日時:令和4年6月27日(月)
16:00~18:00
場所:オンライン開催
議事
1開会
2議事
- (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
- (2)文化審議会著作権分科会運営規則等について
- (3)第22期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
- (4)小委員会の設置について
- (5)その他
3閉会
配布資料
- 資料1
- 第22期文化審議会著作権分科会委員名簿(123KB)
- 資料2
- 文化審議会著作権分科会運営規則改正案(329KB)
- 資料3
- デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(令和3年7月19日諮問概要)(425KB)
- 資料4
- 知的財産推進計画2022等の政府方針(著作権関係抜粋)(3.6MB)
- 資料5
- 分野を横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理・データベースイメージ(474KB)
- 資料6
- 第22期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)(328KB)
- 資料7
- 小委員会の設置について(案)(264KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令等(398KB)
- 参考資料2
- デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(令和3年7月19日諮問)(299KB)
- 参考資料3
- 著作権分科会における審議状況と今後の対応(249KB)
- 参考資料4
- 著作権契約書作成支援システムについて(656KB)
- 参考資料5
- インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイトについて(322KB)
- 資料2
- 文化審議会著作権分科会運営規則改正(285KB)
- 資料6
- 第22期著作権分科会における検討課題について(327KB)
- 資料7
- 小委員会の設置について(264KB)
資料2、資料6、資料7について異議なく、案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。
議事内容
○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介。
○本分科会の分科会長の選任が行われ、茶園委員が分科会長に決定。
○分科会長代理について、茶園分科会長より上野委員を指名。
○会議の公開について運営規則等の確認。
※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。
(配信開始)
【茶園分科会長】
ありがとうございます。
それでは、これ以後、本日の議事はインターネットを通じた生配信によって公開といたします。
配信の準備が整うまで少々時間をいただきますので、委員の先生方におかれましては、事務局からお声がけするまで、しばらくの間お待ちくださいますようにお願いいたします。
傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮ください。
それでは、改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど分科会長の選出が行われまして、分科会長に私、茶園が就任いたしました。また、分科会長代理として、上野委員を指名いたしましたので、この点御報告をいたします。
本日は、今期最初の著作権分科会となりますので、議事に先立ちまして、中原文化庁審議官から一言御挨拶をいただきたいと思います。中原審議官、よろしくお願いいたします。
【中原文化庁審議官】
文化庁審議官、中原でございます。今期の著作権分科会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして御協力、御指導いただいておりますとともに、今般は御多用の中、著作権分科会の委員を引き受けていただきまして、誠にありがとうございます。
今期の著作権分科会におきましては、昨年7月に文部科学大臣から諮問されたデジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について、昨年度に引き続き、御審議、御議論いただきたいというふうに考えております。特に簡素で一元的な権利処理方策に関しましては、知的財産推進計画2022や、今月7日に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、実現に向けた検討を行い、来年の通常国会への改正法案の提出を目指す旨が示され、6月3日に開催された知的財産戦略本部におきまして、岸田総理からも言及がなされているところでございます。
そのほかにも、デジタルトランスフォーメーション時代に対応した適切な対価還元や、国境を越えた海賊版による著作権侵害に対する対応など、重要なテーマを取り扱っていくことになります。人々の生活をより豊かにしていくコンテンツを生み出すためには、クリエーターの皆様の意思を尊重しながら、迅速に著作権の処理が行われ、その利益の享受が新たな創作につながるという仕組み、この絶え間ない創作活動の好循環を実現し、その効用を最大化していくことが重要であるというふうに考えております。
委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、昨年度からの継続課題に加えまして、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度、著作権施策の新たな課題につきまして、精力的な御議論をお願いしたいと存じます。
私からの御挨拶は以上でございます。今年度も、何とぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
中原審議官、どうもありがとうございました。
次に、議事(2)の文化審議会著作権分科会運営規則等に入りたいと思います。令和3年の著作権法改正に伴いまして、本分科会の運営規則の見直しを提案するものとなります。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
【小倉著作権課長補佐】
資料2を御覧ください。文化審議会著作権分科会運営規則等の改定を行うものです。
資料中の下線部分が改定事項となりますが、今般の改正は、分科会運営規則のうち、使用料部会に関する所掌事務について、令和3年改正による放送同時配信と、図書館公衆送信係る補償金関係、これらを審議事項に追記するものでございます。
説明は以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
参考資料1に文化審議会の関連法令がございますけれども、その中で、分科会の運営規則は、この分科会において決定することとなっております。本改正について、御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、改正案につきまして、御異議等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、案のとおり決定させていただきます。
続きまして、議事(3)の今期の著作権分科会における検討課題及び議事(4)の小委員会の設置に入りたいと思います。
昨年度から議論しております諮問や知的財産推進計画2022等の政府方針の内容、それを踏まえた今期の検討課題(案)、小委員会の設置案(案)に関する資料を事務局に御準備いただいております。
それでは、これらにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【小倉著作権課長補佐】
資料3を御覧ください。資料3につきましては、昨年7月19日の著作権分科会において諮問が行われたものの内容になっております。
DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方として、資料の下後半、審議事項とありますが、1つ目のポツ、DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対価還元方策について。こちらには過去のコンテンツ、一般ユーザーが創作するコンテンツ、権利者不明等の膨大かつ多種多様なコンテンツについて、簡素で一元的な権利処理方策を検討ということが書いてあります。
また、2ポツ、DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策につきましては、著作権侵害に対する実効的救済及び我が国のコンテンツの海外展開方策、また、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップや契約の在り方についての課題や実態等を踏まえた対応、著作権普及啓発・教育方策、このようなことの諮問が昨年なされて、今期においても引き続き検討ということになっております。
続きまして、資料4を御覧ください。資料4は、今期の知財計画2022等の政府方針の著作権関係部分を抜粋したものでございます。
こちら全てを読み上げると大量になっておりますので、この時間では、どういったことが書かれているかといった概略のみ、画面上黄色マーカーをひいている部分を中心に御説明いたします。資料のほうは白ですが、画面上に共有している資料につきましては、黄色にしております。
まず1ページ目、知財計画2022、6月3日の知財戦略本部の決定でございます。ローマ数字大文字の3の5ポツ、デジタル時代のコンテンツ戦略として、ここでは例えば、コンテンツ分野においては、デジタル・ネットワーク化が、コンテンツの創作・流通・消費全般の基本的な構造に大きな変革をもたらし、さらにメタバースやブロックチェーン・NFTの活用といった新たな潮流が仮想空間上における新たなコンテンツ消費、デジタル経済圏の構築の動きを加速させている、このような状況が書かれております。
また、次の2ページ目でございますが、こうしたデジタル・ネットワーク化が進展する中、海外の海賊版サイトによる海賊版被害の深刻化、こういった問題も指摘されております。
このような状況を踏まえてですが、資料の6ページ目を御覧ください。6ページ目の下から2行目のところになりますが、こういった状況を踏まえ、権利者への適切な対価還元やユーザーの保護等に留意しながら、Web3.0時代の新たなビジネス等の展開とコンテンツ・エコシステムの発展を後押ししていく必要があるとございます。
続きまして、7ページの中段からは施策の方向性とありますが、例えば、このコンテンツ分野におけるNFTの活用について、コンテンツホルダーの権利保護や利用者保護等の課題に対するよう、官民一体となって必要施策を検討すること。また、SNS等の利用頻度が高い若年層に対する意識啓発・教育に取り組むこと。著作物の利用に係る契約をサポートするための「著作権契約書作成支援システム」の供用等を通じて、著作権に必ずしも精通してないフリーランスのクリエーター等も含めて支援をすることといったことを書いてございます。
また、7ページ目の下から2行目になりますが、WIPOへの拠出金事業等によるアジア太平洋地域の著作権の集中管理団体の機能強化通じた海外での著作物利用からの収益向上の支援、著作物の海外展開に応じた関係団体との連携、さらなる支援策について、このようなことが検討として挙がっております。
続きまして、8ページ目の(2)デジタル時代に対応した著作権制度・関連政策の改革というところでございますが、著作権権利処理に係る手続コスト・時間コストの低減を図ることにより、個人によるコンテンツの創作・利用を安心して行えるようにするとともに、デジタル時代に対応したコンテンツ産業の成長加速を促し、クリエーターへの対価還元を拡大することが必要であるとしまして、著作権の権利処理については、知財計画2021を受け、簡素で一元的な権利処理方策の検討が文化審議会において進められているとされております。
ここでは著作物等の種類や分野横断する一元的な窓口を創設し、分野横断的な権利情報データベース等を活用した著作権者等の探索を行うこと。また、意思表示がされておらず、連絡が取れない場合等については、新たな権利処理の仕組みを創設することにより、権利処理を迅速、円滑に進めることが提案されており、制度改革を含めて、速やかに具体化を図ることが求められるとされています。
次のページにいきます。9ページ目の上から2つ目のパラグラフ、「以上を踏まえ」のところですが、デジタル時代のスピードに対応し、コンテンツの「創作」と「利用」の循環を加速させるよう、著作権制度・施策について、法制度面・運用面から必要な改革を進める必要があるとされております。こちらの図につきましては、後ほども少し紹介させていただきます。
また、9ページ目の下、施策の方向性とございますが、まず1つ目が、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度を実現するということ。次のページにまたがっておりますが、これについてはということで、5、6行目のところです。具体的な措置を検討し、2023年通常国会に著作権法の改正法案を提出し、所要の措置を講ずるとされております。
また、データベースにつきましても、その下にございますように、持続的に存続するためのビジネスモデルを検討した上で、ニーズのある全ての分野のデータベースとの接続を行うことに加え、ネットクリエイターやネット配信のみのコンテンツ、集中管理されていない著作物等の既存のデータベースに登録されていないコンテンツの登録が円滑に行われるものにしつつ、ニーズのあるあらゆる分野の著作物を対象にして、権利情報の確認や利用許諾に係る意思表示(利用方法の提示を含む)ができる機能の確立方策について検討し、2022年内に結論を得るということをされております。
また、その他、10ページ目の下側のところになりますが、クリエーターに適切な対価還元がされ、コンテンツの再生産につながるよう、デジタル時代に対応した新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成策等について、コンテンツ配信プラットフォームや投稿サイト等における著作物等の利用状況や、権利者の利益保護に関する実態把握も踏まえ、検討を進めるといった記載もございます。
このようなことについて、今期の文化審議会も引き続き進めていくことになります。
また、資料の12ページを御覧ください。1つ目は、図書館関係の権利制限の見直しに関する令和3年改正、これについてまた引き続き着実に進めるということ。また、(4)海賊版・模倣品対策の強化でございますが、現状と課題にありますように、漫画をはじめとする巨大海賊版サイトによる被害の深刻化について記載がございます。
また、2段落目にございますが、下から3、4行目でしょうか、コンテンツ分野におけるDXは加速しているが、これらの恩恵をクリエーターやコンテンツ事業者が最大限に享受するためにも、海賊版対策については政府の重要な課題として取り組む必要があるとされております。
そして、12ページ目の最後の行からになりますが、引き続き、海賊版サイトの運営者摘発等に向けた取組を推進するとともに、後継サイトへのユーザーの流入の防止を含め、さらなる対策強化を図っていくことが求められるとしまして、対策の検討に当たっては、それらの実施に要する社会的コスト等の面にも留意し、海賊版サイトの運営を成り立たせる構造全体を視野に入れながら、より効率的・効果的に海賊版被害を抑えることのできるアプローチを追求していくことが重要であるとされております。
これを受けた施策の方向性についてですが、1つ目。こちらは海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表に基づく関係省庁の取組、また2つ目は、二国間協議や国際会議等の場を活用した働きかけ。また、その下3つ目のところですが、CDNサービス事業者における海賊版サイトのサービス提供の停止や検索サイト事業者による海賊版に係る検索結果表示の削除、抑制など。またその後、4つ目のところでございますが、侵害コンテンツを含む海賊版・模倣品を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、関係省庁・関係機関等による啓発活動の推進をする、こういった記載が書かれております。
また、知財計画最後になりますが、14ページ目の一番下のところ、著作権Q&A集のリニューアル、このようなことも記載がされております。
以上が知的財産推進計画の概要になりますが、少しページが進みまして、資料の24ページを御覧ください。資料の24ページは、規制改革実施計画、令和4年6月7日の閣議決定事項になります。
こちらでは、先ほど申し上げました簡素で一元的な権利処理の仕組みの法案提出につきまして、知財計画と同様の記載が書かれております。また、データベースについても同様でございます。
さらに25ページ目を御覧ください。25ページ目一番下のところからになりますが、骨太の方針です。今回、この次のページ、26ページ目にまたがっておりますが、下線が引いてあるところでございます。メタバースも含めたコンテンツの利用拡大に向け、2023年通常国会での関連法案の提出を図るとされております。また、文化DXの一層の活用とありますが、注釈書きではこの文化DXの中に、著作権制度改革を含むとあります。
さらに28ページ目を御覧ください。28ページ目は、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、令和4年6月7日閣議決定となりますが、こちらに(3)メタバースも含めたコンテンツの利用拡大とありまして、デジタル化、ネットワーク化を成長の機会とすべく、メタバースも含めたコンテンツの利用に関して、膨大で多種多様な著作物の利用許諾について関する一元的な権利処理を可能とする措置を検討し、来年の通常国会に関連法案の提出をするとされているところでございます。
以上が、政府関係の計画等の概要になります。
続きまして、資料の5を御覧ください。
これまでも幾つか出てきておりました、簡素で一元的な権利処理方策、また、来年の常会での法案提出を目指すべきとされていることについて、こちらの資料は、この著作権分科会において、昨年の12月に中間取りまとめを出して打ち出されております、分野を横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理データベースイメージの絵になります。それを昨年12月から、少しブラッシュアップした資料となっております。
この上の青枠にありますように、著作権者等を探索するコストが減少し、権利処理が容易になるということ。また、著作権者等が不明な場合、意思表示のない著作物の利用が可能になるということで、新たな利用創出に伴うクリエーターへの対価還元機会の拡大を行うもの。また、この仕組みですと、メタバース空間でのコンテンツ活用促進や、デジタルアーカイブ等の大量の著作物、このような権利処理についても円滑化するということで、こうしたものの促進に貢献するのではないか。また、こういった仕組みがあると、著作権の普及・啓発による適法利用の促進やコンテンツ人材の育成にもつながる、このような御議論もありました。
フローチャート図は既に御説明を今までしてきているものでございますが、利用者が著作物を使いたいといった場合に、窓口組織に問合せ、相談を行います。その相談の結果、探索、あるいはデータベースの検索等を用いまして、これが集中管理されている場合は右下のほうに進みますが、個々の集中管理団体に御案内をして、そちらでライセンスを取ると。また、集中管理がされていない場合であっても、個別許諾の意思表示がされているもの、具体的な企業であるとか、自らコンテンツのライセンスを行っている権利者、こういった場合は権利者から直接許諾を行います。
今回のポイントは、右上のところ、権利者不明の場合に加えまして、集中管理されていない場合で、あるいは連絡が取れない、取っても返答はない、このような場合について、新しい権利処理の仕組みにより利用可能か、できないかといったところ、こちらが次の法改正の大きな内容となります。そちらに想定イメージと少し小さい字で書かれておりますが、こういったことをイメージとして、今期、さらに制度化に向けて議論を進めていければというところになっております。
以上が政府の計画、また、昨年度からの継続の検討課題となっている部分について簡単に御説明しました。
最後、資料6を御覧ください。資料6は、第22期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)となっております。
今期の文化審議会著作権分科会においては、これまで説明したような中身につきまして、今後の状況等の変化も踏まえて、また検討していこうというものでございます。審議事項の1から4まで、1つ目が基本政策に関すること、2つ目が法制度に関すること、3つ目が国際的な課題に関すること、4つ目が使用料部会に関することとしております。
この各審議事項に対応いたしまして、資料の7になりますが、昨年度に引き続き、今期も小委員会の設置について(案)としております。使用料部会に加え、今期も、基本政策小委員会、法制度小委員会、国際小委員会を設置し、それぞれ議論を行ってはどうかとしております。
少し長くなりましたが、資料の説明は以上になります。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
ただいまの事務局の説明を踏まえまして、小委員会の設置につきましては、資料7のとおり、分科会の決定とさせていただきます。
それでは、今期の分科会における検討課題につきまして、議論を行いたいと思います。委員の皆様全員から御意見を頂戴したいと思っております。恐縮でございますけれども、名前の五十音順で指名をさせていただきますので、1人当たり2分から3分程度で簡潔に御発言をお願いいたします。
それでは、まず、壹貫田委員、お願いいたします。
【壹貫田委員】
日本写真著作権協会の常務理事をやっております壹貫田と申します。今期から委員として御指名をいただきました。皆様方、既に面識のある委員の先生方もいらっしゃいますけれども、初めての委員の先生方もいらっしゃると思います。どうかよろしく御指導のほどお願いいたします。
私のほうから、先ほど事務局から御説明がありました資料に基づいて、2点ほど申し上げたいと思っております。
1つは、2023年の通常国会も見据えた形で、また制度改正をしていくと、著作権法改正をしていくということでありますけれども、制度改正も大事だとは思うのですが、著作権法改正も当然必要だとは思うのですが、一方で、先ほどのお話にもありますような形で、ハードローだけではなくて、ソフトローの形成というのも非常に重要ではないかと思っております。特にDXということを意識すると、世の中の変化のスピードは非常に速いので、ハードローで対応できることもあるとは思いますけれども、やはりソフトローのところについてどのように論を組んでいくのかというのが今後大事になっていくのではないかなと思っております。それが1点目です。
2点目は、その1点目に関わることではありますけれども、DX時代に対応した著作権制度、政策の普及啓発・教育ということがありますけれども、若年層に対する普及啓発ということも大事だとは思いますし、これまで著作権課のほうで長年にわたってやってこられたと思いますけれども、やはりプロのクリエーターに対する契約の在り方でありますとか、著作権、知的財産権に対する知見、素養を深めていくというところをもう少し意識してやっていただくというのが大事なんじゃないかなと思っております。
結局、著作権法に関する意識だとか、あるいはその知識というものは、当事者がやっぱりかなり意識を持ってやらなければいけないだろうなというふうに思っております。その過程の中において、それを使うユーザーの人たちにも、クリエーターのほうから著作権の正しい在り方というものを、あらゆる機会を通じて広めていくということが実際には効果的ではないかなと思っておりまして、そういったプロのクリエーターに対する、あるいはクリエーターの卵に対する著作権の普及啓発というところに軸足をもう少し置いていただければいいのではないかなというふうに思っております。
小委員会の設立に関しましては、先ほど座長のほうからも御説明ありましたとおり、このような形でよろしいのではないかと思った次第でございます。
私のほうからは以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では続きまして、上野委員、お願いいたします。
【上野委員】
上野達弘でございます。本日はどうぞよろしくお願いします。
私からは、既に御説明がございました知財推進計画におけるアジェンダのうち、3点について簡単にコメントさせていただきたいと思います。
まず、1点目はメタバース、Web3.0、あるいはNFTといった点でございます。これらは、現在、実に多くの法的問題を生じさせておりますけれども、著作権に関しましては、既にメタバースビジネスを展開するのにかなり好都合な制度になっているのではないかと思っております。
ただ、先ほども御紹介がございましたように、「簡素で一元的な権利処理方策」の中で「メタバース空間でのコンテンツ活用促進に貢献」すると書かれておりますので、現状の制度に残された課題がどこにあるのかということについては、さらに精査する必要があると考えております。
2点目は契約でありまして、「著作物の利用に係る契約をサポートするため、標準的な契約のひな形の提供を行う」と書かれております。先ほど、壹貫田委員のほうからソフトローの重要性が指摘されまして、ソフトローというのは、我が国の得意技みたいなところがありますし、現実的に有効な手段であることも確かかと思います。ただ他方で、諸外国では契約の適正化を図るための立法的対応が広く見られるところでありまして、特にヨーロッパでは2019年の欧州デジタル単一市場指令によって、著作権契約法というものが加盟国にハーモナイズされるという動きがありました。このことは、昨年のALAI Japanや今年の著作権法学会でも取り上げられたところでありまして、大いに注目されます。もちろん現実問題としては、我が国で著作権契約法が導入される可能性は低いかとは思うのですが、国際的に見ましても、この点に関する問題意識は持っておく必要があるのではないかと考えております。
3点目に、「簡素で一元的な権利処理方策」につきましては、来年の通常国会において改正法案を提出するという書きぶりになっておりますので、期待されるところであります。これは、デジタル時代における効率的な権利処理という、我が国のみならず諸外国も抱えている大問題について理論的にも現実的にも最大限可能なことにチャレンジするもののように思われますので、もちろんそれなりにハードルの高い立法かとは思うのですが、ぜひよい形で実現することを願っている次第でございます。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、河島委員、お願いいたします。
【河島委員】
同志社大学の河島です。著作権分科会以外に文化庁の文化審議会の文化政策部会ですとか、無形文化財委員会ですとか、ほかのところにも関わっておりまして、その立場から申し上げたいと思います。
皆様も御存じのとおり、文化政策というのが、もうこの近年はかなりいろいろな省庁との連携関係から成り立つようになっておりまして、今日いただいた資料を拝見しておりましても、文部科学省はもちろんのこと、内閣府、経済産業省、総務省、デジタル庁、あるいは警察庁など、本当に様々なところのパートナーシップ、あるいは協力関係というものが構想されていて、その中で著作権政策、著作権法の在り方というものも推進されていくのだなということを改めて今日強く感じまして、文化庁、著作権関係につきましては東京に残るのかなと思っておりますけれども、ほかの部分につきましては今年度、京都に移転がいよいよ本格化することになっておりまして、私のように京都にいる者たちの間ではいろいろとそのことがすごくフィーチャーされている現在ですけれども、それも含めて文化庁の政策の在り方、それから、他省庁との連携、それから、こういった公的な政策の中での存在感というのが増していくということをひしひしと感じております。
著作権に関しましては、一般の方々も、正確な知識とは言わないまでも、薄々とこういうことをしてはいけないのかなとか、これは著作権違法で、クリエーターにとってどうなのだろうというようなことの意識は結構高いと思います。ですから、今年度の中で、違法著作物、違法なダウンロード等に関する、あるいは海外の違法な流通に関する体制を一層強化していくというのも時宜にかなっているかなと思っております。
それから、私の前のお二人がおっしゃっていたことにも関連するのですが、クリエーターへの適切な還元ですとか、クリエーターの契約関係というのも、これも著作権に限らず実は結構大きい問題でして、このコロナ禍の2年ほどで、違う課のほうで、クリエーター、アーティストの契約の適正化というものに関する研究も進んで、今たしかパブリックコメントにかかっているのかなと思うようなものもございまして、最終的に本当にクリエーターに対する還元をどうしていくのか、クリエーターやアーティストの仕事をどういうふうに支えていくのかというのは著作権も関わり、みんなで考えていかなければいけないことなので、そのことに関しても皆さんが大変高い意識を持っていらっしゃることを心強く感じます。
資料の10ページでしょうか、クリエーターに適切に対価が還元され、もともとは資料全体の中では16ページかもしれないのですけど、そのことが書かれている部分がございまして、これについては、一度本当にクリエーターやアーティストに対する全国的な調査というものがあってもよいのではないかなと。なかなか踏み込みにくいところですし、難しいとは思うのですが、ある程度エビデンスというものに根差した政策提言というものが欲しいなと思っておりまして、ちょっと自分の研究でこの前調べたときには、欧米では、実はクリエーターの人たちの著作権に関わる収入というのは減っているのですね、10年ほどで。これにはいろいろな理由があり、ここでは踏み込みませんけれども、実際にどういう状況なのかということを、ある程度調査あるかもしれませんが、さらにそういったものをまとめることや、あるいは足りない部分を補っていくことも、もしできたらよいのではないかなと思っております。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、喜入委員、お願いいたします。
【喜入委員】
初めまして、日本書籍出版協会から派遣されております喜入と申します。今年からこの委員のメンバーとなりました。ですので、いろいろと前任者からお話を聞いたり、御説明いただいたりしているのですけれども、なるべく早く皆様同様に様々なことが分かるように努力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私どもは、要するに出版社の集まりでございまして、著作物の利用許諾を行うという面で言いますと、DX時代になって、著作物の種類も著作物の利用の仕方も非常にバリエーションが大きくなってきて、それについて、なるべく簡素で一元的に皆さんが利用でき、かつ、著作者にきちんとした対価がもたらされるようにするということは非常に大切なことだと思いますので、そこに何か少しでも寄与できることがあればなと思っているのですが、特にそこの中で言いますと、出版社というのはそもそも既に著作物を利用して、それを本の形で出版してということをやっておりまして、要するに出版物にもともと多種多様な著作物というものが掲載され、それをどのように対価を還元しながらやっていくかというのが我々のビジネスでした。
出版社というのは個々の著作物の権利者との間で、権利関係の契約を結んで利用し、出版契約、出版権を設定して契約してやっている。だから、契約の内容というのは実はいろいろ様々でして、本という形にまとまっていて、その奥付で出版社名も明らか、著作者名も明らかですけれども、それ以外の様々な著作物、イラストであるとか、表であるとか、様々な著作物がその中に入っており、一概にその著作物の著作権者は誰で、その人に許可されればいいのかというような形にもなかなかならない部分があります。そのことをよく知っているのは出版社であるので、ある意味、既にあるビジネスとして、著作権の一元的な窓口とも言えるような役割を出版社は担ってきている部分がございます。
先ほどの表を拝見しても思いましたけれども、様々な著作物が、もちろん出版物以外の著作物も全部分野横断的に整理したい、窓口をつくりたいということの中には、そうした既にあるビジネスも考慮してというか、一緒に考えていき、そのビジネスを配慮した上での交通整理を行って、そういうことをシステム化していくものであろうというふうに考えております。
そういう意味では、出版社というのがそこの中の1つのコマとして、いろいろお役立ちもできると思いますし、話合いができるような部分があるのではないかなと。だから、既存のビジネス、既存の著作者などとのバッティングがしない形でうまく交通整理ができればいいのかなというふうに思っています。
もう一つ申し上げたいのは、今、日本書籍出版協会というのは、ほかの権利者団体や出版社団体と一緒に、図書館の公衆送信の補償金制度の管理者団体の設立の準備をしています。そのときに、著作物の送信を行う特定図書館というものがどのくらい名乗りを上げてくださるのかということがまだ明らかではなく、結局、設立する管理団体の運営がどのような、もしかしたら赤字になるのではないかということが心配されています。こういった制度というのは、やはりどれくらいの方が利用したいと思っているのか、それを実際に利用する、名乗りを上げるような、地に足の着いたそういう需要があるのかどうかということもとても大事だと思いますので、そういうことを権利者の側が持ち出しでシステムを運営するような事態が発生してしまうことがないかどうかということについても、一応きちんとした配慮が必要なのかなと思いますので、今後設計していくときにも、そういうことをきちんと検討した上でやっていただければなと思っております。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、河野委員、お願いいたします。
【河野委員】
日本消費者協会の河野でございます。エンドユーザーの立場で発言させていただきます。
本年度の著作権分科会の審議方針についての御説明ありがとうございました。御説明から強く感じましたのは、著作権分野全体に対する社会からの大きな期待と、目に見える形での効果の発現が求められているということでございます。ソーシャルメディアの普及等によって、様々なコンテンツが私たちの日常に深く入り込んでいて、単に視聴するという受動的な活動から、一人ひとりが創作や発信に関わることができるという状況になっております。私たちの生活にとって本当に欠かせないものだと考えております。また、資源に乏しいと言われる我が国は、エネルギーや食料、日用品などの値上げ攻勢で、国民生活は苦しくなる状況ですけれども、メディアコンテンツの分野においては、世界を相手にしっかりと勝負できる実力は十分だと思っています。
政府の方針に書かれているメタバースやブロックチェーン、NFTの活用などは、私のような一般消費者からすると別世界の話のようですけれども、既に世界中で技術革新や社会実装が進んでいることを考えると、我が国においてものんびりとしてはいられない状況にあるし、また、この分野に精通する専門家の方を交えて、早急に検討に着手すべきかと感じました。
文化庁におかれましては、著作権については、若年層に対する意識の啓発、教育の充実や、著作物の利用に係る契約のサポートなどに着手されているという御報告がありまして、着実に施策が進んでいるというふうに受け止めておりますけれども、従前から整備され、今現在活用されている制度に加えて、今回の命題にもなっています、デジタル時代の変化に伴う厳しい競争環境に対応し、国内のすばらしいコンテンツの芽を摘み取らないように、例えばカーボンニュートラルの実現のように、10年、20年先を見据えて、既存の仕組みとか考え方にあまりとらわれ過ぎずに、関係者が知恵を出し合うことで、迅速かつ円滑な環境整備が進められることに期待したいというふうに思っております。
以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、椎原委員、お願いいたします。
【椎原委員】
今年度から、文化審議会委員に初めて御指名いただきました、日本図書館協会著作権委員会委員の椎原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
施策の方向性で、図書館関係の権利制限の見直しですとか、そういったことも取り上げていただきまして、また来年の施行に向けて、当事者間協議ですとか、ガイドラインの作成についての施行の方向性を示していただいております。こういったことにつきましても、今後、文化庁の皆様、あと国のほうからも積極的に取り組んでいただければと思います。
先ほど喜入委員のほうから、特定図書館がどの程度加入していくのかというような御心配の声もいただきました。せっかく制度が始まっても、入る図書館が少ないとか、そういったことがありましたら、せっかくの制度がなかなか生かせないと思います。ただ、地域の図書館など交通の便が悪いところ、こういった制度でかなり利用がしやすくなるところはたくさんあるかと思いますので、こういった制度があるということをPRして進めていければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】
東京大学の田村です。知的財産法を専攻しております。私からは、9ページの新しい権利処理の仕組みについて一言述べさせていただこうと思います。
私は、オーファンワークスと呼ばれているような、必ずしも権利者がほぼ欲していないものも、インターネット時代に非常にたくさん利用できるような環境下において、保護すべきものはしっかり保護し、他方で、保護すべきでないものは特に保護しなくてもよいというメリハリをつけた制度が望まれていると思います。
その観点から考えますと、既に御案内のとおり、利用態様によっては、今、権利者の探索に、権利者に支払うべき利用料と比べて桁違いのコストがそちらにかかっているという点は、やはり改善すべきだろうということでありますので、今回の御提案、方向性はすばらしいものというふうに考えております。
ここでは結局、権利者に自己の所在についてフラグを立てさせる。自分がここにいるよ、そういう権利行使の意思があるとともに、そういう意味では負担を課すわけですけれども、そしてそれがない限りは新しい権利処理の仕組みに移行するということでありますけれども、これは時々御批判があるのですが、決して権利を弱めることを目的とするものではないと私は考えています。権利者に最低限の負担を課すことで、そこでコストが大幅に節約できる。その分、創作活動に回すことができるとか、あるいは、そもそもの大量処理が必要なのが、とても創作が非現実的な、そういった現在、デジタルコンテンツは大量処理が可能というのも非常に重要な変革ですけれども、それが、著作権制度が足かせになってできないといった事態をかなり解消できるということはもちろん、さらにそうすることでできた余裕で、保護すべきものにむしろしっかりとした保護を与えることができるなということも考えていただいてということが目的されているということも考える必要があると思います。
少し細かな話ですけれども、9ページのほうの図の中に、「十分な使用料相当額」というふうな記載がありますけれども、この点についても、もしかすると99%以上出現してこないと思われる著作権者に、全てに対して十分な使用料額を支払うということを前提とする制度ではなくて、実際には支払われませんので。なので、供託すべき使用料なのが、もし供託が必要だということになりましても、出現率を加味した保険的なものとして運用すべきであるとか、そして、そのようにして金銭的な分も含めて余裕ができた分、もちろんコンテンツの捜索に回していただきたいとともに、さらにそれが、保護すべき権利者への利用料に回すと、そういった好循環、ウィン・ウィンの関係にあると理解すべきだろうと思っております。
そのほかは細かなことですけれども、特にサイトブロッキング等についてなかなか御批判が強く、私の理解ではパブリックドメインにあるものを害することなく、あるいは適応になっているものを害することなく、侵害専用のサービス等については、あるいは侵害だけを叩くような制度については推進すべきだと考えているのですが、その中で、例えば今回も御提案ありましたが、CDNサービスへの言及があります。CDNサービスは非常に重要な世の中に役立っている制度でありますけれども、その中で仮に例外的に侵害を容易に幇助しやすいようなサービス形態を取っているところがあるのか。そして、もしそういうところがあった場合には、少し制度的な要請をしても、CDNサービスの効率を害さないのかどうかということを確認した上で、もしそのようなサービス形態を取っている場合には、場合によっては現在の著作権制限規定の適用を受け入れない状況に陥っているのではないかという観点からの方策の検討も必要だろうと考えております。
私からは以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、中川委員、お願いいたします。
【中川委員】
弁護士の中川でございます。今回から参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
審議事項の1つに、DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育方策がございます。インターネットを通じた情報の発信や享受がこれだけ一般化している今日において、私も著作権についての教育等は非常に重要であると感じております。その際は、著作権制度がなぜ存在し、権利の保護が求められるのかという基本的な点について、広く理解が促進されることが望ましいと考えております。そうした施策が、海賊版対策等にも有益であると考えております。
また、それと同時に、そもそもの著作権制度自体が、できるだけ分かりやすく、かつ、使い勝手がよいものであることが望ましいと考えております。著作権法が未成年者も含めた多くの方が日常的に関わりを持つ法律である以上、そこで行われるべき教育の内容があまりに難解であってはならないと思います。同時に、著作権法を遵守するために従うべき手順も、できるだけ簡素で平易なものであることが望ましいと思います。
私は普段は弁護士をしておりますが、先日、一般の高校生の方に、授業の形式で、情報やコンテンツの発信等について、必要な著作権等の知識を教えさせていただく機会がありました。
その授業の際に、SNSでの情報発信について、幾つか質問をいただきました。恐らく、今の一般の高校生にとっては日常的に行うようなSNSでの発信についての質問だったと思います。ところが、質問によっては、私から見ても実質的にアウトとする必要が乏しいにもかかわらず、セーフですよと答えづらいものがありました。また、私は一応ここに参加させていただける程度には専門家のつもりなのですが、私から見ても、うーん、どっちだろうねと悩むような質問も、実は結構ございました。もちろんその生徒さんたちは、私の授業を通じて、著作権法を守ろうと真面目に考えて質問してくださったのですが、そうした著作権法を誠実に守ろうとする方にとっても、やはり著作権法ができるだけ分かりやすく、かつ使い勝手がよい制度であることが望ましいなと、改めて感じた次第です。
今回の審議事項であります、簡素で一元的な権利処理方策につきましても、乗り越えるべきハードルはあると承知しておりますけれども、権利者の利益、それから利用者の使い勝手、その両方に十分に配慮された制度として立ち上げることができましたら、以上申し上げたような観点からも、非常に望ましいのではないかと考えております。
私からは以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、中沢委員、お願いいたします。
【中沢委員】
文藝家協会の常務理事、中沢けいと申します。去年7月から、この委員会に参加させていただいております。
今日、皆様のお話を伺っておりまして、この1年ばかりで、この委員会に関連しているかなと思う問題を3つ体験しておりまして、それについて3点お話しさせていただきたいと思います。
まず、第1点は、私ども著作権者として文芸に関わり、著作権を守るということでは出版社の法務部などにいろいろな御助言をいただいたりしながらやってまいりました。そういう意味では、出版社の持っているいろいろな知恵と、それから、商業的な習慣というものと、その2つの両輪の中でいろいろ創作が行われてきたわけですが、後者のほうの商業的な習慣というのが、デジタル化することによってちょっといろいろ混乱が起きていることが見られます。
要するに、例えば出版物を印税という形で、個数に対して幾らいただけるみたいな商業的な習慣があったのですが、デジタルになるとこれが成り立たないのです。そうすると、1回に支払われる金額が非常に少なくなってしまいます。極端な話、例えばデジタルでダウンロードしていただいたときに、2件のダウンロードで振込額12円を600円の送金手数料で払うというような、極めて奇妙な事態が起こる場合も、それほど珍しくなく起こっています。この辺は商業的な習慣と法律の2つの軸が絡み合いながら、今後新しいビジネスモデルと申しましょうか、そうしたものが生まれてくるのではないかなと考えておりますが、そうしたものがクリエーターにとって損にならないような形を、皆さんのお知恵を拝借して考えていただければと、こういうふうに望んでおります。
2つ目は、これは非常に具体的な話ですが、今、著作権の教育というお話が出ておりました。中川先生から大変貴重な御意見を伺いました。私は去年の暮れに、ちょっと難儀なケースに遭遇いたしました。SNSで発信した内容を、いろいろ批判を受けて発信者が消去してしまったそうです。ところが、元のツイッターの原稿のスクショを撮った人がいました。そのスクショを撮ったものを、再度御自分のSNSにアップして批判を加えたところ、最初の問題のあったツイッターの表現を勝手に流用された著作権法違反だということで警察に刑事告訴なさって、その直後に警察が家宅捜索しているのです。私はこの事情を伺いまして、非常にびっくりしました。SNS上ではよくやられていることです。スクショ撮ること自体は、全然著作権法の違反ではないと。問題はそれを再度公開したところが丸ごと全部著作物を持っていたから著作権法の違反だという理屈になるのだそうですが、こうした行為は、例えば市民運動なんかではしばしば行われていて、さほど非常識な行為とも思えないので、今私どものほうは文藝家協会の顧問弁護士の先生にお願いして、法律上どうなのかということをお尋ねしているところです。警察のほうもいきなり家宅捜索はしましたが、その後、特段書類送検するとかそういう形には出てないので、問題は宙に浮いた形です。
著作権法に関する教育を云々するときに、どうしても私たちは著作権に、皆さんに理解を持ってもらいたいというような気持ちで云々していることが多いのですが、今後それは著作権法の悪用、拡大解釈、おかしいではありませんかと思うような事例がたまたま目の前にございましたので、この委員会の皆様にもお耳に入れて、普通の道具を普通に人が使っているときに、いきなり警察が家宅捜索に入ってくるなんていうことが起こらないように、何とか考えていただけるといいなと思います。それを本当に著作権法違反で警察が家宅捜索してもいい事案だよというなら、逆にそれをちゃんと事前に教育しておかなければとんでもないことですよね。ですから、その点は皆さんに、ちょっと著作権法の教育という点で、新たな問題が生じる可能性がございますということを御報告しておきたいと思います。
それから、たまたまですが、先週の土曜日ですが、私が評議員を務めております日本近代文学館の評議員会がございました。駒場公園の中に近代文学の基礎資料を集めている文学館なのですが、実は写真とか動画といった資料を大量に持っています。これを何とかネットで配信したいということを以前からお話が持ち上がっているのですが、そのたびに著作権の処理はどうしたらいいのだということで、著作権者が集まってつくっている、博物館に匹敵する文学館が、著作権の侵害事件を起こすわけにいかないというので、どうしていいか分からなくなってそのまま宙に浮くということが、ここ20年近く続いています。
動画の配信をしたり、写真資料をネット上にアップして皆さんに見ていただいたりということをするときに、まさにこの委員会で問題になっている簡素で一元的な著作権の処理の方法論が確立されれば、こうした今まで私どもが蓄積してきた資料なども皆さんに見ていただいて、新たな文学研究者、あるいは海外からの研究者に便宜を図るということもできるかと思いますので、この委員会の御議論を大いに期待したいというふうに思っております。
私がこの1年で感じたことの中から、この委員会に関わるかなと思ったことを3点申し上げました。どうぞ皆様、よろしくお付き合いくださいませ。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、仁平委員、お願いいたします。
【仁平委員】
日本ネットクリエイター協会の仁平でございます。今年度もよろしくお願いいたします。
私のところでは、いわゆるUGCといいますか、インターネットで活躍されるクリエーターさんを我々のところではお世話をさせていただいているのですが、今回は簡素で一元的な権利処理方策に関して3点、意見を述べさせていただきたいと思います。
まず1つは、こういったデータベース等をつくるときに、一番問題なのは、どうやってそのデータが集まるかというところだと思います。これは例えば、メジャーなアーティストの方だとまたちょっと違うモチベーションがあると思うのですが、UGCのクリエーターの場合は、必ずしも商業的なメリットだけを打ち出しただけだと、コンテンツが集まらないということがあります。これを解決するためのいろんな施策があると思うのですけれども、その1つとして、彼らUGCのクリエーターは、必ず動画発表サイト、ニコニコ動画であるとか、ピアプロとかpixiv、そういったところにアップロードするという作業から始まるわけなので、そういったところにアップロードするという行為がそのままシームレスにそういった管理データベースに入る仕組みというのが構築する必要性、意味というのがあるのではないかなというふうに思います。こちらが1点目。
2点目としては、まず、こういったことに対する啓蒙活動というものを、2方向に行う必要があるのではないかなと思っています。1つは、当然のことながらクリエーターさんに対しての啓蒙活動です。もう一つ実は重要なのは、コンテンツ使用者、いわゆるプロフェッショナル使用者に対する啓蒙活動だと思います。我々UGCといいますと、有名なところではボカロPさんといった音楽制作者がいらっしゃいますけど、結構大人の方たちから見ると、ボカロPさんというのは素人さんですよねというふうに取られる場合が多いです。ところが、もちろんそれは素人、本当に趣味でやられている方もいるのですけれども、私がお世話をさせていただいているボカロPさんというのは、言ってみたらプロフェッショナルで、それこそ楽曲1つで、楽曲をつくることで家族を養って、家を建てて、中には両親まで面倒見ているボカロPさんとかいらっしゃいます。そういった意味では、プロフェッショナルなのですよね。例えばボカロP出身の米津玄師さんがプロフェッショナルというのはもう皆さん当然理解されていますけど、そうではなくて、ボカロPさんとして、今現状ネットで活躍されている方もプロフェッショナルであって、彼らはその楽曲で生活しているのだよということを、僕は放送局の方とか、いわゆる大人の楽曲使用者、コンテンツ使用者の方にも理解していただきたい。そういう意味では、そちらのほうの啓蒙活動というのも重要なのかなと思います。それが2点目。
最後に、例えば、楽曲使用とかコンテンツ使用といいますと、放送での使用とか出版での使用とかというところが皆さん思い浮かべられると思うのですけど、実はUGCの場合は2次創作を含めて一般の方が、もしくは、一般の方と言いながらもコンテンツを掲載することで、それなりにお金を稼ぐ、バナー収益等を稼いでいる方が、他のSNSサイトにアップロードすることで収益を稼いでいるという場合が結構多いです。ですので、そういった他の動画配信サイトやSNSで使われた場合に、きちんと使われたということが把握できて、なおかつその動画配信サイトから上手にお金を徴収できて、それがクリエーターに還元する仕組みというものが必要かなと思います。
一部の動画配信サイト、例えばニコニコ動画とかYouTubeとかは、コンテンツの元の権利者に対してお金を返す手法というのが幾つか出来上がっています。YouTubeの場合はコンテンツIDという仕組みもありますし、ニコニコ動画の場合はクリエーター奨励プログラムやコンテンツツリーという仕組みがありますが、こういった仕組みというのが全ての動画配信サイトにあるわけではないです。なので、こういったSNSや他の動画配信サイトにコンテンツが使用されたとき、転載されたときに、上手にそれを把握して、そして収益を徴収、分配する仕組みというのが必要になるのではないかなと思っております。
以上3点が、UGCの立場から、今回の文化審議会のほうには参加させていただいている私としての意見でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、畑委員、お願いいたします。
【畑委員】
日本レコード協会の畑でございます。よろしくお願いします。私はこの著作権分科会には昨年度から参加させていただいておりまして、今般の検討の元になった、昨年度の基本政策小委員会にも委員参加させていただいております。
今年度、DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化と適切な対価還元、権利保護、これらを両立させていくのだということがうたわれており、その中で「簡素で一元的な権利処理」に資する窓口の設置ということが、大きな取組目標として、今回設定をされているわけでございます。私としては、著作物等を使いたい人が、その手続において迷子にならないように、最終的に何とか著作物を使えるように、この窓口組織が一種のコンシェルジェ的な役割を果たして、著作物の利用円滑化を図っていくと。それによって権利者にも対価が回っていくということを目指す取組であると理解をしております。
その中で、大きなポイントとしては2つあると思っております。1つは、権利者不明、あるいは、権利者は分かるけれども連絡が取れない、許諾の意思が不明といった場合に適用される「新たな権利処理の仕組み」を検討し、作っていく、ここについては法改正が伴うということ。もう一つが、その窓口の作業において用いられる「分野横断権利情報データベース」ということかと思っております。
まず、1点目の「新たな権利処理の仕組み」につきましては、資料にも、いわゆる拡大集中許諾制度のように、許諾に相当する効果を持つということがうたわれています。昨年度の基本政策小委員会におきまして、非常に多くの数の権利者団体のヒアリングが行われ、ヨーロッパ等で制度として先例があるとはいっても、やはり権利者や権利者団体にとっては、過度に許諾の可能性が制限されるような制度になりはしないかという懸念を持たれる方が非常に多かったというのが事実でございます。そういったことも踏まえつつ、また、それぞれの権利ビジネス業界でいろんな形のビジネスモデルがありますので、既存のビジネスモデルが、新たな権利処理の仕組みとどのように両立できるのか、既存のビジネスモデルを制限することにならないように、許諾の可能性を過度に制限するようなことにならないように検討が進められることを願っております。これが1点目でございます。
もう1点は、「分野横断権利情報データベース」でございますけれども、ここについては我々音楽業界におきましては、文化庁の実証事業のお力もお借りしまして、昨年4月から音楽情報プラットフォーム協議会という団体を作りまして、音楽分野の権利情報の集約化データベースを検索利用に供する事業をしております。「音楽権利情報検索ナビ」というサイトで、1,000万曲以上のデータを公開しております。私、その団体の代表理事も務めておりまして、音楽業界はデータベースにつきましては長い年月の知見がありますので、そのような知見も提供させていただいて、データベース構築の御協力をさせていただきたいと考えております。
以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、広石委員、お願いいたします。
【広石委員】
NHKの広石と申します。昨年度より、この著作権分科会で議論に参加させていただいています。今日は、NHKは放送番組の権利者でもありますけれども、やはり様々な権利者の方の著作物を利用させていただいているという立場で1点、簡素で一元的な権利処理について、申し上げたいと思います。
これまでも会議の場で発言させていただいてきましたが、やはり過去の放送番組の流通、活用に当たっては、ともすれば権利者へお支払いする使用料よりも権利処理のコストのほうがかかってしまうという実態があります。過去のコンテンツや放送番組の流通促進に当たっては、このコストの削減が鍵となると考えています。今回打ち出された分野を横断する一元的な窓口ですとか、分野を横断するデータベースの実現によって、これまでよりも早く権利者にたどり着けること、それによって探索にかかる手間ですとかコストが大幅に削減できることに期待します。また、権利者を探すコストや、集中管理されていない著作物の取引コスト、このようなものについても、権利者の意思表示をもって利用可能とするような、新しい権利処理の仕組みができること、これによってそれらのコストが削減されることについても期待したいと思います。
こういった権利処理の時間ですとかコストが少なくなることによって、生み出されたものについては、使用料を望んでいる権利者の方が適切な対価をきちんと還元され、そして、このように利用する側にとっては利用しやすく、また、権利者の皆様にとっては使用料がしっかりと支払われるサイクルが滞りなく回っていくこと、そういうことの実現によって、著作物の流通が活発に行われていくことに、今後期待していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、福井委員、お願いいたします。
【福井委員】
日本新聞協会の福井です。所属は毎日新聞です。2点申し上げたいと思います。
新しい権利処理についてです。いよいよ制度化がこれから具体的に始まると受け止めています。新しい権利処理の仕組みでは、集中管理されていないものの、権利者に個別許諾の意思があって、許諾できる著作物であることが、権利者情報をデータベースでの検索時に分かるようにすることが、制度設計上必要だと思っています。
新聞記事の場合は、当該の個々の新聞社に連絡をしていただければ、即座に許諾などの対応ができますけれども、それだけではなくて、主要新聞社は著作権の管理の一部を複製権センターに委託しています。また、主要各紙を網羅した記事・データベースや、各社を横断する権利処理済みのクリッピングサービスもあります。新聞記事は、拡大集中許諾制度のような新しい権利処理の対象にはならないかなと考えております。
その次は、法制小委員会で審議中の42条の改定に関してです。立法・行政の内部資料の公衆送信を可能にする改定ですけれども、今年3月の前回分科会に報告されました、令和3年度の法制小委の審議経過では、現行法下での複製で許容される範囲での公衆送信に限定した検討や、ライセンス市場など、既存ビジネスを阻害しないよう対象を限定した検討が必要である、そして、内部資料の解釈については、周知を徹底する必要があるなどと記されました。これは立法・行政目的の利用範囲が限定されているということや、民間のライセンス市場に悪影響を与えてはいけないことを表明していると言えまして、評価し得ると思っております。
新聞で言いますと、ほとんどの中央省庁と多くの自治体が、全国紙各社などと記事利用のクリッピング契約を結んでいて、相当額の市場を形成しています。このクリッピングが行政目的による公衆送信に含まれるという誤解、拡大解釈が今後生じないよう、引き続き慎重な審議がされることを求めたいと思います。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、前田委員、お願いいたします。
【前田委員】
日本民間放送連盟の前田と申します。よろしくお願いいたします。私も、昨年度からこの検討に参加をさせていただいております。
諮問事項としては継続検討ということでございますが、DX時代の著作権制度を考えるというときには、基本的ではございますが、著作物の権利者も利用者も多種多様であるというところが難しい点であろうと、改めて感じております。だからこそ簡素で一元的な権利処理の方策、窓口のように、ある程度包括的に対応できる方策というのを考えているというわけですけれども、やはりその場合にも、どこにニーズがあるのか、それから、その仕組みを誰が使うのかという点には時々立ち返りながら検討をしていくことが必要だと考えております。もちろんここに至るまでに多くのヒアリング等を踏まえているということも承知しておりますので、言わずもがなのところではございます。
そうした面からも、知的財産推進計画の幾つかの施策の中での分野横断権利情報データベースの項目で触れられていますように、持続的に存続するためのビジネスモデル、それから、ニーズのある分野を取り扱うという、こういった整理は適切と思いますし、簡素で一元的な権利処理を行う窓口の仕組み、組織についても同じ考え方があってもよいというふうに考えております。これらは実際には地続きで行われるのかもしれませんけれども、そのように感じております。
放送事業者は、番組の権利者でもありますが、番組に含まれている著作物を利用させていただいている利用者でもございます。こういった両面の立場を持っているということは、DX時代においても何ら変わりはございませんので、コンテンツの利用促進、それから権利保護のバランス、その両面を考えながら、今年度も検討に加わらせていただきたいと考えております。以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、丸山委員、お願いいたします。
【丸山委員】
昨年度から引き続きお世話になります。芸団協の丸山と申します。よろしくお願いいたします。
資料の御説明を事務局の方、ありがとうございました。そして、皆様の御意見をたくさん聞いておりますので、若干重複してしまうこともあるかと思いますが、少し意見を言わせていただきたいと思います。
まず、前期に引き続きまして、DX時代に対応した著作物等の適切な対価還元について検討するということですが、具体的な措置を講じていただかなければ、クリエーターへの適切な対価還元を実現することは難しいと思っております。利用の円滑化ということだけではなく、適切な対価還元を実現することというゴールを絶えず忘れずに意識した上で、検討を進めていただきたいと思っております。
それから、今年に入ってから、先ほどもお話を聞いたと思いますが、EU加盟各国でのDSM著作権指令に対応するための国内法整備が進んでいるということを聞いております。こういった諸外国の最新の動向をしっかりと把握しながら検討を進めるというのが必要ではないかと思います。日本におけるクリエーターの契約実態に鑑みれば、諸外国のような著作権契約法的アプローチも重要なのではないかと考えております。DX時代においても、クリエーターへの適切な対価還元が実現され、創造サイクルが守られていくよう、精力的に検討が進められることを期待しております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、宮委員、お願いいたします。
【宮委員】
昨年より引き続き、分科会に参加させていただいています、日本美術家連盟の宮と申します。
今回は、簡素で一元的な権利処理の仕組みがテーマだと思うのですが、資料5の表とかを見るととても分かりやすく、そのイメージ図と思われますが、新しい権利処理の仕組みとされている部分に、いわゆるオーファン作品というか、権利者不明もしくは連絡先不明の著作物も含まれているというふうに考えていいのだと思うのですけれども、具体的にここがどういうふうになっていくのかなというのが、非常にこれから期待するところですけれども、私どもの美術家連盟と、あと幾つかの権利者団体で、オーファン作品の裁定申請に関わる研究を行っていたときに、裁定申請の代理と、これらの実施する仕組みの維持のための経費が大きな課題となったというふうに聞いております。その辺が具体的に何か方法がつくれたら非常にいいなと思います。
あと、クリエーターとかアーティストへの還元ということでは、著作権の国際的な課題の1つとして、美術分野としては追及権の問題が引き続き残っておりまして、昨年から今後の調査研究を待つというふうに言われているのですが、追及権の導入に向けて、検討の継続を非常に期待しております。
あと私、大学のほうでも、美術大学ですが、割と著作権に関してのレクチャーが最近非常に増え、ほかの大学はどうなのだろうなというふうに思ったりもするのですが、意識としてはかなり高くなっていると思います。ただ、大学よりもやっぱりもっと、小学校とか、もっともっと低学年からそういうことを定着していくことが必要ではないかなというふうに実感として思っております。
以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、宮島委員、お願いいたします。
【宮島委員】
日本テレビの報道局で解説委員をしております宮島香澄と申します。去年から務めさせていただいていまして、知財関係では内閣府の知財関係の会議ですとかも大分長いことやっておりまして、この分野、すごく大事なことなのに、なかなか一般に浸透するのが難しいなというふうにふだんから思っております。
かなりいろんな方が御発言いただいたので、まさに今、方向性ができている幾つかの案件とか権利処理のところは、いろいろな問題を細かく丁寧に解決しながらも前に進めるときだというふうに理解しております。
それから、まさに総クリエーター時代なので、みんなが状況を分かっていることが必要だと思っていますし、例えば海賊版を防ぐのも、結局のところ追いかけるというよりは、それぞれの人が著作権というものの大事さということを理解することが最大の解決策だと思うのですけれども、そこがまさに難しいなという部分もあると思います。具体策で、例えば、Q&Aの本をつくるとか、いろいろな学校教育というところの記述もありますけれども、前の方もおっしゃったように、相当若い時期から、もしくは子供の時期からこの意識を植え付けないと、あるとき高校で授業をやったからといって、急に気持ちが分かるようになるというものではないのではないかと思います。とても小さくて発信を始めるようなところから、発信をするならば、ここのところを読まないとというか、前に進めないというぐらいの、必ず著作権に誰かみんな関わるというようなところをうまくつくり込んでいくことで、全体の底上げを図るということが大事ではないかと思います。もちろん学校教育、いろんな場で教育するということも大事ですけれども、自然に著作権に触れるというような方法を何かつくれないかなというふうに思っております。
以上、よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、山﨑委員、お願いいたします。
【山﨑委員】
東宝東和という会社で、外国映画の輸入配給をしております山崎と申します。こちらには昨年より委員として参加しておりますが、日本映像ソフト協会の理事として参加しております。
こちらの協会は、映像コンテンツの流通に関わるソフトメーカーの団体でございます。私どものところで最も著作権に関わることで注目しているのは、ビデオソフトという名前で物理的なパッケージソフトを販売していた時代から、やはり海賊版との戦いというのが我々のメインテーマでございました。デジタル時代を迎えまして、それは我々にとってビジネスチャンスが広がるとともに、不正利用がしやすくなるというリスクもはらんでいるという部分がありましたので、海賊版対策に関しては非常な興味をしておりまして、このたび文化庁のほうで対策ポータルサイトを立ち上げていただいたことですとか、相談窓口の開設を予定されてくださっていることなどは、非常に心強く、影響に期待をしている次第でございます。
やはり複数の委員の皆さんが御指摘のとおり、海賊版が出回るということは、権利者への還元ということを私たちが守れなくなるということですので、私もやはり教育現場における著作権教育というものに期待をしているということが1つ。
それから、特に海賊版の現場では、国際的な取組に関して、関係省庁、それから関係者の皆様のほうの御指導などに基づいて活動していきたいと思っていますが、ここの取組に関しては非常に期待をしているところでございます。
私からは以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、横山委員、お願いいたします。
【横山委員】
京都大学の横山でございます。専門は、民法と、それから比較法でございまして、著作権法につきましては、委員にこの4月から参加させていただいたことを機に勉強を始めさせていただいているというところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の議題につきまして、先ほど何人かの委員からもお話がありましたけれども、9ページ、それから、資料の5にあります、分野横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理データベースというものを大変興味深く拝見いたしました。既に何人かの委員がおっしゃっていますように、権利者の探索、それから検索のコストというのは非常に高いものでありますことを考えますと、この制度というのは、利用者にとっても、そしてまたクリエーターにとっても非常に有効な制度になっていくのではないかなというふうに考えております。
その上で、畑委員が既に指摘されたことではございますけれども、今回のこの制度というのは、一方で、新しい権利処理の仕組みというものがつくられており、そしてそれを前提とした、資料5の左側の探索・検索のための、分野横断権利情報のデータベース、この2つが柱になっているというふうに思いました。
このときに1つの問題は、これは畑委員が既に御指摘になったことだと思いますけれども、恐らくこのデータベースでどれだけ情報がここに反映されるのかということが1つ重要になってくるかというふうに思います。と申しますのも、この制度は、権利者が判明するか、それとも権利者が不明かによって、不明の場合は新しい仕組みにいきますし、判明の場合には、その後、集中管理されているか、されていないかというところで分かれていくので、権利者が不明という判断がどのようにされるのかということによって、この新しい権利処理の仕組みにいくのかいかないのかということが分かれておりますけれども、不明かどうかということは、このデータベースにどれだけ情報が集まり、そしてこのデータベースの情報についてきちんと探索が、制度的にできるのでしょうけれども、それがあって初めて不明という判断がされると思います。権利者は実際にはいるけれども、不明という判断がされてしまわないようにする、そのリスクとかコストとかというのをどういうふうに捉えるのかという点でも、このデータベースは非常に重要かなというふうに思いました。
もう一つその制度のつくりと同じような話になりますけれども、権利者が判明したというときに集中管理がされているときには、集中管理団体を通じて許諾を受けると。集中管理されていない場合には、こちらも意思表示がない、あるいは連絡が取れないか、それとも意思表示があるかということで分かれるのですけれども、個別許諾の意思表示が確実にある場合だけが権利者からの直接許諾になって、なしとか連絡が取れないというものをどういうふうに、どのくらいの幅で考えるかによって、新しい権利処理の仕組みに早く移転できるのか、それとも、なしと言えるか言えないか、連絡が取れるか取れないか、取れないと言えるかどうかという判断の仕方によっては、このあたりで権利処理の仕方、方法が滞ってくるという可能性もあるかなというふうに思いました。
ですので、これは大変すばらしい制度だと思うのですけれども、実際に確実に適切な運用、権利者の権利と、それから利用者の便宜のバランスを取れたような仕組みにしていくためには、このあたりのことに気をつけていただければいいかなと思いました。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、吉村委員、お願いいたします。
【吉村委員】
ありがとうございます。私自身は継続して委員をさせていただいております。経済団体に勤めておりますので、本件に関わらずいろいろなイシューを見ているわけですけれども、近年本当に様々なものが大きな変革期というか転換期を迎えているということを本当に痛感しているところであります。
コンテンツ関連も、先生方からお話が出ているとおり、Web3.0とかメタバースとかNFTとか、いろいろな新しい技術なり用語なりが出てきており、本当に大きく変化、進化しているところだと思いますし、この分野への企業からの参加者も、従来あまり関係なかったような業種からどんどん参入していますし、UGCの話も出ていますけれども、企業以外の参加主体もどんどん多様化しているという状況にあると思います。
そうした変革の時代における今後の商業とかビジネスとか産業とかいった観点で、コンテンツ関連の分野は非常に重要だと思いますし、広い意味で文化・芸術といったもののもたらすソフトパワーで強みを持つことが本当に大事だなと思っております。これから日本が何で飯食っていくのかということについていろいろ議論あるところではありますけれども、非常にポテンシャルある領域じゃないかなというふうに思います。
その中で、著作権法というものがどういう役割を果たせるのかということになるわけですけれども、非常に重要な鍵であることは間違いないということだと思います。あるべき論については、いろいろな議論があると思いますけど、まずは前回から議論してきたDX時代といったものを意識した新しい法制化について、簡素化・一元化を目指した法制度づくりに向けてしっかりと丁寧に議論していけたらと思いますし、ご紹介があった知財計画にもやるべきことがいろいろ書かれているので、それはそれで意識して取り組んでいくべきだと思います。
加えて、やはり技術の進展も早いですし、状況もどんどん変わりますので、必ずしも従来の枠組みにとらわれないような議論も、都度アドホックに必要があればやっていくということが大事かなというふうに思います。
最初の事務局の方のご説明の中で、さらっと文化DXという言葉が1つございました。この定義自体、私自身もあまり完全には承知しておりませんが、恐らくその含意には非常に広くて深いものがあるのではないかと直感的には感じるところでありまして、少なくとも著作権のことだけを考えていても、文化DXなるものを達成することはきっとできないだろうというふうに感じたところであります。
そういう意味では、DX時代でも文化DXでも同じではあるのですけど、時代とか文脈とか、そういったことについては少し高い視座、将来的な方向性みたいなものをじっくりと踏まえて考えながら、細部の目先のところの制度設計のあるべき姿というものを議論しなければいけないと強く思うところです。当然、細部の議論が必要でないということを申し上げているわけではなく、細部の議論は極めて重要ですけれども、それを考えるに当たって、少し高い視座であるべき論を考えるということが非常に大事なことではないかと思っております。
そのようなことも思いながら、どういう議論ができるのかということは自分自身に問いかけながら、委員の役割を果たしていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。私からは以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
続きまして、渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】
日本音楽著作権協会理事の渡辺です。作曲家でもあります。
先ほど、事務局のほうから御説明がありました、知的財産推進計画2022の内容は、DX時代ならではの想定される新たなソフトウエアニーズに素早く対応していくための計画が示されておりまして、世界の潮流に乗り遅れることがないように進めていかなければならないのは当然のことと思いますが、利用の促進に重点が置かれ、クリエーターへの適切な対価還元が多少でも軽んじられることのないようにしていただきたいと強く願っております。
と言いますのも、先ほど御説明の中で黄色い印がついている中でありましたが読まれなかった部分で、今回の推進計画にも、私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について関係省庁による検討の結論を踏まえ、可能な限り早期に必要な措置を講ずると書かれております。ただ、これは知的財産推進計画2020にも書かれていた内容で、残念ながら2年も経過した現時点においても、対象機器等の特定が行われていません。文化庁のほうでも、私が聞くところでは、非常に努力してくださっているということは存じ上げておりますが、結論が聞こえてきておりません。
ちなみにEUでは、例えばiPhone1台につき700円ほどの補償金が徴収されているという現実と比べましても、日本における著作者への対価の還元に対する国全体の意識が低いと言わざるを得ないかなと私は感じております。
また、これは過去の話ですが、現在既に進行してしまっている話でありますが、授業目的公衆送信補償金制度に関しましても、現時点ではこの補償金をどう分配するかということに関して、サンプリングのデータに基づいて権利者に分配されるということになっておりますが、これは当然のことながらサンプリングですから、サンプリングに引っかからなければ、利用されていたのにもかかわらず、分配金を受け取れないという権利者が多数出てくる結果を招いているわけです。これはJASRACの中でも非常に理事会で大問題になっておりますが、権利者よりも利用者の立場を優先していると言わざるを得ないかなと感じます。
例えば、SARTRASにおいて、これから早く全量報告を目指してほしいと思うわけですが、そういった議論をしようという中で、全量報告ということを目指すと、利用者の負担は多くなるというような意見が出るとすれば、それこそが権利者の権利を軽んじているという考え方そのものではないかと言えると思います。知的財産推進計画を進めていく上で、今まで以上に権利者の保護を最重要に考えていっていただきたいと願っております。
それで、もし可能でありましたら、文化庁のほうで、今おっしゃれる範囲で結構ですので、私的録音録画補償金の対象機器等の特定について、水面下でどのような議論が重ねられているか、現状を少しでも報告していただけるとありがたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
委員の皆様、ありがとうございました。
小委員会におきましては、先ほど御議論いただきました今期の著作権分科会における主な検討課題に沿って審議を進めていくことにしたいと思っております。
なお、著作権分科会におきましては、先ほど御議論いただきましたとおり、文化審議会著作権分科会運営規則第2条、これは参考資料1の7ページですけれども、これによりまして、使用料部会を設置することが決められております。この使用料部会と、先ほど設置を決定いたしました各小委員会に属すべき委員につきましては、文化審議会令第6条第2項、これは参考資料1の3ページですけれども、これ及び、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第2項、これは参考資料1の8ページにございますけれども、これらの規定によりまして、分科会長が指名することとされております。これにつきましては、後日、指名の上、事務局を通じて皆様にお知らせさせていただきたいと思っております。
その他、全体を通じて何かございますでしょうか。
【吉田著作権課長】
分科会長、事務局から、1点よろしいでしょうか。
【茶園分科会長】
お願いいたします。
【吉田著作権課長】
先ほど渡辺委員から御質問がございました、私的録音録画補償金の状況につきまして御説明を申し上げたいと思います。
先ほど渡辺委員から御指摘がございましたように、今年度の知的財産推進計画2022におきましても、私的録音録画補償金につきましては、対象機器の特定について、関係省庁の検討の結論を得て、可能な限り早期ミッションの措置を講ずるというふうにされております。これは計画の記載自体は若干変わっているわけでございますが、数年前からほぼ同じような記述がされているわけでございますけれども、文化庁といたしましても、この対象機器の特定について関係省庁と議論を積み重ねてきておりまして、検討の結論を今回踏まえるという形の記載になっておりますので、我々としてはできるだけ速やかに検討の結論を公表した上で、早期に必要な措置が講じられるような努力をしているというような状況でございます。ちょっと詳細につきましては、大変申し訳ございません、まだ調整中の部分がございますので、この場では差し控えさせていただきますけれども、我々としては、関係省庁と、あるいは関係団体と協議を重ねながら、早期の措置の実現ということにつきまして、引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
【渡辺委員】
ありがとうございました。
【茶園分科会長】
ほかに何かございますでしょうか。
事務局におかれましては、委員の先生方の挙手等がないか、御確認をお願いいたします。よろしいでしょうか。
【小倉著作権課長補佐】
事務局でございます。特段挙手している委員はいらっしゃらないと思いますので、先に進めてください。お願いします。
【茶園分科会長】
では、先ほど申し上げましたとおり、部会及び各小委員会に属すべき委員につきましては後日お知らせいたしますけれども、各小委員会におきましては、本日の各委員からの御意見も踏まえまして、検討を行っていきたいと思っております。ありがとうございました。
最後に、文化庁より御報告いただきたいと思います。参考資料4、そして5につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【渡邉著作物流通推進室長】
著作物流通推進室長の渡邉でございます。参考資料の4を御覧いただければと思います。私からは、著作権契約書作成支援システムについて説明をいたします。
文化庁では、著作物の創作や利用を職業としていない人でも、著作物の利用許諾等に関する契約を簡単に行えるよう、新たに著作権契約書作成支援システムを構築し、本年4月1日より、文化庁ウェブサイトにおいて公開をしております。
文化庁といたしましては、今後、併せて示しております契約書マニュアルも見直すなどして、本システムの活用・促進に努めてまいりたいと考えております。
以上、御報告でございます。
【白鳥国際著作権室長】
引き続きまして、参考資料の5につきまして、国際著作権室長、白鳥より御説明申し上げます。
参考資料5の下のほうに、ポータルサイト作成の背景と書かせていただいておりますが、インターネット上の海賊版による著作権侵害が大きな問題となる中、本分科会におきまして、本年の3月に、海賊版対策について中間まとめを行っていただきました。その中で、相談窓口の新設ということも御提言をいただいたところでございます。文化庁におきましては、そうした相談窓口の開設に先立ちまして、委員からも御紹介いただきましたポータルサイトを立ち上げました。今年の6月1日に文化庁のホームページに公開をいたしまして、フェイスブック、そしてまたツイッターなどでも周知をしましたところ、大きな反響をいただいているところでございます。
この資料の2ページ目に、ポータルサイトの内容について、概略を御紹介しております。海賊版サイトに関して削除要請を行う場合の手順、方法、そしてまた、よくある御質問などについて、分かりやすく掲載するということで進めております。今後の予定のところに記載がございますけれども、今後、ポータルサイトの掲載情報は随時更新するとともに、相談窓口につきましては、8月頃の開設に向けて準備を進めているところでございます。
御説明は以上です。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、他に特段ございませんでしたら、本日はこれまでとしたいと思います。よろしいでしょうか。
では最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。
【小倉著作権課長補佐】
次回の著作権分科会につきましては、各小委員会における検討状況等を踏まえ、改めて日程を調整させていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
以上でございます。
【茶園分科会長】
それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会(第64回)を終了とさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。
――了――
PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。