開会(あいさつ,施策説明)

開会 あいさつ 素川 富司(文化庁次長)
施策説明 山口 敏(文化庁文化部国語課長)


司会(橋本) 皆さん,こんにちは。時間になりましたので,ただいまから平成15年度文化庁日本語教育大会を開催いたします。
 私は,進行を務めさせていただきます文化庁文化部国語課の橋本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは最初に,開会に当たりまして,素川文化庁次長よりごあいさつを申し上げます。

素川 平成15年度文化庁日本語教育大会の開会に当たりまして,文化庁を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。
 本日は,この大会に全国からお集まりいただき,誠にありがとうございます。また,皆様の日本語教育に対する日ごろの御努力に対しまして心より敬意を表する次第でございます。
 言葉はコミュニケーションの手段でありますとともに,その言葉を母語とする人々の文化と深く結びついております。そして,日本語は日本の文化の基盤を形成するものであると言えましょう。この点から考えますと,外国人に対する日本語教育は,外国人学習者の日本文化に対する理解や認識を促進させるという重要な側面を持っているわけでございます。そして,このことは我が国の文化の普及や振興にも通じるものでございます。さらに,日本語教育の現場における日本語を教える方と外国人学習者の方との交流は,相互の異文化理解を深める上でも大変意義深いものであるわけでございます。
 会場の皆様方におかれましては,今後ますます多様な場面で日本語習得の支援や促進に向けて御活躍されることと存じますが,このような日本語教育の持つ様々な意義につきましてぜひ心にとどめていただくとともに,本日の日本語教育大会でこれからの日本語教育の課題や在り方,これらに関する御理解を一層深めていただきまして,その成果が今後の取組の一助となることを心より願っております。
 なお,本年は関西元気文化圏構想「『文化』で関西から元気になろう」という事業の一環といたしまして,11月2日の(日)にも日本語教育大会を神戸大学で開催いたします。この関西大会は,日本語ボランティア活動に焦点を当てた内容でございます。河合文化庁長官が鼎談で出演する予定となっております。この関西大会にもぜひ御参加いただきたく御案内を申し上げたいと存じます。
 最後になりましたが,この大会の開催に当たりまして御指導,御協力をいただきました講師の皆様,会場を提供していただいた昭和女子大学の皆様をはじめ,大会の開催に御尽力いただきました方々に対しまして厚くお礼を申し上げるとともに,ここに御出席の皆様方の今後の一層の御活躍を祈念いたしまして,開会のあいさつといたします。どうもありがとうございました。

司会(橋本) 続きまして,文化庁文化部国語課の山口課長より日本語教育に関する施策につきまして御説明を申し上げます。

山口 御紹介いただきました文化庁文化部国語課長の山口でございます。私に与えられた時間は10分でございますけれども,資料に基づきまして簡単に日本語教育に関する施策,それから最近の動きについて御説明を申し上げたいと思います。お手元の資料の中でこの緑色の冊子を御覧いただければと思います。私の方からは,この緑色の冊子の7ページから9ページあたりにかけての部分について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 まず7ページでございます。外国人に対する日本語教育の推進というページがございます。横になっていてちょっと見にくうございますが,ここの部分でございますけれども,政府における新しい動きとして,一つは,文化芸術振興基本法,それからそれに基づく基本方針が定められましたので,御説明しておきたいと思います。文化芸術振興基本法といいますのは,文化芸術分野での初めての基本法でございまして,平成13年の末に公布されております。その中では,文化芸術の振興ということで,国あるいは地方公共団体の責務,あるいは芸術文化の振興とか,文化財の保護とか,いろいろな項目について定められているところでございます。中でもこの日本語教育の充実について,そういった芸術家の養成確保や伝統芸能の継承といった事項と並んで,第19条として日本語教育の充実というのが定められております。7ページの真ん中の欄の左の方に文化芸術振興基本法第19条というのがございますが,そういった形で日本語教育の充実も法律上,文化振興に資するものとして位置づけられたところでございます。この法律に基づきまして,政府がこれから一体何をするかということについて,閣議決定によりまして,この右側の欄でございますけれども,文化芸術の振興に関する基本的な方針というものが昨年の12月に定められております。この内容にはたくさんの事項がございますが,この中では日本語教育の普及及び充実という形で,かいつまんで申し上げますと,第1項目として,日本語教育を受ける対象の方々の拡大に対応して日本語教育を充実していくということ,それから地域の実情に応じた日本語教室,日本語ボランティアの研修などの施策を充実するということ,それから海外で日本語を学ぶ方もおられますし,一方でインターネット等の情報技術も発展しておりますので,そういった面を視野に入れて情報提供を進めるといった項目が盛り込まれているところでございます。これは閣議決定でございますので,政府としてこうやるということを決めたわけでございます。文化庁としても,こういった基本方針に沿って,今後一層日本語教育の充実に努めていきたいと考えております。
 もう少し具体的なお話を具体的な施策として御説明させていただこうと思います。次の8ページ,9ページを御覧いただければと思います。ここには「文部科学省・文化庁における日本語教育施策の一覧」ということで簡単な表をつけさせていただいておりますが,この中で私からは二つの項目について御説明させていただこうと思います。一つは,8ページの4番目の項目で,インドシナ難民等救援業務委託というものでございます。皆様御承知のように,ベトナム,ラオス,カンボジアからのインドシナ難民につきましては,昭和50年代から約20年間にわたりまして関係省庁が連携して支援施策をやってきたわけでございます。日本語教育についても,財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部を通じまして国際救援センターで約4カ月の日本語教育をやってきたところでございます。そして,センターを退所して地域に定住された方々の支援ということにつきましては,日本語ボランティア関係の団体の方々あるいは地方自治体で日本語教室を開催していただいている方々の御尽力,御協力をいただきまして進められてきたところでございます。この場をおかりしまして感謝を申し上げる次第でございます。このようにインドシナ難民については施策が講じられてまいりましたけれども,昨今の国際状況等を踏まえまして,実は政府では難民あるいは亡命者に対する処遇の見直しをすることになりまして,昨年の8月でございますが,人種,宗教,国籍あるいは政治的意見等を理由として本国に帰れば迫害を受けるおそれがあるといういわゆる条約難民の方々に対しても各種の支援事業を行うということについて閣議決定が行われております。それに基づいて,本年度からそういった条約難民の方々にも支援事業が開始されることになっております。文化庁といたしましては,条約難民に対しましても,その特殊性に配慮しながら支援について,特に日本語教育でございますが,実施してまいりたいと考えておりますので,今後とも皆様方の御支援,御協力をお願い申し上げたいと思います。
 それから6番目の項目として,地域日本語教育活動の充実という事項がございます。この点について少し申し上げたいと思います。この中には二つの柱がございますが,一つ目の柱,日本語ボランティア活動の支援・推進事業という項目でございます。地域における日本語学習の支援というものにおきましてボランティアの皆様方の果たす役割は大きいことは言うまでもないわけでございます。このため文化庁ではボランティアの方々,特に地域のボランティア活動の中核となるコーディネータ*1と呼ばれる皆様方の育成あるいは研修にこれまでも努めてまいりましたけれども,実は昨年のこの日本語教育大会で,そういうコーディネータはもちろんだけれども,それ以上に現場で本当にボランティアとしてやっている人たちが現場ですぐに役立つような研修をやってもらいたいという御要望がございまして,本年度から日本語ボランティア研修も実施することになったところでございます。これは,地方自治体で行われているボランティアの研修につきましては,どちらかと言えば今までは入門的,初歩的な内容が多かったわけでございますけれども,現場で本当に役立つような指導方法とか,あるいは問題解決型の研修というものをぜひ進めていき,それによって実戦力の向上を図っていただきたいということで,始めることになったものでございます。今年はおかげさまで19の自治体や団体で実施していただく予定になっておりますけれども,こういったものもあるということで,今後ぜひ御活用いただければと思います。
 それから,この項目の二つ目,学校の余裕教室等を活用した親子参加型日本語教室の開設事業というものがございます。これは,いろいろな方々がおられますけれども,特にお子さんが小さくて,ぜひ日本語を勉強したいのだけれども日本語教室に行けないといった事情の方々がおられますので,そういった方々が子供さんと一緒に日本語教室に行けるようにということで始めた事業でございます。これは昨年13か所で実施していただき,今年は20か所で実施する予定でございます。ここに表題で「学校の余裕教室等」という例示を入れたものですから,学校の余裕教室でないとできないのだろうかという誤解も一部にございましたけれども,決してそんなことはございません。学校の余裕教室以外でも開催可能でございますし,昨年から今年にかけて,例えば実施する主体についても,要件をできるだけ柔軟に緩和するという方向で見直しを進めているところでございます。こういった御要望がありましたら,文化庁文化部国語課の方に御相談いただいて,ぜひ積極的にお取り組みいただければと思っております。
 この8ページから9ページにかけて私どもとしては御説明を申し上げたい事項はたくさんございますけれども,時間の関係もございますのでこの辺にさせていただきたいと思いますが,この2日間,文化庁文化部国語課の日本語教育関係の者は全員来ております。日ごろからこれはぜひ聞きたいと思っておられることがありましたら,ぜひその辺でつかまえて聞いていただければと思います。もしもこの2日間余裕がなくてつかまえ損なったら文化庁にお電話していただいても結構でございますので,ぜひ積極的に文化庁文化部国語課を御活用いただければと思います。それから,昨年もこの日本語教育大会で御意見をいただきまして,それが一つの結果としてボランティア研修というものに結びついております。文化庁のやっている施策はここの制度のここは堅いのではないか,ここは変えた方がいいのではないか,あるいはこういう新しい取組をすべきではないかといった御意見,御要望がございましたら,これもぜひ積極的にお知らせいただければと思います。
 最後になりましたけれども,地域における日本語学習ということで,ここにお集まりの皆様の御支援,御協力なしにはできないわけでございます。改めまして今後も御支援,御協力をお願い申し上げまして,私からの御説明を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

*1 コーディネータ 物事の企画・調整・まとめ役及びつなぎ役。


司会(橋本) それでは続きまして,本年度の日本語教育大会のテーマは,既に御承知だと思いますが,「日本語学習者の視点から日本語教育を考える」と設定しております。趣旨につきましては,パンフレットの2ページ目に書いてございますが,第2言語として日本語を習得された方にいろいろお話を伺って,それを基に我々日本語教育に携わる者が留意すべき点について考えていこうという趣旨でございます。それでは続きまして,第2言語として日本語を習得されましたピーター・バラカンさんから御講演をいただこうと思っておりますが,御経歴に関しましてはパンフレットの10ページ目に御紹介しております。テレビとかラジオとかで広く御活躍されておりますので,御存じの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが,音楽関係の仕事を中心に広く御活躍されていらっしゃいます。本日は非常に御多忙の中,時間を割いてお越しいただきました。
 それでは,お待たせいたしました。ピーター・バラカンさんに御登場いただきます。よろしくお願いいたします。(拍手)
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