平成11年3月19日
今後の日本語教育施策の推進に関する調査研究協力者会議
はじめに
国際化が進展しつつある中,我が国にとって,日本語教育の一層の振興を図っていくことが重要な政策課題となっている。
これまで様々な分野において日本語教育施策が進められてきたが,それらは現在一つの転機を迎えている。国内外の日本語学習者数の増加や多様な日本語学習者の新たな学習ニーズに適切に対応していくことが求められている。その一方で,これまでの個々の日本語教育施策の在り方について,現在の社会状況に照らして,その見直しを行う時期が来ていると考えられる。すなわち,日本語教員の養成方策や多様な学習ニーズに応じた教育カリキュラムの開発,日本語能力試験・日本語教育能力検定試験の在り方,日本語教育施設の機能の活用,地域における日本語教育や新しい情報通信媒体を活用した日本語教育の推進,さらには,海外における日本語学習への支援など,今後の日本語教育の充実を図っていく上で早急に解決すべき課題は多い。
本協力者会議は,日本語教育の新たな展開を踏まえつつ,日本語教育の現状と課題を整理し,今後における日本語教育施策の在り方について幅広い観点から検討を加えた。
この報告ではまず,日本語教育施策を推進していくための体制の在り方について基本的な考え方をまとめている。これは,様々な分野にわたる日本語教育施策を総合的に検討するに当たって,日本語教育に関係する事業を行う機関・団体が極めて多岐にわたっている現状を踏まえたとき,まずそれら相互の関係の在り方,言い換えれば日本語教育の推進体制について,今後のあるべき姿を検討することが前提として必要であると考えたからである。そして,本協力者会議としては,その検討を通じ,日本語教育関係機関等の連携・協力体制を構築し,一体となった日本語教育施策を推進していくことが極めて重要であると考えた。
その上で,日本語教育の様々な分野において,本協力者会議が現在課題として考える個々の問題点について,現状を分析した上で検討を加え,今後のあるべき方向性を提示した。この報告では,日本語教育の施策においては現在,総合的な施策の展望が求められているとの認識の下に,できるだけ多くの課題について取り上げ,検討を加えている。しかし,この報告で示した提言が実現されるためには,更に個々の課題ごとにより具体的な検討が必要とされるものであり,またすべての日本語教育関係機関・関係者の間で,その実現のための努力が払われなければならないと考える。その意味で,今回の報告は,今後の日本語教育施策の推進に向けての方向性を明示したものであるということが言える。
今後,この報告を基に,その提言を具体化するための取組が早急に行われることを強く願うものである。