令和3年通常国会 著作権法改正について

1. はじめに

「著作権法の一部を改正する法律」が,第204回通常国会において,令和3年5月26日に成立し,同年6月2日に令和3年法律第52号として公布されました。

本法律による改正事項(1)図書館関係の権利制限規定の見直しのうち,①国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信に関する措置については,公布から1年以内で政令で定める日から,②各図書館等による図書館資料の公衆送信に関する措置については,公布から2年以内で政令で定める日から,また,(2)放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する措置については,令和4年1月1日から施行されることとなっています。

(法律)

(関係資料)

<文化審議会著作権分科会報告書>

2.改正の趣旨

本法律は,(1)図書館関係の権利制限規定の見直し及び(2)放送番組のインターネット同時配信等の権利処理の円滑化の2点を内容とするものです。

このうち,(1)については,令和3年2月に文化審議会著作権分科会において取りまとめられた「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書」等を踏まえ,国民の情報アクセス向上,持続的な研究活動の促進等を図るため,①国立国会図書館が,絶版等により一般に入手困難な資料を,各家庭等からも閲覧することができるよう,権利者の許諾なくインターネット送信できるようにするとともに,②各図書館等が,一定の条件の下,補償金を支払うことにより,図書館資料の一部分を権利者の許諾なく公衆送信できるようにするものです。

(2)については,令和3年2月に文化審議会著作権分科会において取りまとめられた「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書」等を踏まえ,視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興等の観点から,放送と同様の円滑な権利処理を実現するため,①権利制限規定の拡充,②許諾推定規定の創設,③レコード・レコード実演の利用円滑化,④映像実演の利用円滑化,⑤協議不調の場合の裁定制度の拡充といった総合的な対策を講ずるものです。

3.改正の概要

(1)図書館関係の権利制限規定(※)の見直し
(※)権利制限規定:著作権者の権利を制限し,著作権者の許諾なく著作物を利用することができる例外的な場合を定めた規定

①国立国会図書館による絶版等資料の個人向けのインターネット送信【第31条第4項(第2条改正後:第31条第8項)等関係】

改正前の第31条第3項では,国立国会図書館は,デジタル化した絶版等資料(絶版その他これに準ずる理由により入手困難な資料)のデータを,権利者の許諾なく,他の図書館等にインターネット送信し,当該図書館等においてその一部分を複製して利用者に提供することが可能となっています。

この点,同項では,絶版等資料のデータは他の図書館等にしか送信できないこととなっており,国民はその図書館等に足を運ばないとそのデータにアクセスすることができないところ,感染症対策等のために図書館等が休館している場合や,病気や障害等により図書館等まで足を運ぶことが困難な場合,そもそも近隣に図書館等が存在しない場合など,図書館等への物理的なアクセスができない場合には,絶版等資料へのアクセス自体が困難となるなどの課題がありました。

そこで,従来は国立国会図書館から他の図書館等に送信され,物理的に当該図書館等に来館した利用者のみが閲覧し,コピーを得ることが可能とされていた絶版等資料を,国立国会図書館が,一定の要件の下で直接利用者に対しても権利者の許諾なくインターネット送信することを可能とすることとしています。この際,利用者においては,(ⅰ)インターネット送信される当該資料を自ら利用するために必要と認められる限度において複製(プリントアウト)することと,(ⅱ)インターネット送信される当該資料を非営利・無料等の要件の下でディスプレイ等を用いて公衆に伝達することを可能としています。

②図書館等による図書館資料の公衆送信【第31条第2項等関係】

改正前の第31条第1項(第1号)では,国立国会図書館又は公共図書館・大学図書館等の図書館等は,営利を目的としない事業として,調査研究を行う利用者の求めに応じ,公表された著作物の一部分を一人につき一部提供する場合に限り,権利者の許諾なく図書館資料を複製して提供することが可能となっています。

この点,同項では,複製及び複製物の提供(譲渡)しか許されておらず,図書館等から利用者に対して,FAXやメール等による送信(公衆送信)を行うことはできないため,複製物の入手までに時間がかかるなど,デジタル・ネットワーク技術の発展を踏まえた国民の情報アクセスの確保等が十分に図られていないという課題がありました。

そこで,従来紙媒体での提供が可能とされていた図書館資料のコピーを権利者の許諾なく公衆送信することを可能としています。もっとも,図書館等以外の場所で国民が簡易かつ迅速に利便性の高い形で資料のコピーを入手・閲覧することができるようになることで,権利者に与える影響が大きくなるため,権利者保護を図る観点から,以下の(ⅰ)~(ⅳ)の措置を講ずることとしています。

(ⅰ)送信主体を「特定図書館等」に限定【第31条第3項関係】

送信主体となる図書館等については,第31条第1項で定める「図書館等」のうちデータの目的外利用を防止するために適切な人的・物的管理体制等が整えられているもの(特定図書館等)に限定することとしています。

(ⅱ)不正拡散を防止・抑止するための措置【第31条第2項第2号関係】

公衆送信を受信した利用者が不正にデータを拡散させることがないよう,図書館等からの送信時に不正な拡散を防止・抑止するための措置を講ずることを要件としております。

(ⅲ)「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の制限(正規市場との競合防止)【第31条第2項ただし書関係】

今回の公衆送信によって,正規の電子配信サービスの市場等を阻害し,権利者の利益を不当に害することのないよう担保するため,「著作物の種類…及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には,公衆送信を行うことができない旨のただし書を設けています。

(ⅳ)補償金の支払い義務【第31条第5項等関係】

今回の送信サービスの実施に伴って権利者が受ける不利益を補償するという観点から,図書館等の設置者が権利者に対して一定の補償金を支払わなければならないこととしています(なお,実際の補償金負担は,基本的に当該サービスの受益者である図書館等の利用者に負担していただくことが想定されています。)。

(2)放送番組のインターネット同時配信等の権利処理の円滑化

⓪対象となる「放送同時配信等」の定義

放送番組又は有線放送番組の,同時配信,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信が対象になります。

詳細には,今回の措置の対象となる「放送同時配信等」を,放送番組又は有線放送番組(以下単に「放送番組」という。)の自動公衆送信のうち,以下の要件を満たすものとしています。

(ⅰ)放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(一週間を超える場合には,一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われること。

(ⅱ)放送番組の内容を変更しないこと。

(ⅲ)放送番組のダウンロードの防止・抑止する措置が講じられていること。

なお,権利者の利益を不当に害するサービス等は文化庁長官が総務大臣と協議をして除外することができることとしています。

①権利制限規定の拡充【第34条第1項等関係】

学校教育番組の放送等や国会等での演説等の利用など,現行の権利制限規定の中には,放送の公益性を踏まえ,放送を対象にした規定があります。今回の改正では,放送同時配信等については,放送と同視し得る利用形態であるため,これらの権利制限規定の対象に含めることとしています。具体的には,放送に関する権利制限規定(第34条第1項,第38条第3項,第39条第1項,第40条第2項,第44条,第93条)について,全て放送同時配信等にも適用できることとしています。

なお,第38条第3項については,多種多様な形態での公の伝達を認める規定であり,特に権利者に与える影響が大きいと考えられることから,「同時配信」及び「追っかけ配信」を対象としています(「見逃し配信」は対象外)。

②許諾推定規定の創設【第63条第5項関係】

放送番組又は有線放送番組には多種多様かつ大量の著作物等が利用されているところ,放送・放送同時配信等までの時間が限られている場合等には,放送事業者が関係する全ての権利者との間で,どこまでの範囲で利用するかを明確にした上で契約を締結するのは相当の困難が伴うことが想定されます。その結果、仮に権利者が内心では放送同時配信等を行って構わないと考えている場合でも、明確な許諾がないことを理由に「フタかぶせ」等が行われるおそれがあります。

このため,放送と放送同時配信等の権利処理のワンストップ化を図る観点から,著作物の放送又は有線放送及び放送同時配信等を許諾することができる者が,放送同時配信等を業として行っている放送事業者のうち、その事実を周知するための措置として,文化庁長官が定める方法によって,放送同時配信等の実施状況に関する情報として文化庁長官が定める情報を公表しているもの等に対し,放送番組での著作物の利用の許諾を行った場合には,当該許諾に際して別段の意思表示をした場合を除き,当該許諾には放送同時配信等の許諾を含むものと推定する旨の規定を設けています。

③レコード・レコード実演の利用円滑化【第94条の3、第96条の3関係】

改正前の著作権法においては,レコードやレコード実演については,放送で利用する場合は事前の許諾は不要ですが,配信を行う場合には事前の許諾が必要とされています。この点,例えば,著作権等管理事業者による集中管理等が行われている場合には,円滑に許諾を得ることができる一方で,そうでない場合には円滑に許諾が得ることが困難であり,放送で使用したレコードやレコード実演が放送同時配信等では使用できないおそれがあります。

このため,放送事業者は,商業用レコードに録音されている実演又は商業用レコードについて,著作権等管理事業者による管理が行われているものや文化庁長官が定める方法による権利者に関する情報を公表している場合を除き,通常の使用料の額に相当する補償金を支払って,放送同時配信等を行うことができる旨の規定を設けています。

④映像実演の利用円滑化【第93条の3、第94条関係】

映像実演については,放送で利用する場合も放送同時配信等で利用する場合も,いずれも許諾が必要ですが,放送については,初回の放送の許諾を得た場合,契約に別段の定めがない限り,再放送については許諾を不要とする特例が存在します。この点,放送同時配信等での利用について,著作権等管理事業者等による集中管理等が行われている場合には,円滑に許諾を得ることができる一方で,そうでない場合には円滑に許諾を得ることが困難であり,再放送する映像実演が,放送同時配信等できないおそれもあります。

このため,改正前の法第94条(改正後の法第93条の2)と同様の措置として,実演家が映像実演の初回の放送同時配信等の許諾をした際に,契約に別段の定めがない場合には,著作権等管理事業者による管理が行われている実演や,文化庁長官が定める方法により実演の権利者に関する情報を公表している場合を除き,通常の使用料の額に相当する報酬を支払って,事前の許諾なく利用すること可能としています(改正後の法第93条の3)。

また,初回の放送同時配信等の許諾を得ていなかった場合で,初回の放送から時間を経過しているような場合には,権利者に連絡ができなくなっていることがあり得ます。このため,初回の放送同時配信等の許諾を得ていない場合にも,契約に別段の定めがない限り,実演家と連絡するための一定の措置を講じても連絡がつかない場合には,あらかじめ文化庁長官の指定する著作権等管理事業者に通常の使用料額に相当する補償金を支払うことで,事前の許諾なく放送同時配信等することができることとしています(改正後の法第94条)。

⑤協議不調の場合の裁定制度の拡充【第68条関係】

改正前の第68条は,放送の公共的性格に鑑み,放送事業者が著作物の放送での利用に当たって,権利者に協議を求めたが,その協議が不調に終わった場合,文化庁長官の裁定を受け,一定の補償金を支払うことで,著作物を放送することができる旨を規定しています。

この裁定制度について,著作物を放送同時配信等するに当たっての協議が不調に終わった場合にも利用することができるよう,対象範囲を拡大することとしています。

4.改正法Q&A

(1)図書館関係の権利制限規定の見直し

※以下の回答はあくまでも今回の改正における法律上の内容を解説するものです。
具体の運用については関係者間の協議により決定される事柄がある点にご留意ください。

問1
改正を行うこととした背景を教えてください。
(答)

図書館の権利制限規定については,従来からデジタル化・ネットワーク化に十分対応できない部分があるとの指摘がなされてきたところです。

今般の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い図書館等が休館している場合,病気や障害等により図書館等まで足を運ぶことが困難な場合,近隣に図書館等が存在しない場合など,利用者・図書館等から,インターネットを通じた図書館資料へのアクセスなどのニーズが顕在化したことを踏まえ,今回の改正を行うこととしました。

今回の改正により,絶版等資料の個人向けのインターネット送信及び図書館資料の公衆送信を可能とすることで,コロナ禍のような予測困難な事態への対応,地理的・物理的制約にとらわれない国民の「知のアクセス」向上,持続的な研究活動の促進等に資するものと考えています。

(国立国会図書館による絶版等資料の個人向けのインターネット送信について)

問2
どの範囲の資料が対象となるのでしょうか。
(答)

国立国会図書館による絶版等資料の個人向けのインターネット送信の対象資料は,法律上「特定絶版等資料」に限定しています。

「特定絶版等資料」とは,「絶版等その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(絶版等資料)」のうち,著作権者や出版権者等から三月以内に絶版等資料に該当しなくなる蓋然性が高いことの申出があり,国立国会図書館の館長が当該申出の日から三月以内に絶版等資料に該当しなくなる蓋然性が高いことを確認した資料を除外したものと定義されています(第31条第6項・第7項)。

「絶版等資料」に該当する例としては,

①紙の書籍が絶版で,電子出版等もされていない場合

②将来的な復刻等の構想があるが,現実化していない場合

③大学紀要,郷土資料等最初からごく小部数しか発行されていない場合

などを想定しています。

なお,実際の運用は,文化庁の関与の下,関係者間の協議により決定されます。

問3
利用者はどうすれば国立国会図書館が送信する絶版等資料を閲覧することができるようになるのでしょうか。また,利用者はそのデータをダウンロードして利用することができるのでしょうか。
(答)

利用者は,あらかじめ国立国会図書館にその氏名や連絡先等を登録(その際,不正利用防止のための利用規約等への同意を求めることなども想定しています。)していただくことで,国立国会図書館のウェブサイト上で同館が送信する絶版等資料を閲覧することができるようになります。

また,利用者は,当該資料のデータを自ら利用するために必要と認められる限度において権利者の許諾なくプリントアウトをすることも法律上可能としています。もっとも,資料のデータが不正に拡散されないようにするため,送信に当たってはダウンロードを防止又は抑止するための措置を講ずることとなっていますので,利用者において絶版等資料のデータをダウンロードして利用することはできません。

このように,利用者の利便性を確保しつつも,種々の措置により資料のデータが不正に拡散し,権利者の利益が不当に害されないようにしています。なお,プリントアウトを可能とする場合のダウンロード防止・抑止措置の内容など,実際のサービス提供に当たって検討すべき課題もありますので,具体的な運用については,文化庁の関与の下,関係者間での協議により決定されます。

問4
海外からアクセスすることはできるのでしょうか。
(答)

絶版等資料の個人向けのインターネット送信に関するサービスの利用については,法律上その送信先を国内に限ってはいませんが,海外在住者への送信については,送信先の国の法律との適用関係や当該国の法律との関係における適法性確保の在り方など,国内向けの送信では生じ得ない様々な課題がありますので,それらの検討をした上で実施の可否が判断される必要があると考えています。

問5
いつから施行されるのですか。
(答)

絶版等資料の個人向けのインターネット送信については,利用者によるデータのダウンロードの防止・抑止等の措置を講ずるためのシステム整備など,サービス開始のための準備に相当の期間を要することから,公布(令和3年6月2日)から1年以内で政令で定める日から施行されることとなっています。

(図書館等による図書館資料の公衆送信について)

問6
正規の出版市場等に悪影響が及ぶことは懸念されないのでしょうか。
(答)

例えば,電子配信されている高額な新刊本で一章単位でも有償提供されているものを,その配信開始と同時に図書館等からも一章単位で公衆送信する場合など,電子出版などの正規の電子出版等の市場との競合が生じる可能性があります。

そこで,改正法においては,そのような民間事業を阻害しないよう,著作物の種類や電子出版等の状況等に照らし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には送信ができない旨の要件を設けています。

もっとも,この要件を設けることにより,どのような場合に図書館資料の送信が認められるのかが不明確になることや,不適切な利用を招くおそれもあることから,この要件の対象となる資料の範囲がより明確になるよう,文化庁の関与の下,中立的な第三者を交えて関係者と協議の上,この要件に関する具体的な解釈・運用を示すガイドラインを作成する予定としています。

問7
公衆送信が可能な資料の範囲はどこまででしょうか。
(答)

図書館等による公衆送信の対象範囲は原則として「著作物の一部分」に限定しています。

「著作物の一部分」は,現行の紙の複製において,著作物の「少なくとも半分を超えないものを意味する」と解釈されています。

なお,改正法においては,上記のとおり別途「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には送信ができない旨の要件を設けており,この要件との関係上,「一部分」の要件を満たす場合であっても,送信が認められない場合や,「一部分」よりも狭い範囲での送信となる場合があり得ると考えています。

具体的な解釈・運用は,今後,文化庁の関与の下,中立的な第三者を交えて関係者と協議の上決定する予定です。

(※)一方で,国等の周知目的資料(国若しくは地方公共団体の機関,独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し,その著作の名義の下に公表する広報資料,調査統計資料,報告書その他これらに類する著作物)など,国民が調査研究の目的で利用することが想定され,その全部の利用を認めたとしても著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があるものについては,権利者の許諾なくその全部の利用を認めることとしています。

問8
海外でも利用することはできるのでしょうか。
(答)

図書館資料の公衆送信に関しては,法律上その送信先を国内に限ってはいませんが,個々の図書館等がその設置目的等に応じてその範囲を判断することになるため,各図書館等によって異なってくるものと考えています。特に,公立図書館については,その設置目的や現行の郵送複写サービスの利用実態を踏まえれば,基本的にその地域に居住する方々が主な利用者になると考えられます。

なお,当該地域に居住していた方が海外赴任等により海外から公衆送信の申請を行うことも想定されますが,そのような個別の場面については,当該図書館等の設置目的等を踏まえて,各図書館等において,その取扱いが決められることになると考えています。

また,海外在住者への送信に当たっては,海外における不正拡散を実効的に防止し得るか,また,送信先の国の法律との適用関係や当該国の法律との関係における適法性確保の在り方など,国内向けの送信では生じ得ない様々な課題もありますので,それらの検討もした上で実施の可否を判断していく必要があると考えています。

問9
補償金の料金体系・金額はどのように設定されるのでしょうか。また,補償金は誰が支払うことになるのでしょうか。
(答)

補償金は,指定管理団体が,図書館等の設置者団体の意見を聴いて案を作成し,それを文化庁長官が文化審議会に諮った上で認可の判断を行うこととなりますが,その額については,図書館資料の公衆送信がされることによる権利者への影響の大きさに鑑み,基本的には権利者の逸失利益を適切に補填できるだけの水準とすることが適当と考えています。

このため,現時点では,著作物の種類・性質や送信する分量等に応じたきめ細かな設定を行うこと,年額などの包括的な料金体系ではなく,個別の送信ごとに課金する料金体系とすることなどを想定しています。また,具体的な金額については,国内市場における使用料の相場や諸外国における同様のサービスの相場を参照するとともに,図書館等における事務負担・円滑な運用への配慮といった点も加味しながら,総合的に検討されるものと考えています。

なお,この補償金の支払い義務者は,法律上,著作物の送信主体である「図書館等の設置者」としていますが,実際の運用に当たっての補償金負担は,基本的に送信サービスの受益者である「図書館利用者」に負担いただくことを想定しています。このため,実際には,図書館利用者が図書館設置者に対し補償金相当額を支払い,それを図書館設置者が補償金として指定管理団体を通じ権利者に対し支払うことになると考えています。

(※)附則第8条第2項においても,図書館等の設置者の補償金支払いに要する費用を図書館利用者の負担に適切に反映させることが重要であることが規定されています。

問10
いつから施行されるのですか。
(答)

図書館資料の公衆送信に関する措置については,①多数の図書館等が関わるものであり,適切な運用を担保するためのガイドラインの策定や各図書館等における体制整備等に相当の時間を要すること,②補償金制度を創設するに当たり,指定管理団体の指定や指定管理団体による補償金額の検討,文化審議会への諮問・答申を経た上での文化庁長官による補償金額の認可,指定管理団体による徴収・分配スキームの構築等に相当の時間を要することなどから,公布(令和3年6月2日)から2年以内で政令で定める日から施行されることとなっています。

(2)放送番組のインターネット同時配信等の権利処理の円滑化

問11
改正を行うこととした背景を教えてください。
(答)

放送番組のインターネット同時配信等においては,放送では権利者から許諾が得られたものの,同時配信等に関して権利者からの許諾が得られないことを理由に放送番組に用いている音楽・画像・映像等を差し替えるといった「フタかぶせ」が行われ,著作権制度に起因する課題があると指摘されていました。

これには,例えば,放送の許諾を得る際に合わせて配信の許諾を得るのが時間的にも困難な場合があることや,権利の集中管理等がされておらず個別に配信の許諾を得るのが困難な場合があるなど,様々な原因があると考えられます。

このような課題に対応するため,今回の改正において,同時配信等,放送と同等の扱いが可能な配信に対し,円滑な権利処理を実現するため,権利制限規定の拡充や許諾推定規定の創設など,5つの総合的な対策を講ずることとしました。これにより,「フタかぶせ」に関する著作権制度に起因する課題は基本的に解消され,視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興等の観点から,視聴者・放送事業者・クリエイターの全てにとって利益となることが期待できるものと考えています。

問12
放送同時配信等とは具体的にはどのようなサービスを指すのでしょうか。
(答)

「放送同時配信等」の定義には,放送番組と同時又は近接したタイミングに配信されることや,放送番組の内容に変更が加えられていないことなど,放送と同視でき,かつ放送に付随するサービスであることを担保するために必要な要件が規定されています(第2条第1項第9号の7)。

具体的には,放送に付随して行われる配信形態である,「同時配信」(放送と同一のタイミングで配信が行われるもの),「追っかけ配信」(放送が終了するまでの間に配信が開始されるもの),「一定期間の見逃し配信」(放送終了後,一定期間内に限り配信が行われるもの)といったサービスが対象となります。

問13
権利制限規定の見直しについて,具体的にどのような内容でしょうか。
(答)

今回の改正では,放送同時配信等については,放送と同視し得る利用形態であるため,学校教育番組の放送等や国会等での演説等の利用など,放送に関する権利制限規定の対象に含めることとしています。

具体的には,以下の権利制限規定について,全て放送同時配信等にも適用できることとしています。

①学校教育番組の放送等(第34条第1項)
現行規定上,放送大学やNHKの教育番組のように教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組に用いられる著作物(小説,写真,図表など)について,放送で利用することができるところ,放送同時配信等でも利用することができるようになります。

②営利を目的としない公の伝達等(第38条第3項)
現行規定上,放送される番組について,非営利・無料で大型のスクリーンに投影したり(前段),営利活動を行う飲食店等でも通常の家庭用受信装置(テレビ,ディスプレイ)を用いて見せることができる(後段)ところ,放送同時配信等(「見逃し配信」を除く。)も見せることはできるようになります。

(※)本規定は,多種多様な形での公の伝達を認めるものであり,特に権利者に与える影響が大きいと考えられることから,「同時配信」及び「追っかけ配信」を対象としています。

③時事問題に関する論説の転載等(第39条第1項)
現行規定上,新聞や雑誌に掲載された時事問題に関する論説・社説などについて,報道番組などの放送で利用することができるところ、放送同時配信等でも利用することができるようになります。

④国会等での演説等の利用(第40条第2項)
現行規定上,国会等での演説等について,NHKの国会中継などのように放送で利用することができるところ,放送同時配信等でも利用することができるようになります。

⑤放送事業者等による一時的固定(第44条)
現行規定上,放送事業者等は,自己の放送に向けた準備行為として,ビデオ撮りやテープ撮りなどフィルムやテープ等に一時的に著作物等を固定することができるところ,放送同時配信等のためにも同様に一時的に著作物等を固定することができるようになります。

⑥放送のための固定(第93条)
現行規定上,放送事業者等は,放送に向けた準備行為として,ビデオ撮りやテープ撮りなどフィルムやテープ等に実演を固定することができるところ,放送同時配信等のためにも同様に実演を固定することができるようになります。

問14
許諾推定規定について,具体的にどのような内容でしょうか。
(答)

文化審議会の検討においては,放送事業者から,放送番組に用いられる多様かつ大量の著作物について,放送までの限られた時間内で,異なる相手先と利用条件等について詳細な交渉を行うのは極めて困難であり,放送同時配信等の権利処理に当たっての負担となっている旨の指摘がありました。

このような現状における課題を踏まえ,放送番組に用いられる著作物等の権利処理を円滑に進め,「放送」と「放送同時配信等」の権利処理のワンストップ化を図る観点から,例えば,時間的な制約により放送同時配信等の具体的な契約を交わすことができない場合や,放送同時配信等の可否を明示的に確認できないような場合など,放送同時配信等の権利処理が困難な場合においては,権利者が,放送同時配信等を業として行っている放送事業者等に対し,放送番組での著作物の利用を許諾した場合には,別段の意思表示をしていなければ,「放送」に加え「放送同時配信等」での利用も許諾したものと推定する規定を設けることとしました。

この規定については,不意打ちや不利な契約を助長するのではないかとの権利者側の懸念を払拭しつつ,放送事業者による安定的な利用が可能となるよう,放送事業を所管する総務省と連携し,関係者間で具体的な適用条件等について定めるガイドラインを策定しました。ガイドラインでは,関係者の意見を踏まえ,放送同時配信等の許諾に当たっての基本的事項や許諾の推定に係る条件,許諾をしていないと証明し得る場合の対応等について記載しています。

放送同時配信等の許諾の推定規定の解釈・運用に関するガイドラインの公表について

問15
許諾推定規定はどのような場面に適用されるのでしょうか。
(答)

許諾推定規定は,法律上は適用場面の限定等はされておりませんが,例えば,放送までの時間が限られており,放送番組での著作物等の利用契約に際して,放送同時配信等の具体的な契約を交わすことができないような場合や,放送同時配信等の可否を明示的に確認できないような場合等の権利処理の円滑化を図るために設けられています。

なお,例えば,書面(メールやSNSのメッセージ等の電磁的記録を含みます。)により利用範囲を明らかにして契約を締結する場合は,契約時点で放送同時配信等での著作物等の利用の有無が明確になっているため,本規定の適用はありません(このように,従来,利用範囲を明らかにして行われてきた契約については,改正の影響はありません。)。

問16
許諾推定規定の利用に当たって当事者間でトラブルが起きないようにするために,許諾に当たってどのような点に留意する必要がありますか。
(答)

放送事業者側の留意すべき点としては,例えば,

  • 権利者が,放送同時配信等での著作物等の利用に当たり,同じ放送事業者との過去の契約交渉において明確に拒否する意思表示をしていたなど,放送同時配信等を拒否する意思があると考えられる場合には,放送番組の契約時に,あらかじめ放送同時配信等での利用の可否を明確に確認すること。
  • 対価の支払いを伴う著作物等の利用について,放送のみを行う場合と,放送と放送同時配信等を併せて行う場合の対価の相場が異なる場合には,後者の対価を支払うこと。

が挙げられます。

また,権利者側の留意すべき点としては,例えば,

  • 放送同時配信等を明確に拒否する意思や条件面に関する意思等を有しているときは,事後的なトラブルを回避する観点から,あらかじめ「別段の意思表示」を適切に行う必要があること。
  • 放送及び放送同時配信等の使用料について,事前に権利者側で基本となる料金を設定している場合には,これを放送事業者に対してあらかじめ周知し,又は許諾交渉に当たって示すこと。

が挙げられます。

また,可能な限り書面など記録に残る方法で契約を行うことも有効です。

以上の点も含め,留意事項等についてはガイドラインをご覧ください。

放送同時配信等の許諾の推定規定の解釈・運用に関するガイドラインの公表について

問17
実演・レコードの利用円滑化について,具体的にどのような内容でしょうか。
(答)

著作権法上,著作物を創作した者には「著作権」が付与されるとともに,著作物の伝達等を行う者のうち一定の者(実演家・レコード製作者・放送事業者等)には「著作隣接権」が付与されることとなっています。

この著作隣接権の対象のうち,実演・レコードの利用円滑化について以下の規定を整備しています。

<レコード・レコード実演の利用円滑化について>

商業用レコード及び商業用レコード実演については,現行規定上,放送での利用(例:CD音源をBGMで流す)の円滑化を図るため,放送事業者が二次使用料を支払うことで許諾なく放送できることとされているところ(第95条第1項・第97条第1項),放送と同視し得るサービスである放送同時配信等についても,放送事業者が一定の金銭を支払うことによって,許諾なく利用できることとしています。

具体的には,放送事業者は,商業用レコードに録音されている実演又は商業用レコードについて,①著作権等管理事業者による管理が行われているものや,②文化庁長官が定める方法による権利者に関する情報を公表している場合を除き,通常の使用料の額に相当する補償金を著作権等管理事業者に支払って,放送同時配信等を行うことができることとしています(改正後の法第94条の3・第96条の3)。

<映像実演の利用円滑化について>

映像実演(例:俳優の演技)については,現行規定上,再放送での利用の円滑化を図るため,初回の放送の許諾を得た場合には,契約に別段の定めがない限り,放送事業者は報酬を支払うことで許諾なく再放送できることとされているところ(改正前の法第94条(改正後の法第93条の2)),放送と同視し得るサービスである放送同時配信等についても,初回の放送同時配信等の許諾を得た際に,契約に別段の定めがない場合には,放送事業者が一定の金銭を支払うことによって,再放送に係る放送同時配信等を許諾なく行うことができることとしています。

具体的には,放送事業者は,映像実演について,①著作権等管理事業者による管理が行われている実演や,②文化庁長官が定める方法により実演の権利者に関する情報を公表している場合を除き,通常の使用料の額に相当する報酬を著作権等管理事業者に支払って,再放送に係る放送同時配信等を行うことができることとしています(改正後の法第93条の3)。

なお,初回の放送同時配信等の許諾を得ていない場合にも,契約に別段の定めがない限り,実演家と連絡するための一定の措置を講じても連絡がつかない場合には,通常の使用料の額に相当する補償金を著作権等管理事業者に支払って,放送同時配信等を行うことができることとしています(改正後の法第94条)

問18
協議不調の場合の裁定制度の見直しについて,具体的にどのような内容でしょうか。
(答)

現行規定では,放送事業者は,著作物の放送について権利者との間の協議が不調に終わった場合に,文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料に相当する補償金を支払うことで,著作物を放送することができます。

放送と同視し得るサービスである放送同時配信等についても,その協議が不調に終わった場合に裁定制度を利用することができるよう,対象を拡充しています。

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