6 日本語教育施設について

(1) 日本語教育施設の現状と問題

ア 日本語教育関係機関等の体制の現状と問題

 国内の日本語教育施設(日本語学校)は,専修学校や各種学校のように学校法人・準学校法人により設立されたものや財団法人が運営するものも一部にあるが,約7割が個人や株式会社などの民間の事業体により設立されたものである。昭和60年代前半までは日本語教育施設における学習希望者が急激に増加していたという背景もあり,当時は個々独立に比較的自由に設立・運営に当たっていたところが多かったが,これらの施設の中には,教育水準や経営に問題があると指摘されるものも見受けられるようになった。このような状況に鑑み,教育的な観点に立って,日本語教育施設の質的向上を図り,真に日本語の学習を希望する外国人が安心して日本語を学習できるような環境を整備することが緊急な課題となったため,昭和63年12月,日本語教育施設として備えるべき要件を定めた「日本語教育施設の運営に関する基準」が文部省の調査研究協力者会議によって策定された。平成2年2月(財)日本語教育振興協会が設立され,日本語教育施設の質的向上及び充実・発展を図るため,この「基準」に基づく日本語教育施設の審査及び証明事業をはじめ,日本語教育施設要覧の作成,研修会の開催等の事業を実施している。
 なお,この(財)日本語教育振興協会が実施する日本語教育施設の審査及び証明事業については,現在文部省告示により実施されているが,「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」(平成8年9月20日閣議決定)により,平成12年度末までに法令に基づくものとする等の措置を検討することが必要である。
 (財)日本語教育振興協会によって認定された日本語教育施設は,平成10年3月末現在276施設,収容定員数は合計39,024人となっており,これらの施設において,15,269人(平成10年7月1日現在)の学生が日本語を学習している。最近の社会・経済環境の変化などに伴い,学生数は平成4年(7月1日)の35,953人をピークに平成8年(7月1日)の11,224人まで減少し続けてきたが,このところ増加傾向にある。
 このように日本語教育施設が国内における日本語教育実施機関として大きな教育実施能力を有し,かつその整備が着実に進行しつつある状況に鑑みたとき,日本語教育施設が留学生の予備教育のみならず,より多方面にわたりその教育機能を発揮していくことが望まれている。このため,例えば,高等教育機関を含む諸機関との連携の在り方や,地域における日本語教育施設の果たすべき役割などについて検討していく時期が来ていると言える。

(2) 日本語教育施設の在り方及びその機能の活用

 日本語教育施設は,国内における日本語教育機関としては最も学習人口が多い機関の一つであり,日本語教育の振興に大きな役割を果たしている。今後とも,その教育の更なる充実を図っていくことが望まれるが,その一つとして,日本語教育施設の学生に対する支援の在り方や在留資格についても,留学生施策との関連を踏まえた対応が期待される。
 また,日本語教育施設と大学等との関係においては,私費外国人留学生の多くが日本語教育施設を経由して大学等に進学している現状に鑑みたとき,両者の間で,日本語教育のカリキュラム等について相互に協議を行う体制をとることが必要であると考えられる。従来,日本語教育施設と大学等との連携については必ずしも十分な協議が行われておらず,今後両者の間で定期的な協議の場を設けるなど,その改善を図っていくことが望まれる。また,日本語教育施設と大学との連携を深める上で,大学の日本語教員養成課程の学生が日本語教育施設の協力を得て,授業実習を行っていくことについても,積極的に検討が行われる必要がある。
 さらに,日本語教育施設は,これまで主として行ってきた留学生の予備教育にとどまらず,外国人研修生やビジネス関係者などに対する日本語教育,さらには地域に居住する外国人に対する日本語教育など,様々な日本語学習者を対象とした教育を行うことができる可能性を有するものであり,今後の役割が期待される。

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