実施内容〔外国人に対する実践的な日本語教育の研究開発〕
別紙
1 事業の趣旨・目的
日本語を母語としない外国籍住民の増加,定住化にともない,地域社会におけるコミュニケーション問題が深刻化している。この問題の解決にはコミュニケーションの当事者である外国人と日本人の双方を視野に入れた対策が求められる。このことを念頭に置きつつ,本事業では多文化共生社会の実現に向けた地域日本語教育の体制づくりに寄与する調査研究を実施した。具体的には,学習用素材・教材の内容・形態と提供方法,学習活動の形態と活動の手順,日本語教室などに通うことが難しい外国人のための学習支援方策,地域日本語教育の人材育成,日本語コミュニケーション能力の評価方法,などを含む日本語教育のシステムを多角的に検討し,各地域がそれぞれの実情に応じた日本語教育体制を整備しようとする際の拠り所となるフレームワークの策定をめざした調査研究を行った。
在住外国人のための日本語教育体制を整備するという最終目標に向けて,本事業では,基礎的な調査研究および集中討議を行うために以下の4つのプロジェクトを実施した。
- (ア)生活実態調査プロジェクト
外国人労働者の多くは日本人に劣らず過密なスケジュールで働いていると言われる。また,外国人配偶者の中には,日本社会側との対人コミュニケーションが限定的にしかなされず,孤立している者がいると言われる。そのような状況にある外国人の日本語学習ニーズ(その有無,可否,可能な学習形態等)を把握するための調査を行った。この調査は次年度の本調査の方法を検討するプレ調査と位置づけられる。
- (イ)日本語教育教材開発プロジェクト
生活者としての外国人向け教科書・教材の開発にかかわる指針作りを目的として中国帰国者やインドシナ難民に対する日本語教育にかかわってきた日本語教育専門家,語彙教育・文法教育などの専門家で構成されるプロジェクト・チームを編成した。これまでに作成された地域の外国人生活者向け教材・教科書約40点を収集し,それらの教材等に見られる日本語教育観,学習観,想定される教材の使い方などを多角的に分析した。一方,語彙,文法の観点からも分析を行い,今後の教材開発づくりの方針について討議した。
- (ウ)日本語ボランティア養成・研修プロジェクト
日本語ボランティアの養成および研修のためのカリキュラム開発にかかわる指針づくりを目的として日本語ボランティアの養成にかかわってきた日本語教育専門家を中心にプロジェクト・チームを編成した。これまでに行われてきた日本語ボランティア養成講座および現職日本語ボランティア研修講座について聞き取り調査などにより情報を収集し,これからのボランティア養成,研修のあり方,カリキュラム編成などについて討議した。
- (エ)地域日本語教育システムづくり検討プロジェクト
地域日本語教育に精通する日本語教育専門家でプロジェクト・チームを編成した。言語教育政策,日本語教育,異文化コミュニケーション,共生日本語,IT技術など多様な観点から外国人生活者のための日本語教育システムが備えるべき要件について集中討議を行った。
2 運営委員会の開催について
日時 | 出席者 | 議題 | |
---|---|---|---|
第1回運営委員会 | 2007年10月27日 | 石井恵理子,尾﨑明人, 金孝卿,小林悦夫,サウクエン ファン,杉澤経子,富谷玲子,春原憲一郎,柳澤好昭 | ・研究方針の決定 ・プロジェクトチームの発足 |
第2回運営委員会 | 2007年11月24日 | 石井恵理子,岩見宮子, 尾﨑明人,金田智子,金孝卿,小林悦夫, サウクエン ファン,杉澤経子,山田泉,柳澤好昭 | 各プロジェクトのメンバー確認 ・予算執行の手続きの確認 ・各プロジェクト調査の進捗報告 ・委員からの意見発表 (金・ファン・尾崎) |
第3回運営委員会 | 2007年12月29日 | 石井恵理子,岩見宮子, 尾﨑明人,金田智子,杉澤経子,富谷玲子, 野山広,春原憲一郎,山田泉,柳澤好昭 | ・各プロジェクト調査の進捗報告 ・各委員からの発表 (杉澤,金田) ・3月に実施する予定の研究協議会(シンポジウム)の検討 |
第4回運営委員会 | 2008年1月12日 | 石井恵理子,岩見宮子, 尾﨑明人,金田智子,金孝卿,小林悦夫,サウクエン ファン,杉澤経子, 富谷玲子,野山広,春原憲一郎,山田泉 | ・各プロジェクト調査の進捗報告
・各委員からの発表 (石井,富谷,岩見) ・3月に実施する予定の研究協議会(シンポジウム)の検討 ・来年度以降の計画検討 |
第5回運営委員会 | 2008年2月23日 | 石井恵理子,岩見宮子,尾﨑明人,金孝卿, 小林悦夫,サウクエン ファン,杉澤経子,富谷玲子,野山広,山田泉, 柳澤好昭 | ・各プロジェクト調査の進捗報告 ・報告書の内容検討 ・予算執行状況の確認 ・3月に実施する予定の研究協議会(シンポジウム)の内容検討 |
第6回運営委員会 | 2008年3月15日 | 石井恵理子,岩見宮子,尾﨑明人,金田智子, 金孝卿,小林悦夫, 杉澤経子,富谷玲子, 柳澤好昭 | ・各プロジェクト調査の進捗報告 ・地域日本語教育システムづくり 検討プロジェクトの検討 ・報告書の内容検討 |
3 研究協議会(シンポジウム)開催について
- (1) プログラム
第1部 経過報告「生活者としての外国人に対する実践的な日本語教育の研究開発」
司会 柳澤好昭 生活実態調査 富谷玲子 教材について 庵功雄,中道真木男,柳澤好昭 ボランティア養成・研修 岩見宮子 地域日本語教育の枠組みつくり 石井恵理子 第2部 ラウンドテーブル「地域日本語教育システムづくりに向けて」
司会 山田泉 パネリスト 金孝卿,杉澤経子,西口光一 - (2) 開催日時,場所
2008年3月29日(土) 14:00~17:00
法政大学 市谷キャンパス 外濠校舎S205教室 - (3) 参加者数 146名
- (4) 概要
第1部を経過報告とし,各プロジェクトの代表者がこれまでの調査研究成果の報告を行っ た。第2部ではラウンドテーブルを設けて,地域日本語教育システムづくり検討プロジェクトを実施した運営委員とゲストスピーカーがパネルディスカッションを行った。
- (5) 会場の様子等
4 地域連携に関する計画
本件事業は,事業の趣旨・目的で示したとおり,在住外国人のための日本語教育体制を整備することを最終目標とし,そのためのフレームワーク策定をめざしたものである。従って,本事業で得られた知見や調査結果は次年度の申請事業に引き継がれる。
次年度の委嘱申請が採用された場合は,本件事業の対象になった地域,事業所等と共に,引き続き協働的な調査研究を実施していく予定である。また,当学会の地域会員のネットワークについてもこれを最大限活用し調査研究を実施していく予定である。

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