開催日時
平成30年11月24日(土)10:00~18:45
開催場所
マティダ市民劇場(宮古島市文化ホール)
(沖縄県宮古島市平良字下里108-12)
参加者数
約400名
内容
1 開会式(方言による開会宣言,主催者・共催者挨拶)
- ・狩俣良眞(久松中学校)…開会宣言(64.5KB)
- ・髙橋憲一郎(文化庁国語課長)
- ・嘉手苅孝夫(沖縄県文化観光スポーツ部長)
- ・下地敏彦(宮古島市長)
2 危機的な状況にある言語・方言の現況報告
ユネスコ“Atlas of the World’s Languages in Danger”(2009.2)で消滅の危機的にあるとされたアイヌ語,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言や東日本大震災被災地の方言などの危機状況と,危機状況を判定する尺度について報告する。さらに,ネフスキーによる宮古方言の調査記録(宮古方言採集手帖)がロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所で発見されたことが紹介された。
- 危機的な状況にある言語・方言の現状報告(八丈・奄美・琉球)
(国立国語研究所木部暢子) - アイヌ語学習の現状と課題
(北海道大学アイヌ・先住民研究センター北原次郎太) - ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所所蔵
宮古方言採集手帖について
(北海道大学アイヌ・先住民研究センター佐々木利和,北海道大学文学研究科谷本晃久)
3 基調講演「ことばと生きる,ことばを残す」
(国立国語研究所所長田窪行則)
宮古語(宮古方言)とはどのような言葉なのか,その宮古語(宮古方言)を残していける可能性はあるのかということについて。
宮古語(宮古方言)は消滅の危機にある言語であり,言葉は話されなくなったら復活再生は非常に困難である。宮古語(宮古方言)は,相互理解性から見ると,方言ではなく,言語と見なせる。宮古語は,琉球諸語の一つであり,琉球諸語は日本語と姉妹関係にあり,同じ祖語から分かれたと考えられる。紀元3,4世紀~5,6世紀頃に分かれたと考えられることから,万葉集や古事記の時代の日本語よりも古い性質を持っており,古代日本語が残っている。そのため,古い日本語の形を明らかにすることができる。しかし,宮古語がそのまま古い日本語というわけではなく,宮古語を形作っているのは,日本語と琉球諸語の祖語から受け継いだもの,琉球祖語から受け継いだもの,南琉球祖語から受け継いだもの,宮古で新しく発達したもの,宮古のそれぞれの地域で発達したものである。
日本においては,共通語と関西共通語以外は危機言語である。次世代に言語継承をしなくなると言語は消滅してしまう。言語継承をしなくなる原因は,威信言語による言語支配,母語の文化的価値の低下,母語の経済的価値の低下,時代変化への適応不全,他地域との通婚などである。
再生に成功しつつある言語は,学校教育をその言語で行っていて,週1回や2回では使えるようにならない。また,宮古語で考えると,どの地域の言葉を残すのかを決められないという問題や,教育で出てきながら宮古語で表せない概念があることや書き言葉をどうするかという問題もある。共通語と宮古語の二重言語生活を強いることになるが,負担よりも財産になる。
とにかく子供たちに対して使い,聞かせることと,若者が間違った表現をしても非難しないことが大切である。そして,方言を使う人気者が多く活躍することが必要である。
4 危機的な状況におる言語・方言の聞き比べ[1](宮古方言以外)
じゃんけん童歌「お寺の和尚さん」と石川啄木の短歌3首,合計6について,アイヌ語,八戸方言,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,八重山方言,与那国方言に翻訳を依頼し,それぞれの翻訳文を披露し,類似点や相違点を実際に感じ,多様性を実感してもらう。
- ・関根摩耶(アイヌ語話者)
- ・柾谷伸夫(八戸方言話者)
- ・川上絢子(八丈方言話者)
- ・岡村隆博(奄美方言話者)
- ・菊秀史(国頭方言話者)
- ・吉山盛守(沖縄方言話者)
- ・髙嶺幸子(八重山方言話者)
- ・與那覇有羽(与那国方言話者)
5 危機的な状況にある言語・方言の語り披露
八戸方言による南部昔コとアイヌ語のカムイユカラ(神謡)をそれぞれの話者が披露する。
- ・南部昔コ「殿様どそばはっと」,「からやぎの話」,「鯨どぼさま」
(八戸市公民館館長柾谷伸夫) - ・カムイユカラ「リットゥンナ雷神の怒り」,ウポポ
(伝承:鳩沢わてけ)
(伝承者育成事業川上さやか)
6 取組事例報告
沖縄県の取組事例としてしまくとぅば普及センターについて,宮古島市の取組事例として教育委員会及び文化協会から実演を交えて報告してもらう。
- ・沖縄県の取組沖縄県しまくとぅば普及センター長波照間永吉
- ・宮古島市宮古島市教育委員会久貝喜一
宮古島市文化協会会長大城裕子
狂言「附子」宮古島方言版上演砂川幸音,川満愛花,前泊姫奈多,奥平乙斗,平良真海
方言大会表彰者実演下地政吉
7 危機的な状況におる言語・方言の聞き比べ[2](宮古方言9地域)
じゃんけん童歌「お寺の和尚さん」と石川啄木の短歌3首,合計6について,宮古方言圏内の池間,狩俣,大神,荷川取,来間,上野,城辺,伊良部,多良間の各方言に翻訳を依頼し,それぞれの翻訳文を披露し,類似点や相違点を実際に感じ,同じ宮古方言圏内でありながらも多様性を実感してもらう。
- ・伊良波盛男(池間話者)
- ・下地克子(狩俣話者)
- ・久貝初男(大神話者)
- ・狩俣榮吉(荷川取話者)
- ・国仲富美男(来間話者)
- ・宮國サヨ子(上野話者)
- ・砂川春美(城辺話者)
- ・下地政吉(伊良部話者)
- ・渡久山春英(多良間話者)
8 協議「危機言語・方言を継承する―継承を受ける立場から」(1.6MB)
「危機言語・方言を継承する―継承を受ける立場から」というテーマで,宮古方言,アイヌ語,南サーミ語の10代の継承者によるパネルディスカッション。自分たちの言葉を意識したきっかけや学ぶ中での気持ちの変化,学んでいく中での葛藤を共有し,最後に,それぞれの立場から,危機言語・方言の継承のための提言を,継承を受ける当事者として発言する。
- ・石原昌英(琉球大学,進行)
- ・砂川姫奈多(高校生・宮古方言)
- ・関根真耶(大学生・アイヌ語)
- ・Sara Kappfjell(高校生・南サーミ語)
- ・長谷川紀子(名古屋大学大学院,通訳)
9 閉会式
○大会宣言(188KB)
危機的な状況にある言語・方言の保存・継承の機運を高めるため,祖父,孫の掛け合いの形で,消滅の危機に陥った背景を語るとともに,地域の言葉を継承していく決意を宣言。
- ・仲間忠,花城唯,砂川姫奈多
○挨拶
(宮國博(宮古島市教育委員会教育長))
10 特別プログラム
○宮古方言を使った表現活動の実演。
- ・宮古民謡平良裕明民謡研究所
「子宝の唄」独唱(村田かおり) - ・みゃーくふつ漫才「心の処方箋あげます!!」ヒコちゃんみっちゃん
- ・みゃーくふつ落語「ご近所づきあい」招福亭松金
原案:仲宗根優脚色:宮国敏弘 - ・宮古民謡(古謡)與那城美和
「カニスマ」,「豊年ぬ歌」,「豊年世ぬクイチャー」
アンケート結果
回収したアンケートを集計した結果,沖縄県外からの参加者が30%弱,海外からの参加も認められた。
「サミットの内容に満足した」は97%,
「危機的な状況にある言語・方言についての理解が深まった」は95%であった。
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