第21期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)

日時:
令和3年11月17日(水)
15:00~17:00
場所:
オンライン開催
(文化庁特別会議室)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

第21期文化審議会著作権分科会 国際小委員会(第3回)

令和3年11月17日

【鈴木主査】ただいまから、文化審議会著作権分科会国際小委員会第3回を開催いたします。
 本日は、御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、基本的に委員の皆様には、ウェブ会議システムを利用して御出席いただいております。皆様におかれましては、カメラをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には主査から指名しますので、カメラの前で大きく手を挙げていただき、御自身でミュートを解除して御発言ください。
 議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方には、インターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところでございます。特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【鈴木主査】それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 なお、傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音、録画することは御遠慮ください。また、音声とカメラをオフにしてください。
 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【長谷川国際著作権専門官】ありがとうございます。事務局でございます。本日の資料ですが、議事次第の配付資料一覧にあるとおり、資料は、資料1から資料2-2の3点、参考資料が1点ございます。それに加えて、机上配付資料として、本年度実施している調査事業に関するものが1点ございます。机上配付資料はこの場限りのものですので、取扱いには御注意ください。
 以上です。

【鈴木主査】それでは、議事に入ります。
 本日の議事は、議事次第のとおり、(1)及び(2)の2点となります。
 早速、議事(1)の我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応についてに入りたいと思います。
 初めに、事務局より、資料1、国際小委員会中間まとめ骨子(案)について、説明をお願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】事務局から失礼いたします。資料1を御覧ください。国際小委員会中間まとめ骨子(案)でございます。こちらは主に、これまで過去2回分の国際小委員会での御発表や議論をまとめたものでございます。本日の議論を加えまして、中間まとめとして取りまとめるというものでございます。
 1ポツ、「はじめに」ですけれども、今期の国際小委員会では、こちらの3点の事項について審議を進めることとしております。
 (1)我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について。
 (2)は、海賊行為に対する対応について。(3)は、国際的な対応の在り方についてでございます。
 また、知的財産推進計画2021の中でも、施策の方向性としまして、「著作物の海外展開に向けた関係団体との連携等、更なる支援策についての検討」に言及されています。また、短期、中期に取り組むことが求められているということを踏まえまして、本日を含めました過去3回の国際小委員会では、(1)の海外展開の審議を優先して進めてきているところでございます。
 また、幅広く検討を進めますために、委員による御発表の機会を設けるとともに、必要に応じて、有識者からのヒアリングを行っております。主にこちらに挙げました観点について御発表いただいているところでございます。
 2ページを御覧ください。2ポツ、主な論点でございます。こちらはこれまで明らかとなりました現状と課題や考えられる方策等を整理したものでございます。
 (1)海外展開の戦略を立てる際の留意点としましては、1つ目の丸ですけれども、海外展開のキーワードは、グローバルとデジタルです。マーケティング、著作権、ネットワーク、語学力、そういった専門性を有する人材がチームとなり、デジタルを使ったマーケティングに基づいてビジネスを展開するというのが重要ですという話がありました。
 2つ目の丸ですけれども、一般消費者(ファン)へ作品を届けることを念頭に置いた戦略が重要です。アニメから派生するゲームやグッズ等の二次展開を可能にし、作品の魅力・価値を多面的に広げることにつながる。
 3つ目の丸としまして、海外資本による配信手段の寡占化が進む中での取引条件の公平感、また、権利者が権利者として権利を主張できる関係の確保に意識を持っておくべきである。
 4つ目の丸としまして、海賊版対策ですけれども、正規版の流通と海賊版対策は車の両輪です。正規版を早く出し、日本のみならず海外のファンの視聴機会を創出することが海賊版対策にとっても不可欠である。そのためには、オールジャパンでの連携も必要ではないでしょうか。
 (2)ですけれども、海外展開に当たっての著作権上の課題と、その解決のために考えられる方策等を整理いたしました。著作権の知識と経験が不可欠であり、海外展開の前段階として国内作品の権利処理をしておくべきである。2点目の丸、ローカライズの問題です。3つ目の丸ですけれども、海外進出の支援を行う専門人材、例えば現地の事業関係者と交渉できる人材ですとか、エンタメロイヤー、そういった専門人材が不足しているという指摘がございました。4つ目の丸としまして、現地の市場分析やマーケティングが不可欠である。3ページ目に移っていただきまして、最後、言語の問題ですけれども、海外の仲介事業者が日本語を解さないことが障壁となることが多い。
 以上のような課題に対しまして、これまでの御発表等から考えられる方策の例として挙げていただいた点が5点ございます。
 1つ目がプロジェクトの初期段階から法務人材が関与することが重要。2つ目の丸ですけれども、現地でのマネタイズから最終的な波及効果までを体系立てて理解した上で進めるべきである。3つ目の丸としまして、専門人材を発掘・育成し、情報を一元化してネットワークを形成するとともに、実務的トレーニングの機会を提供することが考えられる。とりわけ中小のコンテンツ事業者が海外進出の支援を得やすくするための仕組みとしまして、相談窓口の構築も有効ではないでしょうか。4つ目として、海外に拠点を置き、現地の情報を有するJETROの機能を活用し、連携することを検討してはどうか。最後ですが、翻訳を含めた交渉のサポートが重要である。下訳の支援があると、海外展開の第一歩を踏み出しやすくなる。
 以上のような点を論点として挙げさせていただきました。
 最後、3ポツ、今後に向けてですけれども、この中間まとめ骨子(案)に、本日の議論を加えまして、中間まとめとして取りまとめ、12月22日開催予定の著作権分科会において報告する予定です。
 施策の方向性につきましては、この中間まとめと、年明け、第4回以降の国際小委員会での審議も踏まえまして、具体化に向けて引き続き検討を進めるとしております。また、既存事業との連携を図りつつ、必要に応じて予算的な支援を検討するとさせていただいております。
 事務局からの説明は以上でございます。

【鈴木主査】ありがとうございました。今、事務局より説明のあった資料1、国際小委員会中間まとめ骨子(案)について、御意見ございますでしょうか。とりわけ、これまで御発表いただいた委員の御意見は、適切に反映されていますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、特段の御意見はなさそうですので、先に進めさせていただきます。
 なお、この中間まとめ骨子案は、この後の御発表の内容を加え、近日中に改めて事務局から照会いたします。更に御意見がある場合は、そちらで頂戴するということにしまして、議事を進めさせていただきます。
 本日は、3人の国内関係者から、コンテンツの海外展開の現状や海外展開に当たっての著作権法上の課題など、現場の御事情を伺い、その後に御議論いただきたいと考えております。
 まず初めに、日本音楽著作権協会の須子委員、続いて、外部有識者として、一般社団法人日本ネットクリエイター協会の仁平様。最後に、今年度、文化庁が委託して実施しております、コンテンツビジネスの国際展開に向けた著作権契約の在り方に関する調査研究の現状報告につきまして、PwCコンサルティング合同会社の千賀様に御発表をいただきます。
 まず、事務局より簡単に趣旨の説明をお願いいたします。

【加茂下海賊版対策専門官】まずお一人目、JASRACの須子理事ですけれども、音楽分野の海外展開に当たりまして、集中管理団体としての役割や、今後必要とされる著作権の観点からの方策等についてお話しいただきます。
 お二人目、一般社団法人日本ネットクリエイター協会、仁平専務理事ですけれども、これまで2回の国際小委員会ではほとんどカバーされていなかった個人クリエイターに関しまして、特に音楽系の個人クリエイターの海外展開の現状や課題についてお話しいただきます。
 最後、3人目、PwCコンサルティングの千賀様におかれましては、日本の著作権者、コンテンツ企業等の権利行使支援を目的として、今年度初めて各分野のコンテンツの海外展開における著作権契約事例の調査と、その成果をまとめた成功事例集の作成をPwCコンサルティングに委託し、進めていただいております。本日は、その中間報告として御発表いただきます。
 以上です。

【鈴木主査】ありがとうございました。時間の関係上、須子委員と仁平様の御発表時間は20分ずつ、千賀様の御発表時間は10分でお願いできればと思います。お三方それぞれの御発表後に質疑応答の時間を設けます。また、最後に全体を通しての意見交換の時間を設けますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、初めに、須子委員に御発表いただきます。事務局の準備が整いましたらお願いいたします。

【須子委員】ただいま御紹介をいただきましたJASRAC常任理事の須子でございます。
 初めに、簡単に自己紹介させていただきます。昨年の6月から現在の立場で、JASRACの国際関係の仕事を担当しております。二十数年前になりますが、まだ音楽コンテンツの主戦場がCDやDVDなどのフィジカルなパッケージ製品であった時代に、海賊盤、違法録音物対策などを担当し、税関での水際対応や法的措置の仕事に携わっておりました。今期、委員を務められていらっしゃるCODAの後藤代表理事にも大変お世話になりました。その後は、楽曲の権利関係についてのドキュメントや権利者への分配に関する仕事を経て、現在に至っております。
 本日はこのような発表の機会をいただき、ありがとうございます。音楽著作権の管理団体の立場から、コンテンツの海外展開と音楽著作権についてお話をさせていただきます。内容としましては、音楽著作権の国際的管理、海外展開における留意点、外国団体からの使用料入金、この3点をテーマにお話を進めさせていただきます。
 委員の方には御存じの方もいらっしゃると思いますが、まずは基本的なところからお話をいたします。世界中の音楽が世界各国で利用されることについて、どのように利用の許諾、使用料の徴収、創作者への分配が行われるのか。国際的な管理の仕組みについてお話をいたします。
 条約により保護義務が課せられている外国作品を国内で利用する際、その都度、海外の著作権者に個別に手続を取るのは困難、というより事実上、不可能です。そこで、世界各国の著作権管理団体がそれぞれの団体の管理作品、私どもは、これをレパートリと呼んでいるんですけれども、このレパートリをお互いに管理し合う契約を締結しています。この管理契約の国際ネットワークによって、海外の作品を国内において自国の作品と同じように利用することができます。
 海外において、JASRACレパートリが利用される場合は、管理契約を締結している海外の団体がJASRACに代わって許諾を行い、徴収した使用料をJASRACに送金してきてくれます。
 なお、この管理契約において、海外の団体が管理対象とするのは、JASRACが外国地域での管理の委託を受けているレパートリです。
 団体間の契約には、演奏利用についての許諾、使用料徴収、分配の権限を付与する演奏権相互管理契約と、録音利用について権限を付与する録音権相互管理契約とがあります。演奏権の管理契約では、必要に応じて法的措置を講じる権限を付与しています。これは演奏権、録音権が及ぶ利用形態の例を表したものですが、配信、放送は演奏権と録音権の複合利用となりますので、演奏権の管理契約と録音権の管理契約、双方の組合せで管理を行っています。
 JASRACは現在、演奏権に関して、96か国、4地域の114団体と、録音権に関しては、78か国、3地域の92団体と契約を締結しています。海外の管理団体との契約の締結に当たっては、相手国に著作権に関する法律があること、当該団体が著作権協会の国際組織であるCISACに加盟していること、こちらを原則的な契約条件としています。CISACに加盟する団体は、管理業務の透明性や効率性、許諾条件の公平性、使用料分配の正確性などについて、いずれも高い水準が求められています。
 CISACについて簡単に御紹介をいたします。CISACは、著作権の国際間の保護、著作権制度の調和、創作者の利益の増進などを目的に、1926年にパリで設立された非営利民間の国際組織です。JASRACは、1960年に加盟し、2018年から、理事長の浅石が理事会の副議長を務めております。
 CISACの主な活動としては、著作権制度・集中管理制度の強化を求めるロビー・広報活動、著作権管理団体のない国において、団体設立に向けた支援や小規模団体への資金援助や研修、著作権の集中管理を効率的に行うためのシステム開発、加盟団体の活動の標準化やルールの策定、そして、著作権・文化市場の調査、大きく分けて、この4つに大別されます。CISACは、各国の管理体制を整備し、団体間の調整を図ることによって、著作物が合理的、効果的に利用、流通されるように活動しています。
 外国団体との相互管理契約についての話に話を戻します。相互管理契約の特徴は、契約の対象地域を各団体の管理する単一地域に限定しています。演奏権については、排他的権限と訴権を付与しています。自らの会員の著作物と同一条件で相手団体のレパートリを管理します。音楽配信、放送は、演奏権と録音権の契約によって管理をいたします。
 それぞれについて少し詳しく見ていきます。
 まず単一管理地域ごとに権限を付与すること。その意義は、その国における集中管理にあります。管理団体は、自国における内外音楽の許諾の窓口として、利用者に対して一括許諾という利便性を提供します。世界中の音楽を利用する放送事業者とのブランケット契約がその一例として挙げられます。
 国民に、著作権保護と集中管理制度の理解を促進するのも管理団体の重要な役割です。レパートリを集中管理することにより、交渉力を高め、併せて管理能力を向上させていくことによって、創作者、著作権者に対する安定的な権利保護を実現することができます。
 WIPO、文化庁さんとのアジア団体の研修プログラムは、各国の知財保護制度の整備と集中管理団体の設立を支援するものであり、JASRACも積極的に協力しているところでございます。昨今、単一地域ごとの管理と逆行する動きとして、世界的な音楽出版社が、一部のグローバル配信サービスに対して複数地域の許諾を出すという事例がございます。この直接許諾の対象とされた国の団体は、自国における当該配信サービス事業者への許諾の中から、対象楽曲を特定して除外する、いわゆるカーブアウト対応を労力と費用をかけて行うこととなります。
 複数地域にまたがった直接的な許諾は、現地の権利者との権利競合による二重請求や、カーブアウト対応のトラブルなど、権利処理を複雑化し、その影響は団体の管理負荷にとどまらず、利用者の利便性を損なう懸念もございます。
 相互管理契約では、排他的に権限を付与します。中国を例にとると、JASRACは中国の音楽著作権管理団体であるMCSCに排他的に権限を付与する契約を締結しておりますので、MCSCが中国におけるJASRACレパートリの利用を独占的に許諾いたします。排他的権限の付与と単一地域ごとの管理は、集中管理団体を支える相互管理契約の原則です。
 演奏権相互管理契約では訴権を付与していることから、海外の楽曲であっても、無許諾利用に対して法的措置を講じることができます。中国、台湾、タイなどで、JASRACレパートリに関する法的措置が行われており、JASRACもこれを支援しております。
 CISACでは、作品あるいは権利者による差別的な取扱いをすることを禁止しています。管理団体では、独自に利用許諾条件、料率、権利者への分配に関するルールを設定しています。そのルールや管理手段は、自らの会員レパートリだけでなく、海外レパートリに対しても適用することになっています。国際管理のネットワークでは、音楽著作権は、音楽が利用される国やルール、基準に従って、その国の音楽と同等に管理されます。
 音楽配信については、公衆送信権は演奏権の契約で、複製権、送信可能化権は、録音権の契約によって管理されます。そして、許諾は、配信先の国の管理団体が行うことが国際的な慣行となっております。
 こちらは使用料徴収から分配までの流れを表したものです。利用者は、利用する国の団体の規定に従って許諾を受け、使用料を支払い、利用の曲目報告をしてきます。各団体は、この利用報告に基づいて、楽曲を特定し、使用料を契約団体、日本の楽曲であれば、JASRACに送金してくれます。
 国際間での円滑な管理のための取組を幾つか紹介いたします。管理団体は、CIS-NetというCISACが運営するオンライン検索システムに、団体のレパートリ情報、例えば、作品名、権利者名、所属団体など、これらを登録して共有しています。CIS-Netには現在、およそ8,400万件の作品情報が掲載されています。このほかに、スライドにはありませんが、キューシート情報を共有するCIS-Net、AVIシステムがございます。このシステムには、各団体が提供したキューシート情報を基に、映像コンテンツ名、製作年、製作会社、監督名などが登録されています。
 管理団体は、登録情報を基に、必要なキューシートを入手することができます。団体間で効率的な管理、情報交換を行うために、それぞれの作品には国際標準コード、権利者には、CISACの標準コードを附番して管理しています。また、分配や作品届などの情報交換は、共通フォーマットを用いて行うこととなっております。
 これまでお話をしてきました、国際的な管理の仕組みを踏まえて、コンテンツを海外展開する際の留意点について触れたいと思います。
 まずライブコンサートを海外で行う場合についてです。この場合には、現地プロモーターが現地の著作権管理団体から許諾を得る必要があります。現地のプロモーターとの契約に著作権処理の条項が含まれているケースがありますが、演奏利用については、現地の管理団体が許諾を行うこととなっておりますので、この点に留意が必要です。
 また、著作権処理をスムーズに行うためには、演奏会セットリスト、曲目リストでございますが、これを現地団体に提出することが必要です。
 次に、放送番組での利用についてです。著作権管理団体の多くは、自国の放送事業者と包括的な許諾契約であるブランケット契約を締結していますので、番組販売等の海外展開を行う際、販売元が放送の許諾を取る必要はありません。ただし、現地の権利者からシンクロナイゼーションの権利を求められることがあり、その場合は、別途処理が必要となります。権利者への正確な使用料分配には、番組のキューシート情報が当該地域の管理団体に提供される必要がございます。
 音楽配信の利用については、先ほど御説明しましたとおり、日本からの配信であっても、配信先の国の管理団体から演奏権と録音権の許諾を取る必要があります。アジアの知財当局は、配信に限らず、国内の音楽利用に関する許諾は国内の管理団体が行うという見解を示しており、外国団体による直接許諾を認めていません。
 最後に、外国団体からの使用料入金について御紹介をいたします。JASRACでは毎年、前年度の使用料分配額の多かった作品にJASRAC賞を贈呈しています。海外の著作権管理団体からの入金が最も多かった国内の作品には、国際賞を贈呈しています。今年の国際賞は『NARUTO-ナルト-疾風伝BGM』でした。アメリカ、ヨーロッパ、ブラジルなどの各国の団体から放送使用料の分配がございました。
 御覧のとおり、アニメの主題歌やBGMが海外からの入金の上位を占めております。昨年度の外国入金額は8.7億円でした。世界中が新型コロナウイルスのパンデミック下にあり、厳しい状況でしたが、昨年度比134.4%となりました。特に、アジア地域からの入金は堅調に伸びております。中でも中国からの使用料分配は、昨年度、韓国をしのいで、アジアの団体からの入金額としては、トップでした。
 音楽について、国際的管理の仕組みを中心にお話をしてまいりました。最近、海外での配信について、JASRACで一括して許諾を出してほしいという御相談を受けることがございます。先ほどお話ししましたとおり、複数地域への直接許諾は著作権処理の複雑化を招き、コンテンツの円滑な海外展開の妨げにつながる懸念もございます。
 このような状況を踏まえ、JASRACでは、海外展開の御相談があった場合には、現地の管理団体についての情報や、許諾を得るための手続の御案内など、利用者の方に、具体的な情報を提供するなど、手続に関する橋渡しも行っております。私どもは、どこの国で音楽が利用されても、安定的に創作者の権利保護が図られることが文化の発展を支えるのだという理念の下、海外における集中管理団体の設立や支援など、著作権処理のインフラ構築にも力を尽くしているところでございます。
 御清聴ありがとうございました。

【鈴木主査】ありがとうございました。ただいまの須子委員の御発表につきまして、御質問等ございましたらお願いいたします。
 後藤健郎委員、お願いします。

【後藤(健)委員】どうも須子さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。そしてまた、偉くなられて、大変うれしい限りです。
 それで、須子さん、2つ質問させてください。この相互管理契約のネットワーク、更にCISACの枠組みということで、すばらしい環境だと思います。そこで逆に、裏の話として、この相互管理契約を結んでいる国々、アジアでもあったり、中国もそうなんですけれども、ちょっと不信感というか、不正申告、キューシート情報で不正の申告を排除しているとは思うんですけども、この辺で、いわゆる監査とかそういうのはどういう感じでやっているんでしょうか。例えばCISAC視察団みたいなものがあって、何年かに一遍、監査に行くとか、まずは一つ、それが質問です。
 それと2つ目が、やっぱりこれだけすばらしいネットワークがあると、悪いやつは、締結していない国、いわゆるタックス・ヘイブンじゃないですけども、締結していない国から、違法配信を、基地めいたところで海賊版を配信するんじゃないかなというような気もするんですが、そういった事例というのはあるんでしょうか。
 以上2つです。

【鈴木主査】須子委員、お願いします。

【須子委員】まず先ほどCISACのところで御説明しましたけれども、CISACとしては、管理団体に対して高い水準を要求していますから、当然監査も行っております。そして、その監査の中で、不適切な事例が見られれば、是正を求めることをしておりますし、長きにわたって改善されなければ、一時的な除名といった措置もございます。
 それから、海外での配信において基地のような違法なところがあるかについては、今、私がすぐに答えられるような情報は持っておりませんが、そういったものがあれば、国際的なネットワークを通じて、立ち向かっていくということになろうかと思います。

【後藤(健)委員】どうもありがとうございました。

【須子委員】ありがとうございます。

【鈴木主査】ほかはいかがでしょうか。唐津委員。

【唐津委員】御発表ありがとうございました。唐津と申します。
 お伺いしたいことは、ライブコンサートに関する契約のところで、シートで言うと16ページの辺りのお話なんですけれども、そこに「日本のアーティスト事務所等が現地プロモーターとの契約に著作権処理の条項を含めることがあるが」とありまして、現地著作権団体が管理しているので、「現地プロモーターとの契約にライブコンサートの演奏許諾を含めるとトラブルの原因になる」というお話だったと思います。恐らく一般的な契約ですと、現地での著作権処理に関してはプロモーターが責任を持って行う、例えば日本で行うときには、日本の主催者がJASRACの手続を取るという条項が入っているところに、海外公演であればちょうど反対の感じで入っているかと思うのですが、そういう条項であればオーケーということなんでしょうか。「問題になる条項」というのは例えばどういう条項なのかなと思いまして、具体的に伺えればと思うんですけれども。

【鈴木主査】須子委員、お願いします。

【須子委員】契約上に、著作権処理はもう日本国内で済んでいるというような、そういう条項が入っていると、現地に持っていったときに、現地の管理団体が権利行使をしようとした際にトラブルになるということでございます。

【唐津委員】日本から行くアーティストが権利処理は既に済んでいるということを言ってしまうと、実際には処理が済んでいないという、そういうお話でしょうか。

【須子委員】そうですね。JASRACは先ほどお話ししましたとおり、現地の団体に排他的に演奏権の権利を与えていますので、そこで権利処理をするというのが国際ネットワークの慣行になっています。日本で処理しているというような契約書になっていると、それがトラブルの原因になるので、演奏権の手続は現地のプロモーターが現地の管理団体で取っていただくということになろうかと思います。

【唐津委員】ありがとうございました。

【鈴木主査】茶園委員、お願いします。

【茶園主査代理】ありがとうございます。お伺いしたいのは、ある国の1つの管理団体が、その国の著作物の100%とかそれに近い割合を管理している場合ではなく、複数の団体が存在する場合にどうなるのかについてです。まず、複数の管理団体が存在しているという状態にある国が世界においてどの程度かという現状を教えていただきたいと思います。次に、複数の管理団体が存在する場合に、どうなっているのか、つまり、複数の団体の全てがCISACといったネットワークに入っていれば、特に問題はないのでしょうが、例えば大きな団体だけ入って、小さな団体は入らないというようなことになっているのかについて、お知らせいただきたいと思います。
 以上です。

【鈴木主査】須子委員、お願いします。

【須子委員】そんなには多くないんですけれども、国によって、複数の管理団体があるところは存在しています。例えばアメリカはASCAPとかBMIとか、そのほか管理団体が幾つかございます。その場合にも、先ほど申し上げましたとおり、CISACの加盟団体であれば、CIS-Netなどの管理ツールを用いて、それぞれの団体のレパートリを共有しておりますので、その情報を参照しながら、お互いに管理をし合うということになります。

【茶園主査代理】実際、例えば、JASRACさんが、外国の音楽の許諾を受けたいという人が来た場合に、その国の管理団体はCISACに入っているのだけれども、対象の音楽は、その団体とは別の団体が管理している、CISACに入っている団体が管理していないとかということは、余り生じないことなのでしょうか。あるいはそれほど珍しくないことなのでしょうか。

【須子委員】海外の楽曲に関しては、作家がほとんど団体のメンバーになっておりますので、CISACの加盟団体以外の楽曲ということは余り例としてないですが、管理契約がない団体のレパートリの場合には、許諾の対象外となります。

【茶園主査代理】どうもありがとうございました。

【鈴木主査】森下委員、先ほどから手を挙げられていましたけど、お待たせしました。

【森下委員】御説明ありがとうございました。すごく分かりやすくて、勉強になりました。ありがとうございます。私の方から、実際に音楽の海外展開ビジネスの中で、本当はもっとチャンスがあるのに、実はなかなか進んでいないだろうというような仮説を立て、実は日本のシンクミュージックビジネスですね。そこを推進していこうということを実際にこの2年ぐらいやっておりまして、その共有と、それに関することで質問をさせていただきたいと思います。
 JASRACさんの本業である、楽曲登録がすごく大事だということをそのシンクビジネスに関わっている方がおっしゃっていました。アメリカで、例えば映画に音楽が使われるときに、ミュージックスーパーバイザーという役目の方が、その映画でかかる、どの音楽がはまるのかというのを探すんですけれども、JASRACさんの登録の番号が入っていないと、キューシートに記載することができずマネタイズの機会を逃していると。あと、英語のタイトルが全くないと検索することもできないので、ビジネスのチャンスを逸しているというふうに、すごくそれが悲しいとおっしゃっていました。登録されていくことで、先ほど8億円の収入があったとお伺いしていますが、実際のところは本当はその何倍もチャンスはあったんじゃないのかなと考えていまして、質問としては、どこまで御発表いただけるか分からないんですけれども、実際にうまくいった例は先ほどランキングが出ていたんですけれども、機会を喪失してしまったというようなお話はやっぱり耳に入られてくるんでしょうかという、すみません。お答えにくいかもしれないのですが、よろしくお願いします。

【須子委員】ありがとうございます。私どものメンバーであれば、調査依頼という制度がございまして、海外のここで利用されたんだけれども、分配がないから調べてくれないかという、調査依頼に基づいて後づけにはなりますけれども、各団体に問合せや働きかけをして、遡及的な対応を取ることがございます。
 それから日本語だけでなくアジア圏の言語は、漢字、ハングルなど欧米のアルファベットとは文字体系が異なっています。私どもの情報共有ツールであるCIS-Netなどにダブルバイト文字の対応ができるように取り組んでいるところです。これはCISACの中の地域委員会の一組織であるアジア太平洋委員会と連携して取り組んでいます。
 また、現地で使われる作品名と、日本の作品名が異なっているという場合も多々ございますので、できる限りその現地で使われている作品名を入手して、整備していくことで、利用機会の獲得にもつながるよう取り組んでいるところです。

【森下委員】ありがとうございました。

【鈴木主査】ありがとうございました。生貝委員、お願いします。

【生貝委員】大変貴重な御説明ありがとうございました。非常に勉強になりました。御質問といたしまして、資料の中で、12ページで御説明いただいたように、今、デジタル配信等の場合、配信元の国である、この配信先の国の管理団体が許諾を行うことになっているということで、これはなるほどと思ったところなのですが、例えば、恐らく音楽配信サイト等であれば、国ごとに配信レパートリを分けることをすることで対応するのかなと思うのですけれども、地方で、UGC、例えばYouTubeに対してJASRACさんはブランケットのライセンスを出していらっしゃると認識しているんですが、YouTubeは、ジオブロッキングのようなことはやっていないですよねというふうに言ったときに、正に、ああいったUGCのような、YouTubeのような仕組みというのはどういう位置づけになっているのかということについて、よろしければ教えていただければと存じます。

【鈴木主査】須子委員、お願いします。

【須子委員】JASRACでは、YouTubeと日本国内における利用についての許諾契約を締結しておりますので、日本におけるアクセスに対して、UGCも含めて許諾の対象としています。また、無許諾・不適切なサイトがあれば、それは個別に連絡して、削除していただくというような対応もあると承知しています。

【生貝委員】ありがとうございます。そうすると、日本国内でというと、例えば、日本人がJASRAC様の管理楽曲を使って、日本から投稿した音楽つきのコンテンツについては、海外から見られない仕組みになっていると、そういう理解でよろしいでしょうか。

【須子委員】YouTubeへの日本人の投稿を例にとって申し上げますと、JASRACとYouTubeとの契約は、日本で視聴されたコンテンツを許諾の対象としています。一方、その日本人の投稿がアメリカで視聴された場合には、アメリカの管理団体がJASRACとの契約にもとづいて使用料の徴収をして、JASRACに分配が行われるという、そういう仕組みになっております。消費される国において使用料の許諾と徴収が行われ、権利元の団体に送られてくるというそういう仕組みでございます。

【生貝委員】ありがとうございました。

【鈴木主査】すみません。実は私も今のところ、関心があって、質問させていただきたいのですが、今のお話の延長上なんですけれども、外国で動画投稿サイトの外国人のユーザーが日本の楽曲、JASRAC管理楽曲を歌って、それをアップしたという場合に、世界中、どこでも見られるとしても、JASRACは直接的には日本で見られる分について許諾をされるということと理解しましたが、そのアップした国との関係についてはどうなんでしょう。

【須子委員】配信された国で、許諾を取るということが国際慣行になっておりますので、日本人が日本で投稿したものであっても、外国人が外国で投稿したものであっても、日本の消費者が視聴した動画に関しては、JASRACにおいて処理がされますし、アメリカでJASRAC管理曲が視聴された場合は、演奏権の部分に関しては、相互管理契約を締結している団体であるASCAPやBMIが、録音権に関しては、私どもと契約を締結している事業者が、使用料を徴収して、JASRACに入金されてくるという仕組みでございます。

【鈴木主査】ありがとうございます。
 今村委員、お願いします。

【今村委員】今村です。丁寧な御解説をいただきまして、非常に管理の仕組みがよく分かったんですけれども、2点お伺いさせていただきたいと思います。1点目は、8ページ目のところの単一管理地域ごとの相互管理というところの問題で、世界的出版社が欧米団体やライセンスハブを通じて、デジタル配信の複数地域に対する直接許諾を行うとか、いろいろ問題を、権利処理を複雑化させているという点なんですけれども、私は余りよく分からないのですが、これに関しては、この世界的出版社がこういう実務を行っていることは、何か集中管理団体との契約に反するようなことをやっているわけではないけれども、問題だということであるのかという点と、そして、なぜこういう世界的出版社が、集中管理という形ではなくて、こういう直接許諾をするのかという点を伺いたいと思います。もう1点は、最後の方に、国際賞などの例を挙げていただいて、外国入金は8億7,600万円程度のもので、潜在的にはもっとあるのではないかということは、さっき森下委員の話でもありましたけれども、逆に、外国に対する送金というのがどのぐらいなのか、もちろん日本の著作権等使用料の国際収支状況は、もう数十年マイナスの状況だと思うので、大きな差があることは何となく分かるんですけども、どの程度のギャップなのかというのが、もし今、データがありましたら、大ざっぱでもよいので分かれば教えてもらいたいのが2点目でございます。
 以上です。

【鈴木主査】須子委員、お願いします。

【須子委員】最初はたしか複数地域許諾の話ですよね。世界的な音楽出版社がライセンスハブを通じて、デジタル配信の複数地域に対して許諾しているという、これは具体的にはどのようなことなんだろうかという、そういうことでございますね。

【今村委員】そうですね。

【須子委員】これは先ほど来御説明しましたとおり、単一地域について許諾を出すというのが国際間の慣行としているところ、例えばワールドワイドで許諾を出してしまうと、その権利を預かっている管理団体と出版者間で権利の競合が発生してしまいます。現地の団体がグローバル配信事業者に許諾を出す際に、既に世界的な出版者から許諾済みと言われてしまうと、許諾の対象から外すという作業が出てくる。これは重複請求などのトラブルの原因にもなり得ます。各国の管理団体による集中管理の促進という中長期的な視点に立った国際慣行と、短期的な視点に立った権利の確保との競合ともいえるかもしれません。
 それから、外国送金に関してですよね。入金と比べれば、それなりの金額がございます。昨年度の実績では、112団体に対して送金を行っており、送金先の裾野は広いです。金額については、控えさせていただきたいと思いますが、アメリカ、イギリスへの分配が多くをしめています。

【鈴木主査】今村委員、よろしいでしょうか。ちょっと時間が押してまいりましたので、須子委員の御報告に対する質疑は取りあえず以上とさせていただきまして、次に移りたいと思います。
 仁平様に御発表をいただきます。事務局の準備が整いましたらお願いいたします。

【仁平様】皆さん、こんにちは。日本ネットクリエイター協会の仁平でございます。今日はこういった場で発言の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 早速、私の方からは、UGCと言われている個人クリエイターさんのコンテンツの海外展開の現状と課題という形でお話をさせていただきたいと思います。主に音楽系の話に今日は特化するのかなという感じです。今日、お話しさせていただきますのは、ここに書いてある5つです。
 まず我々日本ネットクリエイター協会、JNCAと呼んでおりますが、我々の紹介について。2番目として、個人クリエイターさんが現状、どういうような感じで活躍されているのかというところ。3番目としましては、個人クリエイターさんの活躍を著作権というところから見てみようかなと。4番目としまして、個人クリエイターさんならではの強みとか、新しいテクノロジーを使ったいろいろな仕組みをうまく活用しているんだよというところを説明させていただいて、最後に、個人クリエイターさんが抱えているであろう課題というところでまとめさせていただきたいと思います。
 最初に我々JNCAの紹介なんですが、今、ネットで活躍するクリエイターさん、たくさんいますよということで、1,200名以上のクリエイターさんが実は今、JNCAには加盟しております。これはいろいろなタイプのクリエイターがいて、音楽だけじゃなくて、ゲームをつくっている、小説を書いている、絵を描いている、漫画を書いている。そして、それらの複合型コンテンツ、最近、本当にこの複合型コンテンツが増えてきたんですが、複合型コンテンツ、いろいろな分野の方たちがいらっしゃいます。
 そのJNCAは、そういったクリエイターの方たちを、ここに書いてある、太字で書いてある5社、及び細い字で書いてあるたくさんの企業様によって成り立っていますよという形です。
 上の方を説明しますと、アニメイトさんというのは、これはUGCコンテンツの販売をしている流通屋さんです。エクシングというのは、これはおなじみジョイサウンドのカラオケですよね。KADOKAWAさんは、これはもう有名だと思います。今だと、最近だとラノベだとか、漫画だとか、そういった世界でもかなり強いですよね。クリプトン・フューチャー・メディアさんは、初音ミクをつくっているメーカーさんです。そして、ドワンゴというのは、ニコニコ動画をやられている会社です。
 そして、賛助会員として細字で書かせていただきまして、本日、隣にいらっしゃいます須子様が御所属のJASRAC様も賛助会員になっていただいて、そして、NexToneさんも、今、賛助会員になっていただいております。こういった、いわゆる個人クリエイターにとって、とても関係のある団体で成り立っているという感じです。最近は専門学校さんが賛助会員になっていただくというパターンが多くて、私の方も将来のクリエイターさん向けにいろんな講義もさせていただいております。
 では、何をやっているかというところなんですが、一番上の方からは、ちょっとかたいところで、確定申告のサポートをやっていますようとか、国民健康保険のあっせんをやっています、資産運用のサポートをやっていますということを書かせていただきました。
 2番目として、今日の問題にもなるんでしょうけど、実は著作権のいろいろなトラブルがありますので、そういった部分を解決するサポートをしております。
 3番目として、皆様は、原盤二次使用料というものがどのようなものか大体お分かりだと思うんですけども、いわゆる日本の著作権法では、報酬を請求する権利がありますよと言われている権利です。報酬を請求する権利があっても、UGCクリエイターの方はどうやってその権利を行使していいのか、ほとんどの方は分かりません。なので、我々が代行して、報酬を請求して、お金を取ってきて分配するという仕事をしています。
 4番目が今日の私の発言もここに当たるんだと思いますが、著作権における啓蒙活動、これは音楽と書きましたけど、実は音楽に限らず、いろいろな啓蒙活動をさせていただいております。JASRAC様やNexTone様にも本当に協力をいただきまして、我々が主催する生放送であったり、大きなイベントでニコニコ超会議という、ドワンゴの大きなイベントがありますが、そういったところもいろいろな方に出てきていただいて、お話をしていただいております。
 以上が我々日本ネットクリエイター協会の簡単な説明でした。
 では、まずはUGCコンテンツをつくっている個人クリエイターさんの現状というものを説明させていただきたいと思います。
 今ここに「収益化の手法の多様化」ということが書いてあります。物の販売だけではありませんよというのは当然のことながら、デジタルの販売も含めてですけども、ダウンロード販売、ストリーミング販売だけではなくて、例えば、先ほどから出ていますYouTubeのような、いわゆるYouTubeで流れることによって広告収入を得るというものも含めて、いろいろな手法が多角化してきますということを書かせていただきました。実はここは結構大きくて、UGCクリエイター、音楽系クリエイターの場合は、このYouTubeのContent IDという仕組みがあるんですけど、YouTube Content IDにおける広告収益の分配、及び、ニコニコ動画であれば、クリエイター奨励プログラムという、やはり同じように広告収益の分配ですね。こういったものがかなり、特にコロナ禍で相当増えました。
 あとは、前から強いのがカラオケでの展開、そして、配信展開、そして、実は利益率が高いのは、これは物ですけれども、同人CD販売というものもあります。
 2番目として、彼らは、二次創作を活用して収益を上げていますよということを書いてあります。あえて他人に使ってもらうということで収益を上げます。これを実現化しているのが、先ほど話しましたようなYouTubeのContent IDとか、ニコニコ動画におけるクリエイター奨励プログラムのように、自分の楽曲が使われていいて、他の方がアップロードした動画からも収益を得る方法というのが出てきているわけです。そういったものを最大限に活用することによってお金を稼げるという形です。
 3番目、ここは結構大事で、こういったところでお話をすると、UGCクリエイターのことを、皆さん、アマチュアクリエイターとお呼びになるんですよ。とんでもないんですね。私どものところで、JNCAの会員になっている方というのは、先ほどお話あったように、確定申告サポートや国民健康保険のサポートをしているというのは、それなりの確定申告の金額があって、国民健康保険の料率がものすごく高い人たちなので、アマチュアどころの話ではないです。
 YouTubeからの収益だけでサラリーマンの給与ぐらいを稼いでしまう方も珍しくない、というような、そういう方たちです。なので、ちょっとアマチュアという認識では考えていただかない方がいいと思います。
 これを支えているのは、後でもう少し細かくお話ができるかもしれないんですけども、実は彼らの収益の利益率の高さというものが挙げられます。例えば一番分かりやすい例で、CDで話しましょうか。例えば、売れっ子のボカロPさんだと、同人CDの即売会や、先ほど言いましたアニメイト等を使って、大体1種類のCDを1万枚以上販売します。1枚当たりの制作単価というのは、自分で作詞作曲、打ち込み、そして、これはスタジオを使いませんので、言ってみたら家の電気代です。そして、あとはプレス代と印刷費、それで換算すると、大体1枚当たり90円ぐらいでCDができてしまいます。その90円でできたCDを2,500円で売るんですよ。若しくはもうちょっと高い値段で売る場合もあります。それが1万枚売れたら、それだけで、利益だけでベンツを買えますよね。そのくらいの規模なんです。つまり、粗利が太いというところがちょっと意味があると思います。
 それと、最後に、これは様々なコンテンツ販売サイトというものが出てきています。これは先ほど言いましたようなYouTubeさんやニコニコ動画も、これは販売ではないですけど、収益サイトですが、それ以外にもいろいろな楽曲を販売するサイトというものが出てきています。アグリゲーターさんと言われている、楽曲を配信サイトに入れ込んでくれる業者さんというのもたくさん出てきているので、そういったことを活用することによって収益を上げていますということです。
 続きまして、では、海外はどうなんだというお話をさせていただきます。先ほどアグリゲーターの話もしましたが、もう今や配信となったときに、やっぱりSpotifyは外せないんですね。個人向けアグリゲーターとして有名なところ、幾つかあります。チューンコアさんもそうですし、あと、ルーター・エフエムというところもあります。そういったところが普通に海外に持っていってくれているので、まずはそこの海外配信というものはあります。
 そして、次に、YouTube Content ID、先ほどYouTubeのお話、いろいろ出てきましたが、ここでの収益はまず原盤のマッチングが行われることによって、そのマッチングによって広告収益の最大55%をクリエイターに返すという仕組みがあります。全体の中の12%が著作権印税ですよという割当てなので、最大12%というのが著作権印税として入ってくるんですが、これがJASRACさんに配信権を預けているか、NexToneさんに配信権を預けているかによって、ちょっとそのお金の流れが微妙に違うようです。
 この辺りがすごく複雑なので、これだけ話すだけで2時間ぐらいかかってしまうので割愛させていただきますが、YouTube等を使って、このContent IDを使っての収益をしています。この規模が結構大きくて、また、先ほど二次創作でクリエイターさんは収益を上げていますよという話をしていますが、つまり、自分のアップロードした動画の中の音楽の収益だけではなく、ほかの方たちがその音楽を使って、例えばダンスをする動画を上げてみましたとか、ほかに、例えばそこで歌を歌う動画を上げてみました。いろいろあると思うんですが、そういったものも全部Content IDではお金を引っ張ってくることができますので、本当に中堅どころのクリエイターですら、3か月に一遍、我々のとこにお金が入ってくるんですけど、3か月に一遍、100万円というのは中堅どころぐらいのクリエイターです。もっと上の方たち、普通にいます。つまり、そのくらいの規模なので、前に戻りますが、決してアマチュアではないんですというお話です。
 そして3番目に、海外ライブへの楽曲提供と言いました。これは皆さんの中で御存じありますかね。初音ミクさんは、海外ライブがとても成功されているアーティストの一人です。コロナ禍で、初音ミクさんの海外ライブは止まっていましたけど、コロナの前は普通に北米ライブ、カナダ、USA、メキシコ、そして、中国、それだけじゃなくて、ヨーロッパライブもやっています。イギリス、フランス、ドイツとやっています。コロナが始まる直前に、それにスペインを加えて、4か国のヨーロッパライブというのが実は予定されておりました。そのくらい実は初音ミクの力というのはあるんです。
 初音ミク以外にも、ボーカルソフトはありますが、ボカロの楽曲というのは結構人気が高いです。先ほど、海外で違法配信というのがどうなのかというお話もありましたが、実はボカロ楽曲、海外の違法配信、すごくされています。有料配信なのに、勝手にボカロ楽曲、結構使われていたりして、国も英語圏だけじゃなくて、ロシア語圏とかも結構多くて、そうなってくると、どうクレームしていいのか実は分からないというところもあります。これは後でまた課題として挙げたいと思いますが、そういった部分で、海外というのは結構強いんですよというお話です。
 一番最後に、海外での同人CDの即売会への参加ということを書かせていただきました。これは、いわゆる日本で言うコミケみたいなものが実はいろいろな国であります。そういったところに、ボカロPさんが個人で参加して、自分のCDを売ったり、若しくは、CDはそんなに売らないで、握手会をやったりということがやられています。実はこれもいろんなトラブルがあるので、また別途お話しさせていただきたいと思います。
 次に、現存する個人クリエイターの管理体制というところで、管理の部分から考えております。これは個人クリエイターさんは、基本的に音楽系クリエイターさんは自分の楽曲を音楽出版社にまず預けますという文化が10年ちょっとぐらい前からできました。それも初めは須子様の隣でこういうことを言うのも何なのですけども、ボカロPさんの中にはアンチJASRAC思想が相当強かったんですが、その当時の理事だった、後に理事長になった、浅石さんの前の理事長、菅原理事長さん、当時理事でしたけど、菅原さんに私の生放送に出ていただいて、JASRACがこういう形でカラオケから印税を取っているんですよという御説明をしていただきました。その後、私の方からマンツーマンでクリエイターさんに何度もお話をすることによって、JASRACの意義とか音楽出版社の意義が伝わるようになり、有名な楽曲は今、音楽出版社さん経由で、JASRAC様、若しくはNexTone様に預けられています。ところが、これはまた後でちょっと出てくるかもしれないんですけど、JASRACさんに楽曲が預けられて、配信権がJASRAC様だとしても、海外で使われたときの著作権印税の作曲家さん、作詞家さん取り分というのは、実はそれだけだと取れないんです。JASRACさんは、相互管理契約があるので、音楽出版社分というのは、基本、配信の分を取ってきてくれるんですけども、実際にクリエイターさん、作曲家、作詞家の方には、著作権印税がそれだけだと入りませんというのもあって、じゃ、そのために取るにはどうしたらいいんだ。それはもう答えは簡単で、JASRACのメンバーになりましょう、準会員になりましょう、正会員になりましょうという、そういうことです。
 それに関しては、本当にJASRAC様の多大なる御協力の下、いろいろな勉強会だとか、JASRACメンバーになるための、そういう実務的な会を開いていただいていまして、今では結構有名どころのボカロPさんはJASRACメンバーになるということが実際に起きてきています。でも、まだまだ数は足りないと思います。
 3番目に、これはYouTubeなんですけども、NexToneさんが、今、YouTubeのパートナーとしてかなり強い契約をしてくれています。実はYouTubeのパートナーさんというのはランクがA、B、Cとあるらしくて、どこと契約をするかによって、クリエイターさんに入ってくる金額の最大、料率の上限が変わります。今、NexToneさんは最高ランクのAなので、YouTubeでContent ID登録をするのであれば、NexToneさんが有利ですよという情報は、須子様の隣でこれを言うのもちょっとあれなんですが、NexTone様が今、有利ですというところはお話はさせていただいております。
 最後に、日本ネットクリエイター協会は、先ほど二次使用料等の徴収、分配をしているということを言っていましたので、これを海外にもいろいろ展開したいなということで、例えばBMATさんとか、そういう海外の放送局に対して使われたよ、使われていないよというのをデジタルマッチングするような仕組みを持っている企業さんなんですけど、まだこれは勉強会というようなレベルですが、そういったところと将来的にはやっていきたいなと思っています。
 今も著作権の話はかなりしたんですけども、これを改めてもう1回まとめてみますと、まず海外からの著作権印税が本当に取れているのかなという問題です。先ほどから、先生方からも御質問ありましたが、これは「JASRAC信託への信頼と不安」と、これもまた失礼なことを書いてしまいましたが、ここの不安というのは、実は2つあります。1つは、先ほど須子様の方からもお話があったとおり、海外における放送や配信は、日本の支分権における演奏及び録音の複合ですよというお話があったと思います。実はボカロPさんの場合は、いろんな事情があって、演奏権はJASRACですが、録音権はNexToneという場合が結構多いんです。
 じゃあ、JASRAC配信権、NexTone録音権の場合、それが海外のストリーミングで使われたときにはどうなるのか。海外でダウンロード販売されたときにはどうなるのかというところのいろいろな懸念点があります。といいますのも、ストリーミング配信もダウンロード配信も、日本だと、JASRAC様の支分権区分だと、両方ともインタラクティブ配信なんですが、海外だとストリーミングは演奏権マター、ダウンロードが、どちらかというと録音権マターになっています。この辺が本当にどうなっているのかなというところです。
 もう1つは、これも先ほどもお話があったと思いますが、いわゆる2バイト文字、例えばこれは報告書はテキストでやってくるので、ボカロPで一番有名な『千本桜』という曲が、じゃ、USAで使われたときにどういうふうにそれがちゃんと漢字で千本桜、もしくはアルファベットで「Senbonzakura」だったらいいんですけど、違う表記だったらどうなるんだろう。例えば「ワンサウザンド・チェリーブロッサム」と書かれていたらどうなるんだろうとか、やっぱりテキストでやっている以上、その辺の不安はあります。これやっぱり将来的にフィンガープリントマッチングというものが出てくると、この辺りの懸念点はなくなるんですが、今現状はあるかなと。
 「NexTone戦略への期待」というのは、これはNexToneさんは、企業to企業、BtoBの契約を各配信会社さんと今まとめようとしております。一部もうまとまっているところもあります。なので、これだったら、例えば『千本桜』は、フランスではこういうふうに書かれているから、こういう楽曲の名前で来たら、それは『千本桜』だよということが比較的言いやすいのかなと思っています。
 次に、JASRACメンバー。これは先ほど言いましたとおり、まずJASRACメンバーになりましょうという、ここですね。これはもう今ずっと言い続けています。
 次に、日本語タイトルの問題というのがありましたが、これも最近いわゆる海外を狙っているボカロPさんたちは、英語でタイトルをつけようというムーブメントが少しずつ出てきています。次のストリーミングダウンロード、先ほどお話ししましたね。最後は、ISRC問題です。これはちょっと大きいので、話をさせていただきますと、個人向けアグリゲーター、例えば、先ほどのルーター・エフエムさんもそうですし、チューンコアさんもそうです。そういったところに楽曲を持ち込むと、アグリゲーターさんがISRCを振ってくれます。その振ってくれたISRCをクリエイター自身が知らないというのが通常です。つまり、複数のアグリゲーターを通すと、一つの曲に対して複数のISRCがついてしまいますという問題が実は大きい問題としてあるので、これに関して、我々のほうではISRCはボカロPさん本人が振りましょうねという動き。もし他の企業さんに振ってもらうのであれば、振ってもらったISRCをちゃんと理解して覚えて、次に、使うときにはそのISRCごと、音楽ファイルを出してくださいねという、そういう教育活動、啓蒙活動をしています。
 あとは海外利用者との契約ということですけども、これが難しいのは、例えば、演奏権、JASRACさんに預けて、それが相互管理契約で、なおかつ、JASRACメンバーになったとして、海外の主催者はちゃんと報告してくれるのかなというようなところですね。次のNexToneさんの話は先ほど言いました。
 あと、サブ出版の話なんですけども、通常のメジャーレーベルさんは海外ごとにサブ出版を設定していますが、ボカロPさんはなかなかそれができません。そういったところというのが、今後はどうなのかなというお話。
 実はYouTube Content ID、次に書きましたが、この辺も、実は細かいこと言うと、YouTubeのチャンネルには音楽専用チャンネル、別名、エスラブと言われているんですけど、エスラブと呼ばれているチャンネルの種類と、通常のYouTubeパートナー契約に基づいた普通のチャンネルがあるんです。通常のボカロPさんには、ほとんど通常、普通のチャンネルとして入れているので、実はこれも最近分かったことなんですが、JASRACさんからの音楽著作権及び原盤権の印税といいますか、広告分配分が普通のチャンネルの場合にはちょっと低いなと。ちょっとどころか、かなり低いなということが分かりました。じゃ、エスラブに変えればいいじゃないかという話になるんですけど、実は個人クリエイター向けにエスラブを設定する方法というものを、今、実はYouTubeさん、まだ御用意されていないので、実はこの辺どうするかという課題があります。
 最後に、Merlineについて書きました。Merlineは御存じの方もいらっしゃると思うんですけども、これはヨーロッパの方で、WINという団体があって、ストリーミング配信等における、原盤権の料率がメジャーレーベルとインディペンデントレーベルとでは大幅に違うよということを問題意識して、メジャーレーベルと同じ料率でインディペンデントレーベルも原盤印税を設定するべきだということをやられているWINという団体があって、その下部組織に、運営組織にMerlineという団体があります。
 Merlineに加盟することによって、ボカロPさんですら、ソニー、ワーナー、ユニバーサルという、世界三大メジャーと全く同じ料率で、ボカロPさんも原盤料率を設定できるという、実はそういう団体があります。この辺りをうまく使うことによって、やっていく必要があるのかなというのが今現状です。
 改めて、強みというところを書きました。こちらは小さく創造し、幅広く展開する。先ほども言いました、全部自分でやっているので、とにかく利益が高いです。二次創作というものをどんどん使うことによって、プロモーションも全部自分でやっています。ネットを使ったいろんなコミュニティーというものを作るのが彼らは本当に上手です。こういったものを駆使することによって頑張っていますよということ。新しい仕組みということで、個人向けアグリゲーター、チューンコアさん、ルーター・エフエムが出てきましたねとか、Content IDが出てきましたね。Content IDに関しては先ほど言いました、エスラブ化をどうするかという問題もあるんですが、これも重要な仕組みですよね。
 あとはネットを用いたコミュニティー、これは本当にツイッターの使い方とか上手です。あとは各種MLC。MLCというのはメカニカルライツコレクティブの略なんですけど、いわゆる原盤権を管理する機能ですよね。例えば先ほど言いましたBMATさんに、じゃ、ボカロの楽曲を登録してみよう。これをちょっと実験的にやってみたんですよ。これはBMATさん、簡単に説明しますと、ここに音楽原盤を登録すると、例えばブラジルのサンパウロ放送の午後1時からやっている、「我らサンパウロがんばろうミュージック(事務局注:架空の番組名)」というところで、10時20分から10時25分までの間、音楽が流れたというのがもうリアルタイムで出てきます。
 そこの部分の本当に10秒ぐらいの映像までちゃんと見られる仕組みをBMATさんは持っていたりするんですが、そういったものに僕らの楽曲も登録できたら面白いなということで、今、実はBMATさんとお話を進めていきたい。
 あと、二次創作、これをいかに管理集中化するかというのは結構これはなかなか難しいことなんですけど、つまり、Aさんがつくった楽曲をBさんが二次創作して広めた場合、やっぱりAさんだけじゃなくて、Bさんにもお金が行くべきなんですね。この仕組みは、YouTubeには今ないんです。ただ、ニコニコ動画にはコンテンツツリーという機能があって、複数の人が二次創作、三次創作をやったよとなったとしたら、複数の人に収益を分配する仕組みがニコニコ動画にはあります。じゃ、こういったものをYouTubeに導入するにはどうしたらいいんだというようなことも幾つか実は模索しております。
 最後に、レコメンドシステムというのは何かというと、例えばダンスミュージックが大好きで、しょっちゅうダンスミュージックを聴いている人に、ボカロの中のダンスミュージックをちょっと紹介してみるというような、こういうデジタル紹介システムというものも、実は産業総合研究所さんなどがつくられていて、デモンストレーションを我々の生放送でしてくれたりしているんですが、こういったものをどんどん使って、世の中に出していくことで何かいろいろできるんじゃないかなと思っています。
 課題として最後に、今までもお話ししたんですけど、まとめてみます。
 まず権利問題として、JASRACメンバーにまずなりましょう。これは本当に、私はしつこいぐらい、いろいろと言わせていただいております。JASRAC様も本当に協力していただいているので、これはもう引き続きずっと続けたいと思います。
 あと、この2番目は結構難しいんです。先ほど演奏権と録音権の話をしましたが、日本と海外との支分権区分が大幅に違います。今まで日本の音楽著作権の支分権は11に分かれていたんですが、今度4月1日から13になりますよね。演奏権が3つに分かれるんです。そうすると、13の支分権が海外のどの支分権にどういうふうに関係しているのかというのは、結構面倒です。先ほど日本だと演奏権をJASRAC、録音権をNexToneに預けている人が多いです。でも、その場合、海外での配信はどう取られるんでしょうかと、私の方からも疑問を投げましたけど、もっともっと複雑になりますよね。演奏権が3つに分かれるということで、もっと大変になるんじゃないかなとちょっと心配しています。
 あとは次に、Merlineを活用しましょうねということで、これもなかなかMerlineを活用する意義みたいなものが、皆さん、やっぱりまだ御理解できないので、実は三大メジャーと呼ばれているソニー、ワーナー、ユニバーサルとほかのレーベル。例えばビクターさん、コロンビアさんも含めて、日本のメジャーだけど、海外ではメジャーと呼ばれていないところですら違うと。プラスアルファ、じゃ、そこの下にある、本当にインディペンデントの僕らはどうなんだろうか。この辺りをちゃんと考えていく必要がありますねというところです。
 あとは先ほど海外で使用されるフィンガープリント、これは例えば、日本でもフィンガープリント、NTTデータさんのフィンガープリントは結構重要になってきていますけど、Spotifyで使われているフィンガープリントは、今、失念しちゃいましたけど、別のフィンガープリントだったりするんですね。なので、そういったところに、日本国内で楽曲を管理するときに、全世界に対応できるような複数のフィンガープリントを生み出すという仕組みが今は欲しいかなという形です。
 支援体制のところで、ここはいわゆるこういう情報をもうちょっとやっぱりちゃんと提供していかなきゃいけないなということと、先ほど、海外の同人CD即売会にCDを持って行く人が多いですよというお話をしましたが、言ってみたらこれって輸出じゃないですか。
 中にはやっぱりちゃんとしている方もいらっしゃいます。ちゃんとそういうふうに、いわゆる貿易的な手続をしている方もいますが、大きい声では言えないんですけど、恐らく自分のボストンバックの中にCDを何枚か入れて、向こうで売っている人もいるんじゃないかと思います。こういったことをちゃんと、まず啓蒙活動から始めて、支援体制を整えなきゃいけないかなと。
 実はJNCAメンバーでも、コロナ禍の前に、中国で同人CD即売会に行った人間がやっぱり向こうで捕まって、1週間ぐらい留置場に入れられたという経緯もありました。この辺り、ちゃんとサポートしないと大変なことになるなと思っています。
 先ほど言いましたとおり、海外サイトでの違法使用です。これは本当にあります。もうどうしていいか分からないんですね。それだけボカロ楽曲が海外で人気があるんだというふうにプラスに捉えたとすると、この辺りをきちんと対策を練ればもっと海外からの収益が上がるんじゃないかなと思います。
 あとは海外ファンへの大規模プロモーションサイト、これは今現状、個人が個人のネットワークで海外に持っていっていますが、例えば日本には日本の貿易をサポートしていただけるような団体がありますので、そういったところがボカロ楽曲やネット楽曲にもうちょっと注目してくれたらいいのになと思っています。
 最後に、レコメンドシステムの必要性ということも書いてみました。
 以上が私からの説明でございます。こんな形でクリエイターさん、決してアマチュアではないよということと、彼ら独自のいろいろなテクノロジーを使ったり、個人的なパワーでいろいろ頑張っていますよというところを、今日は皆さんに知っていただけたらいいなと思いました。どうもありがとうございます。

【鈴木主査】どうもありがとうございました。大変啓発的な御報告をいただきました。
 それでは、御質問等、委員からございましたらお願いします。
 伊東委員、お願いします。

【伊東委員】集英社、そして、一般社会法人ABJという団体で、著作権、特に海賊版に関していろいろ担当している伊東と申します。大変興味深い、そして、刺激的なお話、本当にありがとうございました。ネットの最前線でコンテンツをどう世界に持っていくかというところで、非常に私も個人的に刺激を受けましたが、そちらの協会の役割で、2番目で、クリエイターたちから著作権の相談や、著作権トラブルの相談という役割を御説明していましたけれども、具体的にどのようなトラブルだったり、相談が多いというのを教えていただければと思います。

【仁平様】まず音楽に関して言うと、先ほども言いましたような海外からの違法ダウンロードサイトに自分の楽曲が上げられていますよというようなこと。それとあと、これも海外なんですけど、海外のゲームに自分の音楽が原盤ごと使われていたと。つまり、著作だけだったら、これは管理団体経由の云々というのは分かるんですけど、原盤も一緒に使われていましたというようなお話。
 あとは残念なことながら、最近は減ってきましたが、日本国内でもレコード会社さんに、勝手にコンピアルバムに入れさせられてしまいましたみたいに、勝手にというか、いわゆるちゃんとした説明もなくという感じですかね。
 その場合、例えば、CDに原盤を入れるときの業界標準の料率は当然あるんですけど、その業界標準の料率をはるかに下回るような金額で契約をさせられてしまって、これはどうしたらいいんだという話。あとは、これはもう特別なのかもしれないんですけど、同人CD即売会で売っていたら、業者を名のる人から、この楽曲、いいね。うちのお店で売ろうよと箱1個、ポンと持っていかれて、名刺だけ渡されて、なしのつぶてというのが、これは結構、10人ぐらいからそういう相談を受けたり、こういうトラブルは大きいですけども、そんなようなことがあります。

【伊東委員】すみません。その流れで、定期的に著作権の講習的なものというのはやっていらっしゃるんでしょうか。

【仁平様】定期的にやっています。これはいろいろな形でやっているんですけども、例えばこの時期ですと、春のタイミングで、ニコニコ超会議というのがあります。超会議にはいつもJASRAC様、NexTone様から、御担当者に出ていただいて、お話をしていただくとか、あとは、実はこれはドワンゴ関係にN高という学校がありますが、今現状、これはここだけの話ですけど。いいのかな。JASRACの方を招いてのN高生座談会というものをやられたりとか、あとはそれ以外にもJASRAC様の生放送に、我々のほうからもネタを提供するとか、逆に私のほうも、数か月に一遍、生放送をやっているので、そういったところにJASRACの方に来ていただくというようなことで、割と定期的にやっています。

【伊東委員】ありがとうございました。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。奥邨委員、お願いします。

【奥邨委員】ありがとうございます。質問というか、若干のコメントなのですけれども、今日、お話を伺った中で、非常に重要だなと思いましたのは、個別名で出ていますけれども、JASRACメンバーになることの意義というお話がありましたが、より広く考えれば、やはり海外へ展開していくときに、クリエイターが個人で海外といろんなことをやり取りするというのは、よほどお金がもうかって、弁護士さんであったり、エージェントであったりを雇うだけの余裕があるならば別なんですけれども、そこまでいかない人にはやはり無理であって、そのためには集中管理団体に所属するということは非常に重要なんだと思います。それを積極的に推進していくということは、クリエイターにとって権利の保護にもなりますし、また、結果的に利用機会が増えるということにもなるわけであって、これは非常に重要な部分だと思います。
 一方で、仁平さんからもお話ありましたけれども、権利管理団体に対するアレルギーというのが権利者であるクリエイターの側にもありますし、利用者の側にもあるというのは、これは実際は不幸なことだと思っております。私は非常に便利なツールがあるのに、何だかよく分からない、十分理解できていないということで避けてしまう、特にネットの言動などを見ていると、集中管理団体に対するアレルギーがものすごく強いわけでして、それが話を複雑にしているという部分が少なからずあるように思います。仁平さんから、先ほどいろいろ試みのお話をされていましたが、今日、JASRACさんがおられますが、JASRACさんだけに申し上げているわけではないんですけれども、ぜひ権利管理団体の方もそういうアレルギー、クリエイターのアレルギー、それから、利用者のアレルギーを取るというような形のいろんな広報活動をしていただいて、権利管理団体、集中管理団体、非常に便利な存在である、権利者と利用者のどちらにとっても便利な存在であるということをやはり強調していただくということが、この海外展開においても非常に重要なんだなということを、今日のお話を伺って、私は思いました。すみません。コメントになりましたけど、ありがとうございました。

【仁平様】ありがとうございます。本当にまさにそのとおりだと思います。現状、実はJASRAC様、NexTone様、本当に我々に御協力いただいて、私の主催する生放送にも、それこそ浅石理事長も出ていただきましたし、NexToneの阿南社長も出ていただきました。本当にネットクリエイター寄りの対策を皆さんやっていただいているので、これをさらに広めるのが私の仕事だと思っております。ありがとうございます。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 唐津委員は先ほど手を挙げられましたか。では、お願いします。

【唐津委員】弁護士の唐津と申します。大変興味深いお話ありがとうございました。JNCAの活動というのは、個人クリエイターが個人クリエイターとして活動を続ける、その中でのサポートと理解いたしました。確かに個人でやってらっしゃる場合、仁平様のお話にもあったように、非常に高い収益率でやっていくことができるというメリットはあると思うんですが、一方で、例えば藤井風さんなど、もともとは個人でやっていらして、最終的には大手系の事務所、マネジメント事務所と契約をしてという方も出てきていらっしゃると思います。傾向としては、そういう方向に行くよりは、やはりこのまま個人で活動をやっていくという方が多いんでしょうか。

【仁平様】2分割されますね。それこそ本当に米津玄師さんを目標に、メジャーに行くということを自分の目標にしている方もいれば、この間、実はJASRACさんの生放送に出ていただいたEasyPop君という子がいるんですけど、彼はもう本当に同人活動を続けることによって、家族を4人養って、なおかつ、御両親の家の住宅ローンまで払ってあげているという、すごい子なんですけど、彼の場合はそういうテレビやラジオに出るということよりも、自分の時間を使って活動して、家族との時間を長くしたいというような方もいらっしゃるので、メジャー志向の方、同人志向の方、両方いらっしゃいます。我々としては、メジャーになった方もその後もずっと会員でいらっしゃる方は実はたくさんいます。実は国民健康保険組合の加盟のサポートをしているんですが、文芸美術国民健康保険組合という、とてもクリエイターにとっては有利な保険組合があるんですけども、そこに入るには何かしらのそういう加盟団体に所属していなければいけないので、そういうプロになった方でも、我々の会員のままで、保険に入っているという方はたくさんいらっしゃいます。

【唐津委員】ありがとうございます。先ほどのトラブルの話の中で、例えばコンピレーションアルバムに入れるときの契約で、料率がすごく不利なものを結ばされてしまったというお話もあったんですが、例えばメジャーに行くときには、大手の事務所との契約というのが出てくると思うんですけれども、そういったときにクリエイター側にサポートに入って、不利な契約を結ばないようにアドバイスするというような活動もしているのでしょうか。

【仁平様】そうですね。ただ、事務所さんに、事務所さんの方がクリエイターを引っ張るときというのは、その事務所の御担当者さんがすごくそのクリエイターさんのことをやっぱり理解している方が多いんですよ。わざわざネットの中で、こいつはいいなといって、仲よくなって、御飯を食べて、うちの事務所に来いよと言ってくれているので。人間関係が基本はできている場合があるので、その場合のトラブルはほとんどというか、今までなかったです。やっぱり一番あるのは、個人でやっている作曲家さん、ボカロPさんのところに、メジャーから連絡が来て、うちでコンピをつくるので、原盤を提供してくれよ。10万円でいいよねみたいな感じで、ものすごく有名な楽曲で、将来的にそのCDはものすごく売れるんですけど、結局、彼は10万円しかもらえなかったというようなことが過去はありました。
 でも、それも、私もいろいろなところに出向いて、私はもともと、いろんなレコード会社とのパイプもあったので、いろいろな尽力もあって、ボカロPさんともちゃんとした契約を結ぼうねという流れが今はできているので、メジャーレベルさんでそういうトラブルは、もう今はないです。ただ、以前はありましたということと、メジャーではないレーベルさんはやっぱりまだ、いまだにちょっと原盤権はただでいいよねとか、プロモーションになるんだから使わせてよみたいなことを言われる方もいらっしゃらなくはないです。

【唐津委員】ありがとうございました。

【鈴木主査】ありがとうございました。申し訳ありませんが、まだ御質問があるかとは思いますが、先に進めさせていただいて、また最後に、時間の余裕がございましたら、全体的な議論の時間を設けたいと思いますので、そちらでご発言ください。
 仁平様、どうもありがとうございます。

【仁平様】ありがとうございました。

【鈴木主査】続きまして、千賀様に御発表いただきます。事務局の準備が整いましたらお願いいたします。

【千賀様】よろしくお願いいたします。PwCコンサルティングの千賀と申します。このような場で有識者の皆様に御助言をいただける機会をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、こちらのタイトルにございます、文化庁様より弊社の方で受託しております調査事業に関して、事業の概要であったり、現在の途中経過について御報告をさせていただきました上で、今後の進め方であったり、有識者の皆様から、今後こういったところを押さえるべきというような観点を是非ともアドバイスをいただければと思います。
 まず本事業の目的になります。コンテンツ産業の持続的発展のために、海外市場の開拓という本委員会で御議論いただいておりますテーマについて、国内のコンテンツビジネスを行う事業者の皆様が契約を通じてしっかりと対価を確保するというところを目的に、各分野、文化庁様より指定されております、漫画キャラクター、音楽、アニメ、ドラマ、実写映画、ゲーム、こういった5分野を対象に、著作権契約の事例を調査しまして、最終的にはその結果を取りまとめた成功事例集というような形で取りまとめるということとなっております。これを広く周知することで、日本の著作権を持っていらっしゃるような方々、特に裾野を広げるという意味では、これから海外展開に取り組まれようとされている中堅、中小の事業者の皆様の権利行使を後押しするというような参考にしていただくものをつくっていければと思っております。
 また、今、成功事例集という形でお伝えをしましたが、どのような観点で成功とみなすかという点について、少し我々なりに成功事例の抽出の観点として2つ、著作権法の考え方を参考に抽出しております。
 1つが、まずは公正な利用という点で、こちらは分かりやすく、海外にコンテンツがしっかり広く普及されている、認められている、また、収益につながっているというような、利用されているといった観点。もう1点が、権利者保護というような観点で、しっかりと海外展開する際に、権利者の意向に即した形での展開になっているのか。それによる対価がしっかりと還元されているのかというところ。こちらのポイントを押さえたような事例を抽出できればと思っております。
 ここは海外で売れてはいるけれども、権利者の方々の意向に即していない、又は対価の還元がないというようなものであったり、あとは権利者の意向を尊重するがあまり、展開が余りうまくいかないとか、そういった話もよく聞きますので、ここはバランスを見つつ、事例を抽出できればと考えております。
 こちらは調査の進め方となります。まだ途中段階というものになりますので、今回も途中経過ということで机上のみの資料とさせていただいておりますが、我々としましては、まず事前の準備として、机上調査を通じて、特に海外展開に関連するような事業者さん、海外展開のときにはどういった方が契約の相手方になるのか、又は論点となり得るような権利、どういったところがポイントになるのか。この辺を整理した上で、現在実施中のヒアリングというところでございます。ヒアリングについては、事例を集めるという流れになるんですが、いきなり各コンテンツの企業、5社にそれぞれ聞きにいくのではなくて、まずは各業界をよく知っていらっしゃる業界団体の皆様に御協力をいただきまして、各業界における海外展開の流れであったり、今の進み具合といいますか、そういった感触。又は、今回の事例として、ここはいい事例なんじゃないかというような御紹介も含め、いろいろとお話を聞きにいっているという状況でございます。この後、実際に御紹介いただいた企業さんに対してヒアリングを実施し、それを年明け以降、成功事例集として取りまとめていくというような流れを予定しております。
 本日は、こちらの業界団体の皆様へのヒアリングの結果を簡単に御報告させていただければと思います。各業界の海外展開の状況について、業界団体の皆様からのヒアリングの途中経過となります。音楽だけまだ調整中となっている状況でございます。海外展開の状況であったり、具体的な課題感について簡単に記載しておりますが、見ていると、海外展開の状況であったり、課題については、かなり分野ごとに様々だなというような状況かと考えております。
 例えば、アニメ、ゲーム、漫画、ここら辺の辺りについては、見本市などの海外展開における商談の場をしっかり活用しているであったり、製作委員会で、海外展開の窓口機関がしっかりといるので、既存の海外展開の販路が確立されていますというようなケース、また、ゲームの場合であったら、モバイルで配信なので、自社での海外展開まで一貫してできてしまいますというようなお話ということで、ここら辺をはじめ、ゲーム、漫画については、海外展開の経路、手法みたいなところは確立しており、かなり積極的に進められているというような状況かと見ております。
 一方で、キャラクター、ドラマ、実写映画といったところにおいては、有名IPのキャラクターを除けば、キャラクターについては、運の要素が結構強いというところで、業界全体として、海外展開のプロセスが確立されているケースは少ないというようなコメントがあったり、ドラマ、実写映画については、一部成功した事例はあるものの、国内のドラマ、実写映画に比べると、かなり規模が小さいというような状況で、海外展開が必ずしも進んでいるとは言えない状況と伺っております。
 課題としては、比較的進んでいると言われるアニメゲーム等の分野では、基本的な海外展開のプロセス、その中での契約の手法みたいなところ、ある程度定型的な契約の内容が確立されているというような話はある一方で、国ごとの商習慣の違いであったり、特に米中などの大きな市場の中での規制の取扱いみたいなところですね。個別のテーマに関するような具体的な課題が数多く挙げられたというような状況でございます。
 一方、キャラクターについては、ライセンス契約の独占、非独占をどうするのか。許諾の期間をどうするのか。そもそもミニマムギャランティみたいな、最低保証金みたいなものを設定せずに契約してしまって、収益還元されないみたいなところで、基本的なところで落としてしまうといいますか、押さえるべきポイントが理解できていないというようなケースが多いという話を伺っていたり、あとはドラマ、実写映画に関しては、視聴者の国の文化であったり、あとは、人気の俳優もありますので、そういった観点を踏まえた企画ができる国際プロデューサー不足であったり、製作委員会方式での意思決定の遅さなどが原因にして、そもそも展開する機会を逸してしまうみたいな、今回のポイントとなっている著作権契約といったところに至る以前の課題というところも大きくあるのかなというふうに伺っております。
 このような分野ごとに海外展開の状況であったり、課題が異なる中で、業界団体の皆様の御助言も踏まえて、今後、収集していく事例において、少し押さえるべきテーマというものを置いた上で、それらに合致するような事例を紹介いただきながら集め、ここら辺のテーマを押さえていくと、今の企業コンテンツをお持ちの企業様に参考になるというようなものを集めていければと思っております。
 例えば、アニメであれば、昨今の動画配信プラットフォーマーとの連携に関わるような海外展開の事例であったり、あとは、アニメから実写映画化する際に、オプション契約、オプション権などの取扱いなど、少しこういった特殊な部分についての事例。ゲームについては、複合著作物となりますので、ゲーム内で使われる楽曲、そのほかゲームによっては、各種企業のロゴが中に入っているスポーツチームが入っているみたいな、関連する権利者が多いような中での許諾を得るポイントであったり、あとは、米中の市場の規制、流通環境の違いが分かるような事例があるといいんじゃないか、こういったものを頂いております。
 キャラクターについては、先ほどお伝えしましたとおり、基本的なポイントのところをしっかりと押さえてほしいというような御要望がございましたので、特に現契約の中でどういった点を留意すべきかというところを整理するという形を想定しております。
 ドラマ、実写映画の場合については、こちらについては、今後、先ほど、文化、人気俳優などの違いもあるという中で、完成品をそのまま海外にライセンス契約で出していくというよりも、国際共同制作であったり、既存の脚本などのIPをうまく生かしたリメイクフォーマット販売、こういった展開にかじを切っていく必要があるのではというようなお話も受けて、そのままのライセンス契約というよりは、そういった国際共同制作、フォーマット販売みたいな事例についても取り扱っていければと考えております。
 最後、漫画につきまして、こちらもある程度、販路が確立されているという中ですが、最近、ポテンシャルが高まっている東南アジアの事例だったり、あとはフォーマットとして新しいプラットフォームでの成功事例、こういったところをテーマとしては取り扱っていければと考えております。
 実際、今後のヒアリングにおいては、これから海外展開しようとされている事業者の方に見ていただくという観点では、海外展開の全体の流れを見ていただいた方がよろしいのかと思いますので、著作権契約の内容でどこがポイントなのかというところだけを伺うというよりも、国内での、そもそものIPの展開の状況も含むような、海外展開に行き着いた経緯だったり、きっかけの部分から、このバリューチェーンに沿った企画・制作、プロモーション、流通といった一連の流れの中で、どういった点が課題となったのか。成功に至ったポイントというのはどこなのか、こういったところを広くストーリーとして伺う中で、それぞれの著作権契約上のポイントについても深掘りしていけたらいいかなと考えております。
 長くなりましたが、ここまでで事業の内容と経過の御報告をさせていただきました。本日は、もしよろしければ、先ほどお伝えしました課題の状況であったり、各分野で押さえるべきテーマであったり、そこら辺について、ほかにお気づきの点、ここについては、少しテーマとして取り扱った方がいいんじゃないかというところについて御助言をいただければと思います。また、その他、最後、成功事例集として取りまとめるに当たって、中堅中小の事業者の皆様、先ほど仁平様がおっしゃられていた個人クリエイターの方も含めて見ていただけるようなものにするに当たっては、こういった事例を取りまとめ、若しくは、こういうポイントを入れるべきだという。ここら辺についてもお気づきの点、御助言いただければと思います。
 以上となります。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 ただいまの千賀様の御発表について、御質問や御意見等ございましたらお願いいたします。井奈波委員、お願いします。

【井奈波委員】大変まとまった御発表、ありがとうございました。質問ではなく意見ですが、海外展開をするに当たって、やはり海外で侵害が行われるという事例があると思います。そのような場合に、契約上、どちらの当事者が中心になって対処するかなど、侵害があった場合の対処方法について、どのように規定されているのかという調査もあった方がいいかと思いました。また、実際に、侵害があった場合、どのように対処したのか、現地で日本側がどのように関与したか、そういった事例についても調査されると非常に分かりやすいのではないかと思いました。
 以上です。

【鈴木主査】はい。千賀様、何かございますか。

【千賀様】ありがとうございます。今の観点については、ヒアリングをした企業様の中で、その契約の中でどういったところを押さえられているのか。ただ、事前の業界団体様のお話を聞いていると、契約には盛り込まれているけど、なかなか把握が難しいよねといったお話もございますので、その中でどうやって把握をされようと、努力をされているかであったり、そこら辺の部分についても伺った上で、いい取組をされている事例についてはしっかりと取りまとめて、皆様に見ていただけるような形にできればと思います。ありがとうございます。

【鈴木主査】ほかにございますでしょうか。
 墳﨑委員、お願いします。

【墳﨑委員】墳﨑です。非常に詳細な内容、ありがとうございました。これは希望とかそういうものに近いものなんですけども、プラットフォーマーの連携の話があって、それは是非テーマとしては入れていただきたいと思うんですけれども、これはそもそもプラットフォーマーにするか否かというところで結構悩むところも多いと思うので、どういったケースであれば、プラットフォーマーと組んだ方がいいのかと。そうじゃない場合はどういう場合なのかというところの分析なども入れていただけると非常にいいのかなと思っております。
 あと、キャラクターの話と、アニメとか漫画が分離しているのは、そういうケースも多々あるというのは当然認識はしていますが、いわゆるマーチャンダイジングまで含めて、アニメのライセンスのときに一緒に行うことも当然あるので、それでの成功事例もあれば入れていただきたいなと思います。
 あと、最後は、まとめ方ですが、こういうものは難しく、どの人たちを対象にするかというところで、本当に、余り経験のない方を対象にするでしたら、いっぱい書くよりかは、本当に一つのやり方について、かなり細かめにこうすればいいんだというふうに書いた方が役に立つのかなという気がしております。
 以上です。

【鈴木主査】千賀様、お願いします。

【千賀様】ありがとうございます。確かに配信プラットフォーマーについては、組むときのポイントみたいなところはまとめる想定でありますが、そもそもどういういきさつでプラットフォーマーと組んだ方がいいのか。逆に言うと、組まない方がいい。組まないケースについてはどう考えて、そこを分けているのかみたいな話は、その配信の地域とか独占が世界全体で一括でという話になってしまいますので、自由度といいますか、それぞれ個別展開しているのが難しくなる部分もあると思いますので、そこの御事情についても伺えればというところと、あと、アニメ展開について、海外でアニメが普及した後のこのマーチャンダイジングの商品化の部分も含めての展開、成功というところをどのように取り組んでいるかというのは、ここは正に我々も聞こうと思っていた部分ですので、伺っていきたいところです。
 まとめ方の部分についても、今回あまり、大手の方はもう既に内容はかなり熟知されていて、細かい部分を見られるというよりは、入り口の部分として見ていただくというところを想定しておりますので、ここの事例のところは少し分かりやすくというところと、あまり権利を細かく書いて、この権利がどうこうというよりは、展開の仕方という部分で広く扱っていければと考えておりますので、頂いた意見を参考に詰めていきたいと思います。ありがとうございます。

【鈴木主査】生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございました。2点ございまして、1点目は、正に今、墳﨑様がおっしゃっていただいたのと同じ、デジタルプラットフォーマーというところが極めて重要だなと。そして、その中でも正に仁平様が先ほどお話しいただいた内容、僕も全然知らないことばかりですごく勉強になったんですけれども、やはり特に個人クリエイターの方を含めて参加している、ああいった仕組みには、ネゴシエータブルではない契約というのがすごく重要な役割を果たしているんだろうといったようなものにも少し注目していただけると、いわゆる利用規約とか呼ばれるものでございますよね。より面白いのかなと感じたのが一つ。
 2つ目として、これは個人的な関心というところが大きいんですけれど、今回、国際展開に関わる著作権契約ということで、昔からドイツですとか、特にヨーロッパ方面には、いわゆる著作権契約法というのがございますよね。特に今年の6月からは、ヨーロッパ全体で、デジタル単一市場著作権指令の中でかなり広範な条項が欧州全体に適用されることになっていますけれども、正にああいった、いわゆる著作権契約法というのが果たしてこういう契約実務にどういう役割を果たしているのかなということがもし分かると、すごく面白いなと感じたところです。
 以上です。

【鈴木主査】千賀様、何か御回答ございますか。

【千賀様】そうですね。頂いた御意見をしっかり踏まえていきたいと思います。私も仁平様の御発表を伺っていて、企業の人を対象にすごく考えていた部分はあるんですけど、やはり今後、個人のクリエイターの方もいろいろと海外展開は出る機会も増えていますので、我々も何かしらそういったところにサポートできるような事例としても入れていきたいと思っております。
 2点目の海外の著作権契約法との関連で、実務上、どういった話、ポイントがあるのかみたいなところについては、企業さんによって、そこの国の展開をしているかみたいなところはあるとは思うんですが、それぞれ展開国に応じて少し聞いていきたいと思いますので、聞けた部分についてはしっかりと取りまとめていきたいと思います。ありがとうございます。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 それでは、残り時間、ほんの数分になりましたので、先のお二人の御報告も含めまして、全体について、是非発言されたいという方はお願いいたします。
 渡邉委員、お願いいたします。

【渡邉委員】電通大の渡邉と申します。まとめの質問ではなくて、申し訳ないのですが、質問させてください。先ほどの仁平様の御発表、大変興味深く、個人クリエイター用の協会ということで、とても重要な協会だなと思いながらお聞きし、勉強させていただきました。御講演の中で、音楽など勝手に他の人に利用される例に対する手続が複雑だということをおっしゃっていたと思います。大手のレコード会社に入れば、そういった著作権の管理とか、侵害対策なども実施してくれると思うんですけれども、個人のクリエイターさんの場合、実際の削除申請とか、侵害対策に関する実際の作業をどのようにやられているのか。それをどうサポートされているのかということをお聞かせいただけますでしょうか。

【仁平様】御質問ありがとうございます。まず、問題が2つあって、著作権侵害と原盤侵害があります。著作権侵害の場合、ボカロ楽曲と呼ばれている楽曲の大半は、JASRAC様か、若しくはNexTone様の方に権利が信託、若しくは預けられている。JASRAC様に配信権が行っている場合は分かりやすくて、信託契約なので、JASRAC様の方からきちんと訴訟を起こしてもらうことが最終的にはできるわけですね。なので、著作権管理団体に預けられている、特にJASRAC様であれば、そういったいわゆる正式な手続をしていただきます。
 NexToneさんの場合は、ちょっと複雑で、海外の著作権は管理していないというのが大前提なので、この辺り、実際のところ、NexToneさんにそれを何か言う権利はないんだけど、いろいろ御相談には乗っていただいています。
 原盤の部分が難しくて、現場が使用されていますねというときには、我々単独だと何ともできないので、ちょっと私も、これはずるい方法なんですが、大体私どもの原盤を使っている怪しげなゲーム会社さんというのは、日本レコード協会さん加盟の原盤も使っているんですよ。なので、日本レコード協会の畑理事に連絡して、そちらの楽曲も使われていますよと。我々の原盤も使われているので、何とかなりませんかねという御相談させていただくという動きはしています。

【渡邉委員】分かりました。ありがとうございます。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 では、以上で御議論は締めとさせていただきます。先ほどと重複いたしますが、資料の1、国際小委員会中間まとめ骨子(案)につきましては、本日の御議論の内容を加え、追って事務局から委員の皆様にメールで照会をいたします。御意見等の提出をお願いいたします。
 その先、国際小委員会として中間まとめを取りまとめまして、12月の著作権分科会に報告をいたしますが、最終的な文言等につきましては、主査である私に御一任をいただければ幸いでございます。
 その他、もし何か委員の方から御発言がございましたら。よろしいですか。
 では、ほかに特段ございませんでしたら、本日はこのぐらいとしたいと思います。
 最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

【長谷川国際著作権専門官】本日はありがとうございました。次回の本小委員会につきましては、来年1月25日火曜日の13時からの開催を予定しております。今後ともよろしくお願いいたします。

【鈴木主査】ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会国際小委員会の第3回を終了とさせていただきます。本日はありがとうございました。

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