文化審議会著作権分科会法制度小委員会著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第4回)

日時:令和2年12月18日(金)

10:00~12:00

場所:AP虎ノ門J室

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームにおける審議経過のまとめ
    • (2)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

資料
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム審議経過報告書(案)(1.3MB)
参考資料1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第1回~第3回)における委員の意見概要(587.8KB)
参考資料2
令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(令和2年1月24日)の別紙2「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム審議経過報告書」(令和2年1月22日)(855.7KB)
参考資料3-1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究報告書(平成30年3月)(1.8MB)
参考資料3-2
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究資料編(平成30年3月)(7.3MB)
参考資料4
文化審議会著作権分科会報告書(2019年2月)(4.6MB)

議事内容

【龍村座長】では,ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム」(第4回)を開催いたします。

本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。前回に引き続きまして,本日の会議についても,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,各委員の皆様には基本的にウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。

委員の皆様におかれましては,ビデオをオンにしていただくとともに,御発言いただく際には,御自分でミュートを解除して御発言いただくか,事務局でミュートを解除いたしますので,ビデオの前で大きく挙手してください。

議事に入る前に,本日の会議の公開について確認いたします。予定されている議事の内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【龍村座長】ありがとうございます。では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださいますよう,お願い申し上げます。

では,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】議事次第の配付資料一覧を御覧ください。

まず資料として,審議経過報告書(案)をつけております。また,参考資料といたしまして,これまでの議論の概要をまとめた意見概要を参考資料1としてつけておりまして,そのほかのものも含めて参考資料1から4という形で参考資料を用意しております。もし不足等ございましたらお知らせいただければと思います。

【龍村座長】よろしいでしょうか。それでは,議事に入りますが,初めに,議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は,1,著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームにおける審議経過のまとめ。2,その他の2点となります。

では,早速ですけれども,著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームにおける審議経過につきましては,審議経過報告書(案)に基づいて,前回から御議論いただいているところです。今回はその続きの部分から御議論いただきたいと思います。

では,審議経過報告書(案)の続きの部分,3,審議経過のうち,(2)独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度について,事務局から説明をお願いしたいと思いますが,その前の部分につきましても,前回の議論を受けて修正いただいている部分がございますので,併せて説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【高藤著作権調査官】では,資料の審議経過報告書(案)を御覧ください。まず前半部分で,前回御意見いただいた部分を修正しておりますので,その点について御説明させていただきます。

まず3ページ目を御覧ください。3ページ目の脚注2のところについて赤字で記載しておりますけれども,こちらは後ほど御説明する後半部分の論点と関わる部分ですので,内容はそちらのほうで御説明させていただきます。

続いて,4ページ目を御覧ください。4ページ目の真ん中辺り,赤字になっている部分がございますけれども,こちらは独占的ライセンスの対抗制度導入の必要性という項目になります。

その中で,「さらに」と書いてある部分ですけれども,著作権法においては特許法の専用実施権や商標法の専用使用権のような制度がないという点で,独占性を確保するための何らかの立法措置を講ずる必要性が認められるのではないかという段落のところですけれども,ここにつきましては,独占的利用許諾構成,出版権的構成に関わらないだろうというところで,その点,留保する記載をしております。

その下の「独占的利用許諾構成を前提に」という部分も同じような趣旨の記載になります。

続きまして,8ページ目を御覧ください。8ページ目の一番下の部分ですけれども,「したがって」と書いてある部分です。こちらは悪意者対抗制度について検討している項目ですけれども,その中で,悪意者対抗制度と公示制度を組み合わせて検討する余地があるのではないかというふうに前回の資料では記載していたところですが,組合せという言葉を使うと,悪意者対抗制度と公示制度が同等のレベルのものという印象を受けるので,この点についてはしっかり内容を書き下したほうがよいのではないかという御意見をいただいたところです。それを踏まえて表現ぶりを修正しております。

続いて10ページ目を御覧ください。10ページ目の上のほうですけれども,こちらは登録対抗制度について検討している部分になります。登録対抗制度につきましては,前回お示しした資料だと,既存の登録対抗制度のように著作物単位での登録対抗制度を採用することについて,それを強調するような記載ぶりになっておりましたけれども,そうではなくて,登録の代替となる対抗要件を別途設けることや,既存の登録対抗制度の改善という点についても積極的に検討する必要があるだろうと,そういうニュアンスに記載ぶりを変えてほしいという御意見が幾つかございましたので,それを踏まえまして,少し記載ぶりを変えております。

著作物単位での登録対抗制度につきましては,まず選択肢として検討されるべきものという,あくまで「選択肢として」という形にしております。その上で登録の代替となる対抗要件を別途設けることや登録対抗制度の改善については「検討する余地がある」というような記載にしておりましたけれども,そこを「検討する必要がある」という形で,少し積極的な記載ぶりに変えております。

10ページ目の下の(エ)のまとめの「必要がある」と赤字になっている部分ですけれども,こちらも同じ趣旨の記載になります。また,脚注の16ですけれども,独占的ライセンスの対抗制度において,登録対抗制度の改善をするということであれば,著作権移転の登録や出版権の登録というところについても積極的に改善を検討する必要があるのではないかという御意見があったということを紹介しております。

また,脚注の17ですけれども,登録対抗制度の改善については,昨今,手続のデジタル化という観点から様々な検討があるというところも踏まえて,様々な面で改善されるのが望ましいという御意見をいただいたということを紹介しております。

また,脚注の18ですけれども,この登録対抗制度の具体的な制度設計については,マル1,登録の代替となる対抗要件を別途設けることや,マル2,既存の登録対抗制度を改善すること,マル3,登録を備えていなければ対抗できない「第三者」には悪意者は含まれないとすること。いずれかの手当は必須ではないかという御意見があったということを紹介しております。

また,脚注の19ですけれども,登録対抗制度を採用する場合については,登録により公示する内容や範囲についても検討が必要であるという御意見,また,対象となる著作物をどのように同定するのかといった問題もあるので,この点については様々な実務的な工夫も必要だろうという御意見があったということを紹介しております。

以上が前回,御議論いただいた内容を反映した部分になります。

続いて,審議経過報告書(案)の20ページ目を御覧ください。今回はこちらから御議論いただきたいと思いますけれども,(2)の独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度について御説明をさせていただきます。

まず,アの差止請求権付与の正当化根拠ですけれども,こちらにつきましては,民法の不動産賃借権に基づく妨害排除請求権の制度との比較という観点から検討を行っております。

まず,(ア)のところで,不動産賃借権に基づく妨害排除請求権の正当化とその要件ということで,こちらは調査研究でまとめられていた内容について事務局で要約した部分ですので,説明は割愛させていただきます。

続いて,21ページ目の一番下のほうですけれども,(イ)独占的ライセンスに基づく差止請求権の正当化とその要件と書いております。こちらにつきまして,ワーキングチームでの議論を踏まえまして,整理した部分になります。

まず,マル1の不動産賃借権の特殊性による正当化につきましては,こちらは不動産賃借権のような特殊性というものは,独占的ライセンスについては認められないだろうということで,これを応用することはできないという形でまとめております。

続いて,22ページ目のマル2,対抗力による正当化,及びマル3,対抗制度による正当化の応用についてですけれども,こちらにつきましては独占的ライセンスの対抗制度を導入する場合については,このマル2,マル3の正当化根拠を応用することが考えられると。ただ,このマル2とマル3については,不法利用者に対する差止請求において,対抗力を備える必要があるか否かという点で違いが生じると。

この点についてどのように考えるかというところですけれども,独占的ライセンスの対抗制度において,不法利用者は,対抗力の不存在を主張するについて正当な利益を有する者,すなわち,同制度における「第三者」ではなくて,独占的ライセンシーは対抗力を備えることなく,その独占的ライセンスの独占性を不法利用者に主張できるはずであると。その場合,独占的ライセンシーは不法利用者がその独占的ライセンスの対象の著作物を利用することを禁じることができるという評価がなされているはずであり,また,仮に独占性を主張できるとしつつ,侵害行為を排除できないとすると,権利の実効性が著しく損なわれると。したがって,その評価を貫徹して,権利の実効性を確保するという観点からすると,対抗力を備えていない独占的ライセンシーによる不法利用者に対する差止請求は認められるべきものという形でまとめております。

したがって,このマル2とマル3については,マル3の対抗制度による正当化を応用することが妥当ではないかという形でまとめております。

続いて,マル4の占有による正当化の応用についてですけれども,こちらにつきましては,占有と類似の事実状態を想定して保護するということも考えられるところですけれども,こちらについては,有体物における占有と同様の要保護性を認めることができるかという点については,議論の余地があると。また,そのような事実状態を要件とすると,特に不法利用者との関係においては,非常に差止請求権のハードルが高くなるのではないかといったことがありますので,なかなかマル4については応用し難いのではないかという形でまとめております。

続いて,23ページ目のマル5,まとめのところですけれども,以上,検討したところから,マル3の対抗制度による正当化を応用することが妥当ではないかと一段落目のところで書いております。

2段落目の「もっとも」というところで,このマル3の考え方というのは,不動産賃借権に基づく妨害排除請求の議論における通説的な見解(マル1)とは異なる。この点,ワーキングチームでは,不動産賃借権と独占的ライセンスの違いに基づく違いなのか。そうであれば,不動産賃借権と独占的ライセンスのどのような違いに基づくものなのかといった点を含めて,民法を含めた法体系全体として,整合的な説明ができるかという点については,引き続き検討する必要性が指摘されていたところです。

他方で,不動産賃借権と独占的ライセンスの違いについては,権利の対象が有体物か無体物かという違いがあって,有体物を対象とする不動産賃借権の議論が無体物を対象とする独占的ライセンスに直ちに妥当するわけではないといった御意見もあったところです。

一番最後の段落ですけれども,「いずれにせよ」というところで,独占的利用許諾構成に基づいて独占的ライセンスに基づく差止請求権の制度を設計する場合には,以上のような検討結果を踏まえつつ,民法を含めた法体系全体との整合性,独占的ライセンスと不動産賃借権における権利の対象の性質の違いなどを含めて,法制的な観点から,さらなる検討・整理が望まれるという形でまとめております。

続いて,23ページ目の下のイの著作権者等の意思への配慮の要否及び方法というところですけれども,こちらにつきましては,結論としましては,著作権者等の意思への配慮は不要だろうということを記載しております。

1段落目に書いていますけれども,ヒアリングなどでは,権利者側の団体からは意思への何らか差止請求権の行使には著作権者の承諾が必要などといった意思への配慮をしてほしいといった御意見があったところですけれども,他方で,独占的ライセンシー側の関係団体からは,迅速な権利行使に支障が出かねないといったところも踏まえて,承諾を要件とするとなかなか使いにくい制度になるといった御意見もあったところです。

そして,24ページ目に行きますけれども,先ほど申し上げたとおり,ワーキングチームでは差止請求権の発生要件や行使要件として,著作権者等の承諾やその他の著作権者等の意思に配慮した規定は不要と考えられるという形でまとめております。

すなわち,著作権者等が独占的ライセンスを付与した以上,それについては独占的な利用に適した状態に置くという義務をライセンサーは負っているんだろうと。そうすると,独占的ライセンシーの差止請求権の行使については,ライセンサー側は受忍しなければならないのではないかと。特に著作権等の譲渡や二重ライセンスが行われた場合については,独占的ライセンシーが独占性の対抗力を備えて,著作権等の譲受人や他のライセンシーに差止請求をするという場面で,著作権者等自身が独占的ライセンスを抵触する著作権等の譲渡や二重ライセンスを行っているということからすると,特段この場面で著作権者等の意思に配慮する必要性はないのではないかと。

「一方と」書いてあるところですけれども,こちらにつきましては,仮に法律上そのような要件がないとしても,ライセンサーとしては,契約で独占的ライセンシーの差止請求権について制限をかけることは可能であると。その場合,当該制限に違反した場合については,債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことで足りるのではないかということを書いております。

「以上のことからすると」というところでまとめを書いておりまして,結論としては,著作権者等の意思に配慮した特段の規定は不要であり,著作権者等の意思への配慮の方法としては,契約上の制限をかけるということで対応すれば足りるのではないかという形でまとめております。

続いて,25ページ目ですけれども,ウの民法605条の4の規定との整合性ですけれども,こちらにつきましては,不動産の賃借人による妨害の停止の請求等という形で,民法の605条の4においては,25ページ目の真ん中辺りにありますけれども,(α)対抗力を備えていない独占的ライセンシーの不法利用者に対する差止請求ができないように読めるような規定ぶりになっていると。また,侵害の予防請求についても規定がされていないというところで,これを独占的ライセンシーの差止請求権について規定することが,この民法605条の4との関係で不整合を起こさないのかといったところが問題になっております。

こちらにつきましては,従前お示しした資料の内容から特段変えておりませんので,説明は割愛させていただきますけれども,結論としては,(α),(β),いずれについても認めるという前提で制度設計を行ったとしても,必ずしもこの規定と不整合を起こすわけではないという形でまとめております。

27ページ目ですけれども,エの完全独占的ライセンスと不完全独占的ライセンスの違いについてという項目になります。こちらにつきましては,前回お示しした資料から抜本的に記載を変更しておりまして,少し問題点を整理しております。

まず,この完全独占的ライセンスと不完全独占的ライセンスの違いにつきましては,不完全独占的ライセンスの差止請求権が認められる範囲というものが問題になるだろうというところで,(ア)でその項目を立てております。そして,不完全独占的ライセンスの差止請求権が認められる範囲を検討するに当たっては,そもそも不完全独占的ライセンスにおいて,ライセンサーである著作権者等の利用が認められているということの趣旨がどのように解釈されるかといった問題というものが前提にあるだろうという形で,27ページ目の四角の中で書いていますけれども,2つの解釈があるのではないかという形で整理しております。

まず(ⅰ)ですけれども,「著作権者等」という属性を有する者による著作物の利用に限っては認める趣旨であると解釈される場合。(ⅱ)ですけれども,あくまで独占的ライセンス契約の当事者であるライセンサー自身の利用に限って認める趣旨であって,「著作権者等」という属性に着目して利用を認めているわけではないと解釈される場合,この2つのパターンがあるだろうと整理しております。

そして,(ⅰ)の場合につきましては,「著作権者等」という属性を有する者の利用を認めていますので,独占的ライセンシーの「著作権者等」という属性を有する者に対する差止請求は認められないということになるのかなと。したがって,著作権等が譲渡された場合については,その譲受人に対しては差止めができないと。

一方で,28ページ目の上から2段落目のところに行きますけれども,(ⅱ)の場合につきましては,ライセンサー自身の利用は認めているということになりますので,そのライセンサーに対する差止請求権は認められないと。ただ,この場合,「著作権者等」という属性に着目して利用を認めているわけではないので,著作権等が譲渡された場合の譲受人に対しては差止めができるということになると整理しております。

そして,なお書きのところですけれども,こちらにつきましては,不完全独占的ライセンスについて差止請求権を認める場合の法的構成について,独占性の人的範囲を制限した独占的ライセンスについて,その独占性の範囲でのみ差止請求権が付与されると考える考え方と,一方で,そもそも制度上,完全独占的ライセンスのみを制度の対象として,ライセンサーについては,ライセンスバックしているんだというような考え方。この2つの法的構成があるのではないかと。

最初のほうに「独占性の人的範囲を制限した独占的ライセンス」と書いておりますけれども,こちらにつきましては,例えばライセンサーについて利用を認めるということであれば,その分,独占性の人的範囲が制限されているのだろうと。したがって,その制限された範囲では,そもそも差止請求権が発生しないと考える考え方です。

一方で,完全独占的ライセンスのみに差止請求権を付与するという考え方は,その制限されているところについては,一旦,差止請求権が発生した上で,そこの部分については利用許諾をしているという考え方になります。ただ,この2つの考え方ですけれども,これによって何か結論が変わるかというと,変わらないのではないかと整理しておりまして,この法的構成の違いについては,後ほど御説明する複数人による独占的な利用を認めるライセンスの取扱いや,独占的なサブライセンスを受けたサブライセンシーの取扱いという問題と連動すると思いますので,その問題と併せて整合的に整理することが望まれるという形でまとめております。

28ページ目の(イ)のところ,完全独占的ライセンスと不完全独占的ライセンスの違いですけれども,こちらにつきましては,まず不完全独占的ライセンスについては,(ア)で述べたとおり,差止請求権を行使できる範囲について,一部制限があると。他方で,完全独占的ライセンスについてはそのような制限がないという点で違いがあるのだろうということを書いております。

また,29ページ目に行きますけれども,オの施行日前に設定された独占的ライセンスの取扱い。こちらにつきましては,前回のワーキングチームで各関係者の影響,各関係者の予測可能性を害しないかといったところから検討がされていたかと思います。

まず(ア)の不法利用者ですけれども,こちらにつきましては,そもそも著作権者等から差止めを受ける地位にあったということからすると,この不法利用者について何らか法的に保護すべき利益がないと思いますので,施行日前に設定された独占的ライセンスであっても,施行日後については,そのライセンスに基づいて差止請求権を行使できても差し支えないのではないかという形でまとめております。

また,(イ)の著作権等の譲受人・他のライセンシーについてですけれども,こちらにつきましては,まず1段落目のところで,独占的ライセンシーに劣後する著作権等の譲受人や他のライセンシーについては,差止請求権を認めても差し支えないだろうということを書いております。

30ページ目の上から2段落目のところですけれども,ただ,この独占的ライセンシーに著作権等の譲受人や他のライセンシーが劣後するという場合がどのような場合かといったところについては,別途の検討が必要だろうということを書いておりまして,例えば独占的ライセンスの対抗制度において,登録に代替する対抗要件として,施行日前から備えることが可能な要件,例えば明認方法などを設ける場合については,仮にその対抗力の発生を施行日前に遡らせると,施行日前に現れた著作権等の譲受人や他のライセンシーの予測可能性を害する可能性があると。

したがって,独占的ライセンスの対抗制度により付与される対抗力というものは,施行日前に対抗要件を備えていたとしても,施行日後に生じることとするなど,施行日前に現れた著作権等の譲受人や他のライセンシーの予測可能性を害さないような制度設計とする必要があるのではないかということを書いております。

したがって,独占的ライセンスの対抗制度において施行日前に現れた著作権等の譲受人や他のライセンシーの予測可能性を害さないような制度設計を行うということを前提に,施行日前に設定された独占的ライセンスに係る独占的なライセンシーが,劣後する著作権等の譲受人や他のライセンシーに対して差止請求を認めたとしても差し支えないのではないかという形でまとめております。

また,30ページ目の下の(ウ)の著作権者等との関係,ライセンサーとの関係ですけれども,こちらにつきましては配慮したほうがよいという御意見と,配慮しなくてもよいのではないかという御意見,いずれもあったかと思いますけれども,31ページ目のところで,上から2段落目,「この点については」というところです。そもそも著作権者等は,独占的ライセンスを付与した以上,独占的ライセンシーがその独占的な利用を確保するために行う行為については受忍すべきものと考えられるかなと。

したがって,基本的には施行日前に設定された独占的ライセンスに差止請求権を付与するに当たって,著作権者等への特段の配慮というものは不要ではないかという形でまとめております。もっとも,独占的ライセンシーの差止請求権が認められないことを前提に,独占的ライセンスを設定していることについて,著作権者等に保護すべき利益が認められるような例外的な場合があるということであれば,その例外的な場合に限って何らかの措置を講じることが考えられると。そのため,著作権者等との関係については,そのような例外的な場合があるのかどうかといったところを含めて,さらに確認・検討されることが望まれるという形で整理しております。

したがって,(エ)のまとめですけれども,基本的には,施行日前の独占的ライセンスであるからといって,差止請求権の付与が否定されることはないと考えられますけれども,施行日前に設定された独占的ライセンスに差止請求権を付与するに当たっては,独占的ライセンスの対抗制度について施行日前に現れた著作権等の譲受人や他のライセンシーの予測可能性を害さないような制度設計を行うこと。また,独占的ライセンシーの差止請求権が認められないということを前提に,独占的ライセンスを設定していることについて,著作権者等に保護すべき利益が認められるような例外的な場合の有無等についてさらに検討する必要があるという形でまとめております。

続いて,カの複数人による独占的な利用を認めるライセンスの取扱いですけれども,こちらにつきましては,大きく2つの場面で検討がされていたかと思います。

まずマル1ですけれども,複数のライセンシーが共同で利用行為を行うということを許諾している場合ですけれども,そちらにつきましては,まず(ア)のところです。このマル1の場合については,特許法の専用実施権で共有が認められていることや,この場合,複数のライセンシーが会社等を設立して,一つの法人として独占的ライセンスの設定を受けていた場合と実態的に変わらないのではないのではないかと。そうすると,この場合について差止請求権を付与したとしても特段問題はないのではないかという形でまとめております。

32ページ目の(イ)のマル2ですけれども,マル2については,複数のライセンシーがそれぞれ独立して利用行為を行うものですけれども,ライセンシー間でお互いにその利用行為については認めているというような場面を想定しております。こちらにつきましては,そもそもそれを「独占」と評価してよいのかというところが疑問であるといった御意見があったところです。

一方で,この場合であっても薄まっているかもしれないけれども,独占的地位を認めて差し支えないのではないかといった御意見があったということを紹介しております。

また,2段落目ですけれども,このマル2の場合の法的な整理に関しては2つの考え方が示唆されていたところで,まず(ⅰ)ですけれども,この場合は独占性の範囲を限定した形でライセンスを付与しているということで,ライセンシー間ではお互いに差止請求権を持たないと。ただ,それ以外の者との関係では差止請求できるという考え方。

一方で(ⅱ)ですけれども,各ライセンシーは本来ライセンシー間においても差止請求権を有すると。ただ,相互にその利用を許諾しているのではないかといった考え方。

3段落目に行きますけれども,(ⅰ)の考え方による場合については,独占性の人的範囲を制限した独占的ライセンスについて,その独占性の範囲でのみ差止請求権が発生すると考えた上で制度設計を行うことになるだろうと。

他方で,(ⅱ)の考え方による場合については,制度上は,ライセンシーが1人という完全独占的ライセンスのみが差止請求権の付与対象となると考えた上で,ライセンシー間でお互いに利用許諾を行うことになるのではないかと。ただ,その「もっとも」という段落ですけれども,(ⅰ)の考え方による場合については,独占性の人的範囲の制限について限界はないのかと。例えば,相当多数の者に利用を認めているという場合についても,ここで言う独占的なライセンスと呼んでよいのかといった問題があるのではないかと。

また,(ⅱ)の考え方による場合についても,この場合,二重に完全独占的ライセンスが出された上で,ライセンシー間で相互に利用許諾をしているということになると思いますけれども,この場合,一方の独占的ライセンシーが独占的ライセンスについて対抗要件を具備すると,他方の独占的ライセンシーが有する独占的ライセンスの独占性というものが確定的に否定され,結局,マル2の場合に,独占的ライセンシーが複数といった状況をつくり出すことができないのではないかといった問題が生じることが想定されると指摘しております。

33ページ目の上から2段落目ですけれども,したがって,このマル2の場合に,差止請求権の付与を認めるか否かについては,認めた場合の法的な整理・限界についてさらに検討を行い,適切に整理されることが望まれるという形でまとめております。

また,その下のなお書きですけれども,このマル2については,不完全独占的ライセンスに関し,著作権者等,著作権者自身に利用を認めるというものを,ここで言う複数の利用者の1人が著作権者自身であると整理すると,完全独占的ライセンスと不完全独占的ライセンスの違いについてという論点と共通する問題ではないかという御指摘があったということを紹介しております。

続いて,キの独占的なサブライセンスを受けたサブライセンシーの取扱いですけれども,こちらにつきましては,まずサブライセンスの法的構成について,利用権の当然対抗制度導入時の議論において,2つの理論構成があるのではないかという御指摘があったところです。

まずマル1の授権構成ですけれども,ライセンシーはライセンサーから授権を得て,サブライセンスを行っていると。したがって,そのサブライセンシーは著作権者に対する利用権を取得することになると。

これを図に示しますと,34ページ目の上の図1になります。この場合,マル1のコメ印で書いていますけれども,授権構成の場合,著作権者等は独占的ライセンシーに対し,マル1の独占的ライセンスにより設定された独占的ライセンスの存在を前提とせずに,サブライセンスを行う権限を与えているということになると思いますので,この独占的ライセンス契約とは別に,独立して授権契約というものが観念されるのではないかということを注記しております。

一方で,マル2の賃貸借・転貸借構成ですけれども,著作権者-ライセンシー-サブライセンシーの関係については,賃貸借契約における賃貸人-賃借人-転借人と同様の関係にあるのではないかという構成になります。

これを図にしますと,図2のようになりまして,授権構成との違いとしましては,直接的には独占的なサブライセンシーが有する独占的利用権というものは独占的ライセンシーに対して有するのだろうと。ただ,このサブライセンスについては,ライセンサーも承諾していますので,その独占的利用権については,ライセンサーに対しても主張できると。

この場合,コメ印に書いていますけれども,著作権者等は独占的ライセンシーに対し,このマル1の独占的ライセンスを前提にサブライセンスするということを許諾しているのではないかと。

35ページ目にいきますけれども,「ワーキングチームでは」という段落です。ワーキングチームでは,マル1の授権構成で考えた場合については,ライセンシーが複数の独占的ライセンスを認めているのと事実上同じことになるのではないかと。したがって,複数の独占的ライセンスの存在を認めると考えるのか考えないのかといったところで,ここの議論にも影響してくるのではないかという御指摘があったということを紹介しております。

また,マル2の賃貸借・転貸借構成につきましては,これを念頭に,独占的サブライセンスを受けたサブライセンシーも差止請求権を行使できて,それについては著作権者や独占的ライセンシーの意向を聞く必要もないのではないかという御意見があったということを紹介しております。

「以上のとおり」というところですけれども,独占的サブライセンシーにも差止請求権の付与を認めるか否かという点については,サブライセンスの法的構成や,カの複数人による独占的な利用を認めライセンスの取扱いの論点において,ライセンシーが複数の独占的ライセンスを認めるか否かによって,考え方が変わり得ると。したがって,制度設計に当たっては,これらの点に留意した検討が必要であるという形でまとめております。

また,クの特許法その他の知的財産権法との関係ですけれども,こちらにつきましては,四角の部分で,調査研究でまとめられていた内容を抜粋してきております。結論としましては,特許法などにおいても独占的ライセンシーに差止請求権を付与するのであれば,立法措置を講ずることが最も確実と。それは著作権法においても変わらないと。

この点につきましては,36ページ目になりますけれども,ワーキングチームでも特段の御異論はなかったかなと思います。むしろ,特許法その他の知的財産権法との比較でいうとすれば,著作権法においては,特許法の専用実施権や商標法の専用使用権のような制度がないという点で,何らかの立法措置を講ずる必要性があるのではないかと。

「また」のところですけれども,特許法の専用実施権については,権利として強過ぎるというところで,使い勝手の悪い制度になっているのではないかと。そういう意味で言うと,今回の場合も出版権的構成よりも独占的利用許諾構成のような制度設計とする必要性が高いのではないかという御意見もあったということを紹介しております。

「いずれにせよ」というところで,今後の出版権的構成の検討,その後の制度設計に当たって,以上のような観点に留意しつつ,検討を進める必要があるということをまとめております。

ケの差止めの範囲ですけれども,こちらにつきましては,1段落目,2段落目のところで,基本的には,その契約で定められた範囲で差止めができるということになるだろうと。具体的には利用権が設定されている範囲で,かつ,独占性の合意がなされている範囲と。したがって,3段落目ですけれども,例えば,複製のみが許諾されている独占的ライセンス契約において,複製だけでなく,公衆送信についても,ほかの人に許諾しないということが約束されていたとしても,複製については利用権が設定されているので,差止めができますけれども,公衆送信については利用権が設定されていないので,差止めの対象にはならないといった違いが出てくるのかなと。

その下の「ただし」という段落,差止請求が可能な人的範囲ですけれども,こちらにつきましては,これまで述べた各論点の考え方によって,その制度設計に影響があると思いますので,その各論点における法的整理を踏まえて,さらに検討されることが望まれるという形でまとめております。

また,37ページ目の上から2行目のところですけれども,「なお」というところですが,差止めの対象となる利用行為の範囲ですけれども,こちらについては,著作権の譲渡に関する,いわゆる内容的一部譲渡の議論にあるような,著作権をどこまで細分化できるのかという内在的な限界の議論との関係についても検討しておく必要があるのではないかということを指摘しております。

一番最後,(3)のまとめですけれども,以上のとおり,独占的ライセンスの対抗制度と差止請求権の制度について検討を行ったと。独占的ライセンスの対抗制度につきましては,その具体的な制度設計についてさらに検討する必要があるということを指摘しております。この点に関しては,出版権的構成でも同様に,対抗要件としてどのようなものを設定するのかといった問題が出てくると思いますので,来年度,併せて具体的な検討を進める必要があると考えております。

また,その下の差止請求権を付与する制度のところですけれども,様々,さらに検討を要する事項を指摘したところですが,その多くは,独占的利用許諾構成により制度設計する際に問題になるだろうと。したがって,独占的利用許諾構成により制度設計する場合には,それらの事項についてさらに検討・整理されることが望まれるという形でまとめております。

また,一番最後の段落で,来年度の進め方について少し触れておりますけれども,来年度は,出版権的構成について個別の検討事項の検討を進めていくこととして,さらに独占的利用許諾構成に係る今年度の整理との比較という観点も含めて,取りまとめに向けた検討を行うものとするという形でまとめております。

そのほか,38ページ目,39ページ目では,今年度のワーキングチームの開催状況とチーム員名簿をつけております。

事務局からの説明は以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。かなり多岐にわたりますけれども,前回議論した部分につきましては,また後ほど,全体を通しての御意見をお伺いする際に御意見いただければと思いますので,まずは(2)の本日の部分である独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の内容に関しまして,御意見,御質問等がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

では,水津委員,お願いいたします。

【水津委員】独占的ライセンスに基づく差止請求権の正当化について,23ページでは,対抗制度によってこれを正当化する見解は,不動産賃借権に基づく妨害排除等請求権について,不動産賃借権の特殊性によってこれを正当化する通説的な見解とは異なるとした上で,民法における考え方との整合性が問題となるとしています。しかし,民法においても,不動産賃借権に基づく妨害排除等請求権について,対抗制度によってこれを正当化することは,考えられます。この立場によれば,独占的ライセンスに基づく差止請求権について,対抗制度によってこれを正当化することは,民法における考え方と整合していることとなります。そのような論理の道筋があることが読み取れるように,現在の記述を手直ししたほうがよい気がしました。

【龍村座長】ありがとうございました。では,その点,今,御指摘の点,反映させていただきたいと思います。

では,大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】水津先生とは,最後は結論が同方向に行くことが多くて驚きます。結論としては,今,水津先生が言われたのと同様でありますが,私は少し違う観点から申し上げます。ここの前半で民法との関係を検討しなければいけないといった後,「もっとも」ということで,もともと私はこの後半のほうを強く聞いていました。有体物についての法と無体物についての法というのは,使用の排他性などの点において本質的な相違があり,あまりに違いが大きいです。そもそも別の世界だから,同一の結論になる必然性もありません。

③の考え方は民法の通説的な見解ではないということに関して,人によって考え方が違うかもしれませんが,私はもともと有体と無体とは本質的に異なるから,そもそもあまり関係ないと考えております。先ほど水津委員が言われたように,今までドグマ的にそのように思われてきたかもしれませんが,そのような説明ではない。むしろ,無体の理由づけに近いようなものであるのならば,なおさら,そうであります。この書き方自体は,有体と無体の違いをあまり意識せずに,同一法で処理できると思って,かつ,古典的な民法の解釈を前提とした議論になっていますが,私としては,有体と無体はそもそも本質的に違うものであるし,民法の中でも,これが本当に通説なのかということについて異論があるのであれば,逆転プラス大本のところも必ずしもそうでないという二重の意味で,これは書き換えたほうがよいと思います。

それから,22ページの占有による正当化の応用について,知的財産法は,総論の一番最初で,無体物だから占有はないというところから始まっているので,それを意識して,そもそも占有がないことを一番最初に出して,後はここまで詳しく書かずに軽く付け加えていただくのでよいと思います。一番最初の入口のところで,無体と有体は全然違うという点も前面に出していただいたほうが,なるほど,これはさほど読む必要がないということも分かるので,その2点が気になりました。

【龍村座長】ありがとうございました。ただいまの点は前回から御指摘はいただいている点で,ワーキングチームの議論をやや引きずっているといいますか,踏まえているところがありますので,こういう書きぶりになっているかと思いますが,御指摘の方向で少し検討するようにいたします。

事務局,いかがですか。

【高藤著作権調査官】御指摘も踏まえて,検討はしたいと思います。

【龍村座長】水津委員,お願いいたします。

【水津委員】前の発言を補足させてください。調査研究でも書かれているように,対抗制度による正当化という考え方から出発したとしても,不動産賃借権に基づく妨害排除等請求権と,独占的ライセンスに基づく差止請求権とでは,利用の目的が有体物であるか,無体物であるかが違うため,請求権が生ずることを正当化するための論証のプロセスは,異なることとなります。

【龍村座長】森田委員,お願いいたします。

【森田委員】先ほどの23ページの記述として,「③の考え方は,不動産賃借権に基づく妨害排除請求の議論における通説的な見解(①)とは異なる」ということで,①が民法における通説であるかのように書いてあるのですが,民法の通説においても,必ずしも,この①だけで説明しているわけでもなく,②や③も含めたいくつかの観点から説明しているのであって,この部分の記述はやや不正確ではないかと思います。

①の考え方は,どちらかというと保護の必要性についての政策的な議論であり,もちろん著作権については賃借権と同じようにそれに基礎として人が生活するわけにいきませんが,しかし,独占的ライセンスが事業の基盤となっている場合には保護の必要性が高いということはこの報告書でも指摘していることなので,①のみが民法の通説的な見解であるということと,①のような考え方は著作権にはおよそ妥当しないとされる点で,少し書き過ぎているのではないかと思います。少なくとも①が通説的な見解という部分は取って,全体の記述を調整していただければと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。

そのほか御意見いかがでしょうか。栗田委員,お願いいたします。

【栗田委員】栗田です。よろしいでしょうか。非常に細かい点ですが,23ページの2段落目の最後から3行目に「権利の対象が有体物か無体物かという違いがあり」という記載がありますが,厳密にいえば,権利の対象だけではなく,権利の内容自体にも相違があるとも考えられますから,「有体物か無体物かなどの違いがあり」というふうに修正していただいた方が,より広い議論の可能性を残せるのではないかと考えます。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

今村委員,お願いいたします。

【今村委員】23ページのイのところで,著作権者等の意思への配慮の要否及び方法という部分なんですけれども,ここに書かれている内容でいいかと思うんですが,確かに,差止請求の発生要件や行使要件として,承諾や意思に配慮した規定は不要だという点でよろしいかと思うんですけれども,調査研究をしたときに外国の制度をいろいろ見たわけですが,実体的に差止請求権はそれぞれ持っていて,差止請求といった請求は侵害者等に対してできるんですが,実際に訴訟を起こすという,訴訟手続きの場面では著作権者等の利害関係人に様々な配慮がなされていて,アメリカの調査研究の報告書だと,アメリカだと訴訟参加という形で著作権者に参加してもらうとかですね。

あとはイギリスだと,暫定的救済は,独占的ライセンシー,報告書では排他的ライセンシーというふうに書きましたけども,それが単独でできるけれども,本訴のほうは,共同でやるか,著作権者が嫌がったような場合には裁判所の許可を求めたり,あるいは被告として名前を連ねて訴訟を起こすとかいろんなやり方があるようです。そういったように実体法上の権利の発生等の面ではなく,訴訟の場面で,著作権者を含めた利害関係者に配慮するという手続は別途あるのかなと思った点が一つあって,ほかにもあるんですけど,取りあえずその点が一つの意見です。

【龍村座長】ありがとうございます。

では,大渕委員,手が挙がりましたのでお願いします。

【大渕座長代理】今,今村委員に言っていただいたのが非常に私の心に響きまして,私は最終的な方法論にはこだわりませんが,私の基本的な思想として,独占的ライセンスの大本は何かというと,独立の権利があるわけではなくて,著作権者がmasterというか,主人であるわけです。独占的ライセンスは,著作権法におけるmaster,主人からライセンスの譲与というか,一部権限の付与のようなものを得て生ずる従たるものなので,それが後で申し上げる下克上というところに関係してきます。そのような観点から,前回の要否のところで著作権者等に何らかの配慮をしなくてはいけないと申し上げたのですが,その延長線上にあるのが今の話です。

もともと著作権者は独占的,世の中で唯一その人だけが排他的に利用できるという独占的権利を持っているわけです。その一部をいわば譲与して独占的ライセンスになっているから,ライセンシーのほうも著作権者ダッシュと言うと言い過ぎですが,排他権を持っているので,その排他権のコロラリーとして差止請求権が生じるというロジックから言うと,実体権としては,この排他的地位の譲与でもって,そのコロラリーとして差止請求権は発生するのですが,それは実体法上の問題であって,手続法的にはイギリスとかアメリカのように一定の配慮をしているという法制があることは間違いありません。

この配慮の要否について,今までは実体法上の配慮は要らないということで,私も納得して,前回まとまったのですが,その辺,イギリス,アメリカはいろいろ細かく配慮しているようです。今まで実体法中心に考えてきて,排他的地位の譲与があれば,著作権者の承諾がなくてもコロラリーとして差止請求権が当然発生するという結論は,実体法上はよいのですが,行使する際にはいろいろきめ細かく配慮してあげたほうがよいと思います。その配慮をしないと,前にも言ったとおり,配慮してくれないのなら最初から独占的地位を譲与しないという方向になってくると思います。

それが前回,私が申し上げた0か100かという話になってくるわけで,50ぐらいなら出してもよいが,0か100しかなくて,ゼロに自分がなってしまうのなら独占的ライセンスを出したくないという方向に行くのも望ましくはありません。そこは今村委員がイギリス,アメリカについて言われたように,実体法的にはこれでよいけれども,きちんと訴訟法的には一定の配慮をしてくれるというのであれば,前回,我々がやった議論と両立する話であります。その関係で,前から私が思っていたのは,著作権者に通知ぐらいしてやってもよいのではないかということです。知らないうちに差止請求権を行使されると,著作権者も訴訟に参加したかったのに参加できないとかいろいろ出てきます。実体法上はこれでよいのですが,手続法上の権利が行使できるように通知して,手続法上の配慮をしてやったほうが,著作権者が自分の権利をきちんとピン留めして,ライセンシーの暴走を気にせずに独占的ライセンスを付与できるということになるので,恐らく両者にとってWin-Winになるのではないかと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。前回まではどちらかというとこの方向でまとまった,御意見が一致したという御様子もありましたが,今,お二方から,主として訴訟手続面での御指摘という,実体法的にはこれでいいのだけれども,訴訟手続上,何か配慮を,という御指摘になりましょうか。

【栗田委員】栗田です。前回までお話になっていたのは実体法の側面だったということもありますが,ライセンシーの側は差止請求権を行使したいけれども著作権者側は行使してほしくない,という場面を恐らく想定されていたのではないかと思います。これに対して,訴訟手続において著作権者に参加の機会を与えるという際には,例えば,ライセンシーが差止請求権を行使しようとしており,著作権者も権利行使には賛成しているが,ライセンシーの訴訟追行に不安があるために自らも訴訟に参加して権利を十全に守りたい,という場面が考えられます。このような場合には,訴訟告知等を行って,著作権者に訴訟に参加する機会を保障するという考え方があり得るのではないかと思います。

そうだとすれば,著作権者がライセンシーに差止請求権の行使をやめてくれといえる手続を想定しているのか,そうではなくて,著作権者がライセンシーによる差止請求権の行使には賛成しているが,同じ側でこれに参加する機会を保障するという制度を想定しているのかで話は変わってくるのではないかと思っております。

お聞き苦しくて申し訳ありません。以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】今の点に関しては,恐らく普通の訴訟参加と同じことになるかと思います。大前提としては,独占的ライセンシーは著作権者の同意等を要することなく差止請求をできるのですが,訴訟に入れば,ある実体権をどの程度,訴訟上,行使するのかというのは,進むほうと,やってほしくないというほうと両方あり得ます。訴訟法は,そのような意味ではニュートラルであって,ライセンシーが手続上,進めようとしているのをインタービーンにする場合には,不十分だからもっと頑張れというほうにインタービーンする場合もあれば,逆に,過度に権利を行使してほしくないという場合もあり,ポジティブとネガティブと,いかようにも実体上はあるのですが,訴訟上の行使について足りないからもっとやれと言うのか,行き過ぎだからやめろと言うのか,何かしらの訴訟的関与はできるということに,英米型にすればなると思います。

【龍村座長】一応,報告書では,契約上の制限で対応すれば足りるという観点で,契約上,コントロールをかけるというまとめになっているわけですけれども,それでは不十分だという方向の御指摘ということになりましょうか。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】私はそう思っております。契約上縛るというのは実体上で,それはそこまでいって,契約違反になるだけで,違反しても実体上は行使できるというところです。契約で縛るというのはあくまで実体で,実体の面ではここに書かれているとおりでよいと思うのですが,よく考えると,物事は大体,実体法と手続法と両方あるので,手続法という視点が今までやや落ちていました。先ほど御紹介いただいたように,イギリス,アメリカはそれを配慮してやっているので,今まで落ちていた視点である訴訟法のことも議論したほうがよいのではないかという話かと思います。

【龍村座長】事務局から補足してくださいます。

【高藤著作権調査官】すみません。事務局ですけれども,問題の場面をちゃんと確認したほうがよいかなと思っておりまして,まず,著作権者において,差止めしたくないと言っている場合に,独占的ライセンシーの差止めを認めてよいのかという場面と,そうではなくて,栗田委員がおっしゃったように,差止めは認めるのだけれども,独占的ライセンシーの訴訟追行が不安だから,そこについては何らか配慮してほしいという場面と,多分その場面は2つ別物だと思いますので,どちらの趣旨で配慮するのかといったところで,考え方が変わってくるのかなと思います。

例えば前者のほうであると,前回の御意見,ワーキングチームでの御議論からすると,そこは契約上の制限で足りるのではないかという考え方でまとまっていたのかなというふうには認識していたところです。

後者の訴訟法上の配慮をしてほしいというところですけれども,こちらは既判力がどこまで及ぶのかという問題とも関わってくるのかなとは認識しております。

以上です。

【龍村座長】よろしいでしょうか。大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】既判力に関しては,ここは別個の請求権となっています。私の理解では,独占的ライセンシーの請求権と著作権者の請求権とは別ですから,既判力は訴訟物が別なので及ばないと思います。今後検討するであろう,法定訟担当,債権者代位になれば,訴訟物は,著作権者の有する請求権を独占的ライセンシ―が代位行使する形になりますので既判力は及びます。ここは普通に考えると既判力の問題になりますが,事務局が御懸念されている訴訟法的な既判力などの話をしているのではなくて,現にどのような訴訟追行をするかが問題です。例えば,著作権者としてはもっとガンガンやりたいのなら,別途自らも出訴すればよいというのはあるかもしれませんが,常にそれでよいとはいえないかもしれません。これは債権者代位ではないので,実体上の請求権が2本あります。著作権者の請求権と,それから,独占的ライセンシ―の請求権と2本あるから実体的には独占的ライセンシ―は好きにやってよいのですが,それだと困る,勝手にやってほしくないというので,著作権者が一緒に入ることは考えられます。

訴訟法的に入ったら,一方にだけということは考えられないから,より進める方向にも,いかようにでもなるので,先ほどの問題について分ける必要はあまりないように思います。要するに,最低限補助参加で入れれば結構いろんなことができます。それを現実に可能とするための通知ぐらい認めてくれると,著作権者は気持ちよく,もう任せてしまってよいとなりますが,それも認めてくれないのであれば,最初から独占的ライセンスなんか出したくないということになるので,そのニーズに応えるためにはきめ細かく検討したほうがいいと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。

その辺りで,ほかに御意見ございますか。森田委員,お願いいたします。

【森田委員】いくつかに問題を分ける必要があると思いますが,独占的ライセンシーによる訴訟追行が不安であるという場合については,直前に,大渕委員が言われたように,著作権者には別個の権利があるわけでありますから,たとえ独占的ライセンシーが敗訴したとしても,著作権者自身は別途差止請求権を行使することができるのであり,また,補助参加の利益はあると思いますが,ここでは著作権者に何か通知をしなければ,独占的ライセンシーの権利行使を認めないといったような制約まで加える必要があるかというと,そこまでの利益はないのではないかと思います。

他方で,先ほど指摘があった著作者自身は差止めをしてほしくないと考えている場合の問題については,ここでは場合を区別して議論はされておりませんが,差止請求の相手方が不法利用者とされる場合であって,かつ,独占的ライセンシーが登録による対抗力を備えているか否かによっても場合を分けて考える必要があります。独占的ライセンスが対抗力を備えていない場合であっても,不法利用者に対しては差止請求権がありますが,著作権者が利用を許諾することは可能でありますし,また,その利用態様によっては著作権行使の一定の内在的な制約として許容されるべきものと評価できるような場合には,著作権者等の黙示の許諾があるといったような抗弁が相手方から提出される可能性もあります。そのような場合は,独占的ライセンスについて対抗力を備えなければ差止請求をすることはできませんし,対抗要件を具備する前に黙示の許諾がなされていると解される場合には,当然対抗制度が適用されるため差止請求は認められません。したがって,それが著作権者との関係でライセンシーに独占性を付与したという契約の趣旨に反するものとして,契約違反に基づく損害賠償請求をすることが可能であるか否かという問題は別途生じますが,そのような場合には,差止請求権の要件という実体権のレベルにおいて著作権者の意思を考慮しなければ,差止請求の可否が判断できないということになろうかと思います。

そのような場合には,独占的ライセンシーによる差止請求権の行使に関して,著作権者等の意思に配慮した手続的な要件を特別に定めなくても一定の調整が図られることになろうかと思いますので,著作権者等の意思の配慮を検討するうえでは,もう少しいくつかの局面を分けて議論する必要があるのではないかと思います。そのような観点を加えて考えた上で,最終的な結論としては,ここに書かれていること自体については,これで私はよいのではないかと思います。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】私としては,お聞きしているうちに,むしろ主たるものはどちらもあるので,やってほしくないというよりは,これはすごく補助参加的ですが,債権者代位のほうだったら既判力が及んでくるという,これは救済しなくてはいけないのですが,補助参加というのは自分に既判力が及んでこなくても,これもそうですが,実体上は著作権者の請求権と独占的ライセンシーの請求権は別ですが,変な訴訟追行されて,独占的ライセンシ―のほうが負けると,著作権者が事実上の不利益を被ることも間違いがないので,大本は自分の権利から発出した,自分の子供のような者が勝手に暴走して,自分が事実上の不利益を被るのであれば,著作権者の参加を認めれば,ポシティヴ・ネガティヴいずれの方向にも行きますので,あまり実体上のどちらかにこだわらずに,要するに訴訟法的に,補助参加かどうかは別として,現実に何らかの関与をできるように通知等を検討すればよいと思います。

先ほどお聞きしていると,英米的プラグマティズムだと思いますが,自分から発出した権利の人には訴訟的関与を認めるというのは,非常に両者の実体上の権利にうまく配慮した制度だと思って聞いていました。申し上げたいのは,今までは訴訟法的なことを考えずに,専ら実体面として考えてここに出ているから,今までの見解を変えるというよりは,今まであまりなかった訴訟法上の観点も入れたほうがよいのという話だと思います。

【龍村座長】ありがとうございます。

栗田委員,お願いいたします。

【栗田委員】すみません。一言だけ。既判力の点ですとか,ライセンシー側の権利行使の後に著作権者が別個独立に権利行使できるとかいった点ももちろん考慮すべきと思いますが,いろいろなことが未定の状況の下で,著作権者の訴訟参加を認めるべきかどうか,あるいは認めるとしてどのような方向で認めるかという点を別途議論する余地はあろうかと思います。ただ,私自身も,この部分の書きぶりとしてはこのような書き方でよいのではないかと思っております。

もう1点は,仮に著作権者の訴訟参加を手続上保障するという選択をした場合には,23ページにも書かれてありますように,「外国に著作権者等がいる場合など,迅速な権利行使にも支障が出かねない」という問題が恐らく出てくるのではないかと思います。ですので,もし著作権者の手続参加を手続的に保障するという制度を採用するのであれば,こうした迅速な権利行使への配慮も必要になってくるものと思われます。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

では,澤田委員,お願いいたします。

【澤田委員】今までお話のあった事実上の不利益があるのではないかという話自体は確かに正しいとは思います。もっとも,そうした事実上の不利益については,補助参加あるいは訴訟告知がない限り参加的効力が及ばないという形で,民事訴訟法上手当てされているのだと思います。今回のケースで,それを超えて,他の補助参加の利益を持つ者よりも手続的配慮をする必要があるということをどのように説明をするのかは思いついておらず,他の補助参加の利益を持つ者と同じ扱いで良いのではないかと個人的には思っております。

【龍村座長】ありがとうございます。

では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】ありがとうございます。大渕先生がおっしゃった,事実上の不利益が及ぶことを避けるために通知してほしいという要請が権利者側にある場合には,契約の中でそういう義務を定めておけば足りるのではないかと。したがって,報告書の記載としては,原案でいいのではないかと私は思います。

以上です。

【龍村座長】大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】実体面と訴訟面とが著作権の場合にも交錯していることが多いので,今日としては,一つ結論が出ていますので,イについては,実体上はこれでよいということです。先ほどの観点が今まで視点として落ちている面がややあったかもしれません。別途,来年度になるかと思いますが,今後その点も併せて検討するということに留めおきます。ただ,今村さんとか私のように割とポジティブな人もいれば,ネガティブな人もいるのですが,ここだけで言い切って何も書かないと,この人たちは実体的な側面だけ見て,手続法,両面ある訴訟法的なものは見ていないと思われてしまいます。そのような論点もあるので,今後検討するということで,きちんとピン留めをして,やってみた結果,先ほどのように迅速なものが駄目だということもあるのでしょうが,私としては,先ほどのように,補助参加はよくても,知らないうちにやられたら補助参加できないという意味では,デュー・プロセス的に通知は悪くないと思っています。

どこかに規定があるのかもしれませんが,検討した結果,例えば,現行法上の補助参加で賄われるというのであれば,民訴の立法者が配慮してくれていて,ここで心配するようなことはありませんから,皆さん,お忘れないようにと書けばよいし,もしくは漏れているんだったら特則をつくるとか,要するに,今まで視点がなくて検討していなかったので,それこそ来年度の一つのテーマになるのではないかと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。

奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】今の,来年度という話が出たのであれなんですけども,そうすると,この考え方というのは,出版権的構成のときも関係してくるということになるんですかね。もしくは,逆に言うと,出版権的構成と今回の構成との一つの大きな違いだということになってくるんでしょうかね。今,私の理解では,少なくとも出版権の場合は,勝手にやってということで,何の手続保障もないかなとかいう気もするんですけど,そういうことも含めて,来年検討していくということなんでしょうか。

【龍村座長】はい。そういう格好で来年に持ち越すということはあり得ると思います。では,大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】今言っていただいたとおりであります。完全に,訴訟的にも関与できないようなほど,フルに権限を与えるのが出版権で,その一歩手前で止まっているのがこの独占的ライセンスなのか,それとも,本当は出版権も行き過ぎかもしれないので,まさしくそこも見据えていただく必要があります。全体的に今回の独占的ライセンスのほうを見直すと,かなりの程度,これは出版権には跳ね返ってきて,両者の違いで正当化されるのか,実は出版権のほうを見直すべきなのかというのは,恐らくほぼ全部の論点に関して出てくるような話なので,それを含めて,今までなかった視点が少しずつ出てきますから,全部まとめて,次年度にコンプリートに全体を検討するということになろうかと思います。そのための頭出しというか,論点になるので,予め少しは出しておくというのが重要かと思います。独占的ライセンスと出版権の双方について,異同を含めて,実体・手続双方につき,漏れなく全論点についてきちんと議論を尽くすことが肝要と思います。

【龍村座長】ありがとうございます。では,事務局から補足いたさせます。

【高藤著作権調査官】今回御議論いただいて,訴訟法的な観点があるのではないかという御指摘がありましたので,報告書にはその視点があるということについては,記載ぶりについては検討しますけれども,何らか注記はしたいとは思います。来年度の検討についてですけれども,その点が出版権的構成の違いということになるのであれば,来年度,出版権的構成と独占的利用許諾構成の比較という観点も含めて検討は進めたいというふうには思っていますので,その中で論点の一つには,もしかしたらなるのかなというふうには思います。その進め方についても事務局のほうで検討したいとは思います。

【龍村座長】はい。ということでよろしいでしょうか。なお,実務的には,契約上,通知義務などの条項が入ってくるということは多いかとは思います。この論点はその辺りにいたしまして,全体が広うございますので,そのほかの論点で御発言いかがでしょうか。

【前田委員】ありがとうございます。不完全独占的ライセンシーの問題と複数人による独占的な利用を認めるライセンスの問題と,それから,独占的なサブライセンスを受けたサブライセンシーの問題はつながっている問題のようですけれども,この報告書では,第三者に対する差止請求権を認めるべきか,認めるべきでないかという,結論をどこまで出しているかということについて,事務局に確認させていただきたいと思います。まず,不完全独占的ライセンシーについては,第三者に対する差止請求権を認めるべきであると。理論構成はどうするかの問題は別として,結論としては,不完全独占的ライセンシーにも第三者に対する差止請求権は認めるべきであると。ただ,一定範囲のもの,すなわち著作権者等,あるいはライセンサーに対する差止請求権は認められないことになる。

それから,複数人による独占的な利用を認めるライセンスには,共同利用の場合と,独立して利用の場合の2つのパターンがあって,共同利用の場合には,ライセンシーには,第三者に対する差止請求権が認められる。それに対して,独立して利用する複数人のライセンシーの場合に,第三者に対する差止請求権が認められるかどうかについては,報告書は結論を出していない。独占的なサブライセンスを受けたサブライセンシーは,第三者に対する差止請求権が認められる。こういう結論が報告書から読み取れるという理解でよろしいのでしょうか。事務局に対する御質問です。

【龍村座長】事務局,お願いいたします。

【高藤著作権調査官】順番に御説明させていただきますけれども,まず不完全独占的ライセンスについては,おっしゃるとおり,まず差止請求権が認められるという前提で,ただ,その範囲について,27ページ目の(ⅰ),(ⅱ)という形で,それぞれの解釈において限定があるというような理解をしております。

続いて,複数人による独占的ライセンスですけれども,こちらについては,まずマル1の共同で利用行為を行うという場面については,これは対外的な差止請求権が認められるという理解でおります。

一方で,マル2のほうにつきましては,おっしゃるとおり,結論については出していないところです。というのも,ここの部分につきましては,(ⅰ),(ⅱ)の考え方で,このマル2の場面について,差止請求権が対外的に認められ,複数人に差止請求権が認められるという結論にならないという可能性もあるかなというふうには思っているところです。

特に(ⅱ)のところで,32ページ目の下から,一番下の段落ですね。「もっとも」というところで,(ⅱ)のところについては,結局,マル2の場合に独占的ライセンシーが複数といった状態をつくり出すことができないのではないかといった問題提起もさせていただいているところですので,考え方によって,もしかしたら,その複数人に差止請求権が認められないという可能性はあるのかなと思っております。

サブライセンシーの取扱いですけれども,こちらにつきましても,複数人に独占的ライセンスを認めるか否かというところで,特に授権構成の部分は変わってくるのかなと思っておりますので,少なくとも授権構成については,マル2と同じく結論が出ていないというふうに理解しております。

賃貸借・転貸借構成につきましては,こちらも認められるのではないかという御意見を紹介しておりますけれども,こちらについても,特段,結論自体はこの報告書には書いていないという状況でございます。

【龍村座長】よろしいでしょうか。では,大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】あまりにたくさんあるので,最初は,不完全独占的ライセンスに集中してお話しいたします。私はこれについて違和感がかなり前からあるのですが,我々,知的財産法の教官は,特許と著作権の両方をやっているので,著作権法的なアプローチもするけれども,特許法的なアプローチもいたします。例を特許に取らせていただくと,専用実施権と通常実施権があって,それぞれ排他的ライセンスと非排他的ライセンスなのですが,特許の場合には,通常実施権に上乗せとして,独占的通常実施権があり,さらに,完全独占的通常実施権があるというように,下から積み上げていくような考え方です。今回のがまさしくそれに対応しています。

単純ライセンスのようなものが1階にあって,その上に独占的ライセンスという2階を載せて,さらに完全独占的通常実施権という3階を載せるのに対して,完全独占まで行っているものが特許の場合だったら専用実施権だし,著作権の場合だったら出版権なのですが,特許の場合には,専用実施権が,前に申し上げたとおり,ほとんど使われていないから,通常実施権から行くと,下から積み上げるようになって,著作権の場合には,出版権が現行法であるという観点からすると,単純ライセンスではなくて,独占的ライセンスがあったら,そのコロラリーとして差止めが取られることになって,それは公示されます。

私が気になっているのは,この完全性の部分の公示をどうするのかということで,単純ライセンスは,登録なくても対抗できるとしたから,それはもうよいのですが,独占性については,今度,対抗制度をつくるのですが,完全というのをどうするのかというところであります。今までは契約上の付款とされることが多く,論点にもなっていなかったのですが,私からすると,一番の権利の大本は著作権者で,それから譲与で下がってきますから,先ほど,下克上という,やや不穏当な表現をしましたが,一番主の人が著作権者で,著作権の場合にはクリエーターが個人で弱くて,出版権者のほうが企業で大きいから強いのですが,法律的に言うと,主人というか,masterは著作権者で,それから,一部権利をいただいた方が独占的ライセンシーなので,大本の人以外に対してはみんなコロラリーとして差止請求等が認められますけども,大本の人に対しては,差止請求等を打てないのが不完全独占性であり,それが2階まで来た。

もともとが単純ライセンスだと差止めもできないのが,2階まで来ると差止めができるようになり,その段階では著作権者に対しては打てないのが,私としては当然だと思っています。ただ,下克上してよいという特約と言うと不穏当ですが,主人に対しても差止めができるかどうかというのが,まさしくここの完全性のところになります。私の感覚から言うと,例外的に主人に対しても差止めができるという地位に対しては,それができる人というのは主人だけれども,大本の契約のままにいる主人だけなのか,それとも,売られた後も,いわば下克上される地位みたいなものの負担つきで買うというふうになるのかという整理にすると,割と特許のほうの議論に近くなります。今のでお分かりのとおり,契約当事者同士なら,下克上する合意を納得して著作権者のほうは契約したからよいのですが,これが譲渡となると,すみません。あんまり最初から大げさなことを言うつもりもなくて,やってみたら,そんなものは要らないとなるかもしれません。例で言うと,AがBに独占的ライセンスを出しました。その後で,AがCに売りましたというときには,下克上できる権利をCに対しても本当に無制限に主張できるのかというと,もしかしたら,それをしたいのであれば,完全性の公示も要るかもしれません。

要するに,出版権は1階,2階,3階がフルセットなった権利なので,当然に完全が入っているのですが,今やっているように,下から積み上げていくとなると,一番上のところというのは当然でもなくて,それは合意なのかは別として,3階という別のものだということは認識したほうが,スムーズに議論が進みやすいと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。

そのほか,御意見ございますでしょうか。森田委員,お願いいたします。

【森田委員】最初の前田委員のご質問に関連して,この報告書で検討されている複数の問題が共通する問題ではないかということは,前回私が申し上げたことですが,今回,そのような意見があったことを報告書の中で触れていただいており,そのような観点から問題の整理がなされていることは適切であろうというふうに思います。

ここでの問題は,立法するときの基本的な考え方として,差止請求権の対象となるライセンスというのは,本来は完全な独占性を与えるもののみが対象とされると考えるべきであるが,しかし,その例外として,それ以外にも差止請求権を認めるべき場合があるので,それらについては個別に列挙して対応するという規定の方針でのぞむ場合には,どうしても対象から外れる場合が生じる可能性があります。これに対し,独占性といっても,その人的範囲というのは,当事者間の合意によって定めることができる。ここで検討している完全独占ライセンスと不完全独占ライセンスの区別についても,後者には,著作物の利用が認められるのは著作権者等の譲受人も含むのか,ライセンス契約の当初の当事者であった著作権者等に限るのかについては,合意でいずれかを自由に定めることができます。したがって,契約当事者の合意によって独占性を付与する人的範囲をアレンジするときには様々な可能性がありうるわけですが,将来生ずるニーズも含めてすべてを事前に予測して個別規定として列挙することには限界があります。そうすると,実質的には共通する問題であるのに,差止請求権の対象について漏れが生じるような立法をしてはいけないという見地からは,合意によって独占性を付与した人的範囲に応じて差止請求権を付与するという一般原則を法律で定めておけば,それにより多様な独占性の形態に応じて解釈によって柔軟に対応することが可能になってきます。要するに,法制化をするさいの基本的なスタンスとして,完全独占のみが差止請求権の対象とされるべきであり,それ以外のものは個別に列挙して加えていくというアプローチを採るのか,当事者間の合意によって定まった独占性の人的範囲に応じて差止請求権を認めるという一般原則を規定することにより包括的な形で立法すべきなのか,いずれが妥当であるのか,という選択がここでの問題のポイントであろうと思います。

もちろんその先には,独占性の人的範囲についての公示をどうするかという問題がありますが,これは来年度の検討課題でありますので,この場で検討すればよいと思います。その前提として法制化するさいにいずれの考え方を基礎とすべきであるかがここでの問題でありますが,この報告書では,完全独占のみが本来の差止請求権の対象であるという考え方を採った場合にはどのような問題が生ずるのかということについては,それぞれの箇所において適切に指摘がされていると思いますので,報告書のまとめとしてはこれでよいのではないか。最終的な結論として具体的にどのような場合に差止請求権が付与されるかについては,別にここで明確にしておく必要はなくて,その基本的な考え方についての整理が適切になされていれば,今期の取りまとめとしては十分ではないかと考えております。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

澤田委員,お願いいたします。

【澤田委員】今の森田委員の御意見とも関係するところですが,独占性の人的範囲の制限を認めた場合には,今回の制度は,特定又は不特定の他者に利用させないという合意がされたら,それに基づく期待を保護する制度ということになるのではないかと思っております。 そのため,あまり独占性というところにフォーカスが当たるのはどうなのかなと思っております。例えば,実務的には,あなたにこれを使わせてあげるよ,ただ,例えば同業他社だけにはライセンスを別に出さないでね,という合意がなされることがあります。この場合には,独占ライセンスではなく,非独占ライセンスに条件がついているというイメージで私としては認識しているのですが,そういったものも独占性の人的制限がされているという見方もできるのかなとは思っております。そうすると,独占性という言葉から通常イメージされるものとはやや乖離したものまで保護されるような気がしております。この独占性の人的制限と言われているものを認めるのであれば,根本的な考え方として,特定又は不特定に他社にライセンスしないという合意の保護といった形の制度として理解する方がよいのではないかと思います。その意味で,独占性という言葉とマッチしたものなのかというところにはやや疑問を持っております。

ここで独占性の人的制限と言っている仕組みを認めることが論理的におかしいとは思っておりませんが,申し上げたいのは,保護の対象となっているものと独占性というネーミングがマッチしない印象になってしまうのではないかということです。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

ほかに御意見,いかがでしょう。今村委員,お願いいたします。どうぞ。

【今村委員】出版権的構成については,来年度検討するということで,先ほどの事務局のお話ですと,また,来年度,出版権的構成を検討すると,新たに見いだされた独占的利用許諾構成とも関連する論点が出てきて,また来年度検討するということになるかと思うんです。そういう理解でいいんだと思うんですけれども,独占的利用許諾構成だけの検討では見いだせなかったような,論点も出てくると思います。 例えば出版権ですと,今回の議論の中では独占的ライセンスは当然利用されるということが前提に与えられるという話で議論はしているんだと思うんですけども,出版権を設定した場合でも出版されないということはあるわけですが,独占的ライセンスでいったら,設定したけど,全然利用されず,ただその場合でも,ずっと独占的ライセンスが残ることになります。特許の場合だと実施権は特許権がなくなれば消滅するでしょうし,特許の場合には期間もある程度限定されているでしょう。ですが,出版権の場合,契約上も著作権の存続期間は有効という限定をしているものがあれば,その期間はかなり長いですし,そういった場合にほったらかしになると困るので出版権の消滅といった規定があるわけです。長期間の独占的ライセンスを設定したが,それが使用されなかったような場合があることを考えると,この出版権的構成を検討する際に,その消滅だとか,そういった期間の限定とかそういうことは今後検討することになると思いますが,遡って,今年度検討したこの独占的利用許諾構成を取る場合も,そういった契約法的な配慮が必要になってくるという部分がでてきて,今年度検討した部分の議論に加えて,さらにまた来年度も検討していくということになると思いました。今回のこのまとめで,来年度もまた出版権的構成で,そういうものを検討するということで,また今年度の構成の検討に関連するところが出てくればそれもまた改めて検討していきたい,検討していくという理解でよろしいわけですよね。事務局のお考えとしては,そういうことだと思うんですけれども,そうしたら,来年度検討すると,またたくさん論点が出てきて,いろいろな議論が出るかなと思います。

【龍村座長】ありがとうございます。では,事務局からお願いいたします。

【高藤著作権調査官】今村委員からの御指摘ですけれども,出版権的構成で出てきた論点というものが,この独占的利用許諾構成にも跳ねてくるのではないかという御指摘かなとは思います。その点については,来年度,出版権的構成を検討した上で,独占的利用許諾構成の比較という観点で,検討する際に併せて検討していくのかなというふうには理解しております。

【龍村座長】よろしいでしょうか。その他の論点でも結構です。大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】検討するのはよいのですが,気になったのは,人的範囲という大げさな表現が取られていることです。私の理解では,独占性は特に説明する必要はないと思います。完全性というのは著作権者に対しても差止請求を打てないかというところに特化してしまうほうが簡単で,それは先ほど言った理由で,私は,原則はできませんが,例外的に認めるのが「完全」という合意だと思っています。ただ,それを第三者にまで主張したいのであれば,今まで全然出てきていない論点ですが,例で言いますと,AがBに独占的ライセンスを設定して,その後,AがCに著作権を譲渡したという場合に,その最初の独占的ライセンスに完全の合意がついていれば,契約当事者間では,今の理由と,Aに対しては完全の合意があるから主君に対しても差止請求を打てると言えるのですが,著作権がCに移って,それが債権的合意だとしたら,第三者には及ばないので,そこまでやりたいのであれば,本当はもともと独占性の公示というのは,現行法にはないのをつくろうとしているのですが,もしかするとその先に完全独占性というか,単純ライセンスに独占性というのがプラスだとすると,それの公示をつくるのであれば,完全性ないし完全独占性の公示もしないと第三者に持ってくるのは困難かもしれないという論点も含めてであります。

【龍村座長】ありがとうございます。今の点,事務局からお答えいたします。

【高藤著作権調査官】御指摘の点ですけれども,完全性を独占性と別のものとして理解するかどうかというところと関わるのだろうと思っておりまして,従前,その独占性については,独占性の合意について,ほかの人に重複したライセンスを出さないというところだけを捉えて議論してきたところですので,そういうような考え方もありうるのかなとは思いますけれども,ただ,以前整理したものもあくまで暫定的なものとして整理しておりますので,その点については,その完全性という部分も含めて,独占性の中身として捉えて,それで制度設計するのか否かといったところで変わってくるのかなと思っておりますので,その点については,その独占性の中身をどう理解するのかといったところの検討の中で,どう整理するのかというのが決まってくるのかなと思っております。

【龍村座長】ほかにいかがでしょうか。

そうしますと,本日,独占的ライセンシーに対しての差止請求権の部分を新たに御議論いただいたわけですけれども,前回御議論いただいた部分も含めて,全体を通して,御意見,御質問ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】すみません。対象がよく分からなくて,今,完全のところをやりましたが,それ以外のところも含めてという話なのでしょうか。

【龍村座長】もちろん,本日御説明したところが中心ですので,よろしければそちらを優先に御議論いただきたいと思います。

【大渕座長代理】分かりました。それならば,この完全の次に大きなものは,遡及効でして,施行日前に設定された独占的ライセンスに基づく不法利用者に対する差止請求は,前回申し上げたとおり,私は単純に,むしろ旧法でもできると思っているぐらいで,排他性を与えればそのコロラリーとして差止めが認められるということです。本当は私は次の改正も確認規定だと思っていまして,こちらの不法利用者に対しては,そのように説明するのか,もともと不法利用者だから法的に保護するべき利益はないと説明するのかは別として,こちらのほうに対しては,私は本当は遡及効自体には消極なのですが,さほど害がないし,私からすると,むしろ旧法でもそうだと思っているから,結論としては,これならばよいですということになります。そちらはよいのですが,問題はイのほうです。著作権等の譲受人,他のライセンスは,前に申し上げたとおり,これに対して権利行使していくためには対抗制度,対抗要件ではないかもしれませんが,対抗制度がなくてはいけないということで,これは今はないわけです。現行では対抗制度は債権的ライセンスにはなくて出版権にしかないから,今後新たにつくる対抗制度で対抗ができるようになると,それを遡及させるのは苦しいのでしょうか。

細かく見ると,例外的な場合とかいろいろ細かくあるので,そこが引っかかるのですが,私としては,基本的には,先ほどのような理由で,アは認めてよいが,イは,本来は苦しいと思っています。ただ,この例外があり得るという具体的イメージがよく分からなくて,その例外を認めてよいのかどうかが判断しかねるので,もう少し御説明いただければと思います。

【龍村座長】では,事務局,お願いいたします。

【高藤著作権調査官】例外的な場合というのは,(ウ)の著作権者等との関係の部分のことかと思います。こちらにつきましては,前回御意見としても出ていたところですけれども,施行日前においては,著作権者は,独占的ライセンシーが差し止めできるという前提で,独占的ライセンスを付与しているわけではないので,そうすると,例えば契約によっては,著作権者だけが差し止めできるということを前提に何らかその事業が成り立っているというような場合について,もしかしたら独占的ライセンサー,著作権者等を何らか保護する手当をしなければいけないという場面が想定されるのではないかという御指摘かなと理解しておりまして,そういう意味では,そういう場面があるのであれば,ライセンサーとの関係で,何らか手当をする必要があるのではないかという趣旨でございます。

【龍村座長】大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】意味がよく分からなかったのですが,私としては,原則は対抗制度があって,先ほどの例で言うと,AからBが独占的ライセンスを受けて,AからCが著作権を受けるから,独占的ライセンスと食い合いになっているわけです。そうしたら,両方,ある意味,イコールフッティングなので,独占的ライセンスの人も著作権者に準ずる地位があるし,著作権の譲受人は全く,著作権をきちんと有しているので,民法的に,どちらも相手に請求できないという状態になっています。Cが対抗要件を具備したら,Cは満額というか,Bの独占的ライセンスがなぎ倒されて,Cが独占的ライセンスの負担の全くないものを取得するとなるし,今度,Bのほうが対抗要件を具備したら,Cは独占的ライセンスのついたものしか取得できないということになります。ただ,それをつくった後に出てきた人に対して適用するのは遡及効を認めないからあれなのですが,例外的な場合には遡及効を認めるということになるのかという辺りが,どちら側の例外かもあまりよく分かりません。

【龍村座長】では,事務局,お願いします。

【高藤著作権調査官】ここの例外的な場合というのは,つまり,今,二重ライセンスとか著作権の譲受人が出てきた場合というのは,おっしゃるとおり,対抗要件制度によって,どちらが勝つかというところで決まってくるのかなというふうには理解しております。

ここで言っているのは,対抗制度についても,既存の,既に施行日前に設定された独占的ライセンスについても,対抗制度自体は適用されるかなというふうには理解しておりまして,そういう意味で,施行日前に設定された独占的ライセンスでも,施行日以後に対抗要件制度によって対抗要件を備えれば,それは差し止めできるというふうに理解しております。

もう一点,すみません。例外的な場合のところですけれども,そういう意味で言うと,施行日前に設定された独占的ライセンスであっても,一律に差止請求権が否定されるわけではないという前提ですけれども,そうなると,もともと施行日前に独占的ライセンスを設定したらライセンサーにおいては,予想外に独占的ライセンシーが差止請求権を持つということになりますので,それを独占的ライセンシーが差し止めできないという前提で,独占的ライセンスをしていた場合については,著作権者において何らか不利益がもし生じるのであれば,それは手当が必要だと。例えばですけれども,施行日までに反対の意思表示をすれば,この差止請求権の制度は適用しないとか,そういった形で手当が必要になるのではないかという趣旨にございます。

【龍村座長】よろしいでしょうか。では,大渕委員,お願いします。

【大渕座長代理】今までよりは,はるかに分かるようになってきました。例に落とすと,このような感じでしょうか。施行日前に,AがBに独占的ライセンスを出していて,その後,施行日前か後かは別として,Cに譲渡したとすると,先ほどのでやると,そのままでは保護されない。Aの設定というのは施行日前で,その後,施行日が来てから,Bが登録を備えれば,その後はCに対して行けるという意味では,この対抗要件としては,遡及効ではないわけですね。そのような趣旨であれば大丈夫です。大本は施行日前かもしれませんが,問題にしているのはコロラリーのほうではなくて,対抗力のほうですから,対抗要件具備というのは新法でやっているというのであれば,新法である対抗要件の具備の根本のライセンス設定のところが施行日前でも,対抗要件具備を含めた全体としては,施行日後になるから,遡及効ではなく,大丈夫だと思います。

【龍村座長】ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。いろいろ論点があるので輻輳してきますけれども,どの点からでも結構です。

森田委員,お願いいたします。

【森田委員】33ページのサブライセンシーの取扱いについて,結論的な記述についてはこれでよいと思いますが,少し補足的に意見を述べさせていただきたいと思います。

ここで,授権構成と賃貸借・転貸借構成という2つの構成があり得るとされていますが,これは当事者間の契約で明確に定めれば,いずれの法的構成を採ることも可能であろうと思います。ただ,契約ではサブライセンスとされているが,いずれの法的構成を採るものかが明らかでない場合には,その解釈が問題になるのは当然でありますが,理論的にはいずれの構成もあり得るわけです。ここで重要なのは,それぞれの構成を採ったときに,差止請求権が誰に対して付与されるか,そして特に重要なのは,サブライセンスの公示制度をどう組むかというについては,どのような法的構成を前提とするかによって検討すべき論点が違ってくるかと思いますので,2つの構成があり得るのではないかという指摘は,そのような問題点を指摘するものとして認識しておくべきであろうと思います。

この点に関する報告書のまとめとしては,その点,制度設計にあたっては,どのような法的構成を採るかによって考え方が変わり得るところであるという記述になっておりますので,まとめとしてはこれで適切であろうと思います。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】このサブライセンスのところについて,まず名称から言うと,マル2の賃貸借・転貸借型と民法的なので,著作権としては,転ライセンス型のほうがよいと思います。それを踏まえて,授権構成型と,それから,転ライセンス型というのはこのようなことかと思っております。転ライセンスのほうからいくと,親亀子亀状況というか,ライセンサーから独占的ライセンシーに行っているのは親亀で,その上にさらに子亀が載っていて,要するに,両者はインディペンデントではないわけです。だから,親亀がこけたら子亀がこけるという,親亀子亀のようになっているのが転ライセンスで,他方で,授権構成というのは,授権だからできるということもありますが,独占的ライセンスの横につくわけです。だから,親亀子亀という形での転ライセンスではなくて,第1ライセンシーの横につくような感じだと思います。

横亀というのも変ですが,第1の亀の横につく。ただ,その際に第1の人が授権を受けてやるから,結果としては,下につくわけではなくて,横につくので,第1の亀がこけても,第2の亀はインディペンデントなので,授権のところさえ有効であれば,何らかの理由で第1の亀が死んでもというように考えた場合に,今までこれは説の対立だと思われてきたのですが,特許以来,よく考えると,サブライセンスという言葉がアバウトなだけで,親亀は本当は2種類あると思います。この順番で行くと,授権構成のように横にくっつくようなものをサブライセンスと言うこともあれば,孫みたいなものもあります。本当は2種類あって,どちらになるかというのは事実認定的というか,どちらかはっきりさせないと,法律関係が混乱します。ただサブライセンスと言ってしまうと両方あり得るから,本来は契約書でしっかりとどちらかを明示すれば混乱もないのですが,そのような意味では,法的対立というよりは,多分に事実認定的というか,当事者の合理的意思がどちらかということで決まるのだと思います。

もう1点,親亀子亀にせよ,横亀にせよ,これを言うと,実は複数人による独占的利用を認めるライセンスの取扱いの答えが出ているので,前回はそのようなものはあり得ないという話がありましたが,複数があり得ないということになると,サブライセンシーがどちらの意味にせよあり得ないということになるので,普通に世間ではサブライセンスはあるだろうと考えているところを見ると,考えれば考えるほど独占的ライセンシ―が1人のみに限られるというのはドグマであります。ここを考えると,その前の論点も解決するという気がします。

【龍村座長】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。全体を通してでも結構でございます。よろしいでしょうか。

今回,前回の御議論を踏まえて,新たに新機軸を打ち出した整理になっていると思いますが,このような整理でよろしいでしょうか。例えば27ページ辺りの不完全独占ライセンスの範囲を議論するときの分類の仕方であるとか,皆さんの御意見の集約かとは思いますけれども,差し支えなければこのようなまとめで進みたいと思います。よろしいですか。全体を通じてでも結構です。

大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】すみません。私としては,独占性の内容が不完全かというよりは,1階,2階,3階と分けたほうがよいと思います。ライセンスは,「打たれない地位」とも言われていますが,1階の単純ライセンスは,著作権者から差止損害賠償請求を受けないだけのものであるとピュアに考えて,それは当然対抗制で登録なくして当然に保護されるようになったという例の話であります。その次に,2階の独占的ライセンスは,その人だけに独占的地位があって,そのコロラリーとして差止請求を認める,3階は,それが強くなって,著作権者に対してまで権利行使できるというようにきれいに整理する,要するに,完全を独占の中に入れずに別に立てたほうが理解しやすいです。少なくとも特許では必ず通常実施権,独占的通常実施権,完全独占的通常実施権と議論しています。独占的の中に完全を入れるという考え方では,中身に入っているのは専用実施権と出版権なのですが,それは特殊な制度だから,普通に議論するときには,完全独占的通常実施権というように,完全性と独占性というのは別のものになっています。出版権も,フルセットで3階まである権利だと理解すればよく,2階と3階を混ぜると議論が混乱してくるように思います。

【龍村座長】ありがとうございます。今の御指摘は,それを踏まえて,もう一度検討したいと思いますが,事務局のほうでコメントをお願いします。

【高藤著作権調査官】今,大渕委員から御指摘いただいた点ですけども,恐らく独占性,先ほど申し上げたとおり,独占性の内容に関わると思います。報告書(案)の中で言いますと,3ページ目の脚注の2で,今回,赤字になった部分です。こちらにつきましては,完全独占的ライセンスや不完全独占的ライセンスの違いも含めて,各論点の整理等によって,その独占性の内容というものがまた変わってくるのだろうということを書いておりまして,今後整理していくという話になるのかなとは理解しております。

【龍村座長】澤田委員,お願いいたします。

【澤田委員】独占ライセンスの31~32ページに書いていただいているところで,マル1の共有的なものはあるだろうと思っておりますが,まだそれとは別に独立しているマル2の類型というのを認める必要性や実益がどこまであるのかというところはまだ理解できておりません。結局のところ,独占的に利用できる市場は一つであって,例えば複数独立して独占的ライセンシーが存在してもそれぞれが損害賠償請求のときに100%もらえるということはなくて,2人いたら50%ずつみたいな話になって,事実上,共有的な地位にもあるのではないかという気はしております。そのため,共有的なものを認めた場合に,それとは別に,独立した複数の独占ライセンシーを認めるという実益がどこにあるのかは今後検討されるべきとは思っております。

以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】今の点につきまして,複数名の独占的ライセンスではなくて,サブライセンスの場合で,ルームシェアリングとも言われていますが,Aさんが借りた後で,例えばガールフレンドのBさんも一緒に借りるということだと,先ほど申し上げたような授権構成というか,横につくような感じになるかと思います。

このような場合なら,独占的ライセンシー的地位が2人いることも理論的にあり得ないということはないし,実益がない訳ではありません。前に申し上げたような分社の場合に,A社がA1とA2に割れても,必然的に特権を失わないようにするのであれば,A1社もA2社もA社が持っていたのと同じような地位を持つことになるので,分社してはいけないとも言えないし,分社した瞬間に独占的ライセンスが無効になるというのもおかしいから,実益はなくはないのだろうと思います。

分社の場合なら必然的にあるし,今後いろいろなライセンス展開がありますので,その他大勢,もろもろに出されたら困るけれども,1社,2社,3社ぐらいならよいということもなくはないので,決め打ちできるほどはっきりしているわけでもないという気がいたします。

【龍村座長】ありがとうございます。

そうしますと,すみません。では,先に手が挙がったほうで,澤田委員,お願いいたします。

【澤田委員】分社の場合はもとより共有的な位置付けかと思っておりますが,独占的サブライセンスのものも含めて,結局独占的ライセンスが共有されているという整理というのもあり得るのではないかと思っております。その意味で共有という制度を仮に設けた場合に,それを超えて,別個に独立した複数ライセンスを認める必要があるかというのを検討すべきと思った次第です。私としても可能性を否定するつもりはないということは申し上げておきます。

【龍村座長】では,挙手の順番で指名させていただきます。水津委員,お願いいたします。

【水津委員】澤田委員がおっしゃっているのは,マル2の類型についても,独占的ライセンスが共有されていると整理すればよく,それ以外に独立の類型を認める必要はない,という趣旨ですね。

【澤田委員】そうですね。私が申し上げたのはそういうことです。

【龍村座長】どうぞ,澤田委員,お願いします。

【澤田委員】はい。

【龍村座長】では,大渕委員,お願いいたします。

【大渕座長代理】今の点なんですけど,共同著作と共有著作権については,私が法学協会雑誌に6月に執筆しましたので御覧いただければと思いますが,共有というのは別に共同の場合だけではないわけです。共同著作物は共有になるけど,非共同でも共有になり得るので,それに近いかなという気がします。だから,マル1,共同なら共有のほうになりますが,マル2のほうは,そのような意味で,共同ではないけれども,広い意味の共有と言えなくもないかもしれません。共有の2者の関係をどう律していくかというのは,まさしく我が著作権法65条にあるわけです。共有の定義を狭く取れば,このマル2のような共有ではないかもしれませんが,広く取れば共有と言えなくもないかもしれません。私の直感としては,マル2のほうは,広義の共有という言い方をすれば入るのかもしれないと思っています。だから,あまりそこは気にせずに進んでいいのかなと思います。

【龍村座長】ありがとうございます。

水津委員,手が挙がりましたでしょうか。どうぞ。

【水津委員】独占的ライセンスに基づく差止請求権の正当化について,補足させてください。先ほど,次のような話がありました。不動産賃借権に基づく妨害排除等請求権について,不動産賃借権の特殊性によってこれを正当化する考え方は,政策論を基礎に据えるものである。そのため,この考え方によっても,独占的ライセンスに基づく差止請求権が正当化される余地がある。独占的ライセンスも,事業の基盤となっていることがあるため,政策論として,独占的ライセンスに基づく差止請求権を認めるべきであるという立場も,考えられる。 しかし,私が調査研究の担当個所を執筆したときは,次のような理由から,そのように考えるのは,難しいのではないかと判断しました。動産賃借権も,事業の基盤となっていることがある。しかし,動産賃借権に基づく妨害排除等請求権は,一般に,認められていない。このことは,政策論としても,たんに事業の基盤となっていることがあるという程度では,賃借権に基づく妨害排除等請求権は,認められないと考えられていることを示している。他方,不動産賃借権は,定型的にみて,生活や事業の基盤となっているものと認められる。この特殊性から,不動産賃借権に基づく妨害排除等請求権が正当化される。以上のように理解すると,不動産賃借権の特殊性による正当化を応用することで,独占的ライセンスに基づく差止請求権を正当化するのは,困難であることとなります。なお,不動産賃借権の特殊性による正当化を支持する見解は,一般に,対抗力や排他性を手掛かりとする考え方に対し,批判的であることも付言しておきます。 以上の次第で,21ページにおいて,「人が生活したり事業をしたりするための基盤としての作用」とされているところは,そのような作用が定型的に認められるのでなければ,差止請求権は,正当化されないということであると理解しています。

【龍村座長】ありがとうございました。その辺りの表現はまた御相談させていただきたいと思います。

ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

どうも長時間,御議論いただき,ありがとうございました。本日の御議論あるいはいただいた御意見を踏まえまして,審議経過報告については,修正,検討等をさせていただきたいと思います。具体的な修正につきましては,恐縮ながら私に御一任いただくという格好でお願いいたしたいと思うんですが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【龍村座長】ありがとうございます。それでは,そのように取り扱わせていただきまして,その内容を法制度小委員会に報告させていただきたいと思います。

本日,もう時間が参りましたが,その他,御質問等,特段ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

そういたしますと,本日はこのくらいにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

最後に,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【高藤著作権調査官】本日も活発な御議論ありがとうございました。今期のワーキングチームは,本日が最後になります。今期の審議経過につきましては,先ほど座長からも御報告がありましたけれども,今後の法制度小委員会のほうで座長から御報告いただく予定となっております。

【龍村座長】ありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,今期の著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームを終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。次年度も引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

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