絞り込まれているという状況でございます。

民事につきましては,13ページのところに条文を記載しております。これは端的に申し上げますと,権利者の側がサイト運営者に侵害コンテンツのリンクを削除してくださいと言った場合の削除について法的な裏付けを与えるという規定になっております。緑の部分がリーチサイト運営者,リーチアプリ提供者ということで,主体を規定しておりまして,そういう人がこういう要件に該当する場合は侵害とみなしますよという規定にしております。その要件が,まず,青い字のところですね。「侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の…」というところでございまして,中身としては,吹き出しにありますとおり,①リンク提供の事実を現に知っており,かつ,②リンク先のコンテンツが侵害コンテンツであることについて故意・過失があるという要件になります。

更に,そういう場合におきまして,赤字にあるような形で,リンクを実際に削除できるにもかかわらず,削除しないという行為を侵害とみなすということにしておりますので,併せて読むと,リンクが提供されているのを知っていて,リンク先が侵害コンテンツであることについて故意・過失があり,かつ,消せるのに消さない。こういう場合に初めて侵害とみなされますので,それほどこのサイト運営者の側に過度な負担を課す規定にはなっていないものと理解しております。

【土肥座長】ありがとうございました。投稿型のサイトの取り扱いは,条文ベースというのはまた先でも出てくるんだろうと思いますけれども,事務局においては懸念されるということはないんじゃないかと。そういう一般的な投稿型サイトに規制が及ぶようなことはないと,そういうふうに考えておるということでございます。大渕構成員,どうぞ。

【大渕構成員】事務局が御説明されたとおり,ここまできちんと全て考えた上で絞り込んで書いてありますので,これで広過ぎるなどということはなく,十二分に絞られています。知りながら削除せずに放置というのは,著作権の世界だと「2ちゃんねる小学館事件」という有名な判例があって,蔵置サイトに違法なアップロードがあるのを知りながら放置したら,その人も差止めの対象になります。日本の場合従前,差止めの要件が厳格で,私はもっと広くすべきだと思いますが,それですら差止めを認めているぐらいなので,そのような意味では,一般法理の一つの当てはめ,知りながら放置しているのは作為で自分でやっているのと同視できるというような考えに近いので,これは個別に見ても,一般法理の中で見ても納得できる内容ではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。リーチサイトに関しては,結構本日の検討会でも評判がいいんですけれども,検討の過程では結構悪かったような気もするんですが,それはあくまでも私の誤解なのかもしれません。でも,条文ベースとの関係でもしまだ何かあるような場合は,これは次回以降でまた扱わせていただきたいと思いますので,最後のリンク提供者等に係る主観要件の取り扱いというところに参りたいと思います。リンク先が侵害コンテンツであることについて,過失がある場合は規制の対象としていることは妥当なのかどうか。刑事罰の対象にはもちろんならないわけですけれども,民事の点でございますが,これ,何か御意見ございますか。

いわゆる幇助というか,このあたりは,大渕構成員は昔からずっと話されていたので,この点,何かありますか?

【大渕構成員】間接侵害につきましては,幇助者や共同行為者に対して差止めができるのかという大論点はあるのですが,ここでは,幇助の話ではなくて,独立正犯というか,幇助を超えた,形式的に見ると幇助かもしれませんが,実質的に見ると,後ろで糸を引いている,より悪い独立の正犯にするような話であります。だからそのようなものとして思えば,もともと,その絞り込みの中で,差止めだと本当は故意・過失は要らないのですが,それとは別に過失で絞っているということなので,故意を下げて過失になっているというよりは,本来過失も要らないのに差止め要件を上げているということで,絞り込んでいるという形で御理解いただければと思います。

【土肥座長】絞り込んでいると。ほかに何か最後のオについて御意見があれば承りたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。福井構成員,最後にありますか。

【福井構成員】先ほど荻野構成員の御意見にもありましたけれども,このリーチサイト規制は全般によく考えられたものだと思います。過失を対象に加えることに違和感はありません。

【土肥座長】ほかにございませんかね。時間が来ておりますので,最後に和田構成員から御意見等々いただければと思います。

【和田構成員】みなし侵害の場合の犯罪の故意の扱いというのはどうなるのでしょうか。

【大野著作権課長補佐】質問の御趣旨としては,113条3項では過失の場合も含めているけれども,これが罰則に規定されることでどうなるかということですね。我々の理解としては,刑事罰一般の故意犯処罰の原則が適用されますので,みなし侵害については,民事上はここに書いたとおりの要件が適用されますが,刑事に持っていったときは,この要件に該当する,それぞれの事実についての認識,故意が必要になってくると考えております。条文上,明確にそうは書いていないですけれども,113条3項のみなし侵害を罰則化するというときには,刑事罰一般の考え方が適用されて,さらに,絞り込みがされていくという理解でございます。

【和田構成員】それは,請求されたけれど,削除しなかったことを認識しているだけでは不十分だということですか。

【大野著作権課長補佐】そうですね。自らのサイトがリーチサイトの定義に該当していることやその他諸々含めた認識が一般的に求められるものと理解しております。

【土肥座長】よろしゅうございますか。

ありがとうございます。時間が15分ぐらい過ぎておりまして,誠に申し訳ないんでございますけれども,一応本日の検討会を経て,様々な点について認識,あるいは共有しながら,あるいは理解をしながら伺ったわけでございますので,本日の議論というもの,意見を踏まえて,事務局において再度整理をしていただければ幸いでございます。

まだあるんですかね。

【大野著作権課長補佐】これで終わりです。

【土肥座長】まだあった。4。資料の4があるんですね。

【大野著作権課長補佐】資料7の説明を抜かしておりましたけれども,これは次回以降の議論だと思います。ダウンロード違法化の要件を更に御議論いただくに当たって,文化庁の提案だけを仮に反映したとすれば,それぞれの事例がどういう結論になるのかというのを資料7として表形式で整理をしております。次回以降,より具体的な要件の絞り込みを御議論いただくときに,ここまで違法にするのかとか,ここまで刑事罰をかけるのかというのをある程度事例のイメージを持っていただいた上で議論をお願いしたい,そういう趣旨で,たたき台といいますか,議論の参考として用意した資料でございます。また次回以降もお示しをして御議論いただきたいと思います。

【土肥座長】分かりました。じゃあ,次回以降,これも踏まえて検討させていただくということでよろしゅうございますか。

ありがとうございます。それでは,先ほどの最後の資料7については,お持ち帰りいただいた上で,次回につなげていただければと思います。

それでは,ほかにも御意見,御発言をなさりたい方おありになるのかもしれませんけれども,時間の関係で本日はこのぐらいにしたいと存じます。事務局から連絡事項がございましたらお願いをいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は朝早い時間から,また長時間にわたり,活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。

次回の検討会につきましては,既に御案内しておりますけれども,12月18日,水曜日の16時からを予定しております。場所など,詳細につきましては,改めて御案内いたしますので,引き続きよろしくお願いいたします。

【土肥座長】ありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,侵害コンテンツのダウンロードの違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)を終了させていただきます。本日は長時間御議論に参加いただきまして,誠にありがとうございました。

――了――

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