はじめに
第1部
これまで,文化庁をはじめとする関係機関・団体によって,日本語教育における情報通信技術の活用に向けた取組が行われてきました。第1部では,こうした取組を紹介しながら,情報通信技術の活用方法や活用の可能性などについて総括します。
第1章 日本語教育と情報通信技術の現状
近年の日本語学習者数の増加や学習目的の多様化が進む中,情報通信技術を活用した日本語学習は,大きな可能性を持っている学習の方法の一つとして,ますます注目を浴びています。
多様化する日本語学習者のニーズ(需要)にこたえつつ,情報通信技術を活用して日本語学習・教育支援の充実を図るためには,予算,時間,労力が必要になるでしょう。
この章では,次の内容について紹介します。
- (1)
- 地域における日本語教育の現状を踏まえつつ,日本語学習への多様なニーズに対応するために情報通信技術を活用して,日本語教育・学習活動を支援する各種のメディア(媒体)の現状に関する紹介。
- (2)
- 情報通信技術を日本語教育で活用するため,これまで文化庁が行ってきた調査研究の概要や日本語教育用の素材等を提供する「日本語教育支援総合ネットワーク・システム」(独立行政法人国立国語研究所が運営)の概要と将来の展望。
本文
第1部 第1章 本文 (243KB)
【目次】
第1節 | 日本語学習者の増加と学習目的の多様化 | 西原 | 1 |
第2節 | 高度情報化に対応した日本語教育の在り方に関する調査研究 | 文化庁 | 3 |
1 | 調査研究事項 | 文化庁 | 3 |
2 | 実施方法 | 文化庁 | 3 |
3 | 調査研究の成果 | 文化庁 | 4 |
第3節 | 日本語教育支援総合ネットワーク・システムの構築 | 文化庁 | 7 |
1 | 日本語需要の多様化と世界に向けた情報発信・流通の促進 | 文化庁 | 7 |
2 | 日本語教育支援総合ネットワーク・システムの構築の経緯と趣旨 | 文化庁 | 7 |
3 | 日本語教育支援総合ネットワーク・システムの概要 | 文化庁 | 7 |
4 | 管理・運営 | 柳澤 | 8 |
5 | 今後の展望-システムの充実に向けて- | 柳澤 | 13 |
第2章 日本語教育における情報通信技術の活用
日本語教育の充実を図るために,衛星通信やCD-ROMあるいはインターネットなどのITをどのように活用することができるでしょうか。これまで,どのような基礎的・実証的な研究開発や試行的・先導的な取組が行われてきたのでしょうか。
この章では,次の内容について紹介します。
- (1)
- 文化庁が行った衛星通信を活用した研究協議会などの実証的な実験の概要と評価。
- (2)
- 遠隔教育の形態やカリキュラム(教育課程)の体系化,事前説明の必要性,ファシリテータ(助言指導者)の役割やインターフェース(情報の交流を仲介する仕組み)の重要性など,ITを活用した日本語教育を行う際に留意すべき具体的な内容。
- (3)
- ITを活用した遠隔教育に関して,学習者や会場間で双方向同時に通信や交流ができるという利点,予算や基盤の整備,人材養成の充実へ向けた課題等。
- (4)
- CD-ROMやインターネット等を活用したマルチメディア教材に関する開発の経緯やその目的・内容,具体的な事例等。
- (5)
- 様々な機関が蓄積している研究成果や情報を有効に活用(相互補完)することによって,提供する情報内容を充実させることの重要性。
本文
第1部 第2章 本文 (1.19MB)
【目次】
第1節 | 衛星通信の活用 | 14 | |
1 | 衛星通信による実験と評価 | 清水 | 14 |
2 | 遠隔教育の実状 | 伊東 | 16 |
3 | 遠隔教育の課題 | 西原 | 20 |
第2節 | デジタル教材の活用 | 21 | |
1 | マルチメディア教材の開発-1 | 加藤 | 21 |
2 | マルチメディア教材の開発-2 | 山田 | 24 |
3 | ウェブ上のデジタル教材の活用 | 赤堀 | 28 |
4 | 日本語教材作成用素材の提供事例 | ||
(1) 国際交流基金 | 辻本 | 29 | |
(2) 国際文化フォーラム | 中野 | 33 | |
(3) 国際日本語普及協会 | 山田 | 41 | |
5 | 関係機関との連携協力 | 辻本・柳澤 | 45 |
第3章 教員の養成と情報通信技術活用の可能性
情報通信技術を日本語教育の現場で,効果的に活用するためには,教員はどのような能力を身に付ける必要があるのでしょうか。今日の課題や今後の展望はどのように考えられているのでしょうか。
この章では,次の内容について紹介します。
- (1)
- 情報通信技術を活用するために必要なメディア・リテラシーなどの能力を日本語教員が身につけることができるように,養成・研修の目標やコースデザインモデル(教育課程計画の手本)の紹介。また,同時に,課題として安易なITの導入への警鐘やITに対する意識改革の必要性など。
- (2)
- 情報通信技術の発達に伴って容易になった情報コンテンツ(情報内容)の利用の際に,留意すべき点:著作権保護の問題など。
- (3)
- コンピュータ等の情報通信技術を日本語教育の場に計画的に導入する際に考慮すべき点:情報通信技術利用の目的や保守管理など。
本文
第1部 第3章 本文 (61KB)
【目次】
第1節 | 情報通信技術の活用と日本語教員養成・研修の必要性 | 加藤 | 49 |
第2節 | 日本語教員の情報通信技術活用能力向上のための調査研究 | 加藤 | 49 |
第3節 | 日本語教育における情報通信技術活用のための課題と展望 | 加藤 | 53 |
第4節 | 著作権 | 55 | |
1 | 著作者 | 金田 | 55 |
2 | 利用者 | 金田 | 57 |
第5節 | 情報通信技術を活用する前に | 柳澤 | 59 |
コラム | 柳澤 | 63 |
第2部
日本語教育に情報通信技術を活用するための様々な視点や課題を踏まえつつ,今後の日本語教育の充実のための活用方法について紹介します。また,日本語教育における情報通信技術の活用を振興するため,多くの事例の中から,実際に日本語教育の場に応用が可能と思われる様々な参考事例を紹介します。
なお,第1章は,本協力者会議の協力者がそれぞれの経験等を踏まえつつ,日本語教育と情報通信技術に関する研究や実践を通して得た知見を生かして,執筆したものです。第2章は,本協力者会議の協力者が勧める参考事例の内容は,実際に運営に関わっている方に協力いただいて執筆されたものです。
第1章 情報通信技術を活用した日本語教育に必要な視点と今後の在り方
この章では,情報通信技術を日本語教育に活用する際の視点について,本協力者会議の協力者を中心に,それぞれの経験等を踏まえつつ,日本語教育と情報通信技術に関する研究や実践を通して得た知見を生かして,執筆したものです。
この章では,次の内容について紹介します。
- 1-(1)
- 今日発展し続けている情報通信技術と紙や黒板などの成熟した情報伝達媒体とを比較しながら,情報通信技術の導入の意義と本来最も熟考すべき日本語教育の内容との関係について。
- 1-(2)
- 情報通信技術の普及と日本語習得との関連に触れながら,ITへの過大な期待に対する警鐘,IT導入と学習効果との関係について。また,日本語教育の効果を上げるためにITを活用するという本来の目標の重要性について。
- 2-(1)
- 研究の最先端と位置付けられている各種の学会,大学の研究室における情報通信技術の基盤整備の状況を概観し,その影響がどのように教育目標や教育活動に及ぼしているのかについて。
- 2-(2)
- 日本語学習のためのソフトの紹介を行うとともに,教育目標・計画やネットワークの運用体制,そして,情報機器の利用目的や利用方法など,検討すべきことについて。
- 2-(3)
- 教育の目標や目的に応じたコンテンツ(情報内容)を選択しやすくするために,今後多くの機関が連携して積み上げていくべきコンテンツについて。また,国内外の日本語学習用のコンテンツの紹介と文字化け対策など。
- 3-(1)
- 情報通信技術を活用した教育活動と学習意欲との関連について。また,学習者が情報機器の操作に慣れ,受容的学習から応答的学習(自発的な学習活動)へ転換するために必要と考えられる情報収集能力や再編成の能力などについて。
- 3-(2)
- 教師等の人的リソース(素材・資源),教科書等の物的リソース,情報等の知的リソースなど様々なリソースに関して,それらを適切に選択し活用する過程の各段階について。
- 4-(1)
- コンピュータ・リテラシー(コンピュータ活用能力)や情報リテラシーなど情報通信技術に関する各種のリテラシーの概念。
- 4-(2)
- メディア(媒体)の概念を紹介するとともに,情報格差の問題に対応するためのメディア・リテラシー教育の重要性,日本語教育とメディア・リテラシーとの関係について。
- 4-(3)
- 日本語教育における様々なアプローチの仕方を紹介しながら,言葉を介して文化理解を深めるための情報(日本人の考え方や行動の仕方など)の貯蔵庫として,情報通信技術を位置付ける意義について。
- 4-(4)
- 情報通信技術を活用することによって情報過多とならないよう,学習・指導計画を十分に立て,教育情報管理を実現した教材開発の在り方について。
- 4-(5)
- 情報通信技術を活用した教育方法に対応する際に重要と考えられる教育情報を共有するための考え方について。
- 5-(1)
- 便利で分かりやすくするための道具として,視聴覚機器やコンピュータが導入された経緯について。
- 5-(2)
- コンピュータの普及に伴って,コンピュータを単に利用するための教育から,コンピュータを道具として効果的に利用して情報を活用する能力を育成するための教育へと視点が動いてきた経緯について。
- 5-(3)
- インターネットを中学校の教育に利用した実践例。
- 5-(4)
- 世界中の人々の様々な意見や考え方などをインターネットによって共有することが可能となり,インターネットそのものが学習環境と呼ばれるようになった理由について。
- 5-(5)
- メディアを通したコミュニケーションに必要な,現実感,臨場感などの要素を紹介するとともに,学習・指導の方法への活用の仕方など。
- 5-(6)
- 複数のメディアを適切に組み合わせて効果的に利用するメディアミックスの考え方について。
- 6-(1)
- 日本語を始めとする外国語の学習者が達成すべき標準目標や教員の知識,能力,行動に関する標準について。
- 6-(2)
- 外国語としての日本語を担当する教員の養成の現状について。
- 6-(3)
- 日本語教育の現場に出た教員も常に教育能力の向上を図ることが重要であることに関連して,情報通信技術の活用方法も含めた能力向上のための教員研修の内容・方法について。
- 6-(4)
- 情報通信技術活用能力として,必要な能力やそのレベル(段階)について。
- 6-(5)
- 今後の課題:教員の能力開発,コンテンツの充実や質の管理など。
本文
第2部 第1章 本文 (144KB)
【目次】
第1節 | 目的・需要 | ||
1 | 教育目的と需要 | 加藤 | 69 |
2 | 学習目的と需要 | 加藤 | 70 |
第2節 | 学習環境の整備 | ||
1 | ハードウェア | 柳澤 | 71 |
2 | ソフトウェア | 柳澤 | 75 |
第3節 | 学習者が既に持っている能力 | ||
1 | 学習適性 | 柳澤 | 81 |
2 | リソース | 柳澤 | 85 |
第4節 | 教員の資質向上の観点から | ||
1 | 情報リテラシー | 赤堀 | 86 |
2 | メディア・リテラシー | 加藤 | 88 |
3 | 教材の作成 | 加藤 | 91 |
第5節 | 情報通信技術活用の現状と展望 -国内を中心として- | ||
1 | 視聴覚機器の活用 | 赤堀 | 93 |
2 | コンピュータの活用 | 赤堀 | 94 |
3 | 情報活用能力 | 赤堀 | 95 |
4 | ネットワークの活用 | 赤堀 | 96 |
5 | 学習環境としての広がり | 赤堀 | 96 |
6 | 実践的な活用の仕方 | 赤堀 | 97 |
第6節 | 情報通信技術活用の現状と展望 -海外・アメリカ合衆国を中心として- | ||
1 | スタンダーズ・ムーブメント | 當作 | 98 |
2 | 教師養成と教師研修 | 當作 | 98 |
3 | 教師養成 | 當作 | 99 |
4 | 教師研修 | 當作 | 99 |
5 | 教師専門能力開発と情報通信技術 | 當作 | 100 |
(1) 情報通信技術使用能力開発 | 當作 | 100 | |
(2) 情報通信技術を使用した専門能力開発 | 當作 | 102 | |
(3) 情報通信技術利用の今後の課題 | 當作 | 102 | |
コラム | 情報通信技術を活用した日本語教育の可能性 | 當作 | 104 |
第2章 情報通信技術を活用した事例
この章は,日本語教育に直接関係しているものだけではなく,今後,日本語教育にも応用が可能と思われる事例を取り上げ,各実施機関の関係者の協力を得て執筆したものです。
この章では,次の内容について紹介します。
- (1)
- 日本語教育に利用しているものに限らず,先導的に取り組んでいる事例を紹介することによって,情報通信技術を日本語教育の場で導入・活用する際の参考となる情報を紹介します。
- (2)
- これまで実際に,衛星通信を活用している事例を紹介して参考となる情報を紹介します。
本文
第2部 第2章 本文 (971KB)
【目次】
第1節 | コンピュータとインターネット | ||
1 | 教材・教授・教育交流 | 柳澤 | 109 |
(1) CALL型学習プログラムの活用 | 柳澤・青木 | 112 | |
(2) ウェブの活用 | 柳澤・春原・保坂 | 115 | |
(3) テレビ会議システムの活用 | 鎌田・村松・山内 | 122 | |
2 | 遠隔教育 -韓国サイバー大学における基礎日本語講座運営の事例- |
鄭 | 127 |
3 | ネットワーク環境の設計・維持・管理を上手に行う方法 | 柳澤 | 131 |
4 | コンピュータ環境と多言語表示環境の設計・維持・管理を上手に行う方法 | 柳澤 | 135 |
第2節 | 衛星通信 | ||
1 | ポスト・パートナーズ計画における日本語教育 | 山田 | 138 |
2 | 衛星通信を取り入れた日本語教育 -国際交流基金による試み- |
辻本 | 141 |
3 | 大学の日本語教育におけるSCSの活用例 | 梅木 | 143 |
4 | SCS(大学間衛星通信ネットワークシステム)活用の授業 | 勝野 | 147 |
5 | 「衛星通信を活用した日本語教育」に関する調査研究 -文化庁の取り組み- |
文化庁 | 149 |
第3部
この第3部では,これまで文化庁が関係機関・団体と協力しながら実施した事業の成果を参考資料として掲載しています。参考資料Iでは,文化庁が社団法人日本語教育学会に委嘱した調査研究事業の報告書の概要を,また,参考資料IIでは,平成13年度に実施した衛星通信を活用した日本語教育研究協議会の概要(文化庁が内容を解釈して脚注を付けています。)を掲載しています。
本文
第3部 本文 (450KB)
【目次】
参考資料I
1 | 「マルチメディア日本語教材に関する調査研究」(平成8年度) について |
文化庁 | 155 |
2 | 「マルチメディア日本語教材に関する調査研究」(平成9年度) について |
文化庁 | 157 |
3 | 「マルチメディア日本語教材に関する調査研究」(平成10年度) について |
文化庁 | 160 |
4 | 「日本語教員養成における新しい情報メディアの活用能力育成に 関する調査研究」(平成11年度)について |
文化庁 | 163 |
参考資料II | |||
平成13年度衛星通信を活用した日本語教育研究協議会の概要 | 165 | ||
参考文献 | 219 | ||
専門用語の解説 | 221 | ||
索引 | 230 | ||
情報通信技術(IT)を活用した日本語教育の在り方に関する調査研究協力者名簿 及び本報告書の作成に御協力いただいた方々 |
233 |
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