開催日時
平成29年12月3日(日)10:00~18:20
開催場所
北海道大学学術交流会館・小講堂
(北海道札幌市北区北8西5)
参加者数
約240名
内容
1 開会式(主催者挨拶)
- ・西田憲史(文化庁文化部国語課長)
- ・小玉俊宏(北海道環境生活部長)
- ・中村睦男(公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構理事長)
- ・加藤忠(公益社団法人北海道アイヌ協会理事長)
2 基調講演「アイヌ語を現代に広げていく可能性
-『ゴールデンカムイ』をてがかりに」(千葉大学教授 中川裕)
消滅の危機にある言語の復興のためには「威信計画」が大切であり,その一環としての広報戦略は重要である。2016年マンガ大賞を受賞した『ゴールデンカムイ』は,ほかのアイヌを取り上げた漫画とは異なり,リアリティーにこだわってアイヌを描いている。アイヌ語監修者として,漫画の中に出てくるアイヌ語についても,作品の時代や舞台となる地域による方言差などにも留意している。
『ゴールデンカムイ』は,来年にはアニメ化もされ,絵と文字だけでなく,動き・所作や声も加えられることになり,更に多くの人が触れるようになっていく。『ゴールデンカムイ』で描かれているアイヌ文化,使われているアイヌ語への関心を引きつけ,引き込んでいく流れを作ってける絶好のタイミングであり,アイヌ文化の維持・普及のため,戦略を考えていく必要がある。
3 危機的な状況にある言語・方言の現況報告と語り披露
○危機的な状況にある言語・方言の現況報告
ユネスコ“Atlas of the World’s Languages in Danger”(2009.2)で消滅の危機的にあるとされたアイヌ語,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言や東日本大震災被災地の方言などの危機状況と,危機状況を判定する尺度について報告。
- ・危機的な状況にある言語・方言の現状報告(八丈・奄美・琉球)
- (国立国語研究所 木部暢子)
- ・アイヌ語学習の現状と課題
- (北海道大学アイヌ・先住民研究センター 北原次郎太)
○危機的な状況にある言語・方言の語り披露
アイヌ語のユカラ(叙事詩)と,与那国方言の民話及びその民話を引いた民謡をそれぞれの話者が披露。
- ・白老地方 浜クメさんのユカラ(叙事詩)
- (アイヌ民族博物館 山田美郷)
- ・与那国ぬまやーぐゎ物語,与那国ぬ猫小節
- (八重山古典民謡技能保持者 宮良康正)
4 危機的な状況におる言語・方言の聞き比べ
夏目漱石『吾輩は猫である』,『坊っちゃん』,『三四郎』の冒頭文と文部省唱歌「むすんで ひらいて」の歌詞を基にした文,合計11について,アイヌ語,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言への翻訳を依頼し,それぞれの翻訳文をそれぞれの話者が披露し,類似点や相違点を実際に感じ,多様性を実感。
- ・山道ヒビキ(アイヌ語話者)
- ・川上絢子(八丈方言話者)
- ・鈴木るり子(奄美方言話者)
- ・菊秀史(国頭方言話者)
- ・岸本新(沖縄方言話者)
- ・垣花譲二(宮古方言話者)
- ・糸洌長章(八重山方言話者)
- ・宮良康正(与那国方言話者)
5 アイヌ語に関する取組事例報告
子供を対象とした取組事例として平取町から,大人を対象とした取組事例として鶴居村から報告。
- ・北海道沙流郡平取町の事例
- 平取町立二風谷アイヌ文化博物館 関根 健司
- 二風谷アイヌ語教室の子供たち
- ・北海道阿寒郡鶴居村の事例
- 北海道アイヌ協会 川上 竜也
6 協議「危機言語・方言の保存・継承と地域社会」
「危機言語・方言の保存・継承と地域社会」というテーマで,与那国や沖永良部での「言語復興の港」の活動や少数先住民族サーミの教育,ハワイ語復興の取組についての紹介を基に,危機言語・方言が地域における多数派のものである場合と,少数派のものである場合とを比較しながら課題を共有するために協議。
- ・石原 昌英(琉球大学,ハワイ語復興・司会)
- ・山田 真寛(国立国語研究所,言語復興の港)
- ・長谷川 紀子(名古屋大学大学院,サーミの教育)
- ・中井 貴規(国立アイヌ民族博物館設立準備室,アイヌ語)
7 閉会式
○大会宣言
危機的な状況にある言語・方言の保存・継承の機運を高めるため,父,母,娘の掛け合いの形で,アイヌ語継承の決意とお願いを宣言。
(→ 大会宣言本文(106.4KB),大会宣言骨子(87.2KB))
- ・関根 健司,関根 真紀,関根 摩耶
○総評・挨拶
(津曲俊郎(北海道大学名誉教授))
8 北欧サーミに関する解説
「北欧に住む少数先住民族サーメの教育スウェーデン遊牧学校からサーメ学校へ」
長谷川 紀子(名古屋大学大学院)
映画「サーミの血」で描かれている時代を理解するために,スウェーデンにおける少数先住民族サーミに対する教育の歴史を紹介。
9 映画「サーミの血」上映
2016年東京国際映画祭や2017年ヨーテボリ国際映画祭などで多くの賞を受けている映画「サーミの血」は,スウェーデンにおけるサーミに対する同化政策の一面を描くとともに,サーミの少女がアイデンティティーの問題で葛藤する姿を描いており,日本におけるアイヌに対する同化政策やその後のアイヌの人々のアイデンティティーの問題を理解し,考える材料として鑑賞。
アンケート結果
回収したアンケートを集計した結果,北海道外からの参加者が30%超,日本国内在住の外国人の参加も認められた。
「サミットの内容に満足した」は94%(無回答は3%),「危機的な状況にある言語・方言についての理解が深まった」は97%(無回答は3%)であった。

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