開催日時
令和2年2月22日(土)10:30~18:00
令和2年2月23日(日)13:30~18:00
開催場所
22日:奄美市AiAiひろば(鹿児島県奄美市名瀬末広町14-10)
23日:奄美文化センター(鹿児島県奄美市名瀬長浜町517)
参加者数
22日:のべ約600名
23日:のべ約750名
内容
◆1日目:2月22日(土) 奄美市AiAiひろば
1 オープニングアトラクション
朝花節,長朝花節,徳の仙美岳節,手まり唄,童歌を披露する。
- ・大笠利わらぶぇ島唄クラブ
2 開会式(開会宣言,主催者・共催者挨拶)
- ・山下茂一(実行委員会会長)
- ・有木正悟(鹿児島県文化スポーツ局長)
- ・朝山毅(奄美市長)
3 基調講演「シマ唄とシマグチ~私の出会った言葉たち~」(鹿児島純心女子短期大学名誉教授 小川学夫)
シマ唄研究の中で出会ったシマ唄に関わる言葉の中から,印象に残っているものを,シマ唄の歌詞とともに紹介し,シマ唄の変遷,シマグチの在り方についてお話しする。
儀礼や祭典の唄は含めず,生活の中で遊びとして歌われていたシマ唄に関わる言葉としては,「うたあしび」,「かけうた」,「うたしゃ」,「じゅーて」,「うたねんご」,「さむせん」,「ちぢん」,「てーこ」,「しるぐい」,「くるぐい」,「きょらぐい」,「やしゃぐい」,「ぐいん」,「なちかしゃ」,「なぐるしゃ」を取り上げる。「ぐいん」,「なちかしゃ」,「なぐるしゃ」といった唄の評語は,評価の観点を示すもので,聞き手の音への感度の良さを大いに感じる。
「恋唄」に出てくる言葉としては,「かな」,「かなしゃん」,「むぞ」,「むぞさ」,「きむちゃげさ」,「かよう」,「ひるやまやこや」,「むぃぬおこさ」,「くちぬしげさ」を取り上げる。「かよう」や「むぃぬおこさ」,「くちぬしげさ」から昔の恋愛の様が想像される。
「教訓歌」につながる言葉としては,「うたはんがく」,「…ごころ」,「あんまとじゅう」,「うやがなしうかげ」,「くくりむちなし」,「ずれなたつ」を取り上げる。奄美では昔からシマ唄を学ぶと学問の半分が得られるという意味で「うたはんがく」という言葉があり,シマ唄の位置付けが見える思いがする。「…ごころ」というのは,「○○とかけて,▲▲ととく。そのこころは××。」というときの「こころ」に当たり,江戸時代に流行した大衆芸人の三段なぞが入ってきたのではないかと想像される。奄美では,女性が支えているという考え方が根底にあり,「あんまとじゅう」のように女性が先に表現されるのであるが,最近はヤマトの「父母」という順番に影響されて「じゅう」を先に歌う唄者も見掛ける。
シマグチはシマ唄があったから残ったと言える。それだけにシマグチを残すためには,シマ唄の元々の形であるかけうたの復活しかないのではないか。すばらしい歌詞を作ろうとする必要はなく,これまで伝わっているシマ唄の歌詞を参考にして,上の句→下の句→上の句→下の句→…と重ねていくことで行うことができる。簡単な言葉のやり取りで楽しむことから始め,今に生きる歌詞を作り上げることになればと期待している。
4 危機的な状況にある言語・方言の聞き比べ①(奄美大島以外)
公的な場面での自己紹介と私的な場としてお土産渡しの場面での発話について,アイヌ語,八戸方言,八丈方言,喜界島方言,徳之島方言,沖永良部島方言,与論島方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言に翻訳を依頼し,それぞれの翻訳文を披露し,類似点や相違点を実際に感じ,多様性を実感してもらう。また,奄美群島に属する喜界島,徳之島,沖永良部島,与論島の方言の特徴についての解説を行う。
- ・関根摩耶(アイヌ語話者)
- ・柾谷伸夫(八戸方言話者)
- ・川上絢子(八丈方言話者)
- ・武藤安子(喜界島方言話者)
- ・盛浩司(徳之島方言話者)
- ・惠スエ子(沖永良部方言話者)
- ・菊秀史(与論島方言話者)
- ・佐久川正次(沖縄方言話者)
- ・末永清(宮古方言話者)
- ・﨑山三郎(八重山方言話者)
- ・眞地保考(与那国方言話者)
- ・松本泰丈(解説:別府大学)
5 協議「ウタを通して伝わることば」
「ウタを通して伝わることば」というテーマで,沖縄民謡の指導者,奄美島唄の継承者,サーミの伝統歌ヨイクの歌い手によるパネルディスカッション。日頃の活動の紹介から始まり,ウタの中のことばについての意識やそれぞれのことばを伝承する上でのウタの意義を当事者として発言する。
- ・石原昌英(琉球大学,進行)
- ・佐久川正次(沖縄民謡・沖縄方言)
- ・中村瑞希(奄美島唄(カサン唄)・奄美方言)
- ・前山真吾(奄美島唄(ヒギャ唄)・奄美方言)
- ・Sten Erick Jörden Stenberg(ヨイク(スウェーデン)・南サーミ語)
- ・長谷川紀子(名古屋大学大学院,通訳)
6 実演披露
危機言語・方言を使った表現活動の実演。
- ・アイヌコント(ペナンペ パナンペ)
アイヌの昔話を,アイヌ語を織り交ぜながらコント仕立てで紹介。民族共生象徴空間(ウポポイ)の開業について告知。 - ・アイヌ音楽(川上容子)
ウポポのメドレー,サマイクルのイム,ユカラ「スマサムピューカー」,イヨンノッカ「レホッネシンタ」。 - ・ヨイク(Sten Erick Jörden Stenberg)
北欧先住民族サーミの伝統歌謡。 - ・ショメ節(川上絢子,茂手木清)
八丈島の代表的な民謡 - ・奄美島唄(カサン唄:中村瑞希,ヒギャ唄:前山真吾)
よいすら節,しゅんかね節 ほか。 - ・沖縄民謡(佐久川正次)
祝い節,油断しるな,ケーヒットゥリ節,村遊び,兄弟小節,ヒヤミカチ節,嘉手久節,唐船どーい。
◇ 1日目全体司会
- ・八城まゆ
◆2日目:2月23日(日) 奄美文化センター
1 主催者・共催者挨拶
- ・髙橋憲一郎(文化庁国語課長)
2 危機的な状況にある言語・方言の現況報告
ユネスコ“Atlas of the World’s Languages in Danger”(2009.2)で消滅の危機的にあるとされたアイヌ語,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言や東日本大震災被災地の方言などの危機状況と危機状況を判定する尺度について説明した上で,各地で行われている継承のための取組を具体的に紹介する。
- ・危機的な状況にある言語・方言の現状報告(八丈・奄美・琉球)
(国立国語研究所 木部暢子) - ・アイヌ語学習の現状と課題
(北海道大学アイヌ・先住民研究センター 北原モコットゥナシ)
3 サーメ サマースクール体験報告
日本におけるアイヌと同様,同化政策によって言語も文化も失い掛け,差別もされてきた北欧先住民族サーメの言語や文化伝承の場でもあるサーメ学校のサマースクールを体験してきた大学生が,実際に体験し,話を聞いていて感じたこと,気付いたことを報告する。
- ・関根摩耶(慶應義塾大学)
- ・柴田結佳(椙山女学園大学)
4 幼稚園の取組報告
奄美市公立幼稚園研究テーマ「シマに育つ,心豊かな子どもの育成~自然・シマグチ・シマ唄・伝承遊びを通して~」の下,3年間継続して取り組んできた,昔遊びやわらべ歌などを通した郷土教育,方言指導について報告する。
- ・奄美市立名瀬幼稚園
5 シマユムタ伝承活動の取組
「わきゃ島ぬ文化薫る東城校」というキャッチフレーズの下,教育目標「ふるさとを愛し,徳・知・体の調和がとれ,夢や希望の実現に向けて,たくましく生きる児童生徒の育成」を実現するため,ふるさと教育を教育課程に組み込み,方言カレンダーやシマグチかるたの活用,八月踊りや島唄の伝承を通したシマユムタ伝承活動を行っていることを報告する。
- ・奄美市立東城小中学校
6 暗唱「シマグチ教訓カレンダー」
「シマグチ教訓カレンダー」に記されている1日~から31日まで全てのシマグチ教訓の暗唱を披露する。
- ・奄美市立市小中学校
7 沖永良部島の事例報告 ―家族を対象にした取り組み―
潜在話者である親世代をキーパーソンとして位置付け,親子で取り組める課題を設定することで親世代の方言を再活性化し,方言継承につなげていこうとする取組「しまむにプロジェクト」を具体的に紹介する。
- ・横山晶子(日本学術振興会特別研究員・国立国語研究所)
8 危機的な状況にある言語・方言の聞き比べ②(奄美大島各地域)
公的な場面での自己紹介と私的な場としてお土産渡しの場面での発話について,奄美大島の奄美市笠利町笠利,龍郷町赤尾木,奄美市名瀬大熊,奄美市住用町西仲間,大和村今里,宇検村生勝,瀬戸内町手安,加計呂麻島渡連,与路島の方言に翻訳を依頼し,それぞれの翻訳文を披露し,類似点や相違点を実際に感じ,多様性を実感してもらう。また,奄美大島の各方言の特徴についての解説を行う。
- ・今里信弘(笠利町話者)
- ・平久美(龍郷町話者)
- ・保宜夫(名瀬話者)
- ・茂木幸生(住用町話者)
- ・安原ナスエ(大和村話者)
- ・生元高男(宇検村話者)
- ・若林京子(瀬戸内町話者)
- ・湊ムツ子(加計呂麻島話者)
- ・大迫正子(与路島話者)
- ・松本泰丈(解説:別府大学)
9 あまみエフエム ディ!ウェイヴ(特定非営利活動法人ディ!)+シマユムタ伝える会の取組
あまみエフエムのコンセプトの紹介とシマユムタ伝える会が協力している番組「シマグチNEWS シマユムTIME」の実演披露を行う。
- ・渡陽子(あまみエフエム パーソナリティ)
- ・肥後ケイコ(シマユムタ伝える会)
- ・薗弘明(シマユムタ伝える会)
- ・鈴木るり子(シマユムタ伝える会)
10 取組報告総括コメント
「今,何もしなければ,言葉が消滅してしまう」という認識の下,取組報告を分類した上で,「入り口」の取組にとどまらず,楽しみながら使う場を積極的に設けていく必要があるとの総括を行う。
- ・狩俣繁久(琉球大学)
11 学校と地域が一体となって取り組む文化継承活動
奄美市立佐仁小学校におけるシマグチ,シマ唄,八月踊りの伝承活動を紹介する。
- ・奄美市立佐仁小学校
12 閉会式
○大会宣言
危機的な状況にある言語・方言の保存・継承の機運を高めるため,祖父,父親,子供の掛け合いの形で,消滅の危機に陥った背景を語るとともに,地域の言葉を継承していく決意を宣言。
宣言文(128.2KB)
- ・日置幸夫
- ・里村強志
- ・原二葉
○挨拶
- (要田憲雄(奄美市教育委員会教育長))
◇ 2日目全体司会
- ・丸田泰史
アンケート結果
回収したアンケートを集計した結果,鹿児島県外からの参加者が30%弱。「サミットの内容に満足した」は96%,「危機的な状況にある言語・方言についての理解が深まった」は96%であった。
その他
新型コロナウィルス(COVID-19)対策
- ・建物の入り口及び会場の入り口へのアルコール消毒剤設置と消毒呼び掛け
- ・体温・体調の確認
- ・トイレへの殺菌効果のある石けん設置
- ・休憩時等の換気
- ・会場の映像を視聴できるモニターを設置した第2会場設営による人の分散
- ・司会による手洗い,マスク着用等の呼び掛けアナウンス
- ・コミュニティFMを通じた来場への注意喚起
- ・隔離できる控室の準備
など

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