講演「落語による文化交流」

テーマ 「落語による文化交流」

講演者 ダイアン吉日(落語家)

中野 それでは,早速プログラムを進めてまいります。
 最初に「落語による文化交流」というテーマで,ダイアン吉日さんより御講演をいただきます。
 簡単に御紹介させていただきます。皆様のお手元にございますパンフレット,こちらにも紹介ございますが,ダイアン吉日さんはイギリス・リバプールの御出身で,英国デザイン学校を卒業後,ロンドンでグラフィックデザイナーとして御活躍されました。その後,バックパッカーをしながら1990年に来日。これまで29カ国を旅してこられた御経験をお持ちです。
 英語落語の先駆者であった故・桂枝雀のお茶子を務めたことをきっかけに,落語を始められたそうです。外国人にもわかりやすいようにと様々な工夫を凝らし,古典落語から御自身のオリジナルや,桂三枝師匠の創作落語まで幅広いジャンルを演じていらっしゃいます。世界を旅した経験をもとに,その経験談や日本に来たときの驚きであったり,文化の違いなどをユーモアたっぷりのトークで,講演会と落語の組み合わせも好評でございます。国際交流関係,生涯学習など落語会以外にも各地で活発に活動を行っていらっしゃいます。
 今日も落語に関する話だけではなくて,日本で暮らす中で得られた知見をお話しくださるそうなので,お楽しみください。
 それでは,よろしくお願いします。

ダイアン吉日 皆さん,こんにちは。
 ほら,めちゃ元気ね,よかった。ありがとうございます。
 私はダイアン吉日です。ラッキー・デイ,ダイアンね。毎日ラッキーですね。さっき言ったけど,私はイギリスのリバプールからやってきました。ビートルズと同じ出身ね。日本に来てもう15年になります。信じられへんな,こんなに若いのにね。びっくりした。そう,8歳のときに来ました。どうした?もっと若く見えるから。よう言うわ。
 本当にアイ・ラブ・ジャパン,日本大好きですよ。特に私は日本の文化が好き,ジャパニーズ・カルチャー。まず,陶芸を習ってました。それから生け花,主芯,ちゃんと覚えたね。それから茶道の勉強も。今,生け花と茶道の師範の免許を持っています。頑張っていますね。もう大好き。それと,着付けも習ってます。着物大好きです。初めて着物屋さんで着物を見たときには,目がどよよーんと飛び出しそうになった。そこまで好きですよ,本当にもう言えないぐらい好き。飾り物にしても美術品ですよね。もうすてき,大好き。今,85着ぐらい持っています。病気かな,やめられない。ほんまに大好きです。帯も40枚ぐらい持っています。家が少しずつ狭くなってる。屋上で寝ないと駄目なことになっちゃうね。できれば私は着付け教室をやりたいと思います。もちろん日本語でやりたいけど,英語で着付けを覚えましょうというレッスンもやりたいと思います。
 たくさん友達がいて,おばあちゃんから,すごいすてきな着物をもらいました。ずっと引き出しに入れっ放しだから,ほこりだらけになっていて,すごいショック。だから,頑張りたいね。教室やったら絶対に来てくださいね。みんなで着物パーティーやりましょうか。それと,着物のつくり方も教えてくれたから,自分の着物もつくれるようになった。最近,ユーズド着物で洋服つくってます。今日の服もつくりました。かばんも帯でつくりました。ちょっと汚れていたらみんなはもう要らないと思っているけど,私は買いますね。イギリスのたくさんの人に着物を贈りました。みんな喜んでる。
 日本に来た理由をまだ言ってないですね。どう,知りたい?実は,ちょっと恥ずかしいから内緒で,侍の彼氏探しに来た。難しい,なかなか見つけられへん。まず大阪城で探して,いない。それから姫路城まで行って,いない。それでちょっとだけ落ち込んでた,侍大好きだから。ちょっと落ち込んでたけど,私はネバー・ギブ・アップ・タイプ,ファイト,ファイトと思って電車に乗って京都まで行きました。よかった。侍いっぱいいますね。映画村知ってる?侍パラダイスですよ。お薦めです。よかったら行ってくださいね。最高。みんなちょんまげしてる。格好いい。
 今日,一番よく聞かれる質問でスタートしましょうか。よく聞かれるから興味あるかもしれないね。一番よく聞かれるのは「どうして日本に来たの」「きっかけは何ですか」。実は私,好奇心で日本へ来ました。子供のとき,いろいろな国に興味がありました。いつもいろいろな国の本読んでました。日本人が出てたりタイ人やフランス人が出てたけど,もうすごい好きだった。だから,いつか,大きくなったら自分の目でいろいろな国を見たいと思ってた,ずっと。  それから,グラフィックデザイナーになりました。グラフィックデザイナーの仕事はめちゃ楽しかったけど,やっぱり落ち着かない,いろいろな国を見たかったから。仕事をやめ,大きなリュックサック買って,これは英語でバックパッカーと言う。これがマイハウスになっちゃった。それで,両親に「ちょっと行ってきます」と言って,イギリスを出ました。そのとき,両親は泣いてた。マンチェスター空港から「行ってらっしゃい」と言って。あのときはリバプール空港はなかった。今はジョン・レノン空港ができました。マンチェスター空港で,お母さん,お父さんは泣いてたけど「後悔しないように今チャンスがあれば行った方がいい」と言ってたから,ありがたいね。それでイギリスを出て,一人で世界を回った。今まで29カ国。1月末になったら,スリランカとモルジブに行くから,31になっちゃうね。もうずっと旅行をやめない。100歳まで生きてても続く。バックパッカーで,最高。
 いろいろな国でバイトをしたり,旅行だけしたり,あちこちに行って,それでニュージーランドのスキー場でバイトをしてました。そこでアメリカの女の子と友達になった。彼女はルームメイトになりました。彼女は1年間日本に住んだことがあって,よく日本の話が出てきました。あら,日本はおもしろそう,ずっと思ってた。でもまた旅行を続けて,半年後ぐらいにまたタイのバンコクで彼女と待ち合わせしてて,また日本の話が出た。それでやっぱり行きたいなと思って。日本は私にはすごく不思議な国だった。イギリスで日本人はまだ少なかったし,日本人の友達もいなかった。だから日本のこと本当に何も知らなかった。聞いたのは侍,芸者,忍者とかそれぐらいで。だから,日本の話を聞いたらもうやっぱり行きたくて,バンコクで飛行機のチケット買って日本に来ました。それは1990年でした。
 それで,ヒッチハイクで日本を回った。本州,四国,北海道,九州,淡路島とか全部ヒッチハイクで回った。治安がよかったからね。今だったらちょっと考えちゃう。けれど,あのときはすごい良かった。すごくいい人にいっぱい出会った。あのとき日本語は全然わからなかった。すし,酒,侍,芸者,忍者,それぐらいね。それで全国回った。本当にみんな優しかった。みんなすぐ車とめて「どうぞ乗ってください,どこまで行きますか」と次の町まで送ってくれた。泊まる場所がなかったとき「うちの家で寝てもいいですよ」とか,「一緒に御飯食べに行こう」とか,すごく感動した。やっぱり日本人はめっちゃめちゃ優しいなと思って,ほっとした。
 それで大阪に戻ってきて,大阪でカナダ人の友達ができた。彼女は生け花を習っていて,生け花の学校を紹介しましょうかと言った。私もともとデザイナーだから,物をつくるのとかデザインするのは好きやから,ちょうどいい,生け花習ったらいつかイギリスで教えることできる,インテリアもできると考えて,それで学校に入って,すごい楽しかったからやっぱり免許を取りたいなと思って,免許を取ったときには,茶道の勉強も始めた。重なるところがあって,茶道も勉強したらいいなと思って。
 それから,家を見つけました。今大阪に住んでいて,アパートじゃない,私の家は古いジャパニーズ・ハウス。戦争前から建っている家で,本当,長屋です。これが大好き。ベッドルームも畳ですよ。わびさびです,私の家。落ち着く。少しずつぼろぼろになってるけど,仕方ないね。将来イギリスに帰っても,持ち帰りたいぐらい好き。少しずつ箱に入れて郵便で送ろうかなと思ってる。
 本当に最初3カ月だけいるつもりだったのに,あっという間に15年たった。ちょっと長い3カ月になりましたね。お母さんびっくりしました。「ちょっと行ってきます」と言ってたのにね。
 それで,この質問もよく出てくる,「どうして落語をしたいと思った?」「どうして落語の世界に入りましたか」。ちょっと不思議ね。本当にそれもラッキーな出会いで,もう運命だった。落語のこと知らなかった。いや,時々テレビで見てたけど,みんないつも早口の日本語でしゃべってたから,全然わからなかった。いつもチャンネルチェンジ,「ああ,わからへん,わからへん,何ですか」と思った。でも,ある日,もう亡くなりましたけど,桂枝雀さん,みんな知ってますよね。桂枝雀さんはよく英語落語をやってました。それで,アメリカとかイギリス,オーストラリアとかカナダで英語落語会やりました。日本では,サンケイホールで英語落語会ありました。そのとき,枝雀さんの英語の先生が偶然に私の友達だった。それで,ある日電話かかってきて,「桂枝雀さんは英語落語をやってますから,お茶子をやってくれませんか」と。お茶子さんはステージ・アシスタントみたいな感じ。パフォーマンスの間に座布団を裏返しにする人とか,そのとき何もわからなかったけど,英語落語が何かわからないとか枝雀さんも知らないとかお茶子わからないと言ったら,「大丈夫大丈夫,着物貸してあげる」と言ったから,「はい,やります。やるやるやる」,それだけで決まった。そのとき自分の着物持ってなかったら,着るチャンスがなかった。だから「はい,やります」と言って。だから,本当に始まるまで落語は何かわからなかった。
 もちろん,枝雀さんは英語でやってましたから,私ずっとステージサイドから見てた。わかりやすい英語で,かわいいしゃべり方で,すごいおもしろかった。そのとき「時うどん」の話やりました。みんな知ってますね,古典落語。結構人気のあるネタ。そのとき私,うどん屋さん見たことなかった。自分の店を引っ張ってる,「うどん屋」とか言ってるわね。見たことなかったけど,パフォーマンスで想像できるのはすごいなと思って。このパフォーマンスはイギリスにないです。スタンダップ・コメディーはあります。落語はシットダウン・コメディーね。もうすごくおもしろいなと思った。景色もないですよね。高座の上に座布団が置いてあるだけ。衣装も着物だけ。使うものは二つだけ,扇子と手ぬぐい。それだけでいろいろなパフォーマンスができるのをすごいおもしろいと思った。想像の世界,イマジネーションの世界。扇子でお酒入れてる,「はい,どうぞ」とかね,サツマイモ「ふふふふー」と,「ああ,見える見える」と思ってて,すごい枝雀さん上手で。
 私は子供のときからパントマイムにすごい興味があった。いつも見てて,ひもを引っ張ったりとか壁をやったりとかすごい好きだったから,落語でいっぱい出てくるね,ジェスチャー。あら,これはすばらしいパフォーマンス。もちろん英語落語だったから全部わかった。ステージサイドから枝雀さんの落語を見ていました。
 3回目,4回目ぐらいから私もやってみたいなと思って,落語の道場に入りました。それで基礎を習った。小道具の使い方とか目線とか,AさんとかBさんとか,それを覚えてから,いきなりワッハ上方*1で出番になりました。めっちゃ早かったです。英語落語をやってる人が少ないから,いきなり「出てください」と言われて,びっくりしました。

*1 ワッハ上方 大阪府立上方演芸資料館の愛称。


   私はもともとすごい恥ずかしがり屋だった。もう信じられへんぐらい。子供のとき知らない人の前でしゃべれなかった,すごい怖がりで。イギリスって毎年,高校でシェークスピアのパフォーマンスやらないと駄目で,先生は選んでいる「オーケー,マクベス」と,私はいつも目を合わせなかった。でも,目を合わせなかったら絶対に選ばれるよね。「はい,ダイアン」「わあ,先生,無理。絶対無理。しゃべれない」といつも言ってたけど,いつも選ばれた。1週間ぐらい食べられないぐらいのパニックになっちゃった。ちょっとだけのせりふでも「無理無理」とずっと言ってたけど,今一人で90分ぐらいしゃべっても全然平気。もう本当になくなっちゃったね,信じられへんね。自分の世界に入ってた方がよかった。バレエが好きだった。5歳ぐらいのとき,バレエの学校に入っててね,自分の世界に入ってたから。すごい私,人を笑わせるのが好きだったから,バレエスクールの友達を笑わせるように自分のダンスやってて,先生がお母さんに電話して「ダイアンはちょっと来てほしくないから,やめてください」とか言って,びっくりしましたね。本当にみんなの前でしゃべるのはすごい大パニックだった。だけど,落語の世界を見つけて,すばらしい出会いと思いました。
 ワッハ上方でやったとき,もちろんみんな英語でやりました。お客さんのリアクションはすばらしかった。思っているよりお客さんが楽しそうに聞いていて,それでやる気満々になりました。それが1998年ね。もっと一生懸命勉強して,それで99年,アメリカツアーをやりました。私と日本人の落語家の男の人4人と三味線のお姉ちゃんとかMCさんとかアメリカに行って,日本の文化を紹介しました。今まで言葉の壁があった。私も日本語わからなかったら日本の伝統芸は余りエンジョイできないと思ってた。だからすごくナイスアイデアと思って,アメリカ人に日本の文化を紹介しようと落語をやって,それと南京玉すだれもやりました。「あ,さて,あ,さて」とか,アメリカ人みんな一緒に歌っていた,「あ,さて,あ,さて」と,すごくおもしろい経験だった。
 それで,日本に戻ってきたときもやる気満々で頑張って,それからイギリスに行って,イギリス人にまた日本の文化を紹介しましょう,落語うけると,ツアーやりました。そのとき初めて自分の両親,私の落語見た。いつも電話で言ってた,「日本で落語をやってます」。お母さんは「ああよかった,頑張ってね。落語,何?」ってね。だから,もう自分の目で見たとき,何かほっとしたみたい。ダイアンは子供のとき絶対に知らない人に話できなかったけど,できるようになった,信じられないと喜んでたね。すごいいい経験だった。
 戻ってきたらいきなりドキュメンタリーの仕事があった。読売テレビとかNHKとかドキュメンタリーをつくりましたね,「ダイアンの落語」。それで仕事が増えました。ほんまにありがたいね。テレビの力で。でも,やっぱり一人でどこまで行くか,リミットがありますね,一人でいくら頑張っても。桂三枝師匠いますね,創作落語をいっぱいつくってるから彼の落語をやりたいなと思って,三枝師匠と会ったときに,どきどきして「すみません,あなたの創作落語を英語でやりたいけどいいですかね,教えてくれる?」。「いらっしゃーい」と言ってくれたから,めちゃうれしかった。今,直接教えてくれてるから,一生懸命やっています。すごい楽しい世界を見付けました。
 でも,気付いたことがあります。落語は日本の文化だけど,若い日本人,子供は,外人と同じぐらい落語のことを余り知らない。おもしろい経験があって,小学校で「日本語の落語とトークしてくれませんか」と話があって,学校に行ったら子供が何百人も座ってた。この辺に先生が座ってて,後ろの方に両親たちが座ってました。落語始まったときに「おお,ミユキちゃん,ミユキちゃん」と言ったら,みんな後ろ見ちゃった。だれと話してるかわからへんかったから,みんなの頭後ろに向いちゃった。びっくりしました。「ああ,そうや。まだ若いから落語のこと知らない」,外人もそうです。「おお,こんにちは」とか言ったら,みな「はーい,こんにちは」と答えたりね。「大丈夫,答えなくていいです」と言って。だから,それに気付いたときにちょっとミニ説明つくりました。「ホワット・イズ 落語」。だから二人がしゃべっているときはAさんとかBさんとか,目線もある。「おお,でかいね,わっ,ボブ・サップだ」とか,「アリさん,アリさんいてる」とか,説明したらうける。
 今落語はミニブームになってる。英語落語もすごいブームになってるけど,日本語の落語もなってる。テレビドラマの「タイガー・アンド・ドラゴン」があったから,また人気になりましたね。本当にありがたい。
 英語落語のいいところは何かなとか考えたとき,まずプレッシャーがない。見に来る,遊びに来るだけ。試験もない,宿題もない,質問とかもないから,本当に見るだけでエンジョイできる。プレッシャーがないから人気ある。100%わからなくても,動きも入ってるし表情もよく使う。それと小道具もあるから,よくわからなくても何とか大体意味がわかる。そやから,すごく便利ね。勉強になると思う。たくさんの友達,英語落語を見に行きたい行きたいと言ってたけど,自信がないと言ってた。わからなかったらどうしよう,私だけ笑わなかったらみんなばれるでしょう。わからないから緊張する。だけど落語を見た後で「ああ,思ったよりわかった。うれしい,すごい良かった」と自信が出てくる。何か難しそうなイメージがあったけど,自分の耳で聞いたら大体わかる。できるだけ私,お客さんに合わせて,余り難しい英語を入れないようにしてます。大体,一番最初の5分ぐらいでお客さんのレベルがわかる。例えば,今日のお客さんはまだ英語の勉強始まったばかりだから,できれば日本語も入れてくださいというときもあるし,今日のお客さんはみんな英語の先生とか留学した人とかだから,普通にしゃべってもいいとか,アレンジできるから,すごく便利だと思う。
 それで,パニックにならないように,私大体最初に「これから英語落語をやりますよ,難しい英語じゃないよ。だけど,どうしてもわからないところがあったら心配しないでね。隣の人が笑ったらまねをしてください。それで絶対にばれないから」。それ言ったらみんなの肩がふーっとなる。私が日本語の落語を見に行くときも同じ問題ある。特に古典落語。最近使わない日本語が出てくるでしょう。時々すごい不安ね。何の話かわからない。最後までわからなかったらすごい寂しいね。だから英語落語は,そうならないようにわかりやすいようにしています。
 難しいところは,古典落語とか日本語の落語で言葉の遊びが多いですよね,似てる単語とか。でも,英語に直したら意味がない。結構難しいところ。だから,意味がないから仕方がない,抜かないと。見たことないもの,例えば,昔の日本人は財布持ってなかった。大体着物の袖からお金を出してたね。私もそれ知らなかった。だから,イギリスでそれやったら,何やってるかわかるかな,すごい心配して。それと,知らないもので言ったら腹巻き,三枝師匠の落語で「お忘れ物承り所」の話で腹巻き出てくる。そのとき,英語でストマック・バンドと言ったら,「ストマック・バンド?どういう意味かな」,マネー・ベルトとかいろいろ考えてたけど,マネー・ベルトと言ったら日本人にわかりにくい。ストマック・ウオーマーと言ったら外人にわかりにくいとか,いろいろ考えないと駄目だった。
 それで,イギリスでやったとき,「宿屋敵(がたき)」の話の中で男の人3人が一緒にふろに入る。ふろの中で話をするところがある。でも,イギリスのふろは長細いふろでしょう。イギリスでその話したら,どうやって男の人3人入るかなとか,すごい変なイメージが出る。だから,そのイメージがはっきり想像できるように説明もちょっと入れないと駄目。日本で戸を開けるときこうなるでしょう(引き戸をあけるジェスチャー),でもイギリスではこうやる(ドアを開くジェスチャー)。これやったら私何やってるかわかるかなとか心配あった。でも,大体大丈夫,みんなイマジネーションで。
 だけど,アメリカで「饅頭怖い」の話やったとき,まんじゅうの説明はちょっと難しかった,見たことないものだから。スティッキー・パンとかスイート・ケーキとかいろいろ言ったら何かみんなの顔色がちょっとクエスチョンマークになってたから,書き直した。「寿司怖い」でやりました。みんなすしのことは知ってるから,すしにしたらみんなわかってうけてた。できればそのままでやりたいときもあるけど,ちょっと仕方がないね,変えないと駄目。みんなが100%エンジョイできるように。
 私は,落語終わったら,たくさんのお客さんと会うの好き,ロビーとかで。アンケートも時々やってる。みんなの意見はすごく大事だと思う。大体みんな「今日は初めて生で落語見た」と言ってる。初めて落語を見たのが英語落語。びっくりしました。へーえ,私が日本人に日本の文化紹介してるみたいな感じで,ちょっといい答え。それから落語はおもしろいから,今度日本語の落語を見にいくと言ってくれてる。それもすごくいいことだと思います。子供も落語わからなかったけど好きになったとか,うれしいね。
 言葉の壁あったから,私も同じ問題で,日本の文化とか日本のお笑いの世界知りたかったけど,言葉わからなかったから行けなかった。だから将来チャンスあれば,日本の中でもいろいろな国でも,日本の伝統芸のコンサートだとかパフォーマンスやりたいと思います。私が説明して,お能とか狂言とか日本舞踊とか,楽器の説明も。これは三味線とか太鼓とか笛,みんな知らないですよ。私の出ばやしは「イエロー・サブマリン」。同じ出身だからね。すごく合いますよ,三味線で,不思議なぐらい。イギリスのBBCラジオからインタビューの電話がありました。私の出ばやしをかけると,みんな笑ってました。「へーえ,三味線で。かわいいな」と。
 言いたいこといっぱいあって,全部言ったら多分一週間ぐらいかかる。まとめるのはすごい難しかったね,考えてましたけど。でも,もう15年たったから日本にはすごい慣れてきたけど,まだまだ知らないこともいっぱいあります。初めて日本に来て,びっくりしたこといっぱいありました。みんなその質問聞くよね,「びっくりしたことなかった?」。今でもある。15年前何でびっくりしたかなと思い出してて,一つは,ただでティッシュもらえるのでびっくりしました。イギリスではないですよ。本当にいいことね。私花粉症だから結構ティッシュよく使います。それで梅田駅,大阪駅の前で20分ぐらいぶらぶらしたら30パックぐらいもらえるよ。知ってる?最近自分の紙袋を持ってきてる「はいどうぞ,入れてください」。すごい面倒くさがりの兄ちゃんたちいっぱい立ってるよね,髪の毛が赤とか紫,髪の毛立ってるようなね。やる気ないね。私いつもうれしそうに「はいはい,どうぞ入れてください」,変な外人。
 それともう一つは,自動販売機でお酒とたばこを売ってたのでびっくりしました。ないですよ。イギリスでお酒の自動販売機があったら,多分だれかが持って帰ると思う,機械を持ち帰り。でも日本で問題になってないでしょうね。子供は飲んでないんですよね。イギリスでそれちょっと危ないね。イギリスの悪口言いたくないけど。
 それともう一つびっくりしたことは,日本に来る前に日本人は恥ずかしがりやが多いと言われた。恥ずかしがりやが多いと言っても,電車に乗って,あいさつなし,名刺交換なしで隣の人の肩で寝てしまうのでびっくりしました。笑うね。「はい,すいません,ちょっと肩貸して」と今日もありました,来たときね。朝早かったからね。時々ひざまで倒れてくるよね。「おまえ,だれ?」。笑いますね。でも,まあちっちゃい人だったから私大丈夫だったけど,この前,大きな相撲さんがダイアンの隣の席に座った。練習し過ぎかもしれないけど眠たくなった。私,ちょうど本読んでました。それで彼は寝てしまった。こっちに倒れてきた。少しずつ私の読んでた本が隣の人の前までいっちゃった。おーい。でも,一番不思議なのは絶対におりたい駅で起きる。あれは不思議ね。深い寝息で寝てるね,「おお,ここです」と,間に合うね。おもしろい。頭に目覚まし時計あるみたいね。結構笑いますね。見るの好き。
 それと,恥ずかしがりが多いと言っても,いつでも,どこでも傘でゴルフの練習する。電車の乗り場でやってるよね。笑うね。
 私は電車に乗る時間が長いので,結構落語の練習してる。頭の中で台本覚えてると,時々思わず声が出てくる。全国で今パフォーマンスやってるから,電車乗る時間は大事。練習する時間とか,自分の世界に入る。頭の中で練習してると,時々声出る。それとトンネルに入ると,前の窓は鏡になっちゃうでしょう。私の顔見たらびっくりする。だれも座ってこないよ,隣に。すごい楽ですよ。よかったらやってくださいね。声出したらだれも来ない。マイペースで,いいことですね。
 もう一つは,粗大ゴミの話。残念だけど,大阪でなくなりましたけど,粗大ゴミ,京都でまだやってますか。やってない。ちょうど日本に来たときに何もなかった。リュックサックだけ。だからめっちゃうれしかった粗大ゴミ。「うわあ,ただで買い物できるのは最高やな」と,友達もみんな喜んでた。だから,粗大ゴミの日の前の日,みんな電話で「何がいいですか,何か探してる?」「ラジオ見つけたらラジオ欲しい」「ああ,わかりました」,「私タイプライター欲しい」「ああ,オーケー,オーケー,探すわ」と楽しみやった。なくなったのはすごいショックだった。一番不思議なのは,生け花の師範取ったときに,夜中に家に帰ってくると,大きな箱あった。開いていたからぱっと見たら,中は生け花の水盤と剣山が二つの箱に。生け花の先生がやめたのかもしれない,それで,要らないと思ったからいっぱい出した。ちょうど免許を取ったから,神様のプレゼントだと思った。「ありがとう」,私のためにあったと思う。持って帰りました。全部きれいでまだ使える。いつか生け花を教えるときも,もう全然大丈夫です,水盤と剣山いっぱいあるから。ほんまにありがたいね。
 これもびっくりした。血液型聞かれること。本当に意味わからなかった。外国に行ったことある人いっぱいいる?みんな行ってる。知ってるかもしれないけど,たくさんの外人は自分の血液型を知らない。だから,いきなり入院したとか病気になってもすぐに病院でチェックされるから,別に覚えなくていい。私も知らない。それで,お母さんに電話して,お母さんもわからへんかった。「ええ,何だったかな」とか言ってて。日本ではみんな知ってる。ほとんど毎日聞かれる。不思議,何でやろうと思って。友達に聞いたらそれで性格わかると言われた。日本では4種類の性格しかないんかなって。考えたら,ちょっとおもろいな。例えばイギリスとかアメリカだったら誕生日でどんな性格になるとかわかるけど,血液型は知らなかった。日本ではみんな知ってますね。子供でも知ってるね。
 それと,日本式のトイレでびっくりしました。どっちが前か後ろかわからへんかった。座ったらめちゃめちゃ冷たかった。足をずどーんと伸ばして。落ちつけない。どこまで本当の話かわからないな。心配してるかもしれないね。でも,好きなのはウォシュレット。ウォシュレットはすごくいい。ボタンがたくさんあるでしょう。遊べる。でも初めてウォシュレット見たとき,日本語わからへんかったから,ボタン押してびっくりした。ウイーン,水がプシュー出てきた。「うわ,何じゃ,これ」と思ってびっくりしました。それで用を足して,またボタン押して,またウイーンの水がプシューと出てきたから手を洗って。違うボタン押したら風が出てくるよね,手を乾かして…。いいですよね,日本のウォシュレット。本当のアミューズメント・スポットね。
 これでもびっくりした,14年前ぐらい。日本に来たばかりぐらいのとき,日本人の彼氏がいました。彼は英語は余りわからへんかった。私日本語余りわからへんかった。ちょっとめちゃくちゃだったけど,初めて彼の家に泊まったとき,まずお父さんがおふろに入って,次はダイアンだった。お湯抜けたかなと思ってプラグ引っ張ったとき,彼が「ノーノーノーノー,このまま入って」と言ったとき,大ショックだったよ。その習慣がないでしょう。びっくりしました。「えっ,お父さんと同じお湯使うの。いやー,何か気持ち悪いな」,この家族めちゃけちと思った。水そんなに高くないのに,もうほんまにびっくりしました。後で,まず体洗ってから入ると説明してくれたから,ああよかったと。今は全然平気,ノープロブレム。あのときはほんまに何か変な汗かいた。それから2年たったある日,その彼氏が急に真剣な顔をして「ダイアン,僕のお墓に一緒に入ってくれませんか」。びっくりした。それプロポーズの言葉でしょう。知らんかった。心中の話だと思った。「おいおい,ちょっと待てよ,早いね」と言ったら,彼は「いや,もう2年たったからもうそろそろやね」。おお,怖い,まだ死にたくないと思ったから,一生懸命逃げた。ぎりぎりセーフ。だからまだ独身。知らんかった?まだ独身ですよ。もったいないね。大丈夫,まだ侍さん探してるからね。これ終わってからまた京都でぶらぶらするね。
 もう日本大好き,来てよかったと思ってるけど,やっぱり生活で驚いたことはいろいろあった,わかりにくいのとか。ちょっとお願いしたいことがあって,一つは,ちょっとだけ暖かくなったら,自動販売機からホットコーヒーがなくなるのでびっくりしました。5月,6月ぐらいから無いでしょう。冷たいコーヒーしか残ってない。寂しい。私ホットコーヒー飲むの大好きだけど,冷たいコーヒーは飲まない。友達に何でと聞いたら「暑くなったら日本人はホットコーヒー飲みたくない」と言った。へーえ,暑くなったら冷たいたこ焼き食べたくなる?無いでしょう。冷たい焼きそばとか。まずぅ。だから,ちょっとお願いね。私のために全国あちこちで一つぐらい残してほしいね。いつかダイアン来るかもしれないから,ダイアンのために。コーンスープもなくなるよ。コーンスープの楽しさあるよね,知ってる?最後のコーン絶対に出てこないね,いくら頑張っても。掃除機で頑張ったけど出てこなかった。コーンスープ・オリンピックしようかなと思ったよね。出てくるかな,だれが,ワールド・チャンピオン。
 それともう一つお願いしたいことは,電車の冷房と暖房のきつさ。きついでしょう,びっくりするぐらい。日本の夏はイギリスと比べたら信じられない暑さ。日本人には普通かもしれないけど,38度とか9度まで上がるときあるね。だから,私いつもタンクトップとかショートパンツで。でも電車に乗ったらアラスカより寒い。びっくりするよね,鳥肌立つね。歯もがちがちになってる。でも逆に,冬になったらたくさん服着るでしょう。それで,電車に乗ったらインドより暑いね,ほんまに。もう知ってると思いますけど,私すごい暑がり。世界一暑がりですよ,私。暑さに弱いから我慢できない。電車に乗ったら,もうこれちょっと暑過ぎるから,私,服1枚ずつ脱がなあかん。いつもタマネギみたい。ちょうど「あっ,気持ちいい」と思ったら「ああ降りる駅やな。それでまた着ないと」ほんまに忙しい。一番我慢できないのは座席の暖房。足の裏。ああ,我慢できない。思ってますよね,ああ,よかった,私だけじゃない。子供もよく言ってるよね,「足,痛い痛い,熱い」。もう焼き鳥じゃない,焼き足になるね。我慢できなかったときがあったから,自分のかばんを座席と足の間に入れました。後で化粧バッグあけたら,化粧全部溶けてた。口紅飲めるぐらい。びっくりしました。ちょっと熱過ぎるね。
 だけど,感動したこといっぱい見つけた。一つは,これ日本人気付いているかどうかわからないけど,便利なもの見つけました。外人が日本に来たとき,日本語わからなかったらレストランに入るのは結構怖いこと。メニュー読めなかったら何頼んでるか,結構怖いですね。時々写真が付いてるけど,写真がなくて日本語だけで書いてあるとき,ちょっとパニックになるね。だけど,レストランの前のショーウインドーにろう細工あれば言葉は必要ないですよね。それ見たとき,すごいすばらしいアイデアと思った。ほかの国で見たことない。ほかの国にあるかな,ろう細工。ないですよね,見たことない。すばらしいアイデア,よう考えたなと思って。言葉の壁壊す。言葉なくても何かウエイターさんと一緒に行って「ディス・ワン,ワン。ディス・ワン,ツゥー・アンド・コーヒー」で注文できるからすごい楽。ほんまにありがたいね。そのデザイナーに会いたいぐらい。本物みたいで,本物よりちょっとおいしそう,大体ね。時々ほこりだらけとか,色変わってきたりとか。一番好きなのはフォークからスパゲティー落ちてきてるよね。どうやってつないでいるのか,あれ,おもしろいなあ。すごい好きになった。だから,欲しくなりました。専門店で売ってるの知ってる?ろう細工の店。私自転車で行った,道具屋筋まで。それで,ろう細工の店見つけて,パラダイスだったよ。何でもある。でもびっくりした。思ったより高いですよ。どうしても欲しくなったから梅干買った。梅干1個800円もしたよ。でも,欲しかったから買っちゃった。それでポケットに入れて自転車で帰った。後でチェックしたら,なかった。ポケットから落ちた。どこかで落とした。大ショックだった。だれかが私の梅干見つけて食べたら「ええ,何やこれ,味ないやん」。ほんまにそれはよう考えたなと思って,すばらしい。世界中にあったらみんなすごくうれしいと思うね。  もう一つ,ちょっと関係ないけど,褒めたいのは郵便局。手紙絶対に来るね。イギリスの郵便局すごい中途半端ですよ。来たらラッキー。「ああ,手紙来たよ,よかった,半年前送ったけど」。ああ,そや,3人いる私のファミリー。お姉ちゃんと私。妹もいる。私真ん中ね。大体一番うるさいの真ん中ね。みんな旅行するの好きで外国に行ったら写真付きのはがき送りますね。お姉ちゃんがギリシャに行ったとき,私の住所を持っていくの忘れた。はがきに書いたのは「ダイアン,大阪,ジャパン」。届いた。信じられへんでしょう?よう見つけたねと思うわ。毎日郵便局さん探してたかもしれない。お姉ちゃん笑ってました。  この質問もよく出てくる,「日本でおもしろいエピソードがありましたか」。いっぱいありますよ。一番よくあるのは言葉の間違いとか勘違い。例えばコンビニに入ったら,みんないつも「いらっしゃいませ」と言うでしょう。意味わからなかったから友達に聞いたら,「ウエルカム」と言ってると言うから,ああそうか。だから,いつもコンビニとかレストランに入ったとき,「いらっしゃいませ」と言われたら,「サンキュー」と言っちゃった。みんなびっくりしましたね。返事しなくていいよ。もうずっと私「サンキュー」と言ってたね。変な人やな。
 そして,こんな間違いもあった。ミーティングで男の人が部屋に入ってきました。私,日本語で頑張ろうと思って,「どうぞ座ってください」と言うつもりだったけど,間違えて「どうぞ触ってください」と言っちゃった。彼,めっちゃうれしそうだよ,「ああ,いいですか」。あんな間違いは1回だけ。経験で覚える。
 日本に来たばかりのとき,英字新聞買いたかった。友達が「大きな駅のキヨスクで売ってますよ」と言った。キヨスク,読売新聞と覚えたらだれでも何か手伝ってくれると言ったから,読売新聞と手のひらに書いた。それで梅田に行って,すごい広い駅でびっくりしました。だから,探すよりだれかに聞いた方が早いと思って,それで聞いたら,女の人がいてました。「すみません,読売新聞」と言ったら,彼女私の手をつないでずっと10分ぐらい一緒に歩いてました。日本でキヨスク余りないのかなと思って。彼女は指を差して「はい,ここです」と言った。読売新聞社まで連れて行ってくれた。びっくりしました。気付いて恥ずかしくなって,日本語できなかったから「サンキュー」と言って入りました。スタッフみんな立って「いらっしゃいませ」。恥ずかしい。新聞買いたいだけと英語で言ったら,みんな笑ってました。ただで2冊もらいました。「お土産です」と言ったね,ほんとに。
 この話も本当の話,アヒル。英語でアヒルの言葉知ってる?ダック。そうやね,アヒルはダック,duckね。その日本語を知らなかった。ある日私,電車の中に傘を忘れました。めっちゃ大好きな傘だった。紺色で,アヒルの絵がいっぱい描いてありました。なくしたのがすごいショックだったけど,あきらめないで難波駅の公衆電話から梅田の忘れ物承り所に電話して,電話番号教えてくれた。それで,電話に出た人すごい優しかったけど,余り英語わからなかった。私日本語余りわからへんかった。こういう感じだったよ。「エクスキューズ・ミー・アイム・ルッキング・フォー・マイ・アンブレラ」「アンブレラ,ああ,傘か。何色ですか。ええと,ホワット・カラー」「イッツ・ブルー」「ああ青色,オーケーオーケー」「ダーク・ブルー」「ダーク,ああ紺色,オーケー」「ダーク・ブルー・ウィズ・ダックス・オン・ネーション」と言った。「えっ,ドッグス。ああ,犬か」「ノーノーノー,ダックス」「ダックスは何かな,ダックスは何ですか」「アイ・ドント・ノー・イン・ジャパニーズ・ダックス」「わからん」「泳ぐ鳥」「えっ泳げる鳥。ああわかった,白鳥」「ノーノー,ダックス」「いやわからん」「くわっくわっ」「何じゃそれ」「くわっくわっ」「わからん,もっと大きい声で」「くわっくわっ」。想像できる,難波駅の真ん中で外人一人でくわっくわって言ってるんやけど。危ないでしょう。それで恥ずかしくなって梅田の事務所に行ったら,私の大事な傘がありました。スタッフが私に返してくれたとき,すごいにこにこ顔して,「はい,どうぞ,くわっくわっ」と。えー,最初からわかってたんちゃうかと思って,ほんまにびっくりしましたね。このハプニングで私日本語を勉強した方がいいなと思って。  一番最初何も知らなかったから,ポストイットを家の中にいっぱい貼ってあった。冷蔵庫とか窓とかトイレとかテレビ,いっぱい使った。それから友達に,一番単語を覚えやすいのは何ですか,何かいい方法ないですかと相談したら,彼女は英語の似てる単語で覚えたらいいと言った。例えば「ありがとう」が覚えられなかったら,「アリゲーター」で覚えたらいいと言った。「どういたしまして」で「ドント・タッチ・マイ・マスタッシュ」ひげ触らないでとか。私の一番好きなのは「ホット・チキン・スープ」。ホット・チキン・スープでどんな日本語覚えたと思う?そう,ホッチキス。今でも時々わざと郵便局で使ってる。「すみません,ホット・チキン・スープ1個貸してくれる」「はいどうぞ」。ええ,気付いてない気付いてない。あれ。楽しいね。どうぞ使ってくださいね。便利ですよ。
 好きな日本語があります。「ひざが笑う」とか,おもしろいね。そんなこと聞いたらうれしい。「へそで茶を沸かす」とか,めっちゃ好きね。ことわざが大好き。英語のと日本語でも似てるのがいっぱいある。  私がハイスクールのときフランス語習ってました。でも,フランス語の先生とちょっと気が合わなかった。フランス語好きだったけど,ある日,彼女は私に「君は絶対に外国語を覚えられへんからやめた方がええよ」と言った。無理ですよと言われて,びっくりしました。今その先生と会いたいと思いますね。「今,日本語しゃべってるよ」と言いたい。私考えてた。コミュニケーションのとり方と言葉の覚え方の一番大事なポイントは何かなと。一番大切なのはやる気,もちろん。やる気あれば大丈夫でしょう。友達つくりたいから,外国に行きたいからとかいろいろあるけど,やる気は一番大切。それで,エンジョイできたら自然に吸収できるんですよね。だから,エンジョイは一番大切。
 私,今,手話を習ってます。余りわからないけど,近所の喫茶店で耳の聞こえない人が集まってる。みんな一生懸命私に教えてる。わからないこといっぱいあるけど,みんなわあわあ笑いながら会話してるので,すごくすばらしいことと思う。子供と話したらその壁余りないですよね。大人になったら恥ずかしがりになっちゃう。絶対に間違ったらあかん,みんな笑うとか,大人は大体緊張するんですよね。でも,子供はそれ考えてない。英語は遊びと思ってる。だから,幼稚園で何かゲームに勝ちたいから英語を覚えたいとか。私のおいっこ,今イギリスでフランス語習ってる。もうすごい楽しそうにフランス語しゃべってる。全然恥ずかしくないね。だから,そのパッション,その情熱なくならないように続けたらいいと思いますね,世界中で。  私コスタリカでホームステイしました。スペイン語を習いたかった。行くときゼロだった。それで学校で勉強してて,学校は外だった。壁がない教室だった。屋根だけ。そこでもすごい楽しかった。イグアナが教室に入ってきたら「じゃ,イグアナ入れましょうか,この話に」と,すごく楽しかった。それと,コスタリカのファミリーは英語全然わからなかった。だけど,心からコミュニケーションがちゃんととれました。もう,一番大切なのは笑顔でしょう。笑顔とか心からしゃべること。何とかコミュニケーションとれる。それが一番大切だなと気付きました。
 昨日も明石で仕事をやってました。ちびっ子がベビーカーに乗っていて,私の隣に座ってた。笑ったら子供すごい興奮して,すごい笑ってました。それで,一番好きな本を私に渡して,見てくださいと。それで気付きました。子供は言葉の壁がないです。心からコミュニケーションとれる。すぐ仲良くなる。それはすごく大事なところと思います。言葉より心からコミュニケーションとる方が力があると思います。
 イタリアに行ったとき,バス停はどこですかと聞いたら,みんな楽しそうに集まってきてわあわあと15分ぐらいみんなしゃべってました。オレンジもらったりとか,わあわあと,すごい楽しかった。15分ぐらいたってから「はい,オーケー,サンキュー,バイバイ」と言って,バス停どこかはわからへんけど,すごい楽しい思い出になった。モンゴルに行ったとき,トイレは穴だけ,壁はない。私真ん中の穴使ってて,おばちゃんがこっちの穴使ってて,こっちの穴は10歳ぐらいの女の子が使ってました。3人並んでた。すごい不自然だなと思ったけど,もう笑いながら,わあわあ私にしゃべってました。変だと思ったけど,やっぱりそれで緊張はなくなる。それもすごい良かったと思って。言葉の問題はなかった。
 考えたら,子供のときは何でもする。大人の問題は多分,シャイ。恥ずかしさ。それは一番大きな壁だと思う。英語できない英語できないと言う人がすごく多い。だけど,一緒に飲みに行ったらいきなり英語しゃべれるようになる。本当はしゃべりたいけど,シャイだから。恥ずかしさは一番大きな壁だと思います。それがなくなったら,間違ってもいい,私はいつも間違ってるけど,いつも失敗してるけど,平気でまだ生きてる。失敗も経験です。だから,言葉を覚えてるとき考える,正しい文法でしゃべらないと駄目と思うのはちょっと壁になる。間違ったらあかんと思ったら言葉はなかなか出てこないんですよね。だから,会話にならないね。言葉はテニスになってるよね。A,B,A,B,それはすごくいい会話になるけど,間違ったらあかん,正しい文法でしゃべれないと駄目と思う人は考え過ぎ。「ダイアン,えー,ネクストウイーク,えー,アイ・ウィル・ゴー,ネクストウイーク,えーと…」みたいな会話は聞いてる人が疲れるよね。適当に言ったらわかるかもしれない。考え過ぎたら会話にならない,お互いに緊張してしまう。子供にその心はない。自信持つのは大事。失敗しても大丈夫。言葉を覚えてたときに私はそれに気付きました。会話にするのが一番大切。文法は,もちろん仕事で文法覚えないと駄目だけど,会話は心から。最初は,適当にしゃべっても全然大丈夫。私はよく間違ってる。だけど大丈夫。
 デリカシーも必要。私日本に来たときに,びっくりしたのは「何歳ですか」とか聞かれること,イギリスでは聞かないです。今,日本では少しずつ変わってきた。外人に「何歳ですか」聞くのはよくないから,最近は「失礼と思うけど,何歳ですか」とか,一緒やな,一緒一緒。そのデリカシーが必要ね。
 質問も,「どこから来ましたか」はオーケー,「日本に来てどれぐらい」もオーケー。次におもしろい質問したら会話になるけど,「日本好きですか」とかは会話にならない。考えたら15年住んでるから,もう何千回ぐらい同じ質問を聞かれるから,「趣味は何ですか」とか「日本の一番好きなところは何ですか」とかはいいけど,「日本好きですか」は会話にならない。私も外国に行くとき言葉を余り知らないからその質問をするけど,何か会話になる質問を入れるのが一番大切です。私の友達でジェフ・バーグランドさん,アメリカ人,みんな知ってるかもしれない。30何年日本に住んでるけど,よく同じ質問出てくる。「日本好きですか」と,ずっと彼も何万回ぐらい同じ質問に答えてるかもしれない。
 日本も変わってきました。15年たったから,ちょっとその変わってきたところを言いたいと思います。すごく住みやすくなりました。15年前と比べたらすごく住みやすくなりました。もちろん私が日本語わかってきたからというのもあるけど,例えば最近,英語とか中国語とか韓国語がよく出てきてる。ほんまに助かりますね。自分の国で当たり前のことが日本で当たり前じゃない。切符の買い方,最近英語で説明してるから本当にありがたい。それと,自分の名前でアパートも借りることができる。昔はできなかった。自分の携帯電話も使うことができる。昔は日本人の名前じゃないとできなかった。例えばベジタリアンの話。私はベジタリアンだから,それもすごくありがたい。昔ベジタリアンと言ったらみんなわからなかったから,肉入れてました。でも最近ベジタリアンをみんなわかってるから,すごい住みやすくなりました。
 私,ようしゃべったね。言いたいこといっぱいあります。また会うチャンスあるから,いっぱい言うね。全部言ったら,もう本当に明日まで続く。ここまでで,ありがとうございました。後で出てきますね。

中野 ダイアン吉日さん,ありがとうございました。

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