平成24年通常国会 著作権法改正について

1. はじめに

 「著作権法の一部を改正する法律」が,第180回通常国会において,平成24年6月20日に成立し,同年6月27日に平成24年法律第43号として公布されました。本法律は,一部の規定を除いて,平成25年1月1日に施行されることとなっています。
 改正法の概要及び条文は,以下のとおりです(青字の部分にカーソルを合わせてクリックすると,内容を見ることができます)。

改正法の解説については,こちらを御覧ください。

また,改正後の著作権法は,e-govに掲載されています。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
以下,改正法の趣旨及び内容の概要についてご紹介します。

2.改正の趣旨等

 今回の法律改正の主な項目は以下の5点であり,そのうち(1)〜(4)については,平成23年1月に文化審議会著作権分科会において取りまとめられた「文化審議会著作権分科会報告書」等を踏まえ,著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するために行ったものです。また,(5)については,国会の審議の過程において,著作権法第30条第1項に定める私的使用の目的をもって,有償著作物等の著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,自らその事実を知りながら行うこと(以下「違法ダウンロード」という。)により,著作権等を侵害した者に刑事罰を科すこと(以下「違法ダウンロードの刑事罰化」という。)とするための規定の整備を内容とする修正案が提出され,可決,成立したものです。

  • (1)いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備
  • (2)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備
  • (3)公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
  • (4)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
  • (5)違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

3.改正の概要

(1)いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備

いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備については,著作権者の利益を不当に害しないような著作物等の利用であっても形式的には違法となるものについて,著作権等の侵害とならないことを明確にするため,利用目的や要件を一定程度包括的に定めた,以下の[1]〜[4]の権利制限規定を設けております。

  1. [1] 付随対象著作物の利用(第30条の2関係)
     写真の撮影等の方法によって著作物を創作するに当たって,当該著作物(写真等著作物)に係る撮影等の対象とする事物等から分離することが困難であるため付随して対象となる事物等に係る他の著作物(付随対象著作物)は,当該創作に伴って複製又は翻案することができることとされました。(第1項)
     また,複製又は翻案された付随対象著作物は,写真等著作物の利用に伴って利用することができることとされました。(第2項)
  2. [2] 検討の過程における利用(第30条の3関係)
     著作権者の許諾を得て,又は裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,利用することができることとされました。
  3. [3] 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(第30条の4関係)
     公表された著作物を,著作物の録音・録画等の技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には,その必要と認められる限度において,利用することができることとされました。
  4. [4] 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(第47条の9関係)
     著作物を,情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合であって,当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うときは,その必要と認められる限度において,記録媒体への記録又は翻案ができることとされました。

これらのいわゆる「写り込み」等に係る規定については,国会での審議や参議院文教科学委員会における附帯決議において,これらの規定の対象となる具体的な行為の内容を明示すること等により,その趣旨及び内容の周知を図ることとされております。各条の趣旨や内容の概要について,更に詳しくお知りになりたい方は,こちらをご覧下さい。

いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について(解説資料)

(2)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備(法第31条第3項関係)

 国立国会図書館は,絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料について,図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には,記録媒体に記録された著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができることとされました。
 また,当該図書館等においては,その営利を目的としない事業として,当該図書館等の利用者の求めに応じ,その調査研究の用に供するために,自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し,当該複製物を一人につき一部提供することができることとされました。

(3)公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備

  1. [1] 永久保存のための規定の整備(第42条の3第1項関係)
     国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長(以下,「国立公文書館等の長等」という。)は,公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号。以下「公文書管理法」という。)第15条第1項の規定又は公文書管理条例の規定により歴史公文書等を永久保存することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,当該歴史公文書等を複製することができることとされました。
  2. [2] 利用請求に係る規定の整備(第42条の3第2項関係)
     国立公文書館等の長等は,公文書管理法第16条第1項の規定又は公文書管理条例の規定により著作物を公衆に提供し,又は提示することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,当該著作物を利用すること(例えば,写しの交付等)ができることとされました。
  3. [3] 著作者人格権に係る規定の整備(第18条第3項等関係)
     第18条第3項において,著作者が行政機関等に提供した未公表著作物に係る歴史公文書等が「国立公文書館等」等に移管された場合,又は著作者が未公表著作物を国立公文書館等に提供した場合には,国立公文書館等の長等が,当該著作物を公衆に提供し,又は提示することについて著作者は同意したものとみなすこととされました。

 また,同条第4項において,国立公文書館等の長等が,一定の情報に係る未公表著作物を,公文書管理法等の規定により公衆に提供し,又は提示するときは,著作者の公表権を及ぼさないこととされました。
 この他,第19条第4項第3号及び第90条の2第4項第3号において,国立公文書館等の長等が,著作物又は実演を公衆に提供し,又は提示する場合において,当該著作物又は実演につき既にその著作者又は実演家が表示しているところに従って著作者名又は実演家名を表示するときは,著作者又は実演家の氏名表示権を及ぼさないこととされました。

(4)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備(第2条第1項第20号等関係)

第2条第1項第20号において,技術的保護手段の対象に,著作物等の利用に用いられる機器が特定の変換を必要とするよう著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し,又は送信する方式(暗号方式)を加えることとされました。
 また,第30条第1項第2号において,技術的保護手段の回避に係る定義に,特定の変換を必要するよう変換された著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元を加えることされました。
 このことにより,私的使用目的であっても,暗号方式による技術的保護手段の回避により可能となった複製を,その事実を知りながら行う場合には,民事上違法となることとされました。
 この他,暗号方式が技術的保護手段の対象に加わることにより,第120条の2第1号において,暗号方式による技術的保護手段の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等を行った者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとされました。
 なお,暗号方式による技術的保護手段は,具体的には,現在DVDに用いられているCSSやBlu-rayに用いられているAACS等が該当します。

(5)違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

  1. [1] 違法ダウンロードの刑事罰化(第119条第3項関係)
     私的使用の目的をもって,有償著作物等(※)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,自らその事実を知りながら(※)行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとされました。
    (※)「有償著作物等」とは,録音され,又は録画された著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像であって,有償で公衆に提供され,又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいいます。
    また,「その事実」とは,「有償著作物等」であること及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」であることを指し,「その事実を知りながら」という要件を満たさない場合には,著作権又は著作隣接権の侵害に問われることはありません。
      なお,第119条第3項は親告罪とされており,著作権者からの告訴がなければ公訴は提起されないこととされています。
  2. [2] 国民に対する啓発等(附則第7条関係)
     国及び地方公共団体は,国民が違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう,当該行為の防止に関する啓発その他の必要な措置を講じなければならないこととされました。
     また,国及び地方公共団体は,未成年者があらゆる機会を通じて違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう,学校その他の様々な場を通じて当該行為の防止に関する教育の充実を図らなければならないこととされました。
  3. [3] 関係事業者の措置(附則第8条関係)
     有償著作物等を公衆に提供し,又は提示する事業者は,違法ダウンロードを行うことにより著作権又は著作隣接権を侵害する行為を防止するための措置を講じるよう努めなければならないこととされました。
  4. [4] 運用上の配慮(附則第9条関係)
     第119条第3項の規定の運用に当たっては,インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされました。

(6)施行期日

 この法律は,平成25年1月1日から施行することとされました。ただし,

  1. [1] 違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備のうち,国民に対する啓発等及び関係事業者の措置については公布の日(平成24年6月27日)から,
  2. [2] 公文書管理法等に基づく利用に係る規定の整備,技術的保護手段に係る規定の整備並びに違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備(国民に対する啓発等及び関係事業者の措置に係る規定を除く。)については平成24年10月1日から施行することとされました。

4.改正法Q&A

(1)いわゆる「写り込み」(付随対象著作物としての利用)等に係る規定の整備

問1 付随対象著作物の利用に係る改正について,具体的にどのような行為が対象となるのですか。(第30条の2関係)

(答)

 第30条の2第1項では,写真の撮影等の方法によって著作物を創作するに当たって,当該著作物(写真等著作物)に係る写真の撮影等の対象とする事物等から分離することが困難であるため付随して対象となる事物等に係る他の著作物(付随対象著作物)は,当該創作に伴って複製又は翻案することができることと規定されており,具体的には,
・写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,背景に小さく絵画が写り込む場合や,
・街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけではなく,看板やポスター等に描かれている絵画等や流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合
が該当します。
 また,同条第2項では,複製又は翻案された付随対象著作物は,写真等著作物の利用に伴って利用することができることと規定されており,具体的には,
・絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載することや,
・看板やポスター等に描かれている絵画等や流れていた音楽が録り込まれた映像を,放送やインターネット送信すること
が該当します。

問2 検討の過程における利用に係る改正について,具体的にどのような行為が対象となるのですか。(第30条の3関係)

(答)

 第30条の3では,著作権者の許諾を得て,又は裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,当該著作物を利用することができることと規定されており,具体的には,
・漫画のキャラクターの商品化を企画するに際し,著作権者から許諾を得る以前に,会議資料や企画書等にキャラクターを掲載する行為
・映像にBGMを入れるに際し,著作権者から許諾を得る以前に,どの楽曲を用いるかを検討するために,実際に影像にあわせて楽曲を録音する行為
・権利者不明の著作物に関し,裁定制度を利用するか否かを検討するに際し,会議資料や企画書等に著作物を掲載する行為
が該当します。

問3 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用に係る改正について,具体的にどのような行為が対象となるのですか。(第30条の4関係)

(答)

 第30条の4では,公表された著作物を,著作物の録音・録画等を技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には,その必要と認められる限度において,利用することができることと規定されており,具体的には,
・テレビ番組の録画に関する技術を開発する場合に,技術を検証するため,実際にテレビ番組を録画してみる行為
・3D(三次元)映像の上映に関する技術を開発する場合に,技術を検証するため,3D映像を上映してみる行為
・OCR(光学式文字読取装置)ソフトウェアを開発するに当たり,ソフトウェアの精度の向上を図ったり,性能を検証するため,小説や新聞をスキャン(複製)してみる行為
・スピーカーを開発する場合に,性能を検証するため,有名な音楽を再生してみる行為
が該当します。

問4 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用に係る改正について,具体的にどのような行為が対象となるのですか。(第47条の9関係)

(答)

 第47条の9では,著作物を,情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合であって,当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うときは,その必要と認められる限度において,記録媒体への記録又は翻案ができることと規定されており,具体的には,
・動画共有サイトにおいて,様々なファイル形式で投稿された動画を提供する際に,統一化したファイル形式にするために必要な複製行為
・ソーシャル・ネットワーキング・サービスにおける,投稿コンテンツを整理等するために必要な複製行為
が考えられます。

国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備

問5 国立国会図書館からの自動公衆送信等を権利制限することとした理由を教えてください。(法第31条第3項関係)

(答)

 デジタル化・ネットワーク化の進展により情報アクセスの利便性が向上する中,広く国民が出版物にアクセスできる環境を整備するためには,納本制度を有し,所蔵資料の電子化を積極的に進めている国立国会図書館の電子化された資料を有効活用し,インターネットにより広く国民が利用できるようにすることが重要です。
 このため,
[1] 電子化された国立国会図書館の資料のうち絶版等の理由により,一般に市場で入手することが困難な資料を,地方の公共図書館や大学図書館等にインターネット送信し,利用者が閲覧できるようにするとともに,
[2] 公共図書館等に送信された資料の一部分を,利用者に対し一部複製して提供できるようにするため,
必要な権利制限を行っています。

(3)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備

問6-1 暗号方式を技術的保護手段の対象とすることにより,どのような規制が強化されるのでしょうか。(第2条第1項第20号等関係)

(答)

 DVD等に用いられる暗号方式の保護技術を新たに技術的保護手段の対象とすることにより,第30条第1項第2号において,私的使用目的であっても,技術的保護手段の回避により可能となった複製を,その事実を知りながら行う場合には複製権侵害となり,民事上の責任(損害賠償など)を負うこととなります。ただし,刑事罰はありません。
 なお,技術的保護手段の用いられていないCDを私的使用目的で複製すること(例えば,携帯用音楽プレーヤーに取り込むこと)は,著作権侵害とはなりません。
 一方,第120条の2において,
・暗号方式による技術的保護手段の回避を可能とする装置又はプログラムの譲渡等を行った者(第1号)
・業として公衆からの求めに応じて当該技術的保護手段の回避を行った者(第2号)
に対しては,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとなります。
 なお,第120条の2に規定する罰則については,非親告罪となっており,公訴を提起するために著作権者の告訴は必要ありません。

問6-2 今般の法改正により,技術的保護手段の対象となる保護技術とはどういうものなのか教えてください。(第2条第1項第20号関係)

(答)

 今般対象となる暗号方式の保護技術とは,コンテンツ提供事業者が映画などのコンテンツを暗号化することにより,機器での視聴や複製をコントロールする技術であり,現在,DVDやBlu-ray Discなどに用いられています。
 具体的には,記録媒体用のCSS(Content Scramble System)やAACS(Advanced Access Content System),機器間伝送路用のDTCP(Digital Transmission Content Protection)やHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection),放送用のB-CAS方式などが挙げられます。

(4)違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

問7-1 今回の違法ダウンロード刑事罰化に係る改正の経緯や内容について教えてください。

(答)

 平成24年通常国会での著作権法一部改正案の審議の過程において,いわゆる「違法ダウンロードの刑事罰化」を内容とする修正案が提出され,6月に可決,成立しました。
 具体的には,私的使用の目的であっても,有償著作物等(問7-2参照)の場合には,著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(問7-3,7-6参照)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(問7-4参照)を,自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害(問7-5参照)した者は,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとされています(平成24年10月1日施行)。
(※)平成21年の著作権法改正により,私的使用の目的であっても,違法にインターネット配信されていることを知りながら,音楽や映像をダウンロード(録音又は録画)することは,刑罰はないものの違法となっています。
 なお,この刑事罰の規定は親告罪とされており,権利者からの告訴がなければ公訴を提起できないこととなっております。

問7-2 「有償著作物等」とはどういうものなのか教えてください。

(答)

 有償著作物等とは,録音され,又は録画された著作物又は実演等であって,有償で公衆に提供され,又は提示されているものを指します。
 その具体例としては,CDとして販売されていたり,有料でインターネット配信されているような音楽作品や,DVDとして販売されていたり,有料でインターネット配信されているような映画作品が挙げられます。
 ドラマ等のテレビ番組については,DVDとして販売されていたり,オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品の場合は,有償著作物等に当たりますが,単にテレビで放送されただけで,有償で提供・提示されていない番組は,有償著作物等には当たりません。(もっとも,違法にインターネット配信されているテレビ番組をダウンロードすることは,刑罰の対象ではないものの,法律違反となります。)
 (※)なお,例えば市販の漫画本を撮影した動画が刑事罰の対象に当たるのではないかとの問い合わせがありますが,漫画作品自体が録音・録画された状態で提供されているものではありませんので,有償著作物等には当たりません。

問7-3 適法なインターネット送信かどうかはどのように判別すればよいのでしょうか。

(答)

 適法なインターネット送信かどうかを判別する方法として,サイトに「エルマーク」が表示されているかを確認するという方法があります。
 「エルマーク」は,一般社団法人日本レコード協会が発行しているマークで,音楽・映像を適法に配信するサイトのトップページや購入ページに表示されていますので,参考にしてください。 (なお,「エルマーク」は,レコード会社等との契約によって発行されているもので,「エルマーク」の表示されていないサイトにおいて配信されているコンテンツが,全て違法であるということではありません。)

(※)エルマーク
エルマーク

問7-4 違法に配信されている音楽や映像を視聴するだけで,違法となるのでしょうか。

(答)

 違法に配信されている音楽や映像を見たり聞いたりするだけでは,録音又は録画が伴いませんので,違法ではなく,刑罰の対象とはなりません。
 違法となるのは,私的使用の目的であっても,著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画・・・・・・・を,自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為です。

問7-5 「You Tube」などの動画投稿サイトの閲覧についても,その際にキャッシュが作成されるため,違法になるのですか。

(答)

 違法ではなく,刑罰の対象とはなりません。
 動画投稿サイトにおいては,データをダウンロードしながら再生するという仕組みのものがあり,この場合,動画の閲覧に際して,複製(録音又は録画)が伴うことになります。しかしながら,このような複製(キャッシュ)に関しては,第47条の8(電子計算機における著作物利用に伴う複製)の規定が適用されることにより著作権侵害には該当せず,「著作権又は著作隣接権を侵害した」という要件を満たしません。

問7-6 友人から送信されたメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルをダウンロードしたのですが,刑罰の対象になるのでしょうか。

(答)

 違法ではなく,刑罰の対象とはなりません。
 違法ダウンロードでいう「ダウンロード」は,著作権又は著作隣接権を侵害する「自動公衆送信」を受信して行うダウンロードが対象となります。著作権法上,「自動公衆送信」とは,公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として送信を行うこと)のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うものをいい,友人が送信したメールはこれに該当しません。
(ただし,音楽や映像をメールに添付して送信する場合,送信者が,「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」を超えてメールを送ると,音楽や映像のメールへの添付は原則として違法となります。)

問7-7 個人で楽しむためにインターネット上の画像ファイルをダウンロードしたり,テキストをコピー&ペーストしたりする行為は刑罰の対象になるのでしょうか。

(答)

 私的使用に留まる限りは違法ではなく,刑罰の対象とはなりません。
 違法ダウンロードでいう「ダウンロード」は,デジタル方式の「録音又は録画」であり,音楽や映画が想定されています。画像ファイルのダウンロードやテキストのコピー&ペーストは「録音又は録画」に該当しません。

問7-8 違法ダウンロードを刑事罰化することにより,インターネットを利用する行為が不当に制限されてしまうのではないでしょうか。

(答)

 違法ダウンロードに係る刑事罰については,故意犯のみを処罰の対象としており,「有償著作物等」であること及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」であることを知っていない場合には,刑罰の対象とはなりません。
 また,この刑事罰は親告罪(第123条)とされており,権利者からの告訴がなければ公訴を提起できないこととされています。
 さらに,違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の運用に当たっては,政府及び関係者は,インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされています。(改正法の附則第9条や参議院の附帯決議)
 これを受け,警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮するとともに,関係者である権利者団体は,仮に告訴を行うのであれば,事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます。

(以上)

プリントアウト・コピー・無料配布OKマーク

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動