第25期文化審議会第3回総会(第99回)

1.日時

令和8年3月27日(金)10:00~12:00

2.場所

文化庁京都庁舎 本館3階 特別会議室(一部オンライン出席)

3.議題

  1. 1.各分科会・部会からの報告
  2. 2.最近の文化行政の動向について

4.配布資料

5.議事録

出席者 ・委 員:
島谷委員(会長)、日比野委員(会長代理)、相澤委員、岩﨑委員、植木委員、太田委員、黒田委員、河野委員、千住委員、髙部委員、田中委員、中江委員、野嶋委員、菱田委員、松田委員、森山委員、吉田委員、吉見委員
・文化庁:
都倉長官、伊藤次長、松坂審議官、森友審議官、守山文部科学戦略官(文化戦略官)、山下文化財監査官、田中文化戦略官、横井政策課長、桐生企画調整課長、藤田文化経済・国際課長、山田国語課長、長谷著作権課長、塩川文化資源活用課長、三輪文化財第一課長、田中文化財第二課長、武藤参事官(生活文化創造担当)、中島参事官(生活文化連携担当)、矢野⽂化戦略官、秋山企画官、その他関係官

【島谷会長】ただいまより、今期最後の文化審議会の総会を開催いたします。年度末、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。

本日は2つの議事がございます。1つ目は、各分科会・部会からの報告でございます。2つ目は、最近の文化行政の動向についてでございます。また、後半には各委員から御発言いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、本会議の開始に当たり、都倉長官から御発言いただきたいと思います。都倉長官、よろしくお願いいたします。

【都倉長官】皆さん、おはようございます。本日は、御多用の中、多数の委員に京都庁舎にまでお越しいただき、文化審議会総会を開催することができ、大変ありがたく思います。また、オンラインで参加の皆様にも感謝を申し上げます。

文化庁は、令和5年3月に京都に移転してまいりましてから、3年がたちました。移転に御尽力いただきました関西、京都の関係者の皆様には、改めて御礼を申し上げたいと思います。移転後、私の下に食文化推進本部、文化観光推進本部を置き、京都の力、文化庁ならではの地方創生を実現するためにいろいろ取組を行ってまいりました。今年度は、文化財を活用した文化観光による地方創生パッケージに基づく様々な事業を実施するとともに、食文化分野における新たな顕彰制度であります「食の至宝」を創設いたしました。また、指定国宝・重要文化財展等、様々な文化芸術イベントも、この京都の地におきまして開催をいたしました。これまで、クリエーター育成のための基金の創設、また文化財の強靱化のための予算、こういうものを確保してまいりました。令和8年度予算におきましても、文化資源の持続可能な保存・活用による地方創生の推進、世界に誇る多様な文化芸術の創造・発信と人材育成のための予算を計上しているところであります。

私は就任以来、CBX、カルチュラル・ビジネス・トランスフォーメーションの推進を提言し、国際発信の強化、また、文化と経済の好循環の実現に取り組んでおります。今年度も昨年度に引き続き、千葉と大阪において、アートと音楽のフェスの融合的取組、MUSIC LOVES ARTを実施いたしました。さらに昨年5月には、文化庁協力の下に、国内といいますか、アジア最大級の国際音楽賞、MUSIC AWARDS JAPANを京都において開催したところであります。本年度も6月に、今年は東京において、このMUSIC AWARDS JAPANを、より規模を大きくして実施する予定でございます。加えまして、日本各地の最高峰の文化資源を磨き上げる日本博2.0をさらに推進し、昨年、大阪・関西万博においては、その一環として、日本の文化芸術の魅力を関西から世界に発信してまいりました。文化庁といたしましては、今後とも京都移転を契機とするこうした新たな取組を積極的に行い、文化芸術のさらなる振興に努めてまいります。

私は本年、今月31日に、文化庁長官の職、5年の任期満了で退任することとなりました。これまで皆様には格別の御指導をいただきましたことを、この場を借りて心より御礼を申し上げます。委員の皆様におかれましては、幅広い視点から文化政策について御検討いただきたいところでございます。引き続き、文化芸術立国の実現に向けて、御支援、御協力をお願い申し上げます。

以上であります。ありがとうございました。

【島谷会長】長官、ありがとうございました。都倉長官は、ほかの公務の都合により、これにて退席されます。ありがとうございました。

【都倉長官】よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【島谷会長】それでは、議題1に入ります。各分科会・部会の報告をお願いいたします。部会がたくさんありますので、それぞれ4分以内で御報告いただき、最後にまとめて質疑応答の時間を設けたいと思います。

まず最初に、国語分科会における審議状況と今後の主な課題につきまして、森山分科会長から御報告願います。よろしくお願いいたします。

【森山委員】それでは、今期の国語分科会の審議内容につきまして御報告を申し上げます。資料1の国語分科会における審議状況と今後の主な課題を御覧ください。

国語分科会では、1つ目の課題としまして、一昨年5月に文部科学大臣からいただきました諮問に基づき、ローマ字使用の在り方について、また、2つ目として、デジタル言語資源の整備・活用の在り方について、それぞれ検討してまいりました。

まず、ローマ字につきましては、国語分科会における議論に基づき、昨年8月20日、この文化審議会において「改定ローマ字のつづり方」を文部科学大臣に対して答申していただきました。この文化審議会答申の内容は、政府によって採用され、閣議決定を経て、昨年12月22日に内閣告示「ローマ字のつづり方」として実施されています。この場をお借りしまして、70年ぶりの改定のために御尽力くださった文化審議会の皆様に心から御礼申し上げたいと思います。この改定によりまして、社会で実際に使われているローマ字と、国が示す考え方との間にあった隔たりが解消されました。学校教育などにおいても、既に新しい内閣告示への対応が準備されているというふうに伺っております。

ローマ字の次の課題としましては、平成3年から内閣告示として実施されている外来語の表記に関する検討を予定しております。まずは現在の社会生活における外来語の表記の実態をよく調査し、どのような課題があるかを明らかにしたいと考えております。

続きまして、日本語のデジタル言語資源の整備・活用の在り方についての審議状況についても御報告を申し上げます。今期の言語資源小委員会では、前の期に引き続き、日本語に関するデジタル言語資源を社会の中でどのように整え、役立てていくかについて検討してまいりました。重要なデジタル言語資源といたしまして、コーパスが挙げられます。コーパスとは、実際に使われた言葉や文章を多量に集め、整理したデータ集のことであります。例えば書籍、教科書、ウェブ上の文章などを集めて、どんな言葉がどんな場面でどのように使われているかを調べられるようにしたものであります。

代表的な日本語のコーパスといたしまして、国立国語研究所による現代日本語書き言葉均衡コーパスが挙げられます。現在、文化庁の予算によってこのコーパスを整備し、最新のデータを盛り込み、拡充する取組が進行中です。日常生活の中で、例えば「大きい問題」あるいは「大きな問題」、どちらを使おうかみたいなことに悩む場合がありますが、例えばそういうような場合に、コーパスで調べると、立ちどころにどちらの使い方が多いかということなどが分かります。ただ、このコーパスは少し前のものでもありまして、現在身近に使われている「スマホ」などは出てまいりません。そういうアップデートができていないというのは大きい問題でもあります。国の文化施策として、コーパスの拡充は喫緊の課題だと思っております。さらに現在、特にAIをはじめとする新たな技術が急速に広がり、人間を介さない言葉が今後どんどん生成されていくことも考えるべき課題であります。

人間が書いた信頼のおける日本語データを集約したコーパスを整備し、社会で共有することは非常に重要なことです。言語資源小委員会では、この国語研のコーパスをはじめ、誰もが使え、誰もが親しめるようなデジタル言語資源の整備を進めることの必要性を確認してまいりました。そして、それらを社会で実際に役立てる方法について、例えば国語辞典への活用、消滅の危機にある方言の保存、外来語をめぐる課題の把握、生成AIとの関係など、多様な観点から意見交換をしてまいりました。来期につきましても、デジタル言語資源の整備・活用の在り方について、さらに具体的に検討を進めていく予定であります。

以上、国語分科会から、2点、御報告申し上げました。

【島谷会長】森山分科会長、ありがとうございました。

続きまして、著作権分科会における審議状況と今後の課題につきまして、太田分科会長から御報告願います。

【秋山企画官】会長、失礼いたします。事務局から失礼いたします。先ほどオンラインの先生方から、音声が割れて聞き取りにくいというコメントを頂戴しておりますので、大変恐縮ですが、先生方におかれましては、マイクに顔を近づける形でゆっくりと御発言いただけますようお願い申し上げます。失礼いたします。

【太田委員】著作権分科会会長の太田でございます。花粉症で、少しお聞き苦しいかと存じますが、ご海容のほどよろしくお願いいたします。資料2に基づきまして御報告させていただきます。

今期の著作権分科会におきましては、著作権者不明等の場合における裁定に係る補償金の額等についての審議のため、使用料部会を設置するとともに、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策などの審議のため、政策小委員会を設置しました。

まず、常設の使用料部会における審議状況から御報告いたします。使用料部会では、著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額のほか、著作権法に基づく文化庁長官による文化審議会への諮問事項として、著作権法施行令の一部を改正する政令案、未管理著作物裁定制度における登録確認機関の確認等事務規程の認可について審議を行いました。

次に、政策小委員会における審議状況です。レコード演奏・伝達権について、重点的に審議を行い、利用者をはじめとする関係者からヒアリングを重ね、権利が創設された場合の社会的影響等について議論を行い、レコード演奏・伝達権を創設することが望ましいという結論を得ました。また、デジタル教科書の在り方を踏まえた著作権制度への対応につきましても審議を行い、動画や音声を含む今後のデジタル教科書に対応するため、デジタル教科書に係る著作隣接権の制限について、実演、レコードの利用についても対象とするという結論が得られました。これらの結論を踏まえ、政策小委員会の報告書がまとめられて報告されました。最終的には、著作権分科会の報告書として取りまとめられております。

私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【島谷会長】どうも太田分科会会長、ありがとうございました。

次の文化財分科会の審議状況につきましては、私のほうから報告させていただきます。

今期第25期の文化審議会文化財分科会における審議状況について御報告いたします。お手元の資料3の1、2ページを御覧ください。

文化財分科会では、文化財保護法第153条の規定により、文部科学大臣または文化庁長官から諮問された案件について調査審議を行っております。今期は分科会を11回開催いたしまして、国宝・重要文化財の指定等について181件、登録文化財の登録について485件、重要文化財や史跡等の現状変更の許可等につきましては1,983件、文化財保存活用地域計画や重要文化財等保存活用計画の認定について77件、その他基準等の改正について2件の答申を行いました。

次に、答申を行った文化財のうち、代表的な事例を紹介いたします。3ページを御覧ください。国宝・重要文化財のうち建造物については、国宝1件を含む19の指定について答申いたしました。この国宝1件は、昨年5月の第271回分科会において、重要文化財琵琶湖疏水施設のうち、第1隧道ほか3所1基を国宝に指定するように答申したものになります。琵琶湖疏水施設は、琵琶湖の湖水を京都へ疎通し、舟運、かんがい、防火、発電、水道といった多岐の機能を果たす長大な運河の構成施設です。西洋技術の習得過程にあった明治中期において、当時の土木技術の粋を集めて築かれ、世界的に高い評価を得た類いまれなる構造物であり、明治日本における都市基盤施設の金字塔でもございます。自然と人工、伝統と近代の景観が織りなす京都の比類ない風致を育んだ琵琶湖疏水の代表的遺構であり、文化史的意義も極めて深いものになります。また、近代の土木構造物としては、初めての国宝となります。

次ページ、4ページを御覧ください。同じく国宝・重要文化財のうち、美術工芸品については、国宝3件を含む67件の指定等について答申いたしました。全て今年3月の第280回分科会において答申したもので、奈良県飛鳥池遺跡出土品は、この国宝に指定するように答申した3件のうちの1件になります。

飛鳥時代後半における国家的総合工房の操業内容を克明に施設示す一括資料です。歴史教科書を書き換える発見となった我が国最古の鋳造貨幣である富本銭や、その鋳造関係資料をはじめ、金や銀、銅、鉄、ガラスなどを用いた各種製品生産の実態を伝える遺物、その内容や発注者である皇族の名を記した木簡など、極めて多彩な出土品で構成されております。これらは手工業生産技術の伝播や、東アジアにおける生産技術史、さらには律令国家形成期の社会を考究する上で極めて重要です。

次の5ページを御覧ください。重要有形民俗文化財や重要無形民俗文化財等については、今年1月の第278回文化財分科会で、志摩半島の生産用具附真珠養殖関連資料1件を重要有形民俗文化財に指定し、ほかの5件を重要無形民俗文化財に指定するように答申いたしました。

志摩半島の生産用具は、旧志摩国の領域に相当する現在の志摩半島全域から収集された資料群で、漁労や農耕などの生業に使用された用具と、船大工や鍛冶屋などの諸職が使用した用具から構成されます。また、日本の真珠養殖の発展に寄与した旧国立真珠研究所の標本類や施術器具などを附として含めています。複合的な生業の在り方や、生業と職人との相互依存の関係など、志摩半島における生産活動の実態をよく伝えており、地域的な特色も顕著に見られます。周囲を海に囲まれ、半島部の多い我が国における生業の変遷や生産活動の地域差を考える上で重要でございます。

次に、恐縮でございますが、2ページにお戻りください。表直下の(2)報告状況を御覧ください。文化財の指定等に係る答申以外では、令和4年の7月に本分科会で取りまとめた「これからの埋蔵文化財保護の在り方について(第一次報告書)」に基づいて、昨年6月の第272回文化財分科会において、指定相当の埋蔵文化財の第四期リスト登載遺跡として6遺跡を、昨年12月の第277回文化財分科会において、指定相当の埋蔵文化財の第五期リスト登載遺跡として5遺跡を選出いたしました。なお、本年1月には、第一期から第五期リスト登載遺跡を統合したものを公開しております。同資料6ページに掲載しております。

また、昨年の10月の本分科会において、「重要無形文化財の指定並びに保持者及び保持団体の認定の基準」及び「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財の選択基準」の改正を答申し、昨年12月に食文化を含む生活文化分野の指定・認定基準等が施行されました。

続いて、次年度以降での本分科会の主な課題といたしましては、引き続き、国宝・重要文化財の指定等に係る調査審議を行うこと、そして2つ目が、令和4年の埋蔵文化財保護の報告に基づいて、指定相当の埋蔵文化財の第六期以降のリスト化に係る調査審議を行うこととなります。

以上、文化財分科会の今期の審議状況について、大まかではございますが、御報告させていただきました。

続いて、文化政策部会における審議状況と今後の課題について、日比野部会長から説明をお願いいたします。

【日比野会長代理】聞こえていますでしょうか。

【島谷会長】はい、聞こえております。

【日比野会長代理】よろしくお願いいたします。では、文化政策部会の審議状況と今後の課題について御説明申し上げます。

まず、1、これまでの審議状況についてですが、(1)と(2)は昨年度の総会に御報告したものと同様の内容になっております。(1)では、第2期文化芸術推進基本計画の策定経緯について記しております。(2)では、昨期の部会において、第2期基本計画の中間評価の際に使用する指標の整理表をまとめたものを記しております。

今期の本部会での審議状況については(3)以降に記しております。今期の本部会では、文部科学省の政策評価制度の見直しに伴い、同評価制度との接続性を確保するため、文化芸術推進基本計画の中間評価に「文化芸術分野の政策体系等」を活用することが求められております。政策体系等は、昨期本部会において確認した指標の整理表の内容に、各目標の達成手段等に関する情報を加えた構成となっているものであります。今期の本部会においては、この政策体系等についての助言を述べる立場である政策評価に関する有識者会議の議論も参照しながら審議を行い、本部会としてこれを取りまとめることに至りました。政策体系等の詳細については、資料4の次のページの別紙に添付しておりますので、御参照ください。

次に、2、今後の課題についてですが、来期は、第2期基本計画に定めるところにより、令和4年度から7年度の3年間における計画の推進状況について、的確に中間評価を行う必要があります。今期の部会では、中間評価の実施方法についても意見交換を行いました。その結果、中間評価に際しては、政策体系等において目標達成手段として掲げた予算事業等以外の取組や関係団体等からの意見も参照しつつ、定量指標に関わる評価のみならず、定性的な観点からの評価を充実させることを含め、評価に多様な視点を取り入れることに留意することを今後の課題といたしました。

説明は以上となります。

【島谷会長】日比野部会長、ありがとうございました。

続きまして、美術品補償制度部会の審議状況でございます。この審議状況と今後の課題につきまして、岩﨑部会長から説明をお願いいたします。

【岩﨑委員】岩﨑でございます。資料5に基づいて、審議の状況を御報告いたしたいと思います。

美術品補償制度部会では、展覧会における美術品損害の補償に関する法律に基づきまして、展覧会のために海外から借り受けた美術品の損害を政府が補償する契約を展覧会の主催者と締結することの適否について審議を行っております。

今期の部会におきましては、申請がありました展覧会5件について審議を行いました。いずれも補償契約を締結することが適当である旨を答申いたしました。具体的な展覧会の名称は表に記載のとおりでございます。今期に契約した多くの展覧会はまだ会期中でございますが、既に会議が終了した国立西洋美術館の「オルセー美術館所蔵印象派―室内をめぐる物語」展については、想定していた入場者数を超える約47万人の方に御来場いただいたと伺っております。

今年度の申請における主なポイントといたしまして、本制度が始まってから初めて、東北地方――福島県ですが――の展覧会が補償の対象となりました。また、この補償制度を使ったことにより軽減された保険料については国民へ還元することとなっており、入場料の軽減や教育プログラム等を実施しております。今年度は、高校生以下の無料化、大学生の無料日の設定、ベビーカーでの来館がしやすいような親子鑑賞会の実施、来館できない方でも音声ガイドを聞くことができるよう公開範囲を拡大するなど、各開催館での工夫が多く見られました。

なお、今年度も補償対象展覧会において、美術品に係る事故の発生はなく、政府からの補償金の支払いは発生しておりません。

続いて、近年の傾向といたしましては、原油価格の高騰や、戦闘の影響による航路変更などにより、輸送コストが年々上がっております。そのため、海外からの輸入展示の見送りや、縮小をする美術館もあり、申請数は低調傾向となっております。来年度も引き続き、本法律の運用状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、国民が美術品を鑑賞する機会の一層の拡大を図る観点から、補償契約の締結の適否に関する個別審議を行ってまいります。またあわせて、展覧会における美術品損害の補償に関する法律の目的に沿った展覧会の実施を行うため、審査に当たって改善が必要と考えられる事項について検討を行ってまいります。

簡単ではございますが、説明は以上とさせていただきます。

【島谷会長】岩﨑部会長、ありがとうございました。

続きまして、世界文化遺産部会における審議状況と今後の課題につきまして、菱田部会長から報告をお願いいたします。菱田さん、リモートでしょうか。

【秋山企画官】菱田委員、今入られていらっしゃいますでしょうか。

【島谷会長】菱田委員が入っているかどうか確認できませんので、次に行きたいと思います。

1つ飛ばしますが、無形文化遺産部会の審議状況につきまして、加えて今後の課題につきまして、部会長の松田委員から御報告をお願いいたします。

【松田委員】資料の7を御覧ください。無形文化遺産部会における審議状況と今後の主な課題につきまして、部会長の私、松田より御報告申し上げます。

無形文化遺産保護条約に基づく人類の無形文化遺産の代表的な一覧表への令和7年度の提案候補につきましては、新規提案候補として「神楽」と「温泉文化」を選定し、その優先順位を、「神楽」、「温泉文化」の順といたしました。また、拡張提案候補というのがあるんですけれども、こちらにつきましては、「山・鉾・屋台行事」「風流踊」「伝統建築工匠の技」の3つを選定いたしました。

ユネスコ無形文化遺産の審査は、実質2年に一度となっておりますことから、新規提案案件につきましては、令和10年12月に「神楽」、そして令和12年12月頃に「温泉文化」が無形文化遺産保護条約政府間委員会において登録の審議がなされる見込みでございます。そして、その審議がうまくいけば、無事に登録決定となるということでございます。拡張提案3件につきましては、令和9年12月頃に登録の審議がなされ、これもうまくいきましたら登録決定となる見込みでございます。

令和6年度に選定いたしました「書道」につきましては、本年11月30日から12月5日にかけて中国のアモイで開催予定となっております政府間委員会におきまして登録の審議がなされ、こちらもうまくいけば決定がなされる見込みでございます。無形文化遺産部会では、引き続き、無形文化遺産保護条約の実施に関して必要な審議を行ってまいります。

報告は以上でございます。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

【秋山企画官】菱田委員、今、入り直しをされているようですので、また準備が整いましたら御連絡いたしますので、次にお進みください。

【島谷会長】では、次に移らせていただきます。今、松田部会長から報告いただきましたが、続きまして文化経済部会の審議状況につきまして、さらに今後の課題について、吉見部会長から説明をお願いいたします。

【吉見委員】文化経済部会長を拝命しております吉見でございます。資料の8を御覧ください。1枚めくっていただくと、「日本文化振興のための文化と経済の好循環の推進(論点整理)」というものが出てまいりますので、そちらを御覧いただきたいと思います。

大きな数字でページが出ております2ページの「はじめに」というところから、かいつまんでお話をいたします。21世紀の日本の真の豊かさを実現するために、文化と経済の好循環をさせる仕組みを探求し、その諸方策を提案することを本部会の使命としております。文化と経済は背反する概念ではありません。文化の中には経済的次元が必ず含まれ、文化なき経済は必ずどこかで破綻します。しかしながら、多くの文化団体や文化施設は経済的困難にあえいでいます。全国各地の文化施設が老朽化で使えなくなり、アーティストは、コロナ禍のような危機に直面すると日々の生活が立ち行かなくなる不安定な状態に置かれています。キュレーターやアーキビスト、ライブラリアン、プロデューサー、アートマネジメント人材、アートに関わる様々な技術スタッフは、文化の根底を支える専門職であるにもかかわらず、人生を通じたキャリアパスを思い描きづらい状態が続いております。他方、経済は短期的利益をより効率的に追求しがちになります。競争が激しくなると、目先の利益を目指して徹底した効率化を進め、無駄なコストをカットして成果を上げていこうとするので、競争が競争を、効率化が効率化を呼び、文化など、一体いつに結果が出るのか分からない分野に目を向けている余裕がなくなっていきます。つまり、両者の循環では時間的な尺度がかなり異なるところがあって、経済が短期的な循環を必要とするのに対し、文化が可能にするのは長期的な循環です。

次のページに参ります。この時間的な尺度のギャップを埋めて、文化と経済の好循環を実現していくには、効果的な政策的介入が必要です。

日本文化に関わる市場規模というものについて若干議論いたしました。日本文化に関する経済は、多様な領域の市場にまたがっています。中でもコンテンツ、放送、アート、観光、スポーツ、食文化といった広義の文化分野は、いずれも国内外で高い評価を得ており、市場規模は拡大し続けています。トータルすると、自動車産業と同じぐらいの市場規模が文化にはございます。

4ページ、ページは大きな数字のほうのページを見ていただくと、(2)日本文化関連産業が空洞化するリスクとなっております。ここを御覧ください。本部会は、これまでの狭い文化概念を超えて、より広く文化関連の産業域を包摂する仕方で日本文化総体を振興していくことが必要であると考えてまいりました。しかしながら、これらの文化産業は、その多くが世界の中で大きく市場を拡大させていますけれども、将来的なリスクも存在します。地域や業種によっては人口減少や働き手不足の渦中にあって、中核的な担い手の高齢化や人材流出も続いています。仮に海外での評価が高く、将来性が見えているような場合でも、技能の継承や拠点の存続可能性の危機に直面している例も少なくございません。5ページの真ん中辺ですけれども、そのような空洞化のリスクを克服するには、文化と経済の好循環の観点が不可欠であり、単に市場規模を拡大するだけでなく、文化活動の土壌を豊かにし、それが経済的価値として循環する仕組みを構築することが必要です。

この総会でも部会の報告として、これまで、第1の循環と第2の循環を連動させるんだということを言ってまいりました。これについては説明は省略させていただき、6ページ、具体の話になりますが、3と書いてあって、持続可能な財源基盤・資金循環の確立というところに行かせていただきたいと思います。

具体的に細かい説明はお読みいただきたいと思いますけれども、資金の多様化・複合化が必要であるということで、7ページですけれども、ブレンデッド・ファイナンスとかインパクト投資、企業版ふるさと納税だとか指定寄附金制度、無担保のソフトローン、銀行以外による貸付債権であるとか、そういったような幾つかの具体策について議論をしてまいりました。また、評価制度についても、8ページにございますけれども、インパクト投資に関する評価制度を確立する必要があるということについても議論してまいりました。

そして、とりわけ重要なのは、寄附に関する制度の改善です。税制優遇制度の見直しと大幅な拡充、さらにその制度の運用改善、寄附等を行う者と受ける者のマッチングの促進、そして顕彰や特典などの寄附や資金拠出をエンカレッジするような仕組み、そうしたものがぜひとも必要であるという話をしてまいりました。

9ページに参ります。文化芸術団体が受け取る寄附の内容に関しても、キャッシュだけではなくて、多様な形での寄附を受けられるような制度を整備するべきだということを言ってまいりました。

大急ぎで、9ページの下のほうで、活用・承継・育成のための税制というのも議論してまいりました。実際、重文や国宝、そういったものについては制度が整っているんですけども、それ以外の貴重な建築資産とか、そうしたものに対する継承が非常に困難になっております。それについて、どう税制面から改善する方法があるかということを議論してまいりました。

10ページに参ります。10ページの真ん中辺です。そのためには、資金循環のための包括的情報基盤が必要であるということです。様々に分断というか縦割りで分かれてしまっている情報基盤を、統合的に、包括的にすることが不可欠であるということです。

11ページに参ります。専門性のある人的基盤とアーツカウンシル機能ということで、こうした全てのことを実現するためには、専門性のある人材基盤をもっとしっかり確立する必要がある。そのためにはアーツカウンシル機能が非常に重要になってくるということで、アーツカウンシル機能の改善についての議論を進めてまいりました。

12ページに参ります。12ページの真ん中よりちょっと下、人材の多様化と伴走支援・バックオフィス機能ということです。連携強化ということです。文化芸術団体は小さい規模のところも大変多く、そういうところが創作活動にちゃんと集中できるためには、経営、広報、法務、財務、資金調達、データ活用などの面について伴走支援やバックオフィス的な機能を強化することによって、それぞれの団体自体がやらなくても、バックサイドからちゃんとやっていけるような仕組みをつくることが必要不可欠であるということです。

13ページに参ります。プラットフォームづくりとアクセラレーターの育成ということで、そのためのプラットフォームについても議論してまいりました。

14ページです。真ん中辺です。アートの横断的な振興と文化的な場の活性化ということで、これはもうアート振興部会のほうで、やっぱりアート振興のために、美術館に限らないんですが、美術館、博物館のジャンルの多様化、そして組織の多様化と多角化、さらに収入の構造の多角化というものが不可欠であるということを、14ページの一番下ですけれども、議論をしてまいりました。さらにこの点を、16ページ、建築文化の振興ということについても、文化財を含む様々なまち並みの保全と活用ということについて話をしてまいりました。

18ページに参ります。その全て、第1の循環を第2の循環につなげるということで、新たな価値づけとグローバル展開への省庁間連携が不可欠であるという話もしてまいりました。6の(1)です。グローバル市場での価値づけや文化資産流出への対策が取られなければならない。内容は読んでいただければ、詳しく説明をしております。そして、19ページの真ん中で、その全体的な方向づけとして、日本文化のブランディングのための統合的政策が必要であるということを言ってまいりました。ちょっとそこを最後のほうで読みますと、日本文化は、伝統芸能や美術、工芸といった狭義の文化芸術から、食文化、ファッション、観光、生活文化、放送に至るまで、多層的な広がりのある魅力を有しています。その価値は、アジア地域をはじめ世界中から日本を訪れる観光客の激増にも示されるように、国際的に広く認められるようになってきました。しかし現状では、これらの分野はそれぞれ個別に振興されており、日本文化全体として一貫したブランド戦略や国際社会に向けて有効に展開しているとは言い難い。文化、観光、食文化、工芸、放送といった分野を、相互に親密性を持っているので、統合的に戦略を立てることが必要だということです。

最後のところはもう項目だけにしますけども、そのためには基盤的なデータ整備が必要だということを、20ページから21ページにかけて説明しております。また、そのために助成に係るデータベースをきちんと蓄積的に整備する必要があるということで、情報が極めて根本的に重要だという話で全体を締めくくっております。こうした議論をこの間してきて、来年度はこれを全体的にまとめていくという0段階に入るかと思います。

以上でございます。

【島谷会長】吉見委員、ありがとうございました。

世界文化遺産部会の菱田部会長の準備ができましたので、その審議状況と今後の課題について、菱田部会長から報告をお願いいたします。

【菱田委員】菱田ですが、聞こえますでしょうか。

【島谷会長】はい、聞こえております。

【菱田委員】それでは、すみません、失礼いたしました。報告をさせていただきます。世界文化遺産部会における審議状況と今後の主な課題につきまして、次のとおり報告いたします。

世界遺産条約に基づく世界遺産一覧表への推薦の希望があった「彦根城」、資産の拡張推薦に係る事前評価申請の希望がありました「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」について、部会で調査審議を行い、昨年8月に意見を取りまとめました。

彦根城につきましては、近年導入されました事前評価制度を活用して、令和5年9月にイコモスの事前評価に申請、6年10月に事前評価の結果が示されています。その評価結果では、推薦戦略を徳川期日本における大名統治システムの重要性に置いたことを支持するとされ、世界遺産の評価基準(ⅲ)を満たす可能性があるとされました。他方、大名統治システムの運用方法についての説明を充実させることや、比較の指標をさらに広げて、より厳密な分析をすること、そして単独資産で大名統治システムを完全に表現できているかどうかといったような点について御指摘があったところです。

これらの指摘を踏まえて、地元自治体において作成された推薦書案について審議を行いました。その結果、検討について進捗が見られるものの、なお課題が残っているとされ、説明の充実に向けて引き続き取組が必要であるとされました。主な指摘について説明いたしますと、国内の他の城との比較分析の精緻化に関する指摘、また、大名統治システムの説明の精緻化に関する指摘でも、城や大名の範囲など、この概念について説明の充実を図ることが必要だとされました。こういった課題が残っていることから、今後のイコモスの審査を見据えて、推薦書案にあるような単独の資産である申請を行うためには、説明の充実に向けて引き続き取組が必要であるという意見を取りまとめております。

一方、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」につきましては、平成23年の世界遺産登録時の勧告により構成資産から除外されました柳之御所遺跡の追加登録を目指しており、平成24年の拡張推薦について暫定一覧表への記載以来、発掘調査が積み重ねられ、新たな知見が得られてきているところです。しかしながら、平成23年の世界遺産登録に至るまでのイコモスの評価を踏まえますと、柳之御所がどのような価値を物語るかという点について具体的な内容を明らかにする必要があるなど、柳之御所遺跡が世界遺産の評価基準を満たしていると主張するには論拠がまだ十分ではないということから、説明の充実に向けて引き続き取組を進めていただく必要があるといったような意見を取りまとめております。

このような部会の意見を踏まえまして、関係する地方公共団体において、文化庁から助言も受けながら、課題解決に向けた検討がその後進められております。世界文化遺産部会では引き続き、世界遺産条約の実施、関連する調査審議を今後も行ってまいります。

以上、簡単ですが、説明を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。

【島谷会長】菱田部会長、どうも説明ありがとうございました。

続きまして、文化施設部会に移りたいと思います。部会の審議状況と今後の課題につきまして、吉見会長から御報告をお願いいたします。

【吉見委員】文化施設部会長を拝命しております吉見でございます。資料の9を御覧いただきたいと存じます。

これも1枚めくっていただきますと、「今後の文化施設の在り方について~文化施設をハブとした『創造的循環』の形成~(論点整理)」となっております資料がございますので、これに基づき説明させていただきます。一番下の真ん中のところに小さくページ数が出ておりますので、それを御覧いただきたいと存じます。

まず5ページのところで、今日文化施設が直面している課題、これを4つに分けて整理しました。丸1が、施設の老朽化・予算の制約です。現在、日本の全国には約1,800館の劇場・音楽堂、それから約1,300館の博物館が存在しますけれども、その約70%が2040年までに建て替えの時期を迎えると考えられます。しかしながら今日、1館当たりの文化施設費は、1990年代をピークに右肩下がりとなっており、公立博物館費はピークから30.1%に、公立文化会館費はピークから35%に減少しています。極めて多くの文化施設で、老朽化でも、その施設がもう使えなくなっても改修や建て替えの費用を自治体は捻出することができず、施設そのものが閉館されていくおそれがあると予想されます。

2番目は、人口減少社会下における人員不足です。博物館では、常勤職員数10人以下の施設が約8割を超えるほか、活動の中心を担う学芸員を配備していない博物館も多い。また、劇場・音楽等では、都道府県が設置する劇場等の約半数、市町村の約半数以上が専門人材を確保できていないほか、非正規職員の割合は6割弱で推移しています。

3番目、文化芸術の鑑賞機会や施設の数・稼働率等における地域間格差がございます。6ページの真ん中辺です。令和3年度に演芸、演劇、舞踊鑑賞等を行った者の割合は、11都市圏の7.9%に対して、11都市圏以外では4.2%と、大きな開きがあります。そして、全国平均は6.8%なんですけど、東京都は12.8%と、つまり、ここにおいても東京圏とそれ以外の地域で大きな落差があると言わざるを得ません。

次の7ページですけども、4番目は、文化行政や文化施設のミッションの浸透やそれに基づく実践の不足です。ここにおいていろいろ考えるべき点とされてきているのが、指定管理者制度の理解やその活用の在り方について、様々な課題が出てきているということです。これをどうしていくのかという課題が残されています。

他方、ではどうしていくのかというので、文化施設の可能性について様々な議論を重ねてまいりました。そこが次のページからずっと続くんですけれども、まとめの部分だけお話をさせていただきます。12ページの下のほうになります。

2つのことが文化施設において必要であるという結論です。第1に必要なのは、それぞれの地域で文化芸術を醸成していく集まりの場として文化施設を再定義することが必要である。13ページの冒頭ですけれども、第2に必要なのは、文化施設が地域全体はもちろん、さらに広域的なつながりの中で、人と文化、知識、創造性の交流と活性化のハブになっていくことが必要であるということです。前者第1の点は、文化施設にとっての基盤的なものであり、文化芸術が生まれてくる土壌の芳醇化をもたらします。後者、これは創造的循環の第1の環、すなわち文化創造の土壌となる基盤的な循環を土台とし、文化施設に地域の壁を越えて多くの人々が集まるようになることで、施設が世界に通用する作品や新しい価値を生み出す拠点となることを意味しています。これらを総合して、この部会においては、四角の中にくくっておりますけれども、文化施設は、多様な人々の対話と交流を促進し、外にも開かれたハブの役割を果たすことで、地域社会の文化的土壌の芳醇化と、付加価値の創出という2つの機能を連動させる創造的循環を形成し、多様な個人のウエルビーイングの向上と、心豊かで活力ある社会の持続可能な発展に寄与する役割を果たすものであると考えてまいりました。

では具体的に、その文化施設が果たすべきミッションは何かというので、5つ掲げております。これが15ページになります。丸1が保存・継承(コンサベーション)、丸2が創造・企画(クリエーション)、丸3が提示・価値づけ(プレゼンテーション)、丸4が育成・促進(インキュベーション)、そして丸5が連携・参画(エンゲージメント)ということです。そして、項目のみになりますけれども、そのためには4つの機能強化が必要であるということで、丸1が地域のニーズに応じた活動の高度化、丸2が、利用者が誰一人取り残されない多様性・包摂性の向上、丸3が、基盤整備やテクノロジー活用による持続可能性の確保、丸4が、施設の中核を担う人材の確保・育成です。

では、それをどういうふうな仕組みでやっていくのかというところが18ページから19ページの議論になります。施策の方向性として、やはりジャンルの異なる文化施設間のネットワーク連携が必要だということで、19ページに出ておりますけれども、文化施設連携プラットフォームという概念を出し、そしてそのような仕組みをつくるべきであるという方向で、この中身はこれから詰めていくことになりますけれども、19ページ以降の議論で詰めさせていただいております。この辺りの議論、それでは具体的に文化施設連携プラットフォームとはいかなるものなのかということについての議論は、来年度もうちょっと具体的に詰めていきたいと考えております。

以上でございます。

【島谷会長】吉見部会長、どうもありがとうございました。

それでは、これまで各部会・分科会から御報告をいただきましたが、これに関しまして御質問や御意見がありましたらお願いをいたします。どの部会、分科会からでも結構でございますので。

それぞれ関連性がある大きなテーマを各部会として進行しておりますが、どれも経済と文化の循環であるとか、大きな問題を抱えておりまして、1つの部会に質問するというよりも、全部が連携していかなければいけないということになろうかと思います。美術品補償制度にしましても、ある一定以上の保険料でないとこの補助は出ないということだとか、いろんな課題はあろうかと思いますが、そういったことで思いつくものが、この場で討議したほうがいいというものがありましたら、遠慮なく発言をしてください。あるいは、言い足りなかったことがあるということがありましたら、吉見先生あたりは随分早口で説明いただきましたので、ここだけは追加で言っておきたいということはございますでしょうか。大丈夫でしょうか。

岩﨑先生、美術品補償制度部会においては、金額の問題とか、何かそういったようなものは全く出ませんでしたでしょうか。

【岩﨑委員】基準についての議論も幾つかなされていまして、委員のほうからは、やはりその金額の問題はもう少し検討してもいいんじゃないかという意見が出ています。

【島谷会長】これは今後の課題だろうと思いますが、政府の予算が限られている中でどこまでやるかということだろうと思うんですけれども、よりいいものを国民に見せるためには、そういったリアクションを政府がしてくださらないと、だんだん尻すぼみになるという形になろうかと思いますので、ぜひ、部会で検討した上で、さらに大きな場で検討することが求められると思います。

【岩﨑委員】委員の先生方からは、特定の大規模な美術館、博物館でないと申請しにくい構造になっている、と。予算規模とかそういう問題で。ですので、金額を少し落とすような、そういうふうなことが大きな課題であるというのは、委員の皆さんの一致したご意見です。

【島谷会長】一定金額を超えない限りは申請できないわけですので、そういった仕組みをこれに申請しようと思う人以外にも広げる仕組みがないと、いつまでたっても部会だけでやっていたら解決しないと思いますので、幅広に、文化財分科会のほかの委員の先生方も自分のこととして、その内容について注視していただければと思います。

それから、今回、国語分科会でお骨折りをいただきまして、ローマ字の表記についてまとめていただいたというのは、とてもよかったかと思います。今まで曖昧な状態で動いていたのが、政府の方針というか、分科会の方針としてこういう形になったということは、そこに落とすまでの御苦労等がありましたら、何か一言頂戴できれば。

【森山委員】ありがとうございます。ローマ字の問題というのは、ある意味で絶対正解というのが非常に難しい問題でございました。その中で最適な表記の在り方というのはどういうことかということがあります。ただ、こういうふうに内閣告示を出していただいたことがゴールではなくて、それが社会に広く定着していくことがゴールだと思いますので、今後の普及というのも大きな課題だというふうに思っております。

【島谷会長】どうもありがとうございました。世界文化遺産にしても無形文化遺産にしても、各国との協力体制というか、共通の認識が必要だろうと思います。それで、開催されるところの地域で何か問題が起きなければいいかなというような懸念もありますが、予定されている案件がスムーズに、世界文化遺産においても無形文化遺産についても登録、選定されることを期待したいと思います。

時間は幾らでも必要だろうと思いますが、次の案件がありますので、次に移らせていただきます。

議題2になります。最近の文化行政の動向としまして、文化庁の京都移転後の取組、そして令和8年度文化庁予算、令和7年度文化庁の補正予算について、事務局より報告をいただきたいと思います。珍しく文化庁の予算が、1億ではなくて9億増えたというのは、僅かではあっても、かなり評価できることかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【横井政策課長】文化庁政策課長の横井でございます。まず、京都移転後の主な取組について御説明差し上げます。

先ほどまでの文化審議会の分科会、部会の報告にございましたように、もう先生方におかれましては、政策面を牽引いただく、御指導いただいて導いていただいているところですが、ここで、審議会で京都移転後の主な取組についてお話しするというのは、京都移転うまくいくのかなという、そういうところから、京都移転後、毎年報告させていただいて、移転してから、長官の挨拶にもありましたとおり、3年がたちまして、そろそろこのような報告も卒業してもいいかなと思いながらも、改めておさらいということでさせていただければと思います。

1ページ目を御覧ください。毎年この審議会でも報告させていただいているとおり、文化庁京都移転ということで、2016年、平成28年3月に文化庁の京都移転が決定しましたので、今年で10年となっております。我々2017年、平成29年4月には、先行移転としまして、ちょっと退席しましたけども、松坂審議官が初代の地域文化創生本部の本部長として来て、移転準備をさせていただいていました。その間、文化芸術基本法の成立、それから2018年、平成30年10月には、文化庁京都移転を見据えた文科省設置法の改正というのをさせていただいて、ここが文化庁、1968年から数えて50年目の節目の年にこのようなことをやって、京都移転の準備として、次長2人体制をしたりですとか、あと文化部、文化財部というものがあったのが廃止をさせていただいたとか、文化庁を博物館、それから芸術教育の主な担い手として組織替えをしたというようなことをしております。シミュレーションを重ねて、竣工して、2023年、令和5年3月に京都における業務開始をして、丸3年がたったというようなことでございます。

2ページ目以降、長官の挨拶にもございましたので、ポイントだけというような形にさせていただきますけども、2ページ目、文化芸術を通じた地方創生ということでございますけども、2つの取組と整理させていただいておりますが、真ん中の青の取組1のところ、関係自治体や関係団体と連携した取組の推進というところでございますけども、自治体の方々、経済界の方々と一緒になって成功事例をつくっていくということに注力してまいりました。それから、取組事例2としまして、文化観光推進本部、食文化推進本部という2つの本部を立ち上げて、文化観光、食文化というものを推進するという体制をしておりました。それぞれのイベントごとに何かを取り組むということで、昨年2025年については大阪・関西万博がありましたので、それについていろいろ事業を実施したところでございます。我々繰り返し申し上げておりますのは、京都のために京都移転したのではなくて、全国のために、国のために京都移転をすることが必要だろうということで、地方創生を掲げて京都移転してきたということで、京都、関西での取組を全国への取組にするんだという思いで業務に取り組んできたところでございます。

3ページ目には、まず関西での足元を固めるということで、文化庁、関西広域連合――これは自治体の連合体でございます。それから、関西経済連合会、それから京都で文化庁を応援する応援団のような文化庁連携プラットフォームによる、4者の共同宣言というものを3年前、令和5年7月20日に行って、その中で、観光と文化芸術、産業と文化芸術、暮らしと文化芸術、まちづくりと文化芸術という4本柱で、文化の力で関西、日本を元気にしていくんだということを掲げております。

4ページ目、大阪・関西万博における文化庁の取組ということで、万博の中、外で、日本博2.0という事業で万博を盛り上げるということを取り組んでまいりました。中身につきましては、ここの概要に書いてあるとおりでございます。中でやったものについては4ページ目、それから外でやったものについて、日本の文化資源を磨き上げるということで、全国各地で日本博を展開させていただいたところでございます。

6ページ目でございますが、都倉長官が提唱いたしましたCBXということで、文化芸術と経済の好循環ということを掲げて、我々いろんな活動に取り組んできたところでございます。具体的な内容について7ページ目以降でお示ししておるところでございますが、まず7ページ目、長官からも言及のあったMUSIC AWARDS JAPAN、京都で1回目をやるということで、全世界に注目いただいたと思います。2回目は今年、東京でやることが決まっておりますけれども、1回目京都でやったというのはすごいインパクトを残したと我々も思っております。

8ページ目でございます。MUSIC LOVES ARTでございますが、こちらのほうも、既存の音楽イベントにアートという掛け合わせをさせていただいて、どんな化学変化が起こるかということで、こちらについては引き続き推進してまいりたいと考えております。

京都につきまして、9ページ目以降でございますけれども、せっかく文化庁が京都に来たということで、例えば文化大臣会合、9ページ目でございますが、国立京都国際会館、ロームシアター京都で行わせていただいたり、10ページ目でございますが、これも文化庁芸術祭オープニング公演というものを、東京でやっていたものを初めて京都で開催させていただいたところでございます。また、11ページ目でございますが、昨年の2月、日本遺産10周年という記念式典を二条城を使って、ユニークベニューということで、二条城で行わせていただいたところでございます。

12ページ目、これも昨年、令和7年4月19日でございますが、これまで東京でやっておりました新指定国宝・重要文化財展を京都で初開催ということで、今後、京都のほうでやっていくような形になろうかと思います。

13ページ目以降、取組例2と御紹介した食文化・文化観光本部を設置して、会合を重ねながらどのような成果を出してきたかについては、14ページ目以降になりますけれども、文化観光の推進ということで、まず文化財の所有者の方々に安心して持っていただく、それから修理等をやっていただくときに、お困り事を改善すべく、文化財の活用について、民間人材のコーディネーターを配置したりですとか、活用に関するイベント、セミナーを開催したり、相談窓口を設置するようなことをやってまいりました。また、高付加価値化するための事業を幾つか、ソフト、ハード両面からやっておるところでございます。

また、食文化につきましては、15ページでございますけれども、長官からもお話あったかと思いますが、食文化、どういうことをやってきたかと申しますと、新しく食の表彰制度をやっていくということで、令和8年、来年度から「食の至宝」の顕彰制度を設けておるところでございます。ようやく形になってきた段階かと思います。

また、16ページでございますけれども、文化庁が京都に来て、若手職員も勉強するということで、有志職員による共創・連携活動、京都府、京都市の自治体職員の方々と一緒に、琵琶湖疏水の勉強をしたりですとか、能の学習、体験をしたりというような共創・連携活動にも取り組んでいるところでございます。

以上で京都移転後の主な取組について御説明差し上げました。

続けて、予算も。

【島谷会長】続けてお願いします。

【横井政策課長】はい。続けて予算のほうも説明させていただきます。先ほど島谷会長からもお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。まだまだと思っておりますけど、文化庁の予算のほう、令和7年度1,063億円だったものが、令和8年度予算額1,073億円ということで、昨年度と比べますと9億円の増になっております。また、この注記のところを見ていただきますと、それとは別に国際観光旅客税財源事業としまして224億円、これは昨年令和7年が84億円でしたから、かなりの額が伸びているということですし、令和7年度の第1次補正予算も431億円を予算計上させていただいているところでございます。

2本柱でやっておりまして、そのすぐ下のところの文化資源の持続可能な保存・活用による地方創生の推進ということで、文化財を核とした地方創生を進めるために574億円、それから、世界に誇る多様な文化芸術の創造・発信と人材育成ということで450億円ということで、先ほどのCBXの話ですとか、あと人材育成、それから子供たちへの支援ということで、450億円を計上しております。

2ページ目を御覧ください。まず、文化資源の持続可能な保存・活用による地方創生の推進のところでございますけれども、こちらのほうは3本柱でやらせていただいております。1つ目の柱が、継承の危機に瀕する文化財の修理・整備・活用及び防災対策としまして、245億4,200万円を計上させていただいております。令和7年度補正としましても190億9,900万円を計上させていただいております。

また2番目に、各地の魅力ある文化資源の公開活用の促進等としまして、184億9,700万円計上しております。令和7年度補正でも15億8,300万を計上させていただいているところです。

3番目の柱としまして、文化資源の保存・活用を支える拠点の機能強化ということで、国立文化施設の機能強化のために143億8,200万円、令和7年度補正で9億9,400万円を計上させていただいているところでございます。

3ページ目を御覧いただきますと、こちらのほうは2本柱の2つ目の世界に誇る多様な文化芸術の創造と発信と人材育成というところで、1つ目がグローバル展開、CBXの推進、環境向上等による創造的循環の創出と題しまして、11億1,800万円を計上させていただいているところでございます。2番目に、1番目と対をなすものでございますけれども、創造活動・クリエーター等育成及び海外展開の加速による国際プレゼンスの強化としまして、162億6,600万円を計上させていただいております。令和7年度補正としまして178億8,000万円を計上しておるところでございます。

3番目、多様な文化芸術による社会・経済的価値の醸成としまして、100億8,400万円を計上しております。令和7年度補正でも24億2,800万円を計上しているところでございます。

4番目としまして、文化芸術の振興を支える基盤の強化としまして、国立文化施設の機能強化・充実のために218億7,800万円を計上しております。令和7年度補正におきましても10億6,000万円を計上しているところでございます。

4ページ目は、京都に移転してきたということで、京都的にまとめるとこんな形で、文化観光の推進、それから食文化などの生活文化の振興、文化財の保護・活用、地域文化の振興、国内外への発信強化、芸術文化の振興ということで、ここで書かせていただいているのは、我が国の文化の魅力の再発見、磨き上げ、発信を京都からやっていくということで地方創生を行っていくというような内容でございます。

5ページ目を御覧ください。先ほど224億ついておりますと申し上げた国際観光旅客税を財源とした事業を紹介したものでございます。事業につきましては大きく3つの柱を掲げておりますけれども、地方誘客の核となる拠点の整備としまして74億7,100万円、それからその下、国宝等の文化財の公開促進としまして88億6,200万円、それから右側に参りまして、本格的な日本文化を体験できるコンテンツの造成としまして、地方の文化資源磨き上げ、海外文化プロモーションの強化としまして、60億5,400万円を計上しております。こうした中で、先ほど大阪万博のところでも御紹介申し上げた日本博につきましては、ネクスト日本博という形で、引き続き、この国際観光旅客税の中でやらせていただくということになっております。

続きまして、資料12のほうを御覧ください。令和7年度の文化庁の補正予算の事項一覧でございます。こちらは、予算につきましてはまだ審議中で、予算案ということでございますけども、令和7年度補正予算につきましては昨年12月16日に成立しておりまして、これから成立するであろう令和8年度予算と一体的に使っていくというものでございますけれども、主な項目だけ申し上げると2本柱になっておりまして、1つ目の危機管理投資・成長投資による強い経済の実現としまして、文化財の強靱化ですとか、被災文化財の災害復旧、それから、お祭りなどの地域コミュニティー維持のための地域伝統行事等の支援事業という事業になっております。また、2つ目の柱、生活の安全保障・物価高への対応としまして、部活動の地域展開の事業を掲げているところで、合計431億円ということになっております。

以上で、簡単ではございますが、私のほうからの説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。御質問等ある方いらっしゃると思いますが、この後、各委員から御発言をいただく予定にしておりますので、そのときに頂戴したいと思います。

それでは、今年度最後の総会となりますので、この1年、あるいは今回で区切りを迎える委員もいらっしゃいますので、これまでの振り返りや、今後の文化政策に関しての御意見、先ほどの質問も加えまして、各委員からそれぞれ2分程度で御発言をお願いしたいと思います。またまとめて事務局から最後に御回答をいただければと思います。

五十音順で、まず相澤委員、お願いいたします。

【相澤委員】相澤でございます。1年間、お世話になり、ありがとうございます。

私、国語分科会言語資源小委員会を中心に活動を進めてまいりましたがて、本日お伺いした文化資源、あるいは文化財の保存等を含めた幅広い活動についても、勉強させていただき、感謝しております。また、私は、AIが専門なんですけれども、そういった活動の中でのAIの活用といったことにも思いをはせながら伺っておりました。言語等含めて文化も急速に変化をしている中で、また皆様と一緒に検討を進めさせていただければと思っております。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

では続きまして、岩﨑委員、お願いいたします。

【岩﨑委員】岩﨑です。文化財分科会に所属しておりました。今年度で、この審議会の委員は最終年度となります。文化財分科会では、文化財行政の最先端というのを目にすることができて、様々なことを学ぶことができました。大変ありがたい機会を頂戴したと思っております。

最近の文化行政についてということで少しお話をさせていただきたいんですけども、私は大学の博物館に所属しておりまして、ちょっとマスコミでも話題になりました利益重視という国立博物館の中期計画のことが大変印象に残っております。それはどういうことかと申しますと、少し国立大学のほうが先行してそういう動きが進んでいまして、ちょっと重なっていくものですから、その立場から少しお話をしたいと思います。

国立大学は、基盤的な経費と、それから競争的な資金というふうに予算が分けられまして、基盤的な経費が削られ、研究経費を自ら獲得していくというふうな構造に転換しております。その結果、何が起こっているかといいますと、研究費を獲得するためには成果を上げなければいけませんので、その成果を上げられるというふうなある程度の見通しが立っているもので計画を立てていくというような、つまり、研究の可能性が小さくなっている、そういう問題があります。

そこで、今、大学で何が言われているかというと、昨年はノーベル賞を受賞された方がいらっしゃいましたけれども、20年後、30年後には日本から受賞者は出ないんじゃないかということを、実際理系の先生方などが言われています。つまり、成果主義、それからノルマということをあまりにも重視しますと、研究活動が萎縮していく、縮小再生産のような形になってしまうということが今、国立大学のほうでは起こっている、これが現実だと思います。

国立の博物館の研究員の方々、学芸的な活動をされている方々というのは、優れた能力を持たれた方がたくさんおられていると思うんですけども、ノルマ主義の行き過ぎは博物館活動の萎縮につながっていきますので、その点、健全なというか、適正な博物館活動ができるような、そういう配慮をしていただいて、20年後、30年後の博物館が今よりもよりよいものになっていくような、そういう長期的な視野で文化庁さんには博物館行政を考えていただけたらなというふうに、切に願っております。

以上です。

【島谷会長】岩﨑委員、ありがとうございました。

続きまして、植木委員、お願いいたします。

【植木委員】同志社大学の植木と申します。昨年度に引き続き、国語分科会に所属しまして、言語資源小委員会で大規模コーパス作成に関して様々学ばせていただきました。

再三指摘されていますが、生成AIが言葉に及ぼす影響は計り知れないもので、ネット上には、人間が発した言葉だけでなく、生成AIによる言葉があふれています。今のところは生成AIがつくったものは90%以上の確率で分かるとのことを小委員会で教えていただき、学生のレポートなどを見ている経験上も、確かに何となく分かるのですが、証拠はなくて、ここにおられる多くの先生方も直面しておられることと存じますけれども、教育上も苦慮するところです。コーパスをつくる場合にも、言葉をデータとして収集する際、その言葉は人間の言葉であるべきと思われるわけですが、すると、人間の言葉とは何か、定義も判別も難しくなっていることをひしひしと感じます。言葉で紡がれる言語文化についても、著作権等の問題など、課題は山積しています。

また、私自身は関わっていないところについて差し出がましいのですが、先ほど岩﨑先生がおっしゃいましたように、この2月に示された国立の博物館・美術館の中期目標については胸を痛めております。展示にかかる費用を、運営費交付金など公費ではなくて、入場料など自己収入で賄うように求められ、様々なマイナスの影響が危惧されます。岩﨑先生がおっしゃったことに深く共感するものであります。

こうした逆風もある中で、文化や歴史の大切さを広く訴えていくために、自分自身ができることは非常に限られていますけれども、今後も考えていかなければならないと思っております。本年度もお世話になりまして、誠にありがとうございました。引き続き御指導いただけましたら幸甚に存じます。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

引き続きまして、太田委員、お願いいたします。

【太田委員】著作権分科会の太田でございます。著作権分科会では様々な活動と審議をしてまいりましたが、私個人として一番印象に残っているのは、やはりレコード演奏・伝達権の創設方向での意見書をまとめることができたということでございます。142ぐらいの国が批准している条約に、日本も入ってはいるのですけれども、留保条項を使ってレコード演奏・伝達権については導入していなかったのです。それで、相互主義のために、例えば日本のJポップが海外で演奏されたときにお金が取れないという非常につらい状況が顕在化してまいりました。もちろん権利をつくるということは義務が生じるわけですので、利害が対立し得るので、ここに報告書に書いてありますように、ヒアリングを重ねて、利害関係者の方々とじっくりお話をして、何はともあれ全員からそれなりの納得をしていただけたのではないかと考えているところでございます。これによって、何とか一つ山を越えた、もちろん国会等での法制化というものが最終的には必要なのですけれども、私自身としての役目は、一つ肩の荷を下ろすことができたかなという感じでございます。

著作権に関しては、生成AIがますます問題となって来ております。と同時に、大学で教えている者としては、例えば授業や研修だとかシンポジウムで発表する内容やスライドの叩き台をAIに作らせると、何となく僕より、僕の分析よりもすごい緻密な分析が出てきたりして、じくじたるものがあるときもあります。そういうことで、今後、生成AIも含めて著作権については、時代と社会の変わり目ということで、しかも加速度的な変わり目ですので、山積する問題、あるいはこれから次々と新たに予想もしていないような課題が出てくるのではないかと、それに対して著作権分科会でもそれなりの検討を続けていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

続きまして、黒田委員、お願いいたします。

【黒田委員】黒田でございます。私は退任の挨拶ということでよろしいですね。

【島谷会長】何でも。

【黒田委員】好きなように。

【島谷会長】何でもと言ったら失礼ですけど。はい。

【黒田委員】今期で私の任期が切れると思いまして、今まで長年やってきたんですけど、これで最後だよということになりますので、これで皆様さようならということでございます。少しだけお時間いただいて、自慢話を2点。

国宝建造物というのを2件、誕生させることができました。彫刻とか、海外に比べると、いろいろかかるものですから、あまり喜ばれていないのかもしれないなと思いつつ、私の価値観のままに報告書を書き、2件、あと1件行けないかなと頑張っているところですけど、その2件を国宝に格上げすることができました。多分、建造物って、行かれても分からないと思うんですね。ですから、ここで短時間だけお借りして、そのチャームポイントを2点だけ紹介させていただく。二、三分下さいということですけれども、1つは、江戸時代、承応3年、1654年に建設された八坂神社で、名前は皆さん御存じでしょうし、行かれたことも多いと思うんですが、中を御覧になったことは、ほぼいないと、建造物屋以外では。建造物屋でも中を見て、詳しく見るということはほぼ不可能です。御神社さんの許可を得て、そして調査ですということでやらないと、なかなか拝見することができません。ですので、私が今から申し上げても多分拝観することはできないと思いますが、1つだけ言っておきたいと思います。

八坂神社は非常に大きな社殿で、本殿、拝殿兼ねていると、中心部があって、その周りをいろんな障壁が囲んでいると。非常に大きな障壁が3つあります。正面から3つあります。その障壁ごとに棚があります。内陣と外陣を区切るところ、それから内陣と内々陣を区切るところ、そしてその奥という3か所に棚がありまして、それぞれが神社の機能を担う非常に重要な、上げるのは御神饌ですけれども、棚なんですね。これは八坂神社さんの外見と――外見は朱塗りの社殿で非常に明るい感じなんですけど、非常に奥深いと。最後まで行きますと、地下には泉があってというふうな伝説もあるわけですね。ですから、地上の構造物が非常に複雑なのと、それが地下までに行っていると。

そこに3つ棚があるんです。各境界ごとに棚があってということで、これがもう、その神社としての奥深さと、それから、そこにささげ物をささげて神様にお祈りをするということが非常に丁重に行われているという。だから外観の、北野天満宮さんなんかと比べると装飾が非常に少ないわけですけども、非常に奥深いものを持っているというふうなことを報告書に書くことができまして、国宝に格上げすることができました。

2つ目は、三重県にあります浄土真宗高田派の御本山であります専修寺。ここもお東さん、お西さんと比べると、地域の拠点になっておりまして、そのもともとの起こりは栃木県なんですけれども、教宣拡大という意味では、やはり京都にある2大真宗本山よりは勢いは小さいと思いますけれども、非常に面白い特色を持っているということです。

その特色というのは何かというのがまたなかなかでして、内部に非常に小さい段差がありまして、どうも外陣から内陣、内陣からその奥というふうに、平等ではないんですね。ですから、あらゆる寺院建築に言えることですけれども、権門の社寺建築によることですけれども、身分格差とかそういうのが非常に根本的な意味を持っていて、例えば文化財的な観点からそれをなくしてくださいといったら、その建物の価値観自体がなくなるような感じになっています。というので、そういう身分格差を表すものなんですけれども、もう文化財として肯定せざるを得ないというふうな、文化財の宿命だなと思いますけれども、歴史の保存ということと、その形態の保存ということが決してプラスでない場合もあると、現代の社会に比べてですね。これはヨーロッパでも東南アジアでも日本でも、階級社会を経て形成された長い社会では、伝統的建造物というのはそういう宿命を負うかなと思っております。

この専修寺に関しては、平等であるはずの――本願寺さんなんかだったら平等なのかもしれない。礼堂といいますか、外陣ですね。ここに微妙な段差があって、どうもその段差というのが、そこに来られる御信者さんたちの身分とか、何かそういうものと関わっているらしいということまで突き止めまして、あまりそこを詳しく書くわけにはいかないんですけども、ここも本願寺さん系と比べると非常に古式な感じがあって、そして三重県という――私、三重県の出身なんですけども――地域にも貢献することができたかなというふうに考えております。

それから、今もう一つ関わっているんですけど、これはまだ進展していないので、発言はしませんけれども、そのうちもう一つ国宝が誕生するといいかなみたいな感じで今頑張っておりますので、一、二年注目して、建造物、御覧いただければと思います。今回で、皆様、お名残惜しいですけども、さようならということでございます。ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

河野委員、続けてお願いいたします。

【河野委員】日本消費者協会の河野でございます。私は著作権分科会の委員を務めておりまして、今期は、太田部会長の下で、長年の懸案であったレコード演奏・伝達権について、我が国における取扱いの方向性がまとまりました。実演家の皆様に対する経済的基盤が認められ、強化されることによって、豊かな音楽文化を育む土壌をつくり、また海外からの使用料収入による国際競争力の向上などの効果を考えますと、国としてのその権利の創設というのは、多くの音楽関係者の皆様にとって朗報になったと受け止めております。今後は、関係者の皆様の納得感を伴った円滑な仕組みの構築と、社会や私たち国民に対して、新たな権利の創設に対する理解のために、啓発広報に力を入れていただきたいというふうに思っております。

本日は、各部会からの興味深い報告をたくさんいただいたところですが、私として気になった2点について、簡単に申し上げたいと思います。

まず1つ目は、DXの進化と社会実装のスピード、それと著作権についてについてでございます。デジタル教科書やデジタル図書の普及など、国民や社会にとって便益となる面と、コンテンツの海賊版問題や、創作する側のAIテクノロジー利用という、そのリスク対策など、AIテクノロジーと著作権に関しては時機を失しない、真剣な議論が求められると考えております。

2点目は、先ほどお二人の委員からも御発言があった国立の博物館や美術館の運営について、次期中期目標で収支均衡を目指した数値目標を定めたという点でございます。収益力向上により国費に頼らない財務構造への転換が目的とされていて、自主財源の拡大を目指すことは必要であるとは思いますが、国立の博物館、国立の美術館の役割というのは、文化財や資料、それから美術作品を保管して調査し、未来のために生かすというのが大きな役割であると考えていますので、目標実現を強いるというよりも、専門的な人材派遣や知見の共有など、現場に対する国の積極的な支援をお願いしたいと考えております。

私からは以上です。1年間、大変ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

引き続きまして、髙部委員、お願いいたします。

【髙部委員】髙部でございます。著作権分科会に所属しております。著作権分科会は非常に多様な分野の専門家の方から構成されておりまして、さまざまな立場の御意見を聴くことができました。本日の文化審議会全体の総会におきましては、文化財ですとか文化遺産、それから博物館や文化施設といった、さらに広い角度での検討をされたということで、大変勉強になりました。

本日の国語分科会でのローマ字の表記についての70年ぶりの改定ですとか、著作権分科会における実演家の権利についても、条約ができてから40年近くたった段階で留保を外すといったような形になりましたけれども、日本の文化を発展させるためには、今ある法律とか制度といったものが十分なのかということを常に検証していく必要があると強く感じました。文化庁のほうで「文化芸術立国」という、素晴らしいスローガンを掲げていただいております。地方創生をしていく、そしてそれが日本の立場で国際的にもアピールできるというような、そういう世の中にしていくために、文化審議会のほうがお手伝いできるということを大変喜ばしく思っております。1年間大変お世話になりました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

続きまして、千住委員、お願いいたします。

【千住委員】作曲家の千住明でございます。私は著作権分科会に所属しております。本当に今回、レコード演奏・伝達権の創設が望ましいという報告書をまとめられたということは、我々にとってみれば残された宿題であったと思います。著作隣接権の中の一部だったと思います。これはどういうことかというと、例えば演奏会や何かで演奏された演奏家に対しては隣接権が支払われますが、しかし、レコード演奏における、例えば最近では世界中でハイファイバーというようなものがはやっていたりしまして、過去の名盤がレコード等で発売されています。もちろん日本のもので言うとアニメとか、最近の流行りの音楽もありますが、それだけではなくて、日本の歌謡曲、Jポップ、それ以外にもジャズ、クラシックの人たち、昔の演奏家の人たちのレコードというのがとても売れて、わざわざ日本まで買いに来る人たちもいます。そういう人たちに対するやはり当然の権利が今やっと認められようとしておることは、音楽家としてありがたいことです。私は作曲家で、演奏もいたしますが、作曲家というものは、演奏家がいてくれなければ、それを広めてくれる人はいません。全てにおいてこれがとても大切なことだったんじゃないかと思います。

取り残されたものもありましたが、また今、どんどん新たに出てくるものもあります。特にこの著作権分科会においては、いわゆるスピード感を持って、本当に人が財産、作品が財産ということを、これから本当に迅速に皆さんにお話ができればいいなと、とても思いました。1年ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

では、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】田中です。私は、文化経済部会と文化施設部会に参加しております。両方の部会長をされています吉見部会長の下で、この1年間はかなり突っ込んだ議論ができたのではないかというふうに思っています。美術館、博物館、広く言えば文化施設、まずその本質的な在り方についてきちんと議論ができたと思っています。もう一つは、新たな役割というものについても議論できたかなと思っております。本質的な在り方といいますのは、そもそも文化施設、あるいは美術館、博物館というのは何のためにあるのか、そしてどうあるべきなのかというようなこともきちんと議論できたと思っておりますし、新たな役割というのは、社会課題の解決にどんな役割を果たすのか、あるいは地方の創生というものにどんな役割を果たすのかということ、そういったこともかなり具体的にきちんとまとめることができたのではないかというふうに思っております。

次のステップとして重要なことは、では、そうしてまとめた本質的な在り方や新たな役割というものを、どのような文化施策に、実際の施策にまとめていくかということだというふうに思っております。これは文化審議会のようなところのみで狭く議論するのではなく、もっと広い場で様々な御意見を伺いながら、さらに議論をしていって、施策というものがつくられていけばいいというふうに思っております。

以上になります。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

では、中江委員、お願いいたします。

【中江委員】国語分科会ローマ字小委員会に所属しております中江有里です。このたび内閣府で一つの節目に決着したということ、本当に長らくというか、時間はかかりましたけれども、本当によかったなというふうに思っています。ローマ字というのは、あまりに日常に溶け込んでいて、なかなかどこが何の問題があるのか、不具合があるのかということを私自身も正直、気づいていませんでした。このローマ字小委員会の中で様々に、ローマ字のつづり方について問題提議をする中で、日本語を母語としない方や外国の方々にとってローマ字というのは、日本にアクセスする、日本を理解するための窓のようなものなんだなということに気づきました。一方で、日本人としてもローマ字でしか表現できない言葉、あるいは名称であったり地名であったり、そういったものが多くあり、それを通じて海外の方々に日本というものを分かっていただける、そういうふうにできるすばらしい共通言語というか、そういうものがあるということにも気づきました。

私は野球がとても好きなので、せんだってのWBCをずっと見ていたんですけれども、WBCで日本人選手が登場してきます。日本人の名前は全てローマ字で表記されるわけですけども、そういった形で、大谷さんがいて、鈴木誠也がいて、そうやっていろんな固有名詞がローマ字で表記されて、それがアナウンスされるときに、何とも言えない高揚感というか、名前というのは共通言語として、そしてまたローマ字でなければ、なかなか外には、日本語でない、日本でない場所で通じ合えないけれども、でもこうやって分かるんだなということはとてもうれしいなと思いましたし、ローマ字はまだまだ、先ほど森山委員がおっしゃっていたとおり、これが広くやはり世に定着して、迷いなく使っていただけるようになるまではもう少し時間がかかるかもしれませんけれども、そういうふうな方向性を示せたということは、本当に私自身もこのローマ字小委員会に所属していてよかったなと思った出来事です。

本当に1年間お世話になりました。ありがとうございます。

【島谷会長】中江委員、ありがとうございました。

続いて、野嶋委員、お願いいたします。

【野嶋委員】アジア太平洋無形文化遺産研究センターの野嶋です。私は無形文化遺産部会に関わっていますので、その観点から少しだけお話ししたいと思います。

今年度、部会では提案案件を決定するための議論が続きまして、大変忙しかったですけれども、充実した内容であったと思います。国内の無形文化遺産保護とユネスコ条約との間のギャップについて少し以前意見を述べたことがあると思うんですけれども、そうしたギャップについても、少しずつではありますが、埋まりつつある方向で議論が進んでいると感じます。今回提案が決定した「神楽」や「温泉文化」が実際にユネスコで審査されるのはまだまだ先ですけれども、これを通じて無形文化遺産に関する理解が深まっていくことを期待しています。

「神楽」については、記載されるのは国指定のものに限られますけれども、未指定のものを含め、各地で継承されている多様な神楽の継承につなげることが重要ですので、リストの記載の有無に関わらず、全ての神楽が無形文化遺産であると言えるような、何らかの仕組みというか、仕掛けというか、そうしたものをこの先、文化庁としても検討いただければと思います。

「温泉文化」については、ユネスコ条約が対象としている無形文化遺産には様々な実践が含まれているのだということを国内に向けて周知する、非常によい機会になると思っています。また、これを機に観光資源としての地域の様々な伝統文化等への関心も高まるということで期待はしていますが、同時に、オーバーツーリズムですとか経済活動に伴う文化資源の乱用など、ネガティブな影響にどのように対応していくかということをあらかじめ十分に検討していく必要があると思っております。

最後に、SDGs関連の国際動向として、近年、有形、無形、自然遺産や環境といった既存の文化政策の区分を超えて、あらゆる遺産を包括的に捉え、地域が主体になって保護、継承していくための議論に注目が集まっています。この点については、文化庁でも有形、無形の相乗効果に関する情報収集を始めておられるので、今後の発展に期待しているところです。また関連して、日本には文化財活用計画ですとか地域計画ですとか、ふるさと文化財の森のようなすばらしい取組が多く実践されていますので、こうしたことを国際的にも積極的に発信することで、日本の文化政策の認知向上に資するのではと思っております。

今年度1年、ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

ちょっと私の進行がうまくなくて、時間が切れてきそうになっていますので、委員の先生方、このキャッチボールをする、意見を言うというのは一番重要なところではあるんですが、2分を厳守していただければありがたいと思います。

続いて、菱田委員、お願いいたします。

【菱田委員】菱田です。世界文化遺産部会に所属しております。先ほどは失礼いたしました。

世界遺産はちょっと置いておきまして、文化遺産あるいは歴史文化の役割ということで、少しだけ所感を申し述べたいと思います。といいますのも、私自身、割と地域が衰退しているといいますか、人口減で苦しんでいるような地域での仕事が多いものですから、そういう中で、やはり歴史文化の重要性というものを痛感しております。固有の歴史文化というものが地域のシビックプライドの醸成につながる、あるいはそれが他の地域の人たちとのつながりの一端になっていくということを、いろんなところで目の当たりにしてきました。

先ほどお話にも出てきましたが、文化庁の取組の中では文化財の保存活用地域計画というのを各自治体に策定を進めるという事業、これがとても重要ではないかというように思っております。文化財の地域での活用、あるいは教育への活用というものを進めて、その地域地域の歴史文化への関心というものをかなり高めていく効果を生み出しているんじゃないかなと思っています。今進んでいる県、滋賀県とかでは6割の自治体が既に策定しておりますし、静岡、京都、兵庫などでも4割近い自治体が策定しています。これがやはりもっと徹底していくということが重要ではないかなと思っております。その結果、学校、博物館、地域をつなぐ活動というものがより豊かになっていく、そういう方向性が見えているように思いますので、また文化庁のほうとしましても、そういった活動をぜひ支援していただければと思っております。

今年度1年間、どうもありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

続いて、日比野委員、お願いいたします。

【日比野会長代理】聞こえていますでしょうか。

【島谷会長】はい、聞こえています。

【日比野会長代理】政策部会のほうで行っておりました。政策部会のほうでも先ほど報告させていただきましたけども、今後の課題として、評価に多様な視点を取り入れていくということで、定量的なものではなく定性的なものというものが課題としてあります。その中で、今日の他の各部会からの報告の中でも幾つか大変参考になるというか、重要だなと思っている点がたくさんありました。

本当に多様なところで、いわゆる無形・有形の文化財ですとか施設というところの、そのもともとの芸術文化の事の起こりというところには、やはり人間が自然に立ち向かう上での祈りとかというものが大本のところにはあると思います。人間のやはり大変弱い部分というものを強くするための祈りであったり、仲間との協働な活動であったり、それが祭りになっていくわけですけども、必ず災害は起こり、必ず復興はしなくてはいけない、最近、事前復興という言葉もよく聞きます。事前に復興していく、これはイコールいわゆる祭り、昔のことで言えば祈り、祭りを行うということだと思います。文化というものが災害復興につながっていくというのが、もう本当に大本の根源だと思います。

そういう部分でも、文化が、ただ単なる文化のための文化ではなく、しっかり人間の生活を生きていく上では本当に必要なものであるというところの評価ということでつなげていくと、いろんな芸術文化が、今縦割りになっておりますけども、そこの根底の部分として成り立っていくところに在り得るのかなと。そういうことによって、地方である祭り、そこにある特性というものが文化の根源であり、それをきちんとネットワークづくりをしながら人材育成も含めてやることを、文化庁がある京都であるとか、今集中している東京の中での様々な議論を進めていくプラットフォームとしてあるのかなと思っております。そういう面でも、今後もまた政策部会の中でも、いろいろ定性的な評価の多様的な視点を取り入れて進めていきたいと思っております。ありがとうございました。

【島谷会長】ありがとうございました。

松田委員、お願いいたします。

【松田委員】松田でございます。私も今年度をもって文化審議会の任期は終わりとなります。10年間、この審議会に入っておりました。1年目は臨時委員で、それからは正会員の委員になりました。文化政策部会、世界文化遺産部会、無形文化遺産部会、文化施設部会に入りまして、たくさんのことをやらせていただきました。部会長を1つ、部会長代理を2つの部会でつとめましたので、この10年間十分やり切ったと思うと同時に、来年度からは時間が生まれるため、ちょっと楽しみにしております。

いろいろな文化審議会の活動に関わり、本当にたくさん勉強させていただきました。しかし私が一番面白いと思っていたのが、この総会なんですね。この総会で各部会と分科会からの報告を聞くのが一番の楽しみでした。それぞれの分野での最先端の話がこんなに短時間で聞けるというのは、本当に貴重な時間だったと思っています。この総会、もう少し議論が盛り上がればいいんだろうなとは思うんですけれども、それぞれ報告がたくさんありますし、委員お一人お一人の方々からの話も聞きたいので、こうせざるを得ない部分もあるかとは思っております。

島谷会長がおっしゃっていましたが、それぞれの分野がかなりオーバーラップしてきたなというのが、この10年で一番強く感じた印象です。それぞれの専門は深いんですけれども、重なり合って文化政策が展開するようになってきた、それをこの審議会に出ていて感じるようになってきました。

もう一つ強く感じたことがあります。2017年度に、文化政策部会の中で大変面白い、痛快な試みがありました。9つの省庁の方々をお招きし、文化に関わる事業や活動について、それぞれの省庁からプレゼンをしていただくというものでした。文化芸術推進基本計画の第1期を策定するときに、文化庁のみならず、ほかの省庁でどんな文化的な取組をやっているのかを聞こうということになり、厚生労働省、外務省、内閣府、総務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、観光庁、環境省の方々に文化分野についてのプレゼンをしていただいたのですが、これが大変面白かったんですね。そのときは長官も参加されていました。ロジが大変だったと思うんですけれども、それでも、文化は、文化庁だけに閉じていることではなくて、いろいろな省庁が関わっているのだと痛感させられる機会でした。

文化庁だけでも多様な取組があって、それぞれがオーバーラップしてきているんですけど、文化庁を超えた次元でも、文化をめぐって様々なオーバーラップが生まれてきている。それを文化審議会のような場で取り上げ、文化庁が全体をコントロールしつつ、ほかの省庁でやっている動きも押さえられるような機会があるといいのかなと思います。

10年間、大変ありがとうございました。

【島谷会長】松田委員、ありがとうございました。

では、次は森山委員、お願いいたします。

【森山委員】国語分科会の森山と申します。国語分科会に私が初めて関わらせていただいたのは、「分かり合うための言語コミュニケーション」というものの報告からでありました。この「分かり合う」というのは本当に大切なことで、私にとって一つの出発点であったというふうに思います。その後、公用文作成の考え方について議論をいたしまして、これはこの文化審議会から令和4年1月に建議を出していただき、これは内閣官房長官通知の「「公用文作成の考え方」の周知について」という形で現在活用されております。例えば、横書きでカンマにするのか、点にするのか、実際には点のほうが書きやすいのではないかとか、そういったところで、正確で分かりやすく、みんなが使いやすい公用文というのが出来上がっていたのではないかなというふうに思います。

そして、私が関わらせていただいた最後の仕事が、このローマ字のことでありました。これも内閣告示として実施されて、これからローマ字で不便を感じる方がないようになっていけばいいなというふうに思っております。本日もいろいろな文化行政のお話を伺いましたけれども、いろんな日本の芸術文化を発信していくときに、このローマ字というのは非常に大事なものだと思いますので、ぜひいろんなところで活用していただけたらありがたいな、そしてまた広がっていけばありがたいなというふうに思います。

私は一応、今年でもう10年を迎えまして、これからは遠くから、また陰ながら応援したいと思います。「文化施策(ぶんかせさく)」、あるいは文化「しさく」、「せ」と読むのか、「し」と読むのか、昔、迷ったこともございました。どちらも間違いではございませんが、大体役所の皆さんは「せさく」と読んでいらっしゃるようですが、本当に大事なことだと思いますので、また心から応援しております。いろいろとこれまでありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。

続きまして、吉田委員、お願いいたします。

【吉田委員】吉田でございます。私は文化財分科会に所属して、多くの審議をさせていただきました。分科会で、保存活用計画や地域活用計画などの審議に当たりながら、どうすれば市民に文化財の問題を実感してもらえるのだろうか、どのように文化遺産というものを活用していけばよいのかという問題に、日々悩んでいました。そう申しますのも、人口減少による担い手の減少、あるいは開発とのせめぎ合いの問題を、強く実感される日々を過ごしていたからです。

そのような中で、私ごとながら、たまたまこの1か月間、先日まで、パリにコロナ以来久しぶりに滞在させてもらう機会を得、今までも乗り降りをしていたバスティーユという地下鉄の駅で、思わぬ体験をいたしました。バスティーユには、皆さんも御存じかと思いますけれども、フランス革命の襲撃に遭った牢獄の地下の基礎遺構がホームの上に突き出していて、その上に一応解説板はあるのですけれど、触れる、蹴飛ばされるところに、その基礎が、石垣が、出ていました。それを見て、これだと、はっとさせられる思いがしました。パリの城壁を見て以前から思っていましたが、こういう文化遺産というのは、囲われたものではなく、誰にでもアクセスでき、開かれ、開放されているものであるべきもので、またバーチャルではなく、実感でき、体感できるものであるべきなのだということを、強く気づかされました。

いろいろな文化施策の中で、文化庁の取組というのは、私たちも一緒に関わらせていただくなかで、行政的にも推進しますが、市民の協力を得てはじめて推進できるという姿勢で臨んでいると思います。それでは、文化財の価値や活用の大切さを、市民の心の中にどのように根づかせていけるか、その方法、日常性との関わりでどのようにすれはよいか、やはり考えさせられるところがあります。 これからも、こうした日常性の観点を失わず、引き続き文化財の保存と活用について考えさせていただきたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

【島谷会長】続いて、吉見委員、お願いいたします。

【吉見委員】ありがとうございます。先ほどはかなり時間がなかったので、早口でお話ししてしまったんですけど、まず、文化経済部会と文化施設部会、論点整理という文書をまとめておりますので、これは相当な議論をしてまとめてきたものですので、ぜひ御一読いただければ幸いでございます。

その上で、先ほど文化施設のところで申し上げたんですけれども、2040年代には、今ある1,800館の劇場・音楽堂、それから1,300館の博物館、それから、恐らく図書館を入れれば3,500ぐらいあると思うんですけども、合わせて7,000ぐらいの文化施設があるんですけれども、その70%が老朽化して、相当数がもう閉館に追い込まれるということが見えてきているという、この事態というのは相当重大なことだと思います。

そのときにどうするかということなんですけど、一方では、今日の先ほどの御説明では触れなかったんですが、この文書といいますか論点整理の中でも、文化というのは、もちろん文化自身のための価値というのは当然なんですけど、経済面でも、それからソフトパワーといいますか、文化外交的な面でも大変重要なものであると。したがって、こういう文章を書いているんですけど、「このような経済的、文化外交的にプラスの影響の大きい分野に、国家予算がこれまで以上に投入されるべきことは十分な理由があるというのが本部会の基本的な立場である」というふうにちゃんと書いているということは言っておきたいと思います。

ただその一方で、これからの展開というのは、民間の資本をどれだけ文化の中に入れていく仕組みをつくるかという、その基盤づくりはとても重要で、文化の市場規模って全然小さくないんですね。大体観光が34兆、コンテンツが15兆、スポーツが10兆、教育が3兆、放送が3兆とか並べていくと、トヨタとか日産が頑張っている自動車産業と同じぐらいの市場規模が全体としてはあるんだけど、縦割りで見ているからそれが見えてこない。だからいかにそれを見えるようにするかということが重要で、先ほど申しましたけれども、情報的な基盤を含めて、風通しのよさというか、横断的な、横軸で通していくという、先ほど松田委員もおっしゃいましたけども、横軸で統合的に通していく仕組みをつくっていくのは物すごく重要で、そうすると、中央省庁の中でも諸省庁にまたがって文化はあるので、文化庁はある種の旗艦――「きかん」というのは「旗」の「艦」です――だと思うので、規模は大きくないですけれども、中央省庁を横軸で刺していく旗艦的な役割がここにはあるのではないかというふうに思っている次第です。ぜひそのような形で文化施策を考える、我々の部会も考えますし、文化審議会でも考えていっていただければというふうに思っている次第でございます。

ありがとうございました。

【島谷会長】どうもありがとうございました。一通り先生方からの意見を頂戴いたしましたが、丁寧に事務局から御意見を頂戴したいと思うんですけども、時間が来てしまいました。これだけ熱い思いをぶつけられた次期長官をはじめとする皆さん方には我々とても期待しておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

最後に私から一言申し上げたいと思っております。今、吉見先生からありましたけど、博物館の施設、1,300というふうにおっしゃられましたけど、これは登録博物館と博物館指定施設の数でして、実際、博物館は5,800あるんですよね。数え方にもよるんですけれども、だからその除かれた博物館を無視していいのかということがあると思うんですけど、ある程度運営がうまくいく博物館だけに視野を求めるのではなくて、手近にある博物館をどうするか。先ほど来、岩﨑委員、植木委員、河野委員から国立博物館・美術館をどうするのかという意見が出たと思うんですけれども、これは国民並びにマスコミ等が非常に注目していることで、ただ、こういう政府の非常に予算が厳しい状態のときに、しっかり稼げるものは稼ぎなさいというのは当然なことだと私は思っております。その中でどういうふうにして結果を出していくのがいいのかなと思うんですけれども、人件費をその中に入れるのはどうかなというのを以前からちょっと御意見として申し上げていたことがありますが、いずれにしても博物館が自立できるような状況というのをつくっていくためには、いろんな予算的措置も必要かと思いますので、しっかり私も側面から応援していきたいなと思っております。

それで、文化審議会、私もこの3月で卒業ということになります。どれだけお役に立てたか分かりませんが、これにつきましても違う立場で応援をしていきたいと思いますので、ぜひ残られる審議会の委員の皆さん共々、見守っていくし、応援していきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上で本日予定の議事は終了いたしました。今後の日程につきましては、事務局より御説明をお願いいたします。

【秋山企画官】来期の会議につきましては、追って御連絡したいと思います。ありがとうございました。

【島谷会長】以上で本日の会議を終了させていただきます。委員の皆様方におかれましては、1年間にわたり、もしくは10年にわたり、各分科会・部会の審議に御協力、御尽力賜り、誠にありがとうございました。こういった協力をしていただくためにも、皆さん、健康が大切ですので、体に気をつけて、新文化庁の体制も、健康に気をつけて、皆さん頑張っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

担当

文化庁政策課

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